(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/629 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
H01R13/629
(21)【出願番号】P 2019188573
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 好裕
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-122942(JP,A)
【文献】特開2018-063918(JP,A)
【文献】特開2001-076811(JP,A)
【文献】特開平11-026070(JP,A)
【文献】特開平11-297409(JP,A)
【文献】特開平08-162211(JP,A)
【文献】特開2018-073674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 13/40-13/72
H01R 24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに嵌合可能に設けられた第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに回転開始位置と回転完了位置の間で回転自在に設けられたレバーと、
前記レバーの回転開始位置から回転完了位置への回転によって前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの間に引き込む力を作用させ、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングを嵌合させる引き込み手段とを備え、
前記レバーは、前記第1ハウジングに回転自在に支持される回転支持部をそれぞれ有する一対のアーム部と、一対の前記アーム部の前記回転支持部より一端側を連結する操作部と、一対の前記アーム部の前記回転支持部より他端側を連結する連結部とを有
し、
前記引き込み手段は、前記第2ハウジングの嵌合室の開口一端側に設けられた受け部と、前記レバーに設けられ、前記受け部に引っ掛けられる引掛部とを有し、
前記第1ハウジングを前記第2ハウジングの嵌合室に挿入する過程で、回転開始位置に位置する前記レバーの前記引掛部が前記第2ハウジングの受け部に引っ掛かる位置がハウジング引き込み開始位置であり、
前記レバーには、前記第1ハウジングに設けられた係止突起部に係止される係止アームが係止解除方向にたわみ変形可能に設けられており、
前記回転開始位置では、前記係止アームと前記引掛部とが前記係止突起部を挟み込む位置に位置し、前記レバーの回転開始位置から回転完了位置への回転が規制されており、
前記ハウジング引き込み開始位置では、前記第2ハウジングに設けられた係止解除部によって前記係止アームと前記係止突起部との係止が解除されて、前記レバーが、前記回転完了位置側に回転可能とされるコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジング引き込み
開始位置では、前記嵌合室の中間位置に前記レバーの前記回転支持部が位置する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記受け部は、突起形状であり、前記引掛部は、前記受け部が入り込む凹部を有する請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバーを備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来例のコネクタは、第1ハウジングと、第1ハウジングに嵌合可能に設けられた第2ハウジングと、第1ハウジングに回転開始位置と回転完了位置の間で回転自在に設けられたレバーと、コネクタ引き込み手段とを備えている。
【0003】
レバーは、回転支持部をそれぞれ有する一対のアーム部と、一対のアーム部の一端側同士を連結する操作部とを有する。
【0004】
ハウジング引き込み手段は、第2ハウジングに設けられたカムピンと、レバーに設けられ、回転開始位置で第2ハウジングのカムピンに係合する引き込み溝とを有する。そして、レバーの回転開始位置から回転完了位置回転への回転によって第1ハウジングと第2ハウジングの間に引き込む力を作用させ、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングを嵌合させる。いわゆる「てこの原理」でレバーを低操作力で操作することによってコネクタ嵌合できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来例では、レバーの一対のアーム部の他端側が自由端であるため、強度が弱い構造である。従って、レバーの薄肉化を図ることができないため、コネクタの大型化の要因となっていた。
【0007】
又、レバー成形時の樹脂収縮等によって、一対のアーム部の他端同士の間隔が狭くなる方向に変位し、レバーを第1ハウジングに組付ける作業が悪くなる虞れがある。レバーへの外力の作用等によって、一対のアーム部の他端同士の間隔が広くなる方向に変位し、第1ハウジングに組付けたレバーが第1ハウジングより脱落する虞れがある。
【0008】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、小型化を図ることができ、且つ、レバーの第1ハウジングへの組付け性が良く、レバーの第1ハウジングからの脱落を防止できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様に係るコネクタは、第1ハウジングと、第1ハウジングに嵌合可能に設けられた第2ハウジングと、第1ハウジングに回転開始位置と回転完了位置の間で回転自在に設けられたレバーとを備えている。その上、レバーの回転開始位置から回転完了位置への回転によって第1ハウジングと第2ハウジングの間に引き込む力を作用させ、第1ハウジングと第2ハウジングを嵌合させる引き込み手段とを備えている。そして、レバーは、第1ハウジングに回転自在に支持される回転支持部をそれぞれ有する一対のアーム部と、一対のアーム部の回転支持部より一端側を連結する操作部と、一対のアーム部の回転支持部より他端側を連結する連結部とを有する。
【0010】
前記引き込み手段は、前記第2ハウジングの嵌合室の開口一端側に設けられた受け部と、前記レバーに設けられ、前記受け部に引っ掛けられる引掛部とを有する。そして、前記第1コネクタを前記第2ハウジングの嵌合室に挿入する過程で、回転開始位置に位置する前記レバーの前記引掛部が前記第2ハウジングの受け部に引っ掛かる位置がハウジング引き込み開始位置である。このハウジング引き込み開始位置では、前記嵌合室の中間位置に前記レバーの前記回転支持部が位置することが好ましい。
【0011】
前記受け部は、突起形状であり、前記引掛部は、前記受け部が入り込む凹部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型化を図ることができ、且つ、レバーの第1ハウジングへの組付け性が良く、レバーの第1ハウジングからの脱落を防止できるコネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の一例を示すコネクタの分解斜視図である。
【
図2】本実施形態の一例を示し、(a)は第1コネクタの上方から見た斜視図、(b)は第1コネクタの下方から見た斜視図である。
【
図3】本実施形態の一例を示し、(a)は第2コネクタの前面図、(b)は(a)のIII-III線断面図である。
【
図4】本実施形態の一例を示し、(a)、(b)はそれぞれ見る方向が異なるレバーの斜視図である。
【
図5】本実施形態の一例を示し、レバーを第1ハウジングの回転開始位置にセットした上面図である。
【
図6】本実施形態の一例を示し、(a)は第1ハウジングを第2ハウジングの嵌合室に挿入し、引き込み開始位置にセットした状態の正面図、(b)は(a)のVI-VI線断面図である。
【
図7】本実施形態の一例を示し、(a)はレバーを回転開始位置から回転完了位置側に回転途中の正面図、(b)は(a)のVII-VII線断面図である。
【
図8】本実施形態の一例を示し、(a)はレバーを回転完了位置まで回転した状態の正面図、(b)は(a)のVIII-VIII線断面図である。
【
図9】本実施形態の一例を示し、
図8(a)のIX-IX線断面図である。
【
図10】本実施形態の一例を示し、(a)は二重係止部材をロック位置にスライドさせた正面図、(b)は(a)のX-X線断面図である。
【
図11】本実施形態の一例を示し、
図10(a)のXI-XI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本実施形態に係るコネクタを詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。明細書では、
図1の図面上の向きを上下左右方向として説明する。
【0015】
図1~
図4に示すように、本実施形態に係るコネクタAは、第1コネクタ1と、第2コネクタ10と、第1コネクタに回転自在に設けられたレバー20とを備えている。
【0016】
第1コネクタ1は、第1ハウジング2と、第1ハウジング2に収容された複数の第1端子(図示せず)とを有する。第1ハウジング2の上下面には、支持軸3と第1係止突起部4と第2係止突起部5がそれぞれ設けられている。
【0017】
第2コネクタ10は、第2ハウジング11と、第2ハウジング11に収容された複数の第2端子(図示せず)とを有する。第2ハウジング11は、第1コネクタ1が嵌合する嵌合室12を有する。嵌合室12は、その開口部12aより第1ハウジング2と共にレバー20が入り込むことができる寸法に形成されている。各第2端子(図示せず)の先端側は、嵌合室12に配置されている。嵌合室12の上下面には、係止解除部13がそれぞれ設けられている。
【0018】
嵌合室12の開口一端側には、受け部15が設けられている。受け部15は、第2ハウジング11の一方の側壁端より開口部12a側に突出する突起形状である。
【0019】
レバー20は、回転支持部24が設けられた一対のアーム部21と、一対のアーム部21の回転支持部24より一端側を連結する操作部22と、一対のアーム部21の回転支持部24より他端側を連結する連結部23とを有する。各アーム部21の回転支持部24は、第1ハウジング2に回転自在に支持される円孔である。回転支持部24は、各アーム部21の長手方向の中央位置に設けられている。各回転支持部24に第1ハウジング2の支持軸3が挿入されている。レバー20は、回転支持部24を中心として回転開始位置と回転完了位置の間で回転可能に設けられている。
【0020】
各アーム部21の他端側には、第1係止アーム25と引掛部26がそれぞれ設けられている。第1係止アーム25は、片持ち支持の板形状である。第1係止アーム25の先端部には、係止用切欠き(特に符号を付さず)が設けられている。第1係止アーム25は、係止解除方向にたわみ変形可能に設けられている。引掛部26は、第2ハウジング11の受け部15が入り込む凹部26aを有する。凹部26aは、受け部15がガタ付きなく滑らかに回転できる形状に形成されている。
【0021】
引掛部26は、第1コネクタ1を嵌合室12に挿入する過程で、第2ハウジング11の受け部15が引っ掛け、詳細には、引掛部26の凹部26aに受け部15が入り込むことによって引っ掛けられるよう設定されている。レバー20の引掛部26が第2ハウジング11の受け部15に引っ掛かる位置がハウジング引き込み開始位置である。レバー20の引掛部26と第2ハウジング11の受け部15によって、第1ハウジング2を第2ハウジング11の嵌合室12に引き込む引き込み手段Bが構成されている。
【0022】
各アーム部21の一端側には、第2係止アーム27と二重係止収容部28がそれぞれ設けられている。第2係止アーム27は、方形の枠形状である。第2係止アーム27は、係止解除方向にたわみ変形可能に設けられている。二重係止収容部28には、二重係止部材30が収容されている。二重係止部材30は、突部30aを有する。二重係止部材30は、二重係止収容部28にスライド自在に設けられている。
【0023】
次に、コネクタAの嵌合動作を説明する。レバー20を回転開始位置にセットする。回転開始位置では、
図5に示すように、レバー20の第1係止アーム25と引掛部26が第1ハウジング2の第1係止突起部4を挟む込み位置に位置する。これにより、レバー20が回転開始位置に位置保持される。
【0024】
次に、第1ハウジング2を第2ハウジング11の嵌合室12に挿入する。すると、
図6に示すように、レバー20の引掛部26の凹部26aに第2ハウジング11の受け部15が入り込み、ハウジング引き込み開始位置にセットされる。又、嵌合室12に第1ハウジング2を挿入する過程で、第1係止突起部4が第2ハウジング11の係止解除部13によって係止解除される。これにより、レバー20は、回転完了位置側に回転可能とされる。
【0025】
次に、
図7に示すように、レバー20を回転完了位置側に回転する。回転完了位置まで回転する過程で、各第1端子(図示せず)と各第2端子(図示せず)がそれぞれ嵌合される。
【0026】
図8及び
図9に示すように、レバー20が回転完了位置まで回転すると、レバー20の第2係止突起部5が第1ハウジングの第2係止突起部5を乗り越え、第2係止突起部5と第2係止アーム27が係止される。第1ハウジング2と第2ハウジング11が嵌合完了位置に固定される。
【0027】
次に、
図10及び
図11に示すように、二重係止部材30を嵌合室12の奥方向、つまり、ロック位置にスライドする。すると、二重係止部材30の突部30aが第2係止アーム27の解除方向へのたわみ変形を阻止する位置に位置する。これにより、第1ハウジング2と第2ハウジング11が嵌合完了位置で二重に固定される。これで、完了する。
【0028】
以上説明したように、コネクタAは、第1ハウジング2と、第1ハウジング2に嵌合可能に設けられた第2ハウジング11と、第1ハウジング2に回転開始位置と回転完了位置の間で回転自在に設けられたレバー20とを備えている。その上、レバー20の回転開始位置から回転完了位置への回転によって第1ハウジング2と第2ハウジング11の間に引き込む力を作用させ、第1ハウジング2と第2ハウジング11を嵌合させる引き込み手段Bとを備えている。そして、レバー20は、第1ハウジング2に支持される回転支持部24を有する一対のアーム部21と、一対のアーム部21の回転支持部24より一端側を連結する操作部22と、一対のアーム部21の回転支持部24より他端側を連結する連結部23とを有する。
【0029】
従って、レバー20は、一対のアーム部21の両端間が操作部22と連結部23によって共に連結されているため、一対のアーム部21の一端側のみが操作部22で連結されている構成のレバーに比較して強度が向上する。従って、所定の強度を得るには、従来例の構成よりレバー20の薄肉化を図ることができるため、コネクタAの小型化を図ることができる。又、一対のアーム部21の他端側が連結部23で連結されていることから、レバー成形時の樹脂収縮が発生しても一対のアーム部21の他端同士の間隔が狭くなる方向に変位しないため、レバー20を第1ハウジング2に容易に組付けできる。レバー20に外力等作用しても一対のアーム部21の他端同士の間隔が広くなる方向に変位しないため、第1ハウジング2に組付けたレバー20が第1ハウジング2より脱落することを防止できる。
【0030】
引き込み手段Bは、第2ハウジング11の嵌合室12の開口一端側に設けられた受け部15と、レバー20に設けられ、受け部15に引っ掛けられる引掛部26とを有する。そして、第1ハウジング2を第2ハウジング11の嵌合室12に挿入する過程で、回転開始位置に位置するレバー20の引掛部26が第2ハウジング11の受け部15に引っ掛かる位置がハウジング引き込み開始位置である。このハウジング引き込み開始位置では、嵌合室12の間口の中間位置にレバー20の回転支持部24が位置する。
【0031】
従って、レバーは、嵌合室12の一端側に位置する引掛部26を回転支点とし、嵌合室12の中央位置に位置する回転支持部24にハウジング引き込む力F(
図7(b)に示す)が作用して第1ハウジング2が第2ハウジング11に引き込まれる。そして、ハウジング引き込み力Fの方向がハウジング嵌合方向D(
図7(b)に示す)とほぼ同じ方向であるため、第1ハウジング2と第2ハウジング11間にこじりが発生せず、端子曲がりの発生を低減できる。
【0032】
換言すれば、「てこの原理」において、操作部22が「力点」、引掛部26が「支持点」、回転支持部24が「作用点」として作用する。そして、「作用点」である回転支持部24に作用するハウジング引き込み力F(
図7(bに示す)の方向がハウジング嵌合方向D(
図7(b)示す)とほぼ同じ方向である。そのため、第1ハウジング2と第2ハウジング11間にこじりが発生せず、端子曲がりの発生を低減できる。
【0033】
受け部15は、突起形状であり、引掛部26は、受け部15が入り込む凹部26aを有する。従って、受け部15と引掛部26の凹部26a溝の形状をスムーズな回転支点となる形状・寸法に形成することによって、レバー20の回転操作がスムーズになる。
【0034】
本実施形態の変形例として、レバー20の構成を、従来例のように、「てこの原理」において、操作部22が「力点」、回転支持部24が「支持点」、従来例のカム溝が「作用点」として作用する構成としても良い。但し、本実施形態のように、「作用点」であるカム溝に作用する外力の方向がハウジング嵌合方向Dと異なる方向となるため、第1ハウジング2と第2ハウジング11間のこじりの発生を防止できない。
【0035】
本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
A コネクタ
B 引き込み手段
2 第1ハウジング
11 第2ハウジング
12 嵌合室
15 受け部(引き込み手段)
20 レバー
21 アーム部
22 操作部
23 連結部
24 回転支持部
26 引掛部(引き込み手段)