(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】鉄筋組立システム
(51)【国際特許分類】
B21F 15/06 20060101AFI20230816BHJP
E04C 5/16 20060101ALI20230816BHJP
B21F 23/00 20060101ALI20230816BHJP
E04G 21/12 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
B21F15/06
E04C5/16
B21F23/00 D
E04G21/12 105A
(21)【出願番号】P 2019175567
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-05-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)掲載日:令和1年5月15日、掲載アドレス:https://www.smcon.co.jp/topics/2019/05151300/ (2)発行者名:株式会社日経BP、刊行物名:日経コンストラクション、号数:第717号、発行日:令和1年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506311068
【氏名又は名称】株式会社アビリカ
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】竹之井 勇
(72)【発明者】
【氏名】水田 武利
(72)【発明者】
【氏名】山下 剛
(72)【発明者】
【氏名】中村 宣芳
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-169261(JP,A)
【文献】特開平07-048931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 15/06
E04C 5/16
B21F 23/00
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物用の鉄筋組立システムであって、
組立鉄筋用コンベアと、
鉄筋を把持可能な把持アタッチメントと、
互いに交差する前記鉄筋を結束する結束アタッチメントと、
基端側が不動であり、遊端側に前記把持アタッチメント及び前記結束アタッチメントを選択的に取り付け可能なロボットアーム本体であって、前記把持アタッチメントが取り付けられた状態で前記鉄筋を前記組立鉄筋用コンベア上に配置し、前記結束アタッチメントが取り付けられた状態で前記組立鉄筋用コンベア上で互いに交差する前記鉄筋を結束するように構成された該ロボットアーム本体と、
を備え
、
前記組立鉄筋用コンベアは、前記ロボットアーム本体並びに前記把持アタッチメント及び前記結束アタッチメントによる前記鉄筋の配置及び結束作業中において、前記ロボットアーム本体の移動範囲を小さくするべく、前記ロボットアーム本体に連動するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
鉄筋組立システムであって、
組立鉄筋用コンベアと、
鉄筋を把持可能な把持アタッチメントと、
互いに交差する前記鉄筋を結束する結束アタッチメントと、
基端側が不動であり、遊端側に前記把持アタッチメント及び前記結束アタッチメントを選択的に取り付け可能なロボットアーム本体であって、前記把持アタッチメントが取り付けられた状態で前記鉄筋を前記組立鉄筋用コンベア上に配置し、前記結束アタッチメントが取り付けられた状態で前記組立鉄筋用コンベア上で互いに交差する前記鉄筋を結束するように構成された該ロボットアーム本体と、
組み立て前の前記鉄筋を貯蔵する複数の鉄筋供給機と、
前記鉄筋供給機から供給された前記鉄筋を、前記ロボットアーム本体に取り付けられた前記把持アタッチメントが把持可能な位置まで運搬する加工鉄筋用コンベアと
を備え、
前記鉄筋は、両端部が同一の方向に曲げられたフック付き鉄筋を含み、
前記フック付き鉄筋が貯蔵された前記鉄筋供給機は、前記両端部が下方を向いた状態で前記フック付き鉄筋を運搬する運搬部と、前記運搬部で運搬された前記フック付き鉄筋の前記両端部を上方に向ける供給口とを備え、
前記供給口は、前記鉄筋をスライド移動させるレールと、前記レールをスライド移動中の前記フック付き鉄筋が前記両端部において衝突することによって、前記両端部の向きを変更させる衝突体とを備えることを特徴とする
システム。
【請求項3】
鉄筋組立システムであって、
組立鉄筋用コンベアと、
鉄筋を把持可能な把持アタッチメントと、
互いに交差する前記鉄筋を結束する結束アタッチメントと、
基端側が不動であり、遊端側に前記把持アタッチメント及び前記結束アタッチメントを選択的に取り付け可能なロボットアーム本体であって、前記把持アタッチメントが取り付けられた状態で前記鉄筋を前記組立鉄筋用コンベア上に配置し、前記結束アタッチメントが取り付けられた状態で前記組立鉄筋用コンベア上で互いに交差する前記鉄筋を結束するように構成された該ロボットアーム本体と、
組み立て前の前記鉄筋を貯蔵する複数の鉄筋供給機と、
前記鉄筋供給機から供給された前記鉄筋を、前記ロボットアーム本体に取り付けられた前記把持アタッチメントが把持可能な位置まで運搬する加工鉄筋用コンベアと
を備え、
前記鉄筋は、両端部が同一の方向に曲げられたフック付き鉄筋を含み、
前記フック付き鉄筋が貯蔵された前記鉄筋供給機は、前記両端部が下方を向いた状態で前記フック付き鉄筋を運搬する運搬部と、前記運搬部で運搬された前記フック付き鉄筋を支持する供給口とを備え、
前記供給口は、ロータリーアクチュエーターによって前記鉄筋の前記両端部の向きを反転可能な鉄筋反転部を備えることを特徴とする
システム。
【請求項4】
前記組立鉄筋用コンベアは、前記ロボットアーム本体並びに前記把持アタッチメント及び前記結束アタッチメントによる前記鉄筋の配置及び結束作業中において、前記ロボットアーム本体に連動するように構成されたことを特徴とする請求項
2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記組立鉄筋用コンベアに載置されて、前記鉄筋を保持する溝を有する架台を更に備えることを特徴とする請求項1
~4の何れか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄筋組立システム、特に、鉄筋の配置及び結束を自動で行う鉄筋組立システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋を所定の位置に配置して結束する鉄筋の組立作業は、作業員による手作業で行われてきた。このような鉄筋の組立作業の効率を改善するための様々な手段が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、互いに平行に配置されかつ間隔保持線に結合された複数の鉄筋を芯材に巻き付けておき、芯材から鉄筋を引き出すことにより所定の間隔で鉄筋を配置する方法が記載されている。また、特許文献2には、結束機本体を備える自走式ロボットによって鉄筋を結束する方法が記載されている。また、特許文献3には、レールに走行可能に支持されたロボットによって、主筋に対するせん断補強筋の配置及び結束を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-37994号公報
【文献】特開2019-39170号公報
【文献】特開2013-204257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法は、施工現場での作業時間を短縮できるが、事前に鉄筋を芯材に巻き付ける作業が必要であった。特許文献2に記載の方法では、自走式であるため結束機本体の位置が安定せず、鉄筋の結束の精度が不十分となる懸念があった。特許文献3に記載の方法では、主筋の配置を作業員が手作業で行う必要があった。
【0006】
このような問題に鑑み、本発明は、鉄筋の配置及び結束の大部分を自動化でき、鉄筋を正確に配置及び結束できる鉄筋組立システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、鉄筋組立システム(1)であって、組立鉄筋用コンベア(11)と、鉄筋(20,21)を把持可能な把持アタッチメント(13)と、互いに交差する前記鉄筋を結束する結束アタッチメント(14)と、基端側が不動であり、遊端側に前記把持アタッチメント及び前記結束アタッチメントを選択的に取り付け可能なロボットアーム本体(15)であって、前記把持アタッチメントが取り付けられた状態で前記鉄筋を前記組立鉄筋用コンベア上に配置し、前記結束アタッチメントが取り付けられた状態で前記組立鉄筋用コンベア上で互いに交差する前記鉄筋を結束するように構成された該ロボットアーム本体と、を備えることを特徴とする。鉄筋組立システムは、コンクリート構造物用であり、前記組立鉄筋用コンベアは、前記ロボットアーム本体並びに前記把持アタッチメント及び前記結束アタッチメントによる前記鉄筋の配置及び結束作業中において、前記ロボットアーム本体の移動範囲を小さくするべく、前記ロボットアーム本体に連動するように構成されると良い。
【0008】
この構成によれば、ロボットアーム本体の基端側が不動であるため、ロボットアーム本体に取り付けられた把持アタッチメント及び結束アタッチメントの座標を正確に把握できる。このため、組み立てるべき鉄筋の配置及び結束を正確に行うことができる。
【0009】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記組立鉄筋用コンベアに載置されて、前記鉄筋を保持する溝(46)を有する架台(12)を更に備えることを特徴とする。
【0010】
架台の溝に鉄筋が配置されることにより、配置される鉄筋の位置の正確性が向上する。
【0011】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、組み立て前の前記鉄筋を貯蔵する複数の鉄筋供給機(9,61)と、前記鉄筋供給機から供給された前記鉄筋を、前記ロボットアーム本体に取り付けられた前記把持アタッチメントが把持可能な位置まで運搬する加工鉄筋用コンベア(11)とを更に備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、鉄筋供給機によって作業効率を上げることができ、加工鉄筋用コンベアによって、ロボットアームの動きの負担を減らすことができる。
【0013】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記鉄筋は、両端部が同一の方向に曲げられたフック付き鉄筋(20,21)を含み、前記フック付き鉄筋が貯蔵された前記鉄筋供給機(9)は、前記両端部が下方を向いた状態で前記フック付き鉄筋を運搬する運搬部(24)と、前記運搬部で運搬された前記フック付き鉄筋の前記両端部を上方に向ける供給口(25)とを備え、前記供給口は、前記鉄筋をスライド移動させるレール(33)と、前記レールをスライド移動中の前記フック付き鉄筋が前記両端部において衝突することによって、前記両端部の向きを変更させる衝突体(34)とを備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、鉄筋のフック状の両端部の向きを所定の方向に揃えることができる。
【0015】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成に代えて、前記鉄筋は、両端部が同一の方向に曲げられたフック付き鉄筋(20,21)を含み、前記フック付き鉄筋が貯蔵された前記鉄筋供給機(61)は、前記両端部が下方を向いた状態で前記フック付き鉄筋を運搬する運搬部(62)と、前記運搬部で運搬された前記フック付き鉄筋を支持する供給口(63)とを備え、前記供給口は、ロータリーアクチュエーターによって前記鉄筋の前記両端部の向きを反転可能な鉄筋反転部(69)を備えることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、鉄筋のフック状の両端部の向きを上方又は下方に揃えることができる。
【0017】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記組立鉄筋用コンベアは、前記ロボットアーム本体並びに前記把持アタッチメント及び前記結束アタッチメントによる前記鉄筋の配置及び結束作業中において、前記ロボットアーム本体に連動するように構成されたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、組立鉄筋用コンベアとロボットアーム本体との連動により、ロボットアーム本体の移動距離が短くなり、ロボットアーム本体への負荷を低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、鉄筋の配置及び結束の大部分を自動化でき、鉄筋を正確に配置及び結束できるシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係る鉄筋組立システムが設置された工場を示す模式的斜視図
【
図2】実施形態に係る鉄筋組立システムを示す斜視図
【
図3】実施形態に係る鉄筋組立システムによって組み立てられた鉄筋を含む鉄筋コンクリート部材(A:平面図、B:正面図)
【
図4】実施形態に係る鉄筋組立システムによって組み立てられた鉄筋を含む鉄筋コンクリート部材の配筋図
【
図5】実施形態に係る鉄筋組立システムの鉄筋供給機及び加工鉄筋用コンベアを示す正面図
【
図6】実施形態に係る鉄筋組立システムの鉄筋供給機及び加工鉄筋用コンベアの変形例を示す正面図
【
図7】実施形態に係る鉄筋組立システムの把持アタッチメントを示す正面図
【
図8】実施形態に係る鉄筋組立システムの結束アタッチメントを示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る鉄筋組立システム1について説明する。鉄筋組立システム1は、例えば、コンクリート床版等を構成するプレキャストコンクリート部材の鉄筋の組立に用いられ、特に、鉄道用のコンクリート床版を構成する軌道スラブ8の鉄筋3(
図3及び
図4参照)のように、同一構造のものが多数製造されるプレキャストコンクリート部材の鉄筋の組立に好適である。軌道スラブ8上には、鉄道車両が走行するためのレールが固定される。
【0022】
図1は、鉄筋組立システム1が配置された工場2を示す模式的な斜視図である。工場2には、鉄筋3等の資材を仮置きする資材仮置きエリア4と、鉄筋3を組み立てる鉄筋組立エリア5と、組立済みの鉄筋3を仮置きする組立鉄筋仮置きエリア6とが設けられている。資材仮置きエリア4から鉄筋組立エリア5、及び鉄筋組立エリア5から組立鉄筋仮置きエリア6への資材等の運搬は、門型クレーン7によってなされる。
【0023】
鉄筋組立エリア5では、
図3及び
図4に示すプレキャストコンクリート部材である軌道スラブ8の鉄筋3を組み立てる。軌道スラブ8の鉄筋3は、上筋及び下筋の2段に配置される。
図1に示すように、鉄筋組立エリア5は、鉄筋組立システム1が配置されて、上筋及び下筋のそれぞれの主要部が組み立てられる第1エリア5aと、残りの鉄筋3を組み立てるとともに、上筋と下筋のフック状両端部を結束し合体させる第2エリア5bとを備える。
【0024】
図2は、第1エリア5aに配置された鉄筋組立システム1を示す斜視図である。鉄筋組立システム1は、組立て前の鉄筋3を貯蔵して供給する複数の鉄筋供給機9と、鉄筋供給機9から供給された鉄筋3を運搬する加工鉄筋用コンベア10と、組立鉄筋用コンベア11と、組立鉄筋用コンベア11に載置された架台12と、鉄筋3を把持可能な把持アタッチメント13と、互いに交差する鉄筋3を結束する結束アタッチメント14(
図8参照)と、基端側が不動であり、遊端側に把持アタッチメント13及び結束アタッチメント14を選択的に取り付け可能なロボットアーム本体15とを備える(
図2の左方の鉄筋供給機9及び加工鉄筋用コンベア10は図示を省略している)。ロボットアーム本体15に、把持アタッチメント13又は結束アタッチメント14を取り付けることによってロボットアーム16が構成される。ロボットアーム16は、把持アタッチメント13が取り付けられた状態において、加工鉄筋用コンベア10によって運搬されてきた鉄筋3を把持して、組立鉄筋用コンベア11上の架台12に載置し、結束アタッチメント14が取り付けられた状態において、組立鉄筋用コンベア11上の架台12に支持された鉄筋3の互いに交差する部分を結束する。
【0025】
図3及び
図4に示すように、軌道スラブ8は、平面視において概ね矩形の外輪郭を有し、中央で上下に貫通する開口17と、長手方向の両端縁の中央に設けられた切欠き18とを有し、埋め込み栓19が設けられている。鉄筋3は、長手方向に延在する縦筋20と、短手方向に延在する横筋21と、開口17及び切欠き18の近傍に配置された補強筋22とを含む。縦筋20及び横筋21は、主要部の延在方向に対して両端部の短い区間が互いに同方向に90°曲がってフック状になったフック付き鉄筋である。
図1に示すように、第1エリア5aにおいて、上筋及び下筋のそれぞれについて、鉄筋組立システム1によって自動で縦筋20及び横筋21を組み立て、第2エリア5bにおいて作業員によって手作業で補強筋22を追加するとともに上筋と下筋のフック状に曲がった部分を結束し合体させる。
【0026】
図5は、鉄筋供給機9及び加工鉄筋用コンベア10を示す正面図である。鉄筋供給機9は、複数設けられており、縦筋20及び横筋21は、その形状(長さ)毎に互いに異なる鉄筋供給機9に貯蔵されている。鉄筋供給機9は、鉄筋3を貯蔵する貯蔵部23と、貯蔵部23から鉄筋3を受け取って加工鉄筋用コンベア10に向けて運搬する運搬部24と、運搬部24で運搬された鉄筋3の両端部を上方に向ける供給口25と、供給口25で両端部の向きが変更された鉄筋3を加工鉄筋用コンベア10に移動させる移動部26とを備える。
【0027】
貯蔵部23は、運搬部24に向かって下方に傾斜し、互いに平行な1対の第1レール27を備える。鉄筋3は、第1レール27に直交するように第1レール27上に載置され、自重によって運搬部24までスライド移動する。
【0028】
運搬部24は、互いに平行な1対の無限軌道28を備える。無限軌道28は、チェーン29と、チェーン29の外周縁から外方に突出する複数の突起30と、チェーン29に嵌合する1対のスプロケット31と、スプロケット31を回転させる動力源32とを備える。貯蔵部23から供給された鉄筋3は、無限軌道28上に直交するように載置され、無限軌道28の移動方向に沿って互いに隣り合う突起30間に1本ずつ配置される。チェーン29及びスプロケット31代えて、ベルト及びプーリが使用されてもよい。
【0029】
供給口25は、加工鉄筋用コンベア10に向かって下方に傾斜し、互いに平行な1対の第2レール33と、1対の第2レール33の外側の側方かつ延在方向の下端近傍の下方に配置された衝突体34と、1対の第2レール33の下端に連結した保持部35とを備える。運搬部24から供給された鉄筋3は、第2レール33に直交するように載置されて、自重によって加工鉄筋用コンベア10に向かってスライド移動する。自重によって下方を向いているフック状の両端部は、衝突体34に衝突することによって、その向きが変わる。保持部35は、鉄筋3を下方から支持する底部36と、底部36の上方に位置し、鉄筋3の両端部を支持する2対の支持体37とを備える。対をなす支持体37は、鉄筋3の直径以上の幅で互いに離間しており、底部36に支持された鉄筋3の両端部が上方に向くように、第2レール33から底部36に落とし込まれる鉄筋3のフック状の両端部をガイドする。衝突体34及び支持体37は、鉄筋3の延在方向に平行な軸に回りに回転可能なローラーであることが好ましい。
【0030】
移動部26は、アーム部38と、アーム部38の先端に取り付けられたクランプ39とを備える。底部36及び支持体37に支持された鉄筋3をクランプ39が把持し、アーム部38が動くことにより、鉄筋3を平行移動させて加工鉄筋用コンベア10に載置された加工鉄筋用架台40上に載置する。加工鉄筋用架台40は、鉄筋3を保持する溝41を有し、鉄筋3と溝41を構成する壁面との摩擦力によって、鉄筋3のフック状の両端部が上方を向いた状態が維持される。
【0031】
加工鉄筋用コンベア10及び組立鉄筋用コンベア11は、例えば、ローラーコンベアである。加工鉄筋用コンベア10は、鉄筋供給機9から供給された縦筋20及び横筋21を、把持アタッチメント13を取り付けた状態のロボットアーム16が把持できる位置まで運搬する。組立鉄筋用コンベア11は、鉄筋3の組み立て中にロボットアーム16に連動するとともに、ロボットアーム16で組み立てた鉄筋3を第2エリア5bに運搬する。
【0032】
図6は、変形例に係る鉄筋供給機61を示す。
図5に示すものと共通の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。鉄筋供給機61は、貯蔵部23と、貯蔵部23から鉄筋3を受け取って加工鉄筋用コンベア10に向けて運搬する運搬部62と、運搬部62で運搬された鉄筋3の両端部の向きを変える供給口63と、鉄筋3を加工鉄筋用コンベア10に移動させる移動部70~73とを備える。
【0033】
運搬部62は、貯蔵部23から受け取った鉄筋3を運搬する無限軌道部64と、無限軌道部64から鉄筋3を1本ずつ受け取って供給口63まで運搬する鉄筋切り出し部65とを備える。無限軌道部64は、突起30(
図5参照)がない点を除いて上記実施形態の運搬部24(
図5参照)と同様の構成を備える。鉄筋切り出し部65は、全体として斜め上方に向かう階段状の固定側切り出し部66と、階段状をなして固定側切り出し部66に支持された鉄筋3を斜め上方に向かってスライド移動させるようにエアシリンダー等のアクチュエーター67によって上下動する可動側切り出し部68とを備える。固定側切り出し部66と可動側切り出し部68の階段状の上面は、無限軌道部64から供給口63に至るように、斜め上方へ向かう部分と斜め下方に向かう部分とが繰り返されて全体として斜め上方に向かっている。
【0034】
供給口63は、鉄筋3のフック状両端部を上方に向かせるべく鉄筋3の両端部近傍に配置されたロータリーアクチュエーター等の鉄筋反転部69を含む。なお、鉄筋3のフック状両端部を下方に向けて鉄筋3を組み立てたい場合は、鉄筋反転部69は鉄筋3のフック状両端部を反転させずに下方に向けたままにする。
【0035】
移動部70~73は、鉄筋反転部69で反転された鉄筋3を把持して姿勢を維持する鉄筋チャック70を上端部に含むリフター71を備え、リフター71は、下部のリフターシリンダー72と、リフターシリンダー72に対して上下動する上部73とを備える。リフター71が鉄筋チャック70を上下動させることにより、鉄筋3が加工鉄筋用コンベア10に移動する。
【0036】
図7は、把持アタッチメント13を示す正面図である。
図7に示すように、把持すべき鉄筋3の長さに応じて交換できるように、複数の把持アタッチメント13が用意されている。把持アタッチメント13は、ロボットアーム本体15に取り付けられる取付部42と、鉄筋3を把持する1又は複数のクランプ43と、取付部42及びクランプ43を互いに接続する連結部44とを備える。
図7(A)に示す把持アタッチメント13は、軌道スラブ8(
図3及び
図4参照)の長手方向の略全長に渡って延在する縦筋20を把持するものであり、連結部44は、把持する鉄筋3と略平行に延在する形鋼等の長尺材を含み、クランプ43は、互いに略等間隔に4つ配置されている。
図7(B)に示す把持アタッチメント13は、軌道スラブ8(
図3及び
図4参照)の短手方向の略全長に渡って延在する横筋21を把持するものであり、連結部44は、把持する鉄筋3と略平行に延在する形鋼等の長尺材を含み、2つのクランプ43が連結部44の両端部に配置されている。
図7(C)に示す把持アタッチメント13は、開口17及び切欠き18(
図3及び
図4参照)の間に配置される縦筋20や、切欠き18及び軌道スラブ8の側縁(
図3及び
図4参照)の間に配置される横筋21等の短い鉄筋3を把持するものであり、1つのクランプ43を備える。
【0037】
工場2の床には、フレーム45(
図1参照)が立設されており、フレーム45の天井は、組立鉄筋用コンベア11の上方を部分的に覆っている。フレーム45の天井に、ロボットアーム本体15の基端側が固定されている。また、ロボットアーム本体15は、把持アタッチメント13が把持した鉄筋3を移動できるように複数の関節を備えるとともに、遊端部分において所定の軸回りに回転可能である。ロボットアーム本体15は、把持された鉄筋3が常に水平になり、遊端部分が鉛直方向を軸に回転するように制御されることが好ましい。なお、ロボットアーム本体15の遊端部分が回転可能であることに代えて、把持アタッチメント13の連結部44が取付部42に対して回転可能であってもよい。
【0038】
図2に示すように、把持アタッチメント13が取り付けられた状態のロボットアーム16は、加工鉄筋用コンベア10によって運搬されてきた鉄筋3を、自動で把持して組立鉄筋用コンベア11上に載置された架台12に載置するように制御される。この時、ロボットアーム16の移動範囲を小さくするため、組立鉄筋用コンベア11がロボットアーム16に連動する。また、架台12には、鉄筋3を所定の位置に保持する溝46が設けられており、鉄筋3は溝46に嵌合して、鉄筋3のフック状の両端部が上方または下方を向いた状態が保持される。
【0039】
図8は、結束アタッチメント14を示す縦断面図である。
図8に示すように、結束アタッチメント14は、ロボットアーム本体15に取り付けられる取付部47と、結束機本体48と、取付部47に結束機本体48を固定する固定部49とを備える。結束機本体48として、作業員が携帯して使用する市販の鉄筋結束機を使用できる。結束機本体48は、固定部49に固定されるグリップ50と、トリガー51と、トリガー51を引くようにレバー53を動かす、またはトリガー信号を電気的に結束機本体48に入力することでワイヤーを鉄筋3に巻き付けてねじる先端結束部52とを備える。
【0040】
結束アタッチメント14が取り付けられた状態のロボットアーム16は、組立鉄筋用コンベア11上で互いに交差する鉄筋3を自動で結束するように制御される。すなわち、結束機本体48の先端結束部52を鉄筋3の交差部に挿し入れた後、トリガー51を引く、またはトリガーON信号を入力する制御が繰り返し行われる。この時、ロボットアーム16の移動範囲を小さくするため、組立鉄筋用コンベア11がロボットアーム16に連動する。
【0041】
鉄筋3の組み立て手順について説明する。まず、門型クレーン7によって鉄筋組立エリア5の第1エリア5aに運搬された縦筋20及び横筋21は、作業員によって、その形状ごとに互いに異なる鉄筋供給機9に配置される。縦筋20及び横筋21は、1本ずつ、鉄筋供給機9から加工鉄筋用コンベア10上の加工鉄筋用架台40に載置され、加工鉄筋用コンベア10によって把持アタッチメント13が取り付けられたロボットアーム16が把持できる位置まで運搬され、ロボットアーム16によって組立鉄筋用コンベア11上の架台12に移される。なお、架台12に配置する縦筋20及び横筋21の長さに応じて把持アタッチメント13は適切な大きさのものに交換される。
【0042】
目的の縦筋20及び横筋21の全てが架台12上に載置された後、ロボットアーム本体15に取り付けられるアタッチメントは、把持アタッチメント13から結束アタッチメント14に交換される。結束アタッチメント14を取り付けた状態のロボットアーム16によって、架台12上の縦筋20及び横筋21の互いに交差している部分が結束される。
【0043】
結束が終わると、組み立てられた縦筋20及び横筋21は、組立鉄筋用コンベア11によって第2エリア5bに運搬され、作業員によって、補強筋22が組立済みの縦筋20及び横筋21に追加して配置及び結束される。鉄筋3の両端部が上方を向いた下筋の結束完了後、結束アタッチメント14を把持アタッチメント13に交換し、鉄筋3の両端部が下方に向いた上筋を下筋と同様に架台12に載置する。再度把持アタッチメント13から結束アタッチメント14に交換し下筋同様上筋の縦筋20と横筋21の互いに交差した部分を結束する。上筋の結束が終わると組立鉄筋用コンベア11によって第2エリア5bに搬送され作業員によって、補強筋22が組み立て済みの縦筋20および横筋21に追加して配置及び結束され、軌道スラブ8用の組立済みの鉄筋3となる。組立済みの鉄筋3は、門型クレーン7によって組立鉄筋仮置きエリア6に運搬される。
【0044】
このように構成された鉄筋組立システム1では、ロボットアーム16の基端側が固定されて工場2に対して不動であるため、ロボットアーム本体15に取り付けられた把持アタッチメント13及び結束アタッチメント14の座標を明確に把握することができる。このため、組み立てるべき鉄筋3の配置及び結束を正確に行うことができる。なお、カメラ又はセンサー(図示せず)を併用して、把持アタッチメント13及び結束アタッチメント14の架台12又は鉄筋3に対する位置の調整を行ってもよい。また、架台12の溝46に鉄筋3を配置することによって、配置される鉄筋3の位置の正確性が向上する。
【0045】
組立鉄筋用コンベア11がロボットアーム16に連動するため、鉄筋3の配置及び結束時にロボットアーム16が移動する距離が短くなり、ロボットアーム16への負荷が低減され、作業時間が短縮される。
【0046】
両端部がフック状に曲がった鉄筋3を使用する場合でも、鉄筋供給機9の衝突体34及び保持部35によって両端部が上方に向けられ、加工鉄筋用架台40及び架台12の溝41,46によってその向きを維持することができる。また、変形例においては、鉄筋供給機61の鉄筋反転部69によって、鉄筋3の両端部を下に向けたままにするか、上方に向けて反転させるかを選択できる。
【0047】
鉄筋供給機9によって、縦筋20及び横筋21が自動で供給されるため、作業効率が上がる。また、縦筋20及び横筋21の長さ毎に互いに異なる鉄筋供給機9を使用しても、加工鉄筋用コンベア10によって、鉄筋供給機9によって供給された縦筋20及び横筋21が運搬され、ロボットアーム16の可動範囲を大きくしなくても把持アタッチメント13が縦筋20及び横筋21を把持できる。
【0048】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本発明は、軌道スラブ以外のプレキャストコンクリートや現場打ちコンクリートの鉄筋の組立にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1:鉄筋組立システム
3:鉄筋
9,61:鉄筋供給機
10:加工鉄筋用コンベア
11:組立鉄筋用コンベア
12:架台
13:把持アタッチメント
14:結束アタッチメント
15:ロボットアーム本体
20:縦筋
21:横筋
22:補強筋
24,62:運搬部
25,63:供給口
26,70~73:移動部
28:無限軌道
33:第2レール(レール)
34:衝突体
69:鉄筋反転部