(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
A45D 44/22 20060101AFI20230816BHJP
B32B 3/16 20060101ALN20230816BHJP
B32B 3/18 20060101ALN20230816BHJP
B32B 7/06 20190101ALN20230816BHJP
B32B 27/00 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
A45D44/22 C
B32B3/16
B32B3/18
B32B7/06
B32B27/00 E
(21)【出願番号】P 2019116981
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(73)【特許権者】
【識別番号】591091043
【氏名又は名称】ツキオカフィルム製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100125313
【氏名又は名称】木村 浩幸
(74)【代理人】
【識別番号】100067644
【氏名又は名称】竹内 裕
(72)【発明者】
【氏名】木村 朋子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】野田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】神谷 篤志
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02001862(US,A)
【文献】国際公開第2013/080331(WO,A1)
【文献】実公昭52-039534(JP,Y2)
【文献】特開平06-339496(JP,A)
【文献】特開2018-173851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D44/00-44/22
B32B 3/16
B32B 3/18
B32B 7/06
B32B27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料層を担持し前記化粧料層が肌に密着した後は前記化粧料層から取り去ることができる剥離可能な基材シートと、前記化粧料層の肌へ密着する面を保護する剥離可能な保護シートと、前記基材シートと
前記保護シートの間に
配置される前記化粧料層
と、を備え、
前記基材シートには、
前記基材シートを貫通切断するハーフカット状の切り込み線と、貫通切断しない連結部と、を交互に配置することにより、
前記切り込み線により囲繞された領域の
前記基材シートを
前記化粧料層とともに抜き取り可能とした積層シートであって、
前記切り込み線の長さは8~45mmであり、
前記切り込み線により囲繞された領域は角を持たない形状であることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記切り込み線により囲繞された領域の中心点を通る仮想直線により前記領域を2分したとき、ハーフカットしない前記連結部が2分した前記領域において同数配置されることを特徴とする請求項1記載の化粧シート。
【請求項3】
前記切り込み線により囲繞された領域の中心点が、隣り合うハーフカットしない前記連結部を結ぶことにより形成される多角形状の仮想領域内にあることを特徴とする請求項1又は2記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材シートに担持される化粧料層を基材シートとともに抜き取り、化粧料層を肌に密着させた後、基材シートを取り除くことにより化粧行為を行う化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、肌の凹凸やシミを隠すための化粧料としてはファンデーションが広く知られているが、ファーデーションを均一に塗布し、凹凸等を隠しながら、自然な仕上がりを得るためには、時間と手間を要することから、近年では、肌色に着色したフィルムを隠したい部分に貼り付け、簡便に凹凸等を隠すことができる化粧用の隠蔽シールが開発されている。
【0003】
そして、このような隠蔽シールは、肌に貼り付けたときに目立たず、自然な仕上がりとなるよう、きわめて薄いフィルムで構成することが必要である。また、肌に貼り付ける隠蔽シールの面積は肌の凹凸等を覆う程度の比較的小さい面積とすることが好ましい。
【0004】
隠蔽シールを使用する際には、まず隠蔽シールを適当な大きさに鋏等を用いて切り取り、化粧料の表面を覆う保護シートを指先で取り除き、表面が露出した化粧料を指先で肌に密着させた後、表面に残る基材シートを取り除く必要があるが、このような操作を行う隠蔽シールは小さく薄いため、使用者にとっては扱いにくく、必ずしも満足できるものではなかった。
【0005】
このため、簡単な操作で肌に確実に貼り付けることができ、肌の凹凸やシミを効果的に隠すことができる化粧シートの開発が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-278739号公報
【文献】特開2016-027027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡単な操作で肌に確実に貼り付けることができ、肌の凹凸やシミを効果的に隠すことができる化粧シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明者らが検討を行った結果、基材シートに設ける切り込み線の長さ、及び切り込み線により囲繞される領域の形状等を調整することにより、所定の大きさの基材シートを化粧料層とともに適度な力で確実に抜き取ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、化粧料層を担持し前記化粧料層が肌に密着した後は前記化粧料層から取り去ることができる剥離可能な基材シートと、前記化粧料層の肌へ密着する面を保護する剥離可能な保護シートと、前記基材シートと前記保護シートの間に配置される前記化粧料層と、を備え、前記基材シートには、前記基材シートを貫通切断するハーフカット状の切り込み線と、貫通切断しない連結部と、を交互に配置することにより、前記切り込み線により囲繞された領域の前記基材シートを前記化粧料層とともに抜き取り可能とした積層シートであって、前記切り込み線の長さは8~45mmであり、前記切り込み線により囲繞された領域は角を持たない形状であることを特徴とする化粧シートである。
【0010】
さらに本発明は、前記切り込み線により囲繞された領域の中心点を通る仮想直線により前記領域を2分したとき、ハーフカットしない前記連結部が2分した前記領域において同数配置されることを特徴とする化粧シートである。
【0011】
さらに本発明は、前記切り込み線により囲繞された領域の中心点が、隣り合うハーフカットしない前記連結部を結ぶことにより形成される多角形状の仮想領域内にあることを特徴とする化粧シートである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の化粧シートによれば、簡単な操作で基材シートを化粧料層とともに適度な力で抜き取り、肌に確実に貼り付けることができ、肌の凹凸やシミを効果的に隠すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】基材シートに設けた切り込み線を示す図((a)抜き取る領域が円形の態様例、(b)抜き取る領域が楕円形の態様例、(c)抜き取る領域が略四角形の態様例)
【
図3】切り込み線により囲繞された領域を中心点を通る仮想直線により2分したときの連結部の配置を示す模式図((a)切り込み線が2本の態様例、(b)切り込み線が3本の態様例、(c)切り込み線が4本の態様例)
【
図4】切り込み線により囲繞された領域の中心点と、隣り合う連結部を結ぶことにより形成される多角形状の仮想領域内との配置を示す模式図((a)切り込み線が3本の態様例、(b)切り込み線が4本の態様例)
【
図5】化粧シートの使用方法を示す図((a)化粧料層を肌に密着させた状態、(b)基材シートを取り去る状態、(c)化粧行為が完了した状態)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の化粧シートを以下に詳細に説明する。但し、本発明は、実施するための形態として例示したものに限定されるものではない。
【0015】
図1に示すように、化粧シート(1)は、基材シート(2)と保護シート(4)の間に化粧料層(3)を備え、基材シートには、基材シートを貫通切断するハーフカット状の切り込み線(5)を設けている。
【0016】
基材シートを貫通切断する切り込み線(5)と貫通切断しない連結部(6)は交互に配置されており(
図2)、切り込み線により囲繞された領域の基材シートは化粧料層とともに適度な力で抜き取ることできる。尚、
図2には、基材シートに設けた切り込み線と連結部の配置を例示するが、例示する態様例に限定されるものではない。
【0017】
図1には、基材シート(2)を貫通し化粧料層(3)まで切断するハーフカット状の切り込み線(5)を施した態様を例示するが、化粧料層まで切断しなくても、化粧料層の粘弾性等の特性により、基材シートを抜き取る際、基材シートの抜き取る形状にあわせて、化粧料層も基材シートとともに抜き取ることが可能であれば、必ずしも、化粧料層まで切り込み線で貫通切断する必要はない。
【0018】
基材シート(2)は、化粧料層(3)を担持するが、化粧料層が肌に密着した後は、化粧料層から容易に剥離できる材質を選定する必要がある。基材シートとしては、合成繊維からなる不織布又はメッシュ素材を用いることができる。
【0019】
保護シート(4)は、化粧料層(3)を保護するために化粧料層表面に密着させるシートである。切り込み線により囲繞された領域の基材シート(2)を持ち上げると、化粧料層(3)は保護シート(4)から剥離し、基材シートとともに抜き取られる。このため、保護シートは、化粧料層と弱い力で密着する材質のものを選定する必要があるが、通常は、表面にシリコーン樹脂等の剥離層を設けた紙材や、合成繊維からなる不織布又はメッシュ素材と紙材を貼り合わせた積層材を用いることができる。
【0020】
化粧料層(3)から剥離する基剤シート(2)及び保護シート(4)は、適度は強度が必要であり、日本工業規格JIS L 1913による引張強度(MD)が10.0(N/15mm)以上であることが好ましい。
【0021】
化粧料層(3)は、化粧行為を行った後、肌の凹凸あるいはシミのある部分など、隠したい部分を覆うことで、凹凸等を隠蔽、又は、見えにくくする化粧効果を奏するものであり、例えば、基材膜(3a)と色材層(3b)により構成することができる(
図1)。
【0022】
基材膜(3a)は、肌への密着性と安全性にすぐれるものであれば、特に限定されるものではなく、一般的に使用される化粧品原料を用いることができるが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニレート、ポリエステル、イリコーン、PVA、多糖類、又は、これらの共重合体から選ばれる1種または2種以上の材料が好ましく、中でも、肌への密着性、生産性にすぐれることからポリ乳酸が特に好ましい。
【0023】
基材膜(3a)は、ある程度の強度を保持しながら、肌へ密着して自然な仕上がりを得ることが必要であるため、厚さは、約10~10000nmが好ましく、更には約10~1000nmが好ましい。特に、基材膜(3a)の厚さを200nm以下にすると、物理的吸着作用による密着性が向上するため好ましい。
【0024】
色材層(3b)は、体質顔料、着色顔料等を含有し、その他、基材膜(3a)との親和性が高い成分であれば、一般的に使用される化粧品原料、例えば、保湿剤、油分、紫外線防止剤、分散剤、活性剤、増粘剤等を配合することができる。
【0025】
体質顔料としては、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、金属石鹸、窒化ホウ素、セルロースパウダー、亜鉛華等が例示される。
【0026】
着色顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、有機タール系色素、レーキ等の着色剤、雲母チタン、酸化鉄コーテッド雲母等の複合顔料、これらの着色顔料をシリコーン化合物、フッ素変成シリコーン化合物、フッ素化合物、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、金属石鹸、アミノ酸、アルキルフォスフェート等により表面処理したもの等が例示され、また、着色染料としてアシッドレッド、スダンIII 、オレンジII、ファストグリーン、フタロシアニンブルー等を使用してもよい。
【0027】
体質顔料と着色顔料は適宜混合され、自然な肌色に調色されるが、一般的に化粧品として使用されている肌色のファンデーションの粉末部に近いものが好ましく用いられる。具体的には、粉末全量に対して着色顔料を70重量%以下、好ましくは3~60重量%の割合で混合された粉末部であり、所望の隠蔽性に合わせて酸化チタン、酸化亜鉛を配合すればよく、酸化チタン、酸化亜鉛の配合量は各々0~40重量%であることが好ましい。このような構成をとることで、日ごろ使用されているファンデーションとくらべ外観上も違和感のないメーキャップが可能であり、肌の凹凸や濃色部分の隠蔽効果に優れた効果が得られる。なお、特にしみやあざを隠蔽する化粧シールには、通常のファンデーションの粉末部より彩度が高くなるように体質顔料と着色顔料を選択することがさらに好ましい。
【0028】
切り込み線(5)の長さは、8~45mmとする。切り込み線により囲繞された領域の抜き取り操作は、まず、基材シートの切り込み線を設けた部分を捲ることから開始するが、切り込み線の長さが8mmより短いと、基材シートが捲りにくく、抜き取り操作を開始することが困難となる。一方、切り込み線の長さが45mmより長いと、持ち運ぶ際、誤って基材シートが捲れてしまい、使用することができず化粧シートを無駄にする危険性がある。
【0029】
切り込み線は、通常、2本以上設け、切り込み線の間に配置する連結部の長さ(幅)は、0.05mm以上であることから、化粧シートの切り込み線で囲繞される領域の全周は、16.1mm以上となる。また、化粧行為を行う際には、化粧料層を担持した基材シートを指に載せ、皺がよらないようにして化粧料層を肌に密着させる必要がある。このため、切り込み線で囲繞される領域は適度な大きさに留めることが好ましく、全周は約90.1mm以下に抑えることが好ましい。
【0030】
切り込み線により囲繞された領域は角を持たない形状とする。切り込み線により囲繞された領域の基材シートの形状は、肌に貼り付ける化粧料層の形状と等しい。肌に貼り付ける化粧料層の形状に角があると、角の部分から化粧料層が肌から剥離するおそれがある。このため、切り込み線に囲繞される領域の形状は、円弧のみ、あるいは円弧と直線を繋ぐことにより角を持たない形状とすることが必要である。
【0031】
図3に示すように、切り込み線により囲繞された領域の中心点(7)を通る仮想直線(8)により、前記領域を2分したとき、ハーフカットしない連結部は、2分した前記領域において同数配置されることが好ましい。
【0032】
ここで、切り込み線により囲繞された領域の中心点とは、切り込み線により囲繞された領域の図形の中心を指し、図形の幾何中心と同義であり、図形の重心に等しい。また、仮想直線は、中心点を通るものであれば、特に限定されるものではなく、連結部が同数配置されるよう2つの領域に分け得る仮想直線が1つでも存在すれば足りる。
【0033】
2分した2つの領域において連結部を同数配置することにより、持ち運びの際に誤って、基材シートが捲れる危険を少なくすることができる。また、2つに分けたいずれの領域からでも同じように基材シートを捲り抜き取ることができるため、例えば、右手側でも左手側でも使用者が扱いやすい方向から基材シートを抜き取ることができる。
【0034】
図3には、2分した領域において同数の連結部を配置した態様例を示しており、いずれの態様例も2分した領域にそれぞれ連結部1つが配置しているが、連結部の数はこれに限定されるものではない。
【0035】
図4に示すように、切り込み線により囲繞された領域の中心点(7)が、隣り合うハーフカットしない連結部を結ぶことにより形成される多角形状の仮想領域(9)内にあることが好ましい。
【0036】
このように切り込み線と連結部を配置すると、持ち運びの際に、誤って基材シートが捲れる危険をさらに少なくすることができるとともに、様々な方向から基材シートを捲り抜き取ることができるため、化粧行為を行うことが容易となる。また、連結部の数が増えれば、一つの連結部の長さ(幅)は短くすることができるため、さらに抜き取りが容易となる。
【0037】
図4には、2つの態様を例示するが、これに限定されるものではない。
【0038】
本発明の化粧シート(1)を使用するにあたっては、保護シート(4)を剥離した後、肌の目的位置、例えば、凹凸又はシミのある部分など、隠したい部分の上に、表面が露出した化粧料層(3)を押し当てて貼り付ける(
図5(a))。基材膜(3a)は、肌への密着力にすぐれるため、基材シート(2)を取り去れば、化粧料層(3)が肌上に残る(
図5(b))。外観上には体質顔料、着色顔料等からなる色材層(3b)が現れて、隠したい部分を隠蔽、また、見えにくくすることができる(
図5(c))。
【符号の説明】
【0039】
1 化粧シート
2 基材シート
3 化粧料層
3a 基材膜
3b 色材層
4 保護シート
5 切り込み線
5a 切り込み線
5b 切り込み線
5c 切り込み線
5d 切り込み線
6 連結部
6a 連結部
6b 連結部
6c 連結部
6d 連結部
7 中心点
8 仮想直線
9 仮想領域