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特許7332388スリーブ閉塞装置、スリーブ、ブッシング、スリーブ閉塞構造、及びスリーブ閉塞構造の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】スリーブ閉塞装置、スリーブ、ブッシング、スリーブ閉塞構造、及びスリーブ閉塞構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/02 20060101AFI20230816BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20230816BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20230816BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20230816BHJP
   F16L 7/02 20060101ALI20230816BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
F16L5/02 J
E04B1/94 F
A62C3/16 B
F16L5/02 F
F16L5/04
F16L7/02
H02G3/22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019148328
(22)【出願日】2019-08-13
(65)【公開番号】P2021028532
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】谷 真也
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-136880(JP,A)
【文献】登録実用新案第3148209(JP,U)
【文献】国際公開第2006/054572(WO,A1)
【文献】特開2016-194202(JP,A)
【文献】特開2006-029023(JP,A)
【文献】特開2017-075643(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10350385(DE,A1)
【文献】特開2001-276252(JP,A)
【文献】特開2002-102373(JP,A)
【文献】特開2020-034061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/02-5/04
E04B 1/94
A62C 3/16
H02G 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに内部に配線・配管材が挿通されるスリーブと、
前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に巻き付けられるとともに前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記突出部との間の隙間を塞ぐ閉塞シートと、
前記突出部の外周面に設けられる指標部と、を有し、
前記指標部は、前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端よりも当該軸方向に沿って前記区画壁側へ離間した位置に設けられ、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示すことを特徴とするスリーブ閉塞装置。
【請求項2】
防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに内部に配線・配管材が挿通されるスリーブと、
前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端を覆う端壁部、及び前記端壁部から前記軸方向に延設され前記突出部の外周面を覆う外周壁部を有する環状のブッシングと、
前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に巻き付けられて前記ブッシングを覆うとともに前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記端壁部との間の隙間を塞ぐ閉塞シートと、
前記ブッシングの前記外周壁部に設けられる指標部と、を有し、
前記指標部は、前記端壁部よりも前記軸方向に沿って前記区画壁側へ離間した位置に設けられ、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示すことを特徴とするスリーブ閉塞装置。
【請求項3】
前記ブッシングの前記外周壁部に設けられる前記指標部は、前記外周壁部において前記軸方向における前記端壁部と反対側に位置する前記外周壁部の端縁によって構成される請求項2に記載のスリーブ閉塞装置。
【請求項4】
前記閉塞シートは長尺状であるとともに、片面に前記突出部の外周面に貼着される粘着部を有し、前記閉塞シートの短手方向への寸法は、前記規定長さの倍以上である請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載のスリーブ閉塞装置。
【請求項5】
防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに内部に配線・配管材が挿通されるスリーブであって、
前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端よりも当該軸方向に沿って前記区画壁側へ離間した位置に設けられる指標部を有するとともに、前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面には閉塞シートが巻き付けられ、当該閉塞シートによって、前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記突出部との間の隙間が塞がれ、
前記指標部は、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示すことを特徴とするスリーブ。
【請求項6】
防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに、内部に配線・配管材が挿通されるスリーブの前記突出部の軸方向の端に装着される環状のブッシングであって、
前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端を覆う端壁部、及び前記端壁部から前記軸方向に延設され前記突出部の外周面を覆う外周壁部を有し、当該外周壁部に、前記突出部に位置する前記スリーブの前記軸方向の端よりも当該軸方向に沿って前記区画壁側へ離間した位置に設けられる指標部を有するとともに、前記ブッシングを含む前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面には閉塞シートが巻き付けられ、当該閉塞シートによって、前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記端壁部との間の隙間が塞がれ、
前記指標部は、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示すことを特徴とするブッシング。
【請求項7】
防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態にスリーブが設置され、前記スリーブにおいて前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する部分によって突出部が形成されるとともに、前記スリーブの内部に配線・配管材が挿通されており、
閉塞シートが前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に巻き付けられるとともに、前記閉塞シートによって前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記スリーブとの間の隙間が塞がれ、
前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端よりも前記軸方向に沿って前記区画壁側へ離間した位置には、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示す指標部が設けられ、
前記閉塞シートは、当該閉塞シートにおける前記突出部に巻き付けられる端縁を、前記指標部に沿わせる、又は前記軸方向に沿って前記指標部を前記区画壁側へ超える状態で前記突出部に巻き付けられていることを特徴とするスリーブ閉塞構造。
【請求項8】
防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態にスリーブが設置され、前記スリーブにおいて前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する部分によって突出部が形成されるとともに、前記スリーブの内部に配線・配管材が挿通されており、
前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端には、当該端を覆う端壁部、及び前記突出部の外周面を覆う外周壁部を有する環状のブッシングが装着され、
閉塞シートが前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に巻き付けられるとともに、前記閉塞シートによって前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記端壁部との間の隙間が塞がれ、
前記ブッシングにおける前記外周壁部には、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示す指標部が設けられ、
前記閉塞シートは、当該閉塞シートにおける前記突出部に巻き付けられる端縁を、前記指標部に沿わせる、又は前記軸方向に沿って前記指標部を前記区画壁側へ超える状態で前記突出部に巻き付けられていることを特徴とするスリーブ閉塞構造。
【請求項9】
防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに内部に配線・配管材が挿通されるスリーブと、
前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に巻き付けられるとともに前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記突出部との間の隙間を塞ぐ閉塞シートと、を有するスリーブ閉塞構造の製造方法であって、
前記スリーブは、前記突出部を構成する部分の外周面に、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記スリーブの軸方向に沿った規定長さを示す指標部を備えており、
前記区画壁を前記厚さ方向に貫通する状態に前記スリーブを設置して前記突出部を形成し、
前記閉塞シートを前記突出部の外周面に巻き付ける際、前記閉塞シートにおける前記突出部の外周面に巻き付けられる端縁を、前記指標部に沿わせる、又は前記軸方向に沿って前記指標部を前記区画壁側へ超える位置に位置させて前記突出部に巻き付けることを特徴とするスリーブ閉塞構造の製造方法。
【請求項10】
防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに内部に配線・配管材が挿通されるスリーブと、
前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端を覆う端壁部、及び前記端壁部から前記軸方向に延設され前記突出部の外周面を覆う外周壁部を有する環状のブッシングと、
前記ブッシングを覆う状態で前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に巻き付けられるとともに前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記端壁部との間の隙間を塞ぐ閉塞シートと、を有するスリーブ閉塞構造の製造方法であって、
前記ブッシングは、前記外周壁部に、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示す指標部を備えており、
前記区画壁を厚さ方向に貫通する状態に前記スリーブを設置して前記突出部を形成し、
前記突出部に前記ブッシングを装着し、
前記閉塞シートを前記突出部の外周面に巻き付ける際、前記閉塞シートにおける前記突出部の外周面に巻き付けられる端縁を、前記ブッシングの前記指標部に沿わせる、又は前記軸方向に沿って前記指標部を前記区画壁側へ超える位置に位置させて前記突出部に巻き付けることを特徴とするスリーブ閉塞構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリーブ閉塞装置、スリーブ、ブッシング、スリーブ閉塞構造、及びスリーブ閉塞構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空洞部を有する防火区画壁(中空壁)に配線・配管材を貫通させるため、防火区画壁には厚み方向に貫通する貫通孔が形成されている。この防火区画壁の貫通孔は、当該防火区画壁を厚み方向に貫通するように設置されたスリーブの内側に区画される。スリーブは、防火区画壁の表面から所定長さ突出するように設置される。
【0003】
また、貫通孔に配線・配管材を貫通させた状態では、配線・配管材の周囲には隙間が形成され、貫通孔に配線・配管材を貫通させていない状態は、貫通孔そのものが開口する。上記隙間や貫通孔そのものが、火災発生時の火炎、煙、有毒ガスの伝搬経路となることを阻止するため、隙間や貫通孔は閉塞シートによって閉塞される。例えば、特許文献1の耐火構造においては、配線・配管材が貫通されていないスリーブに対し、スリーブの開口を覆うように閉塞シートの一例である耐火性シートを装着し、耐火性シートによって貫通孔を閉塞している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-194202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、耐火構造には、スリーブにおける防火区画壁からの突出部の外周に対し、定められた規定長さは閉塞シートを重ねて巻き付けることが設計や規格によって定められている場合がある。このような場合、特許文献1の耐火構造においては、スリーブの端から規定長さを計測する作業が必要であり、さらには、スリーブに対し閉塞シートが規定長さ重ねられているかを確認する作業も必要であった。
【0006】
本発明の目的は、閉塞シートの設置作業を容易にするスリーブ閉塞装置、スリーブ、ブッシング、スリーブ閉塞構造、及びスリーブ閉塞構造の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するためのスリーブ閉塞装置は、防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに内部に配線・配管材が挿通されるスリーブと、前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に巻き付けられるとともに前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記突出部との間の隙間を塞ぐ閉塞シートと、前記突出部の外周面に設けられる指標部と、を有し、前記指標部は、前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端よりも当該軸方向に沿って前記区画壁側へ離間した位置に設けられ、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示すことを要旨とする。
【0008】
上記問題点を解決するためのスリーブ閉塞装置は、防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに内部に配線・配管材が挿通されるスリーブと、前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端を覆う端壁部、及び前記端壁部から前記軸方向に延設され前記突出部の外周面を覆う外周壁部を有する環状のブッシングと、前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に巻き付けられて前記ブッシングを覆うとともに前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記端壁部との間の隙間を塞ぐ閉塞シートと、前記ブッシングの前記外周壁部に設けられる指標部と、を有し、前記指標部は、前記端壁部よりも前記軸方向に沿って前記区画壁側へ離間した位置に設けられ、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示すことを要旨とする。
【0009】
スリーブ閉塞装置について、前記ブッシングの前記外周壁部に設けられる前記指標部は、前記外周壁部において前記軸方向における前記端壁部と反対側に位置する前記外周壁部の端縁によって構成されていてもよい。
【0010】
スリーブ閉塞装置について、前記閉塞シートは長尺状であるとともに、片面に前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に貼着される粘着部を有し、前記閉塞シートの短手方向への寸法は、前記規定長さの倍以上であってもよい。
【0011】
上記問題点を解決するためのスリーブは、防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに内部に配線・配管材が挿通されるスリーブであって、前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端よりも当該軸方向に沿って前記区画壁側へ離間した位置に設けられる指標部を有するとともに、前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面には閉塞シートが巻き付けられ、当該閉塞シートによって、前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記突出部との間の隙間が塞がれ、前記指標部は、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示すことを要旨とする。
【0012】
上記問題点を解決するためのブッシングは、防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに、内部に配線・配管材が挿通されるスリーブの前記突出部の軸方向の端に装着される環状のブッシングであって、前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端を覆う端壁部、及び前記端壁部から前記軸方向に延設され前記突出部の外周面を覆う外周壁部を有し、当該外周壁部に、前記突出部に位置する前記スリーブの前記軸方向の端よりも当該軸方向に沿って前記区画壁側へ離間した位置に設けられる指標部を有するとともに、前記ブッシングを含む前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面には閉塞シートが巻き付けられ、当該閉塞シートによって、前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記端壁部との間の隙間が塞がれ、前記指標部は、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示すことを要旨とする。
【0013】
上記問題点を解決するためのスリーブ閉塞構造は、防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態にスリーブが設置され、前記スリーブにおいて前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する部分によって突出部が形成されるとともに、前記スリーブの内部に配線・配管材が挿通されており、閉塞シートが前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に巻き付けられるとともに、前記閉塞シートによって前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記スリーブとの間の隙間が塞がれ、前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端よりも前記軸方向に沿って前記区画壁側へ離間した位置には、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示す指標部が設けられ、前記閉塞シートは、当該閉塞シートにおける前記突出部に巻き付けられる端縁を、前記指標部に沿わせる、又は前記軸方向に沿って前記指標部を前記区画壁側へ超える状態で前記突出部に巻き付けられていることを要旨とする。
【0014】
上記問題点を解決するためのスリーブ閉塞構造は、防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態にスリーブが設置され、前記スリーブにおいて前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する部分によって突出部が形成されるとともに、前記スリーブの内部に配線・配管材が挿通されており、前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端には、当該端を覆う端壁部、及び前記突出部の外周面を覆う外周壁部を有する環状のブッシングが装着され、閉塞シートが前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に巻き付けられるとともに、前記閉塞シートによって前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記端壁部との間の隙間が塞がれ、前記ブッシングにおける前記外周壁部には、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示す指標部が設けられ、前記閉塞シートは、当該閉塞シートにおける前記突出部に巻き付けられる端縁を、前記指標部に沿わせる、又は前記軸方向に沿って前記指標部を前記区画壁側へ超える位置に位置させて前記突出部に巻き付けられていることを要旨とする。
【0015】
上記問題点を解決するためのスリーブ閉塞構造の製造方法は、防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに内部に配線・配管材が挿通されるスリーブと、前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に巻き付けられるとともに前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記突出部との間の隙間を塞ぐ閉塞シートと、を有するスリーブ閉塞構造の製造方法であって、前記スリーブは、前記突出部を構成する部分の外周面に、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記スリーブの軸方向に沿った規定長さを示す指標部を備えており、前記区画壁を前記厚さ方向に貫通する状態に前記スリーブを設置して前記突出部を形成し、前記閉塞シートを前記突出部の外周面に巻き付ける際、前記閉塞シートにおける前記突出部の外周面に巻き付けられる端縁を、前記指標部に沿わせる、又は前記軸方向に沿って前記指標部を前記区画壁側へ超える位置に位置させて前記突出部に巻き付けることを要旨とする。
【0016】
上記問題点を解決するためのスリーブ閉塞構造の製造方法は、防火区画を構成する区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに内部に配線・配管材が挿通されるスリーブと、前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端を覆う端壁部、及び前記端壁部から前記軸方向に延設され前記突出部の外周面を覆う外周壁部を有する環状のブッシングと、前記ブッシングを覆う状態で前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に巻き付けられるとともに前記突出部から引き出された前記配線・配管材と前記端壁部との間の隙間を塞ぐ閉塞シートと、を有するスリーブ閉塞構造の製造方法であって、前記ブッシングは、前記外周壁部に、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さを示す指標部を備えており、前記区画壁を厚さ方向に貫通する状態に前記スリーブを設置して前記突出部を形成し、前記突出部に前記ブッシングを装着し、前記閉塞シートを前記突出部の外周面に巻き付ける際、前記閉塞シートにおける前記突出部の外周面に巻き付けられる端縁を、前記ブッシングの前記指標部に沿わせる、又は前記軸方向に沿って前記指標部を前記区画壁側へ超える位置に位置させて前記突出部に巻き付けることを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、閉塞シートの設置作業を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態のスリーブ閉塞構造及びスリーブ閉塞装置を示す断面図。
図2】第1の実施形態のスリーブ閉塞構造及びスリーブ閉塞装置を示す斜視図。
図3】スリーブを示す斜視図。
図4】スリーブの突出部に閉塞シートを巻き付ける前の状態を示す斜視図。
図5】スリーブ閉塞構造の製造方法を示す図。
図6】第2の実施形態のスリーブ閉塞構造及びスリーブ閉塞装置を示す断面図。
図7】ブッシングを示す斜視図。
図8】第2の実施形態のスリーブ閉塞構造の製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、スリーブ、スリーブ閉塞装置、スリーブ閉塞構造、及びスリーブ閉塞構造の製造方法を具体化した第1の実施形態を図1図5にしたがって説明する。
【0020】
図1に示すように、区画壁としての防火中空壁Wは、複数本の軽量形鋼材10と、軽量形鋼材10を挟むようにして立設された複数対の間仕切り壁11とから構築されている。間仕切り壁11は、例えば石膏ボードが採用される。防火中空壁Wには厚さが複数種類設定されている。
【0021】
軽量形鋼材10を挟んで相対向する間仕切り壁11同士の間には空洞部12が形成されている。防火中空壁Wは、軽量形鋼材10の太さを変更し、防火中空壁Wの厚さ方向に沿った空洞部12の幅を変更することにより、防火中空壁Wの厚さが変更されるようになっている。防火中空壁Wには、配線・配管材13を貫通させるための貫通孔14が、防火中空壁Wの厚さ方向に貫通して形成されている。なお、配線・配管材13とは、建築物内に配設される配線(制御用ケーブル、同軸ケーブル、光ケーブル等)及び配管材(合成樹脂製可撓電線管、鋼製電線管等)の総称のことである。
【0022】
貫通孔14は、防火中空壁Wを厚さ方向に貫通する状態で防火中空壁Wに設置された円筒状のスリーブ20によって区画されている。したがって、スリーブ20の内部に配線・配管材13が挿通されることにより、防火中空壁Wの貫通孔14を配線・配管材13が貫通している。スリーブ20は、熱膨張性耐火材によって形成されている。なお、防火中空壁Wの厚さに合わせてスリーブ20も軸方向への寸法が異なる複数種類が設定されている。以下の説明において、スリーブ20の中心軸線Lが延びる方向を軸方向とし、スリーブ20の軸方向への寸法を、スリーブ20の長さと記載する。スリーブ20は、各間仕切り壁11に形成された円孔状の透孔11aに挿通されるとともに、透孔11aの内周面とスリーブ20の外周面との間に充填された充填材15を介して間仕切り壁11に支持されている。充填材15は、透孔11aの内周面とスリーブ20の外周面との間を閉塞する。また、充填材15は、難燃性の熱膨張性耐熱材よりなるが、不燃性の熱膨張材で形成されていてもよいし、熱膨張性を有していなくてもよい。
【0023】
次に、スリーブ20を用いた防火中空壁Wにおけるスリーブ閉塞構造、及びスリーブ閉塞構造を構成するスリーブ閉塞装置について説明する。
図2に示すように、スリーブ閉塞装置は、スリーブ20と、スリーブ20の軸方向の両端部の外周面及び配線・配管材13の外周面に装着される閉塞シート30と、スリーブ20の軸方向両端側に設けられる指標部22と、を有する。そして、本実施形態において、スリーブ閉塞構造は、スリーブ20と、スリーブ20の軸方向の両端部の外周面及び配線・配管材13の外周面に装着される閉塞シート30と、スリーブ20の軸方向両端側に設けられた指標部22とを用いて形成されている。
【0024】
図1に示すように、スリーブ閉塞構造において、スリーブ20の軸方向の両端側は、防火中空壁Wの厚さ方向の両方の表面Waから突出している。スリーブ20は、軸方向の両端に端21aを有する。スリーブ20において、防火中空壁Wの表面Waから突出した部分は突出部21を構成する。スリーブ20の長さは、上記突出部21を形成するため、防火中空壁Wの厚さよりも長い。スリーブ20の軸方向に沿った突出部21の寸法を、突出部21の長さと記載する。スリーブ閉塞構造は、突出部21の外周面に閉塞シート30を巻き付けて構成されるが、突出部21に巻き付けるべき閉塞シート30の寸法が「規定長さM」として予め規定されている。規定長さMは、スリーブ20及び閉塞シート30を用いた耐火工法において、国土交通大臣の認定を受けるために予め規定された長さである。
【0025】
したがって、スリーブ20は、防火中空壁Wの両方の表面Waから突出させた各突出部21に規定長さMを確保できるだけの長さを有している。各突出部21に規定長さMを確保するためには、突出部21の長さは、規定長さMよりも長くする必要がある。このため、突出部21の長さは、規定長さMに余長αを持たせた長さに設定される。よって、スリーブ20の長さは、防火中空壁Wの厚さと、2つの突出部21の長さ(規定長さM+余長α)との合計長さである。
【0026】
図3又は図4に示すように、スリーブ20の外周面には指標部22が設けられている。図5に示すように、指標部22は、突出部21の外周面のうち、突出部21に位置するスリーブ20の軸方向の端である端21aよりも軸方向に沿って防火中空壁W側へ離間した位置に設けられている。指標部22は、突出部21の外周面に巻き付けるべき閉塞シート30の長さを示している。よって、指標部22は、突出部21の端21aから軸方向に沿って規定長さMだけ離れた位置に設けられている。指標部22は、スリーブ20の周方向の全体に亘って延びる線によって形成されている。
【0027】
閉塞シート30は、長尺シート状である。閉塞シート30はアルミテープによって形成されている。閉塞シート30は、アルミニウムの基材30aと、基材30aの片面に設けられた粘着部30bとから構成されている。粘着部30bは、突出部21の外周面、及び配線・配管材13の外周面に貼着可能である。閉塞シート30の短手方向への寸法は、規定長さMの倍以上である。本実施形態では、閉塞シート30の短手方向への寸法は、規定長さMの2倍以上である。また、閉塞シート30の長手方向への寸法は、スリーブ20の周長と同じである。
【0028】
閉塞シート30は、閉塞シート30の長手方向に延びる第1長縁31a及び第2長縁31bを有するとともに、閉塞シート30の短手方向に延びる第1短縁32a及び第2短縁32bを有する。また、閉塞シート30において、第1短縁32a及び第2短縁32bを2等分する位置を通過する直線を中心線Nとする。
【0029】
図1又は図2に示すように、スリーブ閉塞構造において、閉塞シート30は、突出部21の外周面に巻き付けられた状態で突出部21に貼着されている。また、閉塞シート30において、突出部21の端21aよりも突出した部分は、配線・配管材13に向けて寄せ集められ、配線・配管材13の外周面に貼着されている。その結果、閉塞シート30は、突出部21及び配線・配管材13に架け渡されるとともに、突出部21から引き出された配線・配管材13とスリーブ20における突出部21との間の隙間を塞ぎ、スリーブ20の開口を閉塞している。
【0030】
スリーブ閉塞構造において、突出部21の外周面に巻き付けられる端縁である閉塞シート30の第1長縁31aは、スリーブ20の軸方向に沿って指標部22を防火中空壁W側へ超えた位置に位置している。このとき、図5に示すように、閉塞シート30の中心線Nは、突出部21の端21aではなく、端21aよりも防火中空壁W側へ離間した位置に位置している。その結果、突出部21に巻き付けられた閉塞シート30は、突出部21の端21aから防火中空壁W側へ規定長さMを離れた位置に至るまで突出部21に巻き付けられている。つまり、閉塞シート30は、規定長さMを確保した状態で突出部21に巻き付けられるとともに、粘着部30bによって突出部21の外周面に貼着されている。
【0031】
次に、スリーブ閉塞構造の製造方法を説明する。
まず、図5に示すように、防火中空壁Wの両方の間仕切り壁11の透孔11aにスリーブ20を挿通するとともに、透孔11aの内周面とスリーブ20の外周面との間に充填材15を充填し、充填材15を介してスリーブ20を間仕切り壁11に支持させ、スリーブ20を防火中空壁Wに設置する。すると、スリーブ20が防火中空壁Wを厚さ方向に貫通する状態で防火中空壁Wに設置される。
【0032】
このとき、スリーブ20の軸方向の中心を防火中空壁Wの厚さ方向の中心と一致させ、スリーブ20の軸方向の両側を、防火中空壁Wの両方の表面Waから同じ長さで突出させる。その結果、同じ長さの突出部21が防火中空壁Wの表面Waから突出した状態に形成されるとともに、スリーブ20の内側に貫通孔14が区画される。ここで、スリーブ20は、各突出部21を構成する部分の外周面に指標部22を備えている。指標部22は、突出部21の外周面に巻き付けるべき閉塞シート30の、突出部21の端21aからの規定長さMを示している。
【0033】
次に、スリーブ20の内部、つまり貫通孔14に配線・配管材13を挿通し、防火中空壁Wに配線・配管材13を貫通させる。次に、各突出部21に閉塞シート30の粘着部30bを貼着し、突出部21の外周面に閉塞シート30を巻き付ける。このとき、各突出部21の指標部22を指標とし、閉塞シート30における突出部21に巻き付けられる第1長縁31aを、スリーブ20の軸方向に沿って指標部22よりも防火中空壁W側へ離間した位置に位置させる。その後、閉塞シート30を突出部21の外周面に巻き付けるとともに粘着部30bにより突出部21に貼着し、閉塞シート30をスリーブ20に装着する。
【0034】
なお、閉塞シート30の短手方向の中間に位置する中心線Nを突出部21の端21aよりも防火中空壁W側に位置させることで、閉塞シート30の第1長縁31aを、指標部22よりも防火中空壁W側に超えた位置に位置させることができる。その結果、突出部21に巻き付けられた閉塞シート30は、突出部21の端21aから規定長さMを離れた位置に至るまで突出部21の外周面に巻き付けられる。なお、閉塞シート30は、突出部21の周方向全体に巻き付けられる。そして、閉塞シート30の第1短縁32aと第2短縁32bとが突き合わされる。
【0035】
図2に示すように、閉塞シート30のうち、突出部21の端21aから突出した部分を、配線・配管材13に向けて寄せ集めながら、突出部21から引き出された配線・配管材13の外周面に巻き付け、粘着部30bを配線・配管材13に貼着する。すると、閉塞シート30によって、配線・配管材13と突出部21との間の隙間が閉塞されるとともに、貫通孔14が閉塞され、スリーブ閉塞構造が完成する。
【0036】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)スリーブ閉塞構造及びスリーブ閉塞装置において、スリーブ20の突出部21に指標部22を設けた。このため、指標部22を指標として閉塞シート30を突出部21の端21aから指標部22を超える位置まで突出部21に巻き付けることで、突出部21の端21aから規定長さMだけ離間した位置まで閉塞シート30を巻き付けることができる。そして、指標部22が閉塞シート30によって覆われることで指標部22が視認できなくなれば、突出部21に対し規定長さMの閉塞シート30を巻き付けたことを確認できる。よって、突出部21の端21aから規定長さMだけ離間した位置を計測する作業が必要なくなり、スリーブ20に対し閉塞シート30が規定長さM巻き付けられているかを確認する作業も必要なくなり、閉塞シート30の設置作業が容易になる。
【0037】
(1-2)スリーブ閉塞構造及びスリーブ閉塞装置において、閉塞シート30の短手方向への寸法は、規定長さMの2倍以上である。このため、閉塞シート30の短手方向の中間に位置する中心線Nを突出部21の端21aよりも防火中空壁W側に位置させることで、閉塞シート30の第1長縁31aを、指標部22よりも防火中空壁W側へ離間した位置に位置させることができる。このため、規定長さMだけ閉塞シート30を突出部21に巻き付ける際、指標部22に閉塞シート30の第1長縁31aを合わせる作業が必要なくなり、閉塞シート30を突出部21に巻き付ける作業がより容易となる。
【0038】
(1-3)スリーブ20は、防火中空壁Wの厚さに合わせて長尺な円筒を切断して形成されるのではなく、防火中空壁Wの厚さに応じた長さを有する複数種類が予め形成されており、各長さのスリーブ20毎に指標部22が設けられている。このため、いずれの長さのスリーブ20を用いても、スリーブ閉塞構造に指標部22を設けることができる。
【0039】
(1-4)スリーブ閉塞構造において、閉塞シート30の長手方向への寸法は、突出部21の周長と同じであり、閉塞シート30の短手方向への寸法は、規定長さMの2倍以上である。このため、閉塞シート30の短手方向の中間にある中心線Nを突出部21の端21aよりも防火中空壁W側に寄せて閉塞シート30を突出部21に巻き付けることで、閉塞シート30を長手方向に沿って突出部21に何度も巻き付けなくてもよくなる。しかも閉塞シート30を1回巻き付けるだけで、規定長さMの閉塞シート30を突出部21に巻き付けることができる。
【0040】
(1-5)スリーブ20を防火中空壁Wに設置するとき、指標部22を防火中空壁Wの表面Waから離間させることで、突出部21の長さを、規定長さMに余長αを加えた長さにできる。よって、スリーブ20に指標部22を設けることで、突出部21の長さを確保した状態で、スリーブ20を防火中空壁Wに設置する作業が容易となる。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、スリーブ、スリーブ閉塞装置、ブッシング、スリーブ閉塞構造、及びスリーブ閉塞構造の製造方法を具体化した第2の実施形態を図6図8にしたがって説明する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0042】
図6に示すように、第2の実施形態のスリーブ閉塞装置及びスリーブ閉塞構造は、スリーブ20と、スリーブ20の軸方向両側の突出部21の端21aを覆うブッシング40と、軸方向両側の突出部21の外周面及び配線・配管材13の外周面に巻き付けられた閉塞シート30と、ブッシング40に設けられる指標部50と、を有する。
【0043】
ブッシング40は、合成樹脂によって形成された環状である。図7に示すように、ブッシング40は、突出部21に位置するスリーブ20の軸方向の端21aを覆う環状の端壁部41と、端壁部41の外周縁から当該端壁部41の厚さ方向、つまりスリーブ20の軸方向へ延設された外周壁部42と、端壁部41の内周縁から当該端壁部41の厚さ方向へ突出する内周壁部43と、を有する。外周壁部42は、突出部21の外周面を覆い、内周壁部43は、突出部21の内周面を覆う。
【0044】
ブッシング40の中心軸線Yの延びる方向をブッシング40の軸方向とする。端壁部41は、突出部21の端21aが当接する内端面41aと、端壁部41の厚さ方向における内端面41aの反対側の面に外端面41bを有する。ブッシング40において、軸方向に沿った内端面41aから外周壁部42の端縁までの寸法は、規定長さMと同じである。このため、ブッシング40を突出部21に装着し、端壁部41の内端面41aを突出部21の端21aに当接させた状態では、外周壁部42の端縁は、突出部21の端21aから規定長さMだけ防火中空壁W側へ離間した位置に位置する。よって、第2の実施形態では、ブッシング40において、スリーブ20及びブッシング40の軸方向における端壁部41と反対側に位置する外周壁部42の端縁そのものが指標部50を構成している。
【0045】
図6に示すように、第2の実施形態のスリーブ閉塞構造では、突出部21に位置するスリーブ20の軸方向の端21aにはブッシング40が装着されている。そして、スリーブ20の軸方向両側の突出部21の外周面及び配線・配管材13の外周面には、閉塞シート30がブッシング40を覆う状態で巻き付けられるとともに、各閉塞シート30によって端壁部41から引き出された配線・配管材13とブッシング40との間の隙間が塞がれている。ブッシング40の外周壁部42の端縁によって指標部50が設けられている。スリーブ閉塞構造において、各閉塞シート30は、当該閉塞シート30における突出部21に巻き付けられる第1長縁31aを、スリーブ20の軸方向に沿って指標部50を防火中空壁W側へ超える位置に位置させて突出部21に装着されている。
【0046】
次に、スリーブ閉塞構造の製造方向を説明する。なお、スリーブ20を防火中空壁Wに設置する方法は第1の実施形態と同じであるため、省略する。
図8に示すように、防火中空壁Wから突出した突出部21の端21aにブッシング40を装着し、端21aをブッシング40によって保護する。次に、スリーブ20の内部、つまり貫通孔14に配線・配管材13を挿通し、防火中空壁Wに配線・配管材13を貫通させる。次に、各突出部21の外周面に閉塞シート30を巻き付けるとともに粘着部30bを突出部21の外周面に貼着する。このとき、各ブッシング40の外周壁部42の端縁からなる指標部50を指標とし、閉塞シート30の第1長縁31aを、スリーブ20の軸方向に沿って指標部50よりも防火中空壁W側へ離間した位置まで位置させて閉塞シート30を突出部21に巻き付ける。その結果、突出部21に貼着された閉塞シート30は、ブッシング40を外周壁部42側から覆うとともに、突出部21の端21aから規定長さMを離れた位置に至るまで突出部21に貼着される。なお、閉塞シート30は、突出部21の周方向全体に巻き付けられる。
【0047】
また、閉塞シート30のうち、ブッシング40の端壁部41から突出した部分を、配線・配管材13に向けて寄せ集めながら配線・配管材13の外周面に巻き付けるとともに、粘着部30bを配線・配管材13の外周面に貼着する。すると、閉塞シート30によって、配線・配管材13とブッシング40の間の隙間が閉塞されるとともに、貫通孔14が閉塞され、スリーブ閉塞構造が完成する。
【0048】
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1-1)~(1-5)と同様の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(2-1)ブッシング40の外周壁部42に指標部50を設けた。長尺状の円筒部材を所望の長さに切断してスリーブ20を形成した場合、切断端部を保護するためにブッシング40をスリーブ20に装着するのに合わせてスリーブ20に指標部50を設けることができる。
【0049】
(2-2)指標部50は、ブッシング40の外周壁部42の端縁によって構成される。このため、例えば、外周壁部42の外周面に指標部50を表示する場合と比べると、指標部50の識別がし易くなる。
【0050】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ 第2の実施形態において、指標部50を外周壁部42の端縁そのもので構成したが、指標部50を外周壁部42の外周面に表示した線などで構成してもよい。
【0051】
○ ブッシング40として、軸方向に沿った内端面41aから外周壁部42の端縁までの寸法が規定長さMより短いブッシング40を用いた場合は、外周壁部42の端縁から指標部用突部を突設し、その指標部用突部の突出端や、外面に、規定長さMを示す指標部を設けてもよい。
【0052】
○ 各実施形態において、配線・配管材13についても、当該配線・配管材13の外周面に巻き付けるべき閉塞シート30の規定長さMが規定されている場合がある。この場合は、指標部22,50を指標として先に突出部21の外周面に巻き付けた閉塞シート30の長さを参考として、配線・配管材13の外周面に閉塞シート30を巻き付けることで、配線・配管材13における規定長さMに閉塞シート30を巻き付けることができる。例えば、突出部21の端21aを挟んで、突出部21と配線・配管材13とに同じ規定長さMで閉塞シート30を巻き付ける場合は、突出部21に巻き付けた閉塞シート30の長さと同じ又はそれ以上の長さで閉塞シート30を配線・配管材13に巻き付ければよい。
【0053】
○ 閉塞シート30の短手方向への寸法を規定長さMとし、かつ閉塞シート30の長手方向への寸法をスリーブ20の周長の2倍以上とした場合、スリーブ閉塞構造を、スリーブ20と閉塞シート30とから構成してもよい。このように構成した場合、閉塞シート30の第2長縁31bを突出部21の端21aに沿わせて閉塞シート30を、突出部21の外周面及び配線・配管材13に巻き付ける。閉塞シート30の短手方向への寸法は規定長さMであるため、突出部21の端21aから規定長さMだけ離間した位置に閉塞シート30を巻き付けることができるとともに、配線・配管材13にも突出部21の端21aから規定長さMだけ離間した位置に閉塞シート30を巻き付けることができる。
【0054】
○ 各実施形態において、閉塞シート30は、アルミニウム製の基材30aのみで構成されており、粘着部30bを備えていなくてもよい。この場合、閉塞シート30は、突出部21の端21aを閉塞シート30で覆うように円筒状に整形し、その後、バインド線などによって突出部21の外周面に閉塞シート30を巻き付ける。次に、円筒状に整形された閉塞シート30を、スリーブ20の軸方向に沿って防火中空壁Wに向けてスライド移動させ、閉塞シート30の第1長縁31aが指標部22,50に沿わせる、又は指標部22,50を防火中空壁W側へ超える位置に位置するまで移動させる。
【0055】
○ 第1の実施形態において、指標部22は、突出部21の周方向へ間隔を空けて設けられていてもよいし、1箇所だけに設けられた点でもよい。要は、突出部21の端21aから規定長さM離間した位置を視認できれば、指標部22の大きさは適宜変更してもよい。
【0056】
○ 第1の実施形態において、指標部22は、突出部21の外周面から突出する突起又は突条によって形成されていてもよいし、突出部21の外周面から凹む凹部又は凹条によって形成されていてもよい。要は、突出部21の端21aから規定長さM離間した位置を確認できれば、指標部22の形状は適宜変更してもよい。
【0057】
○ 閉塞シート30の短手方向への寸法は、規定長さMに閉塞シート30を巻き付けることができると共に、配線・配管材13とスリーブ20との間の隙間を閉塞できるのであれば、規定長さMの2倍以下であってもよい。
【0058】
○ 閉塞シート30の短手方向への寸法は、規定長さM以下であってもよい。この場合、閉塞シート30は、規定長さMに閉塞シート30を巻き付けると共に、配線・配管材13とスリーブ20との間の隙間を閉塞できるまで複数回に亘ってスリーブ20の外周面及び配線・配管材13の外周面に巻き付けられる。
【0059】
○ 閉塞シート30の長手方向への寸法は、スリーブ20の周長より長くてもよい。このように構成した場合、例えば、配線・配管材13において、突出部21からはみ出した部分から閉塞シート30を巻き始め、配線・配管材13に対し複数回に亘って閉塞シート30を巻き付ける。さらに、突出部21の端21aから指標部22,50に至るまで閉塞シート30を軸方向にずらしながら複数回に亘って閉塞シート30を突出部21の外周面に巻き付けるのが好ましい。
【0060】
○ 各実施形態において、閉塞シート30の第1長縁31aを、指標部22,50に沿わせて閉塞シート30を突出部21の外周面に巻き付けてもよい。
○ 区画壁は防火中空壁W以外にもコンクリート壁であってもよい。
【0061】
○ スリーブ20によって形成される突出部21は、防火中空壁Wの厚さ方向の一方の表面Waのみから突出するように設けられていてもよい。この場合、防火中空壁Wの厚さ方向の他方の表面Waからはスリーブ20は突出せず、スリーブ20の軸方向の端は表面Waと面一にあってもよいし、表面Waから僅かに突出していてもよい。
【0062】
○ 防火中空壁Wの厚さ方向両方の表面から突出する突出部21の長さは等しくなくてもよい。
○ スリーブ20は、金属製でもよいし、熱膨張性を有していない難燃材料や不燃材料で形成されていてもよい。
【0063】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(1)区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに内部に配線・配管材が挿通されるスリーブと、
片面に前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に貼着される粘着部を有し、前記突出部の外周面から当該突出部から引き出された前記配線・配管材にかけて巻き付けられて前記配線・配管材と前記突出部との間の隙間を塞ぐ長尺状の閉塞シートと、からなり、
前記閉塞シートの短手方向への寸法は、前記配線・配管材のうち、前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端から引き出された部分に対して巻き付けるべき規定長さ以上であることを特徴とするスリーブ閉塞装置。
【0064】
(2)区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに内部に配線・配管材が挿通されるスリーブと、
片面に前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に貼着される粘着部を有し、前記突出部の外周面から当該突出部から引き出された前記配線・配管材にかけて巻き付けられて前記配線・配管材と前記突出部との間の隙間を塞ぐ長尺状の閉塞シートと、からなり、
前記閉塞シートの短手方向への寸法は、前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さ以上であることを特徴とするスリーブ閉塞装置。
【0065】
(3)区画壁を厚さ方向に貫通する状態で前記区画壁に設置され、前記厚さ方向における前記区画壁の表面から突出する突出部を形成するとともに内部に配線・配管材が挿通されるスリーブと、
片面に前記突出部の外周面及び前記配線・配管材の外周面に貼着される粘着部を有し、前記突出部の外周面から当該突出部から引き出された前記配線・配管材にかけて巻き付けられて前記配線・配管材と前記突出部との間の隙間を塞ぐ長尺状の閉塞シートと、からなり、
前記閉塞シートの短手方向への寸法は、前記配線・配管材のうち、前記突出部に位置する前記スリーブの軸方向の端から引き出された部分に対して巻き付けるべき規定長さ以上であり、かつ前記突出部の外周面に巻き付けるべき前記閉塞シートの前記突出部の端からの前記軸方向に沿った規定長さ以上であることを特徴とするスリーブ閉塞装置。
【符号の説明】
【0066】
M…規定長さ、W…区画壁としての防火中空壁、13…配線・配管材、20…スリーブ、21…突出部、22,50…指標部、30…閉塞シート、30b…粘着部、40…ブッシング、41…端壁部、42…外周壁部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8