(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】表面処理粉体及び表面処理粉体を含有する化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20230816BHJP
A61K 8/898 20060101ALI20230816BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230816BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230816BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230816BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/898
A61K8/02
A61Q1/00
A61Q19/00
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2019111854
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】木崎 寿美子
(72)【発明者】
【氏名】吉本 純也
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-321726(JP,A)
【文献】特開2014-005279(JP,A)
【文献】特開2004-182729(JP,A)
【文献】国際公開第2014/102862(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
C09C3/12
C03C17/00
CAplus/KOSMET/MEDLINE/BIOSIS(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウケイ酸(Ca/Na)及びホウケイ酸(Ca/Al)から選択される1種または2種の球状ガラスビーズの表面をアミノ変性シリコーンで処理した表面処理粉体。
【請求項2】
請求項1に記載の表面処理粉体を含有する化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理粉体及び表面処理粉体を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料に球状ガラスビーズを配合し得ることが知られている(特許文献1参照)。また毛穴ぼかし効果、素肌感・透明感だけでなく塗布時の感触やすべり性を向上させる目的で、架橋シリコーン粉体(特許文献2参照)、ナイロン粉体(特許文献3参照)、アクリル粉体(特許文献4参照)等の球状ポリマー粉体を配合することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-321726号公報
【文献】特開平1-165509号公報
【文献】特開平7-300410号公報
【文献】特表平10-502389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの球状ポリマー粉体を化粧料に配合する場合、経時で皮脂を吸着して肌が乾燥すること等の問題があった。また球状ガラスビーズは、肌に塗布した際の柔らかさ、しっとり感、密着感があまりよくないという課題があった。そこで、本発明は、球状ガラスビーズにおいて、肌に塗布した際の柔らかさ、しっとり感、密着感を改良した新たな表面処理粉体及びかかる表面処理粉体を含有する化粧料を提供することを課題とする。
【0005】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、本発明を完成するにいたった。すなわち本発明は、次のとおりである。
[1]
球状ガラスビーズの表面をアミノ変性シリコーンで処理した表面処理粉体。
[2]
[1]の表面処理粉体を含有する化粧料。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化粧料は、肌に塗布した際の柔らかさ、しっとり感、密着感に優れるという効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明の表面処理粉体の母粉体となる球状ガラスビーズは、通常化粧料に配合し得るものであれば特に限定されない。球状ガラスビーズの平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が一層好ましい。また、球状ガラスビーズの平均粒子径は、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、13μm以下がさらに好ましい。さらに、球状ガラスビーズの平均粒子径は、滑らかさと化粧持ちの観点から、好ましくは1~20μmであり、より好ましくは5~15μmであり、さらに好ましくは7~13μmである。なお、球状ガラスビーズの平均粒子径は、粉体粒子の形状に合わせ、顕微鏡法の原理により個数平均の平均粒子径として測定することができる。
【0009】
球状ガラスビーズは、中空ガラスビーズ、多孔質ガラスビーズ、及び無孔質ガラスビーズのいずれであってもよく、それらを併用して用いてもよいが、無孔質ガラスビーズを含むことが好ましい。中空ガラスビーズ又は多孔質ガラスビーズを用いる場合には、製造工程において混合、粉砕、乳化等の工程中でガラスビーズが破損することがあり、化粧料にガラスビーズの破片が混入する可能性がある。
球状ガラスビーズは、化粧品表示名称;(INCI名称)としてホウケイ酸(Ca/Na);(CALCIUM SODIUM BOROSILICATE)、ホウケイ酸(Ca/Al);(CALCIUM ALUMINUM BOROSILICATE)等と表示されるが、本発明においてはいずれの表示名称のガラスを用いてもよく、ホウケイ酸(Ca/Na)を用いることがより好ましい。
【0010】
本発明の表面処理粉体は、アミノ変性シリコーンを用いて表面処理を行う。かかるアミノ変性シリコーンとしては、アミノ基又はアンモニウム基を有しているシリコーンであればよく、末端水酸基の全て又は一部がメチル基等で封鎖されたアミノ変性シリコーンオイル、末端が封鎖されていないアモジメチコンのどちらでもよい。例えば、好ましいアミノ変性シリコーンとしては、以下の一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0011】
【0012】
〔式中、Rは水酸基、水素原子又はR1を示し、R1は置換又は非置換の炭素数1~20の一価炭化水素基を示し、XはR1、-Q-NH(CH2)nNH2、-OR1又は水酸基を示し、Qは炭素数1~8の二価炭化水素基を示し、nは1~5の数を示し、p及びqはその和が数平均で2以上2000未満、好ましくは20以上2000未満、更に好ましくは30以上1000未満となる数を示す。〕
【0013】
上記アミノ変性シリコーンのアミノ当量は、好ましくは200g/moL~3万g/moL、更に好ましくは500g/moL~1万g/moL、更に好ましくは600g/moL~5000g/moLである。
ここで、アミノ当量とは、アミノ基又はアンモニウム基1個当たりのシロキサン骨格の質量を意味している。表記単位のg/moLはアミノ基又はアンモニウム基1moL当たりに換算した値である。従って、アミノ当量の値が小さいほど分子内でのアミノ基又はアンモニウム基の比率が高いことを示している。
また、このものの粘度は、粉体が均一に被覆され、粉体分散性の向上が得られるという点から、100~3000mm2/s(25℃)の範囲のものであることが好ましい。
【0014】
また、上記アミノ変性シリコーンの好適な市販品の具体例としては、SF8451C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,粘度600mm2/s,アミノ当量1700g/moL)、SF8452C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,粘度700mm2/s,アミノ当量6400g/moL)、SF8457C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,粘度1200mm2/s,アミノ当量1800g/moL)、KF8003(信越化学工業社製,粘度1850mm2/s,アミノ当量2000g/moL)、KF8004(信越化学工業社製,粘度800mm2/s,アミノ当量1500g/moL)、KF867S(信越化学工業社製,粘度1300mm2/s,アミノ当量1700g/moL)、XF42-B8922(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製,粘度70000mm2/s,アミノ当量13000g/moL)等のアミノ変性シリコーンオイルや、SM8704C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,アミノ当量1800g/moL)等のアモジメチコンエマルションが挙げられる。(以上、粘度は25℃における値である。)
【0015】
上記アミノ変性シリコーンは25℃で液状のものが好ましく、エマルションの形で使用してもよい。このアミノ変性シリコーンのエマルションは、例えば、アミノ変性シリコーンと溶媒を高剪断で機械混合したものや、アミノ変性シリコーンを水及び乳化剤で乳化したもの、若しくはこれらの組み合わせによって、又は乳化重合によっても調製することができる。
【0016】
本発明の表面処理粉体の調製における、アミノ変性シリコーンの処理量は特に限定されないが、肌に塗布した際の柔らかさ、しっとり感、密着感の観点から、処理される球状ガラスビーズ100質量部に対し、アミノ変性シリコーンを0.05質量部以上、さらには0.1質量部以上が、また10質量部以下、さらには7質量部以下とすることがそれらの効果が特に顕著であるため好ましい。
【0017】
本発明の表面処理粉体は、化粧料に配合することができる。
【0018】
本発明の表面処理粉体を含有する化粧料の用途としては、ファンデーション、アイカラー、チークカラー、口紅、マスカラ、アイライナー、アイブロウなどのメイクアップ化粧料をはじめ、紫外線防御用化粧料、化粧水、クリーム、乳液、美容液などの基礎化粧料、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、整髪料、染毛料等の毛髪用化粧料、顔用洗浄料、ボディ用洗浄料、手用化粧料、全身用化粧料等その用途を問わない。
【0019】
本発明の表面処理粉体を含有する化粧料の剤型は問わない。かかる剤型としては、水系組成物、水中油型乳化組成物、油中水型乳化組成物、水中油中水型乳化組成物、油中水中油型乳化組成物、液晶組成物、油系組成物、粉体組成物、エアゾール、泡吐出型組成物、非エアゾール型スプレー組成物などが例示される。
【0020】
本発明の表面処理粉体を含有する化粧料は、通常の製造方法により製造することができる。
【0021】
本発明の表面処理粉体を含有する化粧料には、通常化粧料に配合し得る成分を配合することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、配合量は、特に指定しない限り質量%を意味する。また、実施例又は比較例は定法により調製した。
【0023】
まず、本発明の表面処理粉体である、アミノ変性シリコーン処理球状ガラスビーズの実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお実施例、比較例において特に断りのない限り球状ガラスビーズとしては、ホウケイ酸(Ca/Na)商品名「COVABEAD CRYSTAL」(SENSIENT COSMETIC TECHNOLOGIES社製;平均粒子径11μm)を使用した。
【0024】
[実施例1]
アミノ変性シリコーン処理球状ガラスビーズ
アミノ変性シリコーン(KF8003/信越化学工業社製)0.5質量部をイソプロピルアルコール70質量部に溶解し、そこに球状ガラスビーズを95質量%添加した。それをスーパーミキサー(SMP-2/カワタ社製)により混合した後、80℃でイソプロピルアルコールを蒸発乾燥した。この乾燥物をアトマイザー(LM-05/ダルトン社製)にて解砕処理し、粉末状のアミノ変性シリコーン処理球状ガラスビーズ(0.5%処理)を得た。
【0025】
[実施例2]
アミノ変性シリコーン処理球状ガラスビーズ
アミノ変性シリコーン(KF867S/信越化学工業社製)0.3質量部と球状ガラスビーズ99.7質量部と水10質量部とを雷潰機(ZOD型/石川工場社製)にて、3時間混合し、100℃で4時間加熱した。その後、アトマイザー(LM-05/ダルトン社製)にて解砕処理し、粉末状のアミノ変性シリコーン処理球状ガラスビーズ(0.3%処理)を得た。
【0026】
[実施例3]
アミノ変性シリコーン処理球状ガラスビーズ
アミノ変性シリコーン(KF8004/信越化学工業社製)0.2質量部と球状ガラスビーズ99.8質量部と水10質量部とを雷潰機にて3時間混合し、90℃で3時間加熱した。その後、アトマイザー(LM-05/ダルトン社製)にて解砕処理し、粉末状のアミノ変性シリコーン処理球状ガラスビーズ(0.2%処理)を得た。
【0027】
[実施例4]
アミノ変性シリコーン処理球状ガラスビーズ
アミノ変性シリコーン(SF8451C/東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)0.4質量部と球状ガラスビーズ99.6質量部をスーパーミキサーにて10分間混合し、70℃で5時間加熱した。その後、アトマイザー(LM-05/ダルトン社製)にて解砕処理し、粉末状のアミノ変性シリコーン処理球状ガラスビーズ(0.4%処理)を得た。
【0028】
[比較例1]
未処理のホウケイ酸(Ca/Na)商品名「COVABEAD CRYSTAL」(SENSIENT COSMETIC TECHNOLOGIES社製;平均粒子径11μm)を比較例1とした。
【0029】
これら実施例および比較例の各種表面処理粉体について、電子顕微鏡観察と撥水度の測定を行い、結果を表1に示す。
[撥水度]
撥水度測定試料の調製は、粉体を金皿に採り1mPa・Sのプレス圧で成型した。その成型面に10μLの精製水を滴下して60秒後の接触角を測定した。なお、測定結果は、接触角が120°以上を「○」、120°未満を「×」として評価した。
【0030】
【0031】
表1に示した通り、本発明の実施例にかかる表面処理粉体は、撥水性が良好で、ガラスビーズ表面に均質にアミノ変性シリコーンが存在していた。これに対し未処理のガラスビーズは撥水性が認められなかった。
【0032】
つぎに上記実施例1~実施例4に記載したアミノ変性シリコーン処理球状ガラスビーズを配合した化粧料について記載する。
【0033】
実施例及び比較例は、化粧料の官能評価専門員3名がそれぞれ使用し、各評価項目について合議により下記の基準により評価を行った。
「◎」:非常に良い
「〇」:良い
「△」:少し悪い
「×」:悪い
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】