(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】フィルタエレメントモジュール、フィルタエレメント、および、フィルタエレメントの位置決め方法
(51)【国際特許分類】
F02M 35/024 20060101AFI20230816BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20230816BHJP
【FI】
F02M35/024 511A
F02M35/024 511D
B01D46/00 C
(21)【出願番号】P 2019223057
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】マーレジャパン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】柴田 隆文
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-104349(JP,U)
【文献】特開昭61-275562(JP,A)
【文献】実開昭59-103856(JP,U)
【文献】特表2010-527761(JP,A)
【文献】特開2015-021474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/024
B01D 46/00, 46/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面から外側方向に延びるケース出口管とケース入口管とを備え、上面の少なくとも一部が開口したケースと、
前記開口から挿入して、前記ケースの内部に着脱自在に取り付け可能なフィルタエレメントと、
前記フィルタエレメントを覆って、前記開口を閉鎖するハッチと、
を備え、
前記フィルタエレメントは、
側面の一部に配置されたフィルタ部材と、
前記フィルタ部材が配置された側面とは異なる側面から外側方向に延びるエレメント出口管と、
底面の外面上に配置された直方体形状の複数のガイドリブと、
上面の外面上に配置された上面側弾性体と、
底面の外面上に配置された底面側弾性体と、
を備え、
前記ケースは、
底面の内面に配置され、前記フィルタエレメントの前記ガイドリブが挿入される複数のガイド溝と、
前記ケース出口管と同じ軸線を有し、側面から内側方向に延び、前記ケース出口管の内径よりも大きな内径を有する管状のエレメント接続部と、
を備え、
前記フィルタエレメントと前記ケースとは、
前記エレメント出口管の出口側管端面と前記エレメント接続部内の前記ケースの側面との当接、および、
前記エレメント出口管とは反対の方向を向く前記ガイドリブ
の面と
前記ケース出口管の方向を向く前記ガイド溝
の壁との当接により、前記軸線の方向に位置決めされ、
前記エレメント出口管の外周面と前記エレメント接続部の内周面との当接により、前記軸線の方向および高さ方向に対して垂直な方向に位置決めされ、
前記底面側弾性体と前記ケースの底面との当接、および、前記上面側弾性体と前記ハッチとの当接により、高さ方向に位置決めされる、
フィルタエレメントモジュール。
【請求項2】
前記ケース出口管と前記ケース入口管とは同じ高さに配置され、
前記フィルタ部材は、前記フィルタエレメントの側面をU字状に延びる、
請求項1に記載のフィルタエレメントモジュール。
【請求項3】
前記複数のガイドリブは、フィルタエレメントの底面と垂直で前記軸線を含む面に対して対称な位置に配置されており、
前記上面側弾性体と前記底面側弾性体とは、前記軸線に対して対称な位置に配置されている、
請求項1または2に記載のフィルタエレメントモジュール。
【請求項4】
前記上面側弾性体および前記底面側弾性体は、ウレタン樹脂で構成されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のフィルタエレメントモジュール。
【請求項5】
前記ガイド溝は、前記エレメント接続部が延びる方向に向かって溝幅が拡がる拡張部を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載のフィルタエレメントモジュール。
【請求項6】
フィルタエレメントモジュールのケース内部に着脱自在に取り付け可能なフィルタエレメントであって、
側面の一部に配置されたフィルタ部材と、
前記フィルタ部材が配置された側面とは異なる側面から外側方向に延びるエレメント出口管であって、前記ケースの側面から内側方向に延びる管状のエレメント接続部内に挿入可能なエレメント出口管と、
底面の外面上に配置された直方体形状の複数のガイドリブであって、前記ケースの底面の内面に配置されたガイド溝に挿入可能なガイドリブと、
上面の外面上に配置された上面側弾性体と、
底面の外面上に配置された底面側弾性体と、
を備える、フィルタエレメント。
【請求項7】
側面から外側方向に延びるケース出口管とケース入口管とを備え、上面の少なくとも一部が開口したケースと、
前記ケースの内部に着脱自在に取り付け可能なフィルタエレメントと
の位置決め方法であって、
前記フィルタエレメントは、
側面の一部に配置されたフィルタ部材と、
前記フィルタ部材が配置された側面とは異なる側面から外側方向に延びるエレメント出口管と、
底面の外面上に配置された直方体形状の複数のガイドリブと、
上面の外面上に配置された上面側弾性体と、
底面の外面上に配置された底面側弾性体と、
を備え、
前記ケースは、
底面の内面に配置され、前記フィルタエレメントの前記ガイドリブが挿入される複数のガイド溝と、
前記ケース出口管と同じ軸線を有し、側面から内側方向に延び、前記ケース出口管の内径よりも大きな内径を有する管状のエレメント接続部と、
を備え、
前記位置決め方法は、
前記フィルタエレメントを、前記開口から前記ケース内に挿入するステップであって、
前記エレメント出口管の出口側管端面と前記エレメント接続部内の前記ケースの側面との当接、および、
前記エレメント出口管とは反対の方向を向く前記ガイドリブ
の面と
前記ケース出口管の方向を向く前記ガイド溝
の壁との当接により、前記軸線の方向に位置決めし、
前記エレメント出口管の外周面と前記エレメント接続部の内周面との当接により、前記軸線の方向および高さ方向に対して垂直な方向に位置決めする、
挿入するステップと、
前記ケースの前記開口をハッチで閉鎖するステップであって、
前記底面側弾性体と前記ケースの底面との当接、および、前記上面側弾性体と前記ハッチとの当接により、高さ方向に位置決めする、
閉鎖するステップと、
を含む、位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタエレメントモジュール等に関し、特に交換可能なフィルタエレメント、当該フィルタエレメントを備えるフィルタエレメントモジュール、および、その位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気系には、外部から取り込んだ空気を内燃機関に供給する前に、空気中のダストを除去するためのエアクリーナが設けられている。エアクリーナは、クリーナケースの内部容積をフィルタ部材によって、クリーン側空気室とダスト側空気室とに仕切った構成を有する。外部から取り込んだ空気はエアクリーナの入口管からダスト側空気室に流入し、フィルタ部材を通過することによって空気中のダストが除去されてクリーン側空気室に流れ、クリーン側空気室からエアクリーナの出口管を経て排出され、内燃機関に供給される。
【0003】
エアクリーナのコンパクト化およびメインテナンスの容易化のため、フィルタ部材とクリーン側空気室を一体のフィルタエレメントとして構成して、箱状のケース内部に取り付けたフィルタエレメントモジュールが利用されている。特許文献1にフィルタエレメントの一例を示す。フィルタエレメントモジュールでは、フィルタエレメントの外のケース内部容積がダスト側空気室となる。フィルタエレメントモジュールは、フィルタ部材とクリーン側空気室とが一体的な構造となっているためコンパクト化が可能で、メインテナンスも容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィルタエレメントをフィルタエレメントモジュールのケースに取り付ける際には、位置決めを行って固定する必要がある。位置決めや固定が不十分であると、フィルタエレメントモジュール内部でフィルタエレメントががたつき、振動による騒音や故障などの原因となる。このため、フィルタエレメントの交換の際には、作業者がフィルタエレメントモジュールのケースの適当な位置にフィルタエレメントを位置決めした後に、ねじなどの固定部材を使って、ケースとフィルタエレメントとを固定することが一般的であった。
【0006】
しかしながら、位置決めや固定の精度は作業者の熟練度に依存し、また位置決めや固定には相当の作業時間が必要であった。このため、フィルタエレメントをケースに格納するだけで、ねじなど固定部材による固定を行わずに、位置決めや固定が可能で、メンテナンスが容易なフィルタエレメントモジュールが求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、側面(23)から外側方向(-X)に延びるケース出口管(21)とケース入口管(22)とを備え、上面(31)の少なくとも一部が開口(32)したケース(6)と、開口(32)から挿入し、ケース(6)の内部に着脱自在に取り付け可能なフィルタエレメント(5)と、フィルタエレメント(5)を覆って、開口(32)を閉鎖するハッチ(4)と、を備えるフィルタエレメントモジュール(1)により解決される。
【0008】
ここで、フィルタエレメント(5)は、側面の一部(51)に配置されたフィルタ部材(55)と、フィルタ部材(55)が配置された側面(51)とは異なる側面(54)から外側方向(-X)に延びるエレメント出口管(56)と、底面(53)の外面上に配置された直方体形状の複数のガイドリブ(61、62)と、上面(52)の外面上に配置された上面側弾性体(63)と、底面(53)の外面上に配置された底面側弾性体(64)と、を備える。
【0009】
また、ケース(6)は、底面(24)の内面に配置され、フィルタエレメント(5)のガイドリブ(61、62)が挿入される複数のガイド溝(70、71)と、ケース出口管(21)と同じ軸線(80)を有し、側面(23)から内側方向(+X)に延び、ケース出口管(21)の内径よりも大きな内径を有する管状のエレメント接続部(25)と、を備える。
【0010】
フィルタエレメント(5)とケース(6)とは、エレメント出口管(56)の出口側管端面(58)とエレメント接続部(25)内のケースの側面(23’)との当接(81)、および、ガイドリブ(61、62)の後面(66)とガイド溝(70、71)の後壁(76)との当接(82)により、軸線(80)の方向(X)に位置決めされ、エレメント出口管(56)の外周面とエレメント接続部(25)の内周面との当接(85)により、軸線(80)の方向(X)および高さ方向(Z)に対して垂直な方向(Y)に位置決めされ、底面側弾性体(64)とケース(6)の底面(24)との当接(84)、および、上面側弾性体(63)とハッチ(4)との当接(83)により、高さ方向(Z)に位置決めされる。
【0011】
フィルタエレメントモジュール(1)の構成要素の当接によって、3軸方向に位置決めされて固定されるため、作業者による位置決め作業やねじ止めなどの固定作業が不要となり、メインテナンスが容易となるほか、位置決め精度の個体差を無くし、がたつきなどによる騒音や故障を防止することが可能となる。
【0012】
ケース出口管(21)とケース入口管(22)とは同じ高さに配置され、フィルタ部材(55)は、フィルタエレメント(5)の側面(51)をU字状に延びる構成とすることが望ましい。これにより、ケースの高さを抑えてコンパクトな構成とすることができ、また、フィルタ部材をU字状に延ばすことによりフィルタ部材の面積を大きくとることが可能となり、コンパクトながら空気流量が高い場合にも安定して濾過を行うことが可能となる。
【0013】
また、複数のガイドリブ(61、62)は、フィルタエレメント(5)の底面(53)と垂直で軸線(80)を含む面に対して対称な位置に配置され、上面側弾性体(63)と底面側弾性体(64)は、軸線(80)に対して対称な位置に配置されていることが望ましい。振動等の外力よって位置決め部材に作用する力を複数のガイドリブ(61、62)に均等に分散することができ、安定した位置決めや固定が可能となる。
【0014】
また、上面側弾性体(63)および底面側弾性体(64)は、ウレタン樹脂で構成されていることが望ましい。ウレタン樹脂で弾性体を構成することにより、耐衝撃性や耐摩耗性に優れた上面側弾性体(63)および底面側弾性体(64)を提供することができ、安定した位置決めと固定が可能となる。
【0015】
また、ガイド溝(70、71)は、エレメント接続部(25)が延びる方向(+X)に向かって溝幅が拡がる拡張部(72)を有することが望ましい。フィルタエレメントをケースに挿入するときに、拡張部によりガイドリブをガイド溝に案内することにより、スムーズな挿入が可能となる。
【0016】
さらに、上記課題は、上述したフィルタエレメントモジュール(1)のケース(6)内部に着脱自在に取り付け可能なフィルタエレメント(5)や、フィルタエレメント(5)とケース(6)との位置決め方法によっても、解決することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】フィルタエレメントモジュール全体の概略的な斜視図である。
【
図2】フィルタエレメントモジュールを主要な構成要素ごとに分解した概略的な斜視図である。
【
図5】フィルタエレメントを上方からみた概略的な斜視図である。
【
図6】フィルタエレメントを下方からみた概略的な斜視図である。
【
図7】フィルタエレメントモジュールをXZ面で切った概略的な断面図である。
【
図8】フィルタエレメントモジュールをYZ面で切った概略的な断面図である。
【
図9】フィルタエレメントモジュールのケースとフィルタエレメントとの位置決め方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施例であるフィルタエレメントモジュール1の概略的な構成を
図1および2に示す。
図1は、フィルタエレメントモジュール1の全体の概略的な斜視図である。
図2は、フィルタエレメントモジュール1を主要な構成要素ごとに分解した概略的な斜視図である。
【0019】
フィルタエレメントモジュール1は、上面31の少なくとも一部が開口32した箱状のケース6と、開口32からケース6内に挿入されてケース6の内部に着脱自在に取り付け可能なフィルタエレメント5と、フィルタエレメント5を覆って開口32を閉鎖するハッチ4とを有する。ケース6は、上部全体が開放されている箱状の本体2と、本体2の上部の一部を覆うカバー3とを有する。本体2の側面23からケース出口管21とケース入口管22とが外側方向に向かって延びている。フィルタエレメントモジュール1は、外部からの空気をケース入口管22から取り込み、ケース6の内部に取り付けられているフィルタエレメント5でダストを除去して、ケース出口管21より排出する。排出された濾過後の空気は、内燃機関に供給される。
【0020】
図3~6にフィルタエレメントモジュール1の主要な構成要素の斜視図を示す。
図3は、ハッチ4を下方からみた概略的な斜視図である。
図4は、ケース6を上方からみた概略的な斜視図である。
図5および
図6は、フィルタエレメント5を上方および下方からみた概略的な斜視図である。
【0021】
説明の都合上、ケース出口管21がケース6から外側に延びる軸80(ケース出口管21の軸80)をX軸と、ケース6の底面24からハッチ4に向かってX軸と垂直な方向に延びる軸をZ軸と、X軸およびZ軸に垂直な方向をY軸と呼ぶ。また、X軸の方向を前後方向と、ケース出口管21から空気が排出される方向を-X方向または前方と、-X方向と反対の方向を+X方向または後方と呼ぶ。さらに、Z軸の方向を高さ方向と、底面24からハッチ4に向かう方向を+Z方向または上方と、+Z方向と反対の方向を-Z方向または下方と呼ぶ。さらに、Y軸の方向を横方向と呼ぶ。
【0022】
フィルタエレメント5は、U字形状方向にプリーツが延びたU字形状の側面51と、U字形状の両端部間をYZ方向に延びる平らな側面54と、側面51、54から延びて上部を覆う上面52と、側面51、54から延びて下部を覆う底面53とを有する。側面51、54、上面52および底面53で画定された内部容積はクリーン側空気室を構成する。U字形状の側面51は、全体または一部がフィルタ部材55で構成されている。平らな側面54には、側面54から外側方向(-X方向)に延びるエレメント出口管56が設けられている。エレメント出口管56は、ケース出口管21の内径とほぼ同じ内径を有する管状部材であり、ケース6に取り付けられたときに、エレメント出口管56の軸線がケース出口管21の軸線と同じ軸線80上に位置するように接続される。ケース入口管22から流入した空気は、U字形状の側面51のフィルタ部材55を通過することにより、濾過されてダストが除去されて、フィルタエレメント5内部のクリーン側空気室に流入し、エレメント出口管56とケース出口管21とを通って、フィルタエレメントモジュール1の外部に排出される。フィルタ部材55をフィルタエレメント5の側面に沿ってU字状に延ばすことによりフィルタ部材の面積を大きくとることが可能となり、フィルタエレメント5を通過する空気流量が高い場合にも、安定した濾過が可能となる。
【0023】
本実施態様では、エレメント出口管56を交換容易にするため、側面54を2枚の平板を前後方向に重ねて配置する構成とし、エレメント出口管56と一体成形された前側の平板を、後方側の平板から取り外すことにより、エレメント出口管56をフィルタエレメント5から取り外し可能な構成としているが、側面54を、1枚の平板とエレメント出口管56とを一体成形した部材で構成することにより、よりシンプルな構成とすることもできる。
【0024】
エレメント出口管56の外周面および出口側管端面58は、シール部材57で構成されている。すなわち、エレメント出口管56は、側面54を構成する樹脂と同じ樹脂で、側面54と一体成形された管状部材の周面を、弾性を有するシール部材57で覆う構成となっている。シール部材57は、エレメント出口管56を、ケース6のエレメント接続部25に挿入して取り付けたときに、エレメント出口管56とエレメント接続部25との間をシールする部材であり、発泡ウレタンやエラストマー樹脂で構成された環状シール部材や、リップパッキンやOリングなどで構成することができる。シール部材57のシール作用によって、エレメント出口管56から排出される空気を、エレメント出口管56とエレメント接続部25との接続部分からフィルタエレメント5の外部に漏れることなく、ケース出口管21を通ってフィルタエレメントモジュール1の外部に排出することが可能となる。
【0025】
フィルタエレメント5の上面52の中央部にはハッチ取付ガイド65が設けられ、ハッチ取付ガイド65の後方には、上面側弾性体63が設けられている。ハッチ取付ガイド65は、フィルタエレメント5の上面52の中央部から延出する楕円環柱形状を有し、フィルタエレメント5の上面52と一体成形されている。ハッチ取付ガイド65は、ケース6の開口32をハッチ4で閉鎖するときに、ハッチ4裏面に配置されたひとまわり大きな楕円環柱形状を有するハッチ側のハッチ取付ガイド43と係合して、ハッチ4とフィルタエレメント5との位置合わせを行う。
【0026】
フィルタエレメント5の底面53には、2つのガイドリブ61、62と底面側弾性体64とが設けられている。ガイドリブ61、62は、フィルタエレメント5とケース6とのX軸方向の位置決めを行う部材である。ガイドリブ61、62は、フィルタエレメント5の底面53から延出する直方体形状を有するリブであり、フィルタエレメント5の底面53と一体成形されている。各ガイドリブ61、62は、Y軸と平行な前面67および後面66と、X軸と平行な2つの側面68を有する。ガイドリブ61、62は、エレメント底面53と垂直な面であってエレメント出口管56の軸線80を含む面に対して対称な位置に配置されている。面対称に配置することによって、振動等の外力に起因してガイドリブ61、62に作用する力を複数のリブに均等に分散させることができ、安定した位置決めと固定が可能となる。
【0027】
底面側弾性体64は、ガイドリブ61、62よりも後方に配置されている。上面側弾性体63と底面側弾性体64とは、フィルタエレメント5とケース6とのZ軸方向の位置決部材である。上面側弾性体63の厚さはハッチ取付ガイド65の高さよりも大きく、上面が平坦な弾性部材で構成されている。底面側弾性体64の厚さはガイドリブ61、62の高さよりも大きく、下面が平坦な弾性部材で構成されている。本実施態様の上面側弾性体63と底面側弾性体64とはウレタン樹脂で構成されており、耐衝撃性や耐摩耗性に優れる。また、上面側弾性体63と底面側弾性体64とは、同じ厚さと形状と有し、エレメント出口管56の軸線80に対して対称な位置に配置されている。このため、フィルタエレメント5をケース6内に取り付けてハッチ4を閉鎖すると、上面側弾性体63および底面側弾性体64が、ハッチ4の裏面およびケース6の底面24により押圧されて均等に圧縮され、安定した位置決めと固定が可能となる。
【0028】
ケース6は、上部全体が開放されている箱状の本体2と、本体2の上部を覆い、一部が開口32したカバー3とが結合した部材である。すなわち、ケース6は、上面31の少なくとも一部が開口32した中空の箱状の部材である。開口32は、フィルタエレメント5を挿入可能な大きさを有し、フィルタエレメント5をケース6内部に着脱自在に取り付けることができる。開口32をハッチ4で閉鎖すると、本体2、カバー3およびハッチ4により、ケース6の内部容積が画定される。ケース6の内部容積のうち、フィルタエレメント5が占める領域外の容積が、ダスト側空気室を構成する。ケース6の本体2の側面23からは、ケース出口管21とケース入口管22とがケース6の外側方向(-X方向)に向かって延びている。ケース入口管22から取り込まれた空気は、ケース6の内部に取り付けられるフィルタエレメント5で濾過されて、フィルタエレメント5内のダスト側空気室に流れ、ケース出口管21より排出される。ケース出口管21とケース入口管22とは、互いの軸線が同じ高さに配置されているため、ケースの高さを抑えたコンパクトな構成のフィルタエレメントモジュール1を提供することが可能となる。
【0029】
開口32のY軸方向の一端側にはハッチ4を取り付けるための留め具取付部33が、他端側にはハッチ突出部挿入孔34が、それぞれ複数個ずつ(本実施態様では2つずつ)設けられている。ハッチ突出部挿入孔34は、ハッチ4側に設けられてるハッチ突出部41を挿入する孔である。ハッチ4がケース6に取り付けられたときに、ハッチ突出部41とハッチ突出部挿入孔34とが、またケース側の留め具取付部33とハッチ側の留め具取付部42とがそれぞれ係合し、さらに留め具取付部33、42を留め具(クリップ)7で押圧しながら留める。ハッチ4の裏面の周縁部に形成されたシール溝45に取り付けられたシール部材のシール作用により、ケース6の開口32をハッチ4で密封することが可能となる。
【0030】
ケース6の内部には、ケース6の側面23から内側方向(+X方向)に延びる円管状のエレメント接続部25が設けられている。エレメント接続部25は、フィルタエレメント5のエレメント出口管56を挿入して取り付ける部材である。エレメント接続部25は、ケース6の側面23でケース出口管21と接続される。エレメント接続部25の軸線とケース出口管21の軸線とは、同一の軸線80上に配置される。エレメント接続部25の内径はケース出口管21の内径よりもシール部材57の厚さのほぼ倍の厚さだけ大きい。すなわち、エレメント接続部25は、ケース出口管21の後側管端部からシール部材57の厚さの分だけY方向およびZ方向に側面23’に沿って延び、その後、+X方向に向かって円管状に延びる形状を有する。このような構成により、エレメント出口管56をケース出口管21にシームレスに接続し、エレメント出口管56から排出される空気流のほぼすべてを外部に漏らすことなくケース出口管21に流して、フィルタエレメントモジュール1の外部に排出することが可能となる。
【0031】
また、ケース6の底面24の内面には、フィルタエレメント5のガイドリブ61、62と係合する複数のガイド溝70、71が、ケース6の本体2と一体成形されている。複数のガイド溝70、71は、フィルタエレメント5をケース6に取り付けたときに、ガイドリブ61、62に対応する位置に配置されている。よって、ガイド溝70、71は、ケース底面24と垂直でケース出口管21の軸線80を含む面に対して対称な位置に配置されている。各ガイド溝70、71は、底面24の内面から内側方向(+Z方向)に延出する前壁77、2つの側壁78、および後壁76により画成されている。前壁77は横方向(Y方向)に延び、2つの側壁78は、前壁77の両端部から後方(+X方向)に延びる。後壁76は、前壁77の後方で2つの側壁78の間を(Y方向)に延びる。
【0032】
前壁77と後壁76との距離は、ガイドリブ61、62のX方向の長さ(前面67と後面66との間の距離)よりも長い。また、2つの側壁78の間の距離は、ガイドリブ61、62のY方向の長さ(2つの側面68間の距離)よりも長い。さらに、2つの側壁78の後端部近傍には、側壁78間の距離(溝幅)が後方に向かって徐々に拡がる拡張部72を有する。拡張部72は、2つの側壁78が互いに同じY方向の傾斜で横方向に広がるように側壁78間の距離が拡がる。また、後壁76のすぐ後方には、後壁76から後方に向かって高さが増加するガイドリブ挿入ガイド部73が配置されている。ガイドリブ挿入ガイド部73は、底面24の内面から内側方向(+Z方向)に延出し、ケース6の本体2と一体成形されている。拡張部72とガイドリブ挿入ガイド部73とにより、フィルタエレメント5をケース6に取り付ける際に、ガイドリブ61、62をガイド溝70、71にスムーズに挿入することができるようにガイドすることができる。
【0033】
ハッチ4は、ケース6の開口32よりもひとまわり大きな面を有する、ほぼ平坦な部材である。ハッチ4の裏面の中央部には、ハッチ4と一体成形され、ハッチ4の裏面から延出する楕円環柱形状のハッチ取付ガイド43が形成されている。ハッチ取付ガイド43は、ケース6の開口32をハッチ4で閉鎖する際に、フィルタエレメント側のハッチ取付ガイド65と係合して、ハッチ4とフィルタエレメント5との位置合わせを行う。ハッチ4の周縁部には、パッキンなどのシール部材を取り付けるためのシール溝45が形成されている。シール溝45に取り付けられたシール部材のシール作用により、開口32をハッチ4で密閉することが可能となる。また、ハッチ4のY軸方向の周縁部の一方からは複数のハッチ突出部41が、周縁部の他方からは複数の留め具取付部42が、それぞれ外側に向かって延びている。ハッチ4をケース6に取り付ける際には、ハッチ突出部41をケース6のハッチ突出部挿入孔34に挿入し、留め具取付部42をケース側の留め具取付部33と係合し、さらに留め具取付部33、42を留め具(クリップ)7で押圧しながら留めることにより、ケース6の開口32を閉鎖する。
【0034】
次に、
図7および
図8を参照しながら、フィルタエレメント5とケース6の位置決めについて説明する。
図7(a)は、フィルタエレメントモジュール1を、軸線80を含むXZ面で切った概略的な断面図である。
図7(b)は、ケース6のガイドリブ61およびガイド溝70の近傍を、ガイド溝70の前壁77および後壁76それぞれの中間点を通る中心線を含むXZ面で切った概略的な断面図である。よって、
図7(a)のXZ面と、
図7(b)のXZ面とは、Y方向の位置が異なる。また、
図8は、
図7(a)の線I-IでYZ面に切った概略的な断面図である。
【0035】
フィルタエレメント5とケース6とのX方向の位置決めは、エレメント出口管56の出口側(前方)の管端面58と、エレメント接続部25内のケースの側面23’の内面との当接81により-X方向に位置決めされ、ガイドリブ61、62の後面66とガイド溝70、71の後壁76との当接82により+X方向に位置決めされる。-X方向の位置決め部材であるエレメント出口管56の管端面58は弾性のシール部材で構成されているため、ガイドリブ61、62の後面66が剛性の樹脂で構成されていても、フィルタエレメント5のケース6への挿入が困難になることはない。ガイド溝70の前壁77と後壁76との距離は、ガイドリブ61のX方向の長さよりも長いため、位置決め後にはガイド溝70の前壁77とガイドリブ61の前面67の間には、隙間ができる。
【0036】
フィルタエレメント5とケース6とのY方向の位置決めは、エレメント出口管56の外周面と、エレメント接続部25の内周面との当接85により行われる。エレメント出口管56の外周面は弾性のシール部材57で構成されているため、位置決め精度の向上のためにエレメント出口管56の外径とエレメント接続部25の内径との寸法差を小さくしても、フィルタエレメント5のケース6への挿入が困難になることはない。
【0037】
フィルタエレメント5とケース6とのZ方向の位置決めは、底面側弾性体64とケース6の底面24との当接84により-Z方向に位置決めされ、上面側弾性体63とハッチ4の裏面との当接83により+Z方向に位置決めされる。位置決め精度を向上するために、上面側弾性体63の上面から底面側弾性体64の下面までの距離と、ハッチ4の裏面からケース6の底面24までの距離との寸法差を小さくしても、さらに上面側弾性体63の上面から底面側弾性体64の下面までの距離のほうを大きくしても、フィルタエレメント5の弾性体63、64が弾性を有することから、ハッチ4による閉鎖が困難になることはない。なお、弾性体63、64は、フィルタエレメント5の後方に取り付けられているため、フィルタエレメント5の前方に、補助的なZ方向の位置決め部材を設けてもよい。例えば、フィルタエレメント5の前方に配置されているエレメント出口管56の外周面とエレメント接続部25の内周面との当接により、Y方向だけでなくZ方向にも位置決めしてもよい。
【0038】
次に、フィルタエレメント5をケース6に取り付けて固定する際の位置決め方法について、
図9のフローチャート90を参照しながら説明を行う。始めに、フィルタエレメント5を、開口32からケース6内に挿入する(ステップ91)。このとき、フィルタエレメント5のガイドリブ61、62を、ケース6のガイドリブ挿入ガイド部73に当てて-X方向に滑らすようにして挿入することにより、スムーズに挿入することができる。このとき、フィルタエレメント5のエレメント出口管56がケース6のエレメント接続部25に挿入され、エレメント出口管56の出口側管端面58とエレメント接続部25内のケースの側面23’との当接81により-X方向の位置決めが、また、エレメント出口管56の外周面とエレメント接続部25の内周面との当接85によりY方向の位置決めがなされ、固定される。同時に、フィルタエレメント5のガイドリブ61、62がケース6のガイド溝70、71が挿入され、ガイドリブ61、62の後面66とガイド溝70、71の後壁76との当接82により+X方向の位置決めがなされて固定される。フィルタエレメント5の底面側弾性体64はケース6の底面24との当接しているが、上面側弾性体63はハッチ4と当接していないため、Z方向には位置決めされていない。
【0039】
次に、ケース6の開口32をハッチ4で閉鎖する(ステップ92)。より具体的には、ハッチ4の突出部41をケース6の挿入孔34に挿入し、ハッチ側の留め具取付部42とケース側の留め具取付部33と係合し、さらに留め具取付部33、42どうしを留め具(クリップ)7で押圧しながら留める。これにより、ケース6の上面側弾性体63がハッチ4の裏面により押圧されての当接83する。また、ハッチ4による押圧力は、ケース6の底面24と当接84する底面側弾性体64にも作用する。上面側弾性体63と底面側弾性体64とは同じ厚さと形状を有しているため、ハッチ4による押圧力は、上面側弾性体63と底面側弾性体64とに均等に作用する。フィルタエレメント5の底面側弾性体64とケース6の底面24との当接84により-Z方向に位置決めされ、フィルタエレメント5の上面側弾性体63とハッチ4の裏面との当接83により+Z方向に位置決めされて固定される。
【0040】
このように、フィルタエレメントモジュール1の構成要素どうしの当接によって、フィルタエレメント5とケース6とが3軸方向に位置決めされて固定されるため、作業者による特段の位置決め作業や、ねじ止めなどの固定作業が不要となり、メインテナンスが容易となるほか、位置決め精度の個体差を無くし、がたつきなどによる騒音や故障も防止することが可能となる。
【0041】
以上、本願発明にかかるフィルタエレメントモジュール、フィルタエレメントおよび位置決め方法に関する説明を行ったが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。例えば、上述した実施態様のフィルタエレメント5は、エレメント出口管56の外周面をシール部材57で構成しているが、これに代えて、または、これと併せて、ケース6のエレメント接続部25の内周面をシール部材で構成してもよい。この場合、エレメント接続部25は、ケース6の内面23’から内側方向に延びる管状部材と、管状部材の内周面に配置されたシール部材とで構成してもよい。エレメント接続部25の内径(シール部材の内周面の内径)を、エレメント出口管56の外径とほぼ同じ寸法とすることにより、エレメント出口管56とエレメント接続部25との接続部分からダストを含む空気がフィルタエレメント5の外部に漏れることを防止し、かつ、安定して高精度な位置決めが可能となる。
【0042】
また、実施態様のフィルタエレメントモジュール1は、ガイドリブ61、62やガイド溝70、71を2つずつ備えているが、3つ以上のガイドリブやガイド溝を、面対称に配置してもよい。同様に、フィルタエレメント5の上面側弾性体63や底面側弾性体64も1つである必要ではなく、複数の弾性体をフィルタエレメント5の上面52および底面53に配置してもよい。また、上述した実施態様のフィルタエレメントモジュール1では、製造工程の簡素化のために、同一材料で構成可能な部材を一体成形によって形成しているが、これらの部材を個別部材で作成して、溶接などで固着してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 フィルタエレメントモジュール
2 本体
3 カバー
4 ハッチ
5 フィルタエレメント
6 ケース
7 留め具(クリップ)
21 ケース出口管
22 ケース入口管
23 ケースの側面
23’ケースの側面(エレメント接続部内部のケース側面)
24 ケースの底面
25 エレメント接続部
31 ケースの上面
32 開口
33、42 留め具取付部
34 ハッチ突出部挿入孔
41 ハッチ突出部
43、65 ハッチ取付ガイド
44 ハッチの裏面
45 シール溝
51、54 フィルタエレメントの側面
52 フィルタエレメントの上面
53 フィルタエレメントの底面
55 フィルタ部材
56 エレメント出口管
57 シール部材
58 エレメント出口管の出口側管端面
61、62 ガイドリブ
63 上面側弾性体
64 底面側弾性体
66 ガイドリブの後面
67 ガイドリブの前面
68 ガイドリブの側面
70、71 ガイド溝
72 拡張部
73 ガイドリブ挿入ガイド部
76 ガイド溝の後壁
77 ガイド溝の前壁
78 ガイド溝の側壁
80 軸線
81、82、83、84、85 当接面