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  • 特許-カビを抑制するための装置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】カビを抑制するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20230816BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20230816BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
A61L9/12
A61L2/20
A61L9/01 J
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019149334
(22)【出願日】2019-08-16
(65)【公開番号】P2020028711
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2019-08-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】62/720,148
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ラーウル・バイアス
(72)【発明者】
【氏名】ゴーラブ・サイニ
(72)【発明者】
【氏名】ユシン・フランシーヌ・シム
(72)【発明者】
【氏名】石田 佳樹
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】粟野 正明
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-526778(JP,A)
【文献】特開2002-179509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L9/00-9/22
A61L2/00-2/28
A61L11/00-12/14
A61K9/00-9/72
A61K47/00-47/69
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
A61K31/00-31/327
A01N1/00-65/48
A01P1/00-23/00
C11B1/00-15/00
C11C1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部占有空間内のカビ臭を抑制するための装置であって、前記内部占有空間内の通気口に前記装置を着脱可能に取り付けるための装着部分に接続可能であり、前記装置が、揮発性組成物を収容したリザーバと、前記揮発性組成物の液相を蒸発させるように構成された供給部材とを備え、前記揮発性組成物が、前記揮発性組成物の
(i)少なくとも0.2重量%のC5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールと、
(ii)少なくとも0.2重量%の、2-デセン-1-アール、3-デセン-1-アール、4-デセン-1-アール、5-デセン-1-アール及びこれらの混合物からなる群から選択されるC10の非分枝非置換の直鎖状アルケナールと、を含む、装置。
【請求項2】
前記C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールが、1個の二重結合を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記C10の非分枝非置換の直鎖状アルケナールが、前記揮発性組成物の0.2重量%~10重量%を構成する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールが、前記揮発性組成物の0.2重量%~10重量%を構成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールが、C5~C7の非分枝非置換の直鎖状アルケナールである、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールが、2-ペンテン-1-アール、3-ペンテン-1-アール、4-ペンテン-1-アール、(E)-2-ヘキセン-1-アール、(Z)-2-ヘキセン-1-アール、3-ヘキセン-1-アール、4-ヘキセン-1-アール、2-ヘプテン-1-アール、3-ヘプテン-1-アール、4-ヘプテン-1-アール、2-オクテン-1-アール、3-オクテン-1-アール、4-オクテン-1-アール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールと前記C10の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとの重量比が、5:1~1:5である、請求項1~4及び6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記供給部材が、半透過性材料である膜である、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記揮発性組成物が、1~45日間の期間の終了時に、少なくとも90%のカビ殺胞子効率を有し、前記カビ殺胞子効率は下記(A)カビ殺胞子効率の試験方法及び下記(B)カビ殺胞子効率の計算方法に従って決定される、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
(A)カビ殺胞子効率の試験方法
この試験方法は、揮発性組成物のカビ殺胞子効率を評価するためのものである。試験方法は、以下の試験条件下、すなわち、平均温度25℃及び平均相対湿度70%で試験チャンバ内で行われる。試験を行うための工程には以下が含まれる。
工程1:(試験表面の準備処理)約1×106cfu/mlの平均カビ濃度を有する、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)の胞子懸濁液を調製する。
工程2:スライドグラスの表面に0.01mlの胞子懸濁液をスポットとしてピペットで加えて、約1×104cfu/表面のカビ/表面濃度を得る。工程2は、3枚のスライドグラスで行って、胞子懸濁液を有する第1のスライドガラス(「第1のスライドグラス」)、胞子懸濁液を有する第2のスライドグラス(「第2のスライドグラス」)、及び胞子懸濁液を有する第3のスライドグラス(「第3のスライドグラス」)を得る。
工程3:周囲条件下でスライドグラス上の胞子懸濁液を、目で見て乾燥した状態となるまで乾燥させる。
工程4:(製品処理)工程3の各スライドガラスを、揮発性組成物と共に試験チャンバ内に入れ、25℃のインキュベーション温度で45日のインキュベーション期間にわたってインキュベートする。揮発性組成物は、前記揮発性組成物の液相を蒸発させるように構成された供給部材を備えた装置に収容されている。
工程5:45日間にわたるインキュベーション期間中の月曜日から金曜日までの毎日、試験チャンバを30分間開放して、自動車の空調システムにおける空気交換を再現する。
工程6:(試験表面上のカビ胞子の算出)時点0日目の終わり(インキュベーションなし)に、試験チャンバから第1のスライドグラスを取り出し、9mlの改変Letheenブロス(MLBT)が入ったストマッカー袋に第1のスライドグラスを入れる。
工程7:ストマッカー袋の上から第1のスライドグラスの表面を擦り、第1のスライドグラスの表面上のカビ胞子をMLBT中に洗い落とす。
工程8:0.1ml及び0.01mlの工程7の溶液を2枚の別々のMLATプレート上にそれぞれ塗り広げ、25℃のインキュベーション温度で3日間のインキュベーション期間にわたってインキュベーター内でインキュベートする。
工程9:3日間の終わりにMLATプレート上のコロニーを計数してカビのカウントを得る。
工程10:(計算結果)下記に述べるカビ殺胞子効率の計算方法に従って、期間の終わりに揮発性組成物のカビ殺胞子効率(%)を計算する。
7日目及び45日目の期間について工程6~10を繰り返す。7日目は、0日目から7日間の期間に相当する。45日目は、0日目から45日間の期間に相当する。
(B)カビ殺胞子効率の計算方法
カビ殺胞子効率は、以下のように計算される。
(i)0日目、7日目、及び45日目の期間の(揮発性組成物を配置した状態の)カビのカウントを得て、
(ii)以下の式(1)に従ってカビ殺胞子効率を計算する。
カビ殺胞子効率=(0日目のカビカウント(胞子数/表面)-X日目のカビ(胞子数/表面))/0日目のカビ(胞子数/表面)×100(1)
ただし、0日目は、揮発性組成物を配置した期間の開始時点である。
X日目は、揮発性組成物を配置した期間の終了時点である。
【請求項10】
前記装置が前記装着部分に接続されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
内部占有空間内のカビ臭を抑制する方法であって、
請求項1~9のいずれか1項に記載の装置を装着部分に接続する工程と、前記装着部分を通気口に取り付ける工程と、を含む、方法。
【請求項12】
カビ臭を低減するための揮発性組成物の有効性を実証する方法であって、
請求項1~9のいずれか1項に記載の装置を装着部分に接続する工程と、前記装着部分を通気口に取り付ける工程と、を含み、前記揮発性組成物が、SIM試験方法に従って決定される平均カビ臭強度値が20以下である、方法。
【請求項13】
揮発性組成物を含むエアフレッシュナーであって、前記揮発性組成物が、前記揮発性組成物の
(i)少なくとも0.2重量%のC5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールと、
(ii)少なくとも0.2重量%の、2-デセン-1-アール、3-デセン-1-アール、4-デセン-1-アール、5-デセン-1-アール及びこれらの混合物からなる群から選択されるC10の非分枝非置換の直鎖状アルケナールと、を有し、
前記揮発性組成物が、1~45日間の期間の終了時に、少なくとも90%のカビ殺胞子効率を有し、前記カビ殺胞子効率は下記(A)カビ殺胞子効率の試験方法及び下記(B)カビ殺胞子効率の計算方法に従って決定される、エアフレッシュナー。
(A)カビ殺胞子効率の試験方法
この試験方法は、揮発性組成物のカビ殺胞子効率を評価するためのものである。試験方法は、以下の試験条件下、すなわち、平均温度25℃及び平均相対湿度70%で試験チャンバ内で行われる。試験を行うための工程には以下が含まれる。
工程1:(試験表面の準備処理)約1×106cfu/mlの平均カビ濃度を有する、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)の胞子懸濁液を調製する。
工程2:スライドグラスの表面に0.01mlの胞子懸濁液をスポットとしてピペットで加えて、約1×104cfu/表面のカビ/表面濃度を得る。工程2は、3枚のスライドグラスで行って、胞子懸濁液を有する第1のスライドガラス(「第1のスライドグラス」)、胞子懸濁液を有する第2のスライドグラス(「第2のスライドグラス」)、及び胞子懸濁液を有する第3のスライドグラス(「第3のスライドグラス」)を得る。
工程3:周囲条件下でスライドグラス上の胞子懸濁液を、目で見て乾燥した状態となるまで乾燥させる。
工程4:(製品処理)工程3の各スライドガラスを、揮発性組成物と共に試験チャンバ内に入れ、25℃のインキュベーション温度で45日のインキュベーション期間にわたってインキュベートする。揮発性組成物は、前記揮発性組成物の液相を蒸発させるように構成された供給部材を備えた装置に収容されている。
工程5:45日間にわたるインキュベーション期間中の月曜日から金曜日までの毎日、試験チャンバを30分間開放して、自動車の空調システムにおける空気交換を再現する。
工程6:(試験表面上のカビ胞子の算出)時点0日目の終わり(インキュベーションなし)に、試験チャンバから第1のスライドグラスを取り出し、9mlの改変Letheenブロス(MLBT)が入ったストマッカー袋に第1のスライドグラスを入れる。
工程7:ストマッカー袋の上から第1のスライドグラスの表面を擦り、第1のスライドグラスの表面上のカビ胞子をMLBT中に洗い落とす。
工程8:0.1ml及び0.01mlの工程7の溶液を2枚の別々のMLATプレート上にそれぞれ塗り広げ、25℃のインキュベーション温度で3日間のインキュベーション期間にわたってインキュベーター内でインキュベートする。
工程9:3日間の終わりにMLATプレート上のコロニーを計数してカビのカウントを得る。
工程10:(計算結果)下記に述べるカビ殺胞子効率の計算方法に従って、期間の終わりに揮発性組成物のカビ殺胞子効率(%)を計算する。
7日目及び45日目の期間について工程6~10を繰り返す。7日目は、0日目から7日間の期間に相当する。45日目は、0日目から45日間の期間に相当する。
(B)カビ殺胞子効率の計算方法
カビ殺胞子効率は、以下のように計算される。
(i)0日目、7日目、及び45日目の期間の(揮発性組成物を配置した状態の)カビのカウントを得て、
(ii)以下の式(1)に従ってカビ殺胞子効率を計算する。
カビ殺胞子効率=(0日目のカビカウント(胞子数/表面)-X日目のカビ(胞子数/表面))/0日目のカビ(胞子数/表面)×100(1)
ただし、0日目は、揮発性組成物を配置した期間の開始時点である。
X日目は、揮発性組成物を配置した期間の終了時点である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはカビを抑制するための装置及び方法に関する。より詳細には、本発明は、内部占有空間内のカビ及びカビ臭を抑制する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エアフレッシュナーは、車両環境において心地よい芳香を提供する目的で広く使用されている。芳香剤を噴霧した吊り下げ式ボール紙片、エアゾールエアフレッシュナー、芳香ゲルを封入したエアフレッシュナー缶、車両のコンセントに差し込むことができるプラグイン式エアフレッシュナー、及び、車両の車通気口ルーバーに取り付け可能な車の通気口用エアフレッシュナーをはじめとする様々な形態の自動車用エアフレッシュナーがある。詳細には、車の通気口用エアフレッシュナーは、通気口を通じて空気流が発生し、その空気流がエアフレッシュナーを通過する際に自動車全体に爽やかさを迅速にもたらすことによって、少なくとも1つの利点を提供する。しかしながら、車内の多くの悪臭源に対処することは困難であり、特に問題となるものとしてカビ臭がある。カビ臭は、暖房、換気、及び空調(HVAC)システムの空調システム又はヒーターの使用、そしてその結果として生じる空調システムのエバポレータ内に蓄積した結露により発生するカビに起因する。カビ臭はパッセンジャーコンパートメントに入り込み、車内のユーザにとって不快かつ不健康な環境を生じさせる。車の通気口用エアフレッシュナー製品は、車内のカビ臭に対して使用されてきたが、これらの製品は、芳香を与えることによってカビ臭を単純にマスクすることができるが、必ずしもカビの増殖の防止に役立つものではない。更に、一般的に香りのハイ、ミドル、及びベース「ノート」を含む「バランスのとれた」香りの体験をユーザに提供することも引き続き求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、カビ増殖の抑制を助ける(それによってカビ臭を軽減する)揮発性組成物を供給する一方で、ユーザが高級な自動車用エアフレッシュナー製品において享受することを期待する、バランスのとれた芳香体験を提供するために、車の通気口に取り付け可能な装置を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、内部占有空間内のカビ臭を抑制するための装置であって、自動車の通気口に装置を着脱可能に取り付けるための装着部分に動作可能に接続可能であり、当該装置が、
基材と流体連通した揮発性組成物を収容するリザーバを備え、揮発性組成物が、揮発性組成物の
(i)少なくとも0.2重量%のC5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールと、
(ii)少なくとも0.2重量%のC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールと、を含む、装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明に基づくカビ臭を抑制するための装置の側断面図である。
図2】装置が支持体上に配置されている場合の、垂直方向にある図1に示される装置の側断面図である。
図3A】装置がエバポレータと流体連通する通気口に配置されている場合の、図1に示される装置の膜を通過する揮発性組成物の気相の移動を示す概略図である。
図3B】装置がエバポレータと流体連通する通気口に配置されている場合の、図1に示される装置の膜を通過する揮発性組成物の気相の移動を示す概略図である。
図3C】空間内に配置されたエバポレータに蒸気の分子が付着する、本方法の第4の工程を示すものである。
図4】本発明に基づくカビ臭を抑制するための装置の変形例の構成部品の斜視図である。
図5A】作動前の、図4に示される装置が組み立てられたときの側断面図である。
図5B】作動後の図5Aの装置の側断面図である。
図6】自動車環境で使用されている、図5A及び5Bの装置の正面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、内部占有空間におけるカビ臭を継続的に抑制するための装置及び方法に関する。詳細には、装置は、揮発性組成物の液相又は固相を収容するためのリザーバを備える。揮発性組成物は、C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールと、C9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとの混合物を含む。この混合物は、受動空気流条件下で継続的に蒸発することができ、カビを有する表面上に堆積してカビの増殖を抑制することができ、カビ臭が時間と共に空気中に再び揮散されることを抑制することができる。驚くべきことに、揮発性組成物を有する装置を、エバポレータと流体連通するエアーコンディショニングシステムの通気口に取り付けることにより、装置からの揮発性組成物の通気口を通じた放出が可能となり、それにより、カビが付着したエバポレータ上へのC5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナール及びC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールの付着を可能にすることで、エバポレータ上のカビの増殖が抑制され、それによってエバポレータ上のカビ臭が低減されることが見出された。
【0007】
C5~C8非分枝非置換の直鎖状アルケナールとC9~C14非分枝非置換の直鎖状アルケナールとの混合物を有する揮発性組成物の技術的効果は、揮発性組成物が、エバポレータ上のカビ増殖を測定可能な程度に抑制する(例えば、自動車内のエバポレータ空間の環境をシミュレーションすることによるインビトロ微生物試験による)ことにより、カビ臭を単に覆い隠す又はマスキングするのではなく、カビ臭を低減することができることである。短期的には、揮発性組成物のカビ抑制効果は、例えば、ヒトによって現在感知されている空気中のカビ臭のレベルを低減することができる。長期的には、本発明は、カビ臭が空間内で再循環して車のシートの表面上に残留することを抑制できる。理論に束縛されるものではないが、C5~C8及びC9~C14非分枝非置換の直鎖状アルケナールは、他の芳香族アルデヒドと比較してカビに対してより高い反応性を有し、したがって無生物表面上のカビを抑制するうえで有効であると考えられる。
【0008】
理論に束縛されるものではないが、非分枝非置換の直鎖状アルケナールは、芳香環(リグストラール中に存在する)に隣接したカルボニル炭素官能基を有さないものと考えられる。したがって、非分枝非置換の直鎖状アルケナールのカルボニル基は、より酸性/求電子性である。非分枝非置換の直鎖状アルケナールのカルボニル炭素のより高い求電子性は、芳香族アルデヒドに対する当該直鎖状アルケナールの反応性をより高くする。芳香族アルデヒド(リグストラールなど)は、芳香環に隣接したカルボニル炭素基を有し、そのため、電気的陽性がカルボニル炭素上のみではなく、芳香環全体に再分布することによって、カルボニル炭素の求電子性が低くなる。少なくとも二重結合が存在することでカビ抑制効果が向上する。更に、1種類ではなく、2種類の非分枝非置換の直鎖状アルケナールを有することにより、各アルケナールが相前後して作用して全体的なカビ抑制効果を連続的に向上させるので、耐性機構が生じる可能性が低くなるため、シナジー効果が生じる。
【0009】
更に、C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとは異なる気化速度を有し、相前後して作用することで全体的なカビ臭抑制効果を連続的に向上させることができることから、1種類のアルケナールの代わりに2つの異なる種類のアルケナールを有することは、カビ抑制効果の持続性を高める。例示的なアルケナールを以下の説明文において列挙するが、これらは国際純正・応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)(IUPAC)によって推奨される有機化合物の命名法に従って命名されたものである。
【0010】
その効果の1つに、エバポレータがカビ臭源にならないことがある。したがって、本発明による装置を内部占有空間内に提供することにより、受動的かつ連続的な形でのエバポレータ上のカビ及びカビ臭の抑制を可能にし、その結果、カビ臭が時間と共に空気中に揮散されることを低減又は防止するように作用する。
【0011】
以下の説明において、記載される装置は、自動車の内部占有空間内で揮発性組成物を蒸発させて、車両のパッセンジャーコンパートメント空間などの内部占有空間内の空気のカビ臭防止、フレッシュニング、悪臭除去、又は芳香付与などの様々な利益をもたらすための、自動車用エアフレッシュナーのような消費者製品である。しかしながら、装置は、様々な用途で使用されて揮発性組成物を供給することで、空調システムを備えた家庭内の部屋及び商業施設などの内部占有空間に効果をもたらすように構成され得ることが考えられ、装置としては、これらに限定されるものではないが、例えば、エアフレッシュニング製品、エアフレッシュナーなどの消費者製品が挙げられる。
【0012】
装置はまた、揮発性組成物の液相を収容し、揮発性組成物の液相を蒸発させるように構成された供給部材を含んでもよい。供給部材は、ウィック、膜、ゲル、フェルトパッドを含む多孔質又は半多孔質基材を含み得る。例示的な供給部材は、物質の特定の成分を通過させるが他の成分は止める半透過性材料である膜であってよい。膜を通過する成分について、膜は、成分の透過性を調節する(すなわち、特定の成分は他の成分よりも速く透過する)。かかる成分としては、分子、イオン、又は粒子を挙げることができる。
【0013】
本発明を詳細に説明する目的で、本発明を、揮発性組成物と流体連通した膜を有する非エネルギー印加式装置として以下に述べる。しかしながら、揮発性組成物は、装置からウィックを通って空間に供給され得る点は理解されよう。更に、本発明の装置は、エネルギーを印可されてもよく、又はエネルギーを印可されなくともよい。本発明を詳細に説明するのに先立ち、説明を分かりやすくために以下の用語を定義する。定義されない用語には、関連する技術分野の当業者によって理解される通常の意味が与えられるべきである。
【0014】
本明細書で使用するところの「水平方向」とは、膜が上向き又は下向きの位置で環境に面する、本発明に基づく装置の位置を指す。
【0015】
「内部占有空間」とは、住宅環境、商業環境、又は車両環境における空間の有限容積を指す。
【0016】
本明細書で使用するところの「膜」とは、物質の特定の成分は通過させるが他の成分は止める半透性材料を指す。膜を通過する成分について、膜は、成分の透過性を調節する(すなわち、特定の成分は他の成分よりも速く透過する)。かかる成分としては、分子、イオン、又は粒子を挙げることができる。
【0017】
本明細書で使用するところの「微多孔膜」とは、細孔の網状組織を有する材料を指す。
【0018】
「非エネルギー印加式」とは、装置が受動的であり、外部のエネルギー源によって動力供給される必要がないことを意味する。詳細には、装置は、熱源、ガス、又は電流によって動力供給される必要はない。装置は、エネルギー印加式装置として構成されてもよい。例示的なエネルギー印可式装置は、電気的装置であってよい。エネルギー印可式装置は、揮発性組成物を輸送し、かつ/又は揮発性組成物を蒸発させるための、以下の説明文で述べるようなウィック及び/又は膜を有する、自動車の電気コンセント又は電池で作動されるエアフレッシュナー、又は他の加熱装置(例えば、触媒燃料システムなどの化学反応によって動力供給される装置、太陽電池式装置など)であってよい。
【0019】
本明細書で使用するところの「タッチポイント」は、揮発性組成物と揮発性組成物の消費者との間の接触点又は相互作用点を指す。
【0020】
本明細書で使用するところの「垂直方向」とは、膜が前方に面する位置又は後方に面するような位置で環境に面する、本発明に基づく装置の位置を指す。
【0021】
本明細書で使用するところの「揮発性材料」なる用語は、更なるエネルギー源を必要とすることなく室温及び大気圧で揮発可能な材料を指す。揮発性組成物は、これらに限定されるものではないが、エアフレッシュニング、脱臭、臭気除去、悪臭中和、害虫防除、殺虫、防虫、薬剤/薬、消毒剤、殺菌、気分向上効果、アロマセラピー助剤、香り付き組成物、非香り付き組成物、又は大気若しくは環境を調整、改質、又は他の形で変化させるように作用する揮発性組成物を必要とする他の任意の使用を含む様々な用途に合わせて構成することができる。更に、揮発性組成物の成分材料の全てが揮発性である必要はない。液体、固体、ゲル、又はエマルションを含む、任意の量若しくは形態の任意の適当な揮発性材料を使用することができる。本明細書での使用に適した材料には、担体物質(例えば、水、溶媒など)のような不揮発性化合物が含まれてもよい。本明細書において揮発性組成物が、「供給される」、「揮散される」、又は「放出される」ものとして述べられる場合、これは、揮発性組成物の揮発性成分の揮散を指し、揮発性組成物の不揮発性成分が揮散される必要はない点も理解されるべきである。
【0022】
図1は、装置1が支持体上に配置されている場合の、水平方向にある本発明に基づく装置1の側断面図である。装置1は、使い捨て式の1回使用の物品として、又は揮発性材料で補充される物品として構成することができる。装置1は、揮発性組成物12を有するリザーバ11を収容した容器10を備えている。容器10は、揮発性組成物12の気相の拡散に抗するように設計された、実質的に蒸気不透過性の材料で形成することができる。例えば、容器10は、これらに限定されるものではないが、熱可塑性材料、並びに熱成形、射出成形、及びブロー成形に適した他の既知の材料を含む、金属、ガラス、セラミック、磁器、タイル、及びプラスチックで形成することができる。膜13は、容器10内に配置し、揮発性組成物12と流体連通するように構成することができる。装置1は、膜13に隣接して蒸気不透過性基材14を更に含んでもよく、蒸気不透過性基材14は、使用前の揮発性組成物12の放出を防止するように構成されている。
【0023】
揮発性組成物12は、揮発性組成物12の少なくとも0.2重量%のC5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールと、少なくとも0.2重量%のC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとを含んでいる。本発明に基づく方法において上記の範囲のアルケナールの混合物を有する揮発性組成物を与えること、及び表面上のカビの効果的な抑制について、実施例Iで実証する。詳細には、実施例Iのデータは、組成物の0.25重量%の量のC6アルケナール((E)-2-ヘキセン-1-アール)と、組成物の0.25重量%のC10アルケナール(4-デセン-1-アール)とを有する本発明の組成物Aが、99%よりも高いカビ殺胞子効率を与えることを示す。これは、40%のカビ殺胞子効率を有する、C6アルケナール((E)-2-ヘキセン-1-アール)及びC10アルケナール(4-デセン-1-アール)を含まない比較組成物Eと比較して改善である。
【0024】
C9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールは1個の二重結合を有することができ、好ましくは、1個の二重結合は、C3、C4、又はC5位、より好ましくはC3又はC4位、更により好ましくはC4位にある。C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールは1個の二重結合を含み、好ましくは、1個の二重結合は、C2、C3、又はC4位、より好ましくはC2又はC3位、更により好ましくはC2位にある。C9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールは、組成物の0.2重量%~10重量%、好ましくは0.2重量%~8重量%、更により好ましくは0.2重量%~5重量%を構成する。C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールは、組成物の0.2重量%~10重量%、好ましくは0.2重量%~8重量%、更により好ましくは0.2重量%~5重量%を構成する。また更に、揮発性組成物12は、C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールと、C9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとの混合物を含んでもよく、この混合物は、組成物の1.5重量%の量である。
【0025】
C9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールは、C9~C12、好ましくはC9~C11、より好ましくはC10の非分枝非置換の直鎖状アルケナールである。C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールは、C5~C7、好ましくはC6の非分枝非置換の直鎖状アルケナールである。使用可能な例示的なC5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとしては、限定されるものではないが、下記表1に示されるアルケナールが挙げられる。使用可能な例示的なC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとしては、限定されるものではないが、下記表2に示すアルケナールが挙げられる。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
表3は、本発明の揮発性組成物における使用に適したC5~C8及びC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールの混合物を示す。
【0029】
【表3】
【0030】
揮発性組成物は、場合により、臭気マスキング剤、臭気遮断剤、及び/又は希釈剤を含むことができる。「臭気遮断」とは、人の嗅覚を鈍らせる化合物の能力を指す。「臭気マスキング」は、悪臭化合物をマスキングする又はその臭いを隠す化合物の能力を指す。臭気マスキングは、悪臭化合物を感知する能力を制限するように投与される、不快ではない匂い又は心地よい匂いを有する化合物を含むことができる。臭気マスキングは、予期される悪臭と協調することで臭気化合物の組み合わせによって与えられる全体的な匂いの知覚を変化させる化合物の選択を伴い得る。例示的な希釈剤としては、ジプロピレングリコールメチルエーテル、及び3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、並びにこれらの混合物が挙げられる。揮発性組成物は、場合により、単に快楽効果を与える香料原料(すなわち、カビを抑制しないが、心地よい香りは与える香料原料)を含んでもよい。揮発性組成物12は、本発明に基づく図に示されるように装置1に含まれてもよい。本発明を詳細に説明する目的で、本発明を、自動車との関連で以下に述べる。しかしながら、本発明は、HVACシステムを使用する任意の内部占有空間内で実施することが可能である点は理解されよう。
【0031】
図1を参照すると、蒸気不透過性基材14は、膜13の外周に着脱可能に取り付けられて、装置1の剥離可能なカバーを形成することができる。蒸気不透過性基材14は、破断される際に揮発性組成物12を通過させるように破断可能なものとすることができる。例えば、図5A及び図5Bに示されるように、蒸気不透過性基材14は、膜13に隣接して配置されかつ容器10の内周に取り付けられて膜13に隣接する密封リザーバを形成する、破断可能な基材とすることができる。
【0032】
装置1は、図2に示されるような、垂直方向を含むがそれに限定されない任意の所望の方向で使用されるように構成することができる。図2は、図1の装置1の概略側面図を示す。装置1は、図1の装置1と実質的に同じであるが、ただし、装置1の使用中に、ユーザが図3A図3Cに示されるように装置1を作動させる必要がある場合に蒸気不透過性基材14が剥がされる際、膜13が、揮発性組成物12と流体連通するように配置された第1の表面20と、環境に面し、かつ揮発性組成物12から離れる方向に面する第2の表面22とを含む点が異なっている。揮発性組成物12が本発明に基づいてどのようにエバポレータにカビの抑制効果を与えるかを説明するために、揮発性組成物12の蒸気放出速度がどのように生じるかを理解することが有用である。本発明に基づくカビの抑制方法について、図3A図3Cを参照しながら説明する。本方法は、本発明の装置を装着部分に動作可能に接続することと、暖房、換気、及び空調(HVAC)システムと流体連通する通気口に装着部分を取り付けることと、を含む。
【0033】
図3A図3B、及び図3Cでは、装置1は実質的に垂直な位置にある。容器10は、揮発性組成物12で部分的に充填されている。図3Aは、装置1が装着部分23に動作可能に接続される本方法の第1の工程3Aと、これに続く、装着部分23が、自動車のダッシュボードの背後及びフードの下に位置する空間32内に配置された暖房、換気、及び空調(HVAC)システム31と流体連通する通気口30に取り付けられる、第2の工程3Bを示している。装置1は、装着部分23との接続の前、接続時、又は接続の後に作動させることができる。通気口30は、複数のルーバー33を備えてよく、装置1は、装着部分23をルーバー33と係合させることによって通気口30に取り付けることができる。HVACシステム31は、通気口30の下流に位置するエバポレータ34を有している。
【0034】
図3Aを参照すると、揮発性組成物12の液相12Aは、膜13内に充分に高い濃度の分子が吸収されるまで、第1の表面121から膜13を通過する。揮発性組成物12の液相12Aは、膜13の細孔内への揮発性組成物12の毛管流によって膜13を濡らすことができる。膜13が濡れると、揮発性組成物12の液相12Aは、膜13の第2の表面22の近く又は第2の表面22に配置されるため、第2の表面22の近くの分子は、第2の表面22から蒸発して揮発性組成物の気相となる(「気化」)のに充分な運動エネルギーを有し、図3Bに示されるように通気口30を通って空間32内に通過する蒸気12Bを形成する。
【0035】
図3Bは、空間32内に蒸気12Bが形成される、本方法の第3の工程3Cを示したものであり、図3Cは、空間32内に配置されたエバポレータに蒸気12Bの分子が付着する、本方法の第4の工程3Dを示したものである。具体的には、蒸気12Bは、図3Cに示されるように蒸気分子12Cがエバポレータ34に付着するような濃度にまで蒸気12B中の分子の濃度レベルを上昇させるのに充分である有効な時間にわたって、空間32内に形成される。具体的には、空間32内への蒸気12Bの蒸気放出速度、続いて所定量の蒸気12Bの蒸気分子12Cがエバポレータ34のエバポレータ表面35に付着する。付着した蒸気分子12Cの量は、エバポレータ表面に付着した揮発性組成物12中に、有効量のC5~C8及びC9~C14の非置換及び非分枝の直鎖状アルケナールを含有する。これにより、本発明は、実施例Iに述べられるようなカビ量の低減、及び実施例IIに述べられるようなカビ臭の低減を実現する。
【0036】
上記の本発明の方法を用いることで、実質的に連続してカビ抑制用の揮発性組成物を供給することができる。更に、本方法により、装置1の意図された使用時間にわたって改善されたカビ抑制効果を有する揮発性組成物の供給が可能になり得る。揮発性組成物の連続的な揮散は、限定されるものではないが、20日間、30日間、60日間、90日間、これよりも短い若しくは長い期間、又は30~90日間の間の任意の期間であってよい。
【0037】
本発明の方法は、カビ抑制効果、芳香剤、エアフレッシュナー、防臭剤、消臭剤、悪臭中和剤、殺虫剤、防虫剤、医薬物質、消毒剤、殺菌剤、気分高揚剤、及びアロマテラピー助剤を提供する目的に、又は大気若しくは環境を調整、改質、又は他の形で変えるように作用する物質を使用する他の任意の目的に適している。
【0038】
本発明の方法は、内部占有空間におけるカビ臭を抑制する方法であって、
本発明の装置を装着部分に動作可能に接続する工程と、装着部分を通気口に取り付ける工程と、を含む方法を提供することができる。
【0039】
本発明の方法は、カビ臭を低減するための揮発性組成物の効果を実証する方法であって、
本発明の装置を装着部分に動作可能に接続する工程と、装着部分を通気口に取り付ける工程と、を含み、揮発性組成物が、「試験方法」において下記に述べられるSIM試験方法に従って決定して20以下の平均カビ臭強度値を有する、方法を提供することができる。その効果については下記実施例IIIで述べる。
【0040】
本発明の装置1は、揮発性組成物12が膜13から蒸発して、カビが付着した表面と接触することができる限り、揮発性組成物12を大気及び/又は表面に供給して表面のカビを防止するために、様々な用途で使用されるように構成することができる。
【0041】
したがって、膜13の特定の物理的特性は、蒸気不透過性基材14を剥離することによって又は蒸気不透過性基材14を破断させることによって作動されるように設計された装置1の特定の所望の用途に基づいて選択することができる。着脱可能に取り付けられるように設計された膜及び蒸気不透過性基材は周知のものであり、更に説明することはしない。蒸気不透過性基材14を破断させることによって作動されるように設計された装置1に適した膜13及び蒸気不透過性基材14の適当な物理的パラメータの例を以下に述べる。
【0042】
膜13は微多孔質膜とすることができ、約0.01~約1ミクロン、約0.01~約0.06ミクロン、約0.01~約0.05ミクロン、約0.01~約0.04ミクロン、約0.01~約0.03ミクロン、約0.02~約0.04ミクロン、又は約0.02ミクロンの平均孔径を有することができる。更に、膜12は、当該技術分野で周知の任意の適当な充填剤及び可塑剤で充填されてもよい。充填剤としては、微粉砕シリカ、クレイ、ゼオライト、カーボネート、活性炭、及びこれらの混合物を挙げることができる。充填された膜の一例としては、米国特許第7,498,369号に記載のものなどの、シリカで充填された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)膜がある。任意の適当な充填材料及び重量%を使用することができるが、シリカの一般的な充填率(%)は、膜の総重量の約50%~約80%、約60%~約80%、約70%~約80%、又は約70%~約75%とすることができる。適当な膜厚の例としては、限定されるものではないが、約0.01mm~約1mm、約0.1mm~0.4mm、約0.15mm~約0.35mm、又は約0.25mmが挙げられる。また更に、膜12の蒸発表面積は、約2cm~約100cm、約2cm~約25cm、約10cm~約50cm、約10cm~約45cm、約10cm~約35cm、約15cm~約40cm、約15cm~約35cm、約20cm~約35cm、約30cm~約35cm、約35cmとすることができる。
【0043】
蒸気不透過性基材14は、所定の力を加えることによって破断させることができる(かかる破断を助ける破断要素などの要素の有無によらず)任意の材料で形成することができる。装置1が使用されていないときに蒸気不透過性基材40が揮発性組成物を含有することが意図された実施形態では、蒸気不透過性基材40は、揮発性組成物12の蒸発を低減又は防止する任意の適当なバリア材料で形成することができる。かかる材料は、蒸気及び液体に対して不透過性とすることができる。蒸気不透過性基材40に適したバリア材料としては、限定されるものではないが、ポリマーフィルム、ウェブ、箔、及び箔/ポリマーフィルム積層体などの複合材料などの、コーティングされた又はコーティングされないフィルムが挙げられる。バリア材料として使用することが可能な箔の例としては、ニトロセルロース保護ラッカー、ポリウレタンプライマー、及びAlcan Packaging社より販売される15g/mのポリエチレンコーティング(Lidfoil118-0092)を含む、ミクロン単位のアルミニウム箔がある。適当なポリマーフィルムとしては、限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、アクリロニトリルコポリマーバリアフィルム(例えば、INOES社より商標名Barex(登録商標)で販売されるものなど)、エチレンビニルアルコールフィルム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。コーティングされたバリアフィルムを蒸気不透過性基材14として使用することも考えられる。かかるコーティングされたバリアフィルムとしては、限定されるものではないが、金属化PET、金属化ポリプロピレン、シリカ又はアルミナコーティングフィルムが挙げられる。
【0044】
図4は、本発明に基づくカビを抑制するための装置1の変形例における各構成部品の斜視図である。図4の装置1は、図1の装置1と実質的に同じ特徴を備え、更なる構成部品について以下に述べる。
【0045】
図4を参照すると、装置1は、フロントカバー42及びリアフレーム44を有するハウジング40を備え、フロントカバー42とリアフレーム44とは内部空間を画定している。リアフレーム44は、フレーム開口部46に隣接して配置され、リアフレーム44から延出する一対の突起48を有してもよい。突起48は、装着部分23から延出するピン25と係合するような形状及びサイズに構成することができる。装着部分23は、装置1に取り付けるか、可動に取り付けるか、回転可能に取り付けるか、又は枢動可能に取り付けることができる。例示的な実施例では、装着部分23は、装置1を作動させるためにハウジング40に対して可動であるように構成することができる。そのような例では、リアフレーム44に、リアフレーム44のほぼ中央に位置するフレーム開口部46を設けることができる。装着部分23は、図6に示されるように装置1を通気口30に取り付けるための可動又は弾性クリップとして構成することができる。
【0046】
揮発性組成物12が液体揮発性組成物である場合、装置1は、装置1が作動されるまで揮発性組成物12が放出されることを防止するためにリザーバ11に封止可能に取り付けられてリザーバ11を覆う、破断可能な蒸気不透過性基材14を備えることができる。破断可能な蒸気不透過性基材14は、破断可能な蒸気不透過性基材14に隣接して配置された破断機構50を作動させることによって破断して、揮発性組成物12を放出することができる。破断機構50は、弾性部材54によって外側フレーム53に可動に取り付けられた可動部材52を備えている。弾性部材54は、1つ以上のばねで形成することができる。1つ以上の破断要素56は、破断可能な蒸気不透過性基材14に穴を開けるように、破断機構50の内部に配置されている。破断要素56は、ピンであってよい。膜13は、容器10の外周58に位置するフランジ57に封止可能に取り付けることができる。膜13は、容器10、揮発性組成物12、破断可能な蒸気不透過性基材14、及び破断機構50を封入する。膜13は、装着部分23によって圧力又は作動力が膜13に加えられると屈曲するように構成することができる。
【0047】
図5A及び図5Bは、揮発性組成物12と共に組み立てられた形態の図4の装置1を示し、作動前の第1の位置(図5A)及び作動後の第2の位置(図5B)にある状態が示されている。図5Aを参照すると、装置1を作動するには、ユーザは、装着部分23をハウジング40に対して回転させて、膜13及び破断要素56の少なくとも一部を破断可能な蒸気不透過性基材14に向かって動かして破断可能な蒸気不透過性基材に穿孔することで、揮発性組成物12の少なくとも一部を容器10から放出させることで、揮発性組成物12の一部を装置1から蒸発させる。装着部分23は、膜13及び破断要素56の少なくとも一部を破断可能な蒸気不透過性基材14に向かって動かして破断可能な蒸気不透過性基材に穿孔するように直線的に又は回転運動で動かすための既知の機械的方法を用いて構成することができる点は理解されよう。破断可能な蒸気不透過性基材14が穿孔されると、容器10から揮発性組成物12が流れ出して膜13を濡らし、その後、膜13からの蒸発によって周辺大気に供給される。膜13は、揮発性組成物12の液相が膜13から流出することを防ぐが、揮発性組成物12の気相が第2の表面22から蒸発するのは可能とするように構成されていることで、揮発性組成物12が環境に、またエバポレータが配置された空間32内に供給される(図3A図3Cに示される)。
【0048】
以下の実施例は、本発明をより完全に説明することを目的としたものであり、本発明の範囲から逸脱することなく、その多くの変形例が可能であることから、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0049】
本明細書における全ての部、割合(%)、及び比率は、特に断らない限りは重量%として表される。
【実施例
【0050】
最初に、試験装置/材料及び試験揮発性組成を「材料」において説明し、次に「試験方法」を示し、最後に結果を論じる。HVACシステムのエバポレータに対する改善されたカビ抑制効果を有する本発明の揮発性組成物を実証するデータを示す。以下に述べる「試験方法」で使用する装置及び材料を、下記表4に示す。本発明の組成物及び比較組成物の配合を下記表5に示す。各組成物は従来の方法を用いて調製される。
【0051】
材料
【0052】
【表4】
【0053】
表5に、評価を行う8種類の揮発性組成物を示す。本発明の組成物A、B、C、D、Eは本発明の組成物であり、比較組成物F、G、Hは比較用の組成物である。本発明の組成物A、B、C、D、Eは、C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナール(例として(E)-2-ヘキセン-1-アールCAS番号6728-26-3)と、C9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナール(例として4-デセン-1-アールCAS番号65405-70-1)との混合物を含有する。
【表5】
アコード成分は、製造業者によって開示されていない。
【0054】
試験方法/計算
A.蒸発性活性物質のP&G社カビ殺胞子効率の試験方法
この試験方法は、本発明の組成物及び比較組成物のカビ殺胞子効率を評価するためのものである。試験方法は、以下の試験条件下、すなわち、平均温度25℃及び平均相対湿度70%で試験チャンバ内で行われる。試験を行うための工程には以下が含まれる。
工程1:(試験表面の準備処理)約1×106cfu/mlの平均カビ濃度を有する、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)の胞子懸濁液を調製する。
工程2:スライドグラスの表面に0.01mlの胞子懸濁液をスポットとしてピペットで加えて、約1×104cfu/表面のカビ/表面濃度を得る。工程2は、3枚のスライドグラスで行って、胞子懸濁液を有する第1のスライドガラス(「第1のスライドグラス」)、胞子懸濁液を有する第2のスライドグラス(「第2のスライドグラス」)、及び胞子懸濁液を有する第3のスライドグラス(「第3のスライドグラス」)を得る。
工程3:周囲条件下でスライドグラス上の胞子懸濁液を、目で見て乾燥した状態となるまで乾燥させる。
工程4:(製品処理)工程3の各スライドガラスを、本発明の組成物又は比較組成物と共に試験チャンバ内に入れ、25℃のインキュベーション温度で45日のインキュベーション期間にわたってインキュベートする。本発明の組成物又は比較組成物は、図3Aの装置1と同様の構成の装置に収容されている。
工程5:45日間にわたるインキュベーション期間中の月曜日から金曜日までの毎日、試験チャンバを30分間開放して、自動車の空調システムにおける空気交換を再現する。
工程6:(試験表面上のカビ胞子の算出)時点0日目の終わり(インキュベーションなし)に、試験チャンバから第1のスライドグラスを取り出し、9mlの改変Letheenブロス(MLBT)が入ったストマッカー袋に第1のスライドグラスを入れる。
工程7:ストマッカー袋の上から第1のスライドグラスの表面を擦り、第1のスライドグラスの表面上のカビ胞子をMLBT中に洗い落とす。
工程8:0.1ml及び0.01mlの工程7の溶液を2枚の別々のMLATプレート上にそれぞれ塗り広げ、25℃のインキュベーション温度で3日間のインキュベーション期間にわたってインキュベーター内でインキュベートする。
工程9:3日間の終わりにMLATプレート上のコロニーを計数してカビのカウントを得る。
工程10:(計算結果)下記に述べるカビ殺胞子効率の計算方法に従って、期間の終わりに本発明の組成物/比較組成物のカビ殺胞子効率(%)を計算する。
【0055】
7日目及び45日目の期間について工程6~10を繰り返す。7日目は、0日目から7日間の期間に相当する。45日目は、0日目から45日間の期間に相当する。実施例I及びIIの実験を、上記の方法に従って0日目、7日目及び45日目に行うので、3枚のスライドガラスが準備される。しかしながら、スライドガラスの数は、揮発性組成物のカビ消毒効率を決定するうえで望ましい時点の数に応じて変えることができることが理解されるであろう。
【0056】
B.カビ殺胞子効率の計算方法
カビ殺胞子効率は、以下のように計算される。
(i)0日目、7日目、及び45日目の期間の(本発明の組成物/比較組成物を配置した状態の)カビのカウントを得て、
(ii)以下の式(1)に従ってカビ殺胞子効率を計算する。
カビ殺胞子効率=(0日目のカビカウント(胞子数/表面)-X日目のカビ(胞子数/表面))/0日目のカビ(胞子数/表面)×100(1)
ただし、0日目は、本発明の組成物/比較組成物を配置した期間の開始時点である。
X日目は、本発明の組成物/比較組成物を配置した期間の終了時点である。
【0057】
C.車内カビ臭性能官能試験方法(「SIM試験方法」)
この試験方法は、自動車内のカビ臭を抑制する本発明の組成物の効果を評価するためのものである。試験方法は、カビ臭を有する5台の試験自動車である試験自動車1~5において9週間の試験期間にわたって行い、カビ臭強度の結果を実施例IIIで述べる。試験自動車は、3人の高度に訓練されたヒト官能試験員(「官能試験員」)によって評価されるカビ臭の存在に基づいて選択され、試験自動車を選択するための合格基準は、表6に従った少なくとも30のカビ臭強度に基づく。試験を行うための工程には以下が含まれる。
工程1:本発明の自動車用エアフレッシュナーを配置する前に、官能試験員により、試験自動車1~5のそれぞれをカビ臭について3つのタッチポイント(車内に入った時点、エアコンを入れた直後、及びエアコンを3分間入れた後)で評価する。次いで、各試験自動車1~5に1個の本発明の自動車用エアフレッシュナーを配置する。
工程2:試験自動車1~5のそれぞれを、本発明の自動車用エアフレッシュナーを使用した第1週及び第2週の間に、週最低3~4回、最低で1~2時間運転する。
工程3:試験自動車1~5において官能試験員による毎週の官能評価を行い、各官能試験員は、試験自動車のそれぞれのパッセンジャーコンパートメント内の空気をカビ臭について評価し、下記表6に示されるスケールを用いた臭気グレードに基づいた強度評価に従って、各試験自動車をカビ臭について評価する。1週目及び2週目の官能評価に先立って、本発明の自動車用エアフレッシュナーを試験自動車1~5のそれぞれのエアコン通気口から取り外して、タッチポイント2、3におけるカビ臭の評価に影響し得る芳香剤のマスキング効果を最小とする。タッチポイント1における1週目及び2週目の官能評価を行うには、本発明の自動車用エアフレッシュナーをエアコン通気口に取り付けたままとし、ただしエアコン通気口はオフにする。評価は、以下の4つのタッチポイントで行う。
タッチポイント1:車内に入った時点
タッチポイント2:本発明の自動車用エアフレッシュナーなしでエアコンティショニング(エアコン)(A/C)を入れた直後
タッチポイント3:本発明の自動車用エアフレッシュナーなしでエアコンを入れた3分後
タッチポイント4:本発明の自動車用エアフレッシュナーをエアコン通気口に取り付けてエアコンを入れる。
工程4:2週目の官能評価後、本発明の自動車用エアフレッシュナーを各試験自動車1~5から取り外す。
工程5:この後、3週目から9週目にかけて試験自動車1~5を、週最低3~4回、最低1~2時間、本発明の自動車用エアフレッシュナーなしで運転する。
工程6:3週目及び4週目に、試験自動車1~5において官能試験員による毎週の官能評価を行い、各官能試験員は、試験自動車のそれぞれのパッセンジャーコンパートメント内の空気をカビ臭について評価し、下記表6に示されるスケールを用いた臭気グレードに基づいた強度評価に従って、各試験自動車をカビ臭について評価する。評価は、工程3で述べたタッチポイント1、2、3で行う。
工程7:4週後、9週目まで、試験自動車1~5を、週最低3~4回、最低1~2時間、本発明の自動車用エアフレッシュナーなしで運転する。5週目から8週目まで官能試験員による官能評価は行われない。
工程8:9週目(各試験自動車1~5から本発明の自動車用エアフレッシュナーを取り外した7週間後)に試験自動車1~5において官能試験員による官能評価を行い、各官能試験員は、試験自動車のそれぞれのパッセンジャーコンパートメント内の空気をカビ臭について評価し、下記表6に示されるスケールを用いた臭気グレードに基づいた強度評価に従って、各試験自動車をカビ臭について評価する。評価は、工程3で述べたタッチポイント1、2、3で行う。
【0058】
【表6】
【0059】
(実施例I)
表5の本発明の組成物A、B、C及び比較組成物を、「試験方法」において本明細書で上記に述べたカビ殺胞子効率の試験方法に従って評価する。
【0060】
下記表7及び8は、7日目の時点で測定した、本発明の組成物A、B、C及び比較組成物F、G、Hのカビ殺胞子効率の結果を示し、C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナール(例えば、(E)-2-ヘキセン-1-アール)とC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナール(例えば、4-デセン-1-アール)との混合物を有する本発明の組成物は、C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとの混合物を含まない比較組成物と比較して、より高いカビ殺胞子効率を有することを示している。
【0061】
【表7】
【0062】
詳細には、本発明の組成物A及びBは、0.25%~1%の量のC5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナール(例えば、(E)-2-ヘキセン-1-アール)と、0.25%~1%の量のC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナール(例えば、4-デセン-1-アール)を有することにより、比較組成物E(40%)と比較して、7日間の終了時に、より高い平均のカビ殺胞子効率(>99%)が得られることを示している。
【0063】
下記表8は、組成物の1.5重量%のC5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとの混合物と、2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-カルバルデヒド、3,7ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール、3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール、(2E)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オールを含む10.1%の特定の香料原料群とを有する本発明の化合物C、並びにC5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナール及びC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールを含まない比較組成物G及びHのカビ殺胞子効率の結果を示す。比較組成物Fは、本発明の組成物Cと同じ量の特定の香料原料群を有する。比較組成物Hは、特定の香料原料群の量が増加している。
【0064】
【表8】
【0065】
全体として、上記の結果は、低い濃度のC5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとを含む揮発性組成物が、C5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナール及びC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールを含まない比較揮発性組成物と比較して、より高いカビ殺胞子効率を有することを示すものである。更に、表5の結果(比較組成物Gに対する本発明の組成物C)は、本発明の揮発性組成物が、同じ所定量の特定の香料原料群を有する比較揮発性組成物(平均のカビ胞子効率68%)と比較して、99%よりも高い平均のカビ胞子殺胞子効率を与えることを示している。更に、比較組成物Hの結果は、特定の香料原料群の量が組成物の約4.5重量%増加した場合(すなわち最初の量の44%)であっても、比較組成物Hは、80%のより低い平均のカビ殺胞子効率しかもたらさないことを示している。
【0066】
他の特定の香料原料と比べて、低い濃度のC5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナール及びC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールによるより高いカビ殺胞子効率は、消費者に対する爽やかさの供給を更に改善するための臭気遮断を含む(ただしこれに限定されない)、消費者に更なる効果をもたらすための他の任意の成分を含めるための更なる配合余地が存在することを意味している。また、より高いカビ殺胞子効率を有することにより、以下に述べる実施例IIで実証される自動車内のカビ臭強度の低減ももたらされる。
【0067】
(実施例II)
表5の本発明の組成物Eを、「試験方法」で本明細書で上記に述べたカビ殺胞子効率の試験方法に従って評価する。下記表9の結果は、7日間の期間の終了時における本発明の組成物のカビ殺胞子効率が少なくとも99%であることを示す。少なくとも99%のカビ殺胞子効率は45日間の終了時に維持され、本発明の組成物のカビ抑制効果の持続性を示すものである。以下の結果は、相前後して作用するC5~C8の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとを含む本発明の組成物は、7日目に速やかなカビ臭防止効果をもたらし、45日間又はそれ以上の期間にわたって全体的なカビ臭防止効果を持続することを示すものである。
【0068】
【表9】
【0069】
本発明の組成物は、揮発性組成物の少なくとも0.2重量%のC5~C8の非分枝鎖非置換直鎖アルケナールと、少なくとも0.2重量%のC9~C14の非分枝非置換の直鎖状アルケナールとを有する揮発性組成物を含むエアフレッシュナーとして機能する任意の形態に適合できる点は理解されよう。かかる揮発性組成物は、好ましくは1~45日間の期間の終了時に、好ましくは2日間の期間の終了時に、より好ましくは7日間の期間の終了時に、更により好ましくは45日間の期間の終了時に、少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは99%のカビ殺胞子効率を有し、カビ殺胞子効率は、本明細書で規定されるカビ殺胞子効率の試験方法に従って決定される。
【0070】
(実施例III)
表2の本発明の組成物Dを含む本発明の自動車用エアフレッシュナーを、「試験方法」で本明細書で上記に述べたSIM試験方法に従って評価する。下記表10は、本発明の自動車用エアフレッシュナーが試験自動車内に配置され、消費者によって運転される際の臭気グレード(表6に示される)に基づいて官能試験員によって与えられた平均のカビ臭強度値を示す。
【0071】
【表10】
【0072】
1、2、3、4、9週目の終了時における上記の結果は、自動車内の本発明の自動車用エアフレッシュナーの使用が、9週間の期間にわたって、またその終了時に、表6に基づく臭気グレードに従って、自動車の内部占有空間内に20よりも低い平均のカビ臭強度値をもたらすことを示している。詳細には、これらの結果は、以下に説明するように、全てのタッチポイントにおいて、平均のカビ臭強度値が有意に低下していることを示している。
【0073】
0週目では、内部占有空間の平均のカビ臭強度値は32である。1週目に本発明の自動車用エアフレッシュナーを使用した後、平均のカビ強度値(0週目)は、1週目の終了時の平均のカビ臭強度値17まで、すなわちカビ臭強度値20未満まで(すなわち、表6によれば「何らかの臭気を感じるが、特定の臭気を特定することはできない」わずかな臭気として知覚される)約47%低下している。
【0074】
更に、1週目~4週目にかけて、全てのタッチポイントにおいて平均のカビ臭強度が連続的に低下している。詳細には、2週目では、内部占有空間内の平均のカビ臭強度は12であり、0週目に対して63%の平均カビ臭強度の低下を示しているのに対して、3週目では内部占有空間内の平均カビ臭強度は9であり、0週目に対して72%の平均カビ臭強度の低下を示している。最も低い平均カビ臭強度値3及び91%の最も高いカビ臭強度低下率が4週目に観察されている(すなわち、本発明の自動車用エアフレッシュナーを取り外した2週間後)。理論に束縛されるものではないが、これは、カビ臭が、本発明の自動車用エアフレッシュナーが取り外される際にカビ臭をマスクする本発明の組成物中に存在する成分の匂いによるのではなく、蒸発して、自動車のエバポレータ上のカビと接触する本発明の組成物の効果によって除去されることを示すものである。また更に、9週目では、内部占有空間内の平均カビ臭強度は、カビ臭強度値10(すなわち、表6によれば「臭気があると思う」極めてわずかな臭気として知覚される)よりも低い8であり、これは、0週目に対して75%の平均カビ臭強度の低下である。
【0075】
上記の結果は、本発明の自動車用エアフレッシュナー内に配置された本発明の組成物によって実証されたものであるが、当業者であれば、同じ又は同様の技術的効果及びカビ臭強度低減の結果が、クリップ、ヒモなどの従来の取り付け手段を使用して通気口に取り付けることができるゲルなどの形態で与えられる場合には、本発明の組成物のみによっても得られる点が理解されよう。全体的な結果は、本発明の組成物が、SIM試験方法に従って決定される平均のカビ臭強度値に基づいて、9週間の期間の終了時に40%~95%の平均カビ臭強度の低下を、好ましくは1週間の期間の終了時に40%~60%の平均カビ臭強度の低下を、より好ましくは2週間の期間の終了時に60%~70%の平均カビ臭強度の低下を、更により好ましくは、3週間の期間の終了時に70%~80%の平均カビ臭強度の低下を、更にいっそうより好ましくは4週間の終了時に90%~99%の平均カビ臭強度の低下を、更にいっそうより好ましくは9週間の終了時に70%~99%の平均カビ臭強度の低下を有することを示している。しかしながら、本発明の組成物はまた、SIM試験方法に従って決定される平均のカビ臭強度値に基づいて、9週間の期間で5%~99%、好ましくは50%~90%、より好ましくは70%~90%の平均カビ臭強度の低下をもたらすように構成することもできる。
【0076】
本明細書で開示する寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限られるとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、このような寸法はそれぞれ、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図されている。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0077】
相互参照される又は関連する全ての特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本願に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全容が本願に援用される。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのような発明全てを教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照することによって組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と矛盾する場合、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0078】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内に含まれるそのような全ての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲にて網羅することを意図したものである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6