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特許7332439断路器の耐震評価装置及びコンピュータで読み出し可能な記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】断路器の耐震評価装置及びコンピュータで読み出し可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20230816BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20230816BHJP
   H01H 31/02 20060101ALI20230816BHJP
   G06F 119/14 20200101ALN20230816BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/10
H01H31/02 B
G06F119:14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019204482
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021077188
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】514105011
【氏名又は名称】株式会社東光高岳
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大山 友幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔平
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118938(JP,A)
【文献】特開2002-197121(JP,A)
【文献】特開2018-124642(JP,A)
【文献】永田 清志、他,パンタグラフ形断路器損壊メカニズムの解明および耐震性向上策,平成30年 電気学会全国大会講演論文集 [DVD-ROM] 平成30年電気学会全国大会講演論文集 一般講演6,日本,2018年03月05日,pp.18-19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/28
H01H 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断路器のスラスト部の耐震強度を計算する断路器の耐震評価装置であって、
前記断路器の種類とこの種類毎に異なる加速度応答倍率とを対応付けて記憶するメモリと、
入力された前記断路器の種類に対応した前記加速度応答倍率を前記メモリから読み出し、読み出された加速度応答倍率に基づき前記スラスト部の曲げモーメントを算出し、算出された前記スラスト部の曲げモーメントに基づき前記スラスト部の危険断面の曲げモーメントを算出する曲げモーメント算出部と、
前記曲げモーメント算出部で算出された前記危険断面の曲げモーメントと前記スラスト部の材料と形状とに基づき前記危険断面の応力分布を表す応力分布係数を算出し、前記応力分布係数に基づき前記危険断面の断面係数を算出する断面係数算出部と、
前記断面係数算出部で算出された前記断面係数と前記危険断面の曲げモーメントとに基づき前記危険断面に発生する応力を算出する発生応力算出部と、
を備えることを特徴とする断路器の耐震評価装置。
【請求項2】
発生した前記応力と許容応力とに基づき前記スラスト部の安全率を算出する安全率算出部を備えることを特徴とする請求項1記載の断路器の耐震評価装置。
【請求項3】
前記断面係数算出部は、前記応力が前記スラスト部の全周筒状に分布した場合に、前記危険断面の直径に基づき前記断面係数を算出することを特徴とする請求項1又は2記載の断路器の耐震評価装置。
【請求項4】
前記断面係数算出部は、前記応力が前記スラスト部のスラスト筒状に分布した場合に、前記スラスト部の直径と応力分布角度とに基づき危険断面の幅を算出し、危険断面の幅と前記スラスト部の厚みとに基づき前記断面係数を算出することを特徴とする請求項1又は2記載の断路器の耐震評価装置。
【請求項5】
断路器のがいし部の耐震強度を計算する断路器の耐震評価装置であって、
前記断路器の種類とこの種類毎に異なる加速度応答倍率とを対応付けて記憶するメモリと、
入力された前記断路器の種類に対応した前記加速度応答倍率を前記メモリから読み出し、読み出された加速度応答倍率に基づき前記がいし部のがいし基部の曲げモーメントを算出し、前記がいし基部の曲げモーメントに基づき前記がいし基部の危険断面の曲げモーメントを算出する曲げモーメント算出部と、
前記曲げモーメント算出部で算出された前記がいし基部の危険断面の曲げモーメントと前記がいし部の保証破壊モーメントとに基づき前記がいし部の安全率を算出する安全率算出部と、
を備えることを特徴とする断路器の耐震評価装置。
【請求項6】
断路器のスラスト部の耐震強度を計算するコンピュータ・プログラムであって、
前記断路器の種類とこの種類毎に異なる加速度応答倍率とを対応付けてメモリに記憶する記憶ステップと、
入力された前記断路器の種類に対応した前記加速度応答倍率を前記メモリから読み出し、読み出された加速度応答倍率に基づき前記スラスト部の曲げモーメントを算出し、算出された前記スラスト部の曲げモーメントに基づき前記スラスト部の危険断面の曲げモーメントを算出する曲げモーメント算出ステップと、
算出された前記危険断面の曲げモーメントと前記スラスト部の材料と形状とに基づき前記危険断面の応力分布を表す応力分布係数を算出し、前記応力分布係数に基づき前記危険断面の断面係数を算出する断面係数算出ステップと、
算出された前記断面係数と前記危険断面の曲げモーメントとに基づき前記危険断面に発生する応力を算出する発生応力算出ステップと、
を備えることを特徴とするコンピュータ・プログラムを蓄積したコンピュータで読み出し可能な記録媒体。
【請求項7】
発生した前記応力と許容応力とに基づき前記スラスト部の安全率を算出する安全率算出ステップとを備えることを特徴とする請求項6記載の記録媒体。
【請求項8】
前記断面係数算出ステップは、前記応力が前記スラスト部の支え板の端から端に分布した場合に、前記危険断面の幅と前記スラスト部の厚みとに基づき危険断面係数を算出することを特徴とする請求項6又は7記載の記録媒体。
【請求項9】
前記断面係数算出ステップは、前記応力が前記スラスト部のスラスト筒状に分布した場合に、前記スラスト部の直径と応力分布角度とに基づき危険断面の幅を算出し、危険断面の幅と前記スラスト部の厚みとに基づき前記断面係数を算出することを特徴とする請求項6又は7記載の記録媒体。
【請求項10】
断路器のがいし部の耐震強度を計算するコンピュータ・プログラムであって、
前記断路器の種類とこの種類毎に異なる加速度応答倍率とを対応付けてメモリに記憶する記憶ステップと、
入力された前記断路器の種類に対応した前記加速度応答倍率を前記メモリから読み出し、読み出された加速度応答倍率に基づき前記がいし部のがいし基部の曲げモーメントを算出し、前記がいし基部の曲げモーメントに基づき前記がいし基部の危険断面の曲げモーメントを算出する曲げモーメント算出ステップと、
算出された前記がいし基部の危険断面の曲げモーメントと前記がいし部の保証破壊モーメントとに基づき前記がいし部の安全率を算出する安全率算出ステップと、
を備えることを特徴とするコンピュータ・プログラムを蓄積したコンピュータで読み出し可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断路器の耐震評価装置及びコンピュータで読み出し可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
断路器に設けられたスラスト部は、一般的に複数個のボルトによりがいし部の底部に固定されている。スラスト部は、スラスト軸とスラスト軸を円滑に回転させるベアリングとを有し、スラスト軸が回転することでがいし部を回転させる。
【0003】
このようなスラスト部に地震等で振動が加わった場合、スラスト部に応力が発生して、スラスト部が破損する場合があった。また、がいし部にも応力が発生して、がいし部が破損する場合があった。
【0004】
そこで、断路器の耐震評価装置によりスラスト部、がいし部の強度を机上で計算していた。図10のフローチャートに示すように、まず、入力部から一律7倍の加速度応答倍率を入力する(ステップS51)。JEAG5003では、加速度応答倍率は、スラスト部、がいし部に加速度0.3G(3m/S)の共振正弦を3波入力したときに1としている。
【0005】
次に、一質点による修正震度法で、3m/Sの共振正弦を3波入力し、7倍の加速度応答倍率での評価部位の曲げモーメントを算出する(ステップS52)。評価部位としては、スラスト部、がいし部である。
【0006】
次に、スラスト部、がいし部のいずれかを選択する(ステップS53)。スラスト部を選択した場合には、スラスト部の危険断面を一律で最短の直線距離として算出する(ステップS54)。算出されたスラスト部の危険断面に基づいてスラスト部の発生応力を算出してスラスト部の強度を評価していた(ステップS55)。
【0007】
一方、がいし部を選択した場合には、がいし部の危険断面をがいし基部で算出する(ステップS56)。算出されたがいし基部の危険断面に基づいてがいし基部の発生応力を算出してがいし基部の強度を評価していた(ステップS57)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-91601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のスラスト部、がいし部の強度計算では、水平中心一点切断路器や水平二点切断路器等の断路器の種類に関係なく、一律の加速度応答倍率を用いて、スラスト部の強度を計算していた。
【0010】
また、スラスト部の材料及び形状に関係なく、同じ危険断面を設定して、スラスト部に発生する応力を算出していた。
【0011】
このため、机上で計算されたスラスト部、がいし部の危険断面は、スラスト部、がいし部の実際の破損箇所とかなり相違していた。スラスト部、がいし部の応力分布も、スラスト部、がいし部の実際の破損箇所の応力分布とはかなり相違していた。
【0012】
本発明の課題は、実際の断路器とスラスト部、がいし部に適合した計算によりスラスト部、がいし部の発生応力を算出することができる断路器の耐震評価装置及びコンピュータで読み出し可能な記録媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、断路器のスラスト部の耐震強度を計算する断路器の耐震評価装置であって、前記断路器の種類とこの種類毎に異なる加速度応答倍率とを対応付けて記憶するメモリと、入力された前記断路器の種類に対応した前記加速度応答倍率を前記メモリから読み出し、読み出された加速度応答倍率に基づき前記スラスト部の曲げモーメントを算出し、算出された前記スラスト部の曲げモーメントに基づき前記スラスト部の危険断面の曲げモーメントを算出する曲げモーメント算出部と、前記曲げモーメント算出部で算出された前記危険断面の曲げモーメントと前記スラスト部の材料と形状とに基づき前記危険断面の応力分布を表す応力分布係数を算出し、前記応力分布係数に基づき前記危険断面の断面係数を算出する断面係数算出部と、前記断面係数算出部で算出された前記断面係数と前記危険断面の曲げモーメントとに基づき前記危険断面に発生する応力を算出する発生応力算出部とを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明は、発生した前記応力と許容応力とに基づき前記スラスト部の安全率を算出する安全率算出部を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明では、前記断面係数算出部は、前記応力が前記スラスト部の全周筒状に分布した場合に、前記危険断面の直径に基づき断面係数を算出することを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明では、前記断面係数算出部は、前記応力が前記スラスト部のスラスト筒状に分布した場合に、前記スラスト部の直径と応力分布角度とに基づき危険断面の幅を算出し、危険断面の幅と前記スラスト部の厚みとに基づき前記断面係数を算出することを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明は、断路器のがいし部の耐震強度を計算する断路器の耐震評価装置であって、前記断路器の種類とこの種類毎に異なる加速度応答倍率とを対応付けて記憶するメモリと、入力された前記断路器の種類に対応した前記加速度応答倍率を前記メモリから読み出し、読み出された加速度応答倍率に基づき前記がいし部のがいし基部の曲げモーメントを算出し、前記がいし基部の曲げモーメントに基づき前記がいし基部の危険断面の曲げモーメントを算出する曲げモーメント算出部と、前記曲げモーメント算出部で算出された前記がいし基部の危険断面の曲げモーメントと前記がいし部の保証破壊モーメントとに基づき前記がいし部の安全率を算出する安全率算出部を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、断路器のスラスト部の耐震強度を計算するコンピュータ・プログラムを蓄積したコンピュータで読み出し可能な記録媒体を含む。また、本発明は、断路器のがいし部の耐震強度を計算するコンピュータ・プログラムを蓄積したコンピュータで読み出し可能な記録媒体を含む。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、断路器の種類に応じた加速度応答倍率と、スラスト部の材料と形状とに基づき断面係数を算出し、算出された断面係数と危険断面の曲げモーメントとに基づき危険断面に発生する応力を算出する。従って、実際の断路器とスラスト部に適合した計算によりスラスト部の発生応力を算出することができる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、発生応力と許容応力とに基づきスラスト部の安全率を算出することができる。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、応力がスラスト部の全周筒状に分布した場合に、危険断面の直径に基づき危険断面係数を算出することができる。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、応力がスラスト部のスラスト筒状に分布した場合に、スラスト部の直径と応力分布角度とに基づき危険断面の幅を算出し、危険断面の幅とスラスト部の厚みとに基づき断面係数を算出することができる。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、断路器の種類に応じた加速度応答倍率に基づきがいし基部の曲げモーメントを算出し、がいし基部の曲げモーメントに基づきがいし基部の危険断面の曲げモーメントを算出する。従って、実際の断路器とがいし部に適合した計算によりがいし部の安全率を算出することができる。
【0024】
請求項6~10に係る発明は、請求項1~5に係る断路器の耐震評価装置の発明に対応するコンピュータで読み取り可能な記録媒体の発明である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る断路器の耐震評価装置を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る断路器の耐震評価装置の断路器の種類と定格電圧とに応じた加速度応答倍率を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る水平中心一点切断路器を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る水平二点切断路器を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る断路器の溶接補強タイプのスラスト部の危険断面の応力分布及び直径を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る断路器の溶接補強タイプのスラスト部の断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る断路器の直付支えタイプのスラスト部の危険断面の応力分布及び応力分布角度を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る断路器の直付支えタイプのスラスト部の断面図である。
図9】本発明の実施形態に係る断路器の耐震評価装置のスラスト部及びがいし部の処理を示すフローチャートである。
図10】従来の断路器の耐震評価装置のスラスト部及びがいし部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る断路器の耐震評価装置及びコンピュータで読み出し可能な記録媒体について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る断路器の耐震評価装置を示す図である。図1に示す断路器の耐震評価装置は、断路器のスラスト部、がいし部の耐震強度を計算する。断路器の耐震評価装置は、入力部11、加速度応答倍率メモリ12、プログラムメモリ15を有するCPU(Central Processing Unit)14、出力部16を備える。
【0028】
入力部11は、キーボード、マウス等であり、断路器の種類の情報やスラスト部の材料、形状、構造等の情報やスラスト部やがいし部の質量、半径、厚み等の情報を入力する。
【0029】
加速度応答倍率メモリ12は、断路器の種類とこの種類毎に異なる加速度応答倍率とを対応付けて図2に示すようなテーブルに記憶する。テーブルには、断路器の種類と定格電圧と加速度応答倍率とを対応つけて格納してある。
【0030】
例えば、断路器が図3に示すような水平中心一点切断路器の場合には、定格電圧が72kVで加速度応答倍率がf1(例えば6.2倍)、定格電圧が168kVで加速度応答倍率がf2(例えば6.4倍)、定格電圧が300kVで加速度応答倍率がf3(例えば5.9倍)である。
【0031】
断路器が図4に示すような水平二点切断路器の場合には、定格電圧が72kVで加速度応答倍率がf4(例えば6.3倍)、定格電圧が168kVで加速度応答倍率がf5(例えば5.8倍)である。
【0032】
図3に示すような水平中心一点切断路器において、3つのベース22aの内の1つのベース22aに操作装置21が設けられ、ベース22aの両端にはスラスト部24a,24bを介して回転がいし23a,23bが立てられている。
【0033】
操作装置21を操作することで、回転がいし23a,23bが回転し、回転がいし23aの先端に設けられた導電部25aと回転がいし23bの先端に設けられた導電部25bとが接続して導通する。
【0034】
図4に示すような水平二点切断路器において、3つのベース22bはベース22cで連結され、ベース22bの両端部には2段からなる固定がいし23d1,23d2,23e1,23e2が立てられている。ベース22bの略中央部にはスラスト部24cを介して2段からなる回転がいし23c1,23c2が立てられている。回転がいし23c2の先端には導電部25cが設けられている。回転がいし23c1,23c2が回転することで、回転がいし23c1,23c2の先端に設けられた導電部25cが固定がいし23d2の先端と固定がいし23e2の先端とが接続されることで導通する。
【0035】
このように、図3に示すような水平中心一点切断路器では、2つのスラスト部24a,24bと、2つの回転がいし23a,23bを有するのに対して、図4に示すような水平二点切断路器では、1つのスラスト部24cと、1つの回転がいし23c1,23c2とから構成されるので、加速度応答倍率は異なる。加速度応答倍率が異なる理由としては、がいし上部に搭載される導電部の形状および重量の違い、定格によるがいし段数およびがいし太さの違いによる。
【0036】
CPU14は、入力部11から入力された断路器の種類の情報に対応する加速度応答倍率を加速度応答倍率メモリ12から読み出す。CPU14は、スラスト部24(以下、図3に示すスラスト部24a,24b及び図4に示すスラスト部24cを24で表す)の発生応力や安全率を算出するためのプログラムを格納したコンピュータで読み取り可能な記録媒体からなるプログラムメモリ15を有する。CPU14は、プログラムメモリ15に格納されたプログラムを実行することで、スラスト部24の発生応力や安全率を算出する。
【0037】
CPU14は、プログラムメモリ15に格納されたプログラムを実行する手段として、曲げモーメント算出部17、断面係数算出部18、発生応力算出部19、安全率算出部20とを備える。
【0038】
曲げモーメント算出部17は、加速度応答倍率メモリ12から読み出した加速度応答倍率に基づきスラスト部24又はがいし基部の曲げモーメントを算出し、算出されたスラスト部24の曲げモーメント又はがいし基部の曲げモーメントに基づきスラスト部24又はがいし基部の危険断面の曲げモーメントを算出する。
【0039】
断面係数算出部18は、曲げモーメント算出部17で算出されたスラスト部24の危険断面の曲げモーメントとスラスト部24の材料と形状とに基づき危険断面の応力分布を表す応力分布係数を算出し、応力分布係数に基づき断面係数を算出する。
【0040】
断面係数算出部18は、応力がスラスト部24の全周筒状に分布した場合に、危険断面の直径に基づき危険断面係数を算出する。断面係数算出部18は、応力がスラスト部24のスラスト筒状に分布した場合に、スラスト部24の直径と応力分布角度とに基づき危険断面の幅を算出し、危険断面の幅とスラスト部24の厚みとに基づき断面係数を算出する。
【0041】
発生応力算出部19は、断面係数算出部18で算出された断面係数と危険断面の曲げモーメントとに基づき危険断面に発生する応力を算出する。
【0042】
安全率算出部20は、発生応力算出部19で算出された危険断面に発生する応力と許容応力とに基づきスラスト部24の安全率を算出する。安全率算出部20は、曲げモーメント算出部17で算出されたがいし基部の危険断面の曲げモーメントとがいし部の保証破壊モーメントとに基づきがいし部の安全率を算出する。
【0043】
出力部16は、表示装置、プリンタ等であり、発生応力算出部19で算出された発生応力や安全率算出部20で算出されたスラスト部24又はがいし部の安全率を出力する。
【0044】
次に、スラスト部24の材質と構造、形状によりスラスト部24の危険断面の応力分布や発生応力が異なることについて説明する。
【0045】
まず、図5に、溶接補強タイプのスラスト部24の危険断面の応力分布及び直径を示す。図6に溶接補強タイプのスラスト部の断面図を示す。図6に示すように、スラスト軸24A1とベアリング24A2を有するスラスト部24は、複数のボルト26Aにより、がいし基部23A1を有するがいし部23Aに連結されている。
【0046】
図5(a)に示すように、スラスト部24の材質は、鉄鋼であり、スラスト下側のA部とB部が溶接で固定される。図5(a)に示すように、A部の剛性は高く、B部は、最弱点部位となる。このため、図5(b)に示すように、応力は全周筒状に分布する。断面係数算出部18は、応力がスラスト部24の全周筒状に分布した場合に、図5(c)に示すように、危険断面の直径do,diに基づき危険断面係数を算出する。
【0047】
次に、図7に直付支えタイプのスラスト部の危険断面の応力分布及び応力分布角度を示す。図8に直付支えタイプのスラスト部の断面図を示す。図7及び図8に示すように、スラスト軸24B1とベアリング24B2を有するスラスト部24は、4つのボルト26Bにより長方形の支え板27に固定され、がいし基部23B1を有するがいし部23Bに連結されている。
【0048】
図7(a)に示すように、スラスト部24の材質は、鋳物であり、支え板27が長方形である場合に、図7(b)に示すように、応力はスラスト筒状に沿って分布する。スラスト部24の危険断面の応力分布角度は、略90度である。
【0049】
また、図示していないが、スラスト部24の材質が鉄鋼で、スラスト部24の構造ががいし部にボルトで固定され、スラスト下側がフリーである場合に、応力は端から端に分布する。
【0050】
次に、このように構成された実施形態に係る断路器の耐震評価装置の動作を図9に示すフローチャートを参照しながら、詳細に説明する。
【0051】
まず、入力部11は、断路器の種類と定格電圧等の情報やスラスト部24の材質、構造、形状、質量、半径、厚み等の情報を入力する(ステップS11)。
【0052】
次に、CPU14は、入力部11から入力された断路器の種類に対応する加速度応答倍率を加速度応答倍率メモリ12から読み出す(ステップS12)。入力部11から入力された断路器の種類が水平中心一点切断路器の場合で定格電圧が72kVの場合には、加速度応答倍率メモリ12から加速度応答倍率f1(例えば6.2倍)が読み出される。断路器の種類が水平二点切断路器の場合で定格電圧が168kVの場合には、加速度応答倍率メモリ12から加速度応答倍率f5(例えば5.8倍)が読み出される。
【0053】
曲げモーメント算出部17は、加速度応答倍率メモリ12から読み出された加速度応答倍率を用いて、スラスト部24又はがいし基部23A1,23B1での加速度0.3G(3m/S)の共振正弦を3波入力(3回振動)したときの曲げモーメントMを式(1)により算出する(ステップS13)。
【0054】
M=0.3×f×Σmr …(1)
ここで、fは、加速度応答倍率メモリ12から読み出された加速度応答倍率である。mは、図3図4に示す断路器を構成するスラスト部24、がいし部の各要素の質量である。rはスラスト部24、がいし部の各要素と大地との距離を表す。式(1)から加速度応答倍率fに応じて曲げモーメントMが変化することがわかる。
【0055】
次に、ステップS14でスラスト部24を選択する(ステップS14)。スラスト部24が図7に示すようなボルト止めの場合、ボルト止め構造の分担を式(2)により算出する。
【0056】
Mmax=M/L1 …(2)
ここで、L1は、支え板27の四隅に設けられた4つのボルト穴の内の対角線上の2つのボルト穴間の距離である。
【0057】
次に、曲げモーメント算出部17は、式(2)で算出された曲げモーメントMmaxに基づきスラスト部24の危険断面の曲げモーメントを式(3)により算出する(ステップS15)。
【0058】
M1=Mmax×L2 …(3)
ここで、L2は、危険断面と危険断面に最も近いボルト穴との最短距離である。
【0059】
スラスト部24の材質(材料)、構造(形状)に応じて、スラスト部24の危険断面、がいし部の危険断面の応力分布が変化する。このため、断面係数算出部18は、曲げモーメント算出部17で算出されたスラスト部24の危険断面の曲げモーメントとスラスト部24の材料と形状とに基づき危険断面の応力分布を表す応力分布係数を算出し(ステップS16)、算出された応力分布係数に基づき断面係数を算出する(ステップS17)。
【0060】
図5に示す溶接補強タイプのスラスト部24は、筒全周に応力が分布するため、応力分布係数としての応力分布角度は、360度であり、パイプ形状の断面係数Zは、式(4)により算出する。
【0061】
Z={π(do-di)/do}/32…(4)
ここで、doは、スラスト部24の直径である。diは、スラスト部24の内径である。
【0062】
また、図7に示すボルトによる直付けタイプのスラスト部24は長方形又は正方形であり、材質が鋳物であり、脆性材料である。このため、引っ張りを受ける側に応力が集中する分布となり、応力はスラスト筒状に沿って分布する。
【0063】
また、スラスト形状により応力分布係数としての応力分布角度θが概ね決定される。応力分布角度θは、スラスト部24が長方形であるかあるいは正方形であるのかによって異なる。スラスト部24が長方形である場合よりも正方形である場合の方が、応力分布角度θは、大きい。
【0064】
断面係数算出部18は、分布角度θから危険断面の幅を式(5)により算出する。
【0065】
L4=(d×π)×(θ°/360°)…(5)
dはスラスト部24の直径である。
【0066】
次に、断面係数算出部18は、危険断面の幅L4から断面係数Zを式(6)により算出する。
【0067】
Z=(L4×t)/6 …(6)
tはスラスト部24の厚みである。
【0068】
次に、発生応力算出部19は、危険断面の曲げモーメントと危険断面係数Zに基づき危険断面の発生応力σを式(7)により算出する(ステップS18)。
【0069】
σ=M1/Z …(7)
安全率算出部20は、発生応力算出部19で算出された危険断面に発生する応力σと許容応力σmaxとに基づきスラスト部24の安全率sfを式(8)で算出する(ステップS19)。
sf=σmax/σ…(8)
また、スラスト部24の材質が鉄鋼であり、支え板の端から端まで直線で応力が分布した場合には、端から端までの幅をL4として、断面係数Zを式(6)により算出する。
【0070】
一方、ステップS14において、がいし部23A,23Bを選択した場合には、曲げモーメント算出部17は、がいし基部23A1,23B1の曲げモーメントに基づきがいし基部23A1,23B1の危険断面の曲げモーメントを算出する(ステップS20)。
【0071】
安全率算出部20は、曲げモーメント算出部17で算出されたがいし基部23A1,23B1の危険断面の曲げモーメントと、がいし部23A,23Bの保証破壊モーメントMaとに基づき、がいし部23A,23Bの安全率Sfを式(9)により算出する(ステップS21)。がいし部23A,23Bの保証破壊モーメントは、式(10)で表される。
【0072】
Sf=Ma/M …(9)
Ma={π/(D)・σa×10-3}/32(N・m)…(10)
σaは、保証破壊応力(N/mm)である。Dは、最下段のがいし部の胴径(mm)である。
【0073】
このように実施形態に係る断路器の耐震評価装置によれば、断路器の種類に応じた加速度応答倍率と、スラスト部の材料と形状とに基づき断面係数を算出し、算出された断面係数と危険断面の曲げモーメントとに基づき危険断面に発生する応力を算出する。従って、実際の断路器とスラスト部に適合した計算によりスラスト部の発生応力を算出することができる。
【0074】
また、発生応力と許容応力とに基づきスラスト部の安全率を算出することができる。また、応力がスラスト部の全周筒状に分布した場合に、危険断面の直径に基づき危険断面係数を算出することができる。
【0075】
また、応力がスラスト部のスラスト筒状に分布した場合に、スラスト部の直径と応力分布角度とに基づき危険断面の幅を算出し、危険断面の幅とスラスト部の厚みとに基づき断面係数を算出することができる。
【0076】
また、断路器の種類に応じた加速度応答倍率に基づきがいし基部の曲げモーメントを算出し、がいし基部の曲げモーメントに基づきがいし基部の危険断面の曲げモーメントを算出する。従って、実際の断路器とがいし部に適合した計算によりがいし部の安全率を算出することができる。
【符号の説明】
【0077】
11 入力部
12 加速度応答倍率メモリ
14 CPU
15 プログラムメモリ
16 出力部
17 曲げモーメント算出部
18 断面係数算出部
19 発生応力算出部
20 安全率算出部
21 操作装置
22a~22b,22A,22B ベース
23a~23c1,23c2 回転がいし
23A,23B がいし部
23A1,23B1 がいし基部
23d1,23d2~23e1,23e2 固定がいし
24a~24c スラスト部
24A1,24B1 スラスト軸
24A2,24B2 ベアリング
25a~25c 導電部
26A,26B ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10