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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】スライドヒンジ
(51)【国際特許分類】
   E05D 7/12 20060101AFI20230816BHJP
   E05D 3/14 20060101ALI20230816BHJP
   E05D 7/04 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
E05D7/12 D
E05D3/14 A
E05D7/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019197181
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070951
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】柿田 泰志
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-37573(JP,A)
【文献】実開平4-51583(JP,U)
【文献】実開平3-95481(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0259526(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 3/14
E05D 7/04
E05D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具等の扉に固定されるカップにリンクを介して連結されるアーム、及び第1連結部材を有する第1ヒンジ部材と、
家具等の本体に固定されるベース部材、及び第2連結部材を有する第2ヒンジ部材と、
前記第1連結部材と前記第2連結部材の一端部同士を係止する第1係止機構と、
前記第1連結部材と前記第2連結部材の他端部同士を係止する第2係止機構と、を備え、
前記第2係止機構が、
前記第2連結部材の前記他端部に形成された係止部と、
前記第1連結部材に回転可能に支持され、前記係止部に係止可能なロックレバーと、
前記ロックレバーを前記第1連結部材のストッパ側に付勢する付勢手段と、を有するスライドヒンジにおいて、
前記ロックレバーの下方に前記ベース部材が存在し、
前記第1係止機構が係止せずに前記第2係止機構が係止した誤取付け状態を、前記ロックレバーを操作することなく前記第1連結部材を移動させて解除できるように、前記第連結部材の前記係止部と前記ベース部材との間には、前記ロックレバーの移動を許容する空間が形成され、又は前記ベース部材には、前記ロックレバーの移動を許容する貫通孔が形成され
前記誤取付け状態において、前記ロックレバーが前記付勢手段によって前記第1連結部材の前記ストッパに当接した状態にあり、
前記第1連結部材を移動させて前記誤取付け状態を解除する際、前記ロックレバーが前記ストッパに当接したままであるスライドヒンジ。
【請求項2】
家具等の扉に固定されるカップにリンクを介して連結されるアーム、及び第1連結部材を有する第1ヒンジ部材と、
家具等の本体に固定されるベース部材、及び第2連結部材を有する第2ヒンジ部材と、
前記第1連結部材と前記第2連結部材の一端部同士を係止する第1係止機構と、
前記第1連結部材と前記第2連結部材の他端部同士を係止する第2係止機構と、を備え、
前記第2係止機構が、
前記第2連結部材の前記他端部に形成された係止部と、
前記第1連結部材に回転可能に支持され、前記係止部に係止可能なロックレバーと、
前記ロックレバーを前記第1連結部材のストッパ側に付勢する付勢手段と、を有するスライドヒンジにおいて、
前記ロックレバーの下方に前記ベース部材が存在し、
前記第1係止機構が係止せずに前記第2係止機構が係止した誤取付け状態を、前記ロックレバーを操作することなく前記第1連結部材を移動させて解除できるように、前記ベース部材には、前記ロックレバーの移動を許容する有底の凹みが形成され、又は前記ベース部材には、前記ロックレバーの移動を許容する貫通孔が形成されるスライドヒンジ。
【請求項3】
前記ベース部材には、前記第2連結部材が所定の範囲内で位置調整可能に取り付けられ、
記凹み又は前記貫通孔の幅は、前記ベース部材に対して前記第2連結部材を前記所定の範囲内で位置調整しても、前記ロックレバーが前記凹み内又は前記貫通孔内に収まるように設定されることを特徴とする請求項に記載のスライドヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具、建具、産業機械等の扉の開閉に用いられるスライドヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
スライドヒンジは、扉の正面から見てヒンジの軸が見えないようにした見栄えのよいヒンジである。図16に示すように、スライドヒンジ101は、家具等の扉に固定されるカップ102にリンク103,104を介して連結されるアーム105、及び第1連結部材106を有する第1ヒンジ部材107と、家具等の本体に固定されるベース部材108、及び第2連結部材109を有する第2ヒンジ部材110と、を備える(特許文献1参照)。
【0003】
第1ヒンジ部材107の第1連結部材106と第2ヒンジ部材110の第2連結部材109は、工具を使用することなくワンタッチで着脱できるように構成される。具体的には、スライドヒンジ101は、第1連結部材106と第2連結部材109の一端部同士を係止する第1係止機構111と、第1連結部材106と第2連結部材109の他端部同士を係止する第2係止機構112と、を備える。第2係止機構112は、第2連結部材109の他端部に形成された係止部113と、第1連結部材106に回転可能に支持され、係止部113に係止可能なロックレバー114と、ロックレバー114を第1連結部材106のストッパ側に付勢する付勢手段115と、を有する。第1係止機構111によって第1連結部材106と第2連結部材109の一端部同士を係止した状態で、第1連結部材106の他端部を第2連結部材109の他端部に向かって押し込むと、ロックレバー114が付勢手段115の付勢力によって係止部113に係止する。このため、第1連結部材106を第2連結部材109に工具を使用することなくワンタッチで取り付けることができる。これにより、家具等の扉に固定された状態の第1ヒンジ部材107を家具等の本体に固定された状態の第2ヒンジ部材110にワンタッチで取り付けることができる。
【0004】
一方、第1連結部材106を第2連結部材109から外す際、ロックレバー114を操作し(すなわち指でロックレバー114を付勢手段115の付勢力に抗して回転させ)、ロックレバー114と係止部113との係止を外し、第1連結部材106の他端部を第2連結部材109の他端部から持ち上げる。これにより、第1連結部材106を第2連結部材109から取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6560461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のスライドヒンジ101において、誤って第1係止機構111が係止せずに第2係止機構112が係止した誤取付け状態が発生する場合がある。第2係止機構112を第1係止機構111よりも先に係止すると、後から第1係止機構111を係止することができない。
【0007】
従来のスライドヒンジ101において、一旦誤取付け状態が発生すると、ロックレバー114の下方にベース部材108aが存在する場合、誤取付け状態を容易には解除できない。
【0008】
そこで、本発明は、第1ヒンジ部材と第2ヒンジ部材との誤取付け状態を容易に解除することができるスライドヒンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、家具等の扉に固定されるカップにリンクを介して連結されるアーム、及び第1連結部材を有する第1ヒンジ部材と、家具等の本体に固定されるベース部材、及び第2連結部材を有する第2ヒンジ部材と、前記第1連結部材と前記第2連結部材の一端部同士を係止する第1係止機構と、前記第1連結部材と前記第2連結部材の他端部同士を係止する第2係止機構と、を備え、前記第2係止機構が、前記第2連結部材の前記他端部に形成された係止部と、前記第1連結部材に回転可能に支持され、前記係止部に係止可能なロックレバーと、前記ロックレバーを前記第1連結部材のストッパ側に付勢する付勢手段と、を有するスライドヒンジにおいて、前記ロックレバーの下方に前記ベース部材が存在し、前記第1係止機構が係止せずに前記第2係止機構が係止した誤取付け状態を、前記ロックレバーを操作することなく前記第1連結部材を移動させて解除できるように、前記第連結部材の前記係止部と前記ベース部材との間には、前記ロックレバーの移動を許容する空間が形成され、又は前記ベース部材には、前記ロックレバーの移動を許容する貫通孔が形成され、前記誤取付け状態において、前記ロックレバーが前記付勢手段によって前記第1連結部材の前記ストッパに当接した状態にあり、前記第1連結部材を移動させて前記誤取付け状態を解除する際、前記ロックレバーが前記ストッパに当接したままであるスライドヒンジである。
本発明の他の態様は、家具等の扉に固定されるカップにリンクを介して連結されるアーム、及び第1連結部材を有する第1ヒンジ部材と、家具等の本体に固定されるベース部材、及び第2連結部材を有する第2ヒンジ部材と、前記第1連結部材と前記第2連結部材の一端部同士を係止する第1係止機構と、前記第1連結部材と前記第2連結部材の他端部同士を係止する第2係止機構と、を備え、前記第2係止機構が、前記第2連結部材の前記他端部に形成された係止部と、前記第1連結部材に回転可能に支持され、前記係止部に係止可能なロックレバーと、前記ロックレバーを前記第1連結部材のストッパ側に付勢する付勢手段と、を有するスライドヒンジにおいて、前記ロックレバーの下方に前記ベース部材が存在し、前記第1係止機構が係止せずに前記第2係止機構が係止した誤取付け状態を、前記ロックレバーを操作することなく前記第1連結部材を移動させて解除できるように、前記ベース部材には、前記ロックレバーの移動を許容する有底の凹みが形成され、又は前記ベース部材には、前記ロックレバーの移動を許容する貫通孔が形成されるスライドヒンジである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1ヒンジ部材と第2ヒンジ部材との誤取付け状態を容易に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態のスライドヒンジの斜視図(第1ヒンジ部材を第2ヒンジ部材に取り付ける前の状態)である。
図2】本実施形態のスライドヒンジの斜視図(第1ヒンジ部材を第2ヒンジ部材に取り付けた後の状態)である。
図3】本実施形態のスライドヒンジの斜視図(誤取付け状態)である。
図4】本実施形態のスライドヒンジの正常取付け状態と誤取付け状態を比較した図である(図4(a)が正常取付け状態、図4(b)が誤取付け状態を示す)。
図5】第1ヒンジ部材の分解斜視図である。
図6】第2ヒンジ部材の分解斜視図である。
図7】第2ヒンジ部材の詳細図(図7(a)は斜視図、図7(b)は長手に沿った断面図、図7(c)は側面図)である。
図8図8(a)は第1ヒンジ部材の後端部側斜視図であり、図8(b)は図8(a)のb部拡大図である。
図9】正常取付けの動作図(図9(a)は第1係止機構が係止した状態を示し、図9(b)は第1係止機構と第2係止機構が係止した状態を示す)である。
図10】本実施形態のスライドヒンジの誤取付けの動作図(図10(a)は第1係止機構が係止せずに第1ヒンジ部材を下方に下げた状態を示し、図10(b)は第1ヒンジ部材を前方に移動させた状態を示し、図10(c)は誤取付け状態を示す)である。
図11図10の拡大図(図11(a)は第1係止機構が係止せずに第1ヒンジ部材を下方に下げた状態を示し、図11(b)は第1ヒンジ部材を前方に移動させた状態を示し、図11(c)は誤取付け状態を示す)である。
図12】比較例のスライドヒンジの誤取付けの動作図(図12(a)は第1係止機構が係止せずに第1ヒンジ部材を下方に下げた状態を示し、図12(b)は第1ヒンジ部材を前方に移動させた状態を示し、図12(c)は誤取付け状態を示す)である。
図13】本発明の第2の実施形態のスライドヒンジの第2ヒンジ部材を示す図(図13(a)は斜視図、図13(b)は長手に沿った断面図)である。
図14】本発明の第3の実施形態のスライドヒンジの第2ヒンジ部材を示す図(図14(a)は斜視図、図14(b)は長手に沿った断面図)である。
図15】本発明の第3の実施形態のスライドヒンジの誤取付けの動作図(図15(a)は第1係止機構が係止せずに第1ヒンジ部材を下方に下げた状態を示し、図15(b)は第1ヒンジ部材を前方に移動させた状態を示し、図15(c)は誤取付け状態を示す)である。
図16】従来のスライドヒンジの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態のスライドヒンジを詳細に説明する。ただし、本発明のスライドヒンジは種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1の実施形態)
【0013】
図1は、第1ヒンジ部材11を第2ヒンジ部材12に取り付ける前の状態を示す。スライドヒンジ1は、第1ヒンジ部材11と、第2ヒンジ部材12と、を備える。第1ヒンジ部材11は、家具等の扉2に固定される。第1ヒンジ部材11は、扉2に固定されるカップ4にリンク5,6を介して連結されるアーム7と、このアーム7に取り付けられる第1連結部材8(図5参照)と、を有する。第2ヒンジ部材12は、家具等の本体3に固定される。第2ヒンジ部材12は、本体3に固定されるベース部材9と、このベース部材9に取り付けられる第2連結部材10(図6参照)と、を有する。
【0014】
なお、以下では、説明の便宜上、閉じ位置にある扉2を正面視したときの各方向、すなわち、図1の前後、上下、左右の各方向を用いて、スライドヒンジ1の構成を説明する。もちろん、スライドヒンジの配置はこれに限られない。
【0015】
図2は、第1ヒンジ部材11を第2ヒンジ部材12に取り付けた状態を示す。スライドヒンジ1は、第1係止機構21と、第2係止機構22、を備える(図9(a)参照)。第1係止機構21は、第1ヒンジ部材11の第1連結部材8と第2ヒンジ部材12の第2連結部材10の前端部同士を係止する。第2係止機構22は、第1連結部材8と第2連結部材10の後端部同士を係止する。作業者は、図1に示す扉2を持ち、第1ヒンジ部材11を第2ヒンジ部材12に工具を使用することなくワンタッチで取り付けることができる。
【0016】
図3は、第1ヒンジ部材11を第2ヒンジ部材12に誤って取り付けた誤取付け状態を示す。誤取付け状態では、第1係止機構21が係止せずに(第1連結部材8と第2連結部材10の前端部同士が係止せずに)、第2係止機構22が係止する(第1連結部材8と第2連結部材10の後端部同士が係止する)(図10(c)参照)。
【0017】
図4は、正常取付け状態と誤取付け状態を比較した図である。図4(b)に示す誤取付け状態では、図4(a)に示す正常取付け状態に比べて、第1ヒンジ部材11の前端部が図4(b)の右方向に持ち上がる。第1係止機構21が係止していないからである。一旦誤取付け状態が発生すると、誤取付け状態を容易には解除することができない。本実施形態では、スライドヒンジ1に誤取付け状態を解除するための工夫がなされている。
【0018】
まず、スライドヒンジ1の構成を説明する。図5は、スライドヒンジ1の第1ヒンジ部材11の分解斜視図を示す。第1ヒンジ部材11は、アーム7と、第1連結部材8と、を備える。
【0019】
アーム7は、断面コ字状の長尺体である。アーム7の前端部には、軸13,14を介してリンク5,6が回転可能に連結される。カップ4には、U字状の軸15を介して、リンク5,6が回転可能に連結される。アーム7、リンク5,6、カップ4によって、4節回転連鎖が構成される。リンク6とアーム7との間には、リンク6を介して扉を閉じ方向に付勢するばね16が介在する。
【0020】
アーム7には、第1連結部材8が所定の範囲内で位置調整可能に取り付けられる。第1連結部材8も断面コ字状に形成された長尺体である。第1連結部材8の長さ及び幅は、アーム7の長さ及び幅よりも小さい。
【0021】
位置調整機構は、第1連結部材8に対するアーム7の前後方向の位置を調整する前後位置調整機構M1と、第1連結部材8に対するアーム7の左右方向の位置を調整する左右位置調整機構M2と、を備える。前後位置調整機構M1と左右位置調整機構M2の構成は限定されるものではない。例えば前後位置調整機構M1は、偏心カム17を備え、偏心カム17を回すと、アーム7の前後方向の位置を所定の範囲内で調整できるように構成される。左右位置調整機構M2は、アーム7の雌ねじ7aに螺合する左右調整ねじ18を備え、左右調整ねじ18を回すと、アーム7の左右方向の位置を所定の範囲内で調節できるように構成される。
【0022】
19はアーム7に固定されるスライド軸である。スライド軸19は、第1連結部材8の長孔8aに挿入される。これにより、アーム7は、第1連結部材8に対して前後方向にスライド可能であると共に、スライド軸19を中心に回動可能である。20は樹脂製の回動抑制部材である。回動抑制部材20は、左右調整ねじ18と偏心カム17に摩擦係合し、左右調整ねじ18と偏心カム17の不用意な回動を禁止する。7b,20b,8bは、覗き窓であり、後述する第2ヒンジ部材12の偏心カム23(図6参照)を回すためのドライバを通す孔である。
【0023】
図6は、スライドヒンジ1の第2ヒンジ部材12の分解斜視図を示す。第2ヒンジ部材12は、ベース部材9と、第2連結部材10と、を備える。
【0024】
ベース部材9は、前後方向に細長い略四角形の板状である。ベース部材9の前後方向の両端部には、ベース部材9を本体3に固定するためのねじが通る通し孔9aが形成される。図4(a)に示すように、第1ヒンジ部材11を第2ヒンジ部材12に取り付けた状態で、ベース部材9は第1ヒンジ部材11の裏に略隠れるように形成される。見栄えをよくするためである。
【0025】
図6に示すように、第2連結部材10は、断面コ字状に形成された長尺体である。第2連結部材10は、第1連結部材8を載置できるように構成される。第2連結部材10の後端部の両側の上面には、後方にいくにしたがってベース部材9に近づくスロープ10aが形成される(図7(c)も参照)。スロープ10aの後端部には、係止部10bが形成される。係止部10bの下面10b1は、前方にいくにしたがってベース部材9から離れるように傾斜する。この係止部10bに後述するロックレバー25(図5参照)が係止する。
【0026】
第2連結部材10は、所定の範囲内で位置調整可能にベース部材9に取り付けられる。位置調整機構M3は、ベース部材9に対する第2連結部材10の上下方向(図1の上下方向)の位置を調整する上下位置調整機構である。位置調整機構M3の構成は限定されるものではない。例えば位置調整機構M3は、偏心カム23を備え、偏心カム23を回すと、第2連結部材10の上下方向の位置を所定の範囲内で調整できるように構成される。
【0027】
27は第2連結部材10の脚部10cの先端に固定される止め板である。ベース部材9には、第2連結部材10の脚部10cが通る長孔9bが形成される。第2連結部材10は、ベース部材9に対して上下方向にスライド可能である。止め板27とベース部材9の隆起部9cとの間には、偏心カム23のカム板23aが収容される。偏心カム23の軸23bは、第2連結部材10の孔10dに嵌まる。28は樹脂製の回動抑制部材である。回動抑制部材28は、偏心カム23に摩擦係合し、偏心カム23の不用意な回動を禁止する。
【0028】
このような第1ヒンジ部材11と第2ヒンジ部材12とは、第1係止機構21と第2係止機構22とによって係止される。
【0029】
図9に示すように、第1係止機構21は、第1連結部材8と第2連結部材10の前端部同士を係止するための機構である。第1係止機構21は、第1連結部材8に取り付けられた軸29(図5参照)と、第2連結部材10の前端部の両側に形成された凹み10e(図6参照)と、を備える。第1係止機構21の構成は限定されるものではない。第1連結部材8に凸部を形成してもよいし、第2連結部材10に凸部を形成し、第1連結部材8に凹部を形成してもよい。
【0030】
第2係止機構22は、第1連結部材8と第2連結部材10の後端部同士を係止するための機構である。第2係止機構22は、第2連結部材10の後端部に形成された係止部10b(図6参照)と、第1連結部材8に回転可能に支持され、係止部10bに係止可能なロックレバー25(図5参照)と、ロックレバー25を第1連結部材8のストッパ側に付勢する付勢手段としてのばね26(図5参照)と、を備える。
【0031】
図5に示すように、ロックレバー25は、第2連結部材10の後端部の両内側に位置するフック部25aと、フック部25aを連結する連結板部25bと、係止解除操作用のレバー部25cと、を備える。ロックレバー25は、第1連結部材8に固定された軸30に回転可能に支持される。軸30は、ばね26を貫通する。ばね26は、第1連結部材8とレバー部25cに当接する(図8(b)参照)。ばね26は、ロックレバー25のフック部25aを係止部10bの下面10b1に当接する方向に付勢する。第1連結部材8の後端部の両側には、内側に折り曲げたストッパ8c(図8(b)参照)が形成される。これにより、ばね26によってロックレバー25が付勢されても、フック部25aがストッパ8cに当たり、それ以上は回転しないようになっている。
【0032】
次に、第1ヒンジ部材11と第2ヒンジ部材12の正常取付け動作を説明する。図9(a)に示すように、第1連結部材8の軸29を第2連結部材10の凹み10eに係止させる。そして、第1連結部材8の後端部を押し下げると、第1連結部材8は軸29を中心に回動し、ロックレバー25のフック部25aが第2連結部材10のスロープ10aに当接する。第1連結部材8の後端部をさらに押し下げると、ロックレバー25がばね26の付勢力に抗して反時計方向に回転しながらロックレバー25のフック部25aがスロープ10aを滑り、スロープ10aの下端の係止部10bに到る。そして、図9(b)に示すように、フック部25aが係止部10bよりも下方に移動すると、ばね26の付勢力によってロックレバー25が時計方向に回転し、フック部25aが係止部10bに係止する。これにより、第1ヒンジ部材11と第2ヒンジ部材12とが係止する。
【0033】
フック部25aが係止部10bに係止した状態では、フック部25aはばね26によって係止部10bに付勢される。すなわち、ばね26が効いている。正常取付け状態では、ロックレバー25のレバー部25cをばね26の付勢力に抗して反時計方向に回動させない限り、フック部25aが係止部10bから外れることがない。また、係止部10bの下面10b1は、前方にいくにしたがってベース部材9から離れるように傾斜しているので、第1ヒンジ部材11の後端部に持ち上がろうとする力が作用しても、ロックレバー25は回転することなく、ロックレバー25のフック部25aと係止部10bとがより強い力で係止することになる。
【0034】
次に、第1ヒンジ部材11と第2ヒンジ部材12の誤取付け動作を説明する。図10(a)に示すように、第1連結部材8の軸29が第2連結部材10の上面に当接した状態で、第1連結部材8の後端部を下げ、第1連結部材8を前方に移動させると、図10(b)に示すように、フック部25aが係止部10bの下方に潜り込む(図11(a)、図11(b)の拡大図も参照)。図11(c)に示すように、第1連結部材8は、フック部25aが係止部10bに当たるまで前方に移動する。図11(c)が誤取付け状態を示す。
【0035】
図7(a)、(b)に示すように、ベース部材9には、ロックレバー25に対応する位置に有底の凹み9dが形成される。図11(a)に示すように、係止部10bとベース部材9の凹み9dとの間には、ロックレバー25の移動を許容する空間Sが形成される。このため、図11(c)→図11(b)→図11(a)に示すように、ロックレバー25を操作せずに(指でロックレバー25をばね26の付勢力に抗して反時計方向に回動させずに)第1連結部材8を後方に移動させて、誤取付け状態を解除することができる。図7(a)に示すように、凹み9dの幅W1は、ベース部材9に対して第2連結部材10を所定の範囲内で位置調整してもロックレバー25が凹み9d内に収まるように設定される。
【0036】
図11(c)に示す誤取付け状態において、ロックレバー25はばね26によって第1連結部材8のストッパ8cに当接した状態にある。図11(c)→図11(b)→図11(a)に示すように、第1連結部材8を後方に移動させて誤取付け状態を解除する際、ロックレバー25はストッパ8cに当接したままである。このため、少ない力で誤取付け状態を解除することができる。
【0037】
また、ベース部材9に凹み9dを形成するので、ねじの通し孔9a(図7(a)参照)として必要な厚みを確保した上で、係止部10bとベース部材9との間に空間Sを形成することができる。また、凹み9dが底を有するので、凹み9dの部分の強度も確保することができる。
【0038】
図12は、ベース部材9に凹み9dを形成していない場合の誤取付け状態(比較例)を示す。図12(a)に示すように、第1連結部材8の後端部を下げ、第1連結部材8を前方に移動させると、図12(b)に示すように、フック部25aが係止部10bに当接して反時計方向に回動した後、図12(c)に示すように、フック部25aが係止部10bの下方に潜り込む。図12(c)に示す誤取付け状態では、ばね26によってフック部25aが係止部10bに付勢される。すなわち、ばね26が効いている。比較例においては、一旦誤取付け状態が発生すると、第1連結部材8を後方に移動させようとしても移動させることができない。このため、誤取付け状態を解除できない。
(第2の実施形態)
【0039】
図13は、本発明の第2の実施形態のスライドヒンジ31の第2ヒンジ部材12を示す。第1の実施形態では、ベース部材9の凹み9dが四角状に形成される。第2の実施形態では、凹み9eがベース部材9の幅方向の全長に亘って形成される。凹み9eの幅W2は、ベース部材9に対して第2連結部材10を所定の範囲内で位置調整してもロックレバー25が凹み9e内に収まるように設定される。他の構成は、第1の実施形態のスライドヒンジ1と同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0040】
第2の実施形態のスライドヒンジ31も第1の実施形態のスライドヒンジ1と同様な効果を奏する。
(第3の実施形態)
【0041】
図14は、本発明の第3の実施形態のスライドヒンジ41の第2ヒンジ部材12を示す。第3の実施形態のスライドヒンジ41では、ベース部材9には、凹み9dの替わりにロックレバー25の移動を許容する貫通孔9fが形成される。貫通孔9fは、例えば四角形である。貫通孔9fの幅W3は、ベース部材9に対して第2連結部材10を所定の範囲内で位置調整してもロックレバー25が貫通孔9f内に収まるように設定される。他の構成は、第1の実施形態のスライドヒンジ1と同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0042】
図15(a)に示すように、第1連結部材8の後端部を下げ、第1連結部材8を前方に移動させると、図15(b)に示すように、フック部25aが係止部10bの下方に潜り込む。図15(c)に示すように、第1連結部材8は、フック部25aが係止部10bに当たるまで前方に移動する。図15(c)が誤取付け状態を示す。
【0043】
ベース部材9には、ロックレバー25の移動を許容する貫通孔9fが形成されるので、図15(c)→図15(b)→図15(a)に示すように、ロックレバー25を操作せずに(指でロックレバー25をばねの付勢力に抗して反対方向に回動させずに)第1連結部材8を後方に移動させて、誤取付け状態を解除することができる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に具現化できる。
【0045】
上記実施形態では、ベース部材に凹み又は貫通孔を形成しているが、係止部を既存のスライドヒンジよりも高い位置に配置し、係止部とベース部材との間にロックレバーの移動を許容する空間が確保できれば、ベース部材に凹み又は貫通孔を形成しなくてもよい。
【0046】
上記実施形態では、アームに第1連結部材を位置調整可能に取り付けているが、位置調整不可能に取り付けてもよいし、アームと第1連結部材を一体にしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…スライドヒンジ
2…扉
3…本体
4…カップ
5…リンク
6…リンク
7…アーム
8…第1連結部材
8c…ストッパ
9…ベース部材
9d…凹み
9e…凹み
9f…貫通孔
10…第2連結部材
10b…係止部
11…第1ヒンジ部材
12…第2ヒンジ部材
21…第1係止機構
22…第2係止機構
25…ロックレバー
26…ばね(付勢手段)
31…スライドヒンジ
41…スライドヒンジ
W1…凹みの幅
W2…凹みの幅
W3…貫通孔の幅
図1
図2
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