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特許7332411鉄筋結束機接続構造及び鉄筋結束ロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】鉄筋結束機接続構造及び鉄筋結束ロボット
(51)【国際特許分類】
   B21F 15/06 20060101AFI20230816BHJP
   E04C 5/16 20060101ALI20230816BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20230816BHJP
   E04G 21/12 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
B21F15/06
E04C5/16
B25J11/00 A
E04G21/12 105E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019175568
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021049568
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-05-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)掲載日:令和1年5月15日、掲載アドレス:https://www.smcon.co.jp/topics/2019/05151300/ (2)発行者名:株式会社日経BP、刊行物名:日経コンストラクション、号数:第717号、発行日:令和1年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506311068
【氏名又は名称】株式会社アビリカ
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】竹之井 勇
(72)【発明者】
【氏名】水田 武利
(72)【発明者】
【氏名】山下 剛
(72)【発明者】
【氏名】中村 宣芳
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189834(JP,A)
【文献】特開2019-136809(JP,A)
【文献】特開2019-039170(JP,A)
【文献】中国実用新案第206510061(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 15/06
E04C 5/16
B25J 11/00
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット本体と、鉄筋を結束する結束機本体とを互いに接続する鉄筋結束機接続構造であって、
前記ロボット本体及び前記結束機本体の一方に固定される第1固定部と、
前記第1固定部に対して所定の方向に位置し、前記ロボット本体及び前記結束機本体の他方に固定される第2固定部と、
前記第1固定部及び前記第2固定部を互いに連結する連結部と
を備え、
前記連結部は、前記第1固定部及び前記第2固定部に取り付けられて前記結束機本体からの反動及び前記結束機本体と前記鉄筋との相互位置ズレを吸収する反動位置ズレ吸収部材と、前記第1固定部に対する前記第2固定部の相対変位を選択的に規制する規制構造とを備え
前記反動位置ズレ吸収部材は、螺旋状に巻かれたワイヤーロープを含むヘリカル防振器、又は圧縮コイルばねを備え、
前記規制構造は、前記第1固定部に変位可能に取り付けられた第1係合部材と、前記第2固定部に取り付けられて、前記第1係合部材が係脱可能な第2係合部材とを備えることにより、前記第1固定部に対する前記第2固定部の相対変位を選択的に規制し、
前記第1係合部材及び前記第2係合部材の一方が、前記所定の方向に直交する方向に形成された凹部を備え、
前記第1係合部材及び前記第2係合部材の他方が、前記凹部に係合可能な凸部を備え、
前記第1係合部材は、前記所定の方向に直交する方向に変位することにより前記第2係合部材に係脱し、
前記凹部は、底部に向かうにつれて前記所定の方向の幅が縮小していることを特徴とする鉄筋結束機接続構造。
【請求項2】
前記ロボット本体と、前記結束機本体と、請求項1に記載の鉄筋結束機接続構造とを備える鉄筋結束ロボットであって、
前記結束機本体を移動させる時に、前記規制構造は前記第1固定部に対する前記第2固定部の相対変位を規制し、前記鉄筋の結束時に、前記規制構造は前記第1固定部に対する前記第2固定部の相対変位を許容するように構成された制御装置を備えることを特徴とする鉄筋結束ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボット本体と鉄筋を結束する結束機本体とを互いに接続する鉄筋結束機接続構造、及び該接続構造を備えた鉄筋結束ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋を所定の位置に配置して結束する鉄筋の組立作業は、作業員による手作業で行われてきた。このような鉄筋の組立作業の効率を改善するための様々な手段が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、結束機本体を備える自走式ロボットによって鉄筋を結束する方法が記載されている。また、特許文献2には、レールに走行可能に支持されたロボットによって、主筋に対するせん断補強筋の配置及び結束を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-39170号公報
【文献】特開2013-204257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄筋結束用ロボットの結束機本体として、市販のハンドガンタイプの結束機が使用される。市販のハンドガンタイプの結束機は、作業員が把持して、結束するべき鉄筋に先端結束部を沿わせた状態でトリガーを引くと、ワイヤーが先端結束部から射出されて鉄筋に巻きつきねじられることにより鉄筋を結束する。ワイヤーの射出等に伴い、作業員に反動が伝わる。このような結束機を鉄筋結束用ロボットに装着すると、結束機の反動を吸収できずロボットに負荷を与え故障の原因となるとともに、結束機が鉄筋に倣わないため結束が不完全となる。
【0006】
このような問題に鑑み、本発明は、ロボット本体と結束機本体とを互いに接続する鉄筋結束機接続構造において、結束工程における結束機本体からロボット本体への負荷を軽減するとともに、鉄筋位置のバラツキに対し結束機が追従するように位置自由度を持たせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、ロボット本体(15)と、鉄筋(20,21)を結束する結束機本体(48)とを互いに接続する鉄筋結束機接続構造(61)であって、前記ロボット本体及び前記結束機本体の一方に固定される第1固定部(62)と、前記第1固定部に対して所定の方向に位置し、前記ロボット本体及び前記結束機本体の他方に固定される第2固定部(63)と、前記第1固定部及び前記第2固定部を互いに連結する連結部(64)とを備え、前記連結部は、前記第1固定部及び前記第2固定部に取り付けられて前記結束機本体からの反動及び前記結束機本体と前記鉄筋との相互位置ズレを吸収する反動位置ズレ吸収部材(65)と、前記第1固定部に対する前記第2固定部の相対変位を選択的に規制する規制構造(66)とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、結束工程では、規制構造による規制を解除することにより、反動位置ズレ吸収部材が結束に伴う結束機本体の反動及び鉄筋と結束機の位置ずれを吸収して、ロボット本体への負荷を軽減するとともに、鉄筋に結束機が倣う位置自由度を持たせている。また、結束機本体を移動させる時は、規制構造によって第1固定部に対する第2固定部の相対変位を規制することにより、ロボット本体の接続部に対する結束機本体の相対位置が固定され、結束機本体を目的の位置に正確に配置することができる。
【0009】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記規制構造は、前記第1固定部に変位可能に取り付けられた第1係合部材(74)と、前記第2固定部に取り付けられて、前記第1係合部材が係脱可能な第2係合部材(75)とを備えることにより、前記第1固定部に対する前記第2固定部の相対変位を選択的に規制することを特徴とする。ここで「係脱可能」とは、係合することと係合状態から離脱することとが可能であることを意味する。
【0010】
この構成によれば、第1係合部材及び第2係合部材の互いの係脱という簡易な構造で規制構造を形成できる。
【0011】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記第1係合部材及び前記第2係合部材の一方が、前記所定の方向に直交する方向に形成された凹部(76)を備え、前記第1係合部材及び前記第2係合部材の他方が、前記凹部に係合可能な凸部(77)を備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、凹部及び凸部という簡易な構造で規制構造を形成できる。
【0013】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記第1係合部材は、前記所定の方向に直交する方向に変位することにより前記第2係合部材に係脱することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第1係合部材の変位の方向が反動位置ズレ吸収部材の変形の主方向(所定の方向)に直交するため、第1係合部材の変位の距離を比較的短くしても、結束工程における結束機本体からの反動によって第2係合部材が離脱中の第1係合部材に衝突しないように構成できる。
【0015】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記凹部は、底部に向かうにつれて前記所定の方向の幅が縮小していることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、凹部の所定の方向の幅が底部に向かうにつれ縮小していることにより、反動位置ズレ吸収部材が結束機本体の反動を吸収したことによって生じる第2係合部材の第1係合部材に対する所定の方向への振動が継続していても、その振動が所定の範囲以内であれば、凸部を凹部に挿入して第1係合部材を第2係合部材に係合させることができる。このため、作業速度を向上させることができる。
【0017】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、前記ロボット本体と、前記結束機本体と、上記構成の何れかの鉄筋結束機接続構造とを備える鉄筋結束ロボット(16)であって、前記結束機本体を移動させる時に、前記規制構造は前記第1固定部に対する前記第2固定部の相対変位を規制し、前記鉄筋の結束時に、前記規制構造は前記第1固定部に対する前記第2固定部の相対変位を許容するように構成された制御装置を備えることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、移動時に第1固定部に対する第2固定部の相対位置を固定することにより、結束機本体を目的の位置に正確に配置でき、結束時にその固定を解除して反動位置ズレ吸収部材の変形を伴う第1固定部材及び第2固定部材間の相対変位を許容することにより、ロボット本体への負荷を軽減するとともに、鉄筋と結束機の相対位置ズレを吸収し結束を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、結束工程における結束機本体からロボット本体への負荷を軽減するとともに、鉄筋位置バラツキや結束位置ティーチング誤差による鉄筋結束緩みを受動的に軽減できる鉄筋結束機接続構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】鉄筋組立システムが設置された工場を示す模式的斜視図
図2】鉄筋組立システムを示す斜視図
図3】鉄筋組立システムによって組み立てられた鉄筋を含む鉄筋コンクリート部材(A:平面図、B:正面図)
図4】鉄筋組立システムによって組み立てられた鉄筋を含む鉄筋コンクリート部材の配筋図
図5】実施形態に係る鉄筋結束機接続構造を示す縦断面図(図6のV-V断面)
図6】実施形態に係る鉄筋結束機接続構造を示す横断面図(図5のVI-VI断面)
図7】実施形態に係る鉄筋結束機接続構造が適用されたアームロボットの機能構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1は、鉄筋組立システム1が配置された工場2を示す模式的な斜視図である。工場2には、鉄筋3等の資材を仮置きする資材仮置きエリア4と、鉄筋3を組み立てる鉄筋組立エリア5と、組立済みの鉄筋3を仮置きする組立鉄筋仮置きエリア6とが設けられている。資材仮置きエリア4から鉄筋組立エリア5、及び鉄筋組立エリア5から組立鉄筋仮置きエリア6への資材等の運搬は、門型クレーン7によってなされる。
【0023】
鉄筋組立エリア5では、図3及び図4に示すプレキャストコンクリート部材である軌道スラブ8の鉄筋3を組み立てる。軌道スラブ8の鉄筋3は、上筋及び下筋の2段に配置される。図1に示すように、鉄筋組立エリア5は、鉄筋組立システム1が配置されて、上筋及び下筋のそれぞれの主要部が組み立てられる第1エリア5aと、残りの鉄筋3を組み立てる第2エリア5bとを備える。
【0024】
図2は、第1エリア5aに配置された鉄筋組立システム1を示す斜視図である。鉄筋組立システム1は、組立て前の鉄筋3を貯蔵して供給する複数の鉄筋供給機9と、鉄筋供給機9から供給された鉄筋3を運搬する加工鉄筋用コンベア10と、組立鉄筋用コンベア11と、組立鉄筋用コンベア11に載置された架台12と、鉄筋3を把持可能な把持アタッチメント13と、互いに交差する鉄筋3を結束する結束アタッチメント14(図5参照)と、基端側が不動であり、遊端側に把持アタッチメント13及び結束アタッチメント14を選択的に取り付け可能なロボットアーム本体15とを備える(図2の左方の鉄筋供給機9及び加工鉄筋用コンベア10は図示を省略している)。ロボットアーム本体15に、把持アタッチメント13又は結束アタッチメント14を取り付けることによってロボットアーム16が構成される。ロボットアーム16は、把持アタッチメント13が取り付けられた状態において、加工鉄筋用コンベア10によって運搬されてきた鉄筋3を把持して、組立鉄筋用コンベア11上の架台12に載置し、結束アタッチメント14が取り付けられた状態において、組立鉄筋用コンベア11上の架台12に支持された鉄筋3の互いに交差する部分を結束する。
【0025】
図3及び図4に示すように、軌道スラブ8は、平面視において概ね矩形の外輪郭を有し、中央で上下に貫通する開口17と、長手方向の両端縁の中央に設けられた切欠き18とを有し、埋め込み栓19が設けられている。鉄筋3は、長手方向に延在する縦筋20と、短手方向に延在する横筋21と、開口17及び切欠き18の近傍に配置された補強筋22とを含む。縦筋20及び横筋21は、主要部の延在方向に対して両端部の短い区間が互いに同方向に90°曲がってフック状になったフック付き鉄筋である。図1に示すように、第1エリア5aにおいて、上筋及び下筋のそれぞれについて、鉄筋組立システム1によって自動で縦筋20及び横筋21を組み立て、第2エリア5bにおいて作業員によって手作業で補強筋22を追加する。
【0026】
図2に示すように、鉄筋供給機9は、複数設けられており、縦筋20及び横筋21は、その形状(長さ)毎に互いに異なる鉄筋供給機9に貯蔵される。鉄筋供給機9は、加工鉄筋用コンベア10に縦筋20及び横筋21を1本ずつ供給する。
【0027】
加工鉄筋用コンベア10及び組立鉄筋用コンベア11は、例えば、ローラーコンベアである。加工鉄筋用コンベア10は、鉄筋供給機9から供給された縦筋20及び横筋21を、把持アタッチメント13を取り付けた状態のロボットアーム16が把持できる位置まで運搬する。組立鉄筋用コンベア11は、鉄筋3の組み立て中にロボットアーム16に連動するとともに、ロボットアーム16で組み立てた鉄筋3を第2エリア5bに運搬する。
【0028】
工場2の床には、フレーム45(図1参照)が立設されており、フレーム45の天井は、組立鉄筋用コンベア11の上方を部分的に覆っている。フレーム45の天井に、ロボットアーム本体15の基端側が固定されている。また、ロボットアーム本体15は、把持アタッチメント13が把持した鉄筋3を移動できるように複数の関節を備えるとともに、遊端部分において所定の軸回りに回転可能である。ロボットアーム本体15は、把持された鉄筋3が常に水平になり、遊端部分が鉛直方向を軸に回転するように制御されることが好ましい。
【0029】
図2に示すように、把持アタッチメント13が取り付けられた状態のロボットアーム16は、加工鉄筋用コンベア10によって運搬されてきた鉄筋3を、自動で把持して組立鉄筋用コンベア11上に載置された架台12に載置するように制御される。この時、ロボットアーム16の移動範囲を小さくするため、組立鉄筋用コンベア11がロボットアーム16に連動する。また、架台12には、鉄筋3を所定の位置に保持する溝46が設けられており、鉄筋3と溝46を構成する壁面によって、鉄筋3のフック状の両端部が所定の方向を向いた状態が維持される。
【0030】
図5及び図6は、結束アタッチメント14を示す縦断面図及び横断面図である。図5及び図6に示すように、結束アタッチメント14は、結束機本体48と、結束機本体48をロボットアーム本体15に接続する鉄筋結束機接続構造(以下、「接続構造」と記す)61とを備える。
【0031】
結束機本体48は、固定部49に固定されるグリップ50と、トリガー51と、トリガー51が引かれるか又はそれに相当する電気信号を入力することによりワイヤーを鉄筋3に巻き付けてねじる先端結束部52とを備える。
【0032】
接続構造61は、ロボットアーム本体15に固定される第1固定部62と、第1固定部62に対して所定の方向に位置し、結束機本体48に固定される第2固定部63と、第1固定部62及び第2固定部63を互いに連結する連結部64とを備える。連結部64は、第1固定部62及び第2固定部63に取り付けられて、主としてその所定の方向に変形して結束機本体48からの反動を吸収するとともに、鉄筋3と結束機本体48の相対位置ズレを吸収するフレキシブル接続構造の反動位置ズレ吸収部材65と、第1固定部62に対する第2固定部63の相対変位を選択的に規制する規制構造66とを備える。以下、「所定の方向」を鉛直方向として説明する。
【0033】
第1固定部62は、水平方向に延在し、ロボットアーム本体15に直接又は他の部材67を介して締結具等によって固定される第1平板68を備える。第2固定部63は、水平方向に延在する第2平板69と、直接又は他の部材70を介して締結具等によって第2平板69に固定され、結束機本体48のグリップ50を挟持する2対のロッド71と、ロッド71に取り付けられて、結束機本体48のトリガー51を引くためのレバー53又はそれに相当する電気信号入力端子とを備える。
【0034】
2つ1組で3組の反動位置ズレ吸収部材65が、第1平板68及び第2平板69の間に設けられている。3組の反動位置ズレ吸収部材65は、互いの中心を結んだ線が1つの三角形を構成する位置に配置される。各々の反動位置ズレ吸収部材65として、例えば、不二ラテックス株式会社から市販されているヘリカル防振器を使用することができる。ヘリカル防振器は、鉛直方向に延在する1対のリテーナー72と、1対のリテーナー72に螺旋状に巻きつけられて拘束されたワイヤーロープ73とを備える。1対のリテーナー72の一方の上端が第1平板68に締結具等によって固定され、1対のリテーナー72の他方の下端が第2平板69に締結具等によって固定される。ヘリカル防振器は、ワイヤーロープ73が変形することでスプリングとして機能して反動を吸収する。また、変形する際にワイヤーロープ73の素線がすれて、この摩擦によりヘリカル防振器の伸びと縮み時に反力が異なるヒステリシス現象が生じ、これがダンパーとして機能する。反動位置ズレ吸収部材65として、ダンパー機能を有さないもの、例えば圧縮コイルばねを使用してもよい。
【0035】
規制構造66は、第1平板68に変位可能に取り付けられた3つの第1係合部材74と、第2平板69から上方に延出して柱形状をなし、第1係合部材74が係脱(係合及び離脱)可能な1つの第2係合部材75とを備える。横断面視で、第2係合部材75を中心として、その回りに3つの第1係合部材74が互いに等間隔で配置されている。各々の第1係合部材74は、第2係合部材75を中心として、反動位置ズレ吸収部材65に対して周方向にずれていることが好ましい。第2係合部材75は、その側面に3つの凹部76が形成されており、各々の第1係合部材74には、凹部76に係合可能な凸部77が形成されている。3つの第1係合部材74が、互いに連動して、第2係合部材75に近接離間するように水平方向に沿って変位することにより、凸部77が凹部76に対して係脱する。凹部76及び凸部77は、縦断面視で三角形をなし、凹部76は、底部に向かうにつれ鉛直方向の幅が縮小し、凸部77は、凹部76に補完的な形状をなし、先端に向かうにつれ鉛直方向の幅が縮小している。第1係合部材74は空気圧によって変位するが、他の動力で変位してもよい。
【0036】
結束アタッチメント14が取り付けられた状態のロボットアーム16は、組立鉄筋用コンベア11上で互いに交差する鉄筋3を自動で結束するように制御される。すなわち、結束機本体48の先端結束部52を鉄筋3の交差部に挿し入れた後、トリガー51を引くようにレバー53を動かすか又はそれに相当する電気信号を入力する制御が繰り返し行われる。この時、ロボットアーム16の移動範囲を小さくするため、組立鉄筋用コンベア11がロボットアーム16に連動する。
【0037】
ロボットアーム16に搭載された制御装置78は、アタッチメント判定部79を備え、ロボットアーム本体15に取り付けられたアタッチメントを判定する。また、制御装置78は、把持アタッチメント13のクランプ43の座標、及び結束アタッチメント14の結束機本体48の先端結束部52の座標を認識する座標認識部80を備える。なお、カメラ81で撮影された画像等に基づいて、算出された座標を修正してもよい。制御装置78は、取り付けられたアタッチメント及び算出された座標に基づいて、ロボットアーム本体15、クランプ43、レバー53及び第1係合部材74を制御する(図7参照)。
【0038】
鉄筋3の組み立て手順について説明する。まず、門型クレーン7によって鉄筋組立エリア5の第1エリア5aに運搬された縦筋20及び横筋21は、作業員によって、その形状ごとに互いに異なる鉄筋供給機9に配置される。縦筋20及び横筋21は、1本ずつ、鉄筋供給機9から加工鉄筋用コンベア10上の加工鉄筋用架台40に載置され、加工鉄筋用コンベア10によって把持アタッチメント13が取り付けられたロボットアーム16が把持できる位置まで運搬され、ロボットアーム16によって組立鉄筋用コンベア11上の架台12に移される。なお、架台12に配置する縦筋20及び横筋21の長さに応じて把持アタッチメント13は適切な大きさのものに交換される。
【0039】
目的の縦筋20及び横筋21の全てが架台12上に載置された後、ロボットアーム本体15に取り付けられるアタッチメントは、把持アタッチメント13から結束アタッチメント14に交換される。結束アタッチメント14を取り付けた状態のロボットアーム16によって、架台12上の縦筋20及び横筋21の互いに交差している部分が結束される。ロボットアーム16の移動中は、第1係合部材74を第2係合部材75に係合させる。このため、ロボットアーム本体15の遊端に対する結束機本体48の相対位置は変化しない。このため、結束機本体48の先端結束部52を目的の位置に正確に配置できる。結束機本体48の先端結束部52を結束すべき鉄筋3に沿わせた後、第1係合部材74を第2係合部材75から離脱させて、第1固定部62及び第2固定部63間の力が、反動位置ズレ吸収部材65を介して伝わるようにする。その後、レバー53によってトリガー51を引き、又はそれに相当する電気信号を入力して鉄筋3を結束する。この時、ワイヤーを射出すること等による結束機本体48からの反動は、反動位置ズレ吸収部材65の変形によって吸収されるとともに、鉄筋交差部に先端結束部52は確実に倣い結束不良を防止する。その後、第1係合部材74を第2係合部材75に係合させた後、他の結束させるべき部分に結束機本体48の先端結束部52を移動させる。凸部77及び凹部76が、縦断面視で互いに補完的な三角形状をなすため、結束機本体48からの反動によって生じる第2係合部材75の第1係合部材74に対する鉛直方向の振動が続いていても、その振動が、凹部76の表面側の鉛直方向幅よりも小さければ、第1係合部材74を第2係合部材75に係合させることができる。
【0040】
結束が終わると、組み立てられた縦筋20及び横筋21は、組立鉄筋用コンベア11によって第2エリア5bに運搬され、作業員によって、補強筋22が組立済みの縦筋20及び横筋21に追加して配置及び結束される。組立済みの鉄筋3は、門型クレーン7によって組立鉄筋仮置きエリア6に運搬される。
【0041】
このように構成された接続構造61では、結束機本体48の移動中は、第1係合部材74を第2係合部材75に係合させて、ロボットアーム本体15の遊端に対する結束機本体48の相対位置を固定することにより、結束機本体48を結束すべき鉄筋3に対して正確な位置に配置できる。
【0042】
結束時には、第1係合部材74の第2係合部材75への係合を解除することにより、結束機本体48の反動は反動位置ズレ吸収部材65を介して第1固定部62に伝わる。このため、ワイヤーの射出等の結束工程における結束機本体48からの反動や先端結束部52と鉄筋3の相互位置ズレは反動位置ズレ吸収部材65に吸収され、ロボットアーム本体15への負荷を低減できる。
【0043】
凸部77を備える第1係合部材74及び凹部76を備える第2係合部材75を互いに係脱させることにより規制構造66を構成できるため、規制構造66を簡素化できる。
【0044】
第1係合部材74の変位の方向が反動位置ズレ吸収部材65の変形の主方向に直交するため、第1係合部材74の変位の距離を比較的短くしても、結束工程における結束機本体48からの反動によって第2係合部材75が離脱中の第1係合部材74に衝突しないように構成できる。
【0045】
凹部76の鉛直方向の幅が底部に向かうにつれ縮小し、凸部77の鉛直方向の幅が先端に向かうにつれ縮小していることにより、第2係合部材75の第1係合部材74に対する鉛直方向への振動や位置ズレが継続していても、その振動や位置ズレの幅が凹部76の表面側における鉛直方向の幅以下であれば、凸部77を凹部76に挿入して第1係合部材74を第2係合部材75に係合させることができる。このため、作業速度を向上させることができる。
【0046】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本発明は、軌道スラブ以外のプレキャストコンクリートや現場打ちコンクリートの鉄筋の組立にも適用できる。第1固定部が結束機本体を固定し、第2固定部がロボットアーム本体に固定されてもよい。第1係合部材が凹部を備え、第2係合部材が凸部を備えてもよい。本発明は、アーム形状以外のロボットと結束機本体との接続に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
3:鉄筋
14:結束アタッチメント
15:ロボットアーム本体(ロボット本体)
16:ロボットアーム(ロボット)
20:縦筋
21:横筋
48:結束機本体
50:グリップ
51:トリガー
52:先端結束部
53:レバー
61:鉄筋結束機接続構造
62:第1固定部
63:第2固定部
64:連結部
65:反動位置ズレ吸収部材
66:規制構造
74:第1係合部材
75:第2係合部材
76:凹部
77:凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7