(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】一方向弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/52 20060101AFI20230816BHJP
F16K 15/02 20060101ALI20230816BHJP
B60K 15/04 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
F16K1/52 A
F16K15/02
B60K15/04 C
(21)【出願番号】P 2019160686
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 精彦
(72)【発明者】
【氏名】塩見 良一
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】世良 英規
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-179681(JP,A)
【文献】特開2017-002759(JP,A)
【文献】特開2005-265009(JP,A)
【文献】特開2007-192261(JP,A)
【文献】特開2002-098283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00-15/10
F16K 1/00- 1/54
15/00-15/20
17/18-17/34
21/00-24/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に連通する第1接続管、燃料タンク外に連通する第2接続管、及び、前記第1接続管側に設けられた弁座を有する、バルブケースと、
前記バルブケース内にスライド可能に配置されるバルブと、
前記バルブケース内の第2接続管側に配置され、前記バルブを前記弁座に向けて付勢するスプリングとを有し、
前記バルブは、前記弁座に接離するバルブ本体を有しており、
前記バルブ本体は、外周が凸曲面状をなした凸曲面部を有すると共に、先端側が閉塞された形状をなし、前記凸曲面部が前記弁座に接離するようになっており、
前記バルブ本体の、凸曲面部の基端側周縁から、環状フランジ部が突設されており、
前記環状フランジ部の外周と前記バルブケースの内周との間の流路面積をAとし、前記第1接続管の流路面積をBとしたとき、A≦Bとなるように構成されていることを特徴とする一方向弁。
【請求項2】
前記環状フランジ部には、前記第2接続管側に向けて広がるように傾斜するテーパ面が設けられている請求項1記載の一方向弁。
【請求項3】
前記Bを1としたとき、前記Aは0.5~1とされている請求項1又は2記載の一方向弁。
【請求項4】
前記環状フランジ部の外周に、前記バルブケースの軸方向に延びて、前記バルブケースの内周に摺接可能なリブ状をなしたガイド部が、複数設けられており、
各ガイド部は、前記環状フランジ部を境にして、前記第1接続管側及び前記第2接続管側にそれぞれ延びた形状をなしている請求項1~3のいずれか1つに記載の一方向弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向に燃料蒸気等の流体を流通可能とする一方向弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の燃料タンクには、燃料蒸気等の流体を、燃料タンク内から燃料タンク外へと流出させたり、又は、外部空気等の流体を、燃料タンク外から燃料タンク内へと流入させたり等の、一方向への流体の流通を可能とする一方向弁が配置されている。
【0003】
下記特許文献1には、フィラーチューブの一端に、略筒状をなしたバルブケースが配置され、このバルブケース内に、一方向弁をスライド可能に収容した構造が記載されている。バルブケースは、一端が開口すると共に、他端側に、一端開口よりも縮径した開口孔が形成されており、バルブケースの内側であって一端開口寄りの箇所には、略環状をなした弁座部が突出している。また、バルブケースの開口孔周縁に、付勢ばねの一端が支持されており、この付勢ばねによって、一方向弁が弁座部に向けて付勢されている。なお、弁座部は、略円盤状をなしており、この弁座部の外周と、バルブケースの内周との間には、比較的広い隙間が形成されている。
【0004】
上記構成の一方向弁は、燃料タンクのフィラーチューブの一端に取付けられるものであるが、燃料タンク内外を連結する流路途中に配置することも可能である。仮に、バルブケースの弁座部を、燃料タンク内に連通するチューブ側に向けて配置した場合には、燃料タンク内圧が上昇すると、一方向弁が押されて弁座部から離反し、燃料蒸気が、キャニスタ等に連通するチューブへと流出して、燃料タンク外へ排出されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の一方向弁の場合、弁外周とバルブケース内周との隙間は、比較的広く形成されているので、燃料タンク内の圧力が上昇し、一方向弁が押されて弁座部から離反すると、燃料蒸気は、一方向弁と弁座部との隙間を通過した後、弁外周とバルブケース内周との広い隙間を通過してしまい、弁を押す力は弱い。この場合、一方向弁は、燃料蒸気により押されて、弁座部から離反しても、一方向弁と弁座部との隙間が広がりにくい。そのため、燃料蒸気等の流体が流れる際の、圧力損失が高い。
【0007】
したがって、本発明の目的は、圧力損失が少ない、一方向弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一方向弁は、燃料タンク内に連通する第1接続管、燃料タンク外に連通する第2接続管、及び、前記第1接続管側に設けられた弁座を有する、バルブケースと、前記バルブケース内にスライド可能に配置されるバルブと、前記バルブケース内の第2接続管側に配置され、前記バルブを前記弁座に向けて付勢するスプリングとを有し、前記バルブは、前記弁座に接離するバルブ本体を有しており、前記バルブ本体は、外周が凸曲面状をなした凸曲面部を有すると共に、先端側が閉塞された形状をなし、前記凸曲面部が前記弁座に接離するようになっており、前記バルブ本体の、凸曲面部の基端側周縁から、環状フランジ部が突設されており、前記環状フランジ部の外周と前記バルブケースの内周との間の流路面積をAとし、前記第1接続管の流路面積をBとしたとき、A≦Bとなるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バルブ本体の、凸曲面部の基端側周縁から、環状フランジ部が突設されており、環状フランジ部の外周とバルブケースの内周との間の流路面積をAとし、第1接続管の流路面積をBとしたとき、A≦Bとなるように構成されているので、一旦バルブが開くと、バルブ本体に流体圧を作用させやすく、第1接続管を介して弁座とバルブ本体の隙間からバルブケース内に流入した流体は、バルブ本体の先端側から凸曲面部に沿って流れて、凸曲面部の基端側周縁の環状フランジ部にぶつかるため、環状フランジ部に流体の圧力が作用しやすくなり、弁座とバルブとの隙間を広げることができ、圧損の少ない一方向弁が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る一方向弁の、一実施形態を示す分解斜視図である。
【
図3】同一方向弁を構成するバルブを示しており、(a)はその斜視図、(b)は(a)とは異なる方向から見た場合の斜視図である。
【
図4】同一方向弁を構成するバルブを示しており、(a)はその正面図、(b)は側面図である。
【
図6】同一方向弁において、バルブが弁座に当接した状態の、拡大断面図である。
【
図7】
図6の状態から、弁座からバルブが離反した状態の、拡大断面図である。
【
図8】弁座からバルブが最大限開いた状態の拡大断面図である。
【
図9】同一方向弁が適用される燃料タンクを、平面方向から見た場合の、概略構成図である。
【
図10】一方向弁の試験例を示しており、圧力とエアー流量との関係を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る一方向弁の一実施形態について説明する。
【0012】
この実施形態の一方向弁10は、
図9に示すような燃料タンク1に配置されるものとなっている。燃料タンク1の内部には、燃料タンク1への給油時に燃料液面が所定高さに達したときに、燃料蒸気の排出口を閉じる満タン規制バルブ2と、車両が急カーブして燃料液面が揺動したり、車両が横転したりしたときに、燃料の外部漏出を防ぐための、カットバルブ3と、本発明に係る一方向弁10とが配設されている。
【0013】
図9に示すように、満タン規制バルブ2と一方向弁10とが、第1配管5により連結されており、燃料タンク1の外部に配置されたキャニスタ4と一方向弁10とが、第2配管6により連結されており、一方向弁10と複数のカットバルブ3とが、第3配管7(リターン配管)により連結されている。また、前記満タン規制バルブ2とキャニスタ4との間の、第1配管5や第2配管6は、タンク1内への給油時におけるエアーを流しやすくするため、比較的、大きな径で形成されている。一方、これらの第1配管5や第2配管6に対して、第3配管7は細い径となっている。そして、タンク1が負圧時には、太い径の第1配管5等が一方向弁10で閉じられて、細い径の第3配管7から、カットバルブ3を介して燃料がタンク1内に戻されるようになっている。また、満タン規制バルブ2とキャニスタ4、カットバルブ3とキャニスタ4は、一方向弁10を介して互いに連通している。そのため、燃料タンク1内の燃料蒸気や空気等の流体や、燃料タンク1外の外部空気等の流体が、満タン規制バルブ2や、カットバルブ3、一方向弁10、各配管5,6,7を介して、燃料タンク1外のキャニスタ4へ排出されたり、或いは、燃料タンク1内に導入されるようになっている。
【0014】
上記のように、この実施形態の一方向弁10は、燃料タンク1の内外に配設された配管途中であって、かつ、燃料タンク1内に配置されているが、その配置箇所は特に限定されるものではない。
【0015】
そして、
図1や
図5に示すように、この実施形態における一方向弁10は、燃料タンク1内に連通する第1接続管24、燃料タンク1外に連通する第2接続管34、及び、第1接続管24側に設けられた弁座25を有する、バルブケース15と、バルブケース15内にスライド可能に配置されるバルブ50と、バルブケース15内の第2接続管34側に配置され、バルブ50を弁座25に向けて付勢するスプリングSとを有している。
【0016】
図1に示すように、前記バルブケース15は、第1接続管24を有する第1ケース20と、キャニスタ接続管33及び第2接続管34を有する第2ケース30と、カットバルブ接続管47を有する第3ケース40とで構成されている。
【0017】
図1や
図5に示すように、第1ケース20は、略円盤状をなした基部21と、この基部21の外周縁から延設した略円筒状をなした筒状部22とを有する、略有底筒状をなしている。また、筒状部22の外周であって、その軸方向途中には、環状をなした接合部22aが設けられている。更に、基部21の中央には、円形の第1開口23が形成されている。この基部21の外側(バルブ50が配置される空間R1(
図5参照)とは反対側)であって、第1開口23の周縁から、略円筒状をなし外周に複数の環状突部を設けた、第1接続管24が延設されている。この第1接続管24に、燃料タンク1内の満タン規制バルブ2に連結された第1配管5が接続されるようになっている。
【0018】
また、基部21の内側(バルブ50が配置される空間R1に向く側)であって、第1開口23の周縁から、バルブ50が接離する弁座25が突設されている。
図6に示すように、この弁座25の周面には、基部21の内面側であって、かつ、前記第1開口23の周縁から、筒状部22の、基部21とは反対側の開口に向けて拡径する、傾斜角度の異なる複数のテーパ面25a,25bが形成されている。そして、第1開口23寄りの第1テーパ面25aと、それに隣接した第2テーパ面25bとの境界部に、
図6~8に示すようにバルブ50が接離するようになっている。なお、弁座25の周面の形状としては、例えば、円弧状面や、一つの傾斜面からなる形状としてもよく、特に限定はされない。
【0019】
一方、第2ケース30は、天井壁31a及び周壁31bを有し、天井壁31aとは反対側が開口した、略四角枠状をなしたケース本体31を有している。周壁31bの開口部側の端部外周からは、四角枠状をなした接合部31cが突設されている。
【0020】
また、
図1に示すように、天井壁31a及び周壁31bの外側からは、略円筒状をなし、外周に複数の環状突部を設けた、キャニスタ接続管33が延設されている。このキャニスタ接続管33に、燃料タンク1外のキャニスタ4に連結された第2配管6が接続されるようになっている。
【0021】
更に
図1に示すように、天井壁31a及び周壁31bの外側であって、キャニスタ接続管33とは反対側からは、略円筒状をなした第2接続管34が延設されている。この第2接続管34の延出方向先端側外周からは、略環状板状をなした基部35が広がっており、この基部35の外周縁から、略円筒状をなした筒状部36が延出している。この筒状部36の延出方向先端には、環状をなした接合部36aが突設されている。
【0022】
この接合部36aが、第1ケース20の接合部22aに、溶着や接着等により互いに接合されることで、
図5に示すように、第1ケース20と第2ケース30とが接合される。この際、第1ケース20の基部21及び筒状部22、第2ケース30側の基部35及び筒状部36で囲まれて、その内部にバルブ50をスライド可能に配置する空間R1が画成される。なお、第2ケース30の筒状部36の内周に、第1ケース20の筒状部22が配置される。この状態では、第1ケース20の第1接続管24と、第2ケース30の第2接続管34との、軸心が同一となっている。
【0023】
また、前記第2接続管34は、その一端側がケース本体31内に連通していると共に、他端側が、第2開口34aを介して、前記空間R1に連通している。したがって、燃料蒸気や外部空気等の流体は、第2接続管34や、空間R1、キャニスタ接続管33を通過して、燃料タンク内外を流通可能となっている。なお、上述したように、第2接続管34の軸心は、第1接続管24の軸心と同一となっているが、キャニスタ接続管33の軸心に対しては位置ずれしている。
【0024】
また、第2接続管34の他端側には、前記基部35の内面側から空間R1側に向けて突出した、バネ支持突部34bが設けられており、スプリングSの一端が支持される。
【0025】
なお、この実施形態においては、第2接続管34が、ケース本体31に連結されて一体化しているが、例えば、第2接続管34を、燃料タンク1外のキャニスタ4に連結された第2配管6に、直接接続するような構成としてもよい。
【0026】
図1や
図5に示すように、第3ケース40は、前記第2ケース30と適合するように、底壁41及び周壁43を有し、底壁41とは反対側が開口した、略四角形の有底枠状をなしている。また、周壁43の開口部側の端部外周からは、四角枠状をなした接合部43aが突設されている。この接合部43aが、第2ケース30の接合部31cに、溶着や接着等により互いに接合されることで、
図5に示すように、第2ケース30と第3ケース40とが接合されて、空間R2が画成されるようになっている。また、
図5に示すように、底壁41には、燃料を液体と気体とに分離するための、所定形状をなした隔壁45が立設している。
【0027】
更に、底壁41の外側の所定箇所からは、前記第2ケース30の第2接続管34の延出方向と同一方向に延びる、カットバルブ接続管47が延設されている。このカットバルブ接続管47に、燃料タンク1内のカットバルブ3に連結された第3配管7が接続されるようになっている。
【0028】
次に、バルブ50について、
図3や、
図4、
図6等を参照して説明する。
【0029】
この実施形態のバルブ50は、弁座25に接離するバルブ本体51を有している。また、バルブ本体51は、外周が凸曲面状をなした凸曲面部53を有すると共に、先端側が閉塞された形状をなしており、
図6~8に示すように、凸曲面部53が弁座25に接離するようになっている。このバルブ50は、バルブ本体51の先端55や凸曲面部53を、弁座25側に向けて、バルブケース15内の空間R1にスライド可能に配置される。
【0030】
より具体的には、バルブ本体51は、外周が所定曲率の曲面状をなし、弁座25側に向けて凸となった、凸曲面部53を有している。この凸曲面部53の先端55が、バルブ50の軸方向(バルブ50のスライド方向)に対して直交する平坦面状をなしている。また、バルブ本体51は、凸曲面部53の基端側が拡径して開口すると共に(
図3(b)参照)、先端55が縮径し且つ平坦面状にカットされた、略球面カップ状をなしている。なお、バルブ本体51としては、例えば、先端55を平坦面状にカットせず、丸みを帯びた球面とした略半球カップ状としたり、略三角錐状としたりしてもよく、凸曲面部53が弁座25に接離可能であればよい。
【0031】
更に、凸曲面部53の基端側周縁から、外径方向に向けて環状に広がる、環状フランジ部57が突設されている。
図4(b)や
図6に示すように、環状フランジ部57の、先端55側の外面には、第2接続管34側に向けて次第に広がるように傾斜するテーパ面59が形成されている。一方、
図3(b)や
図6に示すように、環状フランジ部57の外面とは反対側の内面には、バルブ50の軸方向に対して直交する、平坦面61が形成されている。
【0032】
また、
図3や
図4に示すように、環状フランジ部57の外周には、バルブケース15の軸方向に延びて、バルブケース15の内周(ここでは、第1ケース20の筒状部22の内周)に摺接可能なリブ状をなしたガイド部63が、複数設けられている。すなわち、複数のガイド部63は、凸曲面部53の外周から、直接設けられたものではなく、環状フランジ部57を介して軸方向に延びる構成となっている。また、この実施形態においては、環状フランジ部57の外周に、周方向に均等な間隔を空けて、複数のガイド部63が設けられている。この実施形態では、4個のガイド部63が設けられているが、例えば、3個や、5個以上設けてもよい。
【0033】
各ガイド部63は、環状フランジ部57を境にして、第1接続管24側及び第2接続管34側にそれぞれ延びた形状をなしている。具体的には、環状フランジ部57を境にして、その外面側(テーパ面59側)から第1接続管24側に向けて延びる、第1ガイド片64と、環状フランジ部57を境にして、その内面側(平坦面61側)から第1接続管24側に向けて延びる、第2ガイド片65とを有している。また、各ガイド部63の内周には、連結部66が設けられており、この連結部66を介して環状フランジ部57の外周に、各ガイド部63が連結されている。
【0034】
更に、第1ガイド片64は、第2ガイド片65よりも、軸方向長さが短く、かつ、バルブ本体51の先端55に至らない長さで延びている(
図4(b)参照)。なお、
図8に示すように、弁座25からバルブ50が離反する方向にスライドしたときに、第2ガイド片65が、第2ケース30の基部35の内面に当接して、バルブ50のそれ以上のスライドが規制されるようになっている。第2ガイド片65は、また、
図4(a)に示すように、各ガイド部63の外周面は、円弧状にやや丸みを帯びた形状をなしていると共に、環状フランジ部57の外周縁から、やや出っ張るように設けられている。
【0035】
更に
図3(b)や
図6に示すように、凸曲面部53の内面側からは、略円筒状をなしたバネ支持筒部67が突設されている。このバネ支持筒部67の外周に、スプリングSの他端が外装されて支持される。また、バネ支持筒部67の延出方向先端面であって、周方向に対向する箇所からは、一対のバネ支持リブ67a,67aが延設されている。これらの一対のバネ支持リブ67a,67aは、バネ支持筒部67により支持されたスプリングSの傾きを抑制する。
【0036】
そして、この一方向弁10においては、環状フランジ部57の外周とバルブケース15の内周との間の流路面積をAとし、第1接続管24の流路面積をBとしたとき、A≦Bとなるように構成されている。
【0037】
この実施形態では、
図6に示すように、バルブケース15の軸方向Cに直交する断面における、外周が円形状をなした環状フランジ部57の外周と、内周が円形状をなした第1ケース20の筒状部22の内周との間に形成される、環状隙間の総面積(環状隙間の周方向全周に亘る面積)を、流路面積Aとする。また、バルブケース15の軸方向Cに直交する断面における、第1接続管24の内径側の面積を、流路面積Bとする。こうした場合に、A≦Bとなるように構成されている。
【0038】
更に、前記Bを1としたとき、前記Aは0.5~1とされていることが好ましい。Aが0.5未満だと、環状フランジ部57の外周とバルブケース15の内周との隙間が狭くなるので、同隙間を流体が流れるときの圧力損失が高くなりやすい。一方、Aが1を超えると、環状フランジ部57の外周とバルブケース15の内周との隙間が広くなるので、燃料蒸気等の流体の圧力を環状フランジ部57が受けにくくなり、バルブ50が弁座25から開きにくくなる。
【0039】
そして、
図6に示すように、バルブ50は、常時はスプリングSに付勢されて、バルブ本体51の凸曲面部53が弁座25に当接して、第1開口23を閉塞するようになっている。この状態で、例えば、燃料タンク1内の圧力が上昇すると、燃料蒸気等の流体が第1接続管24を通過して、スプリングSの付勢力に抗してバルブ50が押圧されると、弁座25から凸曲面部53が離反する。すると、
図7に示すように、流体は、主として第1接続管24から第1開口23を通過して、弁座25とバルブ本体51との隙間を通り、バルブ本体51の先端55側から凸曲面部53に沿って流れると共に、凸曲面部53の基端外周に設けた環状フランジ部57にぶつかって、バルブ50を弁座25から更に離反する方向に押圧するようになっている。なお、燃料タンク1の圧力が平常に戻った場合には、スプリングSによりバルブ50が押圧されて、凸曲面部53が弁座25に再び当接して、第1開口23を閉塞する。
【0040】
次に、上記構成からなる一方向弁10の作用効果について説明する。
【0041】
図6に示すように、バルブ50は、常時はスプリングSに付勢されて、バルブ本体51の凸曲面部53が弁座25に当接して、第1開口23を閉塞している。このとき、バルブ本体51の外周が、凸曲面状をなした凸曲面部53を有しているため、この凸曲面部53が弁座25に、いわば線接触に近い形で接触するようになっている。ここでは、凸曲面部53は、弁座25の第1テーパ面25aと第2テーパ面25bとの境界部に線接触する。
【0042】
この状態で、例えば、燃料タンク1内の圧力が上昇すると、燃料蒸気等の流体が第1接続管24を通って、スプリングSの付勢力に抗してバルブ50を押圧するので、
図7に示すように、弁座25から凸曲面部53が離反する。このとき、上述したように、バルブ本体51の凸曲面部53が弁座25に線接触に近い形で接触するようになっているので、バルブ本体51が押圧されると、弁座25からバルブ本体51がスムーズに離れて、弁座25とバルブ本体51との隙間から流体がバルブケース15の空間R1内に流入する。
【0043】
このとき、この一方向弁10においては、バルブ本体51の、凸曲面部53の基端側周縁から、環状フランジ部57が突設されており、環状フランジ部57の外周とバルブケース15の内周との間の流路面積をAとし、第1接続管24の流路面積をBとしたとき、A≦Bとなるように構成されている(
図6参照)。そのため、第1接続管34を介して、弁座25とバルブ本体51の隙間から、バルブケース15内の空間R1に流入した流体は、
図7に示すように、主として、バルブ本体51の先端55側から凸曲面部53に沿って流れて、凸曲面部53の基端側周縁の環状フランジ部57にぶつかることとなる。その結果、環状フランジ部57に流体の圧力が作用しやすくなるので、弁座25とバルブ50のバルブ本体51との隙間を広げることができ、弁座25からバルブ50を開きやすくすることができ、流体の流量が増えても圧力損失(圧損)の少ない一方向弁10を得ることができる。
【0044】
なお、仮に、A>Bの場合には、環状フランジ部57が小さいので、流体の圧力が作用しにくくなり、弁座25とバルブ本体51との隙間が大きく開きにくくなるため、圧力損失が多くなる。
【0045】
また、上記のように、バルブケース15の空間R1内に流入した流体は、第2開口34a、第2接続管34、空間R2、キャニスタ接続管33、第2配管6を通過して、キャニスタ4へと送られて、燃料タンク1内の圧力が低下するようになっている。
【0046】
更に、この実施形態においては、
図4(b)や
図6に示すように、環状フランジ部57の、先端55側の外面には、第2接続管34側に向けて次第に広がるように傾斜するテーパ面59が設けられている。そのため、弁座25とバルブ本体51との隙間から、流体がバルブケース15内に流入したときに、凸曲面部53に沿って流れて環状フランジ部57にぶつかった流体を、乱流になりにくくして、弁座25からバルブ50をより開きやすくすることができる(請求項2の効果)。
【0047】
また、この実施形態においては、第1接続管24の流路面積をBを1としたとき、環状フランジ部57の外周とバルブケース15の内周との間の流路面積Aは、0.5~1とされている。この場合、環状フランジ部57に、流体の圧力がより作用しやすくなり、弁座25からバルブ50を一層開きやすくすることができる(請求項3の効果)。
【0048】
更に、この実施形態においては、環状フランジ部57の外周に、バルブケース15の軸方向に延びて、バルブケース15の内周に摺接可能なリブ状をなしたガイド部63が、複数設けられている。そのため、バルブケース15内でバルブがスライドするときに、そのスライドをガイドしつつ、傾いたり倒れたりすることを抑制することができ、弁座25に対するバルブ50のシール性を維持することができる。また、各ガイド部63は、環状フランジ部57を境にして、第1接続管24側及び第2接続管34側にそれぞれ延びた形状をなしているので、バルブケース15内でのバルブ50のスライド時における、ガイド作用を最大限に高めることができる(請求項4の効果)。
【0049】
なお、以上説明した一方向弁において、バルブケースやバルブの形状や構造としては、上記態様に限定されるものではない。
【0050】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0051】
実施例、及び、比較例1,2の一方向弁について、圧力とエアー流量との関係を測定した。
【0052】
(実施例)
図3~8に示す態様と同一形状のバルブを有する、一方向弁を製造した。第1接続管24の内径は14.8mmであり、その流路面積B(内径側の面積)は、171.9mm
2である。また、環状フランジ部の外径は39.2mmであり、環状フランジ部の外周とバルブケースの内周との間の流路面積Aは126mm
2となっている(A≦B)。
【0053】
(比較例1)
環状フランジ部の外径が異なる以外は、実施例と同様の構造をなした、比較例1の一方向弁を製造した。環状フランジ部の外径は38.3mmであり、環状フランジ部の外周とバルブケースの内周との間の流路面積Aは181mm2となっており、第1接続管24の流路面積Bの171.9mm2よりも大きくなっている(A>B)。
【0054】
(比較例2)
環状フランジ部を向けない構成とした以外は、実施例と同様の構造をなした、比較例2の一方向弁を製造した。バルブ本体の最大外径は31.4mmであり、バルブ本体の基端側の外周とバルブケースの内周との間の流路面積は380mm2となっている。
【0055】
(試験方法)
実施例、及び、比較例1,2の各一方向弁のそれぞれについて、所定の試験用タンクにセットし、第1接続管側からエアーを流通させて、弁座からバルブが開くときの圧力との関係を測定した。ここでは、エアー流量を上昇させつつ、弁座からバルブが開くときの圧力を測定している。その結果が
図10に示されている。
【0056】
(試験結果)
図10に示すように、比較例2の一方向弁は、エアー流量の増大に伴って、バルブ開き時の圧力も増大しており、バルブが開きにくいことがわかる。それにより、圧力損失が大きい。一方、比較例1の一方向弁は、比較例2の一方向弁に比べて、エアー流量の増大に伴うバルブ開き時の圧力損失は小さい。これらの比較例1,2に対して、実施例の一方向弁は、エアー流量の増大に伴って、バルブ開き時の圧力が0.28kPa前後に至るまでは増大するが、エアー流量がそれ以上増大した場合には、バルブ開き時の圧力が低下することがわかる。すなわち、環状フランジ部を設けたこと、及び、環状フランジ部外周とバルブケース内周との間の流路面積をAとし、第1接続管の流路面積をBとしたとき、A≦Bとなるように構成したことによる、効果を確認できた。
【符号の説明】
【0057】
1 燃料タンク
10 一方向弁
15 バルブケース
20 第1ケース
24 第1接続管
25 弁座
30 第2ケース
34 第2接続管
40 第3ケース
50 バルブ
51 バルブ本体
53 凸曲面部
55 先端
57 環状フランジ部
59 テーパ面
63 ガイド部
S スプリング