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特許7332455レンズ付き透明基板、半導体発光素子、及びレンズ付き透明基板の製造方法
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  • 特許-レンズ付き透明基板、半導体発光素子、及びレンズ付き透明基板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】レンズ付き透明基板、半導体発光素子、及びレンズ付き透明基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/58 20100101AFI20230816BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20230816BHJP
   G02B 1/02 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
H01L33/58
G02B3/00 Z
G02B1/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019221046
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021090031
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一ノ倉 啓慈
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 一義
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-232866(JP,A)
【文献】特開2016-111085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0225149(US,A1)
【文献】米国特許第10128419(US,B1)
【文献】特表2017-521872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を第1面で入射して前記第1面の反対側に位置する第2面から出射するサファイア基板と、
前記光を入射する第1面と前記光を出射するレンズ形状の第2面とを有し、前記サファイア基板の前記第2面から出射した前記光の放射角度を制御して前記光を集光する集光レンズと、
前記サファイア基板及び前記集光レンズの熱膨張係数と同じ熱膨張係数を有し、前記サファイア基板の第2面と前記集光レンズの第1面とを接合する、無機材料よりなる接合部材と、を含み、
前記接合部材は、前記サファイア基板の第2面に所定のパターンで形成された、前記集光レンズを支持する突状部材と、前記サファイア基板の第2面の、前記突状部材の設けられていない領域に形成された成膜部とを含み、前記突状部材と前記成膜部とは一体構造をなしており、
前記突状部材と前記成膜部との境界は、識別可能であり、
前記突状部材は、前記集光レンズに接しているレンズ付きサファイア基板。
【請求項2】
前記集光レンズは、サファイア(Al)、石英(SiO)、サファイア(Al)含有石英(SiO)、あるいはホウケイ酸ガラスよりなる請求項1に記載のレンズ付きサファイア基板。
【請求項3】
前記接合部材は、サファイア(Al)、石英(SiO)、サファイア(Al)含有石英(SiO)、あるいはホウケイ酸ガラスよりなる請求項1に記載のレンズ付きサファイア基板。
【請求項4】
前記接合部材は、30nm~100nmの厚さを有する請求項1に記載のレンズ付きサファイア基板。
【請求項5】
光を第1面で入射して前記第1面の反対側に位置する第2面から出射するサファイア基板と、
前記光を入射する第1面と前記光を出射するレンズ形状の第2面とを有し、前記サファイア基板の前記第2面から出射した前記光の放射角度を制御して前記光を集光する集光レンズと、
前記サファイア基板及び前記集光レンズの熱膨張係数と同じ熱膨張係数を有し、前記サファイア基板の第2面と前記集光レンズの第1面とを接合する、無機材料よりなる接合部材と、を含むレンズ付きサファイア基板と、
前記サファイア基板の前記第1面に形成されたバッファ層、n型クラッド層、発光層、及びp型クラッド層を少なくとも含む半導体積層構造と、を含み、
前記接合部材は、前記サファイア基板の第2面に所定のパターンで形成された、前記集光レンズを支持する突状部材と、前記サファイア基板の第2面の、前記突状部材の設けられていない領域に形成された成膜部とを含み、前記突状部材と前記成膜部とは一体構造をなしており、
前記突状部材と前記成膜部との境界は、識別可能であり、
前記突状部材は、前記集光レンズに接している半導体発光素子。
【請求項6】
レンズ付きサファイア基板を製造するレンズ付きサファイア基板の製造方法において、
サファイア基板を用意する工程と、
前記サファイア基板の面に複数の突状部材を形成する工程と、
前記複数の突状部材に光の放射角度を制御して前記光を集光する集光レンズを底面が接触するように設置する工程と、
前記集光レンズを前記サファイア基板に設置した状態で前記突状部材により形成された隙間に前記サファイア基板及び前記集光レンズの熱膨張係数と同一の熱膨張係数の接合部材を形成する工程と、を含むことを特徴とするレンズ付きサファイア基板の製造方法。
【請求項7】
前記集光レンズの球面側の面を保持具により保持する工程をさらに含む、
請求項6に記載のレンズ付きサファイア基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ付き透明基板、半導体発光素子、及びレンズ付き透明基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、出射光の放射角度を制御する半球レンズを硬化性シリコーン樹脂等の液状封止材を使用して半導体発光素子に接合した半導体ダイオードパッケージが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-034806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この半導体ダイオードパッケージによると、出射光の波長が350nmより短い波長領域の深紫外光領域で発光する半導体発光素子に適用すると、シリコーン樹脂等が深紫外光領域の光を吸収するため、光出力が低下し、シリコーン樹脂が劣化して半球レンズを保持することが困難になるという不具合が生じるおそれがある。
【0005】
その結果、信頼性と高出力化の両立が期待できる半導体発光素子を提供することができない。
【0006】
そこで、本発明は、半球レンズ等の集光レンズを確実に保持し、また当該集光レンズによって光の集光を図ることにより、信頼性と高出力化の両立を期待することができるレンズ付き透明基板、半導体発光素子、及びレンズ付き透明基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を実現するため、以下のレンズ付き透明基板、半導体発光素子、及びレンズ付き透明基板の製造方法を提供する。
(1) 光を第1面で入射して前記第1面の反対側に位置する第2面から出射する透明基板と、
前記光を入射する第1面と前記光を出射するレンズ形状の第2面とを有し、前記透明基板の前記第2面から出射した前記光の放射角度を制御して前記光を集光する集光レンズと、
前記透明基板と前記集光レンズとの熱膨張係数に整合された熱膨張係数を有し、前記透明基板の第2面と前記集光レンズの第1面とを接合する、無機材料よりなる接合部材と、を含むレンズ付き透明基板。
(2) (1)において、前記集光レンズは、サファイア(Al)、石英(SiO)、サファイア(Al)含有石英(SiO)、あるいはホウケイ酸ガラスよりなるレンズ付き透明基板。
(3) (1)において、前記接合部材は、サファイア(Al)、石英(SiO)、サファイア(Al)含有石英(SiO)、あるいはホウケイ酸ガラスよりなるレンズ付き透明基板。
(4) (1)において、前記接合部材は、30nm~100nmの厚さを有するレンズ付き透明基板。
(5) (1)において、前記接合部材は、前記透明基板の第2面に所定のパターンで形成された、前記集光レンズを支持する突状部材と、前記透明基板の第2面の、前記突状部材の設けられていない領域に形成された成膜部とを含み、前記突状部材と前記成膜部とは一体構造をなしているレンズ付き透明基板。
(6) 光を第1面で入射して前記第1面の反対側に位置する第2面から出射する透明基板と、
前記光を入射する第1面と前記光を出射するレンズ形状の第2面とを有し、前記透明基板の前記第2面から出射した前記光の放射角度を制御して前記光を集光する集光レンズと、
前記透明基板と前記集光レンズとの熱膨張係数に整合された熱膨張係数を有し、前記透明基板の第2面と前記集光レンズの第1面とを接合する、無機材料よりなる接合部材と、を含むレンズ付き透明基板と、
前記透明基板の前記第1面に形成されたバッファ層、n型クラッド層、発光層、及びp型クラッド層を少なくとも含む半導体積層構造と、を含む半導体発光素子。
(7) レンズ付き透明基板を製造するレンズ付き透明基板の製造方法において、
透明基板を用意する工程と、
前記透明基板の面に複数の突状部材を形成する工程と、
前記複数の突状部材に光の放射角度を制御して前記光を集光する集光レンズを底面が接触するように設置する工程と、
前記集光レンズを前記透明基板に設置した状態で前記突状部材により形成された隙間に前記透明基板及び前記集光レンズの熱膨張係数と同一の熱膨張係数の接合部材を形成する工程と、を含むことを特徴とするレンズ付き透明基板の製造方法。
(8) (7)において、前記集光レンズの球面側の面を保持具により保持する工程をさらに含む、レンズ付きサファイア基板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半球レンズ等の集光レンズを確実に保持し、また当該集光レンズによって光の集光を図ることによって信頼性と高出力化の両立を期待することができるレンズ付き透明基板、半導体発光素子、及びレンズ付き透明基板の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のレンズ付きサファイア基板の一実施の形態を説明する説明図である。
図2図1におけるレンズ付きサファイア基板を構成するサファイア基板を説明する説明図である。
図3図1における半球レンズを支持する突状部材を有したサファイア基板を説明する説明図である。
図4図3における突状部材の配置パターンの一例を説明する説明図である。
図5】突状部材の配置の一例を説明する説明図であり、(a)は、サファイア基板の内側の領域に接合部材の原料が届きにくい配置の一例を示す図であり、(b)は、サファイア基板の内側の領域に接合部材の原料が届きやすい配置の一例を示す図である。
図6図3における突状部材を有したサファイア基板上に半球レンズを載置したレンズ付きサファイア基板の完成前の状態を説明する説明図である。
図7】レンズ付きサファイア基板の製造方法を説明する説明図であって、(a)は、ALD(atomic layer deposition)法によって形成される成膜部の成膜中の状態を示し、(b)は、ALD法によって成膜が終了した成膜部を示すものである。
図8】レンズ付きサファイア基板の完成直前の状態を説明する説明図である。
図9】本発明の半導体発光素子の一実施の形態を説明する説明図である。
図10】突状部材の変形例を説明する説明図である。
図11】半球レンズの変形例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
(レンズ付きサファイア基板)
図1は、レンズ付き透明基板の一例としてのレンズ付きサファイア基板1を示す。このレンズ付きサファイア基板1は、深紫外光を入射して出射するサファイア基板3と、サファイア基板3から出射された深紫外光を集光するレンズとしての半球レンズ5と、厚さtを有し、サファイア基板3に半球レンズ5を接合するサファイア(Al)よりなる接合部材7と、を備えている。ここで、深紫外光とは、波長250nm以上350nm以下の紫外光をいう。深紫外光は、例えば、サファイア基板3上に形成される半導体層から発光される「光」の一例である。以下では、「光」の一例として、深紫外光を例に挙げて説明するが、「光」は、深紫外光に限定されるものではなく、特定の範囲の波長を有する光に限られない。
【0012】
サファイア基板3は、サファイア(Al)よりなり、深紫外光を入射する第1面3aと、この第1面3aの反対側に位置して、第1面3aから入射された深紫外光を出射する第2面3bとを有している。
【0013】
半球レンズ5は、深紫外光を入射する非レンズ形状の第1面5aと深紫外光を出射するレンズ形状の第2面5bとを有し、サファイア基板3の第2面3bから出射した深紫外光の放射角度を制御して深紫外光を集光する。すなわち、半球レンズ5は、球を半分にした形状と同一形状を有している。
【0014】
接合部材7は、サファイア基板3と半球レンズ5との熱膨張係数に整合された熱膨張係数を有し、サファイア基板3の第2面3bと半球レンズ5の第1面5aとを接合する、無機材料よりなる。
【0015】
具体的には、接合部材7は、サファイア基板3及び半球レンズ5と同一の材料により形成される。より具体的には、接合部材7は、サファイア(Al)により形成される。接合部材7の熱膨張係数を、サファイア基板3の熱膨張係数及び半球レンズ5の熱膨張係数と整合させるためである。
【0016】
接合部材7を設け、この接合部材7を介して半球レンズ5をサファイア基板3に接合することにより、半球レンズ5等の集光レンズを確実に保持し、また光の集光を図ることによって信頼性と高出力化の両立を期待することができるレンズ付きサファイア基板1を提供することが可能となる。
【0017】
また、接合部材7をサファイア基板3及び半球レンズ5と同一の材料で形成することにより、サファイア基板3、半球レンズ5及び接合部材7間での光の屈折率が同一になり深紫外光の乱反射等を抑制することができる。
【0018】
接合部材7は、30nm~100nmの厚さを有する。接合部材7が30nmよりも薄すぎると接着力の低下につながる虞があり、接合部材7が100nmよりも厚すぎると膜の形成の工数が多くなることによって製造工数の増加につながる虞があるためである。
【0019】
(レンズ付きサファイア基板1の製造方法)
次に、図2図8を参照し、レンズ付きサファイア基板1の製造方法を説明する。
【0020】
図2は、前述したレンズ付きサファイア基板1を構成するサファイア基板3を示す。このサファイア基板3を構成するサファイアの波長280nmにおける屈折率nは、n=1.820である。一方の第1面3aに窒化物半導体層31(図9参照)が形成されるべきサファイア基板3を用意する。本実施の形態では、上面視で略正四角形に形成された略直方体状のサファイア基板3を用意する。
【0021】
ここで、上面視とは、深紫外光が進む方向からレンズ付きサファイア基板1を視た場合をいい、側面視とは、深紫外光が進む方向と垂直な方向から視た場合をいう。以下、同様の説明は、省略する。
【0022】
図3は、図1における半球レンズ5を支持する突状部材を有したサファイア基板3を説明する説明図である。サファイア基板3の他方の第2面3bに複数の突状部材9a~9eを形成する。
【0023】
図4は、図3における突状部材の配置パターンの一例を説明する説明図であり、図3を上面視方向から視たものである。突状部材9a~9eは、半球レンズ5を安定的に支持するために、サファイア基板3の第2面3b内に対称的に配置されることが望ましい。本実施の形態では、一例として、4つの突状部材9a~9dがサファイア基板3の上面視で四隅付近に配置されているとともに、1つの突状部材9eがサファイア基板3の上面視で中央付近に配置されている。
【0024】
なお、突状部材9a~9eの個数は、5個に限定されるものではなく、例えば、3個、4個、又は6個以上でもよい。但し、突状部材9a~9e(以下、突状部材9a~9eを総称する場合は、「突状部材9」ともいう。)の数が一定数以上となると、サファイア基板3と半球レンズ5との隙間に接合部材7の原料が行き届かなくなる領域が生じることによって成膜されない領域が生じる虞があり、また、突状部材9a~9eが一定数以下となると、半球レンズ5を安定的に支持できなくなる虞がある。そのため、突状部材9a~9eの個数は、5個程度とすることが好ましい。
【0025】
図5は、突状部材9の配置の一例を説明する説明図であり、(a)は、サファイア基板3の内側の領域に接合部材7の原料が届きにくい配置の一例を示す図であり、(b)は、サファイア基板3の内側の領域に接合部材7の原料が届きやすい配置の一例を示す図である。図5(a)に示すように、突状部材9が周囲を囲むような枠状の配置を取る場合、サファイア基板3と半球レンズ5との間に接合部材7の原料を供給するときに(詳細は後述する)、枠状に配置された周囲の突状部材9によって外周側が先に閉じてしましい、内側へ原料が届かなくなる場合がある。
【0026】
したがって、内側の領域から先に原料を供給するためには、突状部材9は、原料を供給する経路において、内側の領域から外側の領域に向かうにつれて隣接する突状部材9の間隔が広くなるようにしつつ、かつ、対称的に配置することが好ましい。具体的には、図5(b)に示すように、十字形に配置することが好ましい。
【0027】
突状部材9を図5(b)に示すように十字形に配置した構成において、突状部材9の個数について検討する。上述したようにサファイア基板3及び接合部材7がいずれもサファイア(Al)で形成されている場合、接合部材7の原料と突状部材9とが接続する部分の平均的な屈折率の低下を抑制するために、突状部材9の上面視における面積の合計値を半球レンズ5の上面視における面積の20%程度までにしておくことが好ましい。
【0028】
また、供給された原料により、サファイア基板3と半球レンズ5との空間を埋めて、サファイア基板3と半球レンズ5との界面を消失させてサファイア基板3と半球レンズ5とを接続させるという意図からすると、突状部材9の数が多い場合、原料の供給により消失する界面の面積が減少するため、それに応じて接合部材7の接着力が減少してしまう虞がある。かかる観点からも、突状部材9の面積の合計値が半球レンズ5の外形(破線参照)に対応する面積の20%を上限にすることが好ましい。
【0029】
突状部材9が対称的に形成されるとともにその間隔が内側に向かうにつれて次第に狭くなるように形成される場合、突状部材9の最小の個数は、図4に示すように5個である。また、突状部材9の最大の個数は、形成される突状部材9の上面視における面積の合計値が接続する半球レンズ5の上面視における面積の20%を超えないように設定することが好ましい。さらに、突状部材9の面積の合計値が接続する半球レンズ5の上面視における面積の10%を超えないように形成することがさらに好ましい。
【0030】
また、突状部材9a、突状部材9b、突状部材9c及び突状部材9dは、必ずしも上面視におけるサファイア基板3の隅部に配置しなくてもよく、例えば、サファイア基板3に半球レンズ5を載置した状態における半球レンズ5の外周付近に略均等に配置してもよい。
【0031】
図6は、図3における突状部材9a~9eを有したサファイア基板3上に半球レンズを載置したレンズ付きサファイア基板の完成前の状態を説明する説明図である。複数の突状部材9a~9eに深紫外光を屈折させる半球レンズ5を底面としての第1面5aが接触するように設置する。
【0032】
半球レンズ5をサファイア基板3上に載置した状態で突状部材9a~9eにより形成された隙間にサファイア基板3及び半球レンズ5と同一の材料の接合部材7を形成する。
【0033】
また、上述の工程において、サファイア基板3の第2面3bに、パターニングして、スパッタリング装置でサファイアを成膜して高さ40±4nmで直径40±4nmの円筒形をした突状部材9a~9eを形成する。
【0034】
なお、突状部材9a~9eは、突状部材9がサファイア基板3と同一の材料で形成されている場合は、サファイア基板3をエッチングすることによって形成してよい。エッチングによって形成させる場合、サファイア基板3と突状部材9との密着性を向上させることができる。
【0035】
図7(a)は、ALD(atomic layer deposition)法によって形成される成膜部の成膜中の状態を示し、図7(b)は、ALD法によって成膜が終了した成膜部を示すものである。半球レンズ5を、突状部材9a~9eの上に載せて、原子層堆積装置にセットし、該原子堆積装置で、サファイア基板3、半球レンズ5及び突状部材9a~9eの間に形成された隙間に原料を供給して成膜部7aを徐々に形成する。
【0036】
図7(a)に示すように、隙間への成膜を始めると、中央に配置されている突状部材9e付近から成膜が形成されて徐々に中心付近から外周付近に成膜が進んでいく。このとき、成膜部7aが形成されていくが、まだ、成膜部7aが形成されていない部分7bが残っている。そして、図7(b)に示すように成膜部7aが完成する。
【0037】
図8は、レンズ付きサファイア基板1の完成直前の状態を説明する説明図である。接合部材7は、サファイア基板3の第2面3bに所定のパターンで形成された、半球レンズ5を支持する突状部材9a~9eと、サファイア基板3の第2面3bの、突状部材9a~9eの設けられていない領域に設けられた成膜部7aとが形成される。突状部材9a~9eと成膜部7aとは、一体構造をなしている。突状部材9a~9eと成膜部7aとの境界は、例えば、TEM(Transmission Electron Microscope)等で得られる画像によって識別することができる。
【0038】
突状部材9が形成された後に有機物の汚れが残った状態で、接合部材7を形成し、その汚れが残った部分に強い深紫外光が当たる場合、深紫外光が当たる部分に気泡が発生する虞がある。そのため、突状部材9が形成された後に、接合部材7が形成されるサファイア基板3と半球レンズ5とに対して、深紫外光によって反応する有機物を除去する工程を設けてもよい。有機物を除去する工程には、例えば、酸素プラズマ洗浄等を用いてよい。
【0039】
(半導体発光素子)
図9は、本発明の半導体発光素子の一実施の形態を説明する説明図である。半導体発光素子100は、波長が250nm以上350nm以下の紫外光(深紫外光)を発光する紫外光LEDからなる。図9に示されるように、半導体発光素子100は、サファイア基板3と、サファイア基板3の第1面3a上に形成されたAlGaN系の窒化物半導体層31と、電極32と、を有している。
【0040】
本実施の形態では、窒化物半導体層31は、サファイア基板3側から順次、AlNからなるバッファ層31a、n型AlGaNからなるnクラッド層31b、AlGaNを含む発光層31c、p型AlGaNからなるpクラッド層31d、p型GaNからなるコンタクト層31eを順次形成して構成されている。電極32は、コンタクト層31e上に形成されたアノード側電極部(p電極)32aと、nクラッド層31b上に形成されたカソード側電極部(n電極)32bと、を有している。
【0041】
半導体発光素子100は、図示しないパッケージに収容される。半導体発光素子100は、サファイア基板3を上側(パッケージ基板と反対側)とし、窒化物半導体層31を下側(パッケージ基板側)として、パッケージ基板にフリップチップ実装されている。図示していないが、電極32a,32bは、パッケージ基板に設けられた電極と、金バンプ等を介して電気的に接続されている。
【0042】
本実施の形態では、発光層31cで発光した紫外光は、サファイア基板3を通って半導体発光素子100の外へと導かれる。そのため、サファイア基板3としては、発光した紫外光の透過率がなるべく高いものを用いることが望ましく、より具体的には、発光した紫外光の透過率が70%以上のものを用いることが望ましい。なお、サファイア基板3以外にAlN基板等の単結晶基板を用いることができる。
【0043】
<変形例>
図10(a)~(d)は、突状部材9a~9eの変形例を説明する説明図である。上述の工程において、サファイア基板3の第2面3bに、パターニングして、スパッタリング装置でサファイアを成膜して所定の立体形状をした突状部材9a~9eを形成する。
【0044】
図10(a)に示すように、例えば、突状部材9a~9eは、サファイア基板3の上面視で略長円状に形成してもよい。これにより、半球レンズ5を安定して支持することができる。
【0045】
また、図10(b)に示すように、突状部材9a~9eは、サファイア基板3の上面視で略正四角形状に形成してもよい。これにより、より深紫外光をより多く半球レンズ5に送ることができる。
【0046】
また、図10(c)に示すように、突状部材9a~9eは、サファイア基板3の上面視で略長方形状に形成してもよい。これにより、半球レンズ5を安定して支持することができる。
【0047】
また、図10(d)に示すように、突状部材9a~eは、サファイア基板3の上面視で略正三角形状に形成されている。これにより、より深紫外光をより多く半球レンズ5に送ることができる。なお、図10(a)~(d)に示したこれら突状部材9a~9eの厚さtは、40±4nmである。
【0048】
図11は、半球レンズ5の変形例を示す図である。突状部材9は、必ずしも設けなくてもよい。突状部材9を設けない場合、図11に示すように、半球レンズ5には、底面を外側方向に凸状に湾曲した湾曲面5cとし縦断面視において船形の形状を有するものを用いてよい。この場合、半球レンズ5の湾曲面5cの中央部がサファイア基板3の第2面3bと接し、半球レンズ5の湾曲面5cの周辺部において、半球レンズ5とサファイア基板3との間に所定の空間が設けられるように構成してもよい。半球レンズ5の湾曲面5cの縁部における半球レンズ5とサファイア基板3との距離hは、例えば、数μmとしてよい。
【0049】
以上、本発明の一実施の形態について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施の形態の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0050】
例えば、透明基板は、必ずしもサファイア基板3でなくてもよく、石英(SiO)やサファイア(Al)含有石英(SiO)、あるいはホウケイ酸ガラス(例えば、SCHOTT社製 8337B)で形成された基板でもよい。また、半球レンズ5及び接合部材7は、透明基板と同一の材料により形成されていればよく、透明基板の材料に併せて、石英(SiO)やサファイア(Al)含有石英(SiO)、あるいはホウケイ酸ガラス(例えば、SCHOTT社製 8337B)より形成してもよい。
【0051】
また、上述した実施の形態では、レンズ付きサファイア基板1の製造方法は、突状部材9a~9eが配置されたサファイア基板3上に半球レンズ5を載置する工程を含んでいるが、必ずしもかかる工程でなくてもよい。かかる工程に代えて、例えば、半球レンズ5の第1面5aを上向きに設置し、この第1面5aに突状部材9a~9eを配置するとともに、突状部材9a~9eが配置された第1面5a上にサファイア基板3の第2面3bが接触するようにサファイア基板3を載置する工程としてもよい。この場合、例えば、半球レンズ5の球面側である第2面5bを保持する略半球状の保持具(不図示)を用いてもよい。
【0052】
また、レンズ付きサファイア基板1は、必ずしも1個ずつ個別に作製しなくてもよく、例えば、ウエハ単位で複数のレンズ付きサファイア基板1をまとめて作製してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 レンズ付きサファイア基板
3 サファイア基板
3a 第1面
3b 第2面
5 半球レンズ
5a 第1面
5b 第2面
7 接合部材
7a 成膜部
9 突状部材
100 半導体発光素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11