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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】介護用椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/14 20060101AFI20230816BHJP
   A61H 33/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
A61G5/14 711
A61H33/00 310K
A61H33/00 310N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019153262
(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公開番号】P2021029617
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】小田 眞弘
(72)【発明者】
【氏名】杉 茂人
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-067739(JP,A)
【文献】特開2019-136294(JP,A)
【文献】特開2016-007302(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0080190(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/14
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台上に支持される本体部と、
前記本体部に支持される椅子ユニットと、
を備え、
前記椅子ユニットは、
前記本体部に上下動可能に支持され、略水平方向に延びる第1部位、及び前記第1部位の後端部から略上下方向に延びる第2部位を有する支持体と、
前記支持体に支持され、座部及び背もたれを有する椅子と、
前記支持体に対し、前記椅子を固定する固定機構と、
を備え、
前記椅子の座部は、前記支持体の第1部位に沿って略水平方向に移動可能に構成され、
前記椅子の背もたれの上端部に設けられた回転可能なローラが、前記支持体の前記第2部位に対し、略水平方向に延びる軸周りに揺動可能で、且つ前記第2部位に沿って略上下方向に移動可能に構成されており、
前記背もたれの上端部が下方に移動するにしたがって、前記座部は、当該座部の前端が上方を向くように傾斜する、介護用椅子。
【請求項2】
前記固定機構は、操作ハンドルを備え、
ユーザにより、前記操作ハンドルを略水平方向に移動させることで、前記椅子の座部が前記第1部位に沿ってスライドするように構成されている、請求項1に記載の介護用椅子。
【請求項3】
前記支持体の第1部位は、前記座部の移動方向に沿って複数箇所に設けられた固定部を備え、
前記座部は、前記第1部位の各固定部に、着脱自在に固定されるように構成されている、請求項2に記載の介護用椅子。
【請求項4】
前記固定機構は、前記操作ハンドルの操作によって、前記座部を前記固定部に対し着脱させるように構成されている、請求項3に記載の介護用椅子。
【請求項5】
前記基台上に配置され、前記本体部を水平方向にスライド可能に支持する第1レール部材をさらに備え、
前記本体部が、前記第1レール部材から、浴槽の框に設けられた第2レール部材にスライドしつつ移動するように構成されている、請求項1から4のいずれかに記載の介護用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被介護者の入浴を補助するための種々の介護用椅子が提案されている。例えば、特許文献1に開示された介護用椅子は、本体部と、この本体部の前面において上下動可能に取り付けられた椅子とを備えている。また、この椅子の背もたれの背面には水平方向に延びる回転軸が設けられており、この回転軸によって、椅子が本体部の前面において傾斜するようになっている。
【0003】
そして、本体部を浴槽の脇に設置し、被介護者が座る椅子を傾斜させた状態で、この椅子を下降させると、被介護者の体全体を浴槽の湯に浸かられることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-130353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のような介護用椅子は次のような問題がある。まず、椅子を傾斜させたとき、回転軸よりも上方の部分は、初期位置から後方に移動するため、椅子の後方に予めスペースを確保しておく必要がある。そのため、椅子の後方での介護者の作業スペースが制限されるとともに、浴槽を広く使えないおそれがある。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、後方のスペースを確保しつつ、椅子を傾斜させることができる、介護用椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る介護用椅子は、基台と、前記基台上に支持される本体部と、前記本体部に支持される椅子ユニットと、を備え、前記椅子ユニットは、前記本体部に上下動可能に支持され、略水平方向に延びる第1部位、及び前記第1部位の後端部から略上下方向に延びる第2部位を有する支持体と、前記支持体に支持され、座部及び背もたれを有する椅子と、前記支持体に対し、前記椅子を固定する固定機構と、を備え、前記椅子の座部は、前記支持体の第1部位に沿って略水平方向に移動可能に構成され、前記椅子の背もたれの上端部が、前記支持体の前記第2部位に対し、略水平方向に延びる軸周りに回動可能で、且つ前記第2部位に沿って略上下方向に移動可能に構成されている。
【0007】
上記介護用椅子において、前記固定機構は、操作ハンドルを備えることができ、ユーザにより、前記操作ハンドルを略水平方向に移動させることで、前記椅子の座部が前記第1部位に沿ってスライドするように構成することができる。
【0008】
上記介護用椅子において、前記支持体の第1部位は、前記座部の移動方向に沿って複数箇所に設けられた固定部を備えることができ、前記座部は、前記第1部位の各固定部に、着脱自在に固定されるように構成することができる。
【0009】
上記介護用椅子において、前記固定機構は、前記操作ハンドルの操作によって、前記座部を前記固定部に対し着脱させるように構成することができる。
【0010】
上記介護用椅子においては、前記基台上に配置され、前記本体部を水平方向にスライド可能に支持する第1レール部材をさらに備えることができ、前記本体部が、前記第1レール部材から、浴槽の框に設けられた第2レール部材にスライドしつつ移動するように構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る介護用椅子よれば、後方のスペースを確保しつつ、椅子を傾斜させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る入浴介護システムの側面図である。
図2図1の平面図である。
図3図1の入浴介護システムに用いられる介護用椅子の支持体及び椅子の一部を示す斜視図である。
図4図1に示す介護用椅子の椅子を傾斜させた側面図である。
図5図1に示す介護用椅子の椅子を傾斜させた側面図である。
図6A】支持体と固定機構を示す側面図である。
図6B】支持体と固定機構を示す側面図である。
図7】介護用椅子の使用方法を示す側面図である。
図8】介護用椅子の使用方法を示す側面図である。
図9】介護用椅子の使用方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る介護用椅子を利用した入浴介護システムの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、この入浴介護システムの側面図、図2は、図1の平面図である。図1及び図2に示すように、この入浴介護システムは、被介護者が入浴するのを介護するためのシステムであり、被介護者が座る介護用椅子100と、浴槽8に取付けられ、洗場Wにある介護用椅子100の椅子ユニットを浴槽8に案内するためのレールユニット200と、を有している。以下では、まず、介護用椅子100について説明し、その後、レールユニット200及びその使用方法について説明する。なお、以下では、説明の便宜のため、図1図3に示す方向にしたがって、説明を行なうこととする。
【0015】
<1.介護用椅子>
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る介護用椅子100は、被介護者などの利用者を着座させる椅子ユニット1と、この椅子ユニット1を支持する本体部2と、この本体部2を移動可能に支持する基台3と、を備えている。以下、各部材について詳細に説明する。
【0016】
<1-1.椅子ユニット>
まず、椅子ユニットについて、図3も参照しつつ説明する。図3は、支持体と椅子の背もたれ部とを示す斜視図である。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る椅子ユニット1は、側面視L字状に形成された支持体11と、この支持体11上で移動可能な椅子12と、椅子12を支持体11上で固定するための固定機構13と、を備えている。支持体11は、略水平方向に延びる第1部位111と、この第1部位111の後端部から略上方に延びる第2部位112と、が連結されることで構成されている。
【0017】
図1に示すように、第2部位112は、板状の第2部位本体113を備えている。この第2部位本体113は、上下方向の中間部において、後方に凸となるようにやや屈曲している。また、第2部位本体113の背面には、上下方向に延びるラック(図示省略)が固定されており、このラックに、本体部2の前面から露出するピニオン(図示省略)が噛み合っている。このピニオンは、本体部2に内蔵されたモータ(図示省略)により正逆方向に回転駆動するようになっている。また、第2部位本体113の背面には、上下方向に延びる一対の第1レール(図示省略)が設けられており、これら第1レールに、本体部2に設けられたローラ(図示省略)が回転可能に嵌まっている。これにより、第2部位112は、本体部2に対して上下動可能となっている。そして、本体部2のモータが駆動すると、第2部位112は、第1部位111とともに、本体部2に対して上下動するようになっている。すなわち、椅子ユニット1が、本体部2に対して上下動するように構成されている。
【0018】
一方、図3に示すように、第2部位本体113の前面の上部の両側には、上下方向に延びる一対の第2レール114が設けられている。これら第2レール114は、断面L字状に形成されており、後述するように、第2部位本体113と第2レール114との間に、椅子12に設けられた第1ローラ125が嵌まるようになっている。
【0019】
第1部位111は、板状の第1部位本体115と、その上面の両側に設けられ、前後方向に延びる一対の第3レール116と、を備えている。これら第3レール116は、断面L字状に形成されており、後述するように、第1部位本体115と第3レール116との間に、椅子12に設けられた第2ローラ126が嵌まるようになっている。また、これら一対の第3レール116には、前後方向に所定間隔をおいて3つの凹部(固定部)117a~117cがそれぞれ形成されている。これら凹部117a~117cには、後述するように、固定機構13の突部138が着脱自在に嵌まるようになっている。ここでは、説明の便宜のため、前方から後方へ並ぶ凹部を、この順で、第1凹部117a、第2凹部117b、及び第3凹部117cと称することとする。
【0020】
次に、椅子12について説明する。図1に示すように、椅子12は、前後方向に延びる座部121と、この座部121の後端部に連結され、略上方に延びる背もたれ部122とを備えており、側面視L字状に形成されている。また、座部121の上面には座部マット123が取り付けられ、背もたれ部122の前面には背もたれマット124が取り付けられている。背もたれマット124は、上下方向において背もたれ部122の概ね全長に亘って設けられ、初期状態においては、背もたれ部122を超え、第2部位112の前面を覆うように配置されている。
【0021】
図3に示すように、背もたれ部122の上端部には、水平方向(左右方向)に延びる回転軸を有する第1ローラ125が設けられており、この第1ローラ125が上述したように、第2部位112の第2レール114に嵌め込まれている。したがって、背もたれ部122は、第2レール114に沿って上下方向に移動可能となっている。また、背もたれ部122は、第1ローラ125を支点として揺動可能となっている。
【0022】
背もたれ部122の下端部には、水平方向に延びる回転軸を有する第2ローラ126が設けられており、この第2ローラ126が上述したように、第1部位111の第3レール116に嵌め込まれている。したがって、背もたれ部122の下端部は、第3レール116に沿って前後方向に移動可能となっている。
【0023】
座部121と背もたれ部122とは一体的に形成されているため、例えば、座部121が前方へ引っ張られると、これにしたがって、背もたれ部122の下端部は、第2部位112に沿って前方に移動する。これに伴い、背もたれ部122は、第1ローラ125を支点として前方へ揺動しつつ下方に移動するようになっている。こうして、座部121が前方に移動するにしたがって、例えば、図4及び図5に示すように、背もたれ部122は傾斜するとともに、座部121は、前端が上方を向くように傾斜する。こうして、椅子12は全体として、支持体11上でチルトするようになっている。
【0024】
次に、固定機構13について、図6A及び図6Bも参照しつつ説明する。図6A及び図6Bは、支持体の一部と固定機構との関係を示す側面図である。図6Aに示すように、固定機構13は、座部121の下面に取り付けられ、前側から後側へ並ぶ、第1リンク部材131、第2リンク部材132、及び第3リング部材133を備えている。第1リンク部材131は、その中間部が座部121の下面の前端付近に固定された第1軸部材134によって回転可能に固定されている。第1軸部材134は水平方向(左右方向)に延びる軸部材であり、後述する第2~第4軸部材135~137も同様に水平方向に延びている。また、第1リンク部材131の前端には、操作ハンドル139が取り付けられている。したがって、図6Bに示すように、操作ハンドル139を上方に持ち上げると、第1リンク部材131の後端部が下方に回転するようになっている。また、第1リンク部材131の後端と第2リンク部材132の前端とは第2軸部材135によって互いに回転可能に連結されている。さらに、第2リンク部材132の後端と第3リンク部材133の前端とは第3軸部材136によって互いに回転可能に連結されている。
【0025】
第3リンク部材133は、前端付近が上方へ凸となるように屈曲しており、この屈曲部分に第4軸部材137が取り付けられており、この第4軸部材は、座部121の下面に固定されている。したがって、図6Bに示すように、例えば、第3リンク部材133の前端が後方に押し遣られて、下方に回転すると、第3リンク部材133の後端は、上方に回転するようになっている。また、第3リンク部材133の後端には、水平方向に延びる突部138が取り付けられており、この突部138は、上述した各第3レール116の各凹部117a~117cに嵌まるようになっている。
【0026】
以上のように構成された固定機構13は、次のように動作する。図1及び図6Aに示すように、初期状態において、突部138が第3凹部117cに嵌まっているとすると、これによって、座部121は、第1部位111上で動かないように固定される。この状態から、図6Bに示すように、操作ハンドル139を上方に持ち上げると、第1リンク部材131の後端部が下方に回転し、これに伴って、第2リンク部材132は、後方に押し遣られる。そして、第2リンク部材132の後方への移動に伴って、第3リンク部材133の先端が後方に押し遣られると、第3リンク部材133は、第4軸部材137周りに回転し、後端が上方に回転するようになっている。その結果、突部138が第3凹部117cから離脱し、座部121は、第1部位111上を移動可能な状態となる。この状態で、操作ハンドル139を前方に引くと、座部121は前方に移動し、これに伴って、椅子全体が傾斜する。
【0027】
そして、例えば、突部138が第1凹部117a上に配置されたときに、操作ハンドル139を下方に押し遣ると、第1~第3リンク部材131~133は、上述したのと反対の向きに動作し、第3リンク部材133の後端が、第4軸部材137周りに下方へ回転し、突部138が第1凹部117aに嵌まる。その結果、図5に示すように、椅子12は、最も傾斜した状態に保持される。なお、図4は、突部138が、第2凹部117bに嵌まっている状態を示している。
【0028】
<1-2.本体部>
次に、本体部2について説明する。図1に示すように、本体部2は、直方体状のケーシング21と、このケーシング21に内蔵されているモータ(図示省略)と、を備えている。モータは、上述したようにピニオンを回転させるためのものである。ケーシング21の前面は、下方にいくにしたがって、前方に向かうように傾斜している。また、ケーシング21の前面にはガイドローラ(図示省略)が配置されており、このガイドローラが、上述した椅子ユニット1の第1レールに嵌め込まれている。これにより、椅子ユニット1は、ケーシング21の前側において上下動可能となっている。また、ケーシング21の前面が上記のように傾斜しているため、椅子ユニット1もこの傾斜に沿って上下動するように構成されている。例えば、椅子ユニット1がケーシング21に対して下方に移動すると、やや前方に向かうように移動する。
【0029】
なお、後述するように、被介護者の入浴時には、椅子ユニット1と本体部2とが介護用椅子100から分離し、浴槽8側へ移動する。
【0030】
<1-3.基台>
次に、基台3について説明する。基台3は、複数の車輪351,352が設けられた基部31と、本体部2を支持する第1レール部材32と、基部31から上方に延び、第1レール部材32を支持する支持部33と、を備えている。
【0031】
基部31は、前後方向に延びる一対の棒状の支持部材311を備えており、各支持部材311の前後の端部の下側に、それぞれ前輪351及び後輪352が取り付けられている。両支持部材311は、左右方向に所定間隔をあけて平行に配置されており、前端部側が第1連結部材312により連結されている。一方、両支持部材311の前後方向の中間付近は、第2連結部材(図示省略)によって連結されており、この第2連結部材から上述した支持部33が上方に延び、第1レール部材32を下側から支持している。
【0032】
第1レール部材32は、左右方向に延びるレールを有しており、このレールにケーシング21の下端面が移動可能に嵌め込まれている。これにより、ケーシング21は、第1レール部材32に沿って左右方向に移動可能となっている。また、ケーシング21は、第1レール部材32上にあるとき、その位置をロックできるようになっている。さらに、第1レール部材32は、後述するように浴槽8の上面に設けられた第2レール部材9とほぼ同じ高さに設置されている。
【0033】
<2.浴槽のレールユニット>
次に、浴槽のレールユニット200について説明する。まず、浴槽8について説明する。図2に示すように、浴槽8は、前後方向に平行に延びる第1壁部81及び第2壁部82と、左右方向に平行に延びる第3壁部83及び第4壁部84と、を有しており、平面視矩形状に形成されている。第1壁部81は左側(洗場W側)、第2壁部82は右側に配置されており、これらは浴槽8の長手方向に延びている。一方、第3壁部83は前側、第4壁部84が後側に配置されており、これらは浴槽8の短手方向に延びている。
【0034】
レールユニット200は、第1壁部81の上面に沿って配置される第1固定具71と、第2壁部82の上面に沿って配置される第2固定具72とを備えている。これら固定具71,72の下部には各壁部81,82を挟む挟持部材(図示省略)が取付けられており、この挟持部材によって各固定具71,72を各壁部81,82に固定している。
【0035】
両固定具71,72の上面は平坦に形成されており、これら固定具71,72に跨がるように左右方向に延びる第2レール部材9が取付けられている。この第2レール部材9の上面にはレールが設けられており、上述した椅子ユニットの本体部2のケーシング21がスライド可能となっている。
【0036】
すなわち、第2レール部材9と、介護用椅子100の第1レール部材32とは概ね同じ高さに位置しており、第2レール部材9の左端部と、第1レール部材32の右端部とを接触させたときには、本体部2のケーシング21が、第1レール部材32と第2レール部材9とに亘ってスライドできるようになっている。また、第2レール部材9の左端部と、第1レール部材32の右端部とは、ロック可能となっている。さらに、第2レール部材9に受入れられたケーシング21は、第2レール部材9上で動かないようにロックできるようになっている。
【0037】
<3.入浴介護システムの使用方法>
次に、上記のように構成された入浴介護システムの使用方法について、図7図9も参照しつつ説明する。ここでは、洗場Wに配置されている介護用椅子100の椅子12を浴槽8内に移動させ、椅子12に座る被介護者を浴槽8に浸からせる動作について説明する。
【0038】
まず、本体部2に対し椅子ユニット1を下降させ、被介護者を椅子12に座らせる。次に、固定機構13を操作し、椅子12を傾斜させた上で、図7に示すように、椅子ユニット1を第1壁部81よりも高い位置まで上昇させる。図7では、突部138を第1凹部117aに嵌め込んでいる。すなわち、椅子12を最も傾斜させている。但し、図4に示すように、突部138を第2凹部117bに嵌め込んでもよい。また、この前後に、第1レール部材32の右端部と第2レール部材9の左端部とを連結しておく。
【0039】
次に、図8に示すように、本体部2を第1レール部材32から第2レール部材9へ向けてスライドさせる。こうして、本体部2とともに椅子ユニット1が浴槽8の上方に位置すると、本体部2がスライドしないように、その位置にロックする。
【0040】
続いて、本体部2のモータを駆動し、図9に示すように、椅子ユニット1を浴槽8内へと降下させる。こうして、被介護者は椅子12に着座したままで、浴槽8内に入り、湯につかることができる。入浴の終了後には、これとは逆に椅子ユニット1を上昇させ、椅子ユニット1が浴槽8の上面を超える位置まで上昇すると、本体部2のスライドのロックを解除し、本体部2を洗場W側へスライドさせる。そして、本体部2が第1レール部材32上に移動すると、ロックをする。その後、椅子1を下降後、第2レール部材9と第1レール部材32とのロックを解除し、被介護者とともに介護用椅子100を移動させる。
【0041】
<4.特徴>
本実施形態に係る介護用椅子によれば、以下の効果を得ることができる。
【0042】
(1)側面視L字状に形成された支持体11の前方に椅子12が設けられ、この椅子12が傾斜するように構成されているため、椅子12が大きく傾斜したとしても、支持体11よりも後方には移動しない。したがって、椅子12に座る被介護者の頭部は、支持体11より後方に倒れない。そのため、被介護者の不安を抑制することができる。
【0043】
(2)椅子12が支持体11よりも後方に移動しないため、支持体11よりも後方には椅子12の傾斜のための動作領域を必要としない。したがって、本体部2を浴槽8の第4壁部84に近接させることができ、浴槽8を広く利用することができる。また、支持体11の後方において、介護者の動作スペースを確保することができる。
【0044】
(3)椅子12は、座部121が前方にしつつ背もたれ部122が下方に移動することで、傾斜するため、傾斜させるために要する力を小さくすることができる。また、椅子12が傾斜したときに、支持体11と椅子12との間に大きいデッドスペースが形成されるのを抑制することができる。したがって、浴槽8を広く使用することができる。また、椅子12の傾斜によって被介護者が着座する位置が高くなるのを防止することができるため、これによっても、被介護者の不安を抑制することができる。
【0045】
(4)椅子12は、座部121が前方にしつつ背もたれ部122が下方に移動することで、バランスよく椅子12が傾斜する。すなわち、従来例のように椅子全体が持ち上がるように傾斜しないため、転倒を防止することができる。さらに、椅子12を受ける支持体11や本体部2に作用する力が分散されるため、支持体11等に偏った力が作用するのを抑制することができる。その結果、介護用椅子100の損傷を防止することができる。
【0046】
(5)支持体11の第1部位111は、概ね水平方向に延びているが、やや傾斜させることもできる。例えば、前方に行くにしたがって下方に向くように傾斜させると、椅子12を傾斜させる際、つまり座部121を前方に移動させる際には、被介護者の自重も手伝って移動させることができるため、操作ハンドル139を操作する介護者の負担を少なくすることができる。一方、座部121を後方に移動させるときには、自重で戻ろうとする力が作用するため、大きい力を必要としない。
【0047】
(6)操作ハンドル139を座部121の前方に設けているため、着座する被介護者側から椅子12の傾斜の操作を行うことができる。したがって、操作ハンドル139の操作時に、介護者が、被介護者と目線を合わす位置で作業を行うことができるため、被介護者の不安を抑制することができる。
【0048】
<5.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例は、いずれか1つを採用したり、あるいは複数の態様を問題なく組み合わせることができる。
【0049】
<5-1>
椅子12の傾斜状態を固定するための固定機構13の構成は特には限定されず、種々の態様が可能である。すなわち、椅子12を手動で傾斜させることができれば、その構成は特には限定されない。また、傾斜位置を固定するために、突部138を凹部117に嵌め込んでいるが、これ以外の手段であっても、傾斜位置が固定できればよい。
【0050】
<5-2>
上記実施形態では、椅子12の背もたれ部の上端部及び下端部にローラ125,126を設け、これらのローラ125,126を、支持体11の第2部位112及び第1部位111のレール114,116に沿って移動させることで、椅子12を傾斜させているが、ローラ125,126を設ける位置は特には限定されず、支持体11の前方において、椅子12が座部121が前方に移動しつつ、背もたれ部122が下降することで傾斜するように構成されていればよい。例えば、背もたれ部122の中間付近が折れ曲がるように構成し、この折れ曲がる部分にローラを設けることもできる。
【0051】
<5-3>
上記実施形態では、手動で椅子12を傾斜させているが、電動により傾斜させることもできる。
【0052】
<5-4>
本体部に対して支持体11を上下動させるための手段は特には限定されず、ラック、ピニオン以外の手段でもよい。また、本体部2が基台3に対してスライドできるように構成しているが、必ずしもこの構成は必要ではなく、単に、基台3上に本体部2を固定し、本体部2に対して支持体11が上下動できるようにしてもよい。
【0053】
<5-5>
基台3の構成は特には限定されず、必ずしも車輪がなくてもよい。また、車輪以外の手段で移動できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
100 介護用椅子
1 椅子ユニット
11 支持体
111 第1部位
112 第2部位
117a~117c 凹部(固定部)
12 椅子
121 座部
122 背もたれ部
2 本体部
32 第1レール部材
9 第2レール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9