IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 福島工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-温湿度調節庫 図1
  • 特許-温湿度調節庫 図2
  • 特許-温湿度調節庫 図3
  • 特許-温湿度調節庫 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】温湿度調節庫
(51)【国際特許分類】
   A21C 13/00 20060101AFI20230816BHJP
   F25D 23/12 20060101ALI20230816BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230816BHJP
   A21D 6/00 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
A21C13/00 C
F25D23/12 Q
F25D11/00 101B
A21D6/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019231833
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021097646
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-08-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成31年2月19日から22日まで(4日間)第19回厨房設備機器展(東京ビックサイト東展示場)で公開(2)平成31年2月20日から23日まで(4日間)2019モバックショウ(幕張メッセ)で公開(3)令和1年7月9日から12日まで(4日間)FOOMA JAPAN 2019(東京ビックサイト)で公開(4)令和1年9月11日から13日まで(4日間)フードシステムソリューション2019(東京ビックサイト)で公開(5)令和1年8月2日福島工業株式会社東京浅草橋事務所でプレゼンテーションを実施(6)令和1年8月6日株式会社マルゼンに販売(7)令和1年8月9日株式会社愛工舎製作所に販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】岩本 和久
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-307416(JP,A)
【文献】特開2000-037307(JP,A)
【文献】特開平10-276664(JP,A)
【文献】特開2017-000798(JP,A)
【文献】特開2013-248215(JP,A)
【文献】特開2007-032851(JP,A)
【文献】特開2011-196597(JP,A)
【文献】特開平06-011230(JP,A)
【文献】米国特許第05442994(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00-15/04
F25D 23/10-23/12
F25D 11/00
A21D 2/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
庫内(3)を冷却する冷却装置(10)と、庫内(3)を加熱する加熱装置(11)と、庫内(3)を加湿する加湿装置(12)と、庫内(3)の空気を循環させる送風装置(13)と、庫内温度(T)を検出する庫内温度センサ(35)と、庫内湿度(H)を検出する庫内湿度センサ(36)と、各装置(10~13)を制御して庫内温度(T)および庫内湿度(H)を調節する制御部(33)とを備えており、
少なくとも、庫内温度(T)が所定の解凍温度(T1)に制御される解凍工程と、庫内温度(T)が解凍温度(T1)よりも高い予熱温度(T2)に制御される予熱工程と、庫内温度(T)が予熱温度(T2)よりも高い発酵温度(T3)に制御される発酵工程とを順次実行して、庫内(3)の食品を調理する温湿度調節庫であって、
発酵工程における制御部(33)は、
発酵工程に移行した直後から、所定の発酵初期時間が経過するまでは、送風装置(13)を所定の標準風量で駆動させ、
発酵初期時間の経過後は、送風装置(13)を標準風量よりも少ない風量で駆動させるとともに、送風装置(13)を少なくとも第1風量と第2風量の2段階で制御しており、外気温度センサ(37)で検出される外気温度(TA)が発酵温度(T3)以下であれば、送風装置(13)を相対的に少ない第1風量で駆動させ、外気温度(TA)が発酵温度(T3)よりも高ければ、送風装置(13)を相対的に多い第2風量で駆動させることを特徴とする温湿度調節庫。
【請求項2】
発酵工程における発酵初期時間の経過後の制御部(33)は、
冷却装置(10)が駆動中またはその停止直後であれば、送風装置(13)を相対的に少ない第1風量で駆動させる請求項1に記載の温湿度調節庫。
【請求項3】
発酵工程における発酵初期時間の経過後の制御部(33)は、
冷却装置(10)が停止直後を除く停止中であり、かつ、庫内(3)の食品の乾燥を抑制する乾燥抑制機能が解除されていれば、送風装置(13)を第2風量よりも多い第3風量で駆動させる請求項に記載の温湿度調節庫。
【請求項4】
発酵工程における発酵初期時間の経過後の制御部(33)は、
庫内温度(T)が発酵温度(T3)以下のときは、送風装置(13)を相対的に少ない第1風量で駆動させる請求項に記載の温湿度調節庫。
【請求項5】
解凍工程の直前に、庫内温度(T)が解凍温度(T1)よりも低い保冷温度(T0)に制御される保冷工程を実行するようになっており、
保冷工程、解凍工程および予熱工程において、制御部(33)が送風装置(13)を標準風量で駆動させる請求項1から4のいずれかひとつに記載の温湿度調節庫
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン生地の少なくとも解凍工程と予熱工程と発酵(ホイロ)工程を順次実行するドゥコンディショナーなどの温湿度調節庫に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の温湿度調節庫は例えば特許文献1に開示されている。この温湿度調節庫はパン生地用のドゥコンディショナーであって、庫内を冷却する冷却手段と、庫内を加熱する加熱ヒータと、庫内を加湿する加湿器などを備えており、これら各機器を制御して庫内温度および庫内湿度を調節することにより、冷凍パン生地を温度-5~+10℃、湿度90~100%でリタードしながら解凍する解凍工程と、温度15~20℃、湿度90~100%で予熱する予熱工程と、温度22~40℃、湿度70~100%で発酵させる発酵工程とを順次実行している。各工程において循環ファンの風速は0.2m/s以下に保持される。この風速は、一般の冷蔵庫中の風速(約0.5~0.6m/s)と比較して低いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-64539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の温湿度調節庫では、解凍工程から予熱工程を経て発酵工程に至るまで、循環ファンを常に低速で駆動させる。これによれば、パン生地の乾燥を抑制しながら、庫内温度と庫内湿度の均一化を図ることができるが、その一方で、加熱ヒータで加熱された空気が庫内の全体へ効率良く拡散されず、庫内の加熱に時間がかかるという不都合を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、庫内を食品の発酵に適した温度まで素早く加熱することができ、さらに庫内の食品の乾燥を抑制しながら、庫内温度と庫内湿度の均一化を図ることができる温湿度調節庫を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、庫内3を冷却する冷却装置10と、庫内3を加熱する加熱装置11と、庫内3を加湿する加湿装置12と、庫内3の空気を循環させる送風装置13と、庫内温度Tを検出する庫内温度センサ35と、庫内湿度Hを検出する庫内湿度センサ36と、各装置10~13を制御して庫内温度Tおよび庫内湿度Hを調節する制御部33とを備えており、少なくとも、庫内温度Tが所定の解凍温度T1に制御される解凍工程と、庫内温度Tが解凍温度T1よりも高い予熱温度T2に制御される予熱工程と、庫内温度Tが予熱温度T2よりも高い発酵温度T3に制御される発酵工程とを順次実行して、庫内3の食品を調理する温湿度調節庫を対象とする。発酵工程における制御部33は、発酵工程に移行した直後から、所定の発酵初期時間が経過するまでは、送風装置13を所定の標準風量で駆動させ、発酵初期時間の経過後は、送風装置13を標準風量よりも少ない風量で駆動させるとともに、送風装置13を少なくとも第1風量と第2風量の2段階で制御しており、外気温度センサ37で検出される外気温度TAが発酵温度T3以下であれば、送風装置13を相対的に少ない第1風量で駆動させ、外気温度TAが発酵温度T3よりも高ければ、送風装置13を相対的に多い第2風量で駆動させる。
【0008】
発酵工程における発酵初期時間の経過後の制御部33は、冷却装置10が駆動中またはその停止直後であれば、送風装置13を相対的に少ない第1風量で駆動させる。
【0009】
発酵工程における発酵初期時間の経過後の制御部33は、冷却装置10が停止直後を除く停止中であり、かつ、庫内3の食品の乾燥を抑制する乾燥抑制機能が解除されていれば、送風装置13を第2風量よりも多い第3風量で駆動させる。
【0010】
発酵工程における発酵初期時間の経過後の制御部33は、庫内温度Tが発酵温度T3以下のときは、送風装置13を相対的に少ない第1風量で駆動させる。
【0011】
解凍工程の直前に、庫内温度Tが解凍温度T1よりも低い保冷温度T0に制御される保冷工程を実行するようになっており、保冷工程、解凍工程および予熱工程において、制御部33が送風装置13を標準風量で駆動させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る温湿度調節庫は、発酵工程における送風装置13の制御に特徴を有する。具体的には、発酵工程に移行した直後から、所定の発酵初期時間が経過するまでは、送風装置13を所定の標準風量で駆動させ、発酵初期時間の経過後は、送風装置13を標準風量よりも少ない風量で駆動させる。予熱工程から発酵工程に移行した直後は、庫内温度Tが発酵温度T3よりも低い予熱温度T2にあることから、送風装置13を標準風量で駆動させることにより、加熱装置11の周囲の加熱された空気を庫内3の全体へ速やかに拡散させて、庫内3の全体を発酵温度T3まで素早く加熱することができる。発酵初期時間の経過後、すなわち、庫内3が発酵温度T3もしくはその近傍まで加熱された後は、送風装置13を標準風量よりも少ない風量で駆動させることにより、庫内3の食品(パン生地など)の乾燥を抑制しながら、庫内温度Tおよび庫内湿度Hの均一化を図って、庫内3の全ての食品を良好に仕上げることができる。
【0013】
発酵初期時間の経過後、外気温度TAが発酵温度T3以下であれば、送風装置13を相対的に少ない第1風量で駆動させ、逆に発酵温度T3よりも高ければ、送風装置13を相対的に多い第2風量で駆動させることができる。これによれば、庫内3の食品を出し入れする際に、外気が低温のときには庫内空気の流出を抑えて庫内湿度Hの低下を抑制することができ、外気が高温すなわち庫内空気よりも飽和水蒸気量が多いときには、庫内3への外気の流入を促して庫内3を素早く加湿することができる。
【0014】
発酵初期時間の経過後、冷却装置10が駆動中またはその停止直後であれば、送風装置13を相対的に少ない第1風量で駆動させることができる。これによれば、冷却装置10の周囲の冷却された空気が、低温のまま庫内3の食品の周囲に至ることを防止して、該周囲の温度の変動を小さくすることができる。
【0015】
発酵初期時間の経過後、冷却装置10が停止直後を除く停止中であり、かつ、庫内3の食品の乾燥を抑制する乾燥抑制機能が解除されていれば、送風装置13を第2風量よりも多い第3風量で駆動させることができる。この温湿度調節庫のユーザーは、乾燥が問題とならない食品を調理する場合に、予め乾燥抑制機能を解除しておくことにより、送風装置13の高速駆動を許可して、庫内3の温度ムラおよび湿度ムラをより的確に解消することができる。
【0016】
発酵初期時間の経過後、庫内温度Tが発酵温度T3以下のときは、送風装置13を相対的に少ない第1風量で駆動させることができる。このときは加熱装置11が駆動している可能性が高いことから、送風装置13を低速で駆動させることにより、加熱装置11の周囲の加熱された空気が、高温のまま庫内3の食品の周囲に至ることを防止して、該周囲の温度の変動を小さくすることができる。
【0017】
保冷工程、解凍工程および予熱工程において、送風装置13を発酵工程の初期と同様に標準風量で駆動させると、各工程における庫内3の温度ムラおよび湿度ムラを的確に解消することができる。また、工程の移行のタイミングで加熱装置11を駆動させる場合に、加熱装置11の周囲の加熱された空気を庫内3の全体へ速やかに拡散させて、庫内3の全体を目標とする温度まで素早く加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例に係る温湿度調節庫の制御系のブロック図である。
図2】温湿度調節庫の概略構成を示す正面図である。
図3】発酵工程における送風装置の制御手順を示すフローチャートである。
図4】各工程における送風装置の風量を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施例) 本発明をパン生地用のドゥコンディショナーに適用した実施例を図1ないし図4に示す。図2に示すようにドゥコンディショナーは、前面に開口を有する直方体状の断熱箱体1と、その開口を開閉するガラス窓付きの断熱扉2とを備える。断熱箱体1と断熱扉2で囲まれる庫内3は、仕切板5によって、前面に開口する収容室6と、その後壁および底壁に沿う通気ダクト7とに隔てられている。庫内3の大半を占める収容室6には、パン生地を載せたトレイを載置するための棚板8が上下多段状に設置されている。庫内3の空気は冷却装置10により冷却され、加熱装置11により加熱され、加湿装置12により加湿され、さらに送風装置13により循環される。
【0020】
冷却装置10は、圧縮機15と凝縮器16と蒸発器17などを含む冷凍サイクルと、圧縮機15および凝縮器16を冷却する冷却ファン18とを備える。このうち圧縮機15、凝縮器16および冷却ファン18は、庫外(断熱箱体1の上側)の機械室19に設置されており、蒸発器17は送風装置13とともに庫内3の通気ダクト7に設置されている。本実施例では、圧縮機15として回転数が一定の定速圧縮機を用いるが、これに代えて回転数が可変のインバータ圧縮機を用いることもできる。収容室6と通気ダクト7を前後に隔てる仕切板5には、複数個の空気の吸込口21が形成されており、送風装置13が駆動することにより、収容室6側の空気が吸込口21を介して通気ダクト7に取り込まれ、蒸発器17などを通過したのち、通気ダクト7の前端の吹出口22から収容室6へ再び吹き出される。吸込口21は各棚板8上のトレイに臨む位置に形成されている。
【0021】
加湿装置12は、電気式のヒーター25と、ヒーター25で加熱される加熱板26と、加熱板26に向かって水を噴射する散水ノズル27と、給水源28から散水ノズル27へ水を送給する給水管29と、給水管29を開閉する給水弁30とを備える。ヒーター25と加熱板26と散水ノズル27は、通気ダクト7における蒸発器17の下流側(蒸発器17と吹出口22の間)に配置されている。散水ノズル27から噴射された水が加熱板26に触れて気化することにより、通気ダクト7ひいては庫内3の全体が加湿される。本実施例では、加湿装置12を構成するヒーター25が、庫内3を加熱する加熱装置11を兼ねるようにした。もちろん、加熱装置11をヒーター25とは別の加熱手段で構成してもよい。
【0022】
機械室19の正面側には、制御部33などを収容する制御ボックス34が配置されている。図1に示すように制御部33は、庫内温度センサ35で検出される庫内3の温度(庫内温度T)、庫内湿度センサ36で検出される庫内3の湿度(庫内湿度H)、および、外気温度センサ37で検出される外気温度TAなどに基づいて、冷却装置10(圧縮機15・冷却ファン18)、加熱装置11(ヒーター25)、加湿装置12(ヒーター25・給水弁30)、および送風装置13などの駆動状態を制御して、パン生地の保冷工程、解凍工程、予熱工程および発酵(ホイロ)工程を順次実行する。制御ボックス34の外面には、ドゥコンディショナーの運転開始などの入力操作を受け付ける操作パネル38が配置されている。操作パネル38は、各センサで検出される庫内温度Tと庫内湿度Hなどを表示する表示手段を兼ねている。
【0023】
最初の保冷工程では、庫内3の設定温度が冷凍温度帯の保冷温度T0(例えば-10℃)に設定される。制御部33は、庫内温度センサ35で検出される庫内温度Tが、保冷温度T0を中心とする温度帯の範囲内に収まるように、冷却装置10をオンオフ制御する(インバータ方式の圧縮機15の場合は、その回転数を制御する)。また送風装置13を、3段階(弱・中・強)のうち最大の風量すなわち「強(標準風量)」で常時駆動させる。保冷工程では庫内温度Tのみが制御され、庫内湿度Hは制御されない。次の解凍工程においても同様である。解凍工程に移行するまでの間、制御部33は保冷工程を実行して、庫内3のパン生地を冷凍保存する。
【0024】
次の解凍工程では、庫内3の設定温度が0℃前後の解凍温度T1(例えば2℃)に設定される。制御部33は、庫内温度Tが解凍温度T1を中心とする温度帯の範囲内に収まるように、冷却装置10をオンオフ制御する(インバータ方式の圧縮機15の場合は、その回転数を制御する)。また送風装置13を、3段階のうち最大の風量すなわち「強(標準風量)」で常時駆動させる。保冷工程から解凍工程へ移行した直後は、庫内温度Tが解凍温度T1を大きく下回ることから、加熱装置11を駆動させて庫内温度Tを解凍温度T1まで素早く上昇させてもよい。
【0025】
解凍工程に移行してから所定の解凍時間(例えば360分)が経過すると、パン生地の解凍が完了したとみなして次の予熱工程へ移行する。予熱工程では、庫内3の設定温度が解凍温度T1よりも高い予熱温度T2(例えば18℃)に設定され、さらに設定湿度が例えば80%に設定される。制御部33は、庫内温度Tが予熱温度T2を中心とする温度帯の範囲内に収まり、さらに、庫内湿度Hが設定湿度を中心とする範囲内に収まるように、冷却装置10、加熱装置11および加湿装置12をオンオフ制御する。また送風装置13を、3段階のうち最大の風量すなわち「強(標準風量)」で常時駆動させる。解凍工程から予熱工程へ移行した直後は、庫内温度Tが予熱温度T2を大きく下回ることから、制御部33は加熱装置11を駆動させて、庫内温度Tを予熱温度T2まで素早く上昇させる。庫内温度Tの上昇後、外気温度TAが予熱温度T2よりも高い場合は、冷却装置10と加熱装置11のうち主に前者により庫内温度Tが制御され、逆に低い場合は主に後者により庫内温度Tが制御される。
【0026】
予熱工程に移行してから所定の予熱時間(例えば120分)が経過すると、最後の発酵工程へ移行する。発酵工程では、庫内3の設定温度が予熱温度T2よりも高い発酵温度T3(例えば30℃)に設定され、さらに設定湿度が例えば80%に設定される。制御部33は、庫内温度Tが発酵温度T3を中心とする温度帯の範囲内に収まり、さらに、庫内湿度Hが設定湿度を中心とする範囲内に収まるように、冷却装置10、加熱装置11および加湿装置12をオンオフ制御する。送風装置13の制御については後述する。本工程では、主に加熱装置11により庫内温度Tが制御され、冷却装置10は主に庫内湿度Hを制御する(低下させる)目的で駆動される。
【0027】
予熱工程から発酵工程へ移行した直後は、庫内温度Tが発酵温度T3を大きく下回ることから、制御部33は加熱装置11を駆動させて、庫内温度Tを素早く上昇させる。本実施例では、庫内温度Tが発酵温度T3(もしくはその近傍)まで上昇するのに要する時間として発酵初期時間(例えば30分)を設定し、当該時間内は制御部33が送風装置13を3段階のうち最大の風量すなわち「強(標準風量)」で常時駆動させる(図3のフローチャートのステップS1)。これにより、加熱装置11の周囲の加熱された空気を庫内3の全体へ速やかに拡散させて、庫内温度Tの上昇速度を高めることができる。
【0028】
発酵初期時間が経過して(ステップS2でYES)、庫内温度Tが発酵温度T3まで上昇した後も、制御部33は送風装置13を常時駆動させて、庫内3における温度ムラを抑制する。ただし、送風装置13の風量を常に「強」に設定すると、パン生地の表面の乾燥が早く進み、パン生地の種類によってはその品質の劣化を招くおそれがある。このような場合には、制御部33は送風装置13の風量を「中」あるいは「弱」に切り換えて、パン生地の乾燥を抑制する。
【0029】
詳しくは、制御部33はまず庫内温度Tを設定温度すなわち発酵温度T3と比較し(ステップS3)、庫内温度Tが発酵温度T3以下であれば(ステップS3でYES)、送風装置13の風量を「弱(第1風量)」に設定する(ステップS10)。これは、加熱装置11の周囲の加熱された空気が高温のまま収容室6へ吹き出されるのを防止して、庫内温度Tの変動を小さくするためである。逆に、庫内温度Tが発酵温度T3より高ければ(ステップS3でNO)、次のステップS4へ進む。
【0030】
ステップS4では冷却装置10の駆動状態を確認し、同装置10が駆動中であれば(ステップS4でYES)、制御部33は送風装置13の風量を「弱(第1風量)」に設定する(ステップS10)。また、冷却装置10が停止中であっても、同装置10の停止直後(例えば、停止してから3分以内)であれば(ステップS5でYES)、制御部33は送風装置13の風量を「弱(第1風量)」に設定する(ステップS10)。これは、冷却装置10の周囲の冷却された空気が低温のまま収容室6へ吹き出されるのを防止して、庫内温度Tの変動を小さくするためである。冷却装置10が停止中であり、しかも停止直後でなければ(ステップS4・S5でNO)、次のステップS6へ進む。
【0031】
ステップS6では、ユーザーにより設定される乾燥抑制機能の状態を確認する。ユーザーは、庫内3のパン生地の乾燥を抑制したい場合には、乾燥抑制機能を「ON」に設定することが好ましい。逆に、乾燥が問題とならないパン生地の場合は、乾燥抑制機能を解除すなわち「OFF」に設定して、送風装置13の高速駆動を許可し、庫内3の温度ムラおよび湿度ムラのより一層の解消に努めることが好ましい。制御部33は、乾燥抑制機能が「OFF」であれば(ステップS6でNO)、送風装置13の風量を「強(第3風量)」に設定し(ステップS12)、逆に同機能が「ON」であれば(ステップS6でYES)、次のステップS7へ進む。
【0032】
ステップS7では、庫内湿度センサ36で検出される庫内湿度Hを、設定湿度の下限値以下(例えば、下限値-1%)の基準湿度H0と比較する。庫内湿度Hが基準湿度H0以上であれば(ステップS7でYES)、次のステップS8へ進み、ユーザーによる加湿量の設定を確認する。ここで加湿量とは、加湿装置12による水蒸気の生成速度のことであり、ユーザーは操作パネル38を操作してこれを設定することができる。本実施例では「1」~「3」の3段階(数字が大きいほど生成速度が高い)で加湿量を可変とした。制御部33は、加湿量が「3」すなわち最大であれば(ステップS8でYES)、送風装置13の風量を「強(第3風量)」に設定し(ステップS12)、加湿量が「1」または「2」であれば(ステップS8でNO)、送風装置13の風量を「弱(第1風量)」に設定する(ステップS10)。
【0033】
一方、庫内湿度Hが基準湿度H0未満であれば(ステップS7でNO)、次のステップS9へ進み、外気温度TAを設定温度すなわち発酵温度T3と比較する。ここで、外気温度TAが発酵温度T3以上であれば(ステップS9でYES)、制御部33は送風装置13の風量を「中(第2風量)」に設定し(ステップS11)、逆に外気温度TAが発酵温度T3未満であれば(ステップS9でNO)、送風装置13の風量を「弱(第1風量)」に設定する(ステップS10)。これによれば、庫内3の食品を出し入れする際に、外気が低温のときには庫内空気の流出を抑えて庫内湿度Hの低下を抑制することができ、外気が高温すなわち庫内空気よりも飽和水蒸気量が多いときには、庫内3への外気の流入を促して庫内3を素早く加湿することができる。
【0034】
上記のステップS3~ステップS12までの手順は、発酵工程に移行してからの経過時間が、所定の発酵時間(例えば120分)に達するまで繰り返される。この発酵時間が経過すると(ステップS13でYES)、制御部33はドゥコンディショナーの運転を終了する。各工程特に発酵工程の各状態における送風装置13の風量を図4の表に示す。なお、発酵時間の経過後、そのことを音や光でユーザーに報知するブザーやランプなどの報知手段を作動させるとともに、ユーザーによる運転停止の操作があるまでドゥコンディショナーの運転を継続するようにしてもよい。
【0035】
上記の実施例では、発酵工程において送風装置13の風量を3段階で制御したが、本発明はこれに限定されず、例えばこれを4段階(微・弱・中・強)とし、発酵初期時間は送風装置13を「強(標準風量)」で駆動させ、同時間の経過後は微・弱・中の3段階で送風装置13の風量を制御することができる。本発明は、保冷工程を除く3工程(解凍工程・予熱工程・発酵工程)のみを実行する温湿度調節庫や、保冷工程のみを別室で実行する温湿度調節庫などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
3 庫内
10 冷却装置
11 加熱装置
12 加湿装置
13 送風装置
33 制御部
35 庫内温度センサ
36 庫内湿度センサ
H 庫内湿度
T 庫内温度
TA 外気温度
T0 保冷温度
T1 解凍温度
T2 予熱温度
T3 発酵温度
図1
図2
図3
図4