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7332293バルリチニブおよび抗癌剤を含んでなる併用療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】バルリチニブおよび抗癌剤を含んでなる併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/517 20060101AFI20230816BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20230816BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20230816BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230816BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20230816BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230816BHJP
   A61K 31/555 20060101ALI20230816BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20230816BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20230816BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230816BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
A61K31/517
A61K31/282
A61K31/337
A61K31/4745
A61K31/513
A61K31/519
A61K31/555
A61K31/7068
A61K33/24
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018511226
(86)(22)【出願日】2016-09-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2016070888
(87)【国際公開番号】W WO2017037298
(87)【国際公開日】2017-03-09
【審査請求日】2019-08-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】1515716.7
(32)【優先日】2015-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1515712.6
(32)【優先日】2015-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1515714.2
(32)【優先日】2015-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1515718.3
(32)【優先日】2015-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】62/217,346
(32)【優先日】2015-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/217,332
(32)【優先日】2015-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1605583.2
(32)【優先日】2016-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1608660.5
(32)【優先日】2016-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518063034
【氏名又は名称】アスラン ファーマシューティカルズ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンドマーク,バーティル
(72)【発明者】
【氏名】オーイ,リサ
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】藤原 浩子
【審判官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】Journal of Cellular Biochemistry,2014年,Vol.115,pp.1381-1391
【文献】Cancer Research [online],2009年 1月,Vol.69, Issue 2 Supplement,Abstract nr 2150,[2020年6月26日検索], インターネット,URL,https://cancerres.aacrjournals.org/content/69/2_Supplement/2150
【文献】医学のあゆみ,2009年 9月 5日,Vol.230, No.10,pp.911-917
【文献】臨床外科,2009年 7月,第64巻, 第7号,pp.911-917
【文献】日本臨床,2011年,第69巻 増刊号3,pp.433-438
【文献】Cancer Research [online],2009年 5月,Vol.69, Issue 9 Supplement,Abstract nr 3603,[2020年6月30日検索], インターネット,URL,https://cancerres.aacrjournals.org/content/69/9_Supplement/3603
【文献】日本化学療法会雑誌,2004年,Vol.53,No.3,pp.176-179
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
CAplus/REGISTRY(STN)
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)治療有効量の式(I)の化合物:
【化1】
その鏡像異性体またはそれらのいずれか1つの薬剤的に許容できる塩
)白金系化学療法剤を含む化学療法剤または化学療法剤の組み合わせ、並びに
c)カペシタビン、5-FU、FOLFOX、FOLFIRI、およびFOLFIRINOXから選択される化学療法剤又は該化学療法剤の組み合わせ
を含んでなる、癌患者の前記化学療法剤または化学療法剤の組み合わせに対する感受性を増加させるための併用療法剤。
【請求項2】
前記式(I)の化合物が、
【化2】
またはその薬剤的に許容できる塩である、請求項1に記載の併用療法剤。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が、遊離塩基として与えられる、請求項1または2に記載の併用療法剤。
【請求項4】
前記併用療法剤が、フルオロウラシル、カペシタビン、ラルチトレキセド、タキソールおよびその誘導体、BGC945、OSI-7904L、またはこれらの2種以上の組み合わせをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の併用療法剤。
【請求項5】
前記白金系化学療法剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、リポプラチン、およびそれらの組み合わせを含んでなる群から選択される、特にシスプラチンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の併用療法剤。
【請求項6】
前記併用療法剤がオキサリプラチンを含んでなる、請求項4または5に記載の併用療法剤。
【請求項7】
前記併用療法剤がカペシタビンを含んでなる、請求項4~6のいずれか一項に記載の併用療法剤。
【請求項8】
5-FUを含んでなる、請求項4~6のいずれか一項に記載の併用療法剤。
【請求項9】
FOLFOX、FOLFIRI、およびFOLFIRINOXから選択される化学療法剤をさらに含む、請求項4~6および請求項8のいずれか一項に記載の併用療法剤。
【請求項10】
前記癌が上皮癌である、請求項1~9のいずれか一項に記載の併用療法剤。
【請求項11】
前記癌が、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、胆道癌、乳癌(ER+のない乳癌など)、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、骨癌、膀胱癌、頭頸部癌、甲状腺癌、皮膚癌、腎臓癌、および食道癌を含んでなる群から選択される、請求項10に記載の併用療法剤。
【請求項12】
前記癌が、胃癌、肝細胞癌、および胆管癌から選択される、請求項10に記載の併用療法剤。
【請求項13】
前記癌が化学療法に対して不応性および/または抵抗性である、請求項1~12のいずれか一項に記載の併用療法剤。
【請求項14】
前記癌が、HER2陽性であるか、またはHER2が増幅されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の併用療法剤。
【請求項15】
前記式(I)の化合物の各用量が、100~900mgの範囲内である、請求項1~14のいずれか一項に記載の併用療法剤。
【請求項16】
各用量が300~500mgの範囲にある、例えば400mgである、請求項15に記載の併用療法剤。
【請求項17】
前記式(I)の化合物を医薬組成物として投与する、請求項1~16のいずれか一項に記載の併用療法剤。
【請求項18】
前記式(I)の化合物または前記式(I)の化合物を含んでなる医薬組成物を経口投与する、請求項1~17のいずれか一項に記載の併用療法剤。
【請求項19】
前記式(I)の化合物またはその医薬組成物を1日2回投与する、請求項1~18のいずれか一項に記載の併用療法剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学療法との併用でI型チロシンキナーゼ阻害剤を使用する化学療法に対する癌患者の腫瘍および/または転移の感受性を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
治療が困難な多くの癌があり、治療法が利用可能であるが、治療法に対してある程度の抵抗性が存在するか、発生するようである。一次抵抗は、癌が最初から治療に反応しないという点で起こり得る。これは、使用される治療法が、治療対象の癌の種類を、充分に正確かつ充分に有効に標的化しないという事実に起因する可能性がある。二次的または後天的な抵抗もかなり頻繁に起こる。つまり、最初患者が反応するように見える治療法が、ある時点でその効能を失うということである。化学療法では、例えば、卵巣上皮の原発性腹膜癌と診断された患者の全体で約80%が、白金系およびタキサン系の一次化学療法後に再発する。それはあまり芳しくない統計値である。
【0003】
抵抗性の原因は数多くある。例えば、後期に発見される癌、および/または単に治療に反応しない癌がある。
【0004】
癌が治療法の治療効果を回避するメカニズムには、以下が含まれるが、これらに限定されない:
i)癌の治療に対する脆弱性を低下させる突然変異(例えば、治療法の作用部位の突然変異)、
ii)例えばp-グリコロレーション(p-glycolation)による、腫瘍の外への薬剤の能動輸送、
iii)特定の免疫反応を阻害するストローマなどの物理的防御を構築すること、および
iv)特定の癌が、いくつかの抗癌療法によって引き起こされる損傷を修復するための経路を形成すること。
【0005】
腫瘍異種性はまた、抵抗性に寄与し得、細胞の小さな亜集団は、薬剤選択圧下で出現することを可能にするいくつかの特徴を獲得または確率論的に既に有し得る。このことは、癌を有する多くの患者が遭遇する問題であり、効果的な治療選択肢を制限し、予後を悪化させることが明らかである。
【0006】
癌治療法ガイドラインでは、推奨される癌の治療法が記載されており、治療法が使用される順番または順序の推奨事項が含まれている。したがって、患者が最初の治療法(「一次」)で疾患の進行を示す場合、次の治療法(「二次」)が推奨されるといったようになっている。これらの治療法の推奨は、利用可能な科学的データと経験に基づいており、ある治療法に対する抵抗性が、別の治療法が有効である可能性を排除しないことを示している。後期では、癌はほとんどの治療法に反応せず、それ以上の治療法も存在しない。有効な新しい治療法が見つからない限り、これらの癌は完全に治療不応性である。
【0007】
胆管癌は一次および二次抵抗性の両方の典型例であり、原発腫瘍および転移の両方を完全に切除(外科的に除去)できない限り、治癒不可能で急速に致死的な悪性腫瘍であるとみなされる。手術以外の胆管癌の治癒的治療はない。残念なことに、ほとんどの患者は診断時に手術不能の進行期の疾患を有する。胆管癌の患者は、化学療法、放射線療法、およびその他の緩和ケア措置より、通常処置されるが、決して治癒しない。これらはまた、切除が明らかに成功した(またはほとんど成功した)場合に、補助療法としても(すなわち、手術後に)使用される。
【0008】
西半球では、胆管癌は腺癌(腺を形成するか、または相当量のムチンを分泌する癌)として分類される比較的希少な新生物である。胆管癌は、西欧諸国では年間発生率が100,000あたり1~2症例である。しかし、胆管癌の発生率は、過去数十年にわたり世界中で上昇している。さらに、アジア諸国では、発生率がより高く、重大な問題として認識されている。
【0009】
したがって、一次および二次治療抵抗性の未解決の問題に対処するための改善型または代替型の癌療法の必要性が存在する。
【0010】
(R)-N4-[3-クロロ-4-(チアゾール-2-イルメトキシ)-フェニル]-N6-(4-メチル-4,5-ジヒドロ-オキサゾール-2-イル)-キナゾリン-4,6-ジアミン(バルリチニブ、国際公開第2005/016346号に開示された実施例52)は、小分子汎HER阻害剤である。胃癌患者の第I相臨床試験において単独療法として試験されている。以前に1回以上の化学療法に失敗し、トラスツズマブについて適格である23人の患者は、それぞれ、バルリチニブ500mgを1日2回(BID)経口で28日間単独療法として受けた。治療前後に採った腫瘍生検を免疫組織化学を用いて分析した。臨床活性の兆候には、EGFRおよびHER2が同時発現するか、またはHER2が増幅された胃腫瘍における細胞増殖に関与するシグナル伝達経路のダウンレギュレーション、ならびに細胞生存および細胞増殖の低下が含まれる。
【0011】
バルリチニブは、一次療法が失敗した後(一次反応が不応性になった場合、または癌が一次療法に反応しなかった場合)に、癌を治療するために、いくつかの異なる細胞傷害性薬剤との併用で現在使用されている。患者の一部は、これまでにいくつかの治療系列を受け、失敗しており、その後最終的に化学療法との併用でバルリチニブを受けた。
【0012】
得られた現在の実験的臨床データは、特に細胞傷害性薬剤との併用でのバルリチニブの予想外の治療活性を示す。場合によっては、患者はすでに化学療法を含む複数回の異なる治療法を受けていたが、いずれも失敗していた。したがって、バルリチニブはそれ自体で有望な抗癌活性を示しているが、バルリチニブが化学療法と併用で使用される場合、効能の増加が観察され得る。これは、患者が化学療法に抵抗性であった場合でも同様であるようである。これらの患者のうちの一部は、バルリチニブ併用療法に対して有望な「反応」を示す。一部の患者において、本開示に係る治療法は、驚くべきレベルの効能を示している。
【0013】
得られたデータは、化学療法との併用で使用されるバルリチニブが、治療(バリチニブもしくは化学療法またはその両方)に対する、特に細胞傷害性化学療法による治療に対する癌の感受性を増加させる1つの方法であることを示唆している。
【発明の概要】
【0014】
したがって、
a)治療有効量の式(I)の化合物:
【0015】
【化1】
その鏡像異性体またはそれらのいずれか1つの薬剤的に許容できる塩を投与することと
b)他の癌療法を投与することと
により癌患者を治療する方法が与えられる。
1つの独立した態様において、
a)治療有効量の式(I)の化合物:
【0016】
【化2】
その鏡像異性体またはそれらのいずれか1つの薬剤的に許容できる塩を投与することと
b)化学療法剤または化学療法剤の組み合わせを投与することと、
により癌患者の化学療法に対する感受性を増加させる方法であって、例えば、前記式(I)の化合物および前記化学療法の薬理作用が前記患者において重複している、前記方法が与えられる。
【0017】
したがって、1つの態様において、癌患者の化学療法に対する感受性を増加させる治療における、本明細書で定義される式(I)の化合物の使用が与えられる。
【0018】
したがって、一実施形態において、癌、特に不応性または抵抗性の癌の治療に使用するための式(I)の化合物および化学療法剤(特に細胞傷害性化学療法剤)が与えられる。
【0019】
一態様において、癌患者の化学療法に対する感受性を増加させるための薬剤の製造のための式(I)の化合物の使用が与えられる。
【0020】
一態様において、癌、特に不応性癌の治療用薬剤の製造のための式(I)の化合物および化学療法剤(特に細胞傷害性化学療法剤)の使用が与えられる。
【0021】
一実施形態において、患者集団は、化学療法に対して不応性および/または抵抗性であり、例えば不応性である。一実施形態において、患者集団は抵抗性である。
【0022】
本発明者らは、新しい実験用医薬品を含む多数の治療に不応性または抵抗性である患者を含む、非常に重篤な多数の癌患者を治療した。驚くべきことに、治療された患者は、バルリチニブが投与された場合に化学療法に反応し、例えば、Her2陽性(3+)ステージIVの胃癌を有する78歳男性の1人は、以下の後に進行性病態を有していた。
・シスプラチンとXeloda(登録商標)(カペシタビン)を用いる一次治療-4サイクル、
・実験用薬剤TDM1(現在ado-トラスツズマブエムタンシンと呼ばれているHerceptin(登録商標)を含んでなる抗体薬剤コンジュゲート)を用いる二次治療-9サイクル、
・実験用薬剤LJM716(HER3モノクローナル抗体)およびHerceptin(登録商標)を用いる三次治療。
【0023】
1日2回のバルリチニブ400mg、シスプラチンおよびカペシタビンを用いた治療サイクル4の後、患者は29%の反応を示し、安定病態を有すると分類された。
【0024】
1日2回のバルリチニブ400mg、シスプラチンおよびカペシタビンの一次治療を与えられた胃癌を有する46歳の女性は、サイクル4の後に41%の反応を示した。
【0025】
ステージIVの胆管癌を有する56歳の男性は、以下の治療後に進行性病態を有していた。
・放射線療法、および
・ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))およびシスプラチン-6ヶ月。
【0026】
1日2回のバルリチニブ400mg、シスプラチンおよびカペシタビンを用いた治療サイクル6の後、患者は85.77%の反応を示した。この患者は、これらの並外れた結果に基づいてスーパーレスポンダーとみなすことができる。
【0027】
実施例のセクションでは、これらの患者の詳細および本開示に係る併用療法による他の患者の治療の患者の詳細を開示する。結果は非常に興味深く見え、なぜならば、癌を効果的に治療できなかった患者を含む非常に重篤な患者において、改善、時には劇的な改善が見られるためである。
【0028】
一実施形態において、式(I)の化合物は、(R)-N4-[3-クロロ-4-(チアゾール-2-イルメトキシ)-フェニル]-N6-(4-メチル-4,5-ジヒドロ-オキサゾール-2-イル)-キナゾリン-4,6-ジアミン(バルリチニブ):
【0029】
【化3】
またはその薬剤的に許容できる塩またはそのプロドラッグである。
【0030】
一実施形態において、式(I)の化合物、例えばバルリチニブは、他のHER阻害剤との併用、例えば、式(I)の化合物(例えばバルリチニブ)およびハーセプチン(トラスツズマブ)および/またはペルツズマブの併用で使用される。驚くべきことに、バルリチニブおよびハーセプチンの併用は、どちらかの構成要素単独よりも高い治療活性を示す。
【0031】
一実施形態において、ado-トラスツズマブ-エマンシンと式(I)の化合物、例えばバルリチニブとの併用である。
【0032】
HER阻害剤療法のこれらの併用は、本開示に係る化学療法剤と共に使用し得る。
【0033】
本開示は、医薬製剤のいずれか1つおよび賦形剤、希釈剤、または担体を含んでなる医薬製剤の投与にも及ぶ。
【0034】
適当な用量でのバルリチニブは、HER1、HER2、およびHER4を直接的に阻害することができ、間接的にHER3を阻害することができると考えられる。
【0035】
一実施形態において、式(I)の化合物、例えばバルリチニブは、少なくとも、HER1およびHER2、HER1およびHER4、またはHER2およびHER4の活性を阻害する。
【0036】
一実施形態において、式(I)の化合物、例えばバルリチニブは、少なくとも、HER1、HER2、およびHER4の活性を阻害し、例えば、HER1、HER2、およびHER4の活性を直接的に阻害する。
【0037】
一実施形態において、式(I)の化合物、例えばバルリチニブは、HER1、HER2、HER3、およびHER4の活性を阻害し、例えば、HER1、HER2、およびHER4の活性を直接的に阻害し、HER3の活性を間接的に阻害する。
【0038】
一実施形態において、式(I)の化合物、例えばバルリチニブを経口投与する。
【0039】
一実施形態において、式(I)の化合物、例えばバルリチニブの各用量は、100~900mgの範囲内であり、例えば、各用量は、300~500mgの範囲内であり、例えば400mgであり、例えば1日1回または2回、例えば1日2回投与される。
【0040】
一実施形態において、式(I)の化合物、例えば、バルリチニブを、28日の治療サイクルで投与する。
【0041】
一実施形態において、標的患者集団は、EGFRおよびHER2陽性であるか、またはHER2が増幅されている。
【0042】
一実施形態において、本開示の治療薬は、HER阻害が有効である非上皮性の癌に対して投与される。
【0043】
一実施形態において、本開示の治療薬は、上皮癌に対して投与され、例えば、上皮癌は、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、胆道癌、乳癌(ER+のない乳癌など)、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、骨癌、膀胱癌、頭頸部癌、甲状腺癌、皮膚癌、腎臓癌、および食道癌、例えば胃癌から選択される。
【0044】
一実施形態において、癌は、肝細胞癌、胆管癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、および食道癌を含んでなる群から選択される。
【0045】
一実施形態において、胆道癌は、肝内胆道、左肝管、右肝管、総肝管、胆嚢管、総胆管、ファーター膨大部、およびそれらの組み合わせから選択される位置にある。
【0046】
一実施形態において、胆道癌は肝内胆道に存在する。
【0047】
一実施形態において、胆道癌は左肝管に存在する。
【0048】
一実施形態において、胆道癌は右肝管に存在する。
【0049】
一実施形態において、胆道癌は総肝管に存在する。
【0050】
一実施形態において、胆道癌は胆嚢管に存在する。
【0051】
一実施形態において、胆道癌は総胆管に存在する。
【0052】
一実施形態において、胆道癌はファーター膨大部に存在する。
【0053】
一実施形態において、上皮癌は癌腫である。
【0054】
一実施形態において、本開示に係る併用治療は、手術後などの補助療法である。
【0055】
一実施形態において、本開示に係る併用療法は、手術前に腫瘍を縮小するためなどの新補助治療である。
【0056】
一実施形態において、腫瘍は固形腫瘍である。一実施形態において、癌は、原発性癌、二次癌、転移、またはそれらの組み合わせである。一実施形態において、本開示に係る治療は、二次腫瘍の治療に適している。一実施形態において、癌は転移性癌である。一実施形態において、本開示に係る治療は、原発性癌および転移の治療に適している。一実施形態において、本開示に係る治療は、二次癌および転移の治療に適している。一実施形態において、本開示に係る治療は、原発性癌、二次癌、および転移の治療に適している。
【0057】
一実施形態において、本開示に係る治療は、リンパ節における癌細胞の治療、本開示の癌に適している。
【0058】
一実施形態において、肝臓癌は原発性肝臓癌である。一実施形態において、肝臓癌は二次肝臓癌である。一実施形態において、肝臓癌は、ステージ1、2、3A、3B、3C、4A、または4Bである。
【0059】
一実施形態において、胃癌は、ステージ0、I、II、III、またはIVである。
【0060】
一実施形態において、バルリチニブは、本開示の併用療法の後に、例えば100mg~500mgの範囲、例えば200mg、300mg、または400mgの用量で1日1回または2回投与される単独療法として継続される。
【0061】
一実施形態において、単剤療法を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60ヶ月、またはそれ以上の間投与する。
【0062】
一実施形態において、患者はヒトである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
バルリチニブは単独療法として使用すると有意な抗癌活性を有する。しかし、バルリチニブが併用療法、特に化学療法との併用で使用される場合、患者がバルリチニブの非存在下で化学療法に反応しなかった場合でも、効能の増加が観察される。理論に縛られることは望まないが、バルリチニブの投与は、抵抗性または不応性の患者において、化学療法の治療活性の少なくとも一部を回復させるようである。
【0064】
したがって、本明細書中で使用される化学療法に対する感受性の増加とは、化学療法との併用での式(I)の化合物の併用が、単独で使用される一方または両方の治療法と比較して効能が増加しているという事実を単に表す。本開示に係る感受性増加治療は、化学療法などの治療に一次抵抗性を有する患者に使用することができる。本開示に係る感受性増加治療は、化学療法などの治療に二次抵抗性を有する患者に使用することができる。本開示に係る感受性増加治療は、抵抗性を示さない患者において、患者が抵抗性になるのを避けるために使用することができる。
【0065】
したがって、一実施形態において、本明細書で使用される化学療法に対する癌患者の感受性を増加させることは、式(I)の化合物で治療しない「同じ」癌細胞と比較して、化学療法の治療/死滅効果に対して、および/もしくはバルリチニブなどの式(I)の化合物に対して、または両方の治療法それぞれに対して、癌細胞をより感受性にさせることを表す。
【0066】
化学療法に対する感受性増加の利益を得るためには、化学療法は、式(I)の化合物と化学療法の薬理作用が重複する、すなわち前記療法の治療レジメンが時間的に部分的に一致する時間枠内で投与されなければならない。 当業者は、実際にはこれが何を意味するのかを理解するであろう。
【0067】
本明細書で使用される「併用療法の投与」は、併用で使用される療法が同時に投与されることを必要としない。
【0068】
本明細書で使用される併用療法とは、2つ以上の様式の治療法が同じ治療期間にわたって使用されること、すなわち連続療法とは反対の治療法を指す。
【0069】
本明細書で使用される2つ以上の様式の治療法は、異なる作用様式および/または異なる活性および/または異なる投与経路を有する2つ以上の治療法を指す。
【0070】
文脈上他を意味しない限り、不応性および抵抗性は、癌が治療法に反応しない場合、または治療法に対してあまり反応しない場合を指すために、本明細書において互換的に使用される。
【0071】
いくつかの例では、患者は、初回用量を1日2回300mgまたは200mgに減らすことにより効果を得られ得る。
【0072】
他の患者は、例えば、毎日ではなく1日おきに薬剤を服用するか、または4日連続して薬剤を服用した後、1日、2日、または3日間薬剤治療をしない、非連続的な治療計画でバルリチニブなどの式(I)の化合物を受けることにより効果を得られ得る。
【0073】
一実施形態において、式(I)の化合物を、1種以上の薬剤的に許容できる賦形剤を含んでなる医薬製剤として投与する。一実施形態において、式(I)の化合物を、経口的に、例えば錠剤またはカプセルとして投与する。
【0074】
一実施形態において、式(I)の化合物の治療計画を、化学療法を開始する前に開始し、少なくとも化学療法を開始するまで継続し、特に、少なくとも化学療法期間中、継続する。
【0075】
一実施形態において、式(I)の化合物の治療計画を、化学療法の開始と同時に開始し、少なくとも化学療法期間中、継続する。
【0076】
したがって、一実施形態において、式(I)の化合物と化学療法とを同日に投与する。
【0077】
したがって、式(I)の化合物の効果によって他の場合よりも癌細胞の化学療法に対する感受性を高めることができる場合、式(I)の化合物と化学療法の薬理作用が患者において重複する。
【0078】
一実施形態において、化学療法は細胞傷害性化学療法である。
【0079】
一実施形態において、本開示に係る併用療法は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/058229号に開示されているRON阻害剤などのRON阻害剤を含んでなる。
【0080】
一実施形態において、併用療法は、チェックポイント阻害剤、例えば、CTLA4阻害剤、PD-1阻害剤、またはPD-L1阻害剤、特に抗体またはその結合断片を含んでなる。
【0081】
薬剤的に許容できる塩の例には、限定されるものではないが、強鉱酸の酸付加塩、例えば、HCl塩およびHBr塩、ならびに強有機酸の付加塩、例えば、メタンスルホン酸塩、トシレート、フロ酸塩など、それらのジ、トリ塩、例えばジトシレートが含まれる。
【0082】
HER2の発現または過剰発現を評価するための分析試験は公知であり、当技術分野で利用可能である。
【0083】

本明細書で使用される肝臓癌は、肝臓の癌、例えば、線維層板癌、胆管癌、血管肉腫、よび肝芽腫を含む肝細胞癌を指す。
【0084】
本明細書で使用される胃癌は、胃の癌、例えば、扁平上皮癌、非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫、消化管間質腫瘍、または神経内分泌腫瘍を指す。
【0085】
本明細書で使用される前立腺癌は、前立腺の癌、例えば、導管腺癌、移行細胞(尿路上皮癌)、扁平上皮癌、前立腺のカルチノイド、小細胞癌、または肉腫および肉腫様癌を指す。
【0086】
本明細書で使用される膵臓癌には、外分泌癌(嚢胞性腫瘍および腺房細胞の癌などのその希少形態を含む)、内分泌性膵臓腫瘍(ガストリノーマ、インスリノーマ、ソマトスタチノーマ、ビポーマ、グルカゴノーマを含む)、膵芽腫、膵臓の肉腫、およびリンパ腫が含まれる。
【0087】
本明細書で使用される胆道癌は、胆管癌(肝臓内、肝臓外)、胆嚢癌、および膨大部癌を指す。
【0088】
本明細書で使用される結腸直腸癌は、癌または結腸および/または直腸を指し、扁平上皮癌、カルチノイド腫瘍、肉腫、およびリンパ腫を含む。
【0089】
本明細書で使用される乳癌は、乳房の癌を指し、非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉乳癌、浸潤性乳癌、パジェット病、乳房血管肉腫、および希少型の乳癌、例えば乳房の髄様癌、乳房の粘液癌、管状乳癌、胸部化生乳癌の腺様嚢胞癌、基底型乳癌、および乳頭部乳癌を含む。
【0090】
本明細書で使用される卵巣癌は、卵巣の癌を指し、重度、類内膜、明細胞、粘液性、未分化または未分類の生殖細胞系、および他の稀な卵巣腫瘍、例えば、卵巣の奇形腫(成熟奇形腫および未成熟奇形腫)および境界悪性卵巣腫瘍を含む。卵巣上皮癌は、重度、類内膜、明細胞、粘液性、未分化または未分類である。
癌が始まる細胞の種類に応じて分類される30種類以上の卵巣癌がある。癌性卵巣腫瘍は、以下の3つの一般的な細胞型から始まることができる。
・表面上皮-卵巣の内層を覆う細胞
・生殖細胞-卵を形成することが予定されている細胞
・間質細胞-ホルモンを放出し、卵巣の異なる構造をつなぐ細胞。
【0091】
本開示は、例えば本明細書に記載されているような任意の源、特に上皮細胞からの卵巣癌の治療に関する。上皮卵巣癌(EOC)は、卵巣のすべての癌の85~90%パーセントを占める。
【0092】
一般的な上皮腫瘍-上皮卵巣腫瘍は、卵巣の外面を覆う細胞から発生する。ほとんどの上皮卵巣腫瘍は良性(非癌性)である。良性上皮腫瘍には、漿液性腺腫、粘液性腺腫、およびブレンナー腫瘍などのいくつかの種類がある。癌性上皮腫瘍は癌腫であり、卵巣を覆う組織で始まることを意味する。これらはすべての種類の卵巣癌の中で最も一般的で最も危険である。残念ながら、一般的な上皮卵巣癌を有する女性のほぼ70%は、病気が段階的に進行するまで診断されない。
【0093】
顕微鏡下での外観からは癌性のものであるとはっきりと認められない卵巣上皮腫瘍がある。これらは、境界型腫瘍または低悪性度腫瘍(LMP腫瘍)と呼ばれる。本開示の方法は、後者の治療を含む。
【0094】
生殖細胞腫瘍-卵子または卵を産生する細胞から卵巣生殖細胞腫瘍が発生する。ほとんどの生殖細胞腫瘍は良性(非癌性)であるが、一部は、癌性であり、生命を脅かし得る。最も一般的な生殖細胞悪性腫瘍は、成熟奇形腫、未分化胚細胞腫、および内胚葉洞腫瘍である。生殖細胞悪性腫瘍は、十代と二十代の女性で起こる頻度が最も高い。今日、卵巣生殖細胞悪性腫瘍を有する患者の90パーセントが治癒でき、その妊性が保持される。
【0095】
間質腫瘍-卵巣間質腫瘍は、卵巣を一緒に保持する結合組織細胞ならびに女性ホルモン、エストロゲンおよびプロゲステロンを産生する細胞から発生する、希少な種類の腫瘍である。最も一般的な種類は、顆粒膜-莢膜腫瘍およびセルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍である。これらの腫瘍は非常に希少であり、通常、低悪性度の癌とみなされ、約70パーセントがステージI疾患(癌は片方または両方の卵巣に限られる)として現れる。
【0096】
原発性腹膜癌-卵巣の除去は、卵巣癌のリスクを排除するが、原発性腹膜癌と呼ばれるあまり一般的でない癌のリスクは排除しない。原発性腹膜癌は、上皮性卵巣癌(最も一般的な種類)と密接に関連している。原発性腹膜癌は、腹膜(腹腔膜)からの細胞で発生し、顕微鏡下で同じように見える。原発性腹膜癌は、症状、広がり、および治療において類似している。
【0097】
卵巣癌のステージ
卵巣癌と診断されると、医師が卵巣の外に癌が拡がっているかどうかを見定めることができる手術中に、腫瘍のステージを判断することができる。卵巣癌の4ステージ-ステージI(早期疾患)~ステージIV(進行した疾患)がある。治療計画および予後(疾患の高可能性経過および転帰)は、有している癌のステージによって決まる。
【0098】
以下は、卵巣癌の様々なステージの説明である。
ステージI-癌の増殖は、卵巣に限られる。
ステージIA-増殖は1つの卵巣に限られ、腫瘍は卵巣の内側に限られる。卵巣の外面には癌はない。悪性細胞を含む腹水は存在しない。莢膜は無損傷である。
ステージIB-増殖は、両方の卵巣に限られ、外面に腫瘍が全くない。悪性細胞を含む腹水は存在しない。莢膜は無損傷である。
ステージIC-腫瘍はステージIAまたはIBのいずれかに分類され、以下のうちの1つ以上が存在する。(1)腫瘍は一方または両方の卵巣の外面に存在する;(2)莢膜が破裂している;かつ(3)悪性細胞を含む腹水または陽性腹腔洗浄液がある。
ステージII-癌の増殖は、一方または両方の卵巣を侵し、骨盤伸長を伴う。
ステージIIA-癌は、子宮もしくはファロピウス管、または両方、にまで拡大している、かつ/または、を侵す。
ステージIIB-癌は他の骨盤内器官にまで拡大している。
ステージIIC-腫瘍はステージIIAまたはIIBのいずれかに分類され、以下のうちの1つ以上が存在する。(1)腫瘍は一方または両方の卵巣の外面に存在する;(2)莢膜が破裂している;かつ(3)悪性細胞を含む腹水または陽性腹腔洗浄液がある。
ステージIII-癌の増殖は、一方または両方の卵巣を侵し、以下のいずれかまたは両方が存在する。(1)癌が骨盤を越えて腹部の内側を覆う部分に拡がっている;(2)癌がリンパ節に拡がっている。腫瘍は真骨盤に限られるが、小腸または網への悪性の拡張が組織学的に分かる。
ステージIIIA-病期分類手術中、医師は、卵巣の一方または両方を侵す癌を見ることができるが、腹部では癌は肉眼で見えず、リンパ節に拡がっていない。しかし、バイオプシーを顕微鏡下で確認すると、腹腔内の腹膜面に非常に小さな癌の沈着が見られる。
ステージIIIB-腫瘍は一方または両方の卵巣にあり、腹部には外科医が見ることができるが直径が2cmを超えない大きさの癌の沈着物が存在する。癌はリンパ節に拡がっていない。
ステージIIIC-腫瘍は一方または両方の卵巣にあり、以下のいずれかまたは両方が存在する。(1)癌がリンパ節に拡がっている;かつ/または(2)癌の沈着物は直径2cmを超え、腹部に見られる。
ステージIV-これは卵巣癌の最も進行した段階である。癌の増殖は、一方または両方の卵巣を侵し、遠隔転移(腹膜腔外に位置する器官への癌の拡大)が起こっている。(肺を取り囲む腔からの)胸水中に卵巣癌細胞が見られることも、ステージIV疾患の証拠である。
【0099】
一実施形態において、卵巣癌は、I型、例えばIA、IB、もしくはIC;II型、例えばIIA、IIB、もしくはIIC;III型、例えばIIIA、IIIB、もしくはIIIC;またはIV型である。
【0100】
本開示は、特に本明細書に記載されている、卵巣癌のいずれかのステージの治療に関する。
【0101】
肺癌は、組織型に従って分類され、顕微鏡下で組織病理学者によって見られる悪性細胞のサイズおよび外観によって分類される。治療目的のために、非小細胞肺癌および小細胞肺癌の2つに大別される。
【0102】
一実施形態において、上皮癌は、肺癌、例えば小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0103】
非小細胞肺癌-NSCLCの3つの主なサブタイプは、腺癌、扁平上皮癌、および大細胞癌である。
【0104】
肺癌のほぼ40%は腺癌であり、腺癌は、通常、末梢肺組織に由来する。腺癌のサブタイプである気管支肺胞腺癌は、女性の喫煙未経験者ではより一般的であり、より長期の生存期間を有する場合がある。
【0105】
扁平上皮癌は肺癌の約30%を占める。扁平上皮癌は典型的には大気道の近くで起こる。空洞および関連する細胞死は、一般に、腫瘍の中心に見られる。肺癌の約9%は大細胞癌である。これらは、癌細胞が大きく、過剰な細胞質、大きな核、および顕著な核小体を有するため、そのように命名されている。
【0106】
小細胞肺癌-小細胞肺癌(SCLC)では、細胞は濃い神経分泌顆粒(神経内分泌ホルモンを含む小胞)を含み、そのため、この腫瘍は、内分泌/腫瘍随伴症候群と関連する。ほとんどの症例は、より大きな気道(原始および二次性気管支)において生じる。これらの癌は急速に増殖し、疾患の経過中早期に拡がる。診察時には、60~70パーセントが転移性疾患を有する。
【0107】
一実施形態において、癌は非小細胞肺癌である。
【0108】
一実施形態において、腎臓癌、例えば腎細胞癌および/または尿路上皮細胞癌を本明細書に開示する腫瘍崩壊性アデノウイルスを用いて治療することが与えられる。腎臓癌の他の例には、扁平上皮癌、傍糸球体細胞腫瘍(腎腫)、血管筋脂肪腫、腎膨大細胞腫、ベリニ管癌、腎臓の明細胞肉腫、間葉芽腎腫、ウィルムス腫瘍、混合上皮間質腫瘍、明細胞腺癌、移行上皮癌、内反性乳頭腫、腎臓リンパ腫、奇形腫、癌肉腫、および腎盂のカルチノイド腫瘍が含まれる。
【0109】
一実施形態において、癌は膀胱癌であり、例えば、膀胱の上皮内層(すなわち、尿路上皮)から生じるいくつかの種類の悪性腫瘍のうちのいずれかである。膀胱癌の約90%は移行上皮癌である。他の10%は、扁平上皮癌、腺癌、肉腫、小細胞癌、および身体の他の場所の癌由来の二次沈着である。病期分類は以下の通りである。
【0110】
T(原発腫瘍)
・TX 原発腫瘍を評価することはできない
・T0 原発腫瘍の証拠がない
・Ta 非侵襲性乳頭状癌
・Tis 上皮内癌(「平らな腫瘍」)
・T1 腫瘍は上皮下結合組織を侵す
・T2a 腫瘍は浅層にある筋肉(内側半分)を侵す
・T2b 腫瘍は深層にある筋肉(外側半分)を侵す
・T3 腫瘍は、膀胱周囲組織を侵す:
・T3a 微視的
・T3b 肉眼的(膀胱外腫瘤)
・T4a 腫瘍は前立腺、子宮、または膣を侵す
・T4b 腫瘍は骨盤壁または腹壁を侵す
N(リンパ節)
・NX 局所リンパ節を評価することはできない
・N0 局所リンパ節転移がない
・N1 単一のリンパ節における転移は最大径が2cm以下
・N2 最大径が2cm以上5cm以下の単一のリンパ節、または最大径が5cm以下の複数のリンパ節における転移
・N3 リンパ節における転移は最大径が5cm以上
M(遠隔転移)
・MX 遠隔転移を評価することはできない
・M0 遠隔転移がない
・M1 遠隔転移
【0111】
本明細書で使用される甲状腺癌は、濾胞または傍小胞甲状腺細胞に由来する甲状腺の癌を指し、乳頭状甲状腺癌(症例の75%~85%)、濾胞性甲状腺癌(症例の10%~20%);髄様甲状腺癌(症例の5%~8%)-多発性内分泌腫瘍2型の部分であることが多い、傍濾胞細胞の癌;低分化甲状腺癌;治療に反応せず、圧迫症状を引き起こし得る未分化甲状腺癌(症例の5%未満)、甲状腺リンパ腫、扁平細胞甲状腺癌、甲状腺の肉腫が含まれる。
【0112】
本明細書で使用される腎臓癌は、腎臓の癌、例えば腎細胞癌および腎盂の移行上皮癌、例えば、扁平上皮癌、傍糸球体細胞腫瘍(腎腫)、血管筋脂肪腫、腎膨大細胞腫、ベリニ管癌、腎臓の明細胞肉腫、間葉芽腎腫、ウィルムス腫瘍、混合上皮間質腫瘍、明細胞腺癌、移行上皮癌、内反性乳頭腫、腎臓リンパ腫、奇形腫、癌肉腫、腎盂のカルチノイド腫瘍を指す。
【0113】
本明細書で使用される膀胱癌は、移行上皮性膀胱癌、上皮内癌、乳頭状癌、ならびに扁平上皮癌および腺癌などの希少な種類の膀胱癌を含む膀胱の癌を指す。
【0114】
本明細書で使用される食道癌は、食道扁平上皮癌、食道腺癌、および扁平上皮癌の変種、ならびに非上皮腫瘍、例えば平滑筋肉腫、悪性黒色腫、横紋筋肉腫、リンパ腫などを含む食道の癌を指す。
【0115】
本明細書で使用される頭頚部癌は、口腔癌、鼻咽腔癌、中咽頭癌、副鼻腔癌、および唾液腺癌を含む、首および/または頭の癌を指す。
【0116】
化学療法剤
化学療法剤および化学療法または細胞傷害剤は、本文脈上他を意味しない限り、本明細書中で互換的に用いられる。
【0117】
本明細書で使用される化学療法は、悪性細胞および組織を「選択的に」破壊する特定の抗腫瘍性化学薬品または薬剤、例えばアルキル化剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤を含む代謝拮抗薬、アントラサイクリン、植物アルカロイドを含む抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、parp阻害剤、および他の抗腫瘍剤を指すことが意図されている。言うまでもなくこれらの薬剤の多くは深刻な副作用があるため、ここでは選択的に緩やかに使用する。
【0118】
好ましい用量は、治療されている癌の性質に基づいて医師が選択し得る。
【0119】
本開示の方法において使用され得るアルキル化剤の例には、アルキル化剤ニトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、テトラジン、アジリジン、プラチンおよび誘導体、および非古典的アルキル化剤が含まれる。
【0120】
例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、およびリポプラチン(シスプラチンのリポソーム型)、特にシスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンなどの白金含有化学療法剤(プラチンとも呼ばれる)。
【0121】
シスプラチンの用量は、正確な癌に応じて約20~約270mg/mの範囲である。しばしば用量は約70~約100mg/mの範囲内にある。
【0122】
ニトロジェンマスタードには、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、およびブスルファンが含まれる。
【0123】
ニトロソ尿素には、N-ニトロソ-N-メチル尿素(MNU)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、およびセムスチン(MeCCNU)、フォテムスチン、およびストレプトゾトシンが含まれる。テトラジンには、ダカルバジン、ミトゾロミド、およびテモゾロミドが含まれる。
【0124】
アジリジンには、チオテパ、マイトマイシン、およびジアジクオン(diaziquone)(AZQ)が含まれる。
【0125】
本開示の方法において使用され得る代謝拮抗薬の例には、抗葉酸塩(例えば、メトトレキセートおよびペメトレキセド)、プリン類似体(例えば、チオプリン、例えば、アザチオプリン、メルカプトプリン、チオプリン、フルダラビン(リン酸形態を含む)、ペントスタチン、およびクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えば、フルオロピリミジン、例えば、5-フルオロウラシル、およびそのプロドラッグ、例えば、カペシタビン[Xeloda(登録商標)])、フロクスウリジン、ゲムシタビン、シタラビン、デシタビン、ラルチトレキセド(トムデックス)塩酸塩、クラドリビン、および6-アザウラシルが含まれる。
【0126】
本開示の方法において使用され得るアントラサイクリンの例には、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ダウノルビシン(リポソーム)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシン(リポソーム)、エピルビシン、イダルビシン、現在膀胱癌の治療にのみ使用されているバルルビシン、およびミトキサントロン、アントラサイクリン類似体、特にドキソルビシンが含まれる。
【0127】
本開示の方法において使用され得る抗微小管剤の例には、ビンカアルカロイドおよびタキサンが含まれる。
ビンカアルカロイドには、完全に天然の化学物質、例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン、ならびに半合成ビンカアルカロイド、例えばビノレルビン、ビンデシン、およびビンフルニンを含まれる。
【0128】
タキサンには、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン、カルバジタキセル(carbazitaxel)、およびそれらの誘導体が含まれる。本明細書で使用されるタキサンの誘導体には、ミセル製剤中などのタキソールのようなタキサンの改質物が含まれ、誘導体には、タキサンである出発物質を改質するために合成化学が用いられる化学誘導体も含まれる。
【0129】
本開示の方法において使用され得るトポイソメラーゼ阻害剤には、I型トポイソメラーゼ阻害剤、II型トポイソメラーゼ阻害剤、およびII型トポイソメラーゼ毒が含まれる。I型阻害剤には、トポテカン、イリノテカン、インドテカン(indotecan)、およびインジメテカン(indimitecan)が含まれる。II型阻害剤には、以下の構造を有するゲニステインおよびICRF193が含まれる。
【0130】
【化4】
【0131】
II型毒には、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、およびドキソルビシン、およびフルオロキノロンが含まれる。
【0132】
一実施形態において、化学療法薬はPARP阻害剤である。
【0133】
併用療法
一実施形態において、使用される化学療法剤の併用は、例えばプラチンおよび5-FUまたはそのプロドラッグ、例えばシスプラチンまたはオキサプラチンおよびカペシタビンまたはゲムシタビン、例えばFOLFOXである。
【0134】
一実施形態において、化学療法は、化学療法剤、特に細胞傷害性化学療法剤の併用を含んでなる。
【0135】
一実施形態において、化学療法の併用は、プラチン、例えば、シスプラチンおよびフルオロウラシルまたはカペシタビンを含んでなる。
【0136】
一実施形態において、化学療法の併用は、カペシタビンおよびオキサリプラチン(Xelox)である。
【0137】
一実施形態において、化学療法は、フォリン酸と5-FUとの併用であり、任意でオキサリプラチンを併用する。
【0138】
一実施形態において、化学療法は、フォリン酸、5-FU、およびイリノテカン(FOLFIRI)の併用であり、任意でオキサリプラチン(FOLFIRINOX)を併用する。レジメンは、フォリニン酸(120分間にわたる400mg/m[または2×250mg/m]IV)と同時にイリノテカン(90分間にわたる180mg/m IV);続いてフルオロウラシル(400~500mg/m IVボーラス)、次いでフルオロウラシル(2400~3000mg/m、46時間にわたる静脈内注入)からなる。このサイクルを、通常2週間ごとに繰り返す。上記の投薬量は、サイクルごとに変化し得る。
【0139】
一実施形態において、化学療法の併用は、微小管阻害剤、例えば、ビンクリスチン硫酸塩、エポチロンA、N-[2-[(4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-3-ピリジニル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(ABT-751)、タキソール誘導化学療法剤、例えば、パクリタキセル、アブラキサン、またはドセタキセル、またはそれらの組み合わせを用いる。
【0140】
一実施形態において、化学療法の併用は、mTor阻害剤を用いる。mTor阻害剤の例には、エベロリムス(RAD001)、WYE-354、KU-0063794、パパマイシン(シロリムス)、テムシロリムス、デフォロリムス(MK-8669)、AZD8055、およびBEZ235(NVP-BEZ235)が含まれる。
【0141】
一実施形態において、化学療法の併用は、MEK阻害剤を用いる。MEK阻害剤の例には、AS703026、CI-1040(PD184352)、AZD6244(Selumetinib)、PD318088、PD0325901、AZD8330、PD98059、U0126-EtOH、BIX02189、またはBIX02188が含まれる。
【0142】
一実施形態において、化学療法の併用は、AKT阻害剤を用いる。AKT阻害剤の例には、MK-2206およびAT7867が含まれる。
【0143】
一実施形態において、併用は、オーロラキナーゼ阻害剤を用いる。オーロラキナーゼ阻害剤の例には、オーロラA阻害剤I、VX-680、AZD1152-HQPA(Barasertib)、SNS-314メシレート、PHA-680632、ZM-447439、CCT129202、およびHesperadinが含まれる。
【0144】
一実施形態において、化学療法の併用は、例えば国際公開第2010/038086号に開示されている、p38阻害剤、例えば、N-[4-({4-[3-(3-tert-ブチル-1-p-トリル-1H-ピラゾール-5-イル)ウレイド]ナフタレン-1-イルオキシ}メチル)ピリジン-2-イル]-2-メトキシアセトアミドを用いる。
【0145】
一実施形態において、併用は、Bcl-2阻害剤を用いる。Bcl-2阻害剤の例には、メシル酸オバトクラックス、ABT-737、ABT-263(ナビトクラックス)およびTW-37が含まれる。
【0146】
一実施形態において、化学療法の併用は、代謝拮抗薬、例えば、カペシタビン(Xeloda)、リン酸フルダラビン、フルダラビン(フルダラ)、デシタビン、ラルチトレキセド(トムデックス)、塩酸ゲムシタビン、およびクラドリビンを含んでなる。
【0147】
一実施形態において、化学療法の併用は、ガンシクロビルを含んでなり、ガンシクロビルは、免疫反応および/または腫瘍脈管形成(tumour vasculation)の制御を補助し得る。
【0148】
一実施形態において、化学療法はPARP阻害剤を含む。
【0149】
一実施形態において、化学療法には、DHODH酵素の活性の特異的阻害を伴う癌代謝の阻害剤が含まれる。
【0150】
一実施形態において、本明細書の方法で使用される1つ以上の治療法は、メトロノームであり、しばしば他の治療方法と同時に与えられる低用量の抗癌薬による連続的または頻回の治療である。
【0151】
一実施形態において、2、3、4、5、6、7、8などの複数サイクルの治療(化学療法など)の使用が与えられる。
【0152】
一実施形態において、化学療法は、28日サイクルで用いられる。
【0153】
本明細書における「含んでなる」は、「含む」ことを意味することが意図されている。技術的に適当な場合、本発明の実施形態を組み合わせてもよい。
【0154】
実施形態は、特定の特徴/要素を含んでなるものとして本明細書に記載されている。本開示はまた、前記特徴/要素からなる、または本質的になる別個の実施形態にも及ぶ。
【0155】
特許および出願などの技術的参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0156】
本明細書に具体的かつ明示的に列挙された実施形態は、単独で、または1つ以上の他の実施形態と組み合わせて、除くクレームの基礎を形成し得る。
【0157】
本発明を以下の実施例を参照して説明するが、これらは単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものと決して解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0158】
図1】400mgバルリチニブBIDおよびシスプラチン/カペシタビン化学療法を受けた78歳男性の患者データを示す。
図2】400mgバルリチニブBIDおよびシスプラチン/カペシタビン化学療法を受けた46歳女性の患者データを示す。
図3】400mgバルリチニブBIDおよびシスプラチン/カペシタビン化学療法を受けた56歳男性の患者データを示す。
図4】500mgバルリチニブBIDおよびシスプラチン/カペシタビン化学療法を受けた60歳男性の患者データを示す。
図5】300mgバルリチニブBIDおよびオキサリプラチン/カペシタビン化学療法を受けた実施例4の57歳男性の患者データを示す。
図6a】バルリチニブ第Ib相試験-台湾における患者を示す。
図6b】バルリチニブ第Ib相試験-台湾における患者を示す。
図7a】台湾の試験における、時間の経過に伴う個々の患者の病変サイズの変化を示す。
図7b】シンガポールの試験における、時間の経過に伴う個々の患者の病変サイズの変化を示す。
図8a】台湾試験における、個々の患者のベースラインからの腫瘍サイズの最大変化パーセンテージを示す。
図8b】シンガポール試験における、個々の患者のベースラインからの腫瘍サイズの最大変化パーセンテージを示す。
図9】バルリチニブおよびカペシタビンまたはラパチニブおよびカペシタビンを用いた第2A/B相乳癌研究を示す。
図10】バルリチニブおよびカペシタビンまたはラパチニブおよびカペシタビンを用いた第2A/B相乳癌研究について評価可能な対象の最良の反応のウォーターフォール・プロットを示す。
図11】バルリチニブおよびカペシタビンまたはラパチニブおよびカペシタビンを用いた第2A/B相乳癌研究について全対象の反応を示す。
図12】シンガポール試験における個々の患者の投薬日数を示す。
図13】バルリチニブ新補助乳癌研究の試験デザインを示す。
【実施例
【0159】
実施例1 1日2回の経口の400mgのバルリチニブおよびシスプラチン/カペシタビン併用化学療法による胃癌の治療
Her2陽性(3+)ステージIV胃癌を有する78歳の男性は、以下の後、2つの標的病変の形態の進行性病態を有していた。
・シスプラチンとXeloda(登録商標)(カペシタビン)を用いる一次治療-4サイクル、
・実験用薬剤TDM1(Herceptin(登録商標)を含んでなる抗体薬剤コンジュゲート)を用いる二次治療-9サイクル、
・実験用薬剤LJM716(HER3モノクローナル抗体)およびHerceptin(登録商標)を用いる三次治療。
【0160】
1日2回の400mgのASLAN001、シスプラチンおよびカペシタビンを用いた治療サイクル4の後は、図1を参照されたい。最初の2回の治療サイクルでは用量制限毒性は観察されなかった。ASLAN001は耐容性が良好であった。シスプラチンおよびカペシタビン治療計画は、3週間ごとに14日間、1日2回、シスプラチン80mg/m IV注入および経口でカペシタビン1000mg/mであった。
【0161】
胃癌(4つの標的病変)を有する46歳の女性に、1日2回のバルリチニブ400mg、シスプラチンおよびカペシタビンの一次治療を与えた。最初の2回の治療サイクルでは用量制限毒性は観察されなかった。バルリチニブは耐容性が良好であった。シスプラチンおよびカペシタビン治療計画は、3週間ごとに14日間、1日2回、シスプラチン80mg/m IV注入および経口でカペシタビン1000mg/mであった。患者はサイクル4の後に41%の反応を示した。図2を参照されたい。良好な反応にもかかわらず、患者は新たな骨病変の発達により進行性病態に指定された。
【0162】
実施例2 1日2回の経口の400mgのバルリチニブおよびシスプラチン/カペシタビン併用化学療法による胆管癌の治療
ステージIVの胆管癌(3病変)を有する56歳の男性は、以下の治療後に進行性病態を有していた。
・放射線療法、および
・ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))およびシスプラチン-6ヶ月。
【0163】
1日2回のバルリチニブ400mg、シスプラチンおよびカペシタビンを用いた治療サイクル6の後、患者は85.77%の反応を示した。図3を参照されたい。最初の2回の治療サイクルでは用量制限毒性は観察されなかった。バルリチニブは耐容性が良好であった。シスプラチンおよびカペシタビン治療計画は、3週間ごとに14日間、1日2回、シスプラチン80mg/m IV注入および経口でカペシタビン1000mg/mであった。
【0164】
実施例3 1日2回の経口の500mgのバルリチニブおよびシスプラチン/カペシタビン併用化学療法による胆管癌の治療
ステージIVの胆管癌を有する60歳の男性は、放射線療法および隔週5-FUの治療後に進行性病態を有していた。
【0165】
1日2回の経口のバルリチニブ500mg、シスプラチンおよびカペシタビンを用いた治療サイクル2の後、患者は4%の反応を示した。図4を参照されたい。シスプラチンおよびカペシタビン治療計画は、3週間ごとに14日間、1日2回、シスプラチン80mg/m IV注入および経口でカペシタビン1000mg/mであった。
【0166】
実施例4 バルリチニブ300mg BIDオキサリプラチン/カペシタビンによるステージIV S状結腸癌の治療
肝臓、肺、およびリンパ節への転移を伴うステージIV S状結腸癌を有する57歳の男性。
事前の治療は以下を含んでいた。
・右側肝臓切除および胆嚢摘出を伴う前方切除
・XELOX(PD)、XELIRI(PR)、イリノテカンおよびセツキシマブ(SD)
・Xelodaおよびアバスチン(SD)、Bayer PTEFb-CDK9阻害剤(PD)
【0167】
3週間サイクル当りの治療は、サイクル6までは1日2回の経口の300mgのASLAN001、オキサリプラチン130mg/m IV注入(1日目)およびカペシタビン850mg/m(1日目~14日目)であり、次いでサイクル7+以降は、4週間サイクル当り、単剤療法として1日2回のバルリチニブ300mgであった。
【0168】
2サイクル後、オキサリプラチン/カペシタビン+バルリチニブは335の部分反応を示し、その結果を図5に示す。
【0169】
実施例5 1日2回の経口の400mgのバルリチニブおよびシスプラチン/5FU併用化学療法によるステージIVの胆管癌および転移性リンパ節腫脹の治療
2016年1月に診断されたステージIV胆管癌および転移性リンパ節腫脹を有する、事前の手術または治療を受けていない49歳の男性は、28日サイクルのCis/5-FUとの併用での300mg BIDバルリチニブの一次治療を受けた。
【0170】
最初の反応の日付2016年3月5日、腫瘍C2は16%減少した。最後の反応である腫瘍C4は13%減少した(2016年5月17日)。患者の現在の病態は、安定病態である。
【0171】
実施例6 300mgのバルリチニブおよびFOLFOXによる肝内胆道胆管癌の治療
肝内胆道胆管癌と2013年に診断された51歳の女性は、2013年7月15日に、左側肝臓切除の形態で手術を受けた。従前の治療法は、2013年8月14日から2014年1月8日の最終投与でゲムシタビンおよびシスプラチンであり、2015年5月13日~2015年7月1日に繰り返し行われた。この治療では病態は進行性病態であった。
【0172】
患者には、400mgを300mg BIDに減らしたバルリチニブおよびFOLFOXの併用を9サイクル与えた。これに続いて、7サイクルのバルリチニブ単独療法が行われた。患者の状態は部分的に反応し、腫瘍サイズが50%減少した。
【0173】
実施例7 300mgのバルリチニブおよびFOLFOXによる膀胱癌の治療
63歳の男性は、2014年に、膀胱癌と診断された。彼は、2014年2月20日に根治的な膀胱前立腺切除術とシスプラチンおよび放射線療法(骨盤)による事前の治療とを受け、2015年4月10日から2015年5月8日の最終投与でゲムシタビンおよびシスプラチンを受けた。
【0174】
患者は、9サイクルの300mgバルリチニブBIDおよびFOLFOXおよび5サイクルのバルリチニブ300mg単独療法を受けた。併用療法でのバリチニブは、G2体重減少により、2015年9月21日~27日;2015年10月21日~10月23日に中断し、4日間投与および3日間非投与であった。患者の状態は、最良の腫瘍変化%が-4%の安定病態である。
【0175】
実施例8 1日2回の経口の300mgのバルリチニブおよびシスプラチン/5FU併用化学療法28日サイクルによるステージIVの肝内胆管癌および多発性リンパ節腫脹の治療
2016年5月に肝内胆管癌および多発性リンパ節腫脹と診断された64歳の女性が、一次治療としてバルリチニブ併用療法を受けた。
【0176】
当該患者に、Cis/5-FUとの併用でのバルリチニブ300mg BIDを28日サイクルで与えた。現在の状況は、臨床試験が進行中である。
【0177】
2016年6月現在、臨床データの概要は以下である。
【0178】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
図13