(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】油圧システム、建設機械、油圧制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F15B 11/00 20060101AFI20230816BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20230816BHJP
F15B 20/00 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
F15B11/00 Q
E02F9/22 L
F15B20/00 Z
(21)【出願番号】P 2019189385
(22)【出願日】2019-10-16
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 仁
(72)【発明者】
【氏名】後藤 敬介
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-089505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00
E02F 9/22
F15B 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータから排出された作動油がオイルクーラを通してタンクへ戻される油圧システムにおいて、
切替弁を備え、
前記切替弁は、オリフィスで発生したネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、前記オリフィスと前記オイルクーラとを接続する流路に前記作動油を流通させ、前記ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、前記オリフィスから前記流路への作動油の流入を遮断すると共に前記作動油を前記オリフィスと前記タンクを接続するドレイン流路に流通させる、
油圧システム。
【請求項2】
前記切替弁は、前記オリフィスの下流側に接続されている、請求項1に記載の油圧システム。
【請求項3】
前記切替弁は、
前記ネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、前記オリフィスと前記流路とを接続し前記ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、前記オリフィスと前記ドレイン流路とを遮断する第1バルブシートと、
前記ネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、前記オリフィスと前記ドレイン流路とを遮断し前記ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、前記オリフィスと前記ドレイン流路とを接続する第2バルブシートと、を備える、請求項1または2に記載の油圧システム。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の前記油圧システムを備える、建設機械。
【請求項5】
ネガティブコントロール圧力を発生させるオリフィスと、ネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、前記オリフィスと作動油が貯留されたタンクの上流側に接続されたオイルクーラに接続された流路に作動油を流通させ、
前記ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、前記流路への作動油の流入を遮断すると共に前記作動油を前記タンクに接続されたドレイン流路に流通させる、油圧制御方法。
【請求項6】
ネガティブコントロール圧力を発生させるオリフィスにおけるネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、前記オリフィスと作動油が貯留されたタンクの上流側に接続されたオイルクーラとを接続する流路に作動油を流通させ、
前記ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、前記流路への作動油の流入を遮断すると共に前記作動油を前記タンクに接続されたドレイン流路に流通させる処理をコンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガティブコントロールの油圧システムの背圧を制御するための油圧システム、建設機械、及び油圧制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械等は油圧の制御により駆動されるものが多い。油圧ショベル等の建設機械を駆動する油圧システムには、ネガティブコントロールシステムを用いるものがある。ネガティブコントロールを用いた油圧システムは、作動油の流量制御を行うために油圧システムのセンタバイパスラインの最下流に設けられたリリーフに抵抗となるオリフィスを設けて検出信号を発生させその検出信号を油圧ポンプにフィードバックしてセンタバイパスラインの作動油の流量を増減するように制御するものである。
【0003】
例えば、操作部が中立位置にある場合は高い制御圧がオリフィスに発生し、操作部が作動状態の場合は低い制御圧がオリフィスに発生する。油圧ポンプは、その検出信号に基づいて、制御圧が高い場合は作動油の流量を少なくし、制御圧が低い場合は作動油の流量を大きくするようにネガティブな特性により流量制御する。
【0004】
通常、ネガティブコントロールのリリーフのオリフィスを通過した作動油は、リターンラインを通じて作動油を貯留するタンクに戻る。この際、リターンラインに大量の作動油が流入すると背圧が上がり、オリフィスの圧力が十分に下がらず、油圧ポンプが作動油の流量を少なくするように制御されるため、油圧ポンプから最大流量の作動油が吐出されない状態が発生し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ネガティブコントロールの背圧が上がる状態の対策として、ネガティブコントロールのリターンラインをタンクに直接接続する方法がある。しかし、この方法によれば操作部のレバーが中立の位置にある場合、タンクの上流側に接続されたオイルクーラを作動油が通過せず、オーバーヒートが生じる可能性があった。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、油圧ポンプの吐出量を正確にコントロールすると共に、オーバーヒートを防止することができる油圧システム、建設機械、油圧制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る油圧システムは、アクチュエータから排出された作動油がオイルクーラを通してタンクへ戻される油圧システムにおいて、切替弁を備え、前記切替弁は、オリフィスで発生したネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、前記オリフィスと前記オイルクーラとを接続する流路に前記作動油を流通させ、前記ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、前記オリフィスから前記流路への作動油の流入を遮断すると共に前記作動油を前記オリフィスと前記タンクを接続するドレイン流路に流通させる。
【0009】
このように構成することで、操作部の中立時にネガティブコントロール圧力(背圧)が基準以上に高くなった場合、切替弁がオリフィスから流路に作動油を流通させ、作動油をオイルクーラに流通させることでオーバーヒートを防止することができ、それと同時にオリフィスの背圧が油圧ポンプの最大流量を吐出する圧力以下に降下しない状態を防止して、吐出量を正常な状態に維持することができる。また、オーバーヒートが発生しないオリフィスの背圧が基準未満の場合は、作動油を直接にタンクに戻してオリフィスの背圧を下げて油圧ポンプの吐出量を正常な状態に維持することができる。
【0010】
前記切替弁は、前記オリフィスの下流側に接続されているように構成されていてもよい。
【0011】
このように構成することで、切替弁がネガティブコントロールのリリーフに内蔵されるため、装置構成を簡素化することができる。
【0012】
前記ネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、前記オリフィスと前記流路とを接続し前記ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、前記オリフィスと前記ドレイン流路とを遮断する第1バルブシートと、前記ネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、前記オリフィスと前記ドレイン流路とを遮断し前記ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、前記オリフィスと前記ドレイン流路とを接続する第2バルブシートと、を備えるように構成されていてもよい。
【0013】
このように構成することで、オリフィスの背圧をネガティブコントロールの最大流量の制御圧以下に降下させることができ、同時にネガティブコントロール圧力の条件に応じて作動油をドレイン流路または流路に流通させ、オーバーヒートを防止することもできる。
【0014】
本発明の一態様に係る建設機械は、上記に記載の前記油圧システムを備えるように構成されていてもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る油圧制御方法は、ネガティブコントロール圧力を発生させるオリフィスと、ネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、前記オリフィスと作動油が貯留されたタンクの上流側に接続されたオイルクーラに接続された流路に作動油を流通させ、前記ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、前記流路への作動油の流入を遮断すると共に前記作動油を前記タンクに接続されたドレイン流路に流通させる。
【0016】
このように構成することで、オリフィスの背圧をネガティブコントロールの最大流量の制御圧以下に降下させることができ、同時にネガティブコントロール圧力の条件に応じて作動油をドレイン流路または流路に流通させ、オーバーヒートを防止することもできる。
【0017】
本発明の一態様に係るプログラムは、ネガティブコントロール圧力を発生させるオリフィスにおけるネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、前記オリフィスと作動油が貯留されたタンクの上流側に接続されたオイルクーラとを接続する流路に作動油を流通させ、前記ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、前記流路への作動油の流入を遮断すると共に前記作動油を前記タンクに接続されたドレイン流路に流通させる処理をコンピュータに実行させる。
【0018】
このように構成することで、オリフィスの背圧をネガティブコントロールの最大流量の制御圧以下に降下させることができ、同時にネガティブコントロール圧力の条件に応じて作動油をドレイン流路または流路に流通させ、オーバーヒートを防止することもできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、油圧ポンプの吐出量を正確にコントロールすると共に、オーバーヒートを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態における建設機械の構成を示す図。
【
図2】本発明の実施形態における建設機械の油圧システムの構成を示すブロック図。
【
図3】本発明の実施形態における背圧切替弁の油圧回路図。
【
図4】本発明の実施形態における背圧切替弁の構成を示す断面図。
【
図5】本発明の実施形態における油圧システムを駆動する制御回路の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(建設機械)
図1に示されるように、建設機械100は、例えば油圧ショベルである。建設機械100は、旋回体101と、走行体102とを備えている。旋回体101は、走行体102の上に旋回自在に設けられている。旋回体101には、油圧システム1が設けられている。
【0025】
旋回体101は、操作者が搭乗可能なキャブ103と、キャブ103に一端が揺動自在に連結されているブーム104と、ブーム104のキャブ103とは反対側の他端(先端)に揺動自在に一端が連結されているアーム105と、アーム105のブーム104とは反対側の他端(先端)に揺動自在に連結されているバケット106と、を備えている。また、キャブ103内には、油圧システム1が設けられている。この油圧システム1から供給される作動油によって、キャブ103、ブーム104、アーム105、及びバケット106が駆動される。
【0026】
(油圧システム)
図2に示されるように、油圧システム1は、油圧ショベルに搭載されるものである。油圧システム1は、油圧で駆動されるアクチュエータ20を備えている。アクチュエータ20は、アーム105やブーム104等を駆動するための複数のアクチュエータ22、21、26、23、25、24を備える。また、油圧システム1は、各アクチュエータ22、21、26、23、25、24に流量を調整して作動油を供給する油圧ポンプ10を備えている。アクチュエータ20は、油圧シリンダや油圧モータを含む。
【0027】
また、油圧システム1は、油圧ポンプ10から供給された作動油を流通させる油圧システムと、流路を流通して戻った作動油を貯留するタンク15とを備える。油圧システムは、後述の検出回路60と背圧切替弁70とを含む。タンク15の上流側には、オイルクーラ13が接続されている。オイルクーラ13の上流側には、逆流を防止するチェック弁14が接続されている。
【0028】
油圧ポンプ10とアクチュエータ20との間には、方向切替弁50が設けられている。方向切替弁50は、アクチュエータ20に供給される作動油の流量を制御する。方向切替弁50は、各アクチュエータ21~26を駆動する複数の方向切替弁51~56を備える。
【0029】
油圧システム1は、上記構成の他に操作部(不図示)、ポンプを制御するレギュレータ80等を備えている。操作部は、各アクチュエータ20の操作信号を出力する。操作部を操作して出力された操作信号は、方向切替弁50やレギュレータ80に入力される。方向切替弁50は、入力された操作信号に基づいて駆動される。方向切替弁50は、後述する複数のオープンセンタ型の切替弁(スプール)を備える。レギュレータ80は、後述のように入力された操作信号に基づいて油圧ポンプ10を駆動し、吐出量を調整する。
【0030】
油圧ポンプ10は、第1ポンプ11と、第2ポンプ12とを備える。油圧ポンプ10は、エンジンなどの原動機(不図示)によって駆動される。油圧ポンプ10は、作動油を吐出する容量を可変自在なポンプである。第1ポンプ11は、第1バイパス流路31(センタバイパスライン)と第1供給流路41とに連結されている。第2ポンプ12は、第2バイパス流路32(センタバイパスライン)と第2供給流路42とに連結されている。
【0031】
第1バイパス流路31及び第2バイパス流路32は、油圧ポンプ10から供給された作動油を、アクチュエータ20に供給せずに、タンク15に戻すためのバイパス流路である。第1供給流路41及び第2供給流路42とは、油圧ポンプ10から供給された作動油を、アクチュエータ20に供給する流路である。第1供給流路41及び第2供給流路42については後述する。
【0032】
第1バイパス流路31及び第2バイパス流路32の下流側には、検出回路60が接続されている。検出回路60は、油圧回路の下流に設けられたネガティブコントロール用の検出回路であり、ネガティブコントロール圧力を検出する。
【0033】
検出回路60は、作動油をタンク15に戻すための流路35(リターンライン)に接続されている。検出回路60の詳細な説明は後述する。検出回路60により検出されたネガティブコントロール圧力の検出値に基づいて、ネガティブコントロール制御を行い油圧ポンプ10の容量が制御される。
【0034】
検出回路60は、第1バイパス流路31の最下流部に接続された第1リリーフ弁63と、圧力P1を発生させる第1オリフィス61とを備える。第1リリーフ弁63及び第1オリフィス61の下流側は、流路35に接続されている。
【0035】
検出回路60は、第2バイパス流路32の最下流部に接続され第2リリーフ弁64と、圧力P2を発生させる第2オリフィス62とを備える。第2リリーフ弁64及び第2オリフィス62の下流側は、流路35に接続されている。検出回路60は、更に、圧力P1及び圧力P2のうち低圧の圧力を選択して流路を切り替える低圧選択弁68と、を備える。
【0036】
第1リリーフ弁63は、第1オリフィス61の圧力が基準値を超えたときに、流路を開放して作動油をタンク15に排出する安全弁である。第1リリーフ弁63は、作動油の圧力が予め設定された第1リリーフ圧となった場合、第1リリーフ圧を解放して作動油を流路35に流通させる。
【0037】
第2リリーフ弁64は、第2バイパス流路32の最下流部に接続された第2オリフィス62の圧力が基準値を超えたときに、流路を解放して第2オリフィス62を介さずに第2バイパス流路32の最下流部の油をタンク15側に排出する安全弁である。第2リリーフ弁64は、作動油の圧力が予め設定された第2リリーフ圧となった場合、第2リリーフ圧を解放して作動油を流路35に流通させる。
【0038】
検出回路60と流路35との間には、流路35の背圧を調整するための背圧切替弁70が設けられている。背圧切替弁70は、流路35と、タンク15に直接に接続されたドレイン流路36に接続されている。背圧切替弁70の構成の詳細な説明については後述する。
【0039】
流路35は、タンク15に接続されている。流路35は、作動油をタンク15に戻すリターンラインである。流路35は、複数の方向切替弁51~56のそれぞれに接続されている。流路35は、検出回路60の下流側及び背圧切替弁70の下流側の合流路35Aにおいて接続されている。
【0040】
流路35には、各アクチュエータ21~26が接続されている。流路35は、各アクチュエータ21~26から排出された油をタンク15に戻す流路である。
【0041】
流路35に流通する作動油は、チェック弁14を介してオイルクーラ13に流入する。オイルクーラ13は、熱交換器を備え、流入した作動油の温度を低下させる。オイルクーラ13で温度が低下した作動油は、タンク15に戻される。タンク15に戻され、貯留された作動油は、再び第1ポンプ11及び第2ポンプ12によりアクチュエータ20に供給される。
【0042】
第1ポンプ11は、第1供給流路41に作動油を流通させる。第1供給流路41は、第1ポンプ11から供給された作動油を、アクチュエータ21~26に供給する流路である。第1供給流路41は、アクチュエータ22、24,25,26に接続されている。第1供給流路41は、第1バイパス流路31の上流側に接続される。第1供給流路41は、方向切替弁52,54,55,56に作動油を供給する流路である。
【0043】
第2供給流路42は、第2ポンプ12の吐出油を、アクチュエータ21,23,25,26に供給するための流路である。第2供給流路42は、第2バイパス流路32の最上流部に接続される。第2供給流路42は、方向切替弁51,53,55,56に油を供給する流路である。
【0044】
なお、上記の各流路には、チェック弁が設けられる。チェック弁は、方向切替弁51,53,54,55,56から、各流路への作動油が逆流することを防止する。
【0045】
方向切替弁51~56は、油圧ポンプ10から複数のアクチュエータ21~26に供給される作動油の流量を調整すると共に、方向を切替える弁である。方向切替弁51~56は、アクチュエータ21~26が排出した油をタンク15に戻す。
【0046】
方向切替弁51~56は、油圧ポンプ10とアクチュエータ21~26との間に配置される。方向切替弁51~56それぞれは、スプール弁を備える。スプール弁は、スプールのストローク量(位置)に応じて、油の流量や方向を変える弁である。
【0047】
方向切替弁51~56は、左走行用の方向切替弁51、右走行用の方向切替弁52、旋回用の方向切替弁53、ブーム用の方向切替弁54、アーム用の方向切替弁55、及びバケット用の方向切替弁56を備える。
【0048】
左走行用の方向切替弁51及び旋回用の方向切替弁53は、第2バイパス流路32及び第2供給流路42に接続され、第2ポンプ12により駆動される。方向切替弁53は、アクチュエータ23に流れる油の流量及び方向を変える弁である。右走行用の方向切替弁52は、第1バイパス流路31及び第1供給流路41に接続され、第1ポンプ11により駆動される。
【0049】
ブーム用の方向切替弁54、アーム用の方向切替弁55、及びバケット用の方向切替弁56は、第1バイパス流路31及び第1供給流路41に接続されると共に、第2バイパス流路32及び第2供給流路42に接続され、第1ポンプ11及び第2ポンプ12により駆動される。方向切替弁56に接続された第1バイパス流路31及び第2バイパス流路32の下流側には、検出回路60が接続されている。
【0050】
検出回路60は、ネガティブコントロール制御により油圧ポンプ10の容量を制御する。検出回路60は、第1オリフィス61で検知された圧力P1、及び、第2オリフィス62で検知された圧力P2のうち、低い方の圧力を圧力P(ネガティブコントロール圧力)として出力する。
【0051】
第1オリフィス61は、第1バイパス流路31の最下流部に設けられている。第1オリフィス61は、流路の断面積が狭められるように形成され、作動油の流速を低下させて圧力P1を発生させる。第1オリフィス61において、検出部が設けられ、圧力P1が電気信号などに変換されて出力される。
【0052】
第2オリフィス62は、第2バイパス流路32の最下流部に設けられている。第2オリフィス62は、流路の断面積が狭められるように形成され、作動油の流速を低下させて圧力P2を発生させる。第2オリフィス62において、検出部が設けられ、圧力P2が電気信号などに変換されて出力される。
【0053】
低圧選択弁68は、第1オリフィス61で検知された圧力P1、及び第2オリフィス62で検知された圧力P2のうち、低い方の圧力を選択して検出する。低圧選択弁68は、選択した圧力Pを圧力P検出値として出力する。低圧選択弁68は、例えばシャトル弁等の低圧選択弁を備える。低圧選択弁68には検出部が設けられ、圧力Pが油圧に基づく圧力や電気信号などに変換されて出力される。低圧選択弁68は、検出した圧力Pを油圧ポンプ10の制御に用いられるレギュレータ80に出力する。
【0054】
レギュレータ80は、取得した圧力Pに応じて、油圧ポンプ10の吐出量を調整する。レギュレータ80は、操作部の操作レバーの位置が中立時に、何も仕事をしないでタンク15に戻される作動油の量を最小限にするため、油圧ポンプ10の吐出量を予め設定された最小の吐出量に制御するよう油圧ポンプ10の吐出量を調整する。そのため、レギュレータ80は、中立時のように圧力Pが高くなるほど、油圧ポンプ10の吐出量を減らすように調整する。レギュレータ80は、操作時のように圧力Pが低くなるほど、油圧ポンプ10の吐出量を増やすように調整する。
【0055】
レギュレータ80は、第1ポンプ11及び第2ポンプ12それぞれの吐出量を連動させて作動油の供給量を同一にするように制御する。
【0056】
検出回路60において、第1オリフィス61及び第2オリフィス62を通過した作動油は、流路35を介してタンク15に戻される。この時、流路35に流入する作動油(戻り油)が通常に比して多い場合、第1オリフィス61及び第2オリフィス62の背圧が高い状態が維持され、検出回路60に検知される圧力Pが下がらない場合がある。その状態でレギュレータ80は、圧力Pが高い状態を検知し続けるため、油圧ポンプ10の吐出量を減らすように制御し、油圧ポンプ10から最大流量の作動油が供給されない場合がある。
【0057】
そこで、検出回路60に接続された背圧切替弁70は、検出回路60が検出した圧力Pに応じて、第1オリフィス61及び第2オリフィス62から流路35に作動油を流通又は遮断するように切り替える。
【0058】
図3に示されるように、背圧切替弁70は、上流側が第1オリフィス61及び第2オリフィス62の下流側の流路37に接続されている。背圧切替弁70は、下流側が流路35とドレイン流路36とに接続されている。背圧切替弁70は、流路35とドレイン流路36とのいずれかに流路を切り替える切替弁71を備える。
【0059】
背圧切替弁70は、第1オリフィス61及び第2オリフィス62で検出されたネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、切替弁71を動作させて流路37を流路35に接続し、オイルクーラ13に作動油を流通させる。
【0060】
背圧切替弁70は、第1オリフィス61及び第2オリフィス62で検出されたネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、切替弁71を動作させて流路37から流路35への作動油の流通を遮断し、オイルクーラへ13の作動油の流入を遮断すると共に、作動油を流路37からドレイン流路36側に流通させ、タンク15に直接的に流入させる。
【0061】
次に、背圧切替弁70の構成について説明する。
【0062】
図4に示されるように、背圧切替弁70は、円筒状に形成された切替弁71を備える。切替弁71は、作動油の流路を流路35又はドレイン流路36のいずれかに切り替えるチェック弁である。流路37の端部は、直交方向に流路35が接続され、直線方向にドレイン流路36が接続されている。
【0063】
切替弁71は、流路35への作動油の流通を遮断する第1バルブシート72と、ドレイン流路36への作動油の流通を遮断する第2バルブシート77と、作動油が流通するオリフィス74とを備える。
【0064】
第1バルブシート72は、切替弁71の一端側に形成されている。第1バルブシート72は、切替弁71の径よりも大きい径で形成されている。第1バルブシート72は、第1オリフィス61及び第2オリフィス62に接続された流路37を流路35又はドレイン流路36のいずれかに切り替える。第1バルブシート72は、円柱状に形成されている。第1バルブシート72は、角部が面取りされて形成されたテーパ面71aを備える。
【0065】
第1バルブシート72は、ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、流路37の円形の端部にテーパ面71aが当接し、流路35を遮断する。第1バルブシート72は、ネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、テーパ面71aが流路の円形の端部から離間し、流路35の入口を開放し、作動油を流路35に流通させる。
【0066】
オリフィス74は、切替弁71の一端側から内部の途中まで設けられた穴74aと、穴74aに連通して切替弁71の側面に向かって設けられた貫通孔74bとを備える。オリフィス74は、作動油が流通する流路を絞って抵抗を生じさせるように形成されている。
【0067】
穴74aは、一端が切替弁71の一端側にあり、一端側から軸線に沿って他端が切替弁71の内部の途中まで形成されている。穴74aの他端から直交して切替弁71の側面に向かって貫通孔74bが形成されている。切替弁71の側面には、切替弁71の径よりも径が小さくなるように形成された段差75が形成されている。
【0068】
切替弁71の他端側には、段差75に引っ掛けられたリターンスプリング76が挿通されている。切替弁71の他端側には、第2バルブシート77が形成されている。第2バルブシート77は、円錐状に形成されたテーパ面77aを備える。
【0069】
第2バルブシート77のテーパ面77aは、ドレイン流路36の入口に形成された円形の端部に当接している。第2バルブシート77は、ネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、ドレイン流路36の円形の入口の端部に当接し、ドレイン流路36を遮断する。第2バルブシート77は、ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、ドレイン流路36の円形の入口のから離間してドレイン流路36を開放し作動油を流路37からドレイン流路36に流通させる。
【0070】
リターンスプリング76は、ネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、即ちオリフィス74で生じる抵抗が所定以上である場合に縮むようにばね定数が調整されている。リターンスプリング76は、ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、即ちオリフィス74で生じる抵抗が所定未満である場合に縮まないようにばね定数が調整されている。
【0071】
このような構成により、切替弁71は、ネガティブコントロール圧力が基準未満である場合、第1バルブシート72が流路35を遮断すると共に、第2バルブシート77がドレイン流路36を開放し、作動油を流路37からドレイン流路36に流通させる。切替弁71は、ネガティブコントロール圧力が基準以上である場合、リターンスプリング76が縮んで第1バルブシート72が流路35を開放すると共に、第2バルブシート77がドレイン流路36を遮断し、作動油を流路37から流路35に流通させる。
【0072】
これにより、背圧切替弁70は、ネガティブコントロール圧力が基準以上の場合、作動油を第1オリフィス61及び第2オリフィス62から流路35に流通させて背圧を低下させる。背圧切替弁70は、流路35に作動油を流通させることでオイルクーラ13において温度を低下させ、オーバーヒートを防止すると共に、ネガティブコントロール圧力を最大流量の制御圧以下に下げて油圧ポンプ10の最大流量を吐出させることができる。
【0073】
背圧切替弁70は、ネガティブコントロール圧力が基準未満の場合、作動油を第1オリフィス61及び第2オリフィス62からドレイン流路36に流通させ、タンク15に直接作動油を戻し、第1オリフィス61及び第2オリフィス62の背圧を低下させる。背圧切替弁70は、ドレイン流路36に作動油を流通させることで、ネガティブコントロール圧力を最大流量の制御圧以下に下げて油圧ポンプ10の最大を回復することができる。
【0074】
上述したように油圧システム1によれば、操作部が中立時に検出回路60で検出されたネガティブコントロール圧力(背圧)が基準以上である場合、オリフィスからオイルクーラ13に作動油を流通させて作動油をオイルクーラ13に流通させて冷却し、オーバーヒートを防止すると共に、ネガティブコントロール圧力を最大流量の制御圧以下に下げて油圧ポンプ10の最大流量を吐出させることができる。
【0075】
油圧システム1によれば、操作部が操作時にネガティブコントロール圧が基準未満である場合、オイルクーラ13への作動油の流入を遮断すると共に、作動油をタンク15に接続されたドレイン流路36に流通させてタンク15に直接作動油を戻し、ネガティブコントロール圧力を最大流量の制御圧以下に下げて油圧ポンプ10の最大流量を吐出させることができる。
【0076】
[変形例]
上述した背圧切替弁70の油圧システムは、電磁弁を用いて構成されると共に、背圧切替弁70の油圧制御方法は、制御装置により電気的に制御されてもよい。
【0077】
制御装置200は、例えば、作動油の流路を切り替える切替弁210と、ネガティブコントロールの圧力を検出する検出部220と、検出部220により検出された検出値に基づいて、切替弁210の流路を切替える制御部230と、を備える。切替弁210は、電気的に制御される電磁弁(ソレノイドバルブ)である。検出部220は、例えば、流路に設けられている圧力センサである。
【0078】
制御部230は、ネガティブコントロール圧が基準以上である場合、切替弁210を制御して流路を切り替えてオイルクーラ13に作動油を流通させる。制御部230は、ネガティブコントロール圧が基準未満である場合、切替弁210を制御して流路を切り替えてオイルクーラ13への作動油の流入を遮断すると共に、作動油をタンク15に流通させる。
【0079】
上述した制御部は、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが背圧切替弁70をコンピュータが制御する処理をプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。これらの各機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶部にインストールされてもよい。
【0080】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、背圧切替弁70のオリフィス74は、切替弁71の内部に設けられている例を示したが、これに限らず、オリフィス74がドレイン流路36側に設けられているものであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…油圧システム、10…油圧ポンプ、11…第1ポンプ、12…第2ポンプ、13…オイルクーラ、14…チェック弁、15…タンク、20…アクチュエータ、31…第1バイパス流路、32…第2バイパス流路、35…流路、35A…合流路、36…ドレイン流路、37…流路、41…第1供給流路、42…第2供給流路、50…方向切替弁、60…検出回路、61…第1オリフィス、62…第2オリフィス、63…第1リリーフ弁、64…第2リリーフ弁、68…低圧選択弁、70…背圧切替弁、71…切替弁、71a…テーパ面、72…第1バルブシート、73…第2バルブシート、74…オリフィス、74a…穴、74b…貫通孔、75…段差、76…リターンスプリング、77…第2バルブシート、77a…テーパ面、80…レギュレータ、100…建設機械、101…旋回体、102…走行体、103…キャブ、104…ブーム、105…アーム、106…バケット、200…制御装置、210…切替弁、220…検出部、230…制御部