(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットおよび活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットによる印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/40 20140101AFI20230816BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20230816BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20230816BHJP
C09B 45/48 20060101ALI20230816BHJP
C09B 29/33 20060101ALI20230816BHJP
C09B 48/00 20060101ALI20230816BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230816BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C09D11/40
C09D11/322
C09B67/20 F
C09B45/48
C09B29/33 A
C09B48/00 Z
B41J2/01 129
B41J2/01 501
B41M5/00 120
B41M5/00 112
(21)【出願番号】P 2018183722
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】河合 康寛
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 麻彩美
(72)【発明者】
【氏名】宗 芳和
(72)【発明者】
【氏名】八木 貞幸
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/188003(WO,A1)
【文献】特開2018-79400(JP,A)
【文献】特開2015-183147(JP,A)
【文献】特開2015-67743(JP,A)
【文献】特開2008-105387(JP,A)
【文献】特開2009-67956(JP,A)
【文献】特開2012-25913(JP,A)
【文献】特開2010-229284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D11/、13/
B41J2/01
B41M5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともイエローインク、マゼンタインク、
シアンインク、ブラックインクおよびホワイトインクを有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットであって、
該各インクは、少なくとも顔料、重合性化合物を含有し、該シアンインクには1.3~2.8質量%のシアン顔料が含有され、該マゼンタインクには2.7~4.5質量%のマゼンタ顔料が含有され、該イエローインクには2.0~5.0質量%のイエロー顔料が含有され、該
ブラックインクには1.6~3.0質量%のブラック顔料が含有され、該ホワイトインクには5~15質量%のホワイト顔料が含有され、
該各顔料の量が、シアン顔料:マゼンタ顔料:イエロー顔料:
ブラック顔料:ホワイト顔料=1:1.3~2.0:1.5~2.4
:1.1~2.1:1.4~4.5(質量比)であって、
該各インクは、50℃における粘度が5~15mPa・sであり、25℃における表面張力が25~40mN/mであり、25℃における比重が1.06~1.08で
あり、
該各インクは、塩ビシートまたはターポリンの基材に適用される、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項2】
前記イエロー顔料が、アゾ骨格を有するニッケル錯体化合物またはキノキサリン骨格を有するイエロー顔料であり、前記マゼンタ顔料がキナクリドン骨格を有するマゼンタ顔料である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項3】
前記イエロー顔料が、C.I.ピグメントイエロー150、213から選択されるものであり、前記マゼンタ顔料が、C.I.ピグメントレッド122,202、C.I.ピグメントヴァイオレット19から選択されるものである請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットは、
C.I.ピグメントブラック7、35から選択されるブラック顔料を含有するブラックインクを有し、
C.I.ピグメントホワイト6、18、21から選択されるホワイト顔料を含有するホワイトインクを有する、請求項1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項5】
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットは、前記重合性化合物が、分子量1000g/mol以上のウレタンアクリレートオリゴマーを含む、請求項1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項6】
前記各インクは、顔料分散剤を含み、前記顔料分散剤の含有量は、インク組成物全質量中0.1~5質量%であり、前記顔料に対して5~80質量%の範囲にある、請求項1~5の1つに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性、画像の鮮鋭性に優れる活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター記録装置による印刷は、ノズルよりインクを噴射し、被記録材に付着せしめる方式であり、該ノズルと被記録材とが非接触状態にあるため、曲面や凹凸した不規則な形状を有する表面に対して、良好な印刷を行うことができる。このため、産業用途で広範囲にわたる利用分野が期待されている印刷方式である。
【0003】
一方、内外装建材の分野においては、近年、より高意匠性、高耐久性、低汚染性等の高機能性への要求が高まっており、多彩な模様付けが可能なインクジェット技術が注目されている。特に、長期間屋外にて使用される建築板には、熱、光、水等に対する優れた耐性(以後、単に耐候性という)が求められるため、建築板に印刷して形成されるインク層にも優れた耐候性が要求される。このような要求に応え、屋外用に適した活性エネルギー線硬化型インクジェットインクが開発されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-047152号公報
【文献】特開2014-129481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
屋外設置用印刷物においては、太陽光に対する強い耐候性が求められるが、これまでの耐候性は顔料の特性に負っていたため、強い顔料は特定の色に限られフルカラーでの印刷物としては、色バランスが崩れることによる変色が顕著であり、十分な画像鮮鋭性、耐候性とすることはできなかった。また、屋外に設置される横断幕や懸垂幕としてターポリン基材にカラーインクを印刷した印刷物が広く用いられているが、長期間屋外に曝露される場合、印刷層が部分的に剥がれ落ち、印刷物としての機能を果たさなくなることも見られた。
【0006】
本発明の目的は、画像の鮮鋭性、耐候性に優れた屋外設置用印刷物を提供することができる活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、下記によって達成された。
1. 少なくともイエローインク、マゼンタインクおよびシアンインクを有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットであって、該各インクは、少なくとも顔料、重合性化合物を含有し、該シアンインクには1.3~2.8質量%のシアン顔料が含有され、該マゼンタインクには2.7~4.5質量%のマゼンタ顔料が含有され、該イエローインクには2.0~5.0質量%のイエロー顔料が含有され、該各顔料の量が、シアン顔料:マゼンタ顔料:イエロー顔料=1:1.3~2.0:1.5~2.4(質量比)である、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセット。
2. 前記イエロー顔料が、アゾ骨格を有するニッケル錯体化合物またはキノキサリン骨格を有するイエロー顔料であり、前記マゼンタ顔料がキナクリドン骨格を有するマゼンタ顔料である前記1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセット。
3. 前記イエロー顔料が、C.I.ピグメントイエロー150、213から選択されるものであり、前記マゼンタ顔料が、C.I.ピグメントレッド122,202、C.I.ピグメントヴァイオレット19から選択されるものである前記1または2記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセット。
4. 前記1~4の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットによる印刷物の製造方法。
【0008】
本発明によれば、画像の鮮鋭性に優れ、耐候性に優れた屋外設置用印刷物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセット(以下、インクセットとも略す)>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットは、少なくともイエローインク、マゼンタインクおよびシアンインクを有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットであって、該各インクは、少なくとも顔料、重合性化合物を含有し、該シアンインクに含有されるシアン顔料、該マゼンタインクに含有されるマゼンタ顔料、該イエローインクに含有されるイエロー顔料の量が、1:1.3~2.0:1.5~2.4(質量比)であることを特徴とする。
【0010】
≪顔料≫
本発明で使用する顔料としては、無機顔料あるいは有機顔料を使用することができる。
無機顔料としては、酸化チタンや酸化鉄、あるいはコンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0011】
また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0012】
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、180、185、213等が挙げられる。
【0013】
特にアゾ骨格を有するニッケル錯体化合物またはキノキサリン骨格を有する顔料が好ましく、C.I.ピグメントイエロー150、213から選択される顔料が好ましい。
本発明のイエローインク中に含まれるイエロー顔料の含有量は、3.7~5.0質量%であることが好ましい。
【0014】
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、209、C.I.ピグメントヴァイオレット 19等が挙げられる。
【0015】
特にキナクリドン骨格を有するマゼンタ顔料が好ましく、C.I.ピグメントレッド122,202、C.I.ピグメントヴァイオレット19から選択される顔料が好ましい。
本発明のマゼンタインク中に含まれるマゼンタ顔料の含有量は、3.5~4.5質量%が好ましい。
【0016】
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、60、16、22が挙げられる。特にC.I.ピグメントブルー15:3、15:4が好ましい。
本発明のシアンインク中に含まれるシアン顔料の含有量は、1.3~2.8質量%が好ましい。
【0017】
その他のインクとしては、ブラック、ホワイトのインクを使用することができる。
ブラックインクに使用される顔料としては、カラーインデックスナンバーがPigment Blackに分類される少なくとも1種の黒色顔料であり、例えば、C.I.ピグメントブラック7、11、34、35等が挙げられるが、環境面や着色性能等を考慮した場合、C.I.ピグメントブラック7、及びC.I.ピグメントブラック35が好ましい。
ブラック顔料は、ブラックインク中に1.6~3.0質量%含有させることが好ましく、シアン顔料1に対して1.1~2.1(質量比)含有させることが好ましい。
【0018】
ホワイトインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントホワイト6、18、21などが目的に応じて使用できるが、隠ぺい力が高い酸化チタンが好適で具体的には、テイカ社製「チタニックスJR-301、403、405、600A、605、600E、603、805、806、701、800、808」「チタニックスJA-1、C、3、4、5」、石原産業社製「タイペークCR-50、50-2、57、80、90、93、95、953、97、60、60-2、63、67、58、58-2、85」「タイペークR-820、830、930、550、630、680、670、580、780、780-2、850、855」「タイペークA-100、220」「タイペークW10」「タイペ-クPF-740、744」「TTO-55(A)、55(B)、55(C)、55(D)、55(S)、55(N)、51(A)、51(C)」「TTO-S-1、2」「TTO-M-1、2」、デュポン社製「タイピュアR-900、902、960、706、931」等が挙げられる。
【0019】
ホワイト顔料は、ホワイトインクに対して5~15質量%含有させることが好ましく、シアン顔料1に対して1.4~4.5(質量比)含有させることが好ましい。
【0020】
前記顔料の粒径は、インク中においてメジアン径d50が50nm以上300nm以下であることが好ましい。メジアン径は、レーザー回折散乱測定装置によって測定することができる。
【0021】
顔料濃度および顔料濃度比が上記の範囲より大きい場合は、耐候性は良好だが発色性が悪く、色調が暗い印刷物となり不適である。
顔料濃度および顔料濃度比が上記の範囲より小さい場合は、発色性は良好だが耐候性が悪く、ターポリン上のインク膜が剥離する、色差変化が大きくなるという課題がある。
【0022】
また前記顔料は、前記カラーインデックスに記載されている有機顔料残基に、硫酸基、スルホン酸アミド基、スルホン酸基及びその塩、フタルイミド基、フタロイミドメチル基、アミノ基、トリアジン基等の特定の置換基を導入した、従来公知の顔料誘導体、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系等の顔料誘導体(シナジスト)を含んでいてもよく好ましい。
【0023】
これらの顔料誘導体は粉体で使用してもウエットケーキとして用いても構わない。また、顔料誘導体の配合量は、顔料に対して3~60重量%であることが好ましく、5~20重量%の範囲がなお好ましい。
【0024】
前記顔料誘導体としては、フタロシアニンスルフォン酸、フタルイミドメチルキナクリドン、フタルイミドメチル化3,10-ジクロロキナクリドン、あるいはルブリゾール社製Solsperse5000、Solsperse12000、Solsperse22000、ビックケミー社製BYK-Synergist2100等を挙げる事ができる。
【0025】
≪重合性化合物(以下モノマーともいう)≫
本発明の活性エネルギー線重合性化合物は、活性エネルギー線の照射により重合反応を生ずるエチレン性不飽和結合を分子内に有する反応性化合物である。なお、上記活性エネルギー線重合性化合物は、下記に示す通り、種々の反応性モノマー、反応性オリゴマー等が挙げられるが、これら活性エネルギー線重合性化合物は、各インク中において一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の活性エネルギー線硬化型インクセットを構成するインク間で使用される活性エネルギー線重合性化合物は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
上記重合性化合物は、例えば、分子内に含まれるエチレン性不飽和結合の数によって、エチレン性不飽和結合数が1である単官能モノマー、エチレン性不飽和結合数が2である2官能モノマー、及びエチレン性不飽和結合数が3以上である多官能モノマーが挙げられる。
【0027】
単官能モノマーの具体例としては、例えば、ステアリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミドデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N-ビニルカプロラクタム、イソアミルアクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコールアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルイミダゾール、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、エトキシ-ジエチレングリコールアクリレート、及び2-(2’-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート等が挙げられ、これらをエチレングリコール鎖、プロピレングリコール鎖等のアルキレングリコール鎖により変性したものも挙げることができる。アクリレート以外にメタクリレートも使用することができる。
【0028】
イソボロニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エトキシ-ジエチレングリコールアクリレートが特に好ましい。
【0029】
2官能モノマーの具体例としては、例えば、1,10-デカンジオールジアクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,8-オクタンジオールジアクリレート、1、7-ヘプタンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、EO変性1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、及びジプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、耐候性を更に向上できる観点から、CH2=CH-COO-CnH2n-OOC-CH=CH2(nは4~12の整数である)が好ましい。アクリレート以外にメタクリレートも挙げることができる。
【0030】
さらに1、6-ヘキサンジオールジアクリレート、EO変性1、6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレートが好ましい
【0031】
多官能モノマーは、硬化性や印刷膜の強度を向上させるために使用でき、その具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセリントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジグリセリンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられ、これらをエチレングリコール鎖、プロピレングリコール鎖等のアルキレングリコール鎖により変性したものも使用できる。アクリレート以外にメタクリレートも挙げることができる。
【0032】
トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレートが好ましい。
【0033】
反応性オリゴマー(以下オリゴマーともいう)は、印刷層の強度を向上させ、硬化時の印刷層の体積収縮を低減するために使用できる。なお、本発明において、反応性オリゴマーは、分子量1000g/mol以上のものが好ましい。
【0034】
反応性オリゴマーの具体例としては、例えば、アミノ樹脂アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、シリコーンアクリレート、ポリエステルアクリレート、及びポリブタジエンアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、耐候性や密着性の観点から、ウレタンアクリレートが好ましく、芳香環を持たない脂肪族ウレタンアクリレートが更に好ましい。アクリレート以外にメタクリレートも使用することができる。
【0035】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットにおいて、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクは、いずれもインク中、活性エネルギー線重合性化合物を30~90質量%含むことが好ましい。各インク中における活性エネルギー線重合性化合物の含有量であれば、インクの粘度、活性エネルギー線照射時の硬化、着色力が良好に得られる範囲である。
【0036】
≪重合開始剤≫
本発明のインクセットは、光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、上述した活性エネルギー線重合性化合物の重合を開始させる作用を有する。また、上記光重合開始剤の含有量は、各インク中において1~25質量%であることが好ましく、3~15質量%であることが更に好ましい。
【0037】
光重合開始剤としては、α-アミノケトン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物等が挙げられるが、硬化性の観点から、照射する活性エネルギー線の波長と光重合開始剤の吸収波長ができるだけ重複するものが好ましい。更に、光重合開始剤の開始反応を促進させるため、光増感剤等の助剤を併用することも可能である。
【0038】
光重合開始剤の具体例としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンゾフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタンー1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルーフォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの中でも、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドが、インクの硬化性の観点から好ましい。なお、これら光重合開始剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
照射する活性エネルギー線の波長は、光重合開始剤の吸収波長と重複していることが好ましく、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物に対しては、活性エネルギー線の主波長が、360~425nmであることが好ましい。
【0040】
(顔料分散剤)
前記顔料は、インク中での分散安定性を高める目的で顔料分散剤を用いることが好ましい。顔料分散剤の含有量は、例えばインク組成物の全質量中0.1~5質量%であり、前記顔料に対して5~100質量%の範囲が好ましく、特に8~80質量%の範囲が好ましい。顔料分散剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記顔料分散剤の具体例としては、
ANTI-TERRA-U、ANTI-TERRA-U100、
ANTI-TERRA-204、ANTI-TERRA-205、
DISPERBYK-101、DISPERBYK-102、
DISPERBYK-103、DISPERBYK-106、
DISPERBYK-108、DISPERBYK-109、
DISPERBYK-110、DISPERBYK-111、
DISPERBYK-112、DISPERBYK-116、
DISPERBYK-130、DISPERBYK-140、
DISPERBYK-142、DISPERBYK-145、
DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、
DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、
DISPERBYK-166、DISPERBYK-167、
DISPERBYK-168、DISPERBYK-170、
DISPERBYK-171、DISPERBYK-174、
DISPERBYK-180、DISPERBYK-182、
DISPERBYK-183、DISPERBYK-184、
DISPERBYK-185、DISPERBYK-2000、
DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2008、
DISPERBYK-2009、DISPERBYK-2020、
DISPERBYK-2025、DISPERBYK-2050、
DISPERBYK-2070、DISPERBYK-2096、
DISPERBYK-2150、DISPERBYK-2155、
DISPERBYK-2163、DISPERBYK-2164、
BYK-P104、BYK-P104S、BYK-P105、
BYK-9076、BYK-9077、BYK-220S、BYKJET-9150、BYKJET-9151(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、
Solsperse3000、Solsperse5000、
Solsperse9000、Solsperse11200、
Solsperse13240、Solsperse13650、
Solsperse13940、Solsperse16000、
Solsperse17000、Solsperse18000、
Solsperse20000、Solsperse21000、
Solsperse24000SC、Solsperse24000GR、
Solsperse26000、Solsperse27000、
Solsperse28000、Solsperse32000、
Solsperse32500、Solsperse32550、
Solsperse32600、Solsperse33000、
Solsperse34750、Solsperse35100、
Solsperse35200、Solsperse36000、
Solsperse36600、Solsperse37500、
Solsperse38500、Solsperse39000、
Solsperse41000、Solsperse54000、
Solsperse55000、Solsperse56000、
Solsperse71000、Solsperse76500、
SolsperseX300(以上、ルブリゾール社製)、
ディスパロンDA-7301、ディスパロンDA-325、ディスパロンDA-375、ディスパロンDA-234(以上、楠本化成社製)、
フローレンAF-1000、フローレンDOPA-15B、フローレンDOPA-15BHFS、フローレンDOPA-17HF、フローレンDOPA-22、フローレンDOPA-33、フローレンG-600、フローレンG-700、フローレンG-700AMP、フローレンG-700DMEA、フローレンG-820、フローレンG-900、フローレンGW-1500、フローレンKDG-2400、フローレンNC-500、フローレンWK-13E、(以上、共栄社化学社製)、
TEGO Dispers610、TEGO Dispers610S、
TEGO Dispers630、TEGO Dispers650、
TEGO Dispers652、TEGO Dispers655、
TEGO Dispers662C、TEGO Dispers670、
TEGO Dispers685、TEGO Dispers700、
TEGO Dispers710、TEGO Dispers740W、
LIPOTIN A、LIPOTIN BL、
LIPOTIN DB、LIPOTIN SB(以上、エボニック・デグサ社製)、
PB821、PB822、PN411、PA111(以上、味の素ファインテクノ社製)、
テキサホール963、テキサホール964、テキサホール987、テキサホールP60、テキサホールP61、テキサホールP63、テキサホール3250、テキサホールSF71、テキサホールUV20、テキサホールUV21(以上、コグニス社製)、
BorchiGenSN88、BorchiGen0451(以上、ボーシャス社製)等が挙げられる。
【0042】
(重合禁止剤)
本発明で使用する重合禁止剤は、例えば、ハイドロキノン、メトキノン、ジ-t-ブチルハイドロキノン、P-メトキシフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ニトロソアミン塩等の重合禁止剤をインク中にインク総量の0.01~2質量%の範囲で添加しても良い。
【0043】
(添加剤)
その他の成分として、光安定剤、保存安定剤(シランカップリング剤)、酸化防止剤、表面調整剤、可塑剤、防錆剤、高沸点溶剤、非反応性ポリマー、充填剤、pH調整剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、導光材、光輝材、磁性材、蛍光体等の添加剤を必要に応じて使用してもよい。
【0044】
<活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットの製造方法>
本発明のインクセットは、まず顔料、重合性化合物の一部、分散剤を混合し分散物を製造し、そこに別途重合性化合物、光重合開始剤に適宜添加剤(例えば、オリゴマー、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、表面調整剤)を混合し製造した重合性化合物の組成物とを混合することによって製造する。
【0045】
(インクセット)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットは、イエローインク、マゼンタインク、シアンインクと共に、ブラックインク、ホワイトインク等、通常活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットに加えられる色インクを加えたセットであってもよい。また、それぞれの色毎に同系列の濃色や淡色を加えてもよく、マゼンタに加えて淡色のライトマゼンタ、濃色のレッド、シアンに加えて淡色のライトシアン、濃色のブルー、ブラックに加えて淡色であるグレイ、ライトブラック、濃色であるマットブラック等を加えてもよい。
【0046】
本発明のインクセットの各インクは、50℃における粘度が5~15mPa・sであることが好ましく、5~10mPa・sであることがさらに好ましい。この粘度はB型粘度計を用いて測定することができる、
【0047】
本発明のインクセットの各インクは、25℃における表面張力が25~40mN/mであることが好ましい。表面張力は、白金プレート法(協和界面科学製自動表面張力計CBVP-Z)で測定した。
本発明のインクセットの各インクは、25℃における比重が1.06~1.08であることが好ましい。
【0048】
本発明のインクセットは、サインディスプレイ等の屋外用物品に印刷することを目的としたインクジェットプリンターによる印刷に好適に適用できる。なお、インクジェットプリンターによる印刷後、活性エネルギー線を照射して印刷物を硬化させることによって、耐候性が良好な印刷物を形成することができる。
【0049】
(硬化反応)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクセットは、活性エネルギー線、好ましくは紫外線等の光照射をすることにより硬化反応を行う。紫外線等の光源としては、通常UV硬化性インクジェットインクに使用する光源、例えばメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等であれば問題なく硬化させることができる。例えばFusion System社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いて行うことができる。
【0050】
また、近年採用が進んでいるUV-LEDや、紫外線発光半導体レーザー等の紫外線発光半導体素子を使用する場合には、感度のよい光重合開始剤や重合性化合物を適宜選択して使用することができる。活性エネルギー線の主波長が、360~425nmであることが好ましい。
【0051】
(基材)
本発明のインクセットが適用される好ましい基材は、塩ビシートまたはターポリンである。塩ビシートまたはターポリンは、上述の活性エネルギー線硬化型インクセットにより形成された印刷層を備えることを特徴とし、長時間屋外に曝された場合にも優れた耐候性を示す。
【0052】
なお、本発明の印刷物は、上述の活性エネルギー線硬化型インクセットを用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができるが、具体的には、該活性エネルギー線硬化型インクセットを装填したインクジェットプリンターによって塩ビシートまたはターポリン上に印刷し、該印刷物を活性エネルギー線の照射により硬化させることによって、耐候性に優れる印刷層を備えた印刷物を製造することができる。
【0053】
印刷物は、特に限定されないが、例えば、プラスチック類、ガラス類、金属類、陶器等のセラミックス類、無機質窯業系材料等の建築材の他、コンクリートブロック類、表面を樹脂でコーティングした紙、サインディスプレイ等の屋外用物品に使用される材料等も含まれる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
<インク調整>
表1に示す配合処方に従って各混合物を得、これを所望のインク組成物に混合後ビーズミルで練合して均質とし、インクジェットプリンターヘッドのノズル径の約1/10のポアサイズを有するフィルターでろ過することによってインクを製造した。
【0056】
<試料の調整>
基材として、市販のポリ塩化ビニルシートおよびターポリンを使用し、前記調整したインクセットをマルチパス方式のインクジェットプリンターでY,M,C,K各色100%ベタ印刷画像(サイズ30mm×30mm)を作製し、試料とした。
【0057】
<印刷物の発色性>
上記各試料のL値を色差計(X―Rite社製Spectro Eye)によって測定し、下記基準で発色性を判定した。画像の鮮鋭性は、発色性の高さで評価した。
Y色 ○:L値80以上 ×:L値80未満
M色 ○:L値40以上 ×:L値40未満
C色 ○:L値45以上 ×:L値45未満
【0058】
<耐候性評価>
上記で作製した各試料を、サンシャインウェザロメーター(スガ試験機社製S80)を使用して1500時間試験をした。塩ビシート上の印刷物は初期からの色差△Eを色差計(X―Rite社製Spectro Eye)によって測定した。またターポリン上の印刷物は、初期と比較してインク膜の剥離有無を目視観察した。
【0059】
<耐候性(塩ビシート印刷物)>
≪色差≫
〇:△E10未満
×:△E10以上
【0060】
<耐候性(ターポリン印刷物)>
≪剥離有無≫
○:インク膜の剥離有り
×:インク膜の剥離無し
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
表1~9で示すように、本発明は、耐候性と画像の鮮鋭性に優れたものとなる。