(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】異なるBIMモデルの構成要素比較装置、BIMモデル共有システム、異なるBIMモデルの構成要素比較方法、及び異なるBIMモデルの構成要素比較プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20230816BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20230816BHJP
【FI】
G06F30/13
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2019063546
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-03-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年10月10日 お茶の水ソラシティ(東京都千代田区神田駿河台4-6)にて開催された、建築とITフォーラム2018にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11月21日 お茶の水ソラシティ(東京都千代田区神田駿河台4-6)にて開催された、構造設計・確認申請におけるBIM活用最前線セミナーにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年2月6日 大阪府建築健保会館(大阪府大阪市中央区和泉町2-1-11)にて開催された、構造設計・確認申請におけるBIM活用最前線セミナーにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年2月7日 今池ガスビル(愛知県名古屋市千種区今池1丁目8-8)にて開催された、構造設計・確認申請におけるBIM活用最前線セミナーにて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年3月20日 オートデスク株式会社(東京都中央区晴海1-8-10 晴海アイランド トリトンスクエアオフィスタワーX 24F)にて開催された、BIM勉強会にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】宮内 尊彰
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-174619(JP,A)
【文献】特開2017-199344(JP,A)
【文献】特開2018-005507(JP,A)
【文献】特開2014-010635(JP,A)
【文献】特開2014-123233(JP,A)
【文献】特開2006-277282(JP,A)
【文献】特開2014-026389(JP,A)
【文献】家入龍太,図解入門 よくわかる 最新BIMの基本と仕組み,第2版,株式会社秀和システム,2019年03月05日,pp. 10-13, 36-41, 58-59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕様情報を含む複数の構成要素により形成されるBIMモデルに関し、各構成要素が相互に関連した異なるBIMモデルを格納する格納部と、
それぞれの前記BIMモデルの有する各構成要素の前記仕様情報をテキストデータとして抽出する抽出部と、
抽出されたそれぞれの前記BIMモデルの前記テキストデータを、関連した構成要素ごとに並べて表示する表示部と、を有
し、
前記異なるBIMモデルは、BIM計算モデルと、該BIM計算モデルに基づいて作成された、構造図面の元になるBIM構造モデルであることを特徴とする、異なるBIMモデルの構成要素比較装置。
【請求項2】
前記BIMモデルを作成もしくは修正する加工部をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の異なるBIMモデルの構成要素比較装置。
【請求項3】
前記表示部において、並べて表示された関連する構成要素が異なる仕様情報を有する場合に、警報表示することを特徴とする、請求項1
又は2に記載の異なるBIMモデルの構成要素比較装置。
【請求項4】
非BIM計算モデルを用いて構造計算を行う構造計算部と、
前記非BIM計算モデルを前記BIMモデルにデータ変換する変換部と、をさらに有することを特徴とする、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の異なるBIMモデルの構成要素比較装置。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の異なるBIMモデルの構成要素比較装置と、通信装置と、を備え、構造設計ユーザが用いる構造ユーザ端末と、
BIMモデルを作成もしくは修正する加工部を少なくとも含むBIMモデル加工装置と、通信装置と、を備え、意匠設計ユーザが用いる意匠ユーザ端末と、を少なくとも含む、ユーザ端末と、
前記通信装置からネットワークを介して前記BIMモデルが送信されて格納される、共有サーバと、を有することを特徴とする、BIMモデル共有システム。
【請求項6】
仕様情報を含む複数の構成要素により形成されるBIMモデルに関し、各構成要素が相互に関連した異なるBIMモデルを格納する格納工程と、
それぞれの前記BIMモデルの有する各構成要素の前記仕様情報をテキストデータとして抽出する抽出工程と、
抽出されたそれぞれの前記BIMモデルの前記テキストデータを、関連した構成要素ごとに並べて表示する表示工程と、を有
し、
前記異なるBIMモデルは、BIM計算モデルと、該BIM計算モデルに基づいて作成された、構造図面の元になるBIM構造モデルであることを特徴とする、異なるBIMモデルの構成要素比較方法。
【請求項7】
仕様情報を含む複数の構成要素により形成されるBIMモデルに関し、各構成要素が相互に関連した異なるBIMモデルを格納する格納工程と、
それぞれの前記BIMモデルの有する各構成要素の前記仕様情報をテキストデータとして抽出する抽出工程と、
抽出されたそれぞれの前記BIMモデルの前記テキストデータを、関連した構成要素ごとに並べて表示する表示工程と、をコンピュータに実行さ
せ、
前記異なるBIMモデルは、BIM計算モデルと、該BIM計算モデルに基づいて作成された、構造図面の元になるBIM構造モデルであることを特徴とする、異なるBIMモデルの構成要素比較プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なるBIMモデルの構成要素比較装置、構成要素比較方法、及び構成要素比較プログラムと、BIMモデル共有システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築設計においては、敷地の条件や周辺環境を勘案しながら建築物の配置を決定し、内外観や間取り構成、装飾等を設計する意匠設計がまず行われる。この意匠設計では、一般に普及しているCAD(Computer-aided design)を用いることにより、二次元図面は勿論のこと、パースを含む三次元図面が作成される。この意匠設計により設計された建築物に対して、積雪や地震等に対する安全性能を満たすように、土台や骨組みを設定し、柱や梁、壁等の仕様や形状、配置を設定する構造設計が意匠設計に次いで行われる。また、この構造設計と並行して、もしくは構造設計の後で、快適な室内環境のための空調設備、上下水道に通じる衛生設備、コンセントや照明を配置する電気設備等を設定する設備設計が行われる。これらの意匠設計、構造設計、及び設備設計は、各設計担当者が相互に情報共有しながら、複数回に亘って設計変更がなされた後、建築物の設計が完了する。
【0003】
設計された建築物に関しては、建築物の三次元図面の他、各階の平面図(伏図を含む)、立面図(軸組図を含む)、設備設計図等の図面(以下、これらの各種図面を構造図面と称する)が用意され、建築確認申請書類として建築確認申請機関へ提出される。建築確認申請書類の中でも、構造計算の際に用いられた計算モデルを示す図面と、構造図面とが、建築確認申請機関において入念に比較される。すなわち、計算モデルに基づく構造計算結果が構造上安全であることを仮に示しているとしても、計算モデルと、構造図面の元になる構造モデルとが必ずしも一致している保証はないからである。
【0004】
建築確認申請機関において建築確認申請書類がチェックされ、最終的に確認申請許可が下りるまでには、必要に応じて設計変更とこれに伴う再度の構造計算、構造計算に基づく構造図面の作成が複数回に亘って行われ、修正された建築確認申請書類が都度提出されることになる。
【0005】
このように、当初の構造設計から確認申請許可が下りるまでには、複数の計算モデルが作成され、計算モデルを用いた構造計算が行われ、構造計算結果に基づいて作成された構造モデルに基づいた構造図面が作成される。時系列の中で異なる時期に作成された計算モデルに基づく構造計算結果と、各構造計算結果に基づいて作成された構造図面との整合性のチェックが、構造設計担当者により行われる。
【0006】
しかしながら、構造設計担当者は、構造計算結果に基づいて作成された構造モデルに対し、建築物を構成する梁や柱等の構成要素の納まり等を勘案して当初の構造モデルから様々に構成要素の仕様(寸法や配設位置等)を変更するため、構造計算結果に基づく構造モデルと、構成要素の仕様変更後の構造モデルでは、相互に一致しない箇所が生じ得る。構成要素の仕様変更後の構造モデルに基づいて構造図面が作成されることから、構造計算結果に基づく構造モデルの元になっている計算モデルと、構成要素の仕様変更後の構造モデルとの間には仕様の一致しない部材が生じることになり、確認申請書類に含まれる計算モデルと、構造モデルに基づく構造図面との間に不整合が生じることになる。
【0007】
そのため、構造設計担当者は、設計変更や構成要素の仕様変更の度に、計算モデルを形成する各種の構成要素の仕様と、仕様変更後の構造モデルを形成する各種の構成要素の仕様を比較し、仕様の一致していない構成要素を特定する必要があるが、この比較には多大な手間と時間を要しているのが現状である。
【0008】
ここで、三次元CADデータと建築関連情報との間でシームレスに適正な情報にアクセスを可能とした建築情報統合管理システムが提案されている。この建築情報統合管理システムは、三次元モデルマスターデータと、建築関連情報を含む建築関連情報マスターデータとを格納する記憶部と、オブジェクトをビューポートに投影して表示する表示部と、オブジェクトに基づき関連する建築関連情報を抽出し、オブジェクトに基づき選択される投影ルールに従ったビューポートのメニューリストを抽出する抽出部とを有する。さらに、抽出された建築関連情報のリスト、及び、複数のビューポートのメニューリストであって、オブジェクトを投影して表示させるような項目を含むメニューリストを表示部に表示させる表示制御部と、を有する。そして、この建築情報統合管理システムでは、BIM(Building Information Modeling)を用いて、BIMによる情報統合を実現することにより、デザイナーや設計者、施工監理者、工事施行業者などの間で情報を共有化することを可能としている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の建築情報統合管理システムによれば、三次元CADデータと建築関連情報との間でシームレスに適正な情報にアクセスが可能にはなるものの、上記する課題、すなわち、構造計算の元になる計算モデルに基づいて作成される構造モデルの構成要素の一部の仕様を変更した際に、各モデルにおいて関連する構成要素の一致・不一致を効率的に特定することはできない。
【0011】
本発明は上記する課題に鑑みてなされたものであり、BIM計算モデルやBIM構造モデルといったBIMモデルに関し、異なるBIMモデルの関連する構成要素の仕様の一致・不一致を効率的に特定することのできる、異なるBIMモデルの構成要素比較装置、BIMモデル共有システム、異なるBIMモデルの構成要素比較方法、及び異なるBIMモデルの構成要素比較プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく、本発明による異なるBIMモデルの構成要素比較装置の一態様は、
仕様情報を含む複数の構成要素により形成されるBIMモデルに関し、各構成要素が相互に関連した異なるBIMモデルを格納する格納部と、
それぞれの前記BIMモデルの有する各構成要素の前記仕様情報をテキストデータとして抽出する抽出部と、
抽出されたそれぞれの前記BIMモデルの前記テキストデータを、関連した構成要素ごとに並べて表示する表示部と、を有することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、異なるBIMモデルの有する各構成要素の仕様情報を抽出部によりテキストデータとして抽出し、表示部において関連した構成要素ごとに並べて表示することにより、異なるBIMモデルの有するそれぞれの関連する構成要素の一致・不一致を容易かつ効率的に特定することができる。本態様のBIMモデルの構成要素比較装置は、例えばパーソナルコンピュータにより形成され、このパーソナルコンピュータに、格納部と抽出部、及び表示部が内蔵される。
【0014】
ここで、BIMモデルとは、建築物を構成する構成要素(オブジェクトとも言い、梁や柱、壁等を含む)に関する、仮想の三次元空間における形状に関する情報や、材質、寸法、配設位置等に関する情報(これらをまとめて、「仕様情報」とする)を有する三次元モデルである。このBIMモデルを用いて、三次元モデルを様々な角度から見た三次元図面が作成できる他、三次元図面を様々に切断したり、様々な角度から見た平面図(伏図を含む)や立面図(軸組図を含む)といった二次元図面を作成できる。すなわち、三次元モデルを構成する各構成要素は、種々の仕様情報を内包しており、この仕様情報は、変更や修正、追加が可能となり、変更や追加等の履歴も残すことができる。
【0015】
また、「BIMモデル」には、計算モデルがBIMモデル化されてなるBIM計算モデルと、BIM計算モデルに基づいて作成されたBIM構造モデルとが含まれ、「異なるBIMモデル」とは、例えば、BIM計算モデルと、このBIM計算モデルに基づいて作成されたBIM構造モデルであって、BIM計算モデルに対して構成要素の仕様情報の一部が変更されたり、あらたな構成要素が追加された後のBIM構造モデル等を意味している。異なるBIMモデルの有する関連する各構成要素は、例えば共通のIDもしくは関連するIDを有しており、格納部に格納されている異なるBIMモデルに対して、抽出部では共通のIDもしくは関連するIDを有する双方のモデルの構成要素に関する仕様情報をテキストデータとして抽出し、表示部に並べて表示することにより、構造設計担当者等は、並んで表示されている双方の部材の仕様情報の一致・不一致を容易に特定することができる。尚、BIMモデルは多数の構成要素を有していることから、表示部では、関連する双方のモデルの構成要素に関する仕様情報がテキストデータとして並んで二つの行に表示され、これを一組として、多数組の相互に関連する構成要素の仕様情報に関するテキストデータが表示される。
【0016】
また、本発明による異なるBIMモデルの構成要素比較装置の他の態様は、前記BIMモデルを作成もしくは修正する加工部をさらに有することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、BIMモデルの構成要素比較装置がBIMモデルを作成もしくは修正する加工部をさらに有することにより、意匠設計担当者、構造設計担当者、設備設計担当者、さらには、施工担当者等、様々なユーザによるBIMモデルの作成や修正を行うことが可能になる。
【0018】
また、本発明による異なるBIMモデルの構成要素比較装置の他の態様において、前記異なるBIMモデルは、構造計算の時期が異なる二つのBIM計算モデルであることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、例えば、建築確認申請書類を最初に提出した際のBIM計算モデル(構造計算の元になっているBIMモデル)と、修正後のBIM計算モデルや最終的に確認申請が許可された際のBIM計算モデル等、構造計算の時期が異なる二つのBIM計算モデルの関連する各構成要素の一致・不一致を効率的に特定することができる。
【0020】
また、本発明による異なるBIMモデルの構成要素比較装置の他の態様において、前記異なるBIMモデルは、BIM計算モデルと、該BIM計算モデルに基づいて作成された、構造図面の元になるBIM構造モデルであることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、例えば、最終的に確認申請が許可された際のBIM計算モデル(構造計算の元になっているBIMモデル)と、このBIM計算モデルに基づくBIM構造モデル(構造図面の元になっているBIMモデル)の関連する各構成要素の一致・不一致を効率的に特定することができる。
【0022】
また、本発明による異なるBIMモデルの構成要素比較装置の他の態様において、前記BIMモデルは、BIM計算モデルに基づいて作成された、構造図面の元になるBIM構造モデルであり、
前記異なるBIMモデルは、作成時期が異なる二つの前記BIM構造モデルであることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、例えば、建築確認申請書類を最初に提出した際のBIM構造モデル(構造図面の元になっているBIMモデル)と、修正後のBIM計算モデルや最終的に確認申請が許可された際のBIM構造モデル等、作成の時期が異なる二つのBIM構造モデルの関連する各構成要素の一致・不一致を効率的に特定することができる。
【0024】
また、本発明による異なるBIMモデルの構成要素比較装置の他の態様は、前記表示部において、並べて表示された関連する構成要素が異なる仕様情報を有する場合に、警報表示することを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、関連する構成要素が異なる仕様情報を有する場合に警報表示されることにより、ユーザはより一層容易に仕様情報の異なる構成要素の組み合わせを特定することが可能になる。ここで、「警報表示」には、視覚的に目立つ色文字等による表示や、点灯表示、これらの表示に加えた音声警告等が含まれる。
【0026】
また、本発明による異なるBIMモデルの構成要素比較装置の他の態様は、非BIM計算モデルを用いて構造計算を行う構造計算部と、
前記非BIM計算モデルを前記BIMモデルにデータ変換する変換部と、をさらに有することを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、構造計算部において構造計算に用いられた非BIM計算モデルを、変換部を介してBIMモデル(構造計算の元になっているBIM計算モデル)に変換することにより、BIM計算モデルではない計算モデルから、対応するBIM計算モデルを自動的に作成することができる。このように作成されたBIM計算モデルに基づいて、構造図面の元になっているBIM構造モデルが作成される。
【0028】
ここで、BIMモデルの構成要素比較装置を形成するパーソナルコンピュータ等には、市販の構造計算用ソフトウェアがダウンロード等によりインストールされており、構造設計担当者は、意匠設計された建築物を構造計算用ソフトウェア内においてモデル化する。このモデル化においては、各構成要素の材質(剛性等)、寸法、配設位置等の仕様情報が入力される。そして、構造計算用ソフトウェアにより、パーソナルコンピュータ内において構造計算が実行され、構造計算データが例えば格納部に格納される。パーソナルコンピュータでは、変換部を構成する変換用ソフトウェアが同様にインストールされており、変換部を介して、構造計算用ソフトウェア内にてモデル化されている非BIM計算モデルからBIM計算モデルが作成される。
【0029】
また、本発明によるBIMモデル共有システムの一態様は、
前記異なるBIMモデルの構成要素比較装置と、通信装置と、を備え、構造設計ユーザが用いる構造ユーザ端末と、
BIMモデルを作成もしくは修正する加工部を少なくとも含むBIMモデル加工装置と、通信装置と、を備え、意匠設計ユーザが用いる意匠ユーザ端末と、を少なくとも含む、ユーザ端末と、
前記通信装置からネットワークを介して前記BIMモデルが送信されて格納される、共有サーバと、を有することを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、構造設計ユーザが用いる構造ユーザ端末や意匠設計ユーザが用いる意匠ユーザ端末が、ネットワークを介して共有サーバに通信可能に接続されていることにより、各ユーザは、共有サーバに格納されているBIMモデルを都度共有しながら、それぞれの設計業務を進めることができる。
【0031】
尚、ユーザ端末を使用するユーザには、意匠設計ユーザ、構造設計ユーザの他、設備設計ユーザ、積算ユーザ、施工計画ユーザ、実施工ユーザ等、設計段階から施工段階、さらには施工後のメンテナンス段階等の様々な段階におけるユーザが存在し得る。ここで、本態様のBIMモデル共有システムは、無線通信、有線通信、携帯電話回路通信などにより構築される、インターネットやLAN(Local Area Network)、VAN(Value Added Network)等が適用され、一つの会社内のみで情報共有されるクローズドネットワークであってもよいし、外部機関との間で情報共有が可能なオープンネットワークであってもよい。後者の場合の外部機関には、確認申請機関や資機材供給会社等が含まれる。
【0032】
また、本発明による異なるBIMモデルの構成要素比較方法の一態様は、
仕様情報を含む複数の構成要素により形成されるBIMモデルに関し、各構成要素が相互に関連した異なるBIMモデルを格納する格納工程と、
それぞれの前記BIMモデルの有する各構成要素の前記仕様情報をテキストデータとして抽出する抽出工程と、
抽出されたそれぞれの前記BIMモデルの前記テキストデータを、関連した構成要素ごとに並べて表示する表示工程と、を有することを特徴とする。
【0033】
本態様によれば、異なるBIMモデルの有する各構成要素の仕様情報を抽出工程にてテキストデータとして抽出し、表示工程において関連した構成要素ごとに並べて表示することにより、異なるBIMモデルの有するそれぞれの関連する構成要素の一致・不一致を効率的に特定することができる。
【0034】
また、本発明による異なるBIMモデルの構成要素比較プログラムの一態様は、
仕様情報を含む複数の構成要素により形成されるBIMモデルに関し、各構成要素が相互に関連した異なるBIMモデルを格納する格納工程と、
それぞれの前記BIMモデルの有する各構成要素の前記仕様情報をテキストデータとして抽出する抽出工程と、
抽出されたそれぞれの前記BIMモデルの前記テキストデータを、関連した構成要素ごとに並べて表示する表示工程と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0035】
本態様によれば、パーソナルコンピュータ等にインストールされた構成要素比較プログラムにより、異なるBIMモデルの有する各構成要素の仕様情報をテキストデータとして抽出し、コンピュータ画面において関連した構成要素ごとに並べて表示する一連の動作が実行されることにより、異なるBIMモデルの有するそれぞれの関連する構成要素の一致・不一致を効率的に特定することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上の説明から理解できるように、本発明による異なるBIMモデルの構成要素比較装置、BIMモデル共有システム、異なるBIMモデルの構成要素比較方法、及び異なるBIMモデルの構成要素比較プログラムによれば、異なるBIMモデルの関連する構成要素の仕様の一致・不一致を効率的に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】実施形態に係るBIMモデル共有システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】異なるBIMモデルの構成要素比較装置を備える、構造ユーザ端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】共有サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】構成要素比較装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図6】BIM計算モデルの三次元図面の一例を示す図である。
【
図7】BIM構造モデルの三次元図面の一例を示す図である。
【
図8】BIM構造モデルの平面図の一例を示す図である。
【
図9】パーソナルコンピュータの画面上において、BIM構造モデルの平面図の一例が表示されている状態を示す図である。
【
図10】パーソナルコンピュータの画面上において、BIM構造モデルの各構成要素の仕様情報がテキストデータとして表示されている状態を示す図である。
【
図11】パーソナルコンピュータの画面上において、BIM計算モデルの各構成要素の仕様情報がテキストデータとして表示されている状態を示す図である。
【
図12】パーソナルコンピュータの画面上において、関連した構成要素ごとに並べて表示される対象の二つのテキストデータである、BIM構造モデルの各構成要素の仕様情報のテキストデータと、BIM計算モデルの各構成要素の仕様情報のテキストデータとが並列に表示されている状態を示す図である。
【
図13】パーソナルコンピュータの画面上において、二つのテキストデータが関連した構成要素ごとに並べて表示されている状態を示す図である。
【
図14】パーソナルコンピュータの画面上において、関連した構成要素が三次元図面として表示されている状態を示す図である。
【
図15】実施形態に係る異なるBIMモデルの構成要素比較方法の一例のフローチャートである。
【
図16】構造計算業務、構造図面作成業務、及び確認申請機関における確認業務のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、実施形態に係る異なるBIMモデルの構成要素比較装置、BIMモデル共有システム、異なるBIMモデルの構成要素比較方法、及び異なるBIMモデルの構成要素比較プログラムの一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0039】
[実施形態に係るBIMモデル共有システム]
はじめに、
図1を参照して、実施形態に係るBIMモデル共有システムの一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係るBIMモデル共有システムの全体構成の一例を示す図である。
【0040】
BIMモデル共有システム50は、ユーザ端末10と、外部機関端末30とがネットワーク40を介して共有サーバ20と通信可能に接続されることにより形成される。ユーザ端末10は、意匠ユーザ端末10A、構造ユーザ端末10B、設備ユーザ端末10C等を有し、さらに、積算ユーザ端末、施工計画ユーザ端末、実施工ユーザ端末(いずれも図示せず)等、様々なユーザ端末を含み得る。
【0041】
一方、外部機関端末30は、確認申請機関端末30Aの他、設備設計や施工計画等の段階で協同して作業を行う資機材供給会社等の有する資機材供給会社端末(図示せず)等を含み得る。
【0042】
ネットワーク40には、有線通信、無線通信、携帯電話回線などにより構築される、インターネットやLAN(Local Area Network)、VAN(Value Added Network)等が適用される。尚、図示例のBIMモデル共有システム50は、一つのハウスメーカー等の会社内部のみで情報共有がなされるクローズドネットワークでなく、外部機関との間においても情報共有が可能なオープンネットワークを有する形態であるが、外部機関と間の情報共有は行わないクローズドネットワークを有する形態であってもよい。
【0043】
共有サーバ20は、ワークステーションやパーソナルコンピュータにより形成され、ユーザ端末10等から送信されてきた各種のコマンド(リクエスト)に応じて、当該ユーザ端末10等からの各種情報を受信して格納するとともに、当該ユーザ端末10等に対して格納されている各種情報を送信する。
【0044】
尚、共有サーバ20は、データ保管の他にも、各種のアプリケーションソフトウェアを複数のユーザが共有できるクラウドサーバであってもよい。例えば、ユーザ端末10と外部機関端末30が共通のアプリケーションソフトウェアである、「BIM 360 Docs」(Autodesk社製)を使用して、BIMデータの送受信を行ったり、異なる時期に送受信される複数のBIMデータに関して、任意の二つの時期のBIMデータを相互に比較することを可能にしてもよい。
【0045】
意匠ユーザ端末10A、構造ユーザ端末10B、及び設備ユーザ端末10Cはそれぞれ、意匠設計担当者、構造設計担当者、及び設備設計担当者が使用する端末であり、パーソナルコンピュータやタブレット等により形成される。
【0046】
BIMモデル共有システム50は、建築物のBIMモデルを共有化するシステムである。BIMモデルは、建築物を構成する構成要素(オブジェクト)である、梁や柱、壁等に関する、仮想の三次元空間における形状に関する情報や、材質、寸法、配設位置等に関する情報(これらをまとめて、「仕様情報」とする)を有する三次元モデルである。
【0047】
このBIMモデルを用いて、三次元モデルを様々な角度から見た三次元図面が作成できる他、三次元図面を様々に切断したり、様々な角度から見た平面図(伏図を含む)や立面図(軸組図を含む)といった二次元図面が作成でき、各種の平面図や立面図は、構造図面として建築確認申請書類として確認申請機関に提出される他、確認申請の許可が下りた後は、施工見積もり、施工計画等に供され、実施工に際しては各種施工図面に供される。
【0048】
三次元モデルを構成する各構成要素は、上記する種々の仕様情報を内包しており、この仕様情報は、変更や修正、追加が可能であり、変更や追加等の履歴も残すことが可能である。
【0049】
また、「BIMモデル」には、建築物の企画段階等で意匠設計担当者が意匠ユーザ端末10Aにおいて作成するBIM意匠モデル、構造設計担当者が構造ユーザ端末10Bにおいて作成するBIM計算モデルや、BIM計算モデルに基づいて作成されるBIM構造モデル等が含まれる。
【0050】
企画段階では、三次元モデリングされた建築物の画像(BIM意匠モデル)を見ることにより、当該建築物の外観やレイアウトデザイン等について直接イメージすることができる。また、設備設計段階においては、建築物の内部における熱流(風・気流等の流れ)のシミュレーションを行なったり、照明の配置と光環境との関係について検討することにより、居住空間の快適性を考慮した設計を行うことができる。さらに、構造設計段階や施工計画段階においては、三次元画像を確認することにより、設備機器や鉄骨、配管等の干渉チェックを行うことができ、二次元図面では見え難い状態を細部に亘り明りょうに把握することができる。
【0051】
このように、BIMモデルを共有化することにより、建築物の初期の企画段階、設計段階から、実際に施工される段階、さらには、施工後のメンテナンスの段階に至るまで、建築物を細部に亘って明りょうに把握し、都度最適な措置を機能的かつ効率的に行なうことが可能になる。
【0052】
共有サーバ20には、建築物を構成する柱や梁、壁の他、空調設備をはじめとする各種設備等、建築物の設計や施工に際して必要となる様々な構成要素に関する仕様情報が格納されており、例えば、構造設計担当者は構造設計に当たり、共有サーバ20にアクセスして各種構成要素の仕様情報を入手したり、予め、構造ユーザ端末10B等に各種構成要素の仕様情報をダウンロードしておき、構造設計に使用する。
【0053】
[実施形態に係る異なるBIMモデルの構成要素比較装置]
次に、
図2及び
図4を参照して、実施形態に係る異なるBIMモデルの構成要素比較装置の一例を説明するとともに、
図3を参照して、共有サーバの一例について説明する。ここで、
図2は、構造ユーザ端末のハードウェア構成の一例を示す図であり、
図3は、共有サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。また、
図4は、構成要素比較装置の機能構成の一例を示す図である。
【0054】
図2に示すように、パーソナルコンピュータにより形成される構造ユーザ端末10Bは、構成要素比較装置60(異なるBIMモデルの構成要素比較装置)と、通信装置66とを有する。構成要素比較装置60は、CPU(Central Processing Unit)61、NVRAM(Non-Volatile RAM)62、RAM(Random Access Memory)63、ROM(Read Only Memory)64、及びHDD(Hard Disc Drive)65等を有し、各部はバスを介してデータを送受信可能に接続されている。
【0055】
ROM64には、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記憶されている。RAM63は、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域として用いられる。CPU61は、RAM63にロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現する。HDD65には、プログラムやプログラムが利用する各種のデータ等が記憶される。NVRAM62には、各種の設定情報等が記憶される。尚、図示を省略するが、意匠ユーザ端末10Aや設備ユーザ端末10C等においても、構成要素比較装置60と同様のハードウェア構成を有する。
【0056】
通信装置66は、共有サーバ20と通信を行う装置であり、共有サーバ20から送信される各種データや信号を受信する受信部として機能するとともに、CPU61の指令に応じて構成要素比較装置60からの各種データや信号を共有サーバ20へ送信する送信部として機能する。
【0057】
また、
図3に示すように、ワークステーションやパーソナルコンピュータにより形成される共有サーバ20は、CPU21、NVRAM22、RAM23、ROM24、HDD25、及び通信装置26等を有し、各部はバスを介してデータを送受信可能に接続されている。通信装置26は、ユーザ端末10等と通信を行う装置であり、ユーザ端末10等から送信される各種データや信号を受信する受信部として機能するとともに、CPU21の指令に応じて各種データや信号をユーザ端末10等へ送信する送信部として機能する。
【0058】
次に、構成要素比較装置60の有する各部の機能を、
図4の他に、
図5乃至
図14を参照して説明する。ここで、
図5乃至
図8はそれぞれ、非BIMモデルの一例を示す図、BIM計算モデルの三次元図面の一例を示す図、BIM構造モデルの三次元図面の一例を示す図、及びBIM構造モデルの平面図の一例を示す図である。また、
図9は、パーソナルコンピュータの画面上において、BIM構造モデルの平面図の一例が表示されている状態を示す図である。また、
図10乃至
図12はそれぞれ、パーソナルコンピュータの画面上において、BIM構造モデルの各構成要素の仕様情報がテキストデータとして表示されている状態を示す図、BIM計算モデルの各構成要素の仕様情報がテキストデータとして表示されている状態を示す図、及び、関連した構成要素ごとに並べて表示される対象の二つのテキストデータである、BIM構造モデルの各構成要素の仕様情報のテキストデータと、BIM計算モデルの各構成要素の仕様情報のテキストデータとが並列に表示されている状態を示す図である。さらに、
図13及び
図14はそれぞれ、パーソナルコンピュータの画面上において、二つのテキストデータが関連した構成要素ごとに並べて表示されている状態を示す図、及び、関連した構成要素が三次元図面として表示されている状態を示す図である。
【0059】
図4に示すように、構成要素比較装置60は、抽出部71、加工部72、表示部73、構造計算部74、変換部75、入力部76、及び格納部77を有する。
【0060】
格納部77は、仕様情報を含む複数の構成要素により形成されるBIMモデルであって、それぞれの有する構成要素が相互に関連した異なるBIMモデルである、BIM計算モデルとBIM構造モデルを格納する。各構成要素の仕様情報は、例えば、共有サーバ20から受信することができる。
【0061】
構造計算部74は、非BIM計算モデルを用いて構造計算を行う。ここで、構造計算部74には、RC/SRC/S造建物の高機能一貫構造計算ソフトウェアである、BUS-6(株式会社構造システム社製)等が含まれている。ここで、RC造は鉄筋コンクリート造を示し、SRC造は鉄骨鉄筋コンクリート造を示し、S造は鉄骨造を示す。構造設計担当者は、意匠設計担当者が設計しているBIM意匠モデルに基づいて、計算ソフトウェア内において計算モデルを作成し、計算モデルを構成する各種の構成要素の仕様情報を入力し、構造計算を実行する。このように計算ソフトウェア内において作成された計算モデルはBIMモデルでないことから、非BIM計算モデルとなる。
図5は、非BIM計算モデルの一例を三次元的に示している。
【0062】
構造設計担当者は、変換部75を用いて、
図5に示す非BIM計算モデルをBIM計算モデルに変換する。ここで、変換部75には、構造計算ソフトウェアとBIMソフトウェアを繋ぐ、ST-Bridge(一般社団法人building SMART Japan社製)等が含まれる。
【0063】
一方、加工部72には、BIMソフトウェアとして、Autodesk Revit(登録商標)(Autodesk社製)等が含まれる。
【0064】
図6は、
図5に示す非BIM計算モデルが変換部75を介して変換されることにより、BIMソフトウェアが起動して作成された、BIM計算モデルの一例を三次元的に示している。
【0065】
BIM計算モデルはBIMモデルに含まれるものの、あくまでも構造計算の元になっているモデルであり、このBIM計算モデルには、構造計算に必要となる、梁や柱等の構成要素に関する情報は含まれるが、袖壁、階段等の構造計算に不要な構成要素に関する情報は基本的に含まれていない。
【0066】
構造設計担当者は、構造計算により所定の構造安全性をクリアしたBIM計算モデルに対して、今度は、加工部72において、構造計算には不要であった様々な構成要素をBIM計算モデルに付加することにより、BIM構造モデルを作成していく。この加工に当たり、構造設計担当者は、キーボードやマウス、タッチパネルといった入力部76を介してBIM構造モデルの作成を行う。尚、BIM計算モデルもBIM構造モデルもBIMモデルに含まれている。
図7は、
図6に示すBIM計算モデルに対して、構造計算上不要であった外部の避難階段が付加されたBIM構造モデルの一例を三次元的に示している。
【0067】
BIM構造モデルは、設計対象の建築物における、構造計算上必要となる梁や柱等の構造部材に加えて、階段、壁、天井、床、ドア、窓、各種配管といった非構造部材を含んでおり、確認申請機関へ提出する確認申請書類の一種である構造図面の元になるモデルである。例えば、BIMソフトウェアにより、
図7に示す三次元的なBIM構造モデルの他にも、各階の平面図や立面図といった二次元的な構造図面を作成することができる。
図8は、構造図面として、ある階の平面図の一部を示している。
【0068】
表示部73は、CPU61からの指令に基づいてユーザ用の操作画面を表示する機能を有し、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等により形成される。
図9は、表示部73に表示されているBIM構造モデルの平面図の一例を示している。
図9において、画面の上段には、各種のアドインツールが設定されており、その中のアドインツール「部材チェック」を選択すると、抽出部71が起動する。
【0069】
抽出部71は、BIM計算モデルとBIM構造モデルの有するそれぞれの構成要素の仕様情報を、テキストデータとして抽出する。このテキストデータには、TXT形式のテキストファイルやCSV形式のテキストファイル等があり、BIM計算モデルとBIM構造モデルの有する各構成要素の仕様情報データベースを、テキストファイルとして例えばエクセル(Excel、登録商標)に抽出(エクスポート)する。
【0070】
図10は、BIM構造モデルの有する各構成要素の仕様情報がテキストデータとしてエクセルに抽出された状態を示している。一方、
図11は、
図10に示すBIM構造モデルに対応する、BIM計算モデルの有する各構成要素の仕様情報がテキストデータとしてエクセルに抽出された状態を示している。
図10及び
図11に示すデータは、画面の下段に示すようにRC大梁に関するデータであるが、同下段に示すように、S大梁やRC主梁等、他の構造部材に関するデータも全てテキストデータとしてエクセルに抽出される。
【0071】
ここで、構成要素比較装置60は、仕様情報を含む複数の構成要素により形成される、異なるBIMモデルに関し、それぞれのBIMモデルの関連した構成要素を抽出されたテキストデータとして並べて表示し、関連する構成要素の一致・不一致を特定する装置である。これは、上記するように、例えば、構造設計担当者が、構造計算の元になっている計算モデルに基づくBIM計算モデルと、このBIM計算モデルを加工して作成されたBIM構造モデルとの間で、構成要素の一部の仕様情報(寸法や配設位置等)が変更され、整合性が取れていない可能性があるために行うものである。BIM計算モデルは構造計算の元になる計算モデルを反映し、一方で、BIM構造モデルは構造図面に反映されることから、構造計算の元になるモデルと構造図面が不一致の場合は確認申請の許可が下りないことになる。
【0072】
また、その他、確認申請機関へ確認申請書類を提出した場合、確認申請機関において書類のチェックがなされた後、修正が要求されることが往々にしてあり、構造設計担当者は、BIM構造モデルの見直しを行うことになる。その際、BIM構造モデルを構成する構成要素の仕様情報が変更になり得ることから、変更された構成要素が構造計算上必要な構成要素の場合には、あらためて構造計算をやり直す必要が生じる。そして、再度の構造計算の元になる計算モデルに基づくBIM計算モデルが作成され、このBIM計算モデルに基づくBIM構造モデルを用いて、構造図面が再度作成される。
【0073】
このように、構造計算の時期の異なる複数のBIM計算モデル(計算データ)の間においても、変更された構成要素を明りょうに特定するべく、異なるBIM計算モデル(異なるBIMモデル)の各構成要素の一致・不一致を特定する必要がある。さらに、作成された時期の異なる複数のBIM構造モデル(構造図面)の間においても、変更された構成要素を明りょうに特定するべく、異なるBIM構造モデル(異なるBIMモデル)の各構成要素の一致・不一致を特定する必要がある。
【0074】
このように、構成要素比較装置60が比較対象とする異なるBIMモデルには、(1)構造計算の時期が異なる二つのBIM計算モデル、(2)BIM計算モデルと、このBIM計算モデルに基づいて作成された、構造図面の元になるBIM構造モデル、(3)作成時期が異なる二つのBIM構造モデル、等が含まれる。
【0075】
抽出部71では、
図12に示すように、
図10及び
図11に示す相互に関連したBIM計算モデルとBIM構造モデルのそれぞれの構成要素の仕様情報に関するテキストデータが一覧として表示される。次いで、
図13に示すように、関連する構成要素が関連するIDに基づいて選定されて並べられ、一覧として表示される。
【0076】
図13においては、ID:4172166のBIM計算モデルの有する構成要素に対して、BIM構造モデルの有する構成要素の寸法が大きくなるような変更がなされていることが示されている。尚、
図13において、縦欄の「O」はH形鋼の背を示し、「R」はH形鋼のフランジ厚を示しており、BIM計算モデルに用いられているH形鋼が582×300×12×17であり、BIM構造モデルに用いられているH形鋼が588×300×12×20であることを示す。
【0077】
図13に示すように、表示部73において、関連する構成要素が一致していない場合、画面上で警報表示することにより、構造設計担当者は、相互に一致していない構成要素を容易に特定することができる。
【0078】
また、
図14に示すように、表示部73において、関連する構成要素を図面上に表示することもできる。
図14において、ドットなしの構成要素は、BIM計算モデルの構成要素を示し、密度の高いドットの構成要素は、BIM構造モデルの構成要素であって、ドットなしの構成要素と仕様情報が異なっていることを示している。一方、密度の低いドットの構成要素は、相互に一致しているBIM計算モデルとBIM構造モデルの構成要素を示している。このように、図面から、関連する構成要素の一致・不一致を確認することも可能である。
【0079】
以上で説明するように、構成要素比較装置60によれば、異なるBIMモデルの関連する構成要素の仕様の一致・不一致を、容易かつ効率的に特定することができる。尚、意匠ユーザ端末10Aや設備ユーザ端末10Cの機能構成図の図示を省略しているが、意匠ユーザ端末10Aは、
図4に示す構成要素比較装置60のうち、加工部72、表示部73、入力部76、及び格納部77を有する。一方、設備ユーザ端末10Cは、例えば
図4に示す構成要素比較装置60と同様の機能構成を有する。
【0080】
[実施形態に係る異なるBIMモデルの構成要素比較方法]
次に、
図15を参照して、実施形態に係る異なるBIMモデルの構成要素比較方法の一例について説明する。ここで、
図15は、実施形態に係る異なるBIMモデルの構成要素比較方法の一例のフローチャートである。
【0081】
構成要素比較方法では、まず、仕様情報を含む複数の構成要素により形成されるBIMモデルに関し、各構成要素が相互に関連した異なるBIMモデルを格納する、格納工程を実行する(ステップS10)。
【0082】
図4等を用いて既に説明したように、変換部75により、非BIM計算モデルがBIM計算モデルにデータ変換された後、このBIM計算モデルが格納部77に格納される。また、加工部72を用いてBIM計算モデルからBIM構造モデルが作成された後、このBIM構造モデルが格納部77に格納される。また、その他にも、複数の構造計算とそれに基づくBIM計算モデル及びBIM構造モデルが作成された際には、異なる時期に作成された複数のBIM計算モデルが格納部77に格納され、あるいは、異なる時期に作成された複数のBIM構造モデルが格納部77に格納される。
【0083】
次に、比較対象である異なるBIMモデルの有する各構成要素の仕様情報をテキストデータとして抽出する、抽出工程を実行する(ステップS20)。
【0084】
図4等を用いて既に説明したように、抽出部71において、BIM計算モデルとBIM構造モデルの有するそれぞれの構成要素の仕様情報が、テキストデータとして抽出される。
【0085】
次に、抽出されたそれぞれのBIMモデルのテキストデータを、関連した構成要素ごとに並べて表示する表示工程を実行する(ステップS30)。
【0086】
図4等を用いて既に説明したように、表示部73において、異なるBIMモデルのそれぞれの関連する構成要素が関連するIDに基づいて選定されて並べられ、一覧として表示される。
【0087】
図15に示す構成要素比較方法は、構成要素比較装置60において実行される一連の処理フローでもあるが、この一連の処理フローを含むプログラムがコンピュータにインストールされることにより、構成要素比較装置60が形成されてもよい。
【0088】
[BIMモデル共有システムを用いた構造計算から確認申請許可までの一例]
次に、
図16を参照して、BIMモデル共有システムを用いた構造計算から確認申請許可までの一例について説明する。
【0089】
図16には、上から順に、確認申請機関、構造設計担当者による構造計算業務、構造設計担当者による構造図面作成業務を示している。まず、日時t0において構造計算を開始し、日時t1において計算モデルに基づく計算データAを作成する。この計算モデルをデータ変換することにより、BIM計算モデルが作成される。
【0090】
構造図面作成業務では、構造設計担当者が、BIM計算モデルに対して構造計算に不要であった各種の構成要素を付加したり、構造計算で必要となっていた構成要素の一部の寸法や配置を見直す等することにより、日時t2においてBIM構造モデルを作成し、このBIM構造モデルに基づく構造図面Aを作成する。
【0091】
構造図面Aの作成に当たり、BIM構造モデルと当初のBIM計算モデルの間に構造計算上必要となる構成要素の一部に仕様情報の変更があったため、構造計算業務では、BIM構造モデルに対応したBIM計算モデルを再度作成し、このBIM計算モデルに基づく計算モデルを用いて構造設計を再度実行し、日時t3で計算データBを作成する。この計算モデルをデータ変換することにより、修正されたBIM計算モデルが作成される。
【0092】
構造図面作成業務では、修正されたBIM計算モデルに対して構成要素の一部の配置等の見直を再度行うことにより、日時t4において修正後のBIM構造モデルを作成し、この修正後のBIM構造モデルに基づく構造図面Bを作成する。
【0093】
この構造図面Bを含む確認申請書類が、確認申請機関に提出される。確認申請機関では、提出された確認申請書類のチェックを行い、日時t5において、書類中にある不備や一部の設計変更を要求する等の修正指示を行う。
【0094】
修正指示を受けた構造設計担当者は、構造計算業務において、構造モデルを再度修正し、日時t6においてこの修正された構造モデルに基づく計算データCを作成する。この修正された計算モデルをデータ変換することにより、修正されたBIM計算モデルが作成される。
【0095】
構造図面作成業務では、修正されたBIM計算モデルに対して構造計算に不要であった各種の構成要素を付加したり、構造計算で必要となっていた構成要素の一部の寸法や配置を見直す等することにより、日時t7においてBIM構造モデルを作成し、このBIM構造モデルに基づく構造図面Cを作成する。
【0096】
構造図面Cの作成に当たり、BIM構造モデルと確認申請提出時のBIM計算モデルの間に構造計算上必要となる構成要素の一部に仕様情報の変更があったため、構造計算業務では、BIM構造モデルに対応したBIM計算モデルを再度作成し、このBIM計算モデルに基づく計算モデルを用いて構造設計を再度実行し、日時t8で計算データDを作成する。この計算モデルをデータ変換することにより、再度修正されたBIM計算モデルが作成される。
【0097】
構造図面作成業務では、再度修正されたBIM計算モデルに対して構成要素の一部の配置等の見直を再度行うことにより、日時t9において再度修正されたBIM構造モデルを作成し、この再度修正されたBIM構造モデルに基づく構造図面Dを作成する。
【0098】
この構造図面Dを含む修正された確認申請書類が、確認申請機関に提出される。確認申請機関では、提出された確認申請書類のチェックを再度行い、日時t10において、書類中に不備や再度の設計変更の必要がないことを確認し、確認申請を許可する。
【0099】
このような最初の構造計算から確認申請許可までの一連の流れの中で、計算データBと構造図面Bとの間の整合性X1や、計算データDと構造図面Dとの間の整合性X2を確認する際に、実施形態に係るBIMモデル共有システム50が適用される。BIMモデル共有システム50を適用することにより、このような計算データと構造図面の間の整合性チェックを、構造設計担当者サイドにおいても、さらには、確認申請機関サイドにおいても、効率的に行うことができる。
【0100】
また、その他、計算データBと計算データDとの間の整合性Y1や、構造図面Bと構造図面Dとの間の整合性Y2の確認等、異なる時期に作成された計算データ間の整合性や構造図面間の整合性のチェックも、BIMモデル共有システム50を適用することにより効率的に行うことができる。
【0101】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0102】
10:ユーザ端末、10A:意匠ユーザ端末、10B:構造ユーザ端末、10C:設備ユーザ端末、20:共有サーバ、26:通信装置、30:外部機関端末、30A:確認申請機関端末、40:ネットワーク、50:BIMモデル共有システム、60:構成要素比較装置(異なるBIMモデルの構成要素比較装置)、66:通信装置、71:抽出部、72:加工部、73:表示部、74:構造計算部、75:変換部、76:入力部、77:格納部