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特許7332464情報処理装置、及び情報処理装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】情報処理装置、及び情報処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/00 20060101AFI20230816BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20230816BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230816BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20230816BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B60R21/00 340
G01C21/26 C
G08G1/09 F
G08B25/10 E
G08G1/0969
G08G1/09 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019235940
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104696
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河原 純一
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-033744(JP,A)
【文献】特開2019-008339(JP,A)
【文献】特開2009-257877(JP,A)
【文献】特開2012-058962(JP,A)
【文献】特開2003-296890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00-21/13
G01C 21/26
G08G 1/09
G08B 25/10
G08G 1/0969
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられる情報処理装置であって、
前記車両で発生した緊急通報要求を取得する緊急通報要求取得部と、
緊急通報先と通信不能か否かを判定する通信不能判定部と、
前記緊急通報先との連絡に利用可能な通信設備の情報を記憶する通信設備情報記憶部と、
前記車両の周辺における停電の発生に関する情報を含み、前記通信設備の使用可否を判定するための使用可否判定用情報を取得する使用可否判定用情報取得部と、
前記緊急通報要求が前記緊急通報要求取得部によって取得されたときに前記緊急通報先と通信が不能である場合、前記車両の周辺にある前記通信設備の情報と、当該通信設備の使用可否と、を表示部に表示させる情報表示制御部と、を備え
前記情報表示制御部は、
停電が発生している複数のエリアのそれぞれの表示態様を、前記エリアが前記通信設備を含む数に応じて異ならせた地図を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
車両に設けられる情報処理装置であって、
前記車両で発生した緊急通報要求を取得する緊急通報要求取得部と、
緊急通報先と通信不能か否かを判定する通信不能判定部と、
前記緊急通報先との連絡に利用可能な通信設備の情報を記憶する通信設備情報記憶部と、
前記通信設備の使用可否を判定するための使用可否判定用情報を取得する使用可否判定用情報取得部と、
前記緊急通報要求が前記緊急通報要求取得部によって取得されたときに前記緊急通報先と通信が不能である場合、前記車両の周辺にある前記通信設備の情報と、当該通信設備の使用可否と、を表示部に表示させる情報表示制御部と、を備え
前記使用可否判定用情報は、
前記通信設備が設置された建物に入場可能な期間を示す情報を含む、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
前記情報表示制御部は、
入場できない前記建物の表示態様を他の建物と異ならせた地図を表示させる、
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
車両に設けられる情報処理装置であって、
前記車両で発生した緊急通報要求を取得する緊急通報要求取得部と、
緊急通報先と通信不能か否かを判定する通信不能判定部と、
前記緊急通報先との連絡に利用可能な通信設備の情報を記憶する通信設備情報記憶部と、
前記通信設備の使用可否を判定するための使用可否判定用情報を取得する使用可否判定用情報取得部と、
前記緊急通報要求が前記緊急通報要求取得部によって取得されたときに前記緊急通報先と通信が不能である場合、前記車両の周辺にある前記通信設備の情報と、当該通信設備の使用可否と、を表示部に表示させる情報表示制御部と、
前記緊急通報要求発生時の状況を取得する状況取得部と、
前記緊急通報要求が前記緊急通報要求取得部によって取得されたときに前記緊急通報先と通信が不能である場合に、前記表示部を、前記状況取得部によって取得された状況に応じて複数の表示部の中から選択する選択部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
前記状況取得部が取得する状況には、前記車両が走行可否を示す状態と、前記車両の乗員の負傷の状態と、を含む、
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記選択部は、
前記車両が走行可能であり、かつ、負傷していない乗員が居る場合、前記車両に固定設置された表示部を選択する
ことを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記選択部は、
前記車両が走行不能であり、かつ、負傷していない乗員が居る場合、前記車両の外で前記通信設備の情報と、当該通信設備の使用可否の状況と、を表示可能な表示部を選択する
ことを特徴とする請求項5または6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記選択部は、
乗員の全員が負傷している場合、前記車両に固定設置された表示部を選択し、
前記選択部によって選択された表示部には、
前記車両の乗員の状態、が表示される、
ことを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項9】
車両に設けられる情報処理装置の制御方法であって、
前記車両で発生した緊急通報要求を取得する第1ステップと、
緊急通報先と通信不能か否かを判定する第2ステップと、
前記緊急通報先との連絡に利用可能な通信設備の情報と、前記車両の周辺における停電の発生に関する情報を含み、前記通信設備の使用可否を判定するための使用可否判定用情報と、を取得する第3ステップと、
前記緊急通報要求の発生時に前記緊急通報先と通信が不能である場合、前記車両の周辺にある前記通信設備の情報と、当該通信設備の使用可否と、を表示部に表示させる第4ステップと、を備え
前記第4ステップは、停電が発生している複数のエリアのそれぞれの表示態様を、前記エリアが前記通信設備を含む数に応じて異ならせた地図を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項10】
車両に設けられる情報処理装置の制御方法であって、
前記車両で発生した緊急通報要求を取得する第1ステップと、
緊急通報先と通信不能か否かを判定する第2ステップと、
前記緊急通報先との連絡に利用可能な通信設備の情報と、前記通信設備の使用可否を判定するための使用可否判定用情報と、を取得する第3ステップと、
前記緊急通報要求の発生時に前記緊急通報先と通信が不能である場合、前記車両の周辺にある前記通信設備の情報と、当該通信設備の使用可否と、を表示部に表示させる第4ステップと、を備え
前記使用可否判定用情報は、
前記通信設備が設置された建物に入場可能な期間を示す情報を含む、
ことを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項11】
車両に設けられる情報処理装置の制御方法であって、
前記車両で発生した緊急通報要求を取得する第1ステップと、
緊急通報先と通信不能か否かを判定する第2ステップと、
前記緊急通報先との連絡に利用可能な通信設備の情報と、前記通信設備の使用可否を判定するための使用可否判定用情報と、を取得する第3ステップと、
前記緊急通報要求の発生時に前記緊急通報先と通信が不能である場合、前記車両の周辺にある前記通信設備の情報と、当該通信設備の使用可否と、を表示部に表示させる第4ステップと、
前記緊急通報要求発生時の状況を取得する第5ステップと、
前記緊急通報要求が前記第1ステップにより取得されたときに前記緊急通報先と通信が不能である場合に、前記表示部を、前記第5ステップにより取得された前記緊急通報要求発生時の状況に応じて複数の表示部の中から選択する第6ステップと、
を備えることを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、及び情報処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、特開2008-33744号公報(以下、特許文献1と呼ぶ)がある。
特許文献1には「課題」として、「緊急通報サービスにおいて、無線通信圏外等で無線通信できない場合、屋外の電話を使って通報する必要があるが、屋外の電話機の設置位置が見つからない、通報先の電話番号がわからない場合、通報できない課題がある。」と記載されている。この「課題」に対する「解決手段」として、特許文献1には「車載装置101に、車載機情報記憶部1017と、屋外電話施設位置記憶部1016と、周辺の屋外の電話機設置施設の位置を検索する屋外電話施設検索部1036と、緊急通報連絡情報を携帯電話ヘ転送する緊急通報情報転送部1035と、緊急通報サービスセンタとの通信可否を判定する通信可否判定部1034を設ける。また、携帯電話102には、車載装置101の緊急通報連絡情報を受信する緊急通報連絡情報受信部1043を設け、車載装置101が、携帯電話102を介して、緊急通報サービスセンタ106に通信接続できないと判定した場合に、緊急通報連絡情報を、携帯電話102に表示出力させる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-33744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、車両の周辺の状況によっては、緊急通報連絡情報がユーザにとって適切でないことがあった。
本発明は、緊急通報の連絡に用いる情報を、より適切に出力できる情報処理装置、及び情報処理装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両に設けられる情報処理装置であって、前記車両で発生した緊急通報要求を取得する緊急通報要求取得部と、緊急通報先と通信不能か否かを判定する通信不能判定部と、前記緊急通報先との連絡に利用可能な通信設備の情報を記憶する通信設備情報記憶部と、前記車両の周辺における停電の発生に関する情報を含み、前記通信設備の使用可否を判定するための使用可否判定用情報を取得する使用可否判定用情報取得部と、前記緊急通報要求が前記緊急通報要求取得部によって取得されたときに前記緊急通報先と通信が不能である場合、前記車両の周辺にある前記通信設備の情報と、当該通信設備の使用可否と、を表示部に表示させる情報表示制御部と、を備え、前記情報表示制御部は、停電が発生している複数のエリアのそれぞれの表示態様を、前記エリアが前記通信設備を含む数に応じて異ならせた地図を前記表示部に表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、緊急通報の連絡に用いる情報を、より適切に出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る緊急通報システムの構成を模式的に示す図である。
図2】同実施形態に係る車載通知システムの構成を示す図である。
図3】同実施形態に係るナビゲーション装置の機能的構成を示す図である。
図4】同実施形態における緊急通報処理を示すフローチャートである。
図5】同実施形態における表示データ生成処理のフローチャートである。
図6】緊急連絡用画面の構成を示す図である。
図7】緊急連絡用画面の具体例を示す図である。
図8】緊急連絡用画面の具体例を示す図である。
図9】第2実施形態に係る車両緊急通報システムの構成を模式的に示す図である。
図10】同実施形態に係るナビゲーション装置の機能的構成を示す図である。
図11】同実施形態に係るナビゲーション装置の基本動作を示すフローチャートである。
図12】同実施形態に係る表示データ生成処理のフローチャートである。
図13】同実施形態における緊急連絡用情報を表示した緊急連絡用画面の構成の一例を模式的に示す図である。
図14】第3実施形態に係る車載通報システムの構成を示す図である。
図15】同実施形態に係るナビゲーション装置の機能的構成を示す図である。
図16】画像認識対象の標識の一例を示す図である。
図17】同実施形態に係るナビゲーション装置の基本動作を示すフローチャートである。
図18】同実施形態における表示データ生成処理のフローチャートである。
図19】同実施形態における緊急連絡用情報を表示した緊急連絡用画面の構成の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る車両緊急通報システム1を模式的に示す図である。
車両緊急通報システム1は、車両2に搭載された車載システムである車載通報システム3と、緊急通報サービスセンタ4と、を備え、車両2の事故や故障、乗員(運転者や同者)の急病といったトラブルが車両2で発生したときに、車載通報システム3が、かかるトラブルを知らせる緊急通報を、車両2の外部に設けられている緊急通報サービスセンタ4に通知するシステムである。かかる車両緊急通報システム1は、トラブルに遭遇した人に、どの場所でも素早い援助を提供することを目的とした「eCall」システム等に用いられる。
【0009】
緊急通報サービスセンタ4は、トラブル発生時の緊急通報先の施設である。緊急通報サービスセンタ4には、車両2との間でデータの送受や通話をする適宜の通信機器(パーソナルコンピュータや電話機など)が設置されており、これらの通信機器によって車両2からの緊急通報が受け付けられる。
【0010】
車載通報システム3は、移動体通信網Naに通信接続し、当該移動体通信網Naを通じて緊急通報サービスセンタ4と通信する。移動体通信網Naは、各種の移動体通信機器が移動体通信を可能にするネットワークであり、車載通報システム3が通信接続する多数の無線基地局5を備える。
一方、緊急通報サービスセンタ4の通信機器は、電話網(公衆交換電話網やIP網など)を含む通信ネットワークNbを通じて外部の機器との間で、通話、及びデータ通信のための通信を行う。
移動体通信網Naと通信ネットワークNbの電話網とは相互に接続されており、移動体通信網Naと通信ネットワークNbとの間では、回線交換方式やパケット通信方式等の適宜の通信方式により通話、及びデータ通信のための通信が行われる。
【0011】
車載通報システム3は、車両2でのトラブル発生時に、緊急通報サービスセンタ4に移動体通信網Naを通じてトラブルの状況をオペレータに知らせる通報データを送信する。加えて、車載通報システム3は、移動体通信網Naを通じて緊急通報サービスセンタ4に自動で発呼して通話接続することで、緊急通報サービスセンタ4のオペレータが乗員と通話可能とし、乗員からトラブルの状況をより詳細に聴取可能とする。
そしてオペレータは、通報データ、及び乗員からの聴取を通じてトラブルの状況を把握し、当該状況に応じて、警察や消防への連絡、救急車の手配といった支援を行う。
【0012】
ここで、本実施形態の車載通報システム3は、トラブル発生時に、緊急通報サービスセンタ4との間で通信が不能な場合、緊急連絡用情報Ia(図6)を表示することで乗員に提示する。緊急連絡用情報Iaは、車載通報システム3に代わって乗員自らが緊急通報サービスセンタ4と連絡を取るための情報である。かかる緊急連絡用情報Iaを用いて乗員が緊急通報サービスセンタ4と連絡を取ることで、車載通報システム3が緊急通報サービスセンタ4と通信不能な状況下でも、緊急通報サービスセンタ4に緊急通報できる。
さらに本実施形態の車載通報システム3は、緊急連絡用情報Iaの表示先を、そのときの状況に応じて適切に選択するようになっている。
【0013】
図2は、かかる車載通報システム3の構成を示す図である。
同図に示すように、車載通報システム3は、TCU(テレマティクス・コントロール・ユニット)10と、緊急通報要求装置12と、車両状態検出部14と、乗員状態検出部16と、ナビゲーション装置18と、携帯電話機20と、を備え、携帯電話機20を除き、これらが適宜の車載ネットワーク9で相互に通信可能に接続されている。
【0014】
TCU10は、移動体通信網Naを通じて外部の機器との間で双方向に通信する移動体通信回路30と、当該通信のためのアンテナ31と、を備えた車載装置であり、緊急通報サービスセンタ4とナビゲーション装置18との間の通信を中継する。アンテナ31はTCU10と別体でもよい。
【0015】
緊急通報要求装置12は、トラブルの発生を判定するトラブル発生判定器32を備えた車載装置である。緊急通報要求装置12は、トラブルの発生がトラブル発生判定器32によって判定された場合、緊急通報サービスセンタ4への緊急通報の要求(以下、「緊急通報要求」という)をナビゲーション装置18に出力する。トラブル発生判定器32は、例えば事故等による衝撃発生を検出するセンサの検出信号、及び、乗員による緊急通報のための所定の手動操作(例えばナビゲーション装置18の操作子56に対する所定操作)の検出信号が車載ネットワーク9を通じて入力され、これらの検出信号に基づいてトラブルの発生を判定する判定回路を有する。緊急通報要求装置12はTCU10と一体化されてもよい。
【0016】
状況検出部13は、緊急通報要求装置12による緊急通報要求が発生したときの状況を検出しナビゲーション装置18に出力するものであり、車両状態検出部14と、乗員状態検出部16とを備える。
車両状態検出部14は、車両2の各種の状態、特に、車両2の走行可否を示す各種の状態を検出する1又は複数の検出器を備え、検出結果をナビゲーション装置18に出力する。走行可否を示す状態としては、車両2の故障状態や、エアバッグの作動状態、ドアの開閉状態、車速パルスの検出状態などが挙げられる。車両状態検出部14は、これらの状態を検出可能にするために、検出器として、故障診断ユニット34と、エアバック作動検出器36と、ドア開閉検出器38と、車速パルスセンサ40と、を備える。
【0017】
故障診断ユニット34は、車両2の故障状態を診断する車載装置である。具体的には、車両2の車載ネットワーク9には、車両2の各部を制御する多数のECU(図示せず)が接続されている。故障診断ユニット34は、車載ネットワーク9を通じて各ECUと通信する通信デバイスと、各ECUから取得された故障に係るデータに基づいて故障箇所(特に車両2の走行に必要な箇所)の有無を判断するプロセッサと、を備える。
エアバック作動検出器36はエアバッグが作動して展開されているか否かを検出するセンサを有し、ドア開閉検出器38は車両2のサイドドアの開閉状態を検出するセンサを有する。
本実施形態では、エアバッグが展開されている場合、又は、サイドドアが開いている場合、その状態下で運転者が車両2を走行させる蓋然性が低いため、車両2は事実上、走行不能な状態にあると見做される。
車速パルスセンサ40は、車両2の車速パルスを検出するセンサである。車速パルスが検出されている場合、車速がゼロではなく車両2が動いていること、すなわち車両2が走行可能な状態であることが分かる。
【0018】
乗員状態検出部16は、各乗員の状態として、車両2の各座席への乗員の着座状態、及び、各乗員の生体情報を検出する1又は複数の検出器を備え、検出結果をナビゲーション装置18に出力するものである。本実施形態の乗員状態検出部16は、かかる検出器として、着座検出器42と、生体情報検出器44と、を備える。
【0019】
着座検出器42は車室内の各座席における乗員の着座を検出するものであり、座席ごとに設置され、当該座席に乗員が着座しているか否かを検出する着座センサと、車室内の乗員を認識する乗員認識システムと、を備える。乗員認識システムは、車室内を撮影する車内カメラと、当該車内カメラの撮影像に対して顔認識処理することで乗員を検出するプロセッサと、を備える。
着座検出器42は、これら複数の手段の検出結果に基づいて、各座席への乗員の着座状態を精度良く検出する。また、車室内で乗員が横たわっていても、その乗員が認識システムによって漏れなく検出され、車室内の乗員の人数が精度良く特定される。
生体情報検出器44は、各乗員の生体情報(本実施形態では、心拍数)を検出するセンサであり、かかるセンサには、例えばミリ波等を用いて生体情報を検出する非接触センサが用いられる。
【0020】
なお、着座、及び生体情報の各々の検出手法には、公知、又は周知の適宜の手法を用いることができる。例えば、生体情報検出機能を有したウェアラブルデバイスと通信する通信回路を乗員状態検出部16に設け、乗員が着用するウェアラブルデバイスから当該乗員の生体情報を乗員状態検出部16が取得してもよい。
【0021】
携帯電話機20は、乗員などが携帯可能な携帯型電子機器の一例であって、通話のために移動体通信網Naと通信する移動体通信回路50を備えた電話機である。また携帯電話機20は、ナビゲーション装置18と通信(例えば近距離無線通信)する第1通信回路52を備え、ハンズフリー通話を実現する通信機としても用いられる。緊急通報時には、ナビゲーション装置18が緊急通報サービスセンタ4に携帯電話機20から自動で発呼して通話接続し、当該携帯電話機20を通じてオペレータが乗員と通話可能にする。
【0022】
また携帯電話機20は、各種情報を表示する表示部としてディスプレイ54を備え、ナビゲーション装置18の指示にしたがって、当該ナビゲーション装置18から受信した緊急連絡用情報Iaをディスプレイ54に表示する。この携帯電話機20のディスプレイ54に表示される緊急連絡用情報Iaにより、乗員は車両2の外においても緊急連絡用情報Iaを把握できる。
【0023】
ナビゲーション装置18は、車両2の周辺の地図や周辺設備の情報を表示する機能や、目的地へ誘導する機能といった、一般的なカーナビゲーション装置が経路誘導のために備える各種のナビゲーション機能を備えた車載装置である。かかるナビゲーション装置18は、現在位置を検出する位置検出器55、乗員の操作を受け付ける操作子56、各種情報を表示する表示部としてのディスプレイ57、音声を車室内に放音によって出力するスピーカ58、及び、車室内での乗員の音声を集音するマイク59を備える。位置検出器55は、測位衛星から発射されたGNSS信号を受信するGNSS受信回路55Aと、GNSS受信信号に基づいて現在位置を演算によって求めるプロセッサ(図示せず)と、を有する。
また本実施形態のナビゲーション装置18は、携帯電話機20を用いたハンズフリー通話や当該携帯電話機20とのデータの送受のために、当該携帯電話機20と通信する第2通信回路60を有する。
【0024】
なお、ナビゲーション装置18の位置検出器55、操作子56、ディスプレイ57、スピーカ58、及びマイク59は、ナビゲーション装置18に内蔵されるのではなく、当該ナビゲーション装置18から制御可能に車載ネットワーク9に接続されていればよい。また位置検出器55による現在位置の検出には、GNSS信号に基づく検出に限らず、公知、又は周知の適宜の手法を用いることができる。
【0025】
ここで、本実施形態のナビゲーション装置18は、上記ナビゲーションの機能に加え、緊急通報要求の発生時に、緊急通報サービスセンタ4に緊急通報を通知する、いわゆる緊急通報装置としての機能も備える。
【0026】
図3は、かかるナビゲーション装置18の機能的構成を示す図である。
ナビゲーション装置18は、図2に示したハードウェアの他にも、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイス(主記憶装置とも呼ばれる)と、HDDやSSDなどのストレージ装置(補助記憶装置とも呼ばれる)と、車載ネットワーク9と通信する車載ネットワーク通信回路と、センサ類や周辺機器を接続するためのインタフェース回路と、を備えた情報処理装置を有する。かかる情報処理装置において、メモリデバイス又はストレージ装置に記憶されたプログラムをプロセッサが実行することで、図3に示す機能的構成が実現される。かかるプログラムは、CDやDVD、半導体メモリなどの記録媒体に記録し、又はインターネットなどの電気通信回線を通じて頒布される。
【0027】
ナビゲーション装置18は、図3に示すように、ナビゲーションに係る機能的構成として、現在位置取得部66と、地図データ記憶部68と、ナビゲーション部70と、ハンズフリー制御部72と、を備える。
さらに本実施形態のナビゲーション装置18は、緊急通報に係る機能的構成として、緊急通報要求取得部74と、状況取得部75と、緊急通報制御部77と、通信不能判定部80と、情報表示制御部82と、通信設備情報記憶部84と、選択部86と、を備える。
【0028】
現在位置取得部66は位置検出器55から現在位置を取得し、地図データ記憶部68は経路案内に供される地図のデータを予めストレージ装置に記憶する。なお、地図データ記憶部68は、サーバから地図のデータを適宜に取得してもよい。
ナビゲーション部70は、ナビゲーション機能に係る動作を制御するものであり、例えば現在位置の周辺の地図に当該現在位置や案内経路を重ねてディスプレイ57に表示したり、経路を案内するための音声ガイダンスをスピーカ58から適宜に出力する。
ハンズフリー制御部72は、携帯電話機20を用いたハンズフリー通話を制御するものである。具体的には、ハンズフリー制御部72は、第2通信回路60を通じて携帯電話機20と通信し、携帯電話機20の着呼への応答、及び携帯電話機20からの発呼を行う。また、ハンズフリー制御部72は、通話相手の音声をスピーカ58から車室内に出力し、乗員の音声をマイク59によって集音し携帯電話機20を通じて通話相手に送ることで、ハンズフリー通話を可能にする。
【0029】
緊急通報要求取得部74は、緊急通報要求装置12で発生した緊急通報要求を取得する。
状況取得部75は、緊急通報要求発生時の状況を状況検出部13から取得する。この状況として、車両2の状態、特に車両2の走行可否に係る車両状態が車両状態検出部14から取得され、また各乗員の状態、特に車両2の各座席への乗員の着座状態、及び、各乗員の生体情報が乗員状態検出部16から取得される。
緊急通報制御部77は、緊急通報要求取得部74によって緊急通報要求が取得された場合に、緊急通報サービスセンタ4へ緊急通報を通知するための制御を行う。具体的には、緊急通報制御部77は、トラブル発生状況を知らせる通報データを生成し、その通報データをTCU10から緊急通報サービスセンタ4へデータ送信する。また緊急通報制御部77は、ハンズフリー制御部72を制御して緊急通報サービスセンタ4へ携帯電話機20から発呼することで、緊急通報サービスセンタ4のオペレータが乗員と通話可能にする。通報データには、トラブルの状況を知らせる情報として、現在位置取得部66によって取得された車両2の現在位置や、状況取得部75によって取得された車両2の状態(例えば、エアバッグの動作状況、衝突検知の有無、故障情報など)が含まれる。なお、車両事故等によりGNSS受信回路55Aが作動しない場合、車両2の現在位置には、現在位置取得部66が直近に取得していた位置が代わりに用いられる。
【0030】
通信不能判定部80は、緊急通報サービスセンタ4との通信が不能か否かを判定する。
本実施形態では、ナビゲーション装置18が緊急通報サービスセンタ4との間で、通話、及びデータ通信のいずれも不能な状態を、「通信が不能」な状態として扱う。なお、データ通信は可能であって通話が不能な状態を、「通信が不能」な状態としてもよい。
【0031】
通信不能に陥る要因としては、TCU10が備えるアンテナ31の故障や、通信電波の届き難い受信環境、ナビゲーション装置18の故障、といった事が挙げられる。通信電波が届き難い受信環境としては、例えば、移動体通信のサービスエリア外、トンネル、地下駐車場といった箇所が挙げられる。また、緊急通報サービスの利用に所定の契約が必要な場合であって、その利用契約を乗員が結んでいない場合にも、ナビゲーション装置18が緊急通報サービスセンタ4と通信できない事があり、この場合も通信不能と判定される。
これらの通信不能の要因を判定するために、通信不能判定部80は、アンテナ31の動作状態、及び通信電波の受信状態をTCU10から取得してアンテナ31の故障、及び受信環境を判定する。また通信不能判定部80は、ナビゲーション装置18の故障状態、及び利用契約の締結状態を適宜の公知、又は周知の手法で判定する。そして、通信不能判定部80は、これらの判定結果に基づいて通信不能か否かを判定する。
【0032】
情報表示制御部82は、通信不能判定部80によって通信不能であると判定された場合、緊急連絡用情報Iaを表示するための表示データを生成し、緊急要求発生時の状況に応じて選択された端末の表示部に表示させる。当該端末には、車載ネットワーク9に通信可能に接続され、車両2に固定設置された表示部への表示機能を有した車載装置と、車載装置から受け取った情報を自身の表示部に表示する携帯型電子機器と、がある。本実施形態では、車載装置にはナビゲーション装置18が該当し、携帯型電子機器には携帯電話機20が該当する。端末の選択は選択部86によって行われる。
【0033】
緊急連絡用情報Iaは、車載通報システム3に代わって乗員自らが緊急通報サービスセンタ4と連絡を取ってトラブルを知らせるために必要となる情報である。かかる情報は、緊急通報サービスセンタ4の電話番号Ia1と、当該緊急通報サービスセンタ4に電話をかけることができる通信設備が設けられた場所を案内する通信設備案内情報Ia2と、を少なくとも含む。この通信設備案内情報Ia2では、車両2の現在位置の周辺(所定距離内)にある通信設備の場所、又は、現在位置から近い順に所定数の通信設備の場所が案内される。
【0034】
通信設備は、例えば公衆電話機や、高速道路等に設置された非常電話機、施設(警察署、交番、消防署、病院、駅、官公庁、公共施設、商業施設など)や民家などの建物に設置された固定電話機などである。また、当該建物に敷設されたインターネット回線設備(例えば無線LANルータなど)に携帯電話機20を接続することで、携帯電話機20が当該インターネット回線設備を通じて、緊急通報サービスセンタ4の通信機器と通話接続可能な場合には、当該インターネット回線設備も上記通信設備に該当する。
【0035】
通信設備情報記憶部84は、通信設備案内情報Ia2の案内に用いられる通信設備の通信設備情報を予めストレージ装置に記憶する。かかる通信設備情報には、通信設備の位置(場所)、通信設備の種類(公衆電話機、非常電話機、固定電話機など)、通信設備が設置されている建物を乗員が識別可能な情報(建物の施設名や、屋号、当該建物が民家であることを示す情報)などが含まれる。
【0036】
選択部86は、緊急通報要求発生時の状況を判定する状況判定部88を備え、当該状況判定部88の判定結果に基づいて、当該緊急連絡用情報Iaを表示する端末の表示部(本実施形態では、ナビゲーション装置18のディスプレイ57、及び携帯電話機20のディスプレイ54のいずれか一方)を選択する。
【0037】
状況判定部88は、緊急通報要求発生時の状況として、車両2が走行可能な状況であるか否か、負傷者が存在するか否か、及び、乗員全員が負傷しているか否か、を判定する。
具体的には、状況判定部88は、状況取得部75によって取得された車両状態に基づいて車両2が走行可能か否かを判定する。また、状況判定部88は、状況取得部75によって取得された各乗員の状態に基づいて、負傷者が存在するか否か、及び、乗員の全員が負傷しているか否か(換言すれば、負傷していない乗員が存在しないか否か)を判定する。この場合において、乗員が負傷しているか否かの判定には、主に生体情報が用いられる。また、本実施形態では、乗員が車両2を操縦したり、周辺の通信設備まで歩行したりすることが困難な身体状態である場合に、乗員が負傷していると判定される。
【0038】
次いで、本実施形態の動作を説明する。
図4は、緊急通報処理のフローチャートである。
この緊急通報処理は、緊急通報要求装置12から緊急通報要求が出力された際にナビゲーション装置18によって行われる。すなわち、ナビゲーション装置18は、緊急通報要求取得部74が緊急通報要求を緊急通報要求装置12から取得すると、緊急通報サービスセンタ4との通信が不能か否かを通信不能判定部80が判定する(ステップSa1)。
【0039】
通信が可能である場合(ステップS1:No)、緊急通報制御部77は、緊急通報を緊急通報サービスセンタ4に通知し(ステップSa2)、またナビゲーション部70に、現在位置を示す地図の表示を指示する(ステップSa3)。
ステップSa2の通知では、トラブルの発生状況を知らせる通報データの送信と、携帯電話機20から緊急通報サービスセンタ4への発呼と、が行われる。この発呼により、緊急通報サービスセンタ4のオペレータが乗員と通話可能となり、現状について乗員との通話によって詳しく知ることができる。このとき、ステップSa3により、ナビゲーション装置18のディスプレイ57には、現在位置を示す地図が表示されるので、乗員は、その表示によって現在位置、及び周辺を把握しながら、オペレータと対話できる。
【0040】
一方、通信が不能な場合(ステップSa1:Yes)、ナビゲーション装置18は、状況に応じた端末の表示部に、緊急連絡用情報Iaを表示するための処理を実行する。
具体的には、先ず、車両2が走行可能か否かを状況判定部88が判定する(ステップSa4)。車両2が走行可能な場合(ステップSa4:Yes)、選択部86は、緊急連絡用情報Iaを表示する端末の表示部に、ナビゲーション装置18のディスプレイ57を選択する(ステップSa5)。
一方、車両2が走行不能な場合(ステップSa4:No)、負傷者が存在するか否かを状況判定部88が判定し(ステップSa6)、負傷者が存在する場合には(ステップSa6:Yes)、乗員の全員が負傷しているか否かを判定する(ステップSa7)。
【0041】
乗員の全員が負傷している場合(ステップSa7:Yes)、選択部86は、緊急連絡用情報Iaを表示する端末の表示部に、ナビゲーション装置18のディスプレイ57を選択する(ステップSa8)。
負傷していない乗員が存在する場合には(ステップSa6:No、又は、ステップSa7:No)、選択部86は、緊急連絡用情報Iaを表示する端末の表示部に、携帯型電子機器である携帯電話機20のディスプレイ54を選択する(ステップSa9)。
【0042】
そして、情報表示制御部82は緊急連絡用情報Iaの表示データを生成し(ステップSa10)、選択部86によって選択された端末に当該表示データを送り、その端末の表示部に緊急連絡用情報Iaを表示させる(ステップSa11)。
【0043】
図5は、緊急連絡用情報Iaの表示データを生成する表示データ生成処理のフローチャートである。
本実施形態では、緊急連絡用情報Iaによって乗員に案内される通信設備の種類が、車両2の現在位置に応じて、非常電話機、公衆電話機、及び、利用可能な通信設備が設置された建物の中から選択される。
詳述すると、日本国の自動車専用道路や高速道路には、一般に、約1km又は500m間隔(トンネル内では200m又は100m間隔)といった一定間隔で非常電話機が設置されている。そこで、図5に示すように、高速道路のような非常電話機が設置された道路(以下、「非常電話機設置道路」という)に現在位置が位置する場合(ステップSb1:Yes)、情報表示制御部82は、当該非常電話機設置道路に設置された非常電話機を案内対象の通信設備に選択し、現在位置から近い順に所定数の非常電話機の場所を通信設備情報84Aから抽出する(ステップSb2)。
【0044】
一方、非常電話機が設置された道路ではない場所に現在位置が位置する場合(ステップSb1:No)、情報表示制御部82は、現在位置と、通信設備情報84Aと、に基づいて、現在位置の周辺(現在位置から所定範囲内)に公衆電話機が存在するか否かを判定する(ステップSb3)。
公衆電話機が存在する場合(ステップSb3:Yes)、周辺の公衆電話機を案内対象の通信設備に選択し、現在位置の周辺の公衆電話機の場所を通信設備情報84Aから抽出する(ステップSb4)。
一方、山間部などの近くに公衆電話機がないエリアに車両2が位置する等して、周辺に公衆電話機が存在しない場合(ステップSb3:No)、利用可能な通信設備が設置された周辺の建物(非常電話機などの屋外設置型の通信設備でもよい)を、案内対象の通信設備に選択し、周辺の建物の場所を通信設備情報84Aから抽出する(ステップSb5)。
【0045】
さらに情報表示制御部82は、乗員の全員が負傷しているか否かを判断する(ステップSb6)。情報表示制御部82は、乗員の全員が負傷している場合(ステップSb6:Yes)、車両2の中に居る乗員の状態を車外に通知するために、そのときの乗員の状態(着座状態、及び生体情報)を取得する(ステップSb7)。
【0046】
そして、情報表示制御部82は、緊急連絡用情報Iaを表示するための表示データを、ステップSb2からSb5までの処理で抽出した通信設備の場所、及び、ステップSb6の判断結果(乗員の負傷状況)に基づいて生成する(ステップSb8)。その後、情報表示制御部82は、上述の緊急通報処理のステップSa11の処理に戻る。そして、この処理において、情報表示制御部82は、表示データに基づく緊急連絡用情報Iaを、選択部86によって選択された表示部に表示させる。
【0047】
図6は、緊急連絡用情報Iaを表示した緊急連絡用画面Daの構成の一例を模式的に示す図である。
同図に示すように、緊急連絡用画面Daは、緊急通報サービスセンタ4の電話番号Ia1を表示する連絡先表示エリアDa1と、周辺の通信設備の場所を案内する通信設備案内情報Ia2を表示する通信設備案内表示エリアDa2と、を備える。また、乗員の全員が負傷している場合、緊急連絡用画面Daには、乗員の状態を知らせる乗員状態表示エリアDa3が追加される。
【0048】
図7は、負傷していない乗員が存在する場合の緊急連絡用画面Daの具体例を示す図である。
車両2が非常電話機設置道路に位置する場合、通信設備案内表示エリアDa2には、現在位置から近い順に所定数(図示例では2つ)の非常電話機の場所がリスト形式で表示される。この場合において、車両事故発生時には、車両2の向き(フロント方向)が道路の走行方向と一致しない事が多々あるため、車両2からみた通信設備の場所の方向を一意に指示する案内(例えば、「前方100メートル先」など)は行われないようになっている。図示例では、車両2を基準とした方向の代わりに、非常電話機の近くにある目印(図示例では、高速道路等に設置されたキロポストと呼ばれる標識)を表示することで、通信設備の場所の方向を乗員が把握可能にしている。
なお、現在の道路の行き先の地名(XX市方面)や、方位(東西南北)等を基準として通信設備の場所の方向を示してもよい。またサービスエリアやパーキングエリアに設置された公衆電話機や固定電話機が近くに存在する場合、これらの電話機、及び上記非常電話機を、近い順に案内してもよい。
【0049】
車両2が非常電話機設置道路以外に位置し、なおかつ、公衆電話機が周辺に存在する場合、通信設備案内表示エリアDa2には、現在位置Epと、その周辺の公衆電話機の位置を示すアイコンE1とが地図に重ねて表示される。
【0050】
一方、車両2が非常電話機設置道路以外に位置し、なおかつ、公衆電話機が周辺に存在しない場合、通信設備案内表示エリアDa2には、現在位置Epと、利用可能な通信設備が設置されている周辺の建物の位置を示すアイコンE2が重ねて表示される。なお、この場合、地図は、建物の位置が分かり易い最適な縮尺で表示される。また屋外に設置された通信設備(非常電話機など)が周辺にある場合は、その通信設備も表示される。
【0051】
図8は、乗員の全員が負傷している場合の緊急連絡用画面Daの具体例を示す図である。
乗員の全員が負傷している場合、同図に示すように、緊急連絡用画面Daに追加された乗員状態表示エリアDa3には、車室内の各座席への乗員の着座状況と、各乗員の生体情報(本実施形態では心拍数)と、が表示される。図示例では、車両2における各座席の位置を示すアイコンE3が乗員状態表示エリアDa3に表示され、これらのアイコンE3が着座状況、及び生体情報に応じて異なる態様で表示される。具体的には、乗員が着座していない座席のアイコンE3は白色で表示される。一方、乗員が着座している座席のアイコンE3は、当該乗員の心拍数が所定閾値範囲内であれば青色で表示され、当該心拍数数が所定閾値範囲外であれば黄色で表示される。
なお、同図に示す乗員状態表示エリアDa3の表示は、あくまでも一例であり、この乗員状態表示エリアDa3には、車室内の乗員の有無や人数、各乗員の位置、生体情報(負傷の有無を含む)を、適宜の態様で表示してもよい。
【0052】
本実施形態において、緊急連絡用画面Daは、車両2が走行可能である場合、ナビゲーション装置18のディスプレイ57に表示される。したがって、乗員は、その表示を頼りに、利用可能な近くの通信設備に車両2で速やかに移動し、その通信設備を使って緊急通報サービスセンタ4に電話をかけ、オペレータに通報できる。
【0053】
一方、車両2が走行不能である場合、負傷していない乗員が存在するときには、緊急連絡用画面Daが携帯電話機20に表示される。したがって、負傷していない乗員が、携帯電話機20を携えながら当該携帯電話機20の表示を頼りに、利用可能な近くの通信設備の場所に徒歩などで赴き、その通信設備を使って緊急通報サービスセンタ4に電話をかけ、オペレータに通報できる。
さらに、本実施形態では、携帯電話機20のディスプレイ54とナビゲーション装置18のディスプレイ57とは表示先として排他的に選択される。すなわち、携帯電話機20のディスプレイ54に緊急連絡用画面Daが表示され、乗員が携帯電話機20を携えて近くの通信設備に向かう場合は、ナビゲーション装置18のディスプレイ57に緊急連絡用画面Daが表示されない。したがって、当該表示によって車両2のバッテリが無駄に消費されることがない。そして車両2の状況を周囲に伝えるための車載装置の動作(例えばハザードランプの点灯や、車車間通信装置による他車両との通信など)へのバッテリ残量の低下による支障を回避し、車両2の安全性確保をより確実なものにできる。
これとは逆に、ナビゲーション装置18のディスプレイ57に緊急連絡用画面Daが表示される場合は、携帯電話機20のディスプレイ54に緊急連絡用画面Daが表示されることがないので、携帯電話機20のバッテリ残量を温存できる。
【0054】
また、車両2が走行不能である場合、乗員の全員が負傷しているときには、乗員状態表示エリアDa3が追加された緊急連絡用画面Daがナビゲーション装置18のディスプレイ57に表示される。
これにより、救援に駆けつけた者が、乗員状態表示エリアDa3の表示によって、車内の乗員の状態をスムーズに把握できる。また駆けつけた者が、緊急通報先を把握しておらず、緊急通報先への連絡手段も持っていない場合には、連絡先表示エリアDa1、及び通信設備案内表示エリアDa2の表示によって、緊急通報サービスセンタ4の電話番号、及び近くの通信設備の場所を知ることができ、適切かつ速やかに救援活動を行うことができる。
またウインドウの透過性が低かったり夜間であったりして、車外から車室内の状況が視認し難い状況下であっても、ナビゲーション装置18のディスプレイ57に緊急連絡用画面Daが表示されることで、車外からでも緊急連絡用画面Daが視認し易くなる。
【0055】
上述した実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0056】
本実施形態では、緊急通報要求発生時に緊急通報サービスセンタ4と通信が不能である場合、車両2の乗員が緊急通報サービスセンタ4と連絡を取るための緊急連絡用情報Iaの表示先が、複数の表示部の中から、緊急通報要求の発生時の状況に応じて選択される。
これにより、緊急通報要求発生時の状況に応じた表示部に緊急連絡用情報Iaが表示され、乗員による緊急通報サービスセンタ4への連絡を適切に支援できるようになる。
【0057】
本実施形態では、緊急通報要求発生時の状況には、車両2が走行可否を示す状態と、乗員の負傷の状態と、を含む。
これにより、車両2、及び乗員のそれぞれの移動可否に応じて、適切な表示部に緊急連絡用情報Iaを表示することができる。
【0058】
本実施形態では、車両2に固定設置されたディスプレイ57、及び、車外に持出可能な携帯電話機20のディスプレイ54のいずれか一方が緊急連絡用情報Iaの表示先として、緊急通報要求発生時の状況に応じて排他的に選択される。
これにより、携帯電話機20のディスプレイ54に緊急連絡用画面Daが表示され、乗員が携帯電話機20を携えて近くの通信設備に向かう場合は、ナビゲーション装置18のディスプレイ57に緊急連絡用画面Daが表示されることはない。したがって、当該表示による車両2のバッテリの無駄な消費を抑え、車両2の状況を周囲に伝えるための車載装置の動作へのバッテリ残量低下による支障を回避し、車両2の安全性確保をより確実なものにできる。
これとは逆に、ナビゲーション装置18のディスプレイ57に緊急連絡用画面Daが表示される場合は、携帯電話機20のディスプレイ54に緊急連絡用画面Daが表示されることがないので、携帯電話機20のバッテリ残量を温存できる。
【0059】
本実施形態では、車両2が走行可能であり、かつ、負傷していない乗員が存在する場合、車両2に固定設置された表示部である、ナビゲーション装置18のディスプレイ57が、緊急連絡用情報Iaの表示先として選択される。
これにより、ディスプレイ57における緊急連絡用情報Iaの表示を頼りに、乗員が利用可能な近くの通信設備に車両2で速やかに移動し、その通信設備を使って緊急通報サービスセンタ4に電話をかけ、オペレータに通報できる。
【0060】
本実施形態では、車両2が走行不能であり、かつ、負傷していない乗員が存在する場合、携帯電話機20のディスプレイ54が、緊急連絡用情報Iaの表示先として選択される。
これにより、負傷していない乗員が、携帯電話機20を携えながら当該携帯電話機20の表示を頼りに、利用可能な近くの通信設備の場所に徒歩などで赴き、その通信設備を使って緊急通報サービスセンタ4に電話をかけ、オペレータに通報できる。
【0061】
本実施形態では、乗員の全員が負傷している場合、ナビゲーション装置18のディスプレイ57が、緊急連絡用情報Iaの表示先として選択され、またディスプレイ57には、緊急連絡用情報Iaと、車両2の乗員の状態と、が表示される。
これにより、救援に駆けつけた者が、車両2の乗員の状態の表示によって、車内の乗員の状態をスムーズに把握できる。また駆けつけた者が、緊急通報先を把握しておらず、緊急通報先への連絡手段も持っていない場合には、緊急連絡用情報Ia(緊急通報サービスセンタ4の電話番号Ia1、及び通信設備案内情報Ia2)の表示によって、緊急通報サービスセンタ4の連絡先、及び近くの通信設備の場所を知ることができ、適切かつ速やかに救援活動を行うことができる。
またウインドウの透過性が低かったり夜間であったりして、車外から車室内の状況が視認し難い状況下であっても、ナビゲーション装置18のディスプレイ57に緊急連絡用画面Daが表示されることで、車外からでも緊急連絡用画面Daが視認し易くなる。
【0062】
[第1実施形態の変形、及び応用]
なお、本実施形態に対し、次のような変形、及び応用が可能である。
【0063】
上述した実施形態において、非常電話機の場所を案内する緊急連絡用画面Daが表示されている場合に、情報表示制御部82が、乗員の操作に応じて、公衆電話機、又は周辺の利用可能な通信設備を案内する緊急連絡用画面Daの表示データを生成する構成とし、乗員が緊急連絡用画面Daの表示を手動で切替可能にしてもよい。
これとは逆に、公衆電話機、又は周辺の利用可能な通信設備を案内する緊急連絡用画面Daが表示されている場合に、情報表示制御部82が、乗員の操作に応じて、非常電話機の場所を案内する緊急連絡用画面Daの表示データを生成する構成とし、乗員が緊急連絡用画面Daの表示を手動で切替可能にしてもよい。
【0064】
上述した実施形態の緊急通報処理(図4)において、車両2が走行可能な場合にも(ステップSa4:No)、乗員の全員が負傷しているか否かを状況判定部88が判定し、乗員の全員が負傷しているときには、ナビゲーション装置18のディスプレイ57に表示される緊急連絡用画面Daに、乗員状態表示エリアDa3が追加されるようにしてもよい。
【0065】
本実施形態において、車両2の外でも緊急連絡用情報Iaを表示可能な表示部を有した電子機器として、携帯型電子機器の一例である携帯電話機20を例示した。しかしながら、これに限らず、他車両と通信する車車間通信装置を車載通報システム3が備える場合、当該他車両が備える表示部を、携帯型電子機器の表示部の代わりに、或いは、携帯型電子機器の表示部と併せて用いてもよい。
【0066】
[第2実施形態]
本実施形態では、通信設備が使用可能な状況にあるか否かに応じて、適切な緊急連絡用情報Iaを乗員に提示する車両緊急通報システムについて説明する。なお、本実施形態に係る説明において、第1実施形態で説明した構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図9は、本実施形態に係る車両緊急通報システム100の構成を模式的に示す図である。
同図に示すように、車両緊急通報システム100は、上述の車載通報システム3と、緊急通報サービスセンタ4と、に加え、停電情報配信サーバ106を備える。
【0068】
停電情報配信サーバ106は、車両2の周辺における停電の発生に関する情報(以下、「停電情報」という)を配信するサーバコンピュータである。停電情報には、送電トラブルなどによって停電が発生しているエリアを地図に表示するために必要な情報が少なくとも含まれる。エリアは、例えば行政区(市区町村など)とった所定の区画によって規定される。
停電情報配信サーバ106は、通信ネットワークNb(移動隊通信網Naでもよい)に接続され、車載通報システム3との間でデータ通信し、停電情報を車載通報システム3に配信する。
【0069】
図10は、本実施形態に係るナビゲーション装置118の機能的構成を示す図である。
同図に示すように、ナビゲーション装置118は、第1実施形態のナビゲーション装置18の機能的構成に加え、停電情報取得部161と、停電情報記憶部162と、使用可否判定用情報取得部163と、を備える。
停電情報取得部161は、TCU10(図2)を通じて停電情報配信サーバ106と通信し、当該停電情報配信サーバ106から停電情報を取得する。
停電情報記憶部162は、停電情報取得部161によって取得された停電情報を記憶する。
【0070】
また通信設備情報記憶部84の通信設備情報84Aには、商業、又は公共のジャンルに分類される施設に設置された通信設備について、その施設に乗員が入場可能な期間(以下、「入場可能期間」)が予め記録されている。入場可能期間には、例えば、施設に乗員が入場可能な曜日や時間帯、日付、休業日、休業期間などが記録される。
【0071】
使用可否判定用情報取得部163は、使用可否判定用情報を取得する。使用可否判定用情報は、緊急通報要求発生時における通信設備の使用可否を判定するための情報である。本実施形態では、使用可否判定用情報には、停電によって通信設備が使用不能な状況であるか否かを判定可能にする上記停電情報と、建物への入場不可によって通信設備が使用不能な状況であるか否かを判定可能にする上記入場可能時期と、が含まれている。
使用可否判定用情報取得部163は、停電情報記憶部162から停電情報を読み出すことで当該停電情報を取得し、また通信設備情報記憶部84から通信設備情報84Aを読み出すことで、当該通信設備情報84Aから施設の入場可能時期を取得する。
【0072】
図11は、ナビゲーション装置118の基本動作を示すフローチャートである。
ナビゲーション装置118では、例えばエンジン始動後、停電情報取得部161が適宜の時間間隔で停電情報配信サーバ106から停電情報を取得し(ステップSc1)、当該停電情報を停電情報記憶部162が更新記憶する(ステップSc2)。これにより、常に最新の停電情報が停電情報記憶部162に記憶される。
【0073】
そして、第1実施形態で説明したように、緊急通報要求装置12(図2)から緊急通報要求を緊急通報要求取得部74が取得した場合(ステップSc3:Yes)には、ナビゲーション装置118が、上述した緊急通報処理(図4)を実行する(ステップSc4)。
かかる緊急通報処理の実行により、緊急通報要求発生時に緊急通報サービスセンタ4と通信が不能である場合に、緊急連絡用情報Iaを表示する表示データの生成が行われる(ステップSa10:図4)。
【0074】
図12は、本実施形態の表示データ生成処理のフローチャートである。
本実施形態では、第1実施形態で説明した表示データ生成処理(図5)のステップSb1からステップSb8までの処理に加え、当該ステップSb8における表示データ生成の前に、使用可否判定用情報取得部163が使用可否判定用情報(停電情報、及び施設の入場可能時期)を取得する(ステップSd1)。
そして、情報表示制御部82は、緊急連絡用情報Iaを表示するための表示データを、ステップSb2からSb5までの処理で抽出した通信設備の場所、ステップSb6の判断結果(乗員の負傷状況)、及び、ステップSd1で読み出された使用可否判定用情報に基づいて生成する。
その後、情報表示制御部82は、上述の緊急通報処理に戻り、ナビゲーション装置118のディスプレイ57、及び、携帯電話機20のディスプレイ54のいずれか一方に、表示データに基づいて緊急連絡用情報Iaを表示する(ステップSa11:図4)。
【0075】
図13は、緊急連絡用情報Iaを表示した緊急連絡用画面Daの構成の一例を模式的に示す図である。なお、同図には、周囲に公衆電話機がなく、なおかつ、乗員の状態を知らせる乗員状態表示エリアDa3が追加されていない場合(すなわち、負傷していない乗員が居る場合)(ステップSb3:No、かつステップSb6:No)を示している。
車両2の現在位置の周辺に停電が発生している停電エリアがある場合、情報表示制御部82は、当該停電エリアを乗員が認識できるように、周辺の利用可能な通信設備の場所を示す地図を表示する表示データを生成する。
【0076】
本実施形態では、情報表示制御部82は、図13に示すように、現在位置Epの周辺の行政区Fを示す地図に、周辺の利用可能な通信設備の場所を示すアイコンE2を重ね、かつ、停電情報に基づいて、停電が発生している行政区Fにハッチングや着色等(図示例では、ハッチング)を付すことで他の行政区Fと表示態様を異ならせた表示データを生成する。
【0077】
この場合において、情報表示制御部82は、停電が発生している行政区Fについては、その行政区Fに属する通信設備の数に応じて表示態様(図示例では、斜線ハッチングとドットハッチング)を異ならせる。
これに加え、情報表示制御部82は、通信設備情報84Aに基づいて、利用可能な通信設備が設置された周辺の建物の中で、現時点で入場できない建物の場所を示すアイコンE2の表示態様(図示例では黒色に着色)を他のアイコンE2(図示例では白色)と異ならせた表示データを生成する。
【0078】
かかる緊急連絡用画面Daが表示されることで、現時点で使用可能な通信設備の場所を乗員に案内し、その場所に誘導することができ、使用できない通信設備に向かって乗員が移動してしまう事を回避できる。
【0079】
また緊急連絡用画面Daには、停電が発生している行政区Fが他の行政区Fと異なる表示態様で表示されることで、停電が発生している行政区F内で乗員が通信設備を探し周ってしまい、緊急通報までに多くの時間を要する、といった事態を回避できる。
【0080】
さらに緊急連絡用画面Daには、その時点で入場できない建物が他の建物と異なる表示態様で表示されることで、乗員は、入場できない建物への無駄足を踏むことなく、その時点で使用できる建物に速やかに移動し、その建物に設置された通信設備を利用して緊急通報できる。
【0081】
本実施形態によれば、第1実施形態で説明した効果に加え、次のような効果を奏する。
【0082】
本実施形態では、緊急通報要求発生時に緊急通報サービスセンタ4と通信が不能である場合、車両2の周辺にある利用可能な通信設備の情報と、当該通信設備の使用可否と、がディスプレイ54、又はディスプレイ57に表示される。
これにより、乗員は、周辺の通信設備を、それぞれの通信設備の使用可否と併せて把握し、使用可能な通信設備を使って乗員自らがスムーズに緊急通報できる。
【0083】
本実施形態では、通信設備の使用可否には、車両2の周辺における停電の発生に関する情報が含まれるので、停電に起因して通信設備が使用できない状況に陥っていても、当該状況を乗員に通知できる。
【0084】
本実施形態では、停電が発生している行政区Fの表示態様を他の行政区Fと異ならせた地図が表示されるので、停電が発生している行政区F内で乗員が通信設備を探し周ってしまい、緊急通報までに多くの時間を要する、といった事態を回避できる。
【0085】
本実施形態では、停電が発生している複数の行政区Fのそれぞれの表示態様を、当該行政区Fが含む通信設備の数に応じて異ならせた地図が表示される。
これにより、停電が発生している行政区Fと、各行政区Fにある通信設備の数とを、乗員が視覚的に容易に把握できる。
【0086】
本実施形態では、通信設備の使用可否には、通信設備が設置された建物に入場可能な期間を示す情報が含まれるので、建物に入場できないために当該建物の通信設備を使用できないという状況を乗員に通知できる。
【0087】
本実施形態では、入場できない建物の表示態様を他の建物と異ならせた地図が表示されるので、使用できない乗員は、入場できない建物への無駄足を踏むことなく、その時点で使用できる建物に速やかに移動し、その建物に設置された通信設備を利用して緊急通報できる。
【0088】
[第2実施形態の変形、及び応用]
本実施形態において、通信設備の場所を示すアイコンE2の表示態様を、停電が発生しているエリア内とエリア外とで異ならせてもよい。
【0089】
本実施形態において、他車両と通信する車車間通信装置を車載通報システム3が備える場合、当該他車両が備える表示部に緊急連絡用情報Iaを、携帯型電子機器の表示部の代わりに、或いは、携帯型電子機器の表示部と併せて表示してもよい。
【0090】
[第3実施形態]
本実施形態では、屋外に設置された通信設備の場所の正確性を高めることで、より適切な緊急連絡用情報Iaを乗員に提示する車両緊急通報システムについて説明する。なお、本実施形態に係る説明において、第1実施形態で説明した構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また本実施形態の車両緊急通報システムの構成は第1実施形態と同様である。
【0091】
図14は、本実施形態に係る車載通報システム203の構成を示す図である。
同図に示すように、車載通報システム203は、第1実施形態の車載通報システム3(図2)の構成に加え、車外撮影カメラ219を備える。
車外撮影カメラ219は、車両2の周囲を撮影し、撮影データを順次にナビゲーション装置18に出力する1又は複数の車載カメラである。なお、車外撮影カメラ219によって必ずしも車両2の全周囲(360度)が撮影される必要はなく、道路脇(路肩など)に設置された通信設備が映る範囲(例えば、車両2の左右両側の各々の範囲など)が含まれていればよい。
【0092】
図15は、本実施形態に係るナビゲーション装置218の機能的構成を示す図である。
同図に示すように、ナビゲーション装置218は、第1実施形態のナビゲーション装置18の機能的構成に加え、車外撮影データ取得部290と、通信設備検出部291と、通信設備検出情報記憶部292と、通信設備位置推定部293と、を備える。
【0093】
車外撮影データ取得部290は、少なくとも車両2が走行している間、車両2の周囲を撮影した撮影データを車外撮影カメラ219から順次に取得する。
通信設備検出部291は、車外撮影データ取得部290によって取得された撮影データの撮影像から通信設備を画像認識し、車両2の周囲に設置されている通信設備を検出する。さらに通信設備検出部291は、撮影データに基づいて検出された通信設備に、当該撮影データの撮影時の車両2の現在位置を設置位置として対応付ける。
【0094】
本実施形態では、通信設備を示す標識を通信設備検出部291が撮影像から認識することで当該通信設備を検出する。通信設備を示す標識としては、図16に示すように、電話機を示す図像や、「非常電話」という文字列が記されたものがあり、通信設備検出部291は、かかる図像や文字列を画像認識することで通信設備を検出する。
また本実施形態の通信設備検出部291は、通信設備の他にも、図16に示すように、トンネルの非常口を示す標識も画像認識する。
通信設備検出情報記憶部292は、通信設備検出部291によって検出された通信設備及び設置位置を記憶する。
【0095】
通信設備位置推定部293は、車両2が未だ通り過ぎていない道路前方における通信設備の位置を、通信設備検出部291による通信設備の検出結果と、道路の種別と、に基づいて推定する。
詳述すると、第1実施形態でも説明したように、日本国の自動車専用道路や高速道路(上記非常電話機設置道路)には、道路の種別に対応した既定の設置間隔で非常電話機が設置されている。当該非常電話機設置道路を車両2が走行している場合には、上記通信設備検出部291によって非常電話機の設置位置が順次に検出される。そして、通信設備位置推定部293は、これらの検出結果により、当該当該非常電話機設置道路における非常電話機の設置間隔を特定し、この設置間隔に基づいて、車両2が未だ通り過ぎていない道路前方における通信設備の位置を推定する。
【0096】
図17は、ナビゲーション装置218の基本動作を示すフローチャートである。
ナビゲーション装置218では、例えばエンジン始動後、少なくとも車両2が走行している間、車外(車両2の周囲)を撮影した撮影データを車外撮影カメラ219から車外撮影データ取得部290が取得する(ステップSe1)。そして、通信設備検出部291が撮影データに基づいて車外の通信設備を検出し、当該通信設備の設置位置を現在位置取得部66によって取得された現在位置に基づいて特定し(ステップSe2)、かかる通信設備と設置位置を通信設備検出情報記憶部292が記憶する(ステップSe3)。
これにより、車両2の走行時には、周囲にある通信設備、及び設置位置が通信設備検出情報記憶部292に蓄積される。
【0097】
そして、第1実施形態で説明したように、緊急通報要求装置12(図2)から緊急通報要求を緊急通報要求取得部74が取得した場合には(ステップSc3:Yes)、ナビゲーション装置218が、上述した緊急通報処理(図4)を実行する(ステップSc4)。
かかる緊急通報処理の実行により、緊急通報要求発生時に緊急通報サービスセンタ4と通信が不能である場合に、緊急連絡用情報Iaを表示する表示データの生成が行われる(ステップSa10:図4)。
【0098】
図18は、本実施形態の表示データ生成処理のフローチャートである。
本実施形態では、第1実施形態で説明した表示データ生成処理(図5)のステップSb1からステップSb8までの処理に加え、当該ステップSb8における表示データ生成の前に、通信設備検出結果の読み出しステップ(ステップSf1)と、通信設備の設置位置推定ステップ(ステップSf2)とが行われる。
【0099】
通信設備検出結果の読み出しステップ(ステップSf1)では、直近までに検出された通信設備と当該通信設備の設置位置とを通信設備検出情報記憶部292から通信設備位置推定部293が読み出す。そして、通信設備位置推定部293は、続く通信設備の設置位置推定ステップ(ステップSf2)において、車両2が位置する道路の種別(本実施形態では上記非常電話機設置道路か否か)と、検出された各通信設備の設置位置から求められる設置間隔と、に基づいて、車両2が未だ通り過ぎていない道路前方における通信設備の設置位置を推定する。なお、トンネルの非常口が通信設備検出部291によって画像認識されており、通信設備の設置間隔の既定値がトンネル内とトンネル外とで異なる場合には、通信設備位置推定部293は、トンネル内とトンネル外の各々の既定値を用いて、トンネル内、及びトンネル外の通信設備の設置位置を推定する。
【0100】
そして、情報表示制御部82は、緊急連絡用情報Iaを表示するための表示データを、ステップSb2からSb5までの処理で抽出した通信設備の場所、ステップSb6の判断結果(乗員の負傷状況)、及び、ステップSf3で推定された通信設備の設置位置に基づいて生成する(ステップSb8)。
その後、情報表示制御部82は、上述の緊急通報処理に戻り、ナビゲーション装置118のディスプレイ57、及び、携帯電話機20のディスプレイ54のいずれか一方に、表示データに基づいて緊急連絡用情報Iaを表示する(ステップSa11:図4)。
【0101】
図19は、緊急連絡用情報Iaを表示した緊急連絡用画面Daの構成の一例を模式的に示す図である。なお、同図には、周囲に非常電話機があり(車両2が非常電話機設置道路上)、なおかつ、乗員の状態を知らせる乗員状態表示エリアDa3が追加されていない場合(すなわち、負傷していない乗員が存在する場合)(ステップSb1:Yes、かつステップSb6:No)を示している。
【0102】
車両2が非常電話機設置道路を走行している場合に、緊急通報要求が発生すると、情報表示制御部82は、上記ステップSb8において、非常電話機の場所を、直近までに検出された通信設備の設置位置と、道路前方について推定された通信設備の設置位置と、に基づいて案内する緊急連絡用画面Daの表示データを生成する。
図19に示すように、緊急連絡用画面Daには、周囲の地図に、表示データに基づき、車両2の現在位置Epと、非常電話機設置道路に設置されている非常電話機の場所がアイコンEa、Ebによって表示される。アイコンEaは、車両2が既に通過した範囲に設置されている非常電話機の場所を示すものであり、通信設備検出部291によって検出された設置位置に対応した位置に表示される。
このように、既に検出されている非常電話機については、検出結果(いわゆる実測)に基づいて当該非常電話機の場所が案内されるため、非常電話機の場所を高い精度で案内できる。また、非常電話機設置道路において、設置場所の状況等により、非常電話機の設置間隔の既定値で特定される位置からズレた位置に非常電話機が設置されている場合でも、かかる非常電話機を精度よく案内できる。
【0103】
一方、アイコンEbは、車両2の道路前方Gに位置し、当該車両2が未だ通過していない範囲に設置されている非常電話機の場所を示すものであり、通信設備位置推定部293によって推定された設置位置に対応する位置に表示される。
これにより、道路前方にある未検出の非常電話機の場所を精度良く乗員に案内することができる。
またトンネル内における非常電話機の設置間隔の既定値がトンネル外についての既定値と異なる場合であっても、上述の通り、通信設備位置推定部293がトンネル内の非常電話機の設置位置を精度良く推定しているので、トンネル内の非常電話機の位置を示すアイコンEbが適切な位置に表示される。
【0104】
また、トンネルの非常口が通信設備検出部291によって画像認識されている場合、情報表示制御部82は、上記ステップSb8において、トンネルの非常口を案内する緊急連絡用画面Daの表示データを生成する。
これにより、図19に示すように、緊急連絡用画面Daには、トンネルの概略図Hと、当該トンネルの非常口の場所を示すアイコンEeが表示され、当該アイコンEeにより、乗員は非常口の場所を把握し、当該非常口を使ってトンネル内から速やかに脱出することができる。
【0105】
上述の実施形態によれば、第1実施形態で説明した効果に加え、次の効果を奏する。
【0106】
本実施形態では、通信設備検出部291によって検出された非常電話機(通信設備)に、現在位置取得部66によって取得された現在位置を設置位置として対応付けて通信設備検出情報記憶部292に記憶し、緊急通報要求の発生時に緊急通報サービスセンタ4と通信が不能である場合には、通信設備検出情報記憶部292に記憶されている非常電話機の設置位置を情報表示制御部82が表示部(ディスプレイ54、57)に表示させる。
これにより、検出結果(いわゆる実測)に基づいて当該非常電話機の設置位置が案内されるため、非常電話機の場所を高い精度で案内できる。また、非常電話機設置道路において、設置場所の状況等により、非常電話機の設置間隔の既定値で特定される位置からズレた位置に非常電話機が設置されている場合でも、かかる非常電話機を精度よく案内できる。
【0107】
本実施形態では、道路の種別に基づいて特定される非常電話機の設置間隔と、通信設備検出部291によって検出された複数の非常電話機の各々の設置位置と、に基づいて、車両2が未だ通過していない道路前方における非常電話機の設置位置を推定する通信設備位置推定部293を備え、情報表示制御部82は、推定された非常電話機の設置位置を表示部に表示させる。
これにより、道路前方にある未検出の非常電話機の場所を精度良く乗員に案内することができる。
【0108】
[第3実施形態の変形、及び応用]
本実施形態において、情報表示制御部82は、表示部の種類に応じて、通信設備検出部291によって検出された非常電話機(通信設備)の位置、及び、通信設備位置推定部293によって推定された通信設備の位置と、通信設備情報記憶部84に記憶された通信設備情報84Aに基づく非常電話機の位置と、のいずれかを選択的に表示させてもよい。
これにより、非常電話機(通信設備)の位置の案内が、表示部の種類に応じて適切に行うことができる。
【0109】
具体的には、情報表示制御部82は、表示先の表示部が携帯可能な機器(すなわち、携帯電話機20のディスプレイ54)に分類される場合、当該表示部には、通信設備検出部291によって検出された通信設備の位置、及び、通信設備位置推定部293によって推定された通信設備の位置を表示する。
これにより、乗員が表示部を携帯し、徒歩などで利用可能な通信設備に向かう際に、通信設備の正確な位置を乗員に案内することができ、乗員は、遠回りしたり迷ったりすることなく通信設備を見つけることができる。さらに、乗員が徒歩などで移動しなければならない場合に、通信設備の正確な位置が乗員に案内されることで、乗員に与える心理的負荷を低減できる。
【0110】
また情報表示制御部82は、表示先の表示部が車両2に固定設置された機器(すなわち、ナビゲーション装置18のディスプレイ57)に分類される場合、当該表示部には、通信設備情報記憶部84に記憶された通信設備情報84Aに基づく当該通信設備の位置を表示する。
これにより、乗員が車両2に乗って利用可能な通信設備に向かう場合、換言すれば、通信設備の位置に多少の誤差があっても乗員の移動に要する労力の観点においては許容範囲内である場合に、上記表示データ生成処理(図18)におけるステップSf1、Sf2の処理が省略可能となり、処理負荷の低減、及び処理の高速化が可能になる。
【0111】
本実施形態において、高速道路や自動車専用道路の入口、及び出口に設けられたETC(Electronic Toll Collection System)のゲートを車両2が通過したことを契機に、通信設備検出情報記憶部292に記憶されている通信設備の設置位置等の情報をリセット(初期化)するリセット部をナビゲーション装置218に設けてもよい。
【0112】
本実施形態において、他車両と通信する車車間通信装置を車載通報システム203が備える場合、当該他車両が備える表示部に緊急連絡用情報Iaを、携帯型電子機器の表示部の代わりに、或いは、携帯型電子機器の表示部と併せて表示してもよい。
【0113】
本実施形態において、第2実施形態の構成を備えてもよい。
【0114】
[各実施形態の変形・応用]
なお、上述した各実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0115】
例えば、本発明に係る情報処理装置を、ナビゲーション装置18以外の他の車載装置に適用してもよい。
【0116】
本明細書において参照した機能的構成を示すブロック図は、本願発明を理解容易にするために、機能的な構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、当該構成要素は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【符号の説明】
【0117】
1、100 車両緊急通報システム
2 車両
3、203 車載通報システム
4 緊急通報サービスセンタ(緊急通報先)
18、118、218 ナビゲーション装置(情報処理装置)
20 携帯電話機(携帯型電子機器)
32 トラブル発生判定器
42 着座検出器
44 生体情報検出器
54 ディスプレイ(携帯型電子機器の表示部)
57 ディスプレイ(固定設置された表示部)
74 緊急通報要求取得部
75 状況取得部
77 緊急通報制御部
80 通信不能判定部
82 情報表示制御部
84 通信設備情報記憶部
84A 通信設備情報
86 選択部
88 状況判定部
Da 緊急連絡用画面
Da1 連絡先表示エリア
Da2 通信設備案内表示エリア
Da3 乗員状態表示エリア
Ia 緊急連絡用情報
Ia1 電話番号
Ia2 通信設備案内情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19