(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】トランスファ装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/08 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
B29D30/08
(21)【出願番号】P 2019166456
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 謙介
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-047585(JP,A)
【文献】特開昭61-237625(JP,A)
【文献】特開昭63-059524(JP,A)
【文献】特開2000-177026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドバンドの径方向外側に配置され、前記トレッドバンドの外周面に当接する第1の位置と前記トレッドバンドの前記外周面から離れた第2の位置との間で前記トレッドバンドの径方向に移動可能であり、前記第1の位置において前記トレッドバンドの外周面を把持する複数の把持部を備え、
前記複数の把持部は、
把持部本体と、
前記把持部本体に着脱可能であり、前記トレッドバンドの外周面に応じた把持面を有するアダプタ部材とを備え
、
前記アダプタ部材に、前記把持部本体に嵌合される嵌合溝部が形成されている、
トランスファ装置。
【請求項2】
前記アダプタ部材は、前記把持部本体に前記嵌合溝部を嵌合させるときに前記把持部本体に当接するストッパ部を備えている、
請求項1に記載のトランスファ装置。
【請求項3】
前記アダプタ部材は、
前記把持面の前記トレッドバンドの軸線に直交する断面の形状が第1のタイヤサイズの前記トレッドバンドに対応する円弧状である第1のアダプタ部材と、
前記把持面の前記トレッドバンドの軸線に直交する断面の形状が前記第1のタイヤサイズとは異なる第2のタイヤサイズに対応する円弧状である第2のアダプタ部材とを含む、
請求項1
又は請求項2に記載のトランスファ装置。
【請求項4】
前記第1のアダプタ部材の前記把持面は、前記トレッドバンドの軸線に直交する断面において前記第1のタイヤサイズの前記トレッドバンドの外周面の半径と等しい曲率半径を有し、
前記第2のアダプタ部材の前記把持面は、前記トレッドバンドの軸線に直交する断面において前記第2のタイヤサイズの前記トレッドバンドの外周面の半径と等しい曲率半径を有する、
請求項
3に記載のトランスファ装置。
【請求項5】
前記第1のアダプタ部材の前記把持面は、前記第1のタイヤサイズの前記トレッドバンドの外面形状と同じであり、
前記第2のアダプタ部材の前記把持面は、前記第2のタイヤサイズの前記トレッドバンドの外面形状と同じである、
請求項
3又は請求項
4に記載のトランスファ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造に使用されるトランスファ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造では、トレッド及びベルトなどのタイヤ構成部材が成形ドラムに巻き付けられて円筒状のトレッドバンドが成形される。一方、カーカスプライ及びインナーライナなどのタイヤ構成部材が別の成形ドラムに巻き付けられてカーカスバンドが成形された後に、カーカスバンドの両端部にビードが組み付けられると共にビード周りにカーカスバンドを折り返して円筒状のグリーンケースが成形される。
【0003】
そして、トランスファ装置によってトレッドバンドの外面が把持されてグリーンケースの径方向外側に搬送された後に、グリーンケースが径方向外側に膨出されてトレッドバンドの内面に結合されてグリーンタイヤが成形される。次いで、加硫成形機によってグリーンタイヤが加硫成形されて空気入りタイヤが製造される。
【0004】
この種のトランスファ装置として、例えば特許文献1には、周方向に間隔を置いて配置されると共に円弧状に形成された複数のセグメントが径方向に移動可能に構成されると共に、セグメントの径方向内側への移動を阻止するストッパが径方向に移動可能に構成されたトランスファ装置が開示されている。
【0005】
前記特許文献1に開示されたトランスファ装置は、トレッドバンドを把持するための複数のセグメントを備え、タイヤサイズに応じてストッパを径方向に移動させるだけで、異なるタイヤサイズのトレッドバンドを複数のセグメントで把持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
製造された空気入りタイヤは、タイヤ周方向におけるユニフォミティ(均一性)に関する特性、例えば、空気入りタイヤに一定の荷重をかけて回転させた際に空気入りタイヤと接地面との間に生じる径方向における反力のバラツキであるRFV(Radial Force Variation)特性が測定される。タイヤ周方向における均一性に関する特性は、走行時の振動及び騒音などに影響することから、タイヤ周方向における均一性を向上させることが求められている。
【0008】
前記特許文献1に記載のトランスファ装置を用いてトレッドバンドを搬送する場合、タイヤサイズによってはセグメントの内面形状とトレッドバンドの外面形状とが相異する場合がある。この場合、トレッドバンドの周方向均一性の低下が引き起こされ得る。トレッドバンドの周方向均一性の低下は、グリーンタイヤの周方向均一性を低下させ、空気入りタイヤの周方向均一性を低下させるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、トランスファ装置において、グリーンタイヤの周方向均一性を向上させて空気入りタイヤの周方向均一性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、トレッドバンドの径方向外側に配置され、前記トレッドバンドの外周面に当接する第1の位置と前記トレッドバンドの前記外周面から離れた第2の位置との間で前記トレッドバンドの径方向に移動可能であり、前記第1の位置において前記トレッドバンドの外周面を把持する複数の把持部を備え、前記複数の把持部は、把持部本体と、前記把持部本体に着脱可能であり、前記トレッドバンドの外周面に応じた把持面を有するアダプタ部材とを備え、前記アダプタ部材に、前記把持部本体に嵌合される嵌合溝部が形成されている、トランスファ装置を提供する。
【0011】
本構成により、タイヤサイズが異なるトレッドバンドを搬送する場合においても、トレッドバンドの外周面に応じた把持面を有するアダプタ部材を把持部本体に取り付けることで、アダプタ部材の把持面によってトレッドバンドの外面に沿ってトレッドバンドの外面を均一に把持することができる。したがって、トレッドバンドの内面にグリーンケースが結合されたグリーンタイヤの周方向均一性を向上させて空気入りタイヤの周方向均一性を向上させることができる。
前記アダプタ部材は、前記把持部本体に前記嵌合溝部を嵌合させるときに前記把持部本体に当接するストッパ部を備え得る。
【0012】
前記アダプタ部材は、把持面のトレッドバンドの軸線に直交する断面の形状が第1のタイヤサイズのトレッドバンドに対応する円弧状である第1のアダプタ部材と、把持面のトレッドバンドの軸線に直交する断面の形状が第1のタイヤサイズとは異なる第2のタイヤサイズに対応する円弧状である第2のアダプタ部材とを含む。
【0013】
本構成により、第1のタイヤサイズのトレッドバンドを搬送する場合に第1のアダプタ部材を把持部本体に取り付けることで、第1のタイヤサイズのトレッドバンドの外面を均一に把持することができる。第2のタイヤサイズのトレッドバンドを搬送する場合に第2のアダプタ部材を把持部本体に取り付けることで、第2のタイヤサイズのトレッドバンドの外面を均一に把持することができる。
【0014】
好ましくは、前記第1のアダプタ部材の把持面は、トレッドバンドの軸線に直交する断面において第1のタイヤサイズのトレッドバンドの外周面の半径と等しい曲率半径を有し、前記第2のアダプタ部材の把持面は、トレッドバンドの軸線に直交する断面において第2のタイヤサイズのトレッドバンドの外周面の半径と等しい曲率半径を有する。
【0015】
本構成により、第1のタイヤサイズのトレッドバンドを搬送する場合に第1のアダプタ部材の把持面全体によって第1のタイヤサイズのトレッドバンドの外面に沿ってトレッドバンドを均一に把持することができる。第2のタイヤサイズのトレッドバンドを搬送する場合に第2のアダプタ部材の把持面全体によって第2のタイヤサイズのトレッドバンドの外面に沿ってトレッドバンドを均一に把持することができる。
【0016】
好ましくは、前記第1のアダプタ部材の把持面は、第1のタイヤサイズのトレッドバンドの外面形状と同じであり、前記第2のアダプタ部材の把持面は、第2のタイヤサイズのトレッドバンドの外面形状と同じである。
【0017】
本構成により、第1のアダプタ部材を把持部本体に取り付けることで第1のタイヤサイズのトレッドバンドを均一に把持することができ、第2のアダプタ部材を把持部本体に取り付けることで第1のタイヤサイズのトレッドバンドを均一に把持することができる。トレッドバンドの均一な把持によって、グリーンタイヤの周方向均一性を向上させて空気入りタイヤの周方向均一性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るトランスファ装置によれば、グリーンタイヤの周方向均一性を向上させて空気入りタイヤの周方向均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るトランスファ装置を用いたグリーンタイヤの成形工程を示す概略図である。
【
図2】トランスファ装置の作動を示す概略図である。
【
図4】
図3に示すトランスファ装置の要部拡大図である。
【
図5】トランスファ装置の把持部を示す斜視図である。
【
図6】トランスファ装置の把持部を示す別の斜視図である。
【
図7】トランスファ装置の別の把持部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るトランスファ装置を用いたグリーンタイヤの成形工程を示す概略図である。
図1では、グリーンタイヤの成形に用いる各成形ドラムの径方向一方側のみを示している。
図1(a)は、カーカスバンド成形工程、
図1(b)は、グリーンケース成形工程、
図1(c)は、トレッドバンド成形工程、
図1(d)は、トレッドバンド搬送工程、
図1(e)は、カーカストレッド結合体成形工程、
図1(f)は、サイドウォールゴム巻付工程を示す概略図である。
【0022】
空気入りタイヤを製造するためのグリーンタイヤを成形する際には先ず、
図1(a)に示すように、第1成形ドラムD1にインナーライナ2、一対のラバーチェーファ3、カーカスプライ4が順に巻き付けられて、円筒状のカーカスバンド10が成形される。
【0023】
次に、
図1(b)に示すように、カーカスバンド10が第1成形ドラムD1かから第2成形ドラムD2に移送されて第2成形ドラムD2の外周部に保持された後に、カーカスバンド10の両側部にビード5が組み付けられると共にカーカスバンド10がビード5の周りにドラム幅方向両側に折り返されて、円筒状のグリーンケース11が成形される。
【0024】
次いで、
図1(c)に示すように、第3成形ドラムD3に第1ベルト6a、第2ベルト6b、補強ベルト7、トレッドゴム8が順に巻き付けられて、円筒状のトレッドバンド12が成形される。トレッドバンド12の内径は、カーカスバンド10の外径より大きく形成されている。
【0025】
そして、
図1(d)に示すように、グリーンケース11が、第2成形ドラムD2から一対の第4成形ドラムD4に移送されて、一対の第4成形ドラムD4間にわたって第4成形ドラムD4の外周部に保持される。一方、トレッドバンド12が、第3成形ドラムD3から一対の第4成形ドラムD4に移送されて、グリーンケース11と同軸上且つグリーンケース11の径方向外側に位置するグリーンタイヤ成形位置に保持される。
【0026】
トレッドバンド12の第3成形ドラムD3から第4成形ドラムD4への移送及びグリーンタイヤ成形位置での保持は、トレッドバンド12の外面を把持してグリーンケース11の径方向外側に搬送するトランスファ装置20によって実施される。
【0027】
トランスファ装置20によってトレッドバンド12がグリーンケース11の径方向外側に保持されると、
図1(e)に示すように、一対の第4成形ドラムD4が互いに近接されながらグリーンケース11の内側に媒体が供給されることによってグリーンケース11が径方向外側へトロイダル状に膨出されて、グリーンケース11の外面がトレッドバンド12の内面に結合されて、カーカストレッド結合体13が成形される。
【0028】
そして、
図1(f)に示すように、トランスファ装置20による保持が解除された後に、カーカストレッド結合体13にストリップ状のサイドウォールゴム9が巻き付けられて、グリーンタイヤ1が成形される。成形されたグリーンタイヤ1は、タイヤ加硫金型を備えた加硫成形機(不図示)によって加硫成形され、空気入りタイヤが製造される。
【0029】
図2は、トランスファ装置の作動を示す概略図である。
図2では、各成形ドラムの径方向一方側のみを示している。
図2(a)は、トランスファ装置の把持工程、
図2(b)は、トランスファ装置の搬送工程、
図2(c)は、トランスファ装置の保持工程を示す概略図である。
【0030】
前述したように、トランスファ装置20は、
図2(a)に示すように第3成形ドラムD3において成形されたトレッドバンド12の径方向外側に配置された後にトレッドバンド12の径方向内側に移動され、トレッドバンド12の外面を把持する。
【0031】
トランスファ装置20によってトレッドバンド12の外面が把持されると、第3成形ドラムD3の外周面が縮径されてトランスファ装置20のみによってトレッドバンド12が把持される。トランスファ装置20は、
図2(b)に示すように、把持したトレッドバンド12を第4成形ドラムD4に保持されたグリーンケース11の径方向外側に搬送する。
【0032】
トランスファ装置20によってトレッドバンド12がグリーンケース11の径方向外側に搬送されると、
図2(c)に示すように、トランスファ装置20は、トレッドバンド12をグリーンケース11の径方向外側に保持する。トランスファ装置20は、グリーンケース11をトレッドバンド12の内面に結合してカーカストレッド結合体13を成形するときトレッドバンド12の外面を把持して保持する。
【0033】
カーカストレッド結合体13が成形されると、トランスファ装置20は、タイヤ径方向外側に移動してトランスファ装置20によるトレッドバンド12の保持を解除する。トランスファ装置20による保持が解除されると、カーカストレッド結合体13にサイドウォールゴム9が巻き付けられて、グリーンタイヤ1が成形される。
【0034】
トランスファ装置20は、第3成形ドラムD3及び第4成形ドラムD4と同軸上に配置されるようにトレッドバンド12の軸線方向に移動可能に構成されている。トランスファ装置20は、トレッドバンド12を把持する把持部がトレッドバンド12の把持及び把持の解除を行うようにトレッドバンド12の径方向に移動可能に構成されている。
【0035】
図3は、トランスファ装置の側面図である。
図3では、トランスファ装置20によって把持されるトレッドバンド12の軸線方向から見たトランスファ装置20の概略図を示している。
図3に示すように、トランスファ装置20は、円筒状に形成された装置本体21と、装置本体21内に取り付けられると共にトレッドバンド12の径方向外側に環状に配置されてトレッドバンド12の外周面を把持する複数の把持部22とを備えている。
【0036】
トランスファ装置20は、装置本体21をトレッドバンド12の軸線方向に移動させる軸線方向移動機構(不図示)と、複数の把持部22をそれぞれトレッドバンド12の径方向に移動させる径方向移動機構23とを備えている。径方向移動機構23は、把持部22の外面に固定される支持部24を備える共に、支持部24をトレッドバンド12の径方向に移動させて把持部22をトレッドバンド12の径方向に移動可能に構成されている。
【0037】
把持部22は、径方向移動機構23によって、
図3において実線で示す径方向内側位置である第1の位置と、
図3において破線で示す径方向外側位置である第2の位置との間でトレッドバンド12の径方向に移動可能に構成されている。第1の位置は、把持部22がトレッドバンド12の外周面に当接してトレッドバンド12の外周面を把持する位置である。第2の位置は、把持部22がトレッドバンド12の外周面から離れてトレッドバンド12の把持を解除する位置である。
【0038】
径方向移動機構23として、把持部22の径方向内側への移動量を調整可能である径方向移動機構を用いることができる。例えば、径方向移動機構23として、把持部22の径方向内側への移動量が調整可能に構成された空圧シリンダ又は油圧シリンダを用いることができる。
【0039】
また、径方向移動機構23として、モータ及びボールネジ等を含み、モータの回転をボールネジを介して径方向移動に変換して把持部22を径方向に移動させ、モータの回転量を制御することによって把持部22の径方向内側への移動量を調整可能である径方向移動機構を用いることができる。
【0040】
複数の把持部22は、各径方向移動機構23によってトレッドバンド12の径方向内側への移動量が同一となるように移動される。複数の把持部22は、第1の位置に移動されたときにトレッドバンド12の径方向における把持部22の内面である把持面が同一円周状に配置されてトレッドバンド12の外周面を径方向外側から把持するようになっている。
【0041】
トランスファ装置20では、トレッドバンド12の周方向に8つの把持部22が等間隔に配置されている。把持部22はそれぞれ、トレッドバンド12の周方向に隣接する把持部22と間隔をあけて配置されている。8つの把持部22はそれぞれ、同様に構成されている。
【0042】
トランスファ装置20は、トランスファ装置20を総合的に制御する制御ユニット(不図示)を備える。前記制御ユニットは、前記軸線方向移動機構及び前記径方向移動機構23等の作動を制御する。前記制御ユニットは、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成されている。
【0043】
図4は、
図3に示すトランスファ装置の要部拡大図、
図5は、トランスファ装置の把持部を示す斜視図、
図6は、トランスファ装置の把持部を示す別の斜視図である。
図4から
図6に示すように、把持部22は、支持部24に固定された把持部本体25と、把持部本体25に着脱可能に取り付けられると共にトレッドバンド12の外周面に応じた把持面を有するアダプタ部材26とを備えている。
【0044】
把持部本体25は、所定の厚さを有してトレッドバンド12の軸線に直交する断面の形状が円弧状に形成されると共に、トレッドバンド12の軸線方向WDにトレッドバンド12より長く形成されている。把持部本体25は、支持部24に固定されてトレッドバンド12の径方向RDに移動される。
【0045】
アダプタ部材26は、所定の厚さを有してトレッドバンド12の軸線に直交する断面の形状が円弧状に形成されると共にトレッドバンド12の軸線方向WDに延びる把持面部27と、トレッドバンド12の周方向CDにおける把持面部27の両端部にそれぞれ固定されるガイド部28と、トレッドバンド12の軸線方向における把持面部27の一端部に固定されるストッパ部29とを備えている。アダプタ部材26は、ガイド部28及びストッパ部29が溶接等によって把持面部27に固定されて一体的に形成されている。
【0046】
把持面部27は、トレッドバンド12の外周面を把持する把持面であるトレッドバンド12の径方向RD内側の内面27aが、成形されるグリーンタイヤ1のタイヤサイズに応じたトレッドバンド12の外周面に応じた形状に形成されている。
【0047】
把持面部27の内面27aは、所定のタイヤサイズのトレッドバンド12に外面形状と同じに形成されている。把持面部27の内面27aは、トレッドバンド12の軸線に直交する断面の形状が所定のタイヤサイズのトレッドバンド12に対応する円弧状に形成され、トレッドバンド12の軸線に直交する断面において所定のタイヤサイズのトレッドバンド12の外周面の半径と等しい曲率半径を有している。
【0048】
本実施形態では、把持面部27の内面27aは、第1のタイヤサイズのトレッドバンド12に外面形状と同じに形成されている。把持面部27の内面27aは、トレッドバンド12の軸線に直交する断面の形状が第1のタイヤサイズのトレッドバンド12に対応する円弧状に形成され、トレッドバンド12の軸線に直交する断面において第1のタイヤサイズのトレッドバンド12の外周面の半径と等しい曲率半径を有している。
【0049】
ガイド部28はそれぞれ、アダプタ部材26が把持部本体25に嵌合されるように把持面部27より径方向RD外側に延びてから把持面部27の周方向CD中央側に延びる断面L字状に形成されている。アダプタ部材26には、把持面部27とガイド部28とによって把持部本体25に嵌合される嵌合溝部26aが形成されている。
【0050】
ストッパ部29は、把持部本体25にアダプタ部材26の嵌合溝部26aを軸線方向WD一方側から軸線方向他方側に嵌合させるときに、ストッパ部29が把持部本体25に当接することでアダプタ部材26を取付位置に位置決めするようになっている。
【0051】
図6に示すように、把持面部27には、締結部材としての締結ボルトBTを径方向RD内側から挿入する2つのボルト挿通穴26bが設けられている。ボルト挿通穴26bの径方向RD内側には締結ボルトBTの頭部を収容するボルト収容穴26cが設けられている。把持部本体25には、把持面部27のボルト挿通穴26bに対応してネジ穴が設けられている。
【0052】
アダプタ部材26は、把持面部27のボルト挿通穴26bを通じて締結ボルトBTを把持部本体25のネジ穴に螺合させることにより把持部22に着脱可能に取り付けられている。アダプタ部材26は、2つの締結ボルトBTを用いて取り付けられているが、1つの締結部材又は3つ以上の締結部材を用いて取り付けるようにしてもよい。
【0053】
トランスファ装置20では、複数の把持部22はそれぞれ同様に構成されている。複数の把持部22にはそれぞれ、成形されるグリーンタイヤ1のタイヤサイズに応じたアダプタ部材26が取り付けられる。
【0054】
図7は、トランスファ装置の別の把持部を示す側面図である。
図7では、
図4から
図6に示す把持部22のアダプタ部材(第1のアダプタ部材)26とは異なる把持部22のアダプタ部材(第2のアダプタ部材)26´を実線で示し、アダプタ部材26の把持面部27の内面27aを二点鎖線で示している。
【0055】
図7の実線で示す把持部22のアダプタ部材26´は、
図4から
図6に示す把持部22のアダプタ部材26を用いて成形される第1のタイヤサイズのグリーンタイヤ1とは異なる第2のタイヤサイズのグリーンタイヤを成形するためのものである。アダプタ部材26´は、アダプタ部材26と把持面部27が異なるのみであるので、把持面部27´についてのみ説明する。
【0056】
アダプタ部材26´についても、所定の厚さを有してトレッドバンド12の軸線に直交する断面の形状が円弧状に形成されると共にトレッドバンド12の軸線方向WDに延びる把持面部27´を備えている。
【0057】
把持面部27´についても、トレッドバンド12の外周面を把持する把持面であるトレッドバンド12の径方向RD内側の内面27a´が、成形されるグリーンタイヤ1のタイヤサイズに応じたトレッドバンド12の外周面に応じた形状に形成されている。
【0058】
把持面部27´の内面27a´は、所定のタイヤサイズのトレッドバンド12に外面形状と同じに形成されている。把持面部27´の内面27a´は、トレッドバンド12の軸線に直交する断面の形状が所定のタイヤサイズのトレッドバンド12に対応する円弧状に形成され、トレッドバンド12の軸線に直交する断面において所定のタイヤサイズのトレッドバンド12の外周面の半径と等しい曲率半径を有している。
【0059】
本実施形態では、把持面部27´の内面27a´は、第1のタイヤサイズとは異なる第2のタイヤサイズのトレッドバンド12に外面形状と同じに形成されている。把持面部27´の内面27a´は、トレッドバンド12の軸線に直交する断面の形状が第2のタイヤサイズのトレッドバンド12に対応する円弧状に形成され、トレッドバンド12の軸線に直交する断面において第2のタイヤサイズのトレッドバンド12の外周面の半径と等しい曲率半径を有している。
【0060】
図7に示すように、把持面部27´の内面27a´は、把持面部27の内面27aと同心円弧状に形成されているが、成形されるグリーンタイヤ1のタイヤサイズに応じて把持面部27の内面27aよりトレッドバンド12の径方向RDに小さく形成されている。
【0061】
トランスファ装置20では、複数の把持部22にそれぞれ、タイヤサイズに応じたアダプタ部材26が取り付けられ、タイヤサイズが異なるグリーンタイヤを成形するときには、タイヤサイズに応じたアダプタ部材26、26´に交換される。
【0062】
アダプタ部材26、26´の交換は、締結ボルトBTを外してからアダプタ部材26、26´を把持部本体25からトレッドバンド12の軸線方向WDに移動させて取り外し、新たなアダプタ部材を把持部本体25に嵌合させてからボルトBTを螺合させて取り付けることによって行うことができる。
【0063】
このように、タイヤサイズが異なるグリーンタイヤ1を成形する際に、タイヤサイズに応じたアダプタ部材26、26´を把持部22に交換可能に取り付けることで、アダプタ部材26、26´の把持面27a、27a´によってトレッドバンド12の外面を均一に把持することができる。
【0064】
タイヤサイズが異なるグリーンタイヤ1を成形する際に、所定サイズのトレッドバンド12の外面と同一形状を有する把持面を備えた把持部を用いる場合、所定サイズよりも大きいタイヤサイズでは、把持面における周方向両側のみによって把持することとなる一方、所定サイズよりも小さいタイヤサイズでは、把持面の周方向中央側のみによって把持することとなり、トレッドバンド12の周方向に均一に把持することができないおそれがある。
【0065】
本実施形態に係るトランスファ装置20では、タイヤサイズが異なるグリーンタイヤを成形する際に、トレッドバンド12の外周面に応じた把持面27a、27a´を有するアダプタ部材26、26´を把持部22に取り付けることで、トレッドバンド12の外面を均一に把持することができる。
【0066】
本実施形態では、アダプタ部材は、第1のタイヤサイズ用の第1のアダプタ部材26と、第2のタイヤサイズ用の第2のアダプタ部材26´とを含んでいるが、第1及び第2のタイヤサイズとは異なる他のタイヤサイズのグリーンタイヤを成形する場合、成形されるタイヤサイズのトレッドバンド12の外周面に応じた把持面を有するアダプタ部材が備えられる。
【0067】
かかる場合についても、アダプタ部材の把持面は、成形されるタイヤサイズのトレッドバンド12の外面形状と同じに形成され、トレッドバンド12の軸線に直交する断面の形状が成形されるタイヤサイズのトレッドバンド12に対応する円弧状に形成され、トレッドバンド12の軸線に直交する断面において成形されるタイヤサイズのトレッドバンド12の外周面の半径と等しい曲率半径を有する。
【0068】
グリーンタイヤ1は、トレッドバンド12にグリーンケース11が結合されたカーカストレッド結合体13が成形された後にサイドウォールゴム9が巻き付けられて成形されているが、カーカスバンド10を成形するときにサイドウォールゴム9を巻き付けて成形することも可能である。
【0069】
このように、本実施形態に係るトランスファ装置20は、トレッドバンド12の径方向外側に配置され、トレッドバンド12の外周面に当接する第1の位置とトレッドバンド12の外周面から離れた第2の位置との間でトレッドバンド12の径方向に移動可能であり、第1の位置においてトレッドバンド12の外周面を把持する複数の把持部22を備える。複数の把持部22は、把持部本体25と、把持部本体25に着脱可能であり、トレッドバンド12の外周面に応じた把持面を有するアダプタ部材26とを備える。
【0070】
これにより、タイヤサイズが異なるトレッドバンド12を搬送する場合においても、トレッドバンド12の外周面に応じた把持面27a、27a´を有するアダプタ部材26、26´を把持部本体25に取り付けることで、アダプタ部材26、26´の把持面27a、27a´によってトレッドバンド12の外面に沿ってトレッドバンド12の外面を均一に把持することができる。したがって、トレッドバンド12の内面にグリーンケース11が結合されたグリーンタイヤ1の周方向均一性を向上させて空気入りタイヤの周方向均一性を向上させることができる。
【0071】
また、アダプタ部材26、26´は、把持面27aのトレッドバンド12の軸線に直交する断面の形状が第1のタイヤサイズのトレッドバンド12に対応する円弧状である第1のアダプタ部材26と、把持面27a´のトレッドバンド12の軸線に直交する断面の形状が第1のタイヤサイズとは異なる第2のタイヤサイズに対応する円弧状である第2のアダプタ部材26´とを含む。
【0072】
これにより、第1のタイヤサイズのトレッドバンド12を搬送する場合に第1のアダプタ部材26を把持部本体25に取り付けることで、第1のタイヤサイズのトレッドバンド12の外面を均一に把持することができる。第2のタイヤサイズのトレッドバンド12を搬送する場合に第2のアダプタ部材26´を把持部本体255に取り付けることで、第2のタイヤサイズのトレッドバンド12の外面を均一に把持することができる。
【0073】
また、第1のアダプタ部材26の把持面27aは、トレッドバンド12の軸線に直交する断面において第1のタイヤサイズのトレッドバンド12の外周面の半径と等しい曲率半径を有し、第2のアダプタ部材26´の把持面27a´は、トレッドバンド12の軸線に直交する断面において第2のタイヤサイズのトレッドバンド12の外周面の半径と等しい曲率半径を有する。
【0074】
これにより、第1のタイヤサイズのトレッドバンド12を搬送する場合に第1のアダプタ部材26の把持面27a全体によって第1のタイヤサイズのトレッドバンド12の外面に沿ってトレッドバンド12を均一に把持することができる。第2のタイヤサイズのトレッドバンド12を搬送する場合に第2のアダプタ部材26´の把持面27a´全体によって第2のタイヤサイズのトレッドバンド12の外面に沿ってトレッドバンド12を均一に把持することができる。
【0075】
また、第1のアダプタ部材26の把持面27aは、第1のタイヤサイズのトレッドバンド12の外面形状と同じであり、第2のアダプタ部材26´の把持面27a´は、第2のタイヤサイズのトレッドバンド12の外面形状と同じである。
【0076】
これにより、第1のアダプタ部材26を把持部本体25に取り付けることで第1のタイヤサイズのトレッドバンド12を均一に把持することができ、第2のアダプタ部材26´を把持部本体25に取り付けることで第1のタイヤサイズのトレッドバンド12を均一に把持することができる。トレッドバンド12の均一な把持によって、グリーンタイヤ1の周方向均一性を向上させて空気入りタイヤの周方向均一性を向上させることができる。
【0077】
また、把持部22は、トレッドバンド12の内面にグリーンケース11が結合されてグリーンタイヤ1が成形されるときトレッドバンド12の外面を把持して保持する。これにより、トレッドバンド12の内面にグリーンケース11が結合されてグリーンタイヤ1が成形されるとき把持部22によってトレッドバンド12の外面が把持されて保持されるので、グリーンタイヤ1の周方向均一性を有効に向上させることができる。
【0078】
本実施形態では、8つの把持部22が環状に配置されているが、8つ以外の複数の把持部22が環状に配置されるようにしてもよい。複数の把持部22として、5、7、11、13などの素数の複数の把持部が環状に配置されるようにしてもよい。かかる場合、グリーンタイヤ1の周方向均一性をさらに向上させて空気入りタイヤの周方向均一性をさらに向上させることができる。
【0079】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 グリーンタイヤ
11 グリーンケース
12 トレッドバンド
20 トランスファ装置
22 把持部
25 把持部本体
26 第1のアダプタ部材
26´ 第2のアダプタ部材
27a、27a´ 把持面