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  • 特許-子供用座席装置用拘束ベルト調整機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】子供用座席装置用拘束ベルト調整機構
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/28 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
B60N2/28
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019099205
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020192875
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】508189474
【氏名又は名称】ニューウェルブランズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕司
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0074758(US,A1)
【文献】特開2005-053422(JP,A)
【文献】特開2001-277918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/28
B60N 2/26
B60R 22/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
子供用座席装置に設けられて子供の身体を拘束する拘束ベルトのベルト長を調整する構造であって、
前記拘束ベルトに連結される調整ベルトと、
回動自在に軸支されて前記調整ベルトを巻き取りおよび繰り出すローラと、
前記ローラから離れて位置し、駆動部によって回転駆動される回転体と、
前記回転体の回転を前記ローラに伝達する回転伝達部材と、
ロック操作子を有し、前記ロック操作子が操作されない状態で前記調整ベルトの巻き取りおよび/または繰り出しを禁止し、前記ロック操作子が操作される状態で前記調整ベルトの巻き取りおよび/または繰り出しを許容するロック機構と、
前記ローラを手動で回転操作する手動操作子とを備える、子供用座席装置用拘束ベルト調整機構。
【請求項2】
前記駆動部は、ばね要素である、請求項1に記載の子供用座席装置用拘束ベルト調整機構。
【請求項3】
前記回転体は、前記駆動部に駆動される駆動ドラムと、リトラクタベルトを介して前記ローラを駆動する従動ドラムとを有する、請求項2に記載の子供用座席装置用拘束ベルト調整機構。
【請求項4】
前記回転体は、前記駆動部に駆動される入力部材と、前記ローラを駆動する出力部材とを有し、前記入力部材と前記出力部材の相対回転を許容するトルクリミッタである、請求項1に記載の子供用座席装置用拘束ベルト調整機構。
【請求項5】
前記回転体は、前記ばね要素に連結されて前記ローラに巻き取りトルクを伝達する中心部材を有し、
前記手動操作子が操作される状態で前記中心部材は前記手動操作子の操作に応じて回転することを許容する、請求項2に記載の子供用座席装置用拘束ベルト調整機構。
【請求項6】
記ロック機構は、
前記調整ベルトと対面する基部と、
前記調整ベルトからみて前記基部と反対側に設けられ、前記ロック操作子が操作されない状態で前記調整ベルトを前記基部に向けて押し付けて固定し、前記ロック操作子が操作される状態で前記基部から離れるストッパとを有する、請求項1~5のいずれかに記載の子供用座席装置用拘束ベルト調整機構。
【請求項7】
前記子供用座席装置の幅方向に関し、
前記ローラの幅方向位置と前記手動操作子の幅方向位置が異なる、請求項1~6のいずれかに記載の子供用座席装置用拘束ベルト調整機構。
【請求項8】
前記子供用座席装置の座面部の前方領域に埋設される、請求項1~7のいずれかに記載の子供用座席装置用拘束ベルト調整機構。
【請求項9】
子供用座席装置に設けられて子供の身体を拘束する拘束ベルトのベルト長を調整する構造であって、
前記拘束ベルトに連結される調整ベルトと、
回動自在に軸支されて前記調整ベルトを巻き取りおよび繰り出すローラと、
ロック操作子を有し、前記ロック操作子が操作されない状態で前記調整ベルトの巻き取りおよび/または繰り出しを禁止し、前記ロック操作子が操作される状態で前記調整ベルトの巻き取りおよび/または繰り出しを許容するロック機構と、
巻き取りトルクを出力する駆動部と、
手動で操作可能な手動操作子と、
前記駆動部から前記ローラに前記巻き取りトルクを伝達して前記調整ベルトを前記ローラに巻き取り、前記手動操作子が操作される状態で前記巻き取りトルクに拘わらず前記ローラが前記手動操作子の操作に応じて回転することを許容するトルク伝達部と、を備え、
前記ロック操作子は、前記手動操作子の近傍に配置される、子供用座席装置用拘束ベルト調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子供用座席装置に関する。
【背景技術】
【0002】
子供用座席装置、あるいは幼児用安全座席、あるいは幼児用拘束保護シート、あるいは育児器具とも呼ばれる、いわゆるチャイルドシートに関し、子供の肩を拘束する肩ベルトのベルト長を調整する構造として、特許文献1および特許文献2に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1記載の幼児用拘束保護シートは、左右1対の肩ベルトと結合する長さ調整ベルトと、幼児が着座する座面よりも下方かつ左右方向中央に設けられて調整ベルトを巻き取る中空巻取軸と、中空巻取軸に設けられて巻き取り方向とは逆方向の回転を防止するラチェットと、シートの左側部に設けられる円筒形状の回転ノブと、回転ノブ中心の円形穴に設けられる回転つまみと、左右方向に延びて中空巻取軸と回転ノブおよび回転つまみを結合するベルト巻取軸を備える。
【0004】
操作者は、回転ノブおよび回転つまみを手動で操作することにより、肩ベルトのベルト長を短くすることができ、ラチェットを解除することにより肩ベルトのベルト長を長くすることができるというものである。このように特許文献1のベルト長調整は全手動で行われる。
【0005】
特許文献2記載の育児器具は、左右1対の肩ベルトと結合する長さ調整ベルトと、幼児が着座する座面よりも下方かつ左右方向中央に設けられて調整ベルトをロックまたはロック解除する固定部材を有する。調整ベルトの先端部は、固定部材を通り、幼児が着座する座面よりも前方へ延びている。
【0006】
操作者は、調整ベルトの先端部を手動で引くことにより、肩ベルトのベルト長を短くすることができ、固定部材をロック解除することにより肩ベルトのベルト長を長くすることができるというものである。なお固定部材は、調整ベルトの先端部が前方へさらに引き出されることを許容するが、反対方向の移動を規制する。これにより肩ベルトが不用意に長くなることが防止される。このように特許文献2のベルト長調整は全手動で行われる。
【0007】
特許文献3記載のチャイルドシートは、左右1対の肩ベルトと結合する長さ調節ベルトと、幼児が着座する座面よりも下方に設けられるアジャスタおよび自動巻き取り機を備える。アジャスタは、操作者が手動で調整ベルトを前方へ引き出して肩ベルトのベルト長を短くすることを許容するが、調整ベルトがアジャスタを通過して後方へ移動して肩ベルトのベルト長を長くすることを原則として禁止する。このように特許文献3のベルト長調整は全手動で行われる。
【0008】
なお特許文献3の自動巻き取り機は、アジャスタを通過して前方へ引き出された余分な調節ベルトを巻き取るにすぎない。このため特許文献3の自動巻き取り機は、肩ベルトを短くしたり締め付けたりする調整にトルクを付与していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平7-323816号公報
【文献】特開2003-226178号公報
【文献】特許第4672170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来のような構造にあっては、改善すべき点があることを本発明者は見いだした。つまり乳幼児の保護者である操作者のために、全手動で調整ベルトを引き出したり巻き取ったりという作業負担を減らしてやることが好ましい。
【0011】
そこで電動モータやばね要素といった電気的・機械的な駆動源を付加することも考えられるが、調整ベルトを巻き取る装置を単純に自動化し、手動力に頼ることなく自動巻き取り装置で調整ベルトを巻き取る場合、ベルト長を微調整したいという要求や、増し締めしたいという要求に対処できない。例えばばね仕掛けのリトラクタで調整ベルトを巻き取る場合、巻き取りが不十分になり、肩ベルト等の拘束ベルトを適正長さに調節できない虞がある。
【0012】
また万一、ばね機構や電動モータといった自動巻き取り装置が不調の場合、ベルト長の調整自体が全くできなくなり、不便をきたす。
【0013】
本発明は、上述の実情に鑑み、従来よりも改良されたベルト長調整のための構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のため本発明による子供用座席装置用拘束ベルト調整機構は、子供用座席装置に設けられて子供の身体を拘束する拘束ベルトのベルト長を調整する構造であって、拘束ベルトに連結される調整ベルトと、回動自在に軸支されて調整ベルトを巻き取りおよび繰り出すローラと、ロック操作子を有しロック操作子が操作されない状態で調整ベルトの巻き取りおよび/または繰り出しを禁止しロック操作子が操作される状態で調整ベルトの巻き取りおよび/または繰り出しを許容するロック機構と、巻き取りトルクを出力する駆動部と、手動で操作可能な調整操作子と、駆動部からローラに巻き取りトルクを伝達して調整ベルトをローラに巻き取り、調整操作子が操作される状態で巻き取りトルクに拘わらずローラが調整操作子の操作に応じて回転することを許容するトルク伝達部と、を備える。
【0015】
かかる本発明によれば、手動で調整操作子を操作しない間に駆動部の巻き取りトルクで調整ベルトがローラに機械的に巻き取られる他、子供用座席装置の操作者が調整操作子を手動で回転させることにより、調整ベルトをさらに巻き取ったり、あるいは繰り出したりすることができる。したがって、駆動部とは無関係に拘束ベルトのベルトを緩めたり、駆動部の巻き取りトルクが不足する場合に拘束ベルトを増し締めしたり等の微調整を行うことができる。また駆動部が巻き取りトルクを出力しない場合や、回転しない場合であっても、子供用座席装置の操作者が全手動で拘束ベルトの長さ調整を行うことができる。なお調整操作子は特に限定されず、例えばローラと同軸に結合するダイヤルである。ベルトは屈曲自在であり、張力およびトルクを伝達する。
【0016】
本発明のローラは、調整操作子により、駆動部が停止していても調整のための回動が可能である。駆動部はばね要素であってもよいし電動モータであってもよい。調整操作子は、ローラと一体であってもよいし、あるいはローラと別体であってギヤまたはワイヤ等で調整操作子の動きをローラに伝達するものであってもよい。本発明の一局面としてトルク伝達部は、駆動部に駆動される駆動ドラムと、ローラを駆動する従動ドラムと、末端が駆動ドラムに接続され先端が従動ドラムに接続され、これら駆動/従動ドラムの間で巻き取られたり繰り出されたりするリトラクタベルトとを有する。かかる局面によれば、トルク伝達部が駆動部側の駆動ドラムおよびローラ側の従動ドラムの2軸で構成され、互いに離隔する2軸がリトラクタベルトで連絡される。したがって駆動部の回転が停止していてもローラを回転させることができる。常態でリトラクタベルトは、駆動ドラムおよび従動ドラムの2軸間で張力を付与され、2軸間でトルクを伝達する。ばね要素は例えばぜんまいばね等の金属ばねである。
【0017】
本発明の他の局面として、トルク伝達部は、駆動部に駆動される入力部材と、ローラを駆動する出力部材とを有し、入力部材から出力部材へ所定値以下の巻き取りトルクを伝達し、所定値を超える巻き取りトルクを伝達しないトルクリミッタである。かかる局面によれば、駆動部とローラを同軸に配置し得て、拘束ベルト調整機構の小型化に資する。
【0018】
あるいは本発明の他の局面としてトルク伝達部は、駆動部のばね要素に連結されてローラに巻き取りトルクを伝達する中心部材を有し、調整操作子が操作される状態で中心部材は巻き取りトルクに拘わらず調整操作子の操作に応じて回転することを許容される。
【0019】
かかる局面によれば、手動で調整操作子を操作しない間にばね要素の巻き取りトルクで調整ベルトがローラに機械的に巻き取られる他、子供用座席装置の操作者が調整操作子を手動で回転させることにより、ばね要素が弾性変形して、調整ベルトをさらに巻き取ったり、あるいは繰り出したりすることができる。したがって、ばね要素が出力する巻き取りトルクに拘わらず拘束ベルトを緩めたり、ばね要素の巻き取りトルクが不足する場合に拘束ベルトを増し締めしたり等の微調整を行うことができる。またばね要素が巻き取りトルクを出力しない場合や、回転しない場合であっても、子供用座席装置の操作者が全手動で拘束ベルトの長さ調整を行うことができる。
【0020】
本発明の拘束ベルト調整機構は、配置場所を限定されない。また本発明のローラおよび調整操作子も、配置場所を限定されない。本発明の一局面として、子供用座席装置の幅方向に関し、ローラの幅方向位置と調整操作子の幅方向位置が異なる。例えば子供用座席装置の幅方向中央部にローラが配置され、子供用座席装置の左右縁部に調整操作子が配置される。なお幅方向とは、子供用座席装置に着席する乳幼児の左右方向をいう。本発明の他の局面としてローラの幅方向位置と調整操作子の幅方向位置が重なる。例えば子供用座席装置の幅方向中央部前方部分にローラが配置され、幅方向中央部後方部分に調整操作子が配置される。あるいはローラおよび調整操作子が前後逆に配置される。
【0021】
子供用座席装置は乳幼児の臀部を支持する座面部を当然に備えるし、乳幼児の背中を支持する背もたれ部をさらに備えるとよい。本発明の一局面として、拘束ベルト調整機構は子供用座席装置の座面部の前方領域に埋設される。これにより拘束ベルト調整機構が子供用座席装置の座面よりも下方に位置するように目立たなくされる。本発明の他の局面として、拘束ベルト調整機構は子供用座席装置の座面部の後方領域に埋設されてもよく、あるいは子供用座席装置の背もたれ部に埋設される。
【0022】
本発明のロック機構は、常態でロックするよう作動して調整ベルトの繰り出しを禁止するが、ロック操作子を操作される間のみロック解除されて調整ベルトの巻き取りを許容するとよい。本発明の一局面としてロック機構は、調整ベルトと対面する基部と、調整ベルトからみて基部と反対側に設けられ、ロック操作子が操作されない状態で調整ベルトを基部に向けて押し付けて固定し、ロック操作子が操作される状態で基部から離れるストッパとを有する。本発明の好ましい局面としてロック操作子は、調整操作子の近傍に配置される。これにより操作者は片手でロック操作子および調整操作子を同時に操作できる。近傍といえるには、ロック操作子が調整操作子から離隔して配置され、ロック操作子から調整操作子までの距離が10cm以下であることが好ましい。これにより操作者は、例えば親指で調整操作子を操作しつつ、残りの4本の指でロック操作子を同時に操作できる。ロック操作子と調整操作子の間には他の部材が介在してもよい。あるいはロック操作子は調整操作子に隣接配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
このように本発明によれば、自動巻き取り装置の欠点を補うことができ、拘束ベルトの長さ調整を適正に行うことができる。また自動巻き取り装置が不調であっても全手動で拘束ベルトの長さ調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のチャイルドシートおよび本発明の第1実施形態になる拘束ベルト調整機構を示す図である。
図2】第1実施形態のロック機構を短手方向から見た状態を示す図である。
図3】本発明の第2実施形態を示す図である。
図4】第2実施形態からトルクリミッタを取り出して示す図である。
図5】本発明の第3実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態になるチャイルドシートを示す模式的な側面図である。まずチャイルドシートを概略説明すると、チャイルドシートは自動車の座席の上に配置され、乳児や幼児などの子供を安全に乗車させるための子供用座席装置である。チャイルドシートは、ベース本体10および座席本体11を備える。ベース本体10は、乗用自動車の座席シート(図略)上に載置され、乗用自動車に備え付けのシートベルト(図略)で座席シート上に固定され、座席本体11を下方から支持する。座席本体11は、ベース本体10の上側に取り付けられ、ベース本体10に対して回転自在に支持される。
【0026】
座席本体11には、子供が着座する。このため座席本体11は、子供用座席ともいい、子供の臀部を支持する座面部12と、座面部12の後方から立ち上がり、子供の背部を支持する背もたれ部13とを有する。また、座面部12のフレームには、座面部12用の被覆部材(図略)が取り外し可能に装着されている。背もたれ部13のフレームには、背もたれ部13用の被覆部材(図略)が取り外し可能に装着されている。これらの被覆部材は、柔らかい布製部材、たとえば、クッション素材、あるいはメッシュ素材、によって形成される。
【0027】
背もたれ部13には、背もたれ部13に重なって、上下方向に摺動可能なスライド部材14が設けられる。スライド部材14は、子供の頭部を支持するヘッドレスト15を含み、図示しないロック機構により任意の高さ位置に固定することができる。
【0028】
チャイルドシートには、子供の体を拘束する拘束ベルトが複数設けられている。背もたれ部13に設けられる拘束ベルトは、子供の両肩を拘束する1対の肩ベルト16を含む。肩ベルト16は、スライド部材14および背もたれ部13を貫通するように配置されている。肩ベルト16の一端は、背もたれ部13の後面側で、連結具21を介して、拘束ベルト調整機構20の調整ベルト22に連結される。肩ベルト16の途中領域および他端は、背もたれ部13の前面側に配置される。
【0029】
また、座面部12に設けられる拘束ベルトは、座席本体11に着座した子供の両太腿の間を延びる股ベルト17と、座席本体11を左右方向に横断するように延びて子供の腰を拘束する腰ベルト18とを含む。股ベルト17の一端は座面部12の幅方向中央部分に固定される。腰ベルト18は左右にそれぞれ配置されて対をなし、各腰ベルト18の一端は座面部12の幅方向両側部分にそれぞれ固定される。
【0030】
これらの拘束ベルト(肩ベルト16,股ベルト17,腰ベルト18)の他端同士は、股ベルト17の先端に設けられる連結装置19により、子供の腹部付近で連結される。また操作者が連結装置19を操作することにより、拘束ベルトの他端同士は互いに分離される。連結装置19は例えばバックルである。
【0031】
次に、肩ベルト16の長さを調整する拘束ベルト調整機構20につき説明する。
【0032】
図1(a)に示すように拘束ベルト調整機構20は、座面部12の前方領域に配置され、座面よりも下方に埋設される。調整ベルト22は、拘束ベルト調整機構20から後方へ延び、先端で連結具21に固定される。また拘束ベルト調整機構20は座面部12の幅方向中央部分に配置される。
【0033】
図1(b)は本発明の第1実施形態になる拘束ベルト調整機構20を示す斜視図であり、座席前方Fを矢で表す。図1(c)は同実施形態になる拘束ベルト調整機構20を示す斜視図であり、内部構造を容易に理解するために一部を断面で表す。拘束ベルト調整機構20は、調整ベルト22と、調整ベルト22を巻き取ったり繰り出したりするローラ23と、調整ベルトの巻き取りおよび/または繰り出しを禁止したり許容したりするロック機構30と、巻き取りトルクを出力する駆動部40と、駆動部40からローラ23に巻き取りトルクを伝達するトルク伝達部50を備える。
【0034】
チャイルドシートの操作者は、拘束ベルト調整機構20を操作し、調整ベルト22を巻き取ることによって1対の肩ベルト16を短くしたり、調整ベルト22を繰り出すことによって1対の肩ベルト16を長くしたりと、肩ベルト16を長さ調整することができる。また上述した調整操作の場合を除き、調整ベルト22は拘束ベルト調整機構20から不用意に繰り出されず、肩ベルト16は長さ一定にされて子供の肩を拘束する。
【0035】
図1(c)に示すように調整ベルト22は末端側でロック機構30に通される。調整ベルト22の末端は、ローラ23の芯に形成された溝23gに差し込まれ、これによりローラ23に連結固定される。調整ベルト22は、ローラ23の回転に伴い、ローラ23の外周に巻回する。
【0036】
図1(b)に示すようにローラ23の両端には調整ダイヤル24がそれぞれ設けられる。調整ダイヤル24は、手動で操作され易いよう外周面にローレットが設けられ、ローラ23とともに回転する。ローラ23の両端にはベアリング25cがさらに設けられる。各ベアリング25cは調整ダイヤル24よりも軸方向外側に設けられ、1対の支持壁25に回転自在に支持される。ローラ23および調整ダイヤル24は一体結合し、一部材である。かかる一部材の中心と、上述した1対のベアリング25cにはシャフト23b(図1(c))が通される。シャフト23bは、上述した1対のベアリング25cに支持される。
【0037】
1対の支持壁25,25は、調整ベルト22に沿って延びる。以下の説明で、調整ベルト22に沿って延びる支持壁25の方向を長手方向という。また調整ベルト22を幅方向に横断する方向を短手方向という。1対の支持壁25,25間には、ロック機構30の可動部品と、ローラ23と、調整ダイヤル24と、調整ベルト22の末端領域が配設される。
【0038】
調整ダイヤル24はローラ23よりも大径のフランジであり、ローラ23を挟んで対をなす。かかる1対のフランジによって、調整ベルト22は調整ダイヤル24,24間に整然と巻き取られる。
【0039】
ロック機構30の側方には駆動部40が設置され、ローラ23の軸方向一方にはトルク伝達部50が設置される。駆動部40およびトルク伝達部50は、一枚の支持壁25によって、ロック機構30の可動部品およびローラ23から隔てて配置される。ロック機構30については後述する。
【0040】
駆動部40はぜんまいばね等の金属ばねを収容する円筒体であり、駆動部40から突出して延びる駆動軸41(図1(b)に破線で示す)を巻き取り方向に常時駆動する。ただし駆動軸41は巻き取りトルクを出力するのみであり、回転速度を規定されないし、回転停止も可能である。駆動軸41は両端でブラケット42に支持される。ブラケット42は駆動部40をさらに支持する。
【0041】
トルク伝達部50は、リトラクタベルト51と、駆動ドラム52と、従動ドラム53を有する。駆動ドラム52は、駆動軸41の外周に取付固定される。従動ドラム53は、駆動ドラムと平行に配置され、ローラ23に取付固定される。リトラクタベルト51は、調整ベルト22および前述した拘束ベルトと同様、屈曲自在な布製の帯である。リトラクタベルト51は、末端で駆動ドラム52に固定され、先端で従動ドラム53に固定され、駆動ドラム52および従動ドラム53のいずれか一方から繰り出されながら残る他方に巻き取られる。これによりトルク伝達部50は、駆動軸41の巻き取りトルクをローラ23に伝達する。
【0042】
駆動ドラム52と従動ドラム53は通常、略同じ回転速度で回転するが、何らかの理由により駆動軸41が回転しなかったり、ゆっくり回転したりする場合がある。この場合、駆動ドラム52はスムーズに回転しないが、操作者が調整ダイヤル24を手動で回すことにより、ローラ23および従動ドラム53が回動可能である。具体的には従動ドラム53は駆動ドラム52の巻き取りトルク方向とは逆回転に回転可能である。これにより操作者は、駆動部40の巻き取りトルクに拘わらず、調整ダイヤル24を手動で回転させて調整ベルト22をローラ23から繰り出し、肩ベルト16を緩めることができる。あるいは操作者は、駆動部40の巻き取りトルクの大小に拘わらず、調整ダイヤル24を手動で回転させて調整ベルト22をローラ23でさらに巻き取り、肩ベルト16を増し締めすることができる。本実施形態によれば、調整ダイヤル24を回動させることにより肩ベルト16の長さを微調整することができる。
【0043】
従動ドラム53は、駆動軸41からずらして平行配置されており、駆動軸41と軸直角方向に整列する。ドラム52の両端にはフランジ54が設けられる。かかる1対のフランジ54によって、リトラクタベルト51はフランジ54,54間に整然と巻き取られる。
シャフト23bは、従動ドラム53の回転およびトルクをローラ23に伝達するトルク伝達要素であり、シャフト23bの一端領域が従動ドラム53に固定され、シャフト23bの他端領域がローラ23に固定される。このようにシャフト23bは、ローラ23とドラム52を駆動結合し、ローラ23はドラム52と一体に回転する。
【0044】
シャフト23bは、従動ドラム53の中心に沿って従動ドラム53の一端から他端まで貫通して延びる。このシャフト23bはフランジ54を超えてドラム52の軸方向外側に突出し、支持ブラケット55に内蔵されるベアリングに回転自在に支持される。
【0045】
ベアリング55と、上述した1対の支持壁25にはそれぞれ、ねじ穴25p,55pが形成される。またブラケット42には貫通孔42hが形成される。ねじ穴25p,55pおよび貫通孔42hは上向きに開口し、貫通孔42hは上下方向に貫通し、止めネジを通されて、上側の基板26(図2(a))に固定される。
【0046】
図2(a)~図2(c)は、拘束ベルト調整機構20の基板26、ローラ23、調整ダイヤル24、およびロック機構30を示す図であり、紙面上方がチャイルドシートの上方を指す。なお図2(a)は、1対の支持壁25,25のうち、トルク伝達部50から遠い方の支持壁25を取り除き、該支持壁25側からみた状態を示す。図2(b)および図2(c)は、ロック機構30の内部を示す。
【0047】
図1(b)および図1(c)も参照して、ロック機構30は、ロック基部25bと、可動壁31bと、操作子32と、カム部材33と、ピン34~37と、リターンスプリング38,39と、ストッパ29とを有する。
【0048】
ロック基部25bは、2枚の支持壁25の下縁に架設され、これら支持壁25に一体形成される。また下側に配置されるロック基部25bは、上側に配置される基板26と対面し、1対の支持壁25,25とともに、長手方向に延びる通路を区画する。かかる通路を、調整ベルト22が通され、可動壁31bが進退動する。なお本実施形態では、長手方向が座面部12の前後方向に対応する。
【0049】
可動壁31bは、調整ベルトを介して対面する1対の壁であり、支持壁25の内側壁面に隣接する。2枚の可動壁31の上縁には、中間壁31cが架設され、これら可動壁31bおよび中間壁31cは一体形成される。
【0050】
2枚の可動壁31bにはピン34がさらに架設される。ピン34は、各可動壁31bを貫通して外側へ突出し、支持壁25に形成される長孔25jをさらに貫通して支持壁25の外側へ突出する。かかるピン34の両端部には、操作子32が連結される。図1(b)および図1(c)を参照して、操作子32は、1対の支持壁25,25の上縁に支持され、これらの上縁に沿って支持壁25,25の長手方向に摺動する。長孔25jも長手方向に延び、ピン34も長孔25jに沿って変位する。
【0051】
調整ダイヤル24の軸方向に対応する操作子32の幅寸法は、2枚の調整ダイヤル24の間隔よりも大きい。操作子32は、調整ダイヤル24を抱えるよう、調整ダイヤル24と隣り合って配置される。
【0052】
2枚の可動壁31bには長手方向に延びる長孔31jがそれぞれ形成される。2個の長孔31jには、1本のピン35が通される。ピン35は1対の支持壁25,25に架設される。短手方向に延びるピン34,35にはリターンスプリング38が架設される。リターンスプリング38は可動壁31bを退動方向へ付勢する。したがって可動壁31bおよび中間壁31cは常態で、図1(b)~図2(b)に示すロック位置にされる。操作者がリターンスプリング38の弾発力に抗して操作子32を前方Fへ引くと、可動壁31bおよび中間壁31cは図2(c)に示すロック解除位置へ前進する。
【0053】
図1(b)に示すように、1対の支持壁25には、上下方向に延びる長孔25kが形成される。各長孔25kには共通するピン36が通される。さらに各長孔25kには共通するピン37が通される。ピン36はピン37よりも上方に離隔して配置され、これらのピン36,37は短手方向に平行に延びる。
【0054】
図2(a)に示すように各可動壁31bには、上下方向に対面する1対の斜面31d,31dを有する開口31fがそれぞれ形成される。各斜面31dは、前方へ向かうほど上になるよう、後方へ向かうほど下になるよう、傾斜する。つまり開口31fの後端は、ロック基部25bに近く、開口31fの前端は、ロック基部25bから遠い。各開口31fには、上述したピン36,37が通される。
【0055】
図1(c)に示すようにピン36,37の中央部にはカム部材33が取り付けられる。図2(b)に示すように短手方向にみてカム部材33は略半円形であり、下向きに膨らんだ円弧であるカム面33cを有する。カム面33cは、ピン36,37からみて長手方向一方および他方にそれぞれ設けられ、ピン36,37から長手方向に遠ざかるほど、上方へ向かう。
【0056】
カム部材33の下方には、ストッパ29が配置される。ストッパ29は、ピン36,37からみて長手方向一方および他方にそれぞれ設けられ、短手方向に延びる枢軸28に枢支される。枢軸28は両端でブラケット27に支持される。ブラケット27はロック基部25bにねじで固定される。
【0057】
各ストッパ29には、枢軸28から離れた部位に、腕部29bおよび摺接部29cが設けられる。腕部29bはピン37に向かって延びる。摺接部29cは、ロック基部25bへ指向する。本実施形態では、金属製の摺接部29cが金属製のプラケット27のプレート部分と対面する。
【0058】
各枢軸28にはリターンスプリング39が同軸に配置される。リターンスプリング39はストッパ29を図1(c)および図2(b)に示すロック位置に付勢する。ストッパ29の摺接部29cは、ギザギザの表面形状に形成され、ロック位置で調整ベルト22をロック基部25bに向かって押し付ける。これにより調整ベルト22はストッパ29とブラケット27のプレー地部分に挟まれ、移動を禁止される。ストッパ29の腕部29bは、ロック位置で起立姿勢にされる。
【0059】
調整ベルト22のロックを解除する場合、操作者は操作子32を前方Fへ引き出す。そうすると可動壁31bが長手方向に移動し、図2(a)に示すピン36が斜面31dに押され、斜面31d沿って変位し、ロック基部25bに近づく。そうするとストッパ29が図2(b)に示すロック位置から図2(c)に示すロック解除位置へ下降し、各カム面33fが各腕部29bに当接してこれを押し下げる。各腕部29bが各カム面33fの円弧面に沿って徐々に押し下げられると、ストッパ29は回動し、摺接部29cはロック基部25bから離れるように上方へ移動する。これにより調整ベルト22は、なんら挟圧されず、ローラ23に対する巻き取りおより繰り出しを許容される。
【0060】
かかるロック解除状態で、駆動部40はローラ23を巻き取り方向に駆動するので、調整ベルト22はローラ23に巻き取られ、肩ベルト16(図1(a))は短くされる。
【0061】
駆動部40の駆動トルクが小さい等の理由により肩ベルト16が充分に短くされない場合、操作者は片手で操作子32を引き出つつ、同じ片手で調整ダイヤル24を回すとよい。調整ダイヤル24を回すことにより、肩ベルト16はもっと短くなるよう微調整される。
【0062】
あるいは駆動部40の駆動トルクが大きい等の理由により肩ベルト16が短くされすぎる場合も、操作者は片手で操作子32を引き出つつ、同じ片手で調整ダイヤル24を回すとよい。調整ダイヤル24を回すことにより、肩ベルト16が長くなるよう微調整される。
【0063】
本発明の拘束ベルト調整機構20は駆動部40および調整ダイヤル24を備えることから、操作者は容易に、肩ベルト16を適切な長さに調整することができる。
【0064】
また駆動部40が不調の場合、操作者は調整ダイヤル24を回すことにより肩ベルト16を適切な長さに調整することができる。駆動部40はローラ23の回転軸とは別な軸に設けられるから、容易に保守・交換され得る。
【0065】
なお操作者が操作子32から手を離すと、リターンスプリング38,39の弾発力によって、可動壁31bと中間壁31cとカム部材33と各ピンとストッパ29は、図1(b)~図2(b)に示すロック位置に復帰する。図示しない変形例として、駆動部40はばね要素に代えて電動モータでもよい。
【0066】
次に本発明の第2実施形態になる拘束ベルト調整機構を説明する。図3および図4は本発明の第2実施形態を示す図である。第2実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。
【0067】
図3(a)および図3(b)は斜視図であり、図3(c)は前方Fからみた正面図であり、図3(d)は前方Fからみた断面図である。
【0068】
第2実施形態の拘束ベルト調整機構20では、駆動部40をローラ23と同軸に配置する。そして駆動部40とローラ23間にトルク伝達部50を介在させる。また駆動部40は電動モータである。
【0069】
駆動部40は、図示しない電源およびスイッチと接続する。スイッチがONにされる間、駆動部40は巻き取り方向の回転トルクを出力する。
【0070】
図3(d)に示すようにトルク伝達部50は、入力部材56、出力部材57、係合爪58を有し、通常は入力部材56が出力部材57を同じ速度で回転させるが、所定の条件下において入力部材56と出力部材57の相対回転を許容するトルクリミッタである。入力部材56は駆動部40のモータ回転軸と結合し、モータ回転軸と同じ速度で回転する。出力部材57はトルク伝達要素になるシャフト23bと結合する。
【0071】
トルクリミッタ(トルク伝達部50)の軸方向中央部で、入力部材56および出力部材57は、円筒部と、この円筒部の中心に挿通される円柱部となるように形成され、入力部材56、出力部材57、および係合爪58の軸方向位置が重なるように配置される。
【0072】
図4はトルクリミッタの軸方向中央部を示す横断面図であり、図4(a)が通常のトルク伝達状態を、図4(b)および図4(c)がトルクを伝達しないすべり状態をそれぞれ表す。出力部材57の内周には、緩勾配の斜面57bと、急勾配の段差57cとが交互に連続するよう繰り返し配列される。
【0073】
入力部材56には、直径方向に延びる貫通孔56hが形成され、56h内に1対の係合爪58,58が背中合わせに配置される。係合爪58の先端は入力部材56の外径方向に向かって先細の爪状に形成される。1対の係合爪58,58間には弾性部材59が縮設される。弾性部材59は例えばコイルスプリングであり、各係合爪58を外径方向に付勢する。
【0074】
図4(a)に示すように通常、弾性部材59は段差57cに係合する。入力部材56が巻き取り方向qに回転すると、出力部材57も同じ巻き取り方向qで同じ速度で回転する。上述したとおり操作者が操作子32を引くことにより、調整ベルト22は巻き取りまたは繰り出しを許容される。通常、トルクリミッタは、電動モータ(駆動部40)の巻き取りトルクをローラ23に伝達し、調整ベルト22をローラ23で巻き取り、肩ベルト16を短くする。
【0075】
電動モータ(駆動部40)の駆動トルク以上の負荷がトルクリミッタにかかると、図4(b)に示すよう係合爪58と段差57cの係合は外れ、係合爪58は貫通孔56h内に後退する。これにより入力部材56は出力部材57に対して空転し、電動モータ(駆動部40)は過負荷から保護される。
【0076】
図4(c)に示す調整ダイヤル24を太矢印で示すように手動で巻き取り方向qに回転させる場合、調整ダイヤル24に倣ってローラ23が回転し、調整ベルト22がローラ23に巻き取られるとともに出力部材57も同じ速度で回転する。このとき係合爪58は斜面57bに摺接し、段差57cと係合しないので、出力部材57は入力部材56に対して空転する。本実施形態によれば、電動モータ(駆動部40)の駆動トルク不足の場合や、電動モータ(駆動部40)が不調の場合でも、調整ダイヤル24を手動で回転させて調整ベルト22を巻き取ることができる。
【0077】
次に本発明の第3実施形態になる拘束ベルト調整機構を説明する。図5は本発明の第3実施形態を示す図である。第3実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。
【0078】
図5(a)および図5(b)は斜視図であり、図5(c)は前方Fからみた正面図であり、図5(d)は前方Fからみた断面図である。第3実施形態の拘束ベルト調整機構20は、前述した駆動部40およびトルク伝達部50に代えて、駆動伝達部60を備える。駆動伝達部60は、ぜんまいばね61、ケース62、中心部材63、およびカバー64を有する。なおカバー64は、図5(c)および図5(d)に図示されるが、図5(b)で図略される。
【0079】
駆動部としてのぜんまいばね61はケース62の内部に収容される。ぜんまいばね61の外径端は、ケース62の内壁面に係止される。ぜんまいばね61の内径端は、ケース62に収容される円形の中心部材63に係止される。つまりぜんまいばね61の内径端は、駆動軸としての中心部材63に連結される。
【0080】
ローラ23および調整ダイヤル24と結合するシャフト23bは、ケース62の一端を貫通して延び、中心部材63と同軸に結合する。ケース62と中心部材63の間には環状空間Sが確保される。環状空間Sはぜんまいばね61を弾性変形可能に収容するために十分な余裕を有する。
【0081】
ケース62の他端にはカバー64が取り付けられる。カバー64はケース62の内部を外部から遮断して、ぜんまいばね61と中心部材63と環状空間Sを覆う。カバー64の中心にはシャフト23bの端部が通される穴64hが形成される。穴64hにはシャフト23bの端部を回転自在に支持するベアリング(図略)が設けられる。
【0082】
上述したとおり操作者が操作子32を引くことにより、調整ベルト22は巻き取りまたは繰り出しを許容される。つるまきばね61は、原形と対比して弾性変形の度合いが強まるほど巻き取りトルクを生成する。駆動伝達部60は、シャフト23bを介して巻き取りトルクをローラ23に付与する。これにより調整ベルト22はローラ23に巻き取られ、肩ベルト16は短くされる。
【0083】
操作者が、つるまきばね61の巻き取りトルク不足の理由により肩ベルト16をさらに短くすることを所望する場合、あるいはつるまきばね61の過剰な巻き取りトルクを理由に肩ベルト16を長くことを所望する場合、調整ダイヤル24を手動で回動させるとよい。つるまきばね61および環状空間Sは、シャフト23bの自由な回動を許容する。
【0084】
その一方で、つるまきばね61内径端が回転しない場合等は、調整ダイヤル24を手動で回動させることができる。このときつるまきばね61は環状空間S内で弾性変形するのでローラ23の回動を規制しない。
【0085】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば上述した1の実施形態から一部の構成を抜き出し、上述した他の実施形態から他の一部の構成を抜き出し、これら抜き出された構成を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、育児器具において有利に利用される。
【符号の説明】
【0087】
10 ベース本体、 11 座席本体、 12 座面部、
13 背もたれ部、 14 スライド部材、 15 ヘッドレスト、
16 肩ベルト、 17 股ベルト、 19 連結装置、
20 拘束ベルト調整機構、 21 連結具、 22 調整ベルト、
23 ローラ、 23b シャフト(トルク伝達要素)、 23g 溝、
24 調整ダイヤル(調整操作子)、 25 支持壁、
25b ロック基部、 28 枢軸、 29 ストッパ、
29b 腕部、 29c 摺接部、 30 ロック機構、
31b 可動壁、 32 ロック操作子、 33 カム部材、
34,35,36,37 ピン、 38,39 リターンスプリング、
40 駆動部、 41 駆動軸、 50 トルク伝達部、
51 リトラクタベルト、 52 駆動ドラム、 53 従動ドラム、
56 入力部材、 57 出力部材、 58 係合爪、
59 弾性部材、 60 駆動伝達部、 61 ぜんまいばね、
62 ケース、 63 中心部材。
図1
図2
図3
図4
図5