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特許7332270画像形成方法及びインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】画像形成方法及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20230816BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230816BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20230816BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41M5/00 114
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41J2/01 123
B41J2/01 125
B41J2/01 401
C09D11/30
D06P5/30
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2017192143
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019064159
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】多賀 康浩
(72)【発明者】
【氏名】柚原 敬介
(72)【発明者】
【氏名】前田 光範
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎平
【合議体】
【審判長】杉山 輝和
【審判官】井口 猶二
【審判官】松波 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-98157(JP,A)
【文献】特開2015-29944(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159124(WO,A1)
【文献】特開2022-92112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00- 5/52
B41J 2/01- 2/215
C09D 11/00-11/54
D06P 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性インクを用いて、布帛及び記録用紙を含む記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、
前記記録媒体に前記水性インクをインクジェット方式により吐出して画像を印刷する画像印刷工程を含み、
前記画像印刷工程において、前記水性インクのうち有彩色インクは、前記記録媒体の種類によらず同一のものを用い、
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、
前記布帛に処理剤を付与する処理剤付与工程を含み、
前記処理剤付与工程において、前記記録媒体が前記記録用紙の場合の面積あたりの前記処理剤の付与量(T)と、前記記録媒体が前記布帛の場合の面積あたりの前記処理剤の付与量(T)とを、T<Tとし、
前記画像印刷工程及び前記処理剤付与工程において、前記水性インクの面積あたりの吐出量(I)と、前記処理剤の面積あたりの付与量(T)とを、
前記記録媒体が前記記録用紙の場合、T/I=0~0.92、且つ、I+T<2.3mg/cmとし、
前記記録媒体が前記布帛の場合、T/I>3.1とし、
前記水性インクは、前記処理剤との接触で凝集又は増粘する水性インクであり、
前記処理剤が、カチオン性物質であり、
前記カチオン性物質が、カチオン性ポリマー及びカチオン性無機微粒子の少なくとも一方を含み、
前記カチオン性ポリマーが、ウレタン構造を含む
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記Tを、0mg/cm~1.1mg/cmとし、
前記Tを、5.0mg/cm~48mg/cmとする、
請求項1記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記処理剤全量における前記カチオン性物質の配合量が、1重量%~15重量%である、請求項1又は2記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーの重量平均分子量が、3000~500000であり、
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーにおいて、前記ウレタン構造部分の占める割合が、10%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、前記ウレタン構造以外の部分に、アクリル構造及びスチレン構造の少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、前記ウレタン構造以外の部分に、アクリル構造を含む、請求項記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、エマルションである、請求項のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記ウレタン構造が、
脂肪族イソシアネートと、
ポリエーテル系ポリオール又はポリエステル系ポリオールと、
から得られたものである、請求項のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記カチオン性ポリマーの最低造膜温度が、25℃以下である、請求項のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、前記処理剤付与工程で付与した処理剤を乾燥させる乾燥工程を含み、
前記処理時付与工程、前記乾燥工程及び前記画像印刷工程を、この順序で実施し、
前記処理剤付与工程において、前記布帛の面積あたりの前記処理剤の付与量(T)を、5.0mg/cm~48mg/cmとする、
請求項1~のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、前記処理剤付与工程で付与した処理剤の乾燥させる乾燥工程を含み、
前記処理剤付与工程、前記画像印刷工程及び前記乾燥工程を、この順序で実施し、
前記処理剤付与工程において、前記布帛の面積あたりの前記処理剤の付与量(T)を、5.0mg/cm~34mg/cmとする、
請求項1~のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、前記処理剤付与工程で付与した処理剤の乾燥させる乾燥工程を含み、
前記乾燥工程において、乾燥温度が100℃~250℃である、請求項1~11のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、前記処理剤付与工程で付与した処理剤の乾燥させる乾燥工程を含み、
前記乾燥工程において、前記処理剤付与工程で付与した処理剤の重量を、付与時における前記処理剤の付与量の50%以下まで減少させる、請求項1~12のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項14】
前記乾燥工程において、乾燥温度が100℃~250℃である、請求項10又は11記載の画像形成方法。
【請求項15】
前記乾燥工程において、前記処理剤付与工程で付与した処理剤の重量を、付与時における前記処理剤の付与量の50%以下まで減少させる、請求項1011、又は14のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項16】
前記乾燥工程において、前記処理剤付与工程で付与した処理剤の重量を、付与時の前記処理剤の付与量の30%以下まで減少させる、請求項1215のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項17】
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、前記布帛を水で洗浄する洗浄工程を含み、
前記処理剤付与工程、前記乾燥工程、前記画像印刷工程及び前記洗浄工程を、この順序で実施する、
請求項1016のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の画像形成方法に用いるインクジェット記録装置であって、
インクセット収容部と、インク吐出手段と、処理剤付与手段と、を含み、
前記インクセット収容部に、前記水性インクと、前記処理剤と、が収容され、
前記水性インクが、前記インク吐出手段によって前記記録媒体に吐出され、
前記処理剤を、前記処理剤付与手段によって前記記録媒体に付与可能である、
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙媒体に対して印刷を実行するための紙媒体印刷モードと、布地媒体に対して印刷を実行するための捺染印刷モードと、を有し、紙媒体と布地媒体との双方に対して印刷が可能な印刷装置が各種提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-168147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的に、布帛は、水洗浄される。このため、布帛への印刷物は、水に対する堅牢性に優れることが求められる。
【0005】
そこで、本発明は、布帛への印刷物において、水に対する堅牢性を向上可能であり、且つ、記録用紙にも画像を形成可能な画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の画像形成方法は、
水性インクを用いて、布帛及び記録用紙を含む記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、
前記記録媒体に前記水性インクをインクジェット方式により吐出して画像を印刷する画像印刷工程を含み、
前記画像印刷工程において、前記水性インクのうち有彩色インクは、前記記録媒体の種類によらず同一のものを用い、
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、
前記記録媒体に処理剤を付与する処理剤付与工程を含み、
前記水性インクは、前記処理剤との接触で凝集又は増粘する水性インクである、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の画像形成方法は、布帛への印刷物において、水に対する堅牢性を向上可能であり、且つ、記録用紙にも画像を形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明のインクジェット記録装置の一例の構成を示す概略斜視図である。
図2図2は、本発明のインクジェット記録装置の一例の構成を示す模式図である。
図3図3(a)及び(b)は、本発明の画像形成方法における処理剤の付与例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[画像形成方法]
本発明の画像形成方法について説明する。本発明の画像形成方法は、水性インクを用いて、布帛及び記録用紙を含む記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、画像印刷工程を含む。前記布帛は、編物及び織物の双方を含む。前記布帛の材質は、天然繊維であっても、合成繊維であってもよい。前記天然繊維としては、例えば、綿、絹等があげられる。前記合成繊維としては、例えば、ウレタン、アクリル、ポリエステル、ナイロン等があげられる。
【0010】
画像印刷工程は、前記記録媒体に前記水性インクをインクジェット方式により吐出して画像を印刷する工程である。
【0011】
前記水性インクは、例えば、着色剤と、水と、を含む。
【0012】
前記着色剤は、例えば、アニオン性着色剤を含む。前記アニオン性着色剤は、顔料及び染料のいずれであってもよい。また、前記アニオン性着色剤として、顔料及び染料を混合して用いてもよい。
【0013】
前記アニオン性着色剤として用い得る顔料としては、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、無機顔料及び有機顔料等があげられる。前記カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等があげられる。前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料及びカーボンブラック系無機顔料等をあげることができる。前記有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等のレーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;等があげられる。また、その他の顔料であっても水相に分散可能なものであれば使用できる。これらの顔料の具体例としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、6及び7;C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、15、16、17、55、73、74、75、78、83、93、94、95、97、98、114、128、129、138、150、151、154、180、185及び194;C.I.ピグメントオレンジ31及び43;C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、12、15、16、48、48:1、53:1、57、57:1、112、122、123、139、144、146、149、150、166、168、175、176、177、178、184、185、190、202、221、222、224及び238;C.I.ピグメントバイオレット19及び196;C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、22及び60;C.I.ピグメントグリーン7及び36;及びこれらの固溶体等もあげられる。前記顔料は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
前記アニオン性着色剤として用い得る顔料としては、自己分散型顔料もあげられる。前記自己分散型顔料は、例えば、顔料粒子にカルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性官能基及びそれらの塩の少なくとも一種が、直接又は他の基を介して化学結合により導入されることによって、分散剤を使用しなくても水に分散可能なものである。前記自己分散型顔料は、例えば、特開平8-3498号公報、特表2000-513396号公報、特表2008-524400号公報、特表2009-515007号公報、特表2011-515535号公報等に記載の方法によって顔料が処理されたものを用いることができる。前記自己分散型顔料の原料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。また、前記処理を行うのに適した顔料としては、例えば、三菱化学(株)製の「MA8」、「MA100」及び「#2650」、デグサ社製の「カーボンブラックFW200」等のカーボンブラックがあげられる。前記自己分散型顔料は、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、キャボット・コーポレーション社製の「CAB-O-JET(登録商標)200」、「CAB-O-JET(登録商標)250C」、「CAB-O-JET(登録商標)260M」、「CAB-O-JET(登録商標)270Y」、「CAB-O-JET(登録商標)300」、「CAB-O-JET(登録商標)400」、「CAB-O-JET(登録商標)450C」、「CAB-O-JET(登録商標)465M」及び「CAB-O-JET(登録商標)470Y」;オリエント化学工業(株)製の「BONJET(登録商標)BLACK CW-2」及び「BONJET(登録商標)BLACK CW-3」;東洋インキ製造(株)製の「LIOJET(登録商標)WD BLACK 002C」;等があげられる。
【0015】
前記アニオン性着色剤として用い得る染料としては、特に限定されず、例えば、直接染料、酸性染料、反応性染料、食用染料等があげられる。
【0016】
前記直接染料は、特に限定されず、例えば、C.I.ダイレクトブラック、C.I.ダイレクトブルー、C.I.ダイレクトレッド、C.I.ダイレクトイエロー、C.I.ダイレクトオレンジ、C.I.ダイレクトバイオレット、C.I.ダイレクトブラウン、C.I.ダイレクトグリーン等があげられる。前記C.I.ダイレクトブラックとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラック17、19、22、31、32、51、62、71、74、108、112、113、146、154、168及び195等があげられる。前記C.I.ダイレクトブルーとしては、例えば、C.I.ダイレクトブルー1、6、15、22、25、41、71、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199及び226等があげられる。前記C.I.ダイレクトレッドとしては、例えば、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、17、20、23、24、28、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229及び230等があげられる。前記C.I.ダイレクトイエローとしては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー8、11、12、24、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132、142及び173等があげられる。前記C.I.ダイレクトオレンジとしては、例えば、C.I.ダイレクトオレンジ34、39、44、46及び60等があげられる。前記C.I.ダイレクトバイオレットとしては、例えば、C.I.ダイレクトバイオレット47及び48等があげられる。前記C.I.ダイレクトブラウンとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラウン109等があげられる。前記C.I.ダイレクトグリーンとしては、例えば、C.I.ダイレクトグリーン59等があげられる。
【0017】
前記酸性染料は、特に限定されず、例えば、C.I.アシッドブラック、C.I.アシッドブルー、C.I.アシッドレッド、C.I.アシッドイエロー、C.I.アシッドオレンジ、C.I.アシッドバイオレット等があげられる。前記C.I.アシッドブラックとしては、例えば、C.I.アシッドブラック2、7、24、26、31、48、51、52、63、110、112、115、118及び156等があげられる。前記C.I.アシッドブルーとしては、例えば、C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、93、100、102、104、117、120、127、138、158、161、167、220及び234等があげられる。前記C.I.アシッドレッドとしては、例えば、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、80、83、85、87、89、92、94、106、114、115、133、134、145、158、180、198、249、256、265、289、315及び317等があげられる。前記C.I.アシッドイエローとしては、例えば、C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、61、71、76、98及び99等があげられる。前記C.I.アシッドオレンジとしては、例えば、C.I.アシッドオレンジ7及び19等があげられる。前記C.I.アシッドバイオレットとしては、例えば、C.I.アシッドバイオレット49等があげられる。
【0018】
前記反応性染料は、特に限定されず、例えば、C.I.リィアクティブブルー、C.I.リィアクティブレッド、C.I.リィアクティブイエロー等があげられる。前記C.I.リィアクティブブルーとしては、例えば、C.I.リィアクティブブルー4、5、7、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44及び100等があげられる。前記C.I.リィアクティブレッドとしては、例えば、C.I.リィアクティブレッド7、12、13、15、17、20、23、24、31、42、45、46及び59等があげられる。前記C.I.リィアクティブイエローとしては、例えば、C.I.リィアクティブイエロー2、3、17、25、37及び42等があげられる。
【0019】
前記食用染料は、特に限定されず、例えば、C.I.フードブラック、C.I.フードレッド、C.I.フードイエロー等があげられる。前記C.I.フードブラックとしては、例えば、C.I.フードブラック1及び2等があげられる。前記C.I.フードレッドとしては、例えば、C.I.フードレッド87、92及び94等があげられる。前記C.I.フードイエローとしては、例えば、C.I.フードイエロー3等があげられる。
【0020】
前記水性インク全量における前記着色剤の配合量は、例えば、0.1重量%~20重量%、1重量%~15重量%、2重量%~10重量%である。なお、前記着色剤が前記顔料の場合、前記着色剤の配合量は、例えば、顔料固形分量である。
【0021】
前記水性インクに含まれる前記水は、イオン交換水又は純水であることが好ましい。前記水性インク全量における前記水の配合量は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
【0022】
前記水性インクは、さらに、水溶性有機溶剤を含んでもよい。前記水性インクに含まれる前記水溶性有機溶剤としては、例えば、インクジェットヘッドのノズル先端部における水性インクの乾燥を防止する湿潤剤及び記録媒体上での乾燥速度を調整する浸透剤があげられる。
【0023】
前記湿潤剤は、特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトン等のケトン;ジアセトンアルコール等のケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;ポリアルキレングリコール等のポリエーテル;アルキレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;2-ピロリドン;N-メチル-2-ピロリドン;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;等があげられる。前記ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等があげられる。前記アルキレングリコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等があげられる。これらの湿潤剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中で、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。
【0024】
前記水性インク全量における前記湿潤剤の配合量は、例えば、0重量%~95重量%、5重量%~80重量%、5重量%~50重量%である。
【0025】
前記浸透剤は、例えば、グリコールエーテルがあげられる。前記グリコールエーテルは、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコール-n-ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール-n-プロピルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコール-n-プロピルエーテル及びトリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル等があげられる。前記浸透剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
前記水性インク全量における前記浸透剤の配合量は、例えば、0重量%~20重量%、0重量%~15重量%、1重量%~4重量%である。
【0027】
前記水性インクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防黴剤等があげられる。前記粘度調整剤は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等があげられる。
【0028】
前記水性インクは、例えば、前記着色剤及び前記水と、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で均一に混合し、フィルタ等で不溶解物を除去することにより調製できる。
【0029】
前記画像印刷工程は、例えば、図1に示す本発明のインクジェット記録装置を用いて実施可能である。図示のとおり、このインクジェット記録装置1は、4つのインクカートリッジ2と、インク吐出手段(インクジェットヘッド)3と、ヘッドユニット4と、キャリッジ5と、駆動ユニット6と、プラテンローラ7と、パージ装置8と、を主要な構成要素として含む。なお、図1には示していないが、このインクジェット記録装置1は、さらに、適宜の位置に、後述の処理剤付与手段、制御手段及び乾燥手段を含んでもよい。
【0030】
4つのインクカートリッジ2は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の水性インクを、それぞれ1色ずつ含む。例えば、前記4色の水性インクのうちの少なくとも一つが、本発明の画像形成方法に用いられる水性インクである。本例では、4つのインクカートリッジ2のセットを示したが、これに代えて、イエローインク収納部、マゼンタインク収納部、シアンインク収納部及びブラックインク収納部を形成するようにその内部が間仕切りされた一体型のインクカートリッジを用いてもよい。前記インクカートリッジの本体としては、例えば、従来公知のものを使用できる。
【0031】
ヘッドユニット4に設置されたインクジェットヘッド3は、記録媒体(例えば、布帛F)に記録(画像印刷)を行う。なお、前記記録媒体は、記録用紙等の布帛F以外の記録媒体であってもよい。キャリッジ5には、4つのインクカートリッジ2及びヘッドユニット4が搭載される。駆動ユニット6は、キャリッジ5を直線方向に往復移動させる。駆動ユニット6としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008-246821号公報参照)。プラテンローラ7は、キャリッジ5の往復方向に延び、インクジェットヘッド3と対向して配置されている。
【0032】
パージ装置8は、インクジェットヘッド3の内部に溜まる気泡等を含んだ不良インクを吸引する。パージ装置8としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008-246821号公報参照)。
【0033】
パージ装置8のプラテンローラ7側には、パージ装置8に隣接してワイパ部材20が配設されている。ワイパ部材20は、へら状に形成されており、キャリッジ5の移動に伴って、インクジェットヘッド3のノズル形成面を拭うものである。図1において、キャップ18は、水性インクの乾燥を防止するため、記録(画像印刷)が終了するとリセット位置に戻されるインクジェットヘッド3の複数のノズルを覆うものである。
【0034】
本例のインクジェット記録装置1においては、4つのインクカートリッジ2は、ヘッドユニット4と共に、1つのキャリッジ5に搭載されている。ただし、本発明は、これに限定されない。インクジェット記録装置1において、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジは、ヘッドユニット4とは別のキャリッジに搭載されていてもよい。また、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジは、キャリッジ5には搭載されず、インクジェット記録装置1内に配置、固定されていてもよい。これらの態様においては、例えば、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジと、キャリッジ5に搭載されたヘッドユニット4とが、チューブ等により連結され、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジからヘッドユニット4に前記水性インクが供給される。また、これらの態様においては、4つのインクカートリッジ2に代えて、ボトル形状の4つのインクボトルを用いてもよい。この場合、前記インクボトルには、外部から内部にインクを注入するための注入口が設けられていることが好ましい。
【0035】
このインクジェット記録装置1を用いた画像印刷は、例えば、つぎのようにして実施される。まず、記録媒体(例えば、布帛等)Fが、インクジェット記録装置1の側方又は下方に設けられた供給トレイ(図示せず)から供給される。記録媒体Fは、インクジェットヘッド3と、プラテンローラ7との間に導入される。導入された記録媒体Fに、インクジェットヘッド3から吐出される水性インクにより所定の記録(画像印刷)がされる。このとき、前記水性インクのうち有彩色インクは、記録媒体Fの種類によらず同一のものを用いる。前記水性インクのうち無彩色インクは、例えば、布帛Fと、記録用紙等の布帛F以外の記録媒体とで、同一のものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。記録(画像印刷)後の記録媒体Fは、インクジェット記録装置1から排出される。図1においては、記録媒体Fの供給機構及び排出機構の図示を省略している。
【0036】
図1に示す装置では、シリアル型インクジェットヘッドを採用するが、本発明は、これに限定されない。前記インクジェット記録装置は、ライン型インクジェットヘッドを採用する装置であってもよい。
【0037】
本発明の画像形成方法は、前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、処理剤付与工程を含む。なお、本発明の画像形成方法において、前記記録媒体が、例えば、前記記録用紙等の前記布帛以外の記録媒体である場合には、前記処理剤付与工程の実施は、任意であり、実施してもよいし、実施しなくてもよい。例えば、本発明の画像形成方法は、前記記録媒体が、前記布帛以外の記録媒体であるときは、前記画像印刷工程のみを実施する方法であってもよい。
【0038】
前記処理剤付与工程は、前記布帛に処理剤を付与する工程である。前記記録媒体が、前記布帛以外の記録媒体である場合において、本工程を実施する場合には、本工程において、前記布帛に代えて、前記布帛以外の記録媒体に処理剤を付与する。前記処理剤付与工程の実施時期に制限はなく、例えば、前記記録媒体への前記水性インクの吐出に先立ち、前記処理剤を付与してもよいし、前記記録媒体に前記水性インクを先に吐出した後、前記処理剤を付与してもよいし、前記記録媒体への前記処理剤の付与と前記水性インクの吐出とを、同時に行ってもよい。
【0039】
前記処理剤は、例えば、カチオン性物質を含む。
【0040】
前記カチオン性物質は、特に限定されず、例えば、カチオン性ポリマー、カチオン性無機微粒子、カチオン性界面活性剤、多価金属塩、多価金属イオン等があげられる。これらの中でも、カチオン性ポリマー、カチオン性無機微粒子、カチオン性界面活性剤が好ましく、カチオン性ポリマー、カチオン性無機微粒子がより好ましい。
【0041】
前記カチオン性ポリマーとしては、例えば、ウレタン構造を含むカチオン性ポリマー、ポリアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン-エピクロルヒドリン反応物、ポリアミド-ポリアミン樹脂、ポリアミド-エピクロルヒドリン樹脂、カチオンデンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアミジン、カチオンエポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルホルムアミド、アミノアセタール化ポリビニルアルコール、ポリビニルベンジルオニウム、ジシアンジアミド・ホルマリン重縮合物、ジシアンジアミド・ジエチルトリアミン重縮合物、エピクロルヒドリン・ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド・SO共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、及びこれらの誘導体等があげられる。また、前記カチオン性ポリマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル-メタクリレート(DM)、メタクリロイロキシエチル-トリメチルアンモニウム-クロライド(DMC)、メタクリロイロキシエチル-ベンジルジメチル-アンモニウムクロライド(DMBC)、ジメチルアミノエチル-アクリレート(DA)、アクリロイロキシエチル-トリメチルアンモニウム-クロライド(DMQ)、アクリロイロキシエチル-ベンジルジメチル-アンモニウムクロライド(DABC)、ジメチルアミノプロピル-アクリルアミド(DMAPAA)、アクリルアミドプロピル-トリメチルアンモニウム-クロライド(DMAPAAQ)等の水溶性モノマーの少なくとも一つからなる単一モノマー重合体又は複数種のモノマーの共重合体等もあげられる。これらの中でも、ウレタン構造を含むカチオン性ポリマー、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンが好ましく、ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーがより好ましい。前記カチオン性ポリマーの最低造膜温度は、25℃以下であることが好ましい。
【0042】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。
【0043】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーの重量平均分子量は、例えば、1000~500000、3000~500000である。なお、前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、後述のエマルションである場合には、前記重量平均分子量とは、前記エマルションの固形分の重量平均分子量である。
【0044】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーにおいて、前記ウレタン構造部分の占める割合が、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。なお、前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、後述のエマルションである場合には、前記ウレタン構造部分の占める割合とは、前記エマルションの固形分に占める前記ウレタン構造部分の割合である。
【0045】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーは、前記ウレタン構造以外の部分に、アクリル構造及びスチレン構造の少なくとも一方を含むことが好ましく、アクリル構造を含むことがより好ましい。
【0046】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーは、例えば、エマルション(ウレタンエマルション)であってもよい。
【0047】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーは、例えば、エマルションであり、且つ、前記ウレタン構造以外の部分に、アクリル構造及びスチレン構造の少なくとも一方を含むことが好ましく、アクリル構造を含むこと(ウレタンアクリルエマルションであること)がより好ましい。前記ウレタンアクリルエマルションの市販品としては、例えば、ジャパンコーティングレジン(株)製の「モビニール(登録商標)6910」;第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス(登録商標)620」、「スーパーフレックス(登録商標)650」;等があげられる。
【0048】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーにおいて、前記ウレタン構造は、脂肪族イソシアネートと、ポリエーテル系ポリオール又はポリエステル系ポリオールと、から得られたものであることが好ましい。
【0049】
前記カチオン性無機微粒子は、特に限定されず、例えば、カチオン性シリカ、カチオン性アルミナ、カチオン性ジルコニア、カチオン性セリア等があげられ、これらの中でも、カチオン性シリカが好ましい。前記カチオン性シリカは、アルミナで被覆されたものであってもよい。
【0050】
前記カチオン性無機微粒子の平均粒子径は、例えば、5nm~80nm、10nm~50nm、10nm~30nmである。前記平均粒子径は、例えば、BET法により求めることができる。前記カチオン性無機微粒子の平均粒子径が10nm~30nmであれば、例えば、ポリエステル製布帛への画像形成時の水洗後の色落ちをより抑制可能である。
【0051】
前記カチオン性無機微粒子は、複数の粒子が連結した形状を有する、いわゆるパールネックレス状(数珠状)のカチオン性無機微粒子であってもよい。前記パールネックレス状のカチオン性無機微粒子の平均粒子径は、例えば、80nm~200nm、110nm~170nmである。前記パールネックレス状のカチオン性無機微粒子の平均粒子径は、例えば、動的光散乱法により求めることができる。前記パールネックレス状のカチオン性無機微粒子の単粒子あたりの平均粒子径は、特に制限されず、例えば、10nm~30nmである。
【0052】
前記カチオン性無機微粒子は、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、日産化学工業(株)製の「ST-AK」(アルミナ被覆カチオン性シリカ、平均粒子径10nm~15nm(BET法))、「ST-AK-N」(アルミナ被覆カチオン性シリカ、平均粒子径10nm~15nm(BET法))、「ST-AK-PS-S」(パールネックレス状アルミナ被覆カチオン性シリカ、平均粒子径110nm~170nm(動的光散乱法)、単粒子あたりの平均粒子径10nm~30nm)、「AS-520」(カチオン性アルミナ、平均粒子径15nm~30nm(BET法))、「ST-AK-L」(アルミナ被覆カチオン性シリカ、平均粒子径40nm~50nm(BET法))、「ST-AK-YL」(アルミナ被覆カチオン性シリカ、平均粒子径50nm~80nm(BET法))、「ST-AK-XS」(アルミナ被覆カチオン性シリカ、平均粒子径4nm~6nm(BET法))、「ST-AK-A」(アルミナ被覆カチオン性シリカ、平均粒子径10nm~15nm(BET法))、「AS-100」(カチオン性アルミナ、平均粒子径6nm~10nm(BET法))、「AS-200」(カチオン性アルミナ、平均粒子径7nm~15nm(BET法))、「AS-550」(カチオン性アルミナ、平均粒子径25nm~40nm(BET法))、「ZR-30AL」(カチオン性ジルコニア、平均粒子径5nm~10nm(BET法))、「CE-20A」(カチオン性セリア、平均粒子径8nm~12nm(BET法))等があげられる。
【0053】
前記カチオン性界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩、第4級アンモニウムイオン、第1級、第2級及び第3級アミン塩型化合物、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、脂肪族アミン塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、オニウム塩等があげられる。前記第4級アンモニウム塩及び前記第4級アンモニウムイオン以外の前記カチオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン、ヤシアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミン等があげられる。これらの中でも、第4級アンモニウム塩、第4級アンモニウムイオンが好ましい。
【0054】
前記第4級アンモニウム塩としては、例えば、式(A)で表されるカチオン性化合物等があげられる。
【化1】
式(A)において、
~Rは、それぞれ、炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R~Rは互いに同一でも異なっていてもよく、
は、アニオンである。
【0055】
式(A)において、R~Rは、それぞれ、炭素原子数1~5のアルキル基であってもよい。前記炭素原子数1~5のアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、3-ペンチル基、tert-ペンチル基等があげられる。前記炭素原子数1~5のアルキル基は、ハロゲン原子等の置換基を有してもよい。式(A)において、R~Rは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0056】
式(A)において、Rは、炭素原子数6~30のアルキル基であってもよい。前記炭素原子数6~30のアルキル基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基(ドデシル基)、テトラデシル基、セチル基(ヘキサデシル基)等があげられる。前記炭素原子数6~30のアルキル基は、ハロゲン原子等の置換基を有してもよく、直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0057】
式(A)において、Xは、アニオンである。前記アニオンは、いかなるものであってもよいが、例えば、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、ジカルボン酸(例えば、リンゴ酸、イタコン酸等)イオン、トリカルボン酸(例えば、クエン酸等)イオン、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン等があげられる。Xがジカルボン酸イオン又はトリカルボン酸イオンである場合には、ジカルボン酸イオン又はトリカルボン酸イオンが、2つ又は3つの第4級アンモニウムイオン(式(A)からXを除いたカチオン)のカウンターイオンとなる。
【0058】
式(A)で表されるカチオン性化合物としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム硫酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルアルキルアンモニウムクロリド等があげられる。式(A)で表されるカチオン性化合物は、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製の「カチオーゲン(登録商標)TML」、「カチオーゲン(登録商標)TMP」及び「カチオーゲン(登録商標)ES-O」;東京化成工業(株)製の「塩化ベンザルコニウム」;等があげられる。
【0059】
前記第4級アンモニウムイオンとしては、例えば、式(A)からXを除いたカチオン等があげられる。
【0060】
前記多価金属塩としては、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、シュウ酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等があげられる。これらの中でも、カルシウム、マグネシウムの多価金属塩が好ましい。また、前述の水性インクに含まれる着色剤の凝集度合いの観点から、2価の金属塩が好ましい。
【0061】
前記多価金属イオンとしては、例えば、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等があげられる。これらの中でも、カルシウムイオン、マグネシウムイオンが好ましい。また、前述の水性インクに含まれる着色剤の凝集度合いの観点から、2価の金属イオンが好ましい。
【0062】
前記カチオン性物質は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記処理剤全量における前記カチオン性物質の配合量は、例えば、0.5重量%~20重量%、1重量%~20重量%、1重量%~15重量%である。
【0063】
前記処理剤は、さらに、水を含んでもよい。前記処理剤に含まれる前記水は、イオン交換水又は純水であることが好ましい。前記処理剤全量における前記水の配合量は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
【0064】
前記処理剤は、さらに、前述の水性インクにおいて例示したのと同様の水溶性有機溶剤及び添加剤を含んでもよい。
【0065】
前記処理剤は、例えば、前記カチオン性物質と、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で均一に混合することにより調製できる。
【0066】
前記処理剤付与工程において、前記処理剤の付与は、例えば、スプレー方式、スタンプ塗布、刷毛塗り、ローラ塗布、ディッピング(前記処理剤への浸漬)、インクジェット方式等により実施できる。前記処理剤の付与は、例えば、本発明のインクジェット記録装置が備えた、スプレー手段等の処理剤付与手段を用いて実施してもよいし、インクジェット記録装置外部で実施してもよい。また、前記処理剤の付与を前記インクジェット方式により実施する場合には、前記画像印刷工程におけるインクジェットヘッド(インク吐出手段)が、前記処理剤付与手段を兼ねてもよい。
【0067】
前記処理剤の付与は、前記記録媒体の記録面(画像形成面)の全面でもよく、一部でもよい。一部に付与する場合、前記記録媒体の記録面(画像形成面)の少なくとも水性インクによる画像印刷部分が付与部となる。一部に付与する場合、付与部の大きさは、画像印刷部分よりも大きい方がよい。例えば、図3(a)に示すように、記録媒体Fに対し、文字(X)の画像を印刷する場合は、前記文字の線幅よりも大きな線幅で付与部30を形成するように前記処理剤を付与することが好ましい。また、図3(b)に示すように、記録媒体Fに対し、図柄の画像を印刷する場合は、前記図柄よりも大きな付与部40を形成するように前記処理剤を付与することが好ましい。
【0068】
本発明の画像形成方法において、前記水性インクは、前記処理剤との接触で凝集又は増粘する水性インクである。前記凝集又は増粘は、例えば、前記水性インクに含まれる前記アニオン性着色剤が、前記処理剤に含まれる前記カチオン性物質に電気的に引きつけられることで生じるものであってもよい。
【0069】
本発明の画像形成方法では、前記処理剤付与工程において、前記記録媒体が前記記録用紙の場合の面積あたりの前記処理剤の付与量(T)と、前記記録媒体が前記布帛の場合の面積あたりの前記処理剤の付与量(T)とを、T<Tとすることが好ましい。前記処理剤の付与量は、例えば、本発明のインクジェット記録装置が備えた、制御手段により制御されてもよい。
【0070】
本発明の画像形成方法では、前記処理剤付与工程において、前記Tを、0mg/cm(0mg/inch)~1.1mg/cm(7.1mg/inch)とし、前記Tを、5.0mg/cm(32mg/inch)~48mg/cm(310mg/inch)とすることが好ましい。
【0071】
本発明の画像形成方法では、前記画像印刷工程及び前記処理剤付与工程において、前記水性インクの面積あたりの吐出量(I)と、前記処理剤の面積あたりの付与量(T)とを、前記記録媒体が前記記録用紙の場合、T/I=0~0.92、且つ、T+I<2.3mg/cm(15mg/inch)とし、前記記録媒体が前記布帛の場合、T/I>3.1とすることが好ましい。
【0072】
本発明の画像形成方法は、前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、前記処理剤付与工程で付与した処理剤を乾燥させる乾燥工程を含んでもよい。前記乾燥工程は、例えば、前記画像印刷工程前に実施してもよいし、前記画像印刷工程後に実施してもよい。前記乾燥工程を、前記画像印刷工程前に実施する場合には、前記処理剤付与工程において、前記Tを、5.0mg/cm(32mg/inch)~48mg/cm(310mg/inch)とすることが好ましい。前記乾燥工程を、前記画像印刷工程後に実施する場合には、前記処理剤付与工程において、前記Tを、5.0mg/cm(32mg/inch)~34mg/cm(220mg/inch)とすることが好ましい。なお、本発明の画像形成方法において、前記乾燥工程の実施は、任意であり、前記記録媒体が前記布帛の場合においても、前記乾燥工程を実施しなくてもよい。
【0073】
前記乾燥は、例えば、風乾(自然乾燥)であってもよいし、市販のアイロン、ホットプレス機、ドライヤー、オーブン、ベルトコンベアオーブン等の乾燥手段を用いた乾燥であってもよい。前記乾燥の温度は、例えば、100℃~250℃であり、前記乾燥の時間は、例えば、30秒~120秒である。前記乾燥温度は、例えば、乾燥雰囲気の温度であってもよいし、前記乾燥手段の設定温度でもよい。
【0074】
図2に示すように、前記乾燥工程は、例えば、図1に示す本発明のインクジェット記録装置1が備えた、乾燥手段23を用いて実施してもよい。図2において、図1と同一部分には同一符号を付している。なお、図2において、符号21及び符号24は、それぞれ、図1では図示を省略した供給トレイ及び排出トレイを示し、符号3Aは、インクジェットヘッド3の下面に形成された複数のノズルを示す。また、前記乾燥工程は、例えば、インクジェット記録装置外部で実施してもよい。
【0075】
前記乾燥工程においては、例えば、前記付与した処理剤の重量を、付与時における前記処理剤の付与量の50%以下まで減少させてもよく、30%以下まで減少させてもよい。前記乾燥工程は、例えば、前記処理剤中の溶剤(例えば、前記水、前記水溶性有機溶剤等)を揮発させる溶剤揮発工程、前記処理剤の重量を減少させる重量減少工程と言うこともできる。
【0076】
本発明の画像形成方法は、前記記録媒体が前記布帛の場合、前記布帛を水で洗浄する洗浄工程を含み、前記処理剤付与工程、前記乾燥工程、前記画像印刷工程及び前記洗浄工程を、この順序で実施してもよい。
【実施例
【0077】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例により限定及び制限されない。
【0078】
〔処理剤の調製〕
処理剤組成(表1)の各成分を、均一に混合して、9種の処理剤1~8及びc1を得た。
【0079】
【表1】
【0080】
〔水性顔料インクBk及びMの調製〕
水性インク組成(表2)における、CAB-O-JET(登録商標)200又は顔料分散液を除く成分を、均一に混合しインク溶媒を得た。つぎに、水に分散させたCAB-O-JET(登録商標)200又は前記顔料分散液に、前記インク溶媒を加え、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製のセルロールアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)でろ過することで、表2に示すインクジェット記録用水性顔料インクBk及びMを得た。
【0081】
〔水性染料インクY、C1及びC1cの調製〕
水性インク組成(表2)の各成分を、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)タイプメンブレンフィルタ(孔径0.20μm)を用いてろ過することで、表2に示すインクジェット記録用水性染料インクY、C1及びC1cを得た。
【0082】
【表2】
【0083】
[実施例1]
平面サイズが15cm×5cmの綿(シーチング)の記録面(画像形成面)に、表1に示す処理剤1を、スプレー方式により均一に付与した。このとき、処理剤1の面積あたりの付与量(T)は、18mg/cmとした。ついで、アイロンを用いて、200℃、120秒の条件で、付与した処理剤を乾燥させた。つぎに、ブラザー工業(株)製のインクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP-J4225Nを使用して、表2に示す水性染料インクYを用いて、前記綿の記録面(画像形成面)に画像を印刷した。このとき、水性染料インクYの面積あたりの吐出量(I)は、0.7mg/cmとした。このようにして、評価サンプルを作製した。
【0084】
[実施例2]
前記綿に代えて、同じ平面サイズのポリエステルのツイルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、評価サンプルを作製した。
【0085】
[実施例3~5]
処理剤1の面積あたりの付与量(T)、及び、水性染料インクYの面積あたりの吐出量(I)を、表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、評価サンプルを作製した。
【0086】
[実施例6~11]
処理剤1に代えて、表1に示す処理剤2~7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、評価サンプルを作製した。
【0087】
[実施例12]
前記綿に代えて、同じ平面サイズのポリエステルのツイルを用いたこと以外は、実施例11と同様にして、評価サンプルを作製した。
【0088】
[実施例13]
処理剤1に代えて、表1に示す処理剤8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、評価サンプルを作製した。
【0089】
[実施例14~16]
水性染料インクYに代えて、水性顔料インクBk、水性顔料インクM又は水性染料インクC1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、評価サンプルを作製した。
【0090】
[比較例1]
処理剤1に代えて、表1に示す処理剤c1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、評価サンプルを作製した。
【0091】
[比較例2]
前記綿に代えて、同じ平面サイズのポリエステルのツイルを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、評価サンプルを作製した。
【0092】
[比較例3]
水性染料インクYに代えて、水性染料インクC1cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、評価サンプルを作製した。
【0093】
[比較例4]
処理剤の付与を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、評価サンプルを作製した。
【0094】
実施例1~16及び比較例1~4について、耐水性評価を、下記方法により実施した。
【0095】
(耐水性評価方法)
評価サンプルを、水の中で前記評価サンプルの一部が他の部分と擦れることがない程度に振りながら5分間水洗した。水洗後、乾燥して得られた前記評価サンプルの光学濃度(OD値)を、X-Rite社製の分光測色計SpectroEye(光源:D50、視野角:2°、ANSI-T)により測定し、水洗前後での光学濃度(OD値)の差(ΔOD=水洗前のOD値-水洗後のOD値)を算出した。前記ΔODが小さい程、耐水性に優れると判断できる。
【0096】
実施例1~16及び比較例1~4で用いた処理剤及び水性インクの種類、処理剤の付与量(T)、水性インクの吐出量(I)、T/I、並びに評価結果を、表3及び表4に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
表3に示すとおり、実施例1~16では、耐水性の評価結果が良好であった。
【0100】
処理剤の付与量(T)を18mg/cm又は48mg/cmとし、且つ、T/Iを26又は48とした実施例1及び3では、処理剤の付与量(T)を5mg/cmとし、且つ、T/Iを17又は3.1とした以外は同条件である実施例4及び5と比べて、耐水性の評価結果が、さらに優れていた。
【0101】
カチオン性物質の配合量が10重量%以上である実施例1及び7では、カチオン性物質の配合量が1.5重量%である以外は同条件である実施例6と比べて、耐水性の評価結果が、さらに優れていた。
【0102】
カチオン性物質としてウレタンアクリルエマルション又はカチオン性無機微粒子を用いた実施例1、8、10及び11では、カチオン性物質として第4級アンモニウム塩を用いた以外は同条件である実施例13と比べて、耐水性の評価結果がさらに優れていた。
【0103】
一方、表4に示すとおり、カチオン性物質に代えて、アニオン性物質を用いた比較例1及び2では、耐水性の評価結果が悪かった。また、水性インクの着色剤としてカチオン性着色剤を用いたことで、水性インクと処理剤とが接触しても凝集又は増粘を生じなかった比較例3でも、耐水性の評価結果が悪かった。さらに、処理剤を用いなかった比較例4でも、耐水性の評価結果が悪かった。
【0104】
[実施例17]
記録用紙(アスクル(株)製の「スーパーホワイト+」)の記録面(画像形成面)に、前記インクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP-J4225Nを使用して、表2に示す水性顔料インクBkを用いて、前記記録用紙の記録面(画像形成面)に画像を印刷した。このとき、水性顔料インクBkの面積あたりの吐出量(I)は、0.7mg/cmとした。このようにして、評価サンプルを作製した。
【0105】
[実施例18]
前記記録用紙の記録面(画像形成面)に、表1に示す処理剤1を、スプレー方式により均一に付与した。このとき、処理剤1の面積あたりの付与量(T)は、0.3mg/cmとした。ついで、10分の風乾(自然乾燥)で、付与した処理剤を乾燥させた。つぎに、前記インクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP-J4225Nを使用して、表2に示す水性顔料インクBkを用いて、前記記録用紙の記録面(画像形成面)に画像を印刷した。このとき、水性顔料インクBkの面積あたりの吐出量(I)は、0.7mg/cmとした。このようにして、評価サンプルを作製した。
【0106】
[実施例19]
処理剤1の面積あたりの付与量(T)を、表5に示すように変更した以外は、実施例18と同様にして、評価サンプルを作製した。
【0107】
[実施例20]
処理剤1の面積あたりの付与量(T)、及び、水性顔料インクBkの面積あたりの吐出量(I)を、表5に示すように変更した以外は、実施例18と同様にして、評価サンプルを作製した。
【0108】
実施例17~20について、(a)光学濃度(OD値)測定及び(b)カール評価を、下記方法により実施した。
【0109】
(a)光学濃度(OD値)測定
評価サンプルの光学濃度(OD値)を、前記分光測色計SpectroEye(光源:D50、視野角:2°、ANSI-T)により測定した。
【0110】
(b)カール評価
前記風乾後の前記処理剤を付与した前記記録用紙(A4サイズ(210mm×297mm))のカール(そり具合)を目視にて観察し、下記評価基準に従って評価した。
【0111】
カール評価 評価基準
AA:前記記録用紙のカール(そり)がほとんどなかった
A :前記記録用紙の端部に若干のカール(そり)が見られた
【0112】
実施例17~20で用いた処理剤及び水性インクの種類、処理剤の付与量(T)、水性インクの吐出量(I)、T/I、並びに評価結果を、表5に示す。
【0113】
【表5】
【0114】
表5に示すとおり、実施例17~20では、光学濃度(OD値)が高く、且つ、カールの評価結果が良好であった。処理剤を付与した実施例18及び19では、処理剤を付与しなかった以外は同条件である実施例17と比べて、光学濃度(OD値)がより高かった。また、処理剤の付与量が0.6mg/cm以下である実施例17~19では、処理剤の付与量が1.1mg/cmである実施例20と比べて、カールの評価結果が、さらに優れていた。
【0115】
上記の実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載し得るが、以下には限定されない。
【0116】
(付記1)
水性インクを用いて、布帛及び記録用紙を含む記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、
前記記録媒体に前記水性インクをインクジェット方式により吐出して画像を印刷する画像印刷工程を含み、
前記画像印刷工程において、前記水性インクのうち有彩色インクは、前記記録媒体の種類によらず同一のものを用い、
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、
前記布帛に処理剤を付与する処理剤付与工程を含み、
前記水性インクは、前記処理剤との接触で凝集又は増粘する水性インクである、
ことを特徴とする画像形成方法。
【0117】
(付記2)
前記処理剤付与工程において、前記記録媒体が前記記録用紙の場合の面積あたりの前記処理剤の付与量(T)と、前記記録媒体が前記布帛の場合の面積あたりの前記処理剤の付与量(T)とを、T<Tとする、付記1記載の画像形成方法。
【0118】
(付記3)
前記Tを、0mg/cm~1.1mg/cmとし、
前記Tを、5.0mg/cm~48mg/cmとする、
付記2記載の画像形成方法。
【0119】
(付記4)
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、前記処理剤付与工程で付与した処理剤を乾燥させる乾燥工程を含み、
前記処理剤付与工程、前記乾燥工程及び前記画像印刷工程を、この順序で実施し、
前記処理剤付与工程において、前記布帛の面積あたりの前記処理剤の付与量(T)を、5.0mg/cm~48mg/cmとする、
付記1~3のいずれかに記載の画像形成方法。
【0120】
(付記5)
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、前記処理剤付与工程で付与した処理剤を乾燥させる乾燥工程を含み、
前記処理剤付与工程、前記画像印刷工程及び前記乾燥工程を、この順序で実施し、
前記処理剤付与工程において、前記布帛の面積あたりの前記処理剤の付与量(T)を、5.0mg/cm~34mg/cmとする、
付記1~3のいずれかに記載の画像形成方法。
【0121】
(付記6)
前記画像印刷工程及び前記処理剤付与工程において、前記水性インクの面積あたりの吐出量(I)と、前記処理剤の面積あたりの付与量(T)とを、
前記記録媒体が前記記録用紙の場合、T/I=0~0.92、且つ、I+T<2.3mg/cmとし、
前記記録媒体が前記布帛の場合、T/I>3.1とする、
付記1~5のいずれかに記載の画像形成方法。
【0122】
(付記7)
前記処理剤が、カチオン性物質を含む、付記1~6のいずれかに記載の画像形成方法。
【0123】
(付記8)
前記処理剤全量における前記カチオン性物質の配合量が、1重量%~15重量%である、付記7記載の画像形成方法。
【0124】
(付記9)
前記カチオン性物質が、カチオン性ポリマー及びカチオン性無機微粒子の少なくとも一方を含む、付記7又は8記載の画像形成方法。
【0125】
(付記10)
前記カチオン性ポリマーが、ウレタン構造を含む、付記9記載の画像形成方法。
【0126】
(付記11)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーの重量平均分子量が、1000~500000である、付記10記載の画像形成方法。
【0127】
(付記12)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーの重量平均分子量が、3000~500000である、付記11記載の画像形成方法。
【0128】
(付記13)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーにおいて、前記ウレタン構造部分の占める割合が10%以上である、付記10~12のいずれかに記載の画像形成方法。
【0129】
(付記14)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーにおいて、前記ウレタン構造部分の占める割合が、20%以上である、付記13記載の画像形成方法。
【0130】
(付記15)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、前記ウレタン構造以外の部分に、アクリル構造及びスチレン構造の少なくとも一方を含む、付記10~14のいずれかに記載の画像形成方法。
【0131】
(付記16)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、前記ウレタン構造以外の部分に、アクリル構造を含む、付記15記載の画像形成方法。
【0132】
(付記17)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、エマルションである、付記10~16のいずれかに記載の画像形成方法。
【0133】
(付記18)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーにおいて、前記ウレタン構造が、脂肪族イソシアネートと、ポリエーテル系ポリオール又はポリエステル系ポリオールと、から得られたものである、付記10~17のいずれかに記載の画像形成方法。
【0134】
(付記19)
前記カチオン性ポリマーの最低造膜温度が、25℃以下である、付記9~18のいずれかに記載の画像形成方法。
【0135】
(付記20)
前記乾燥工程において、乾燥温度が100℃~250℃である、付記4~19のいずれかに記載の画像形成方法。
【0136】
(付記21)
前記乾燥工程において、前記処理剤付与工程で付与した処理剤の重量を、付与時における前記処理剤の付与量の50%以下まで減少させる、付記4~20のいずれかに記載の画像形成方法。
【0137】
(付記22)
前記乾燥工程において、前記処理剤付与工程で付与した処理剤の重量を、付与時における前記処理剤の付与量の30%以下まで減少させる、付記21記載の画像形成方法。
【0138】
(付記23)
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、前記布帛を水で洗浄する洗浄工程を含み、
前記処理剤付与工程、前記乾燥工程、前記画像印刷工程及び前記洗浄工程を、この順序で実施する、
付記4~22のいずれかに記載の画像形成方法。
【0139】
(付記24)
付記1~23のいずれかに記載の画像形成方法に用いるインクジェット記録装置であって、
インクセット収容部と、インク吐出手段と、処理剤付与手段と、を含み、
前記インクセット収容部に、前記水性インクと、前記処理剤と、が収容され、
前記水性インクが、前記インクジェット吐出手段によって前記記録媒体に吐出され、
前記処理剤を、前記処理剤付与手段によって前記記録媒体に付与可能である、
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【0140】
(付記25)
さらに、制御手段を含み、
前記制御手段は、前記インク吐出手段による吐出、及び、前記処理剤付与手段による付与を制御する、付記24記載のインクジェット記録装置。
【0141】
(付記26)
さらに、乾燥手段を含み、
前記乾燥手段は、前記処理剤が付与された後の前記記録媒体を乾燥する、付記24又は25記載のインクジェット記録装置。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上のように、本発明の画像形成方法は、布帛への印刷物において、水に対する堅牢性を向上可能であり、且つ、記録用紙にも画像を形成可能なものである。本発明の画像形成方法の用途は、特に限定されず、各種記録媒体への画像形成に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0143】
1 インクジェット記録装置
2 インクカートリッジ
3 インク吐出手段(インクジェットヘッド)
4 ヘッドユニット
5 キャリッジ
6 駆動ユニット
7 プラテンローラ
8 パージ装置
21 供給トレイ
23 乾燥手段
24 排出トレイ
図1
図2
図3