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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】化学蓄熱用造粒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/16 20060101AFI20230816BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C09K5/16
F28D20/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019062749
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020158730
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000108764
【氏名又は名称】タテホ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】塘 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】林 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉江 建一
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-162746(JP,A)
【文献】国際公開第2007/142192(WO,A1)
【文献】特開2015-838(JP,A)
【文献】特開2018-90706(JP,A)
【文献】特開2001-31415(JP,A)
【文献】特開2018-123217(JP,A)
【文献】特開2007-309561(JP,A)
【文献】特開2016-190990(JP,A)
【文献】特開2019-44028(JP,A)
【文献】特開2009-186119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00- 5/20
F25B 15/00- 17/12
F28D 17/00- 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、複合水酸化物、及び複合酸化物から選択される少なくとも1種の化学蓄熱成分を含み、
階層的多孔構造を有し、
水銀圧入法で測定した細孔分布において、細孔直径0.03μm以上0.3μm未満の範囲と、細孔直径0.4μm以上2μm未満の範囲それぞれに、極大値を持つピークを1つ以上有する化学蓄熱用造粒体を形成する工程を含み、
前記化学蓄熱用造粒体の形成が、前記化学蓄熱成分と、有機材料から構成される造孔材との混合物から成形した造粒成形体を焼成するものである、化学蓄熱用造粒体を製造する方法。
【請求項2】
前記化学蓄熱成分と、アルカリ金属の化合物を混合する工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記化学蓄熱成分と、金属の酸塩を混合する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記化学蓄熱成分と、ニッケル、コバルト、銅およびアルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属の化合物を混合する工程をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学蓄熱用造粒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素排出規制によって化石燃料の使用削減が求められており、各プロセスの省エネルギー化に加え、排熱の利用を進める必要がある。排熱の利用の手段としては、水を利用した100℃以下の温水蓄熱が知られている。しかし、温水蓄熱には、(1)放熱損失があるため長時間の蓄熱が不可能である、(2)顕熱量が小さいため大量の水が必要であり、蓄熱設備のコンパクト化が困難である、(3)出力温度が利用量に応じて非定常で、次第に降下する、等の問題がある。したがって、排熱の民生利用を進めるためには、より効率の高い蓄熱技術を開発する必要がある。
【0003】
効率の高い蓄熱技術として化学蓄熱法が挙げられる。化学蓄熱法は、物質の吸着、水和等の化学変化を伴うため、材料自体(水、溶融塩等)の潜熱や顕熱による蓄熱法に比べて単位質量当たりの蓄熱量が高くなる。化学蓄熱法としては、大気中の水蒸気の吸脱着による水蒸気吸脱着法、金属塩へのアンモニア吸収(アンミン錯体生成反応)、アルコール等の有機物の吸脱着による反応等が提案されている。環境への負荷や装置の簡便性を考慮すると、水蒸気吸脱着法が最も有利である。水蒸気吸脱着法に用いられる化学蓄熱材として、カルシウムまたはマグネシウムの酸化物及び水酸化物が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1では、マグネシウム又はカルシウムの水酸化物に、塩化リチウム等の吸湿性金属塩を添加することで、単位質量または単位体積当たりの蓄熱量が高く、100~350℃で蓄熱可能な化学蓄熱材が提案されている。
【0005】
さらに、特許文献2では、水酸化カルシウムによる化学蓄熱材において、セピオライト等による骨格構造体を形成させることで、脱水反応時の化学蓄熱材層の凝集を抑制でき、脱水反応後に水和反応へ移行させたときに、水和反応を進行させることができ、脱水反応と水和反応の可逆性が保持されることが開示されている。
【0006】
特許文献3では、粉体の化学蓄熱材とセピオライト等の粘度鉱物を一次成形し、さらにセピオライト等の粘土鉱物と混合して二次成形した化学蓄熱材成型体が開示されている。
【0007】
特許文献4では、粉体の化学蓄熱材と層状複水酸化物(LDH)とが層状に接着した化学蓄熱複合体が開示されている。
【0008】
特許文献5では、細孔径を有する多孔カプセルに蓄熱材を封入する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-186119号公報
【文献】特開2009-256517号公報
【文献】特開2009-132844号公報
【文献】特開2009-203444号公報
【文献】特開昭62-213689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の化学蓄熱材を粉体状で用いると、作動中における水和反応及び脱水反応において体積変化が繰り返されることによって微粉化した後、凝集してしまい、反応面積が減少することで、蓄熱システムとしての反応性が低下する問題があった。
【0011】
特許文献2に開示された技術では、粘土鉱物を用いてかご状構造体を形成させ、構造体の外表面または細孔内部に化学蓄熱材を担持させることで、脱水反応時の化学蓄熱材層の凝集を抑制しているが、骨格構造体の強度が弱く、化学蓄熱材層の凝集抑制が十分ではなかった。
【0012】
特許文献3に開示された技術では、粉体の化学蓄熱材を一次成形し、さらに粘度鉱物と混合して二次成形後に焼成してなる二次構造体とすることで、反応性を向上した化学蓄熱成型体が開示されているが、構造体を形成する粘土鉱物の割合が増すことで、蓄熱材としての蓄熱密度が低下する問題があった。
【0013】
同様に、特許文献4及び5に開示された技術においても、熱伝導抵抗の増加および蓄熱密度が低下する問題があった。
【0014】
化学蓄熱材の反応性及び耐久性を一層向上させることは、依然として重要な課題である。蓄熱効率の改良や、蓄熱システムの適用温度域の拡張などの側面からも、より反応効率が高く耐久性に優れた化学蓄熱材を開発することが求められている。そこで、本発明は、上記現状に鑑み、アルカリ土類金属の水酸化物及び/又は酸化物等の脱水・水和反応を利用した蓄熱を行なう化学蓄熱材において、より反応性に優れ、かつ、繰り返し使用した後にも反応性を維持できる化学蓄熱材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、従来技術を考慮して鋭意研究の結果、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、複合酸化物、及び複合水酸化物から選択される少なくとも1種の化学蓄熱成分を含む化学蓄熱材において、造粒体を形成し、当該造粒体が有する細孔を制御して階層的多孔構造を導入することで、より優れた反応率を示し、かつ、繰り返し使用した後にも反応性を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、第一の本発明は、アルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、複合水酸化物、及び複合酸化物から選択される少なくとも1種の化学蓄熱成分を含み、階層的多孔構造を有する、化学蓄熱用造粒体に関する。前記化学蓄熱用造粒体は、好ましくは、水銀圧入法で測定した細孔分布において、細孔直径0.01μm以上0.3μm未満の範囲と、細孔直径0.3μm以上3μm未満の範囲それぞれに、極大値を持つピークを1つ以上有し、より好ましくは、細孔直径0.03μm以上0.3μm未満の範囲と、細孔直径0.4μm以上2μm未満の範囲それぞれに、極大値を持つピークを1つ以上有する。この時、さらに加えて、0.3μm以上~0.4μm未満の範囲にピークを有していても良い。好ましくは、前記極大値における細孔容積の値がそれぞれ、0.3ml/g以上2.0ml/g未満の範囲である。好ましくは、前記アルカリ土類金属が、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選択される少なくとも1種である。好ましくは、前記化学蓄熱用造粒体は、さらに、アルカリ金属の化合物を含み、前記アルカリ金属の化合物の量は、前記化学蓄熱成分に対して0.1~50モル%である。好ましくは、前記アルカリ金属が、リチウム、カリウム、及びナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である。好ましくは、前記化学蓄熱用造粒体は、さらに、金属の酸塩を含み、前記金属の酸塩の量は、前記化学蓄熱成分に対して0.05~30モル%である。好ましくは、前記金属の酸塩が、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸塩であり、また、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸塩であり、また、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸塩である。好ましくは、前記化学蓄熱用造粒体は、さらに、ニッケル、コバルト、銅およびアルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属の化合物を含み、前記金属の量は、前記化学蓄熱成分に対して0.1~40モル%である。
【0017】
第二の本発明は、アルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、複合水酸化物、及び複合酸化物から選択される少なくとも1種の化学蓄熱成分を含み、階層的多孔構造を有する化学蓄熱用造粒体を形成する工程を含む、前記化学蓄熱用造粒体を製造する方法にも関する。好ましくは、前記化学蓄熱成分と、有機材料から構成される造孔材との混合物から造粒成形体を成形し、これを焼成することにより、前記化学蓄熱用造粒体を形成する。好ましくは、前記化学蓄熱成分と、アルカリ金属の化合物を混合する工程をさらに含み、また、前記化学蓄熱成分と、金属の酸塩を混合する工程をさらに含み、また、前記化学蓄熱成分と、ニッケル、コバルト、銅およびアルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属の化合物を混合する工程をさらに含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、アルカリ土類金属の水酸化物及び/又は酸化物等の脱水・水和反応を利用した蓄熱を行う化学蓄熱材において、より反応性に優れ、かつ、繰り返し使用した後にも反応性を維持できる化学蓄熱材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1又は比較例1で得た化学蓄熱用造粒体について測定した細孔分布を示すグラフ
図2】実施例1又は比較例1で得た化学蓄熱用造粒体について測定した、水和反応における反応率の経時変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明に係る化学蓄熱用造粒体は、主成分として、アルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、複合水酸化物、及び複合酸化物から選択される少なくとも1種の化学蓄熱成分を含有するものであって、アルカリ土類金属の水酸化物及び酸化物による以下の可逆反応を利用したものである。なお、以下の反応式では、アルカリ土類金属としてカルシウム又はマグネシウムを用いた場合について示した。
CaO+HO⇔Ca(OH) △H=-109.2kJ/モル
MgO+HO⇔Mg(OH) △H=-81.2kJ/モル
【0021】
各式中、右方向への反応は酸化カルシウム又は酸化マグネシウムの水和発熱反応である。反対に、左方向への反応は水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムの脱水吸熱反応である。すなわち本発明の化学蓄熱用造粒体は、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムの脱水反応が進行することによって蓄熱することができ、また、蓄えられた熱エネルギーを、酸化カルシウム又は酸化マグネシウムの水和反応が進行することによって供給することができる。
【0022】
本発明における化学蓄熱用造粒体は、その主成分として、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の複合水酸化物、及びアルカリ土類金属の複合酸化物いずれかを含むものであればよく、これらを組み合わせて含むものであってもよい。前記アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。これらを1種のみ含むものであってもよく、2種以上を組み合わせて含むものであっても良い。このうち、カルシウム及び/又はマグネシウムが好ましく、マグネシウムがより好ましい。アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の複合水酸化物、及びアルカリ土類金属の複合酸化物として、好ましくは、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、マグネシウムとカルシウムの複合水酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、マグネシウムとカルシウムの複合酸化物が挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0023】
本発明の化学蓄熱用造粒体は、アルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、複合水酸化物、及び複合酸化物から選択される少なくとも1種の化学蓄熱成分(以下、化学蓄熱成分と略する場合がある)に加えて、さらにアルカリ金属の化合物を含んでも良い。アルカリ金属の化合物をさらに配合することで、化学蓄熱用造粒体の反応率をより高めることができる。
【0024】
前記アルカリ金属の化合物を構成するアルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウムが挙げられ、これらを1種のみ含むものであってもよく、2種以上を組み合わせて含むものであっても良い。このうち、リチウム、ナトリウムが好ましく、リチウムがより好ましい。前記アルカリ金属の化合物としては、本発明の効果を奏するものである限り特に限定されないが、吸湿性を有する塩であって、雰囲気中の水分を吸着するか、又は対応する水和物を生成することができる塩が好ましい。そのような塩としては、例えば、取り扱いが容易なものとして、塩化物、臭化物等のハロゲン化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、又は硫酸塩などが挙げられる。これらを単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0025】
より具体的には、リチウムの塩としては、ハロゲン化リチウム及び/又は水酸化リチウムが好ましく、塩化リチウム、臭化リチウム、及び/又は水酸化リチウムがより好ましい。カリウムの塩としては、ハロゲン化カリウム及び/又は水酸化カリウムが好ましく、塩化カリウム、臭化カリウム、及び/又は水酸化カリウムがより好ましい。ナトリウムの塩としては、ハロゲン化ナトリウム及び/又は水酸化ナトリウムが好ましく、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、及び/又は水酸化ナトリウムがより好ましい。ただし、アルカリ金属の化合物と、後述する金属の酸塩は異なる化合物であり、ある化合物が、アルカリ金属の化合物と金属の酸塩の双方に該当し得る場合には、当該化合物は、アルカリ金属の化合物に該当するものとする。
【0026】
前記アルカリ金属の化合物の使用量としては、前記化学蓄熱成分の量を100モル%としたときに、アルカリ金属の化合物の量が0.1~50モル%となる量であることが好ましい。アルカリ金属の化合物の量が前記範囲より少なくなると、アルカリ金属の化合物の使用による反応率の向上または蓄熱温度の低温化を達成することが困難となる。また、アルカリ金属の化合物の量が前記範囲より多くなると、化学蓄熱用造粒体による単位体積又は単位質量あたりの蓄熱量が低下する恐れがある。前記アルカリ金属の化合物の量は、0.5~30モル%が好ましく、1.0~20モル%がより好ましく、2.0~10モル%がさらに好ましい。当該アルカリ金属の化合物の量を調節することで、化学蓄熱用造粒体の脱水吸熱温度を制御することができる。
【0027】
本発明の化学蓄熱用造粒体は、前記化学蓄熱成分と、任意成分である前記アルカリ金属の化合物に加えて、さらに特定の金属の化合物を含んでも良い。前記特定の金属の化合物をさらに含めることで、化学蓄熱用造粒体の反応率をより高めることができる。この時、前記特定の金属の化合物は、前記化学蓄熱成分と化学的に複合化していることが好ましい。
【0028】
前記特定の金属は、ニッケル、コバルト、銅、及びアルミニウムからなる群より選択され、これらを1種のみ含むものであってもよく、2種以上を組み合わせて含むものであっても良い。このうち、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、ニッケル及び/又はコバルトがより好ましい。
【0029】
前記特定の金属の化合物としては特に限定されないが、前記化学蓄熱成分と複合化するものであることが好ましく、塩化物、臭化物等のハロゲン化物、水酸化物、酸化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、又は硫酸塩などが挙げられる。これらを単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。より具体的には、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、ニッケルとコバルトの複合水酸化物、酸化ニッケル、酸化コバルト、及び/又はニッケルとコバルトの複合酸化物が好ましい。
【0030】
前記特定の金属の化合物の使用量としては、前記化学蓄熱成分の量を100モル%としたときに前記特定の金属の量が0.1~40モル%となる量であることが好ましい。前記特定の金属の量が前記範囲より少なくなると、前記特定の金属の化合物の使用による反応率の向上または蓄熱温度の低温化を達成することが困難となる。また、前記特定の金属の量が前記範囲より多くなると、化学蓄熱用造粒体による単位体積又は単位質量あたりの蓄熱量が低下する恐れがある。前記特定の金属の量は、3~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、10~25モル%がさらに好ましい。当該特定の金属の化合物の使用量を調節することで、化学蓄熱用造粒体の脱水吸熱温度を制御することができる。
【0031】
本発明における化学蓄熱用造粒体においては、主成分である前記化学蓄熱成分と、任意成分である前記アルカリ金属の化合物及び/又は前記特定の金属の化合物とが、単に物理的に混合又は分散されているものであってもよいが、これに限定されない。各構成成分の一部又は全部が互いと化学的に複合化したものであってよいし、また、各構成成分の一部又は全部が互いと化学的に反応して第三成分を生じているものであってもよい。
【0032】
本発明の化学蓄熱用造粒体は、前記化学蓄熱成分と、任意成分である前記アルカリ金属の化合物と、任意成分である前記特定の金属の化合物に加えて、さらに金属の酸塩を含んでも良い。金属の酸塩とは、金属の化合物が酸と反応することで形成される塩のことをいい、特には、金属の水酸化物を酸で中和することで形成される塩が好ましい。具体的には、例えば、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、安息香酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、安息香酸リチウム、クエン酸リチウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
前記金属の酸塩を構成する金属としては、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛が挙げられる。これらを1種のみ含むものであってもよく、2種以上を組み合わせて含むものであっても良い。このうち、カルシウム、リチウム及び/又はマグネシウムが好ましく、カルシウム及び/又はマグネシウムがより好ましい。前金属の酸塩を構成するアルカリ土類金属は、前記化学蓄熱成分を構成するアルカリ土類金属と同じものであってよいし、異なるものであってもよいが、化学蓄熱用造粒体の反応率向上の観点から、同じものであることが好ましい。ただし、本発明で使用する金属の酸塩がアルカリ土類金属の酸塩である時、当該アルカリ土類金属の酸塩としては、アルカリ土類金属の炭酸塩および塩化物を用いないことが好ましい。
【0034】
前記金属の酸塩を構成する酸としては、特に限定されず、公知の酸を適宜使用することができ、無機酸、有機酸のいずれであってもよい。また、水溶性の酸であってもよいし、水に難溶性または不溶性の酸であってもよい。また、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0035】
無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、ハロゲンオキソ酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、スルホン酸、ホウ酸、シアン化水素酸、ヘキサフルオロリン酸などが挙げられる。
【0036】
有機酸としては、例えば、有機スルホン酸、有機ホスホン酸、脂肪族ヒドロキシ酸(ジヒドロキシ酸、トリヒドロキシ酸を含む)、芳香族ヒドロキシ酸(ジヒドロキシ酸、トリヒドロキシ酸を含む)、脂肪族カルボン酸(ジカルボン酸、トリカルボン酸を含む)、脂肪族不飽和カルボン酸(ジカルボン酸、トリカルボン酸を含む)、芳香族カルボン酸(ジカルボン酸、トリカルボン酸を含む)、芳香族不飽和カルボン酸(ジカルボン酸、トリカルボン酸を含む)、その他のオキシ酸、その他のオキソカルボン酸、アミノ酸、及びこれら誘導体の酸が挙げられる。
【0037】
有機スルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、トルフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などが挙げられる。有機ホスホン酸類としては、例えば、リン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸などが挙げられる。脂肪族ヒドロキシ酸または芳香族ヒドロキシ酸としては、例えば、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。脂肪族カルボン酸または脂肪族不飽和カルボン酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アクリル酸、ソルビン酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、スクアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、アコニット酸などが挙げられる。芳香族カルボン酸または芳香族不飽和カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、シキミ酸、没食子酸、ピロメリト酸などが挙げられる。アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
【0038】
前記金属の酸塩の使用量としては、前記化学蓄熱成分の量を100モル%としたときに、前記金属の酸塩の量が0.05~30モル%となる量であることが好ましい。金属の酸塩の使用量が前記範囲より少なくなると、当該酸塩の添加による反応率の向上または蓄熱温度の低温化を達成することが困難となる。また、金属の酸塩の使用量が前記範囲より多くなると、母材となる化学蓄熱成分への影響が大きく、化学蓄熱用造粒体による単位体積又は単位質量あたりの蓄熱量が低下する恐れがある。前記金属の酸塩の使用量は、0.1~20モル%が好ましく、0.3~15モル%がより好ましく、0.5~10モル%がさらに好ましく、0.8~8モル%がよりさらに好ましく、1~6%が特に好ましい。
【0039】
[化学蓄熱用造粒体]
本発明の化学蓄熱用造粒体は、その形状は特に限定されないが、球形、円筒形、直方体等の形状とすることができる。その大きさは、特に限定されるものではないが、化学蓄熱装置への充填性および取扱性や、脱水/水和反応性および強度などを総合的に勘案して、形状も踏まえ適切な大きさを選択すればよい。
【0040】
[階層的多孔構造]
本発明の化学蓄熱用造粒体は、多数の細孔を有する多孔性のものであって、かつ、階層的多孔構造を有することに特徴がある。階層的多孔構造とは、化学蓄熱用造粒体の細孔分布において2以上のピークが示されるような構造のことをいう。
【0041】
具体的には、本発明でいう階層的多孔構造は、水銀圧入法によって測定された細孔分布において、2以上の細孔ピークを有することによって確認することができる。ここで、2以上の細孔ピークを有するという時には、細孔直径が0.01μm未満の領域で観察される微細な一次粒子内細孔に由来するピークや、細孔直径が10μmを超える領域で観察される造粒体間空隙に由来するピークは考慮しない。すなわち、前記細孔分布において、細孔直径が0.01μm以上10μm以下の領域内に2以上の細孔ピークを有することを指す。
【0042】
より詳細には、水銀圧入法で測定した細孔分布において、細孔直径0.01μm以上0.3μm未満の範囲と、細孔直径0.3μm以上3μm未満の範囲それぞれに、極大値を持つピークを1つ以上有することが好ましく、細孔直径0.03μm以上0.3μm未満の範囲と、細孔直径0.4μm以上から2μm未満の範囲それぞれに、極大値を持つピークを1つ以上有することがより好ましい。この時、さらに加えて、0.3μm以上~0.4μm未満の範囲にピークを有していても良い。また、前記極大値の少なくとも1つにおける細孔容積の値がそれぞれ、0.3ml/g以上2.0ml/g未満の範囲であることが好ましく、0.35ml/g以上2.0ml/g未満の範囲がより好ましく、0.4ml/g以上2.0ml/g未満の範囲であることがさらに好ましい。
【0043】
本発明の化学蓄熱用造粒体はこのような階層的多孔構造を有することで、優れた反応性及び耐久性を示すことができる。階層的多孔構造の形成が優れた反応性及び耐久性に寄与するメカニズムの詳細は明らかではないが、概ね次のように推測できる。直径が小さい細孔は化学蓄熱用造粒体の全体にわたって水蒸気を通過させる経路となる一方、直径が大きい細孔は、より微細な細孔に水蒸気を通過させるための経路となることに加えて、水和・脱水反応によって生じる体積変化又は微粉化による閉塞の影響を緩和し、さらに、表面付近の微細細孔が閉塞して造粒体内部への水蒸気流通を阻害する影響も緩和することによるものと推測される。
【0044】
したがって、本発明の化学蓄熱用造粒体は、細孔分布において2以上の細孔ピークを有する階層的多孔構造を有することによって、細孔分布が制御されておらず一様な又はランダムな細孔分布を有する従来の化学蓄熱材と比べて、反応性及び耐久性が向上した化学蓄熱用造粒体を提供することができる。
【0045】
本発明に係る化学蓄熱用造粒体は、その内部に、粘土鉱物や無機バインダー等から構成される、骨格構造や構造体を有しないものであることが好ましい。したがって、本発明に係る化学蓄熱用造粒体は、特許文献2及び3で開示されているような、主成分であるアルカリ土類金属の水酸化物及び/又は酸化物に、骨格構造や構造体を形成する材料を混合することで、構造体に主成分を担持、挿入、又は内包させてなる化学蓄熱用造粒体ではないことが好ましい。
【0046】
階層的多孔構造の形成は、特に限定されないが、一例として、化学蓄熱成分等に、有機材料から構成される造孔材を添加して混合物とした後、造粒体の形状に成形した後、例えば500℃程度の温度で焼成し、造孔材を焼き飛ばすことで、化学蓄熱用造粒体に階層的多孔構造を導入することができる。
【0047】
造孔材の種類、形状、大きさを選択することで、化学蓄熱用造粒体が有する細孔の大きさ、分布を調整することができる。造孔材は、焼成時の温度で消失する有機材料から適宜選択することができ、特に限定されないが、例えばフェノール樹脂、PVA樹脂、炭素粉体等を使用することができる。造孔材は、化学蓄熱用造粒体に導入する細孔の種類を考慮した大きさの粉末状のものを使用することが好ましい。造孔材の使用量は特に限定されないが、例えば、化学蓄熱成分、アルカリ金属の化合物、特定の金属の化合物、及び金属の酸塩の合計量100重量部に対して、1~50重量部程度であってよい。
【0048】
次に、本発明に係る化学蓄熱用造粒体を製造する方法について説明する。
本発明における化学蓄熱用造粒体を製造する方法は特に限定されないが、下記に一例を示す。アルカリ土類金属の水酸化物等の化学蓄熱成分の粉末、造孔材(例えば球状フェノール樹脂)、及び、適量のイオン交換水を加えて混合機で混練する。ここで、前述したアルカリ金属の化合物、特定の金属の化合物、金属の酸塩を使用する場合には、これらも適宜投入し、合わせて混練しても良い。得られた混練体を、押出し成形機を用いて、所定の形状に成形する。得られた成形体を乾燥し、必要用途に応じた篩目のスクリーンで篩別する。これを乾燥して、造粒成形体を製造することができる。
【0049】
得られた造粒成形体を、電気炉で大気雰囲気下において焼成し、造孔材を焼き除くことで、階層的多孔構造を有する化学蓄熱用造粒体を製造することができる。
【0050】
造粒成形体を製造する際には、押出造粒、転動造粒、流動層造粒、スプレードライ等の造粒工程を適用することができる。造粒工程に応じて乾式造粒又は湿式造粒を用いて行うことができ、湿式造粒を行った場合は、造粒後乾燥を行い、篩別をすることで適切な造粒成形体を得ることができる。
【0051】
成形体の化学蓄熱材を製造する際には、プレス成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、押出成形による成形工程を適用することができる。すなわち、化学蓄熱材としての性状を実施可能な程度に損なわない限りにおいては、需要者の実施形態に応じた任意の形状を選択することが可能である。
【0052】
本発明の化学蓄熱用造粒体は、100~400℃程度の熱源、例えば工場排熱等からの未利用熱を吸熱して脱水することにより蓄熱することができる。脱水された化学蓄熱用造粒体は、乾燥状態に保つことにより容易に蓄熱状態を維持することができ、またその蓄熱状態を維持しながら所望の場所へ持ち運ぶことができる。放熱する場合には、水、好ましくは水蒸気と接触させることにより水和反応熱(場合により、水蒸気収着熱)を熱エネルギーとして取り出すことができる。また、気密封鎖空間内の一方で水蒸気収着を行わせると共に、他方では水を蒸発させることにより冷熱を発生させることもできる。
【0053】
また、本発明の化学蓄熱用造粒体は、エンジンや燃料電池等から排出される排気ガスの熱を有効利用するのにも適している。例えば、排気ガスの熱は、自動車の暖機運転の短縮、搭乗者のアメニティーの向上、燃費の改善、排気ガス触媒の活性向上による排気ガスの低害化等に活用することができる。特に、エンジンでは運転による負荷が一定でなく排気出力も不安定であることから、エンジンからの排気熱の直接利用は必然的に非効率であり、不便を伴う。本発明の化学蓄熱用造粒体を利用すると、エンジンからの排気熱を一旦化学的に蓄熱し、熱需要に応じて熱出力することで、より理想的な排気熱利用が可能となる。
【0054】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
(評価方法)
(1)水蒸気吸脱着反応試験による反応率評価法
実施例及び比較例で得られた化学蓄熱用造粒体について、反応率を次のように評価した。まず、試料(化学蓄熱用造粒体)を25g計量した後、雰囲気調整可能な熱天秤にのせ、(i)試料を150℃に加温し、(ii)窒素ガスをキャリアガス(流量1L/min.)として水蒸気(蒸気温度85℃)を導入した。(iii)水蒸気導入を300分間継続して、試料と水蒸気の水和反応による重量変化を測定した。(iv)窒素ガス(流量1L/min.)を流しながら試料を300℃に加温した。反応率は、試料の水和反応による重量変化から算出した。
【0056】
実施例1では、(i)~(iv)までの工程を9サイクル実施した後、10サイクル目の(iii)の工程(水和反応)において、反応開始から300分間にわたって30秒毎に試料の重量を測定し、その反応率を算出した。比較例1では、1サイクル目の(iii)の工程において、反応開始から300分間にわたって試料の重量を測定し、その反応率を算出した。
【0057】
反応率の算出は、揮発成分等の影響を除外するため、試料を150℃に昇温し、水蒸気を導入開始した時点での化学蓄熱用造粒体の重量を開始重量として反応率0%に設定し、酸化物が全て水酸化物に変化したと仮定した場合の重量増加値を反応率100%と定めて行った。当該反応率が高いほど、発熱水和反応が速く進行しており、反応性が高くて蓄熱量が大きいことを示している。
【0058】
(2)水銀圧入式細孔分布
水銀圧入式による細孔分布は次のように測定した。水銀圧入式細孔分布測定装置は、マイクロメリティックス社製オートポアIV9510を使用した。水銀は、純度99.5mass%以上、密度15.5335×10kg/mである特級の水銀試薬を用いた。測定セルは、セル内容積5×10-6、ステム容積0.38×10-6の粉体試料用セルを用いた。測定試料を、質量0.10×10-3~0.13×10-3kgの範囲で精密に秤量し、測定セルに充填した。測定セルを装置に装着した後、セル内部を圧力50μHg(6.67Pa)以下で、減圧状態に保持した。次に、測定セル内に、圧力が1.5psia(10342Pa)になるまで水銀を充填した。その後、圧力が2psia(13790Pa)から60000psia(413.7MPa)の範囲で水銀を圧入して、細孔分布を測定した。
【0059】
水銀の圧入圧力を細孔直径に換算するには、下記(I)式を用いた。
D=-(1/P)・4γ・cosΨ (I)
ここで、
D:細孔直径(m)、
P:水銀の圧入圧力(Pa)、
γ:水銀の表面張力(485dyne・cm-1(0.485Pa・m))、
Ψ:水銀の接触角(130°=2.26893rad)
である。
【0060】
(実施例1)
水酸化マグネシウム(純度99.9%)を200g秤量した。続いて、塩化リチウム一水和物(和光純薬工業製、特級、純度99.9%)を20.7g秤量し、さらに水酸化リチウム一水和物(和光純薬工業製、特級、純度99.9%)を14.4g秤量した。更に続いて、造孔材として球状フェノール樹脂を40g秤量した。前記秤量物と、イオン交換水500mLを万能混合攪拌機(ダルトン製5DM-r型)の容器に投入し、公転数70rpm、自転数159rpmの条件で15分間攪拌し、水酸化マグネシウムを主成分とする混合物を得た。
【0061】
塊状となった混合物を、湿式押出造粒機ドームグラン(不二パウダル製DG-L1型)のホッパーに少量ずつ投入し、スクリュー回転数50rpm、ドームダイ孔径3.0mm、板厚1.0mm、開口比27.7%の条件で造粒成形した。成形後100℃で24時間乾燥し、篩を通して粒子径が約2~5mmの水酸化マグネシウムを主成分とする造粒成形体を得た。
【0062】
その後、得られた造粒成形体を雰囲気置換型電気炉(丸祥電器製SPX1518-17V)にて700℃、0.5時間の条件で焼成して、化学蓄熱用造粒体を得た。
【0063】
(比較例1)
造孔材を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で化学蓄熱用造粒体を得た。
【0064】
(結果)
実施例1および比較例1で得られた化学蓄熱用造粒体について、細孔分布測定の結果を図1に示す。また、水和発熱反応挙動を確認し、反応率の測定結果を図2に示す。
【0065】
図1に示すとおり、実施例1で得た化学蓄熱用造粒体は、0.13μmと0.87μmにピークを有する細孔分布を示した。すなわち、細孔直径0.03μm以上0.3μm未満の領域と、細孔直径0.4μm以上2μm未満の領域それぞれに、極大値を持つピークが存在していた。これより、実施例1で得た化学蓄熱用造粒体は階層的多孔構造を有することが分かる。
【0066】
一方、比較例1で得た化学蓄熱用造粒体は、細孔直径0.06μmに単一のピークを有するが、他にはピークを有しておらず、ブロードな細孔分布を示していることが確認できた。これより、比較例1で得た化学蓄熱用造粒体は階層的多孔構造を有しないことが分かる。
【0067】
これら化学蓄熱用造粒体の反応率に関しては、図2に示すとおり、実施例1で得た化学蓄熱用造粒体は、10サイクル使用後においても、85℃の水蒸気を300分間導入した後の反応率は80%に達した。一方、比較例1で得た反応進行率は、1サイクル目において既に、85℃の水蒸気を300分間導入した後の反応率は60%程度であった。これより、実施例1で得た化学蓄熱用造粒体は、比較例1のものと比べて、高い反応率を有すること、及び、その反応率が繰り返し使用した後にも維持されることが確認できた。これより、階層的多孔構造を有する実施例1の化学蓄熱用造粒体は、水和反応の反応温度が低減され、それにより蓄熱量を増大でき、しかも耐久性に優れていることが分かる。
図1
図2