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特許7332481インターフェロンγの産生を促進させるための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】インターフェロンγの産生を促進させるための組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/125 20160101AFI20230816BHJP
   A61K 31/715 20060101ALI20230816BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20230816BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
A23L33/125
A61K31/715
A61K35/747
A61P37/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019558229
(86)(22)【出願日】2018-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2018044595
(87)【国際公開番号】W WO2019111904
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2017232669
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-10741
(73)【特許権者】
【識別番号】311002148
【氏名又は名称】明治ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593218462
【氏名又は名称】インスティチュート・パスツール
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エベール ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】ゴンパーツ ボネカ イヴォ
(72)【発明者】
【氏名】狩野 宏
(72)【発明者】
【氏名】牧野 聖也
(72)【発明者】
【氏名】浅見 幸夫
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-314172(JP,A)
【文献】日本乳酸菌学会誌,2017年06月27日,vol.28, no.2,p.126:一般講演17-1-08
【文献】化学と生物,2015年,vol.53, no.10, pp.709-714
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/125
A23L 33/135
A23L 31/00
A61K 31/715
A61K 35/747
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス OLL1073R-1(受託番号FERM BP-10741)が産生する菌体外多糖(EPS)を有効成分とする、γδT細胞およびILC3細胞からなる群から選ばれる免疫細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための組成物。
【請求項2】
γδT細胞およびILC3細胞からなる2種の免疫細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス OLL1073R-1(受託番号FERM BP-10741)が産生する菌体外多糖(EPS)を有効成分とする組成物を含み、かつ、γδT細胞およびILC3細胞からなる群から選ばれる免疫細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための飲食品。
【請求項4】
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス OLL1073R-1(受託番号FERM BP-10741)が産生する菌体外多糖(EPS)を有効成分とする組成物を含み、かつ、γδT細胞およびILC3細胞からなる群から選ばれる免疫細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターフェロンγの産生を促進させるための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザ等の病原性ウイルスは、人類が常に直面している脅威であるといえる。ウイルスの脅威への対処については、生体内へのウイルスの侵入や増殖を最前線で防ぐ自然免疫系が重要であり、これには、インターフェロン等のサイトカインが関与していることが知られている。このような事情から、これまでに、インターフェロン等の産生を制御できる物質が、様々な分野で探索されている。
【0003】
例えば、特開2006-124382号公報(特許文献1)には、冬虫夏草の抽出物を有効成分とする樹状細胞活性化剤が記載されており、樹状細胞の活性化によるインターフェロンγの産生増強作用も記載されている。特開2009-256312号公報(特許文献2)には、インターフェロンγやインターロイキン-6の産生を誘導する作用を有する、クレモリス菌が産生する多糖類が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-124382号公報
【文献】特開2009-256312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、インターフェロンの産生を制御できる様々な物質が探索されている。しかし、必ずしも十分な産生制御効果を得ることができなかったり、特定のインターフェロンしか評価や検討されていないこともあった。また、探索して得られた物質から、インターフェロンが産生されるメカニズムについても、あまり明らかになっていなかった。
【0006】
そこで、本発明では、安全かつ簡便に摂取することができ、一方で十分なインターフェロンの産生を促進できる組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは、乳酸菌に着目し、乳酸菌そのものの生理活性や、乳酸菌の代謝物の活用方法について、改めて詳細に検討した。その結果として、所定の乳酸菌が菌体外に産生する多糖類(菌体外多糖(EPS))に、優れたインターフェロンγ産生の促進作用があることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様に関する。
[1]菌体外多糖(EPS)を有効成分とする、CD4αβT細胞、CD8αβT細胞、γδT細胞、Th17細胞、およびILC3細胞からなる群から選ばれる免疫細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための組成物。
この組成物の例として以下が挙げられる。
[1-1]菌体外多糖(EPS)を有効成分とする、CD4αβT細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための組成物。
[1-2]菌体外多糖(EPS)を有効成分とする、CD8αβT細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための組成物。
[1-3]菌体外多糖(EPS)を有効成分とする、γδT細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための組成物。
[1-4]菌体外多糖(EPS)を有効成分とする、Th17細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための組成物。
[1-5]菌体外多糖(EPS)を有効成分とする、ILC3細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための組成物。
[2]菌体外多糖(EPS)を有効成分とする、CD4αβT細胞、CD8αβT細胞、γδT細胞、Th17細胞、ならびにILC3細胞から選ばれる2種以上の免疫細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための組成物。
[3]菌体外多糖(EPS)が、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckiisubsp. bulgaricus)が産生する菌体外多糖(EPS)である、[1](例えば[1-1]~[1-5]のいずれか1つ)または[2]に記載の組成物。
[4]ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)がラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus) OLL1073R-1(受託番号FERM BP-10741)である、[3]に記載の組成物。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の組成物を含み、かつ、CD4αβT細胞、CD8αβT細胞、γδT細胞、Th17細胞、およびILC3細胞からなる群から選ばれる免疫細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための飲食品。
[6][1]~[4]のいずれかに記載の組成物を含み、かつ、CD4αβT細胞、CD8αβT細胞、γδT細胞、Th17細胞、およびILC3細胞からなる群から選ばれる免疫細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための医薬品。
【0009】
また、本発明には、以下の態様も包含される。
[a]有効成分であるEPSの摂取量が、1mg/kg/日以上である、[1](例えば[1-1]~[1-5])~[4]のいずれか1つに記載の組成物。
[b-1]CD4αβT細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための組成物の製造における、菌体外多糖(EPS)の使用。
[b-2]CD8αβT細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための組成物の製造における、菌体外多糖(EPS)の使用。
[b-3]γδT細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための組成物の製造における、菌体外多糖(EPS)の使用。
[b-4]Th17細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための組成物の製造における、菌体外多糖(EPS)の使用。
[b-5]ILC3細胞によるインターフェロンγの産生を促進させるための組成物の製造における、菌体外多糖(EPS)の使用。
[b-6]菌体外多糖(EPS)が、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusが産生する菌体外多糖(EPS)である、[b-1]~[b-5]のいずれか1つに記載の組成物。
[b-7]Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusがLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1(FERM BP-10741)である、[b-6]に記載の組成物。
【0010】
さらに、本発明には、以下の態様も包含される。
[c-1]菌体外多糖(EPS)を用いることを特徴とする、CD4αβT細胞によるインターフェロンγ産生の促進方法。
[c-2]菌体外多糖(EPS)を用いることを特徴とする、CD8αβT細胞によるインターフェロンγ産生の促進方法。
[c-3]菌体外多糖(EPS)を用いることを特徴とする、γδT細胞によるインターフェロンγ産生の促進方法。
[c-4]菌体外多糖(EPS)を用いることを特徴とする、Th17細胞によるインターフェロンγ産生の促進方法。
[c-5]菌体外多糖(EPS)を用いることを特徴とする、ILC3細胞によるインターフェロンγ産生の促進方法。
[c-6]菌体外多糖(EPS)が、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusが産生する菌体外多糖(EPS)である、[c-1]~[c-5]のいずれか1つに記載の方法。
[c-7]Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusがLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1(FERM BP-10741)である、[c-6]に記載の方法。
【0011】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2017-232669号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた効果を発揮するインターフェロンγの産生を促進させるための組成物を提供できる。本発明の有効成分である菌体外多糖は、乳酸菌に由来するものであり、その安全性は長い食経験により十分に裏付けられたものであるから、本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物は、安全かつ簡便に摂取できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例で認められた、CD4αβT細胞における、EPSによるIFN-γの産生促進効果を示すグラフである。「HO」は蒸留水処理群、「EPS」はEPS処理群の結果を示し、縦軸は、B細胞以外の白血球(CD45+CD19-細胞)の中でIFN-γを産生したCD4αβT細胞(IFN-γ陽性CD4αβT細胞)の割合(%)を示している。グラフ上のバーは標準偏差を示している。
図2】実施例で認められた、CD8αβT細胞における、EPSによるIFN-γの産生促進効果を示すグラフである。「HO」は蒸留水処理群、「EPS」はEPS処理群の結果を示し、縦軸は、B細胞以外の白血球(CD45+CD19-細胞)の中でIFN-γを産生したCD8αβT細胞(IFN-γ陽性CD8αβT細胞)の割合(%)を示している。グラフ上のバーは標準偏差を示している。
図3】実施例で認められた、Th17細胞における、EPSによるIFN-γの産生促進効果を示すグラフである。「HO」は蒸留水処理群、「EPS」はEPS処理群の結果を示し、縦軸は、B細胞以外の白血球(CD45+CD19-細胞)の中でIFN-γを産生したTh17細胞(IFN-γ陽性Th17細胞)の割合(%)を示している。グラフ上のバーは標準偏差を示している。
図4】実施例で認められた、RORγt陽性のγδT細胞における、EPSによるIFN-γの産生促進効果を示すグラフである。「Control」は蒸留水処理群、「EPS」はEPS処理群の結果を示し、縦軸は、RORγt陽性のγδT細胞(RORgt+gdTc)のうち、IFN-γ陽性細胞の割合(%)を示している。グラフ上のバーは標準偏差を示している。
図5】実施例で認められた、ILC3細胞における、EPSによるIFN-γの産生促進効果を示すグラフである。「Control」は蒸留水処理群、「EPS」はEPS処理群の結果を示し、縦軸はIFN-γ陽性ILC3細胞の割合(%)を示している。グラフ上のバーは標準偏差を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、菌体外多糖(EPS)を有効成分とする、インターフェロンγの産生を促進させるための組成物に関する。菌体外多糖とは、ある種の乳酸菌等が産生し、その菌体外へ産生する多糖類である。例えば、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus) OLL1073R-1(受託番号FERM BP-10741)株は、中性多糖体と、中性多糖体にリン酸基が付加した酸性多糖体を産生することが知られている。また、その他に、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)等も中性多糖体を産生する株があることが知られている。本発明に用いられる菌体外多糖としては、1種の菌体外多糖を単独で用いてもよいし、2種以上の菌体外多糖を組み合わせて用いてもよい。菌体外多糖として、例えば酸性多糖体と中性多糖体を組み合わせて用いてもよい。本発明の一実施形態では、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1(受託番号FERM BP-10741)株等のLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusが産生する菌体外多糖を、インターフェロンγの産生を促進させるために好適に使用することができる。本発明の菌体外多糖は、上記の乳酸菌等、例えばLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1(受託番号FERM BP-10741)株等のLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusをスターターとして用いて調製したヨーグルトなどの培養物に含まれるものであってよい。本発明の組成物は有効量のそのような菌体外多糖を含む。本発明の菌体外多糖を含むヨーグルト(発酵乳)などの培養物は、例えばLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1(受託番号FERM BP-10741)株等のLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusを単独スターターとして用いて、または、それをストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)などの他の乳酸菌との混合スターターとして用いて、製造することができる。
【0015】
Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1株は、1999年2月22日付け(原寄託日)で独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(NITE-IPOD[旧:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター])(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、受託番号FERM BP-10741の下でブタペスト条約に基づき国際寄託されている。なお本寄託株は2006年11月29日に、国内寄託(原寄託)からブダペスト条約に基づく国際寄託に移管された。Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1株(受託番号FERM BP-10741)の現在の寄託者は株式会社明治である。
【0016】
本発明に用いられる菌体外多糖は、菌体外多糖を含む乳酸菌の培養物をそのまま精製せずに用いてもよいし、例えば特開2000-247895号に記載された方法等を用いて、菌体外多糖を含む乳酸菌の培養物から単離または必要に応じてさらに精製された菌体外多糖を用いてもよい。また、例えば乳酸菌の培養物を、当該培養物の濃縮物、ペースト化物、噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物、媒体に分散させた液状物、希釈物、乾燥物を破砕した破砕物などの処理工程を経た処理物として用いてもよい。
【0017】
本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物は、ヒトをはじめとする哺乳動物に摂取されることによって、その機能を発揮する。なお、ここにいう「摂取」とは、ヒトの体内(消化管内)に入るものであれば投与経路に限定はなく、例えば、経口投与、経管投与、経腸投与など、公知の投与方法の全てによって実現され得る。このとき、典型的には、消化管を経由する経口摂取、経腸摂取が挙げられるが、経口摂取が好ましく、飲食による摂取がより好ましい。
【0018】
菌体外多糖を有効成分とする本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物の投与量は、投与経路、年齢、体重、症状などの種々の要因を考慮して、適宜設定することができる。本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物の投与量は、特に限定されないが、有効成分である菌体外多糖の量として、好ましくは1mg/kg体重/日以上、より好ましくは5mg/kg体重/日以上、特に好ましくは10mg/kg体重/日以上である。しかし、長期間にわたって摂取する場合には、上記の好ましい量より少量であってもよい。また、本発明で用いられる有効成分は、十分な食経験がある乳酸菌に由来するものであり、安全性の面で問題がないので、本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物の投与量は、有効成分である菌体外多糖の量として、上記の量を大きく超える量(例えば、100mg/kg体重/日以上)でもよい。
【0019】
本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物の単位包装あたりの重量は特に限定されないが、例えば、その重量は10g以上500g以下の範囲内であることが好ましく、25g以上250g以下の範囲内であることがより好ましく、50g以上200g以下の範囲内であることがさらに好ましく、75g以上150g以下の範囲内であることが最も好ましい。また、上記の単位包装とは、袋、箱、容器当たりの単位包装のみならず、それらに含まれる一回あたりの単位包装であってもよいし、一日当たりの単位包装であってもよい。なお、複数の日数、例えば1週間分の摂取に適切な数量をまとめて包装したもの、または複数の個包装を含むもの等とすることもできる。
【0020】
本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物は、好ましくは3週間以上、より好ましくは5週間以上、さらに好ましくは8週間以上で継続して摂取することが好ましい。なお、本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物は安全に摂取できるため、摂取期間は特に限定されず、永久的に継続することができる。十分に有効なインターフェロンγ産生促進効果が得られる観点から、摂取期間は8週間を目安とすることが好ましい。
【0021】
本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物は、飲食品として使用することができる。本発明は、本発明に係る組成物または菌体外多糖を含む飲食品も提供する。本発明に係る飲食品は、CD4αβT細胞、CD8αβT細胞、γδT細胞、Th17細胞、およびILC3細胞からなる群から選ばれる1種又は2種以上(2種、3種、4種又は5種全て)の免疫細胞によるインターフェロンγの産生を促進するためのものであってよい。その飲食品は、インターフェロンγ産生促進効果を有する点で有用であり、例えば、抗ウイルス作用を有する飲食品として使用することができる。さらに、本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物は、保健機能食品や病者用食品とすることもできる。日本の保健機能食品制度は、内外の動向、従来からの特定保健用食品制度との整合性を踏まえて、通常の食品のみならず錠剤、カプセル等の形状をした食品を対象として設けられたものである。そして、同制度では、特定保健用食品(個別許可型)と栄養機能食品(規格基準型)の2種類の類型が規定されている。本発明の組成物は、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康食品などの機能性食品として、使用することもできる。本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物を、特定保健用食品等の特別用途食品や栄養機能食品として、または他の機能性食品として、ヒト等の動物に投与することにより、例えば、各種の病原体感染に対する予防が可能となる。
【0022】
本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物に、その用途、効能、機能、有効成分の種類、機能性成分の種類、摂取方法などの説明を表示することが好ましい。ここにいう「表示」は、医薬品、医薬部外品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、一般食品、健康補助食品、健康食品、サプリメント、経腸栄養剤、口腔化粧品、および飼料それぞれにおいて適した表示とすべきである。また、ここにいう「表示」には、需要者に対して上記説明を知らしめるための全ての表示が含まれる。この表示は、上述の表示内容を想起・類推させ得るような表示であればよく、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体などの如何に拘わらない全てのあらゆる表示を含み得る。例えば、製品の包装・容器に上記説明を表示すること、製品に関する広告・価格表もしくは取引書類に上記説明を表示して展示もしくは頒布すること、またはこれらを内容とする情報を電磁気的(インターネットなど)方法により提供することが挙げられる。
【0023】
本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物を飲食品とする場合、飲食品の種類は特に限定されない。飲食品は、例えば、牛乳、加工乳、清涼飲料、発酵乳、ヨーグルト、チーズ、その他の乳製品、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、調製粉乳、流動食、病者用食品、乳幼児用粉乳等食品、妊産婦・授乳婦用粉乳等食品、栄養食品等であってよい。このような飲食品の製造にあたっては、本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物の有効成分である菌体外多糖をそのまま使用したり、他の飲食品ないし食品成分と混合したりするなど、通常の食品組成物における製法を利用することができる。また、飲食品の形状についても特に限定されず、通常用いられる飲食品の形状であればかまわない。例えば、固体状(粉末、顆粒状を含む)、ペースト状、液状、懸濁状などのいずれの形状でもよく、またこれらに限定されない。このとき、飲食品は、乳飲料、発酵乳、清涼飲料、ゼリー飲料、タブレット、粉末食品であることがより好ましく、ヨーグルトは特に好ましい。
【0024】
本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物は、医薬品として使用することができる。本発明は、本発明に係る組成物または菌体外多糖を含む医薬品も提供する。本発明に係る医薬品は、CD4αβT細胞、CD8αβT細胞、γδT細胞、Th17細胞、およびILC3細胞からなる群から選ばれる1種又は2種以上(2種、3種、4種又は5種全て)の免疫細胞によるインターフェロンγの産生を促進するためのものであってよい。この場合、当該医薬品における、本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物の投与量は、特に限定されないが、例えば、有効成分である菌体外多糖の量として、好ましくは1mg/kg体重/日以上、より好ましくは5mg/kg体重/日以上、特に好ましくは10mg/kg体重/日以上である。また、長期間に亘って予防目的で摂取する場合には、上記量よりも少量であってもよい。
【0025】
上記医薬品の剤型は、本発明のインターフェロンγの産生を促進させるための組成物または菌体外多糖を腸内に到達させるため、経口投与が可能な剤型が好ましい。本発明による医薬品の好ましい剤型の例としては、例えば錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、トローチ剤等を挙げることができる。これらの各種製剤(医薬品)は、常法に従って主薬である菌体外多糖に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの、医薬の製剤技術分野において通常使用しうる補助剤を混ぜ合わせることによって製剤化することができる。
【0026】
本発明の組成物および菌体外多糖(EPS)は、免疫細胞によるインターフェロンγの産生を促進することができる。そのような免疫細胞は、CD4αβT細胞、CD8αβT細胞、γδT細胞、Th17細胞、およびILC3細胞からなる群から選ばれる1種又は2種以上(2種、3種、4種又は5種全て)の免疫細胞であり得る。一実施形態では、本発明の組成物および菌体外多糖(EPS)は、CD4αβT細胞、CD8αβT細胞、γδT細胞、Th17細胞、およびILC3細胞からなる群から選ばれる2種以上(2種、3種、4種又は5種全て)の免疫細胞によるインターフェロンγの産生を促進することができる。これらの細胞におけるインターフェロンγの産生促進は、特に、感染防御、抗腫瘍などの点で有利である。
【0027】
本発明は、インターフェロンγの産生を促進させるための組成物の製造における、菌体外多糖(EPS)の使用も、提供する。本発明はまた、菌体外多糖(EPS)を用いることを特徴とする、インターフェロンγ産生の促進方法を提供する。そのようなインターフェロンγ産生の促進方法は、例えば、インターフェロンγを産生する免疫細胞を、菌体外多糖(EPS)によって処理する(例えばin vitro、ex vivo、またはin vivoでEPSと接触させる)ことを含む、免疫細胞によるインターフェロンγ産生の促進方法であり得る。インターフェロンγを産生する免疫細胞は、CD4αβT細胞、CD8αβT細胞、γδT細胞、Th17細胞、およびILC3細胞からなる群から選ばれる1種又は2種以上(2種、3種、4種又は5種全て)の免疫細胞であり得る。あるいは、上記のインターフェロンγ産生の促進方法は、本発明の組成物または菌体外多糖(EPS)を被験体に投与することを含む、被験体におけるインターフェロンγの産生を促進する方法であり得る。被験体は、ヒトをはじめとする哺乳動物であってよい。菌体外多糖(EPS)、投与量などについては上述のとおりである。
【実施例
【0028】
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。なお、この実施例は、本発明を限定するものではない。
【0029】
以下の実施例において、菌体外多糖(EPS)は、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1(受託番号:FERM BP-10741)をスターターとして調製したヨーグルトを原料(供給源)とし、J. Dairy Sci. 99、915-923に記載されている方法で精製したものを用いた。ここで、「Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1」は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(NITE-IPOD)に受託番号FERM BP-10741(寄託日:1999年2月22日)で寄託されている。
【0030】
C57/BL/6jマウス(7週齢)を群分け後、蒸留水またはEPS(500μg/マウス)を7日間経口投与した。経口投与期間後、各マウスの小腸粘膜固有層からリンパ球を回収し、細胞集団(ポピュレーション)やサイトカイン産生パターンを解析した。細胞の調製は小腸からパイエル板を切除後、小片にカットし、30mM EDTA溶液で30分間インキュベートすることにより行った。細胞をインキュベート後洗浄し、0.7mg/mLコラゲナーゼD下でインキュベートした。得られた調製物を100μmフィルターでろ過後、40/80%(w/v) Percoll (GE Healthcare社製、登録商標)を用いてリンパ球を分離した。分離されたリンパ球は、50ng/mL PMA(phorbol 12-myristate 13-acetate;ホルボール12-ミリスタート13-アセタート)と500ng/mL イオノマイシン(ionomycin)存在下で4時間培養し、再刺激した。なお、培養の後半2時間は、ブレフェルジンA(Brefeldin A)を添加した。再刺激後、各細胞を識別するための細胞表面分子および細胞内分子、ならびに細胞内IFN-γ、RORγtを染色し、BD Fortessa cytometer(BD Biosciences社)にて各細胞集団でのIFN-γ陽性細胞の割合を測定した。なお、各細胞集団はCD45+CD19-細胞(B細胞以外の白血球に相当)の中から以下の細胞表面分子、細胞内分子で識別した。CD4αβT細胞:CD4+TCRβ+、CD8αβT細胞:CD8β+TCRβ+、ILC3(group 3 innate lymphoid cells)細胞:CD3-CD19-CD11b-CD11c-IL7Rα+RORγt+、γδT細胞:TCRδ+、Th17細胞:TCRβ+RORγt+。
【0031】
図1に、CD4αβT細胞における、EPSによるIFN-γの産生促進効果を示した。蒸留水投与群の結果と比べ、EPS投与群ではIFN-γ陽性細胞の割合が有意に増加した(t検定による危険率(p値)が0.0445)。このことから、EPSが、CD4αβT細胞によるIFN-γの産生を促進させることが示された。
【0032】
図2に、CD8αβT細胞における、EPSによるIFN-γの産生促進効果を示した。蒸留水投与群の結果と比べ、EPS投与群ではIFN-γ陽性細胞の割合が有意に増加した(t検定による危険率(p値)が0.0168)。このことから、EPSが、CD8αβT細胞によるIFN-γの産生を促進させることが示された。
【0033】
図3に、Th17細胞における、EPSによるIFN-γの産生促進効果を示した。蒸留水投与群の結果と比べ、EPS投与群ではIFN-γ陽性細胞の割合が有意に増加した(t検定による危険率(p値)が0.0263)。このことから、EPSが、Th17細胞によるIFN-γの産生を促進させることが示された。
【0034】
図4に、RORγt陽性のγδT細胞における、EPSによるIFN-γの産生促進効果を示した。蒸留水投与群の結果と比べ、EPS投与群ではIFN-γ陽性細胞の割合が有意に増加した(t検定による危険率(p値)が0.0302)。このことから、EPSが、γδT細胞によるIFN-γの産生を促進させることが示された。
【0035】
図5に、ILC3細胞における、EPSによるIFN-γの産生促進効果を示した。蒸留水投与群の結果と比べ、EPS投与群ではIFN-γ陽性細胞の割合が有意に増加した(t検定による危険率(p値)が0.0141)。このことから、EPSが、ILC3細胞によるIFN-γの産生を促進させることが示された。
【0036】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5