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特許7332489ホスホジエステラーゼ3阻害用組成物及び血小板凝集抑制用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ホスホジエステラーゼ3阻害用組成物及び血小板凝集抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20230816BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20230816BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230816BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230816BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230816BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230816BHJP
   A23K 20/189 20160101ALN20230816BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K31/437
A61P7/02
A61P43/00 111
A61P25/28
A61K31/4745
A23K20/189
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020005265
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2020115853
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2019011850
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】花房 祐希
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 斉志
(72)【発明者】
【氏名】村山 宣人
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-517680(JP,A)
【文献】特開2005-082523(JP,A)
【文献】Journal of Biological Chemistry,2010年,Vol.285, No.1,pp.142-152
【文献】Prion,2010年,Vol.4, No.1,pp.26-31
【文献】Annals of Clinical and Translational Neurology,2014年,Vol.1, No.8,pp.519-533
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/10
A61K 31/437
A61P 7/02
A61P 43/00
A61P 25/28
A61K 31/4745
A23K 20/189
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロロキノリンキノン又はその塩を有効成分として含み、血小板凝集抑制のために使用される、ホスホジエステラーゼ3阻害用組成物。
【請求項2】
ピロロキノリンキノンの塩が、ピロロキノリンキノンのナトリウム塩である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
「血小板凝集抑制」の機能の表示を付した、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホジエステラーゼ3阻害用組成物、血小板凝集抑制用組成物及び脳内老廃物排出促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホジエステラーゼ3(以下、PDE3ともいう)は、サイクリックAMP(cAMP)を加水分解する酵素であり、cAMPのシグナル伝達を調節する役割を有する。PDE3は血小板、血管平滑筋等に存在しており、PDE3の阻害により血小板凝集抑制作用等が発揮される。
【0003】
PDE3の選択的阻害剤としてシロスタゾール等が知られている。また、特許文献1には、葛花に含有されるイソフラボンがPDE3阻害作用を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-155154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
天然由来化合物でPDE3阻害作用を有する成分は、健康食品等の食品分野、医薬分野において有用である。
【0006】
本発明は、ホスホジエステラーゼ3を阻害することができる新規なホスホジエステラーゼ3阻害用組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、血小板凝集を抑制することができる新規な血小板凝集抑制用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、ピロロキノリンキノン又はその塩が、ホスホジエステラーゼ3阻害作用及び血小板凝集抑制作用を有することを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のホスホジエステラーゼ3阻害用組成物等に関する。
〔1〕ピロロキノリンキノン又はその塩を有効成分として含むホスホジエステラーゼ3阻害用組成物。
〔2〕ピロロキノリンキノン又はその塩を有効成分として含む血小板凝集抑制用組成物。
〔3〕ピロロキノリンキノン又はその塩を有効成分として含む脳内老廃物排出促進用組成物。
〔4〕ホスホジエステラーゼ3を阻害することにより脳内老廃物の排出を促進する上記〔3〕に記載の脳内老廃物排出促進用組成物。
〔5〕脳内老廃物が、アミロイドβである上記〔3〕又は〔4〕に記載の脳内老廃物排出促進用組成物。
〔6〕ピロロキノリンキノンの塩が、ピロロキノリンキノンのナトリウム塩である上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の組成物。
〔7〕ホスホジエステラーゼ3阻害により発揮される機能の表示を付した、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ホスホジエステラーゼ3を阻害することができる新規なホスホジエステラーゼ3阻害用組成物を提供することができる。また本発明によれば、血小板凝集を抑制することができる新規な血小板凝集抑制用組成物を提供することができる。ホスホジエステラーゼ3を阻害することにより、脳内老廃物の排出促進が期待できる。本発明のホスホジエステラーゼ3阻害用組成物、血小板凝集抑制用組成物及び脳内老廃物排出促進用組成物は、安全性が高い物質を有効成分として含有することから、飲食品、医薬品等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のホスホジエステラーゼ3阻害用組成物(PDE3阻害用組成物)は、ピロロキノリンキノン又はその塩を有効成分として含む。
ピロロキノリンキノンは、酸化還元補酵素である。ピロロキノリンキノン又はその塩は、植物、細菌、動物等の種々の生物体内に存在するため、種々の生物から抽出して調製することができる。ピロロキノリンキノン又はその塩は、市販品を使用することもできる。本発明においては、本発明の効果を奏することになる限り、ピロロキノリンキノン又はその塩を豊富に含む植物由来原料等を本発明の組成物に含有させてもよい。
【0011】
ピロロキノリンキノンの塩として、飲食品、医薬品等に使用可能な塩が好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。塩の中では、ナトリウム塩が好ましい。
ピロロキノリンキノンの塩における塩の置換数は、1~3であり、好ましくは2である。ピロロキノリンキノンの塩は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。ピロロキノリンキノンの塩として、ピロロキノリンキノンの二ナトリウム塩が好ましい。
【0012】
後記の実施例に示すように、ピロロキノリンキノン又はその塩は、PDE3阻害作用を有した。また、ピロロキノリンキノン又はその塩を経口投与すると、血小板凝集が抑制された。ピロロキノリンキノン又はその塩は、PDE3阻害のための有効成分として使用され得、中でも、ホスホジエステラーゼ3A(PDE3A)の阻害のために好適に用いられる。またピロロキノリンキノン又はその塩は、血小板凝集抑制のための有効成分として使用され得る。
【0013】
本発明は、ピロロキノリンキノン又はその塩を有効成分として含む血小板凝集抑制用組成物も包含する。血小板凝集抑制は、PDE3阻害による血小板凝集抑制であってよい。
【0014】
本発明は、ピロロキノリンキノン又はその塩を有効成分として含む脳内老廃物排出促進用組成物も包含する。脳内老廃物として、アミロイドβ等が挙げられる。
PDE3阻害剤は、脳内のアミロイドβの排出を促進する作用を有することが報告されている(Annals of Clinical and Translational Neurology 2014; 1(8):519-533)。従ってピロロキノリンキノン又はその塩は、PDE3を阻害することによって、アミロイドβ等の脳内老廃物の排出を促進することが期待できる。ピロロキノリンキノン又はその塩は、ホスホジエステラーゼ3を阻害することにより脳内老廃物の排出を促進するために使用され得る。
【0015】
血小板凝集抑制用組成物及び脳内老廃物排出促進用組成物において、ピロロキノリンキノン又はその塩及びその好ましい態様等は、PDE3阻害用組成物の場合と同じである。
【0016】
ピロロキノリンキノン又はその塩は、天然物や飲食品に含まれ、食経験がある化合物である。このため安全性の観点から、ピロロキノリンキノン又はその塩は、例えば毎日摂取することにも問題が少ないと考えられる。本発明によれば、安全性が高い成分を有効成分として含むPDE3阻害用組成物、血小板凝集抑制用組成物及び脳内老廃物排出促進用組成物を提供することができる。
本発明のホスホジエステラーゼ3阻害用組成物、血小板凝集抑制用組成物及び脳内老廃物排出促進用組成物を、以下ではまとめてPDE3阻害用組成物等ともいう。
【0017】
本発明のPDE3阻害用組成物等は、治療的用途(医療用途)又は非治療的用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。非治療的とは、医療行為、すなわち人間の手術、治療又は診断を含まない概念である。
本発明のPDE3阻害用組成物等は、飲食品、医薬、医薬部外品、飼料等の形態とすることができる。本発明のPDE3阻害用組成物等は、それ自体が、PDE3阻害のため、血小板凝集抑制のため、又は、脳内老廃物排出促進のための飲食品、医薬、医薬部外品、飼料等であってもよく、これらに配合して使用される素材又は製剤等であってもよい。
本発明のPDE3阻害用組成物等は、一例として、剤の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。当該剤をそのまま組成物として、又は、当該剤を含む組成物として提供することもできる。一態様において、本発明のPDE3阻害用組成物等は、PDE3阻害剤、血小板凝集抑制剤又は脳内老廃物排出促進剤ということもできる。
本発明の効果を充分に得る観点から、本発明のPDE3阻害用組成物等は、好ましくは経口用組成物である。経口用組成物としては、飲食品、経口用の医薬、医薬部外品、飼料が挙げられ、好ましくは飲食品又は経口用医薬であり、より好ましくは飲食品である。
【0018】
本発明のPDE3阻害用組成物等は、本発明の効果を損なわない限り、本発明における有効成分(ピロロキノリンキノン又はその塩)に加えて、任意の添加剤、任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び成分は、組成物の形態等に応じて選択することができ、一般的に飲食品、医薬、医薬部外品、飼料等に使用可能なものが使用できる。本発明のPDE3阻害用組成物等を、飲食品、医薬、医薬部外品、飼料等とする場合、その製造方法は特に限定されず、一般的な方法により製造することができる。
【0019】
例えば本発明のPDE3阻害用組成物等を飲食品とする場合、本発明における有効成分に、飲食品に使用可能な成分(例えば、食品素材、必要に応じて使用される食品添加物等)を配合して、種々の飲食品とすることができる。飲食品は特に限定されず、例えば、一般的な飲食品、健康食品、健康飲料、機能性表示食品、特定保健用食品、病者用飲食品等が挙げられる。上記健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品等は、例えば、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、シロップ剤、液剤、流動食等の各種製剤形態として使用することができる。
【0020】
本発明のPDE3阻害用組成物等を医薬又は医薬部外品とする場合、例えば、本発明における有効成分に、薬理学的に許容される担体、必要に応じて添加される添加剤等を配合して、各種剤形の医薬又は医薬部外品とすることができる。そのような担体、添加剤等は、医薬又は医薬部外品に使用可能な、薬理学的に許容されるものであればよく、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤等の1又は2以上が挙げられる。医薬又は医薬部外品の投与(摂取)形態としては、経口又は非経口(経皮、経粘膜、経腸、注射等)が挙げられるが、本発明の効果をより充分に得る観点から、経口投与が好ましい。本発明のPDE3阻害用組成物等を医薬又は医薬部外品とする場合、経口用医薬又は医薬部外品とすることが好ましい。経口投与のための剤型としては、液剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、糖衣錠、カプセル剤、懸濁液、乳剤、チュアブル剤等が挙げられる。医薬は、非ヒト動物用医薬であってもよい。
【0021】
本発明のPDE3阻害用組成物等を飼料とする場合には、本発明における有効成分を飼料に配合すればよい。飼料には飼料添加剤も含まれる。飼料としては、例えば、牛、豚、鶏、羊、馬等に用いる家畜用飼料;ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料;犬、猫、小鳥等に用いるペットフードなどが挙げられる。
【0022】
本発明のPDE3阻害用組成物等に含まれるピロロキノリンキノン又はその塩の含有量は特に限定されず、その形態等に応じて設定することができる。
本発明のPDE3阻害用組成物等中のピロロキノリンキノン又はその塩の含有量は、ピロロキノリンキノンとして、例えば、組成物中に0.0001重量%以上が好ましく、0.001重量%以上がより好ましく、また、90重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。一態様において、ピロロキノリンキノン又はその塩の含有量は、ピロロキノリンキノンとして、PDE3阻害用組成物等中に0.0001~90重量%が好ましく、0.001~50重量%がより好ましい。一態様において、本発明のPDE3阻害用組成物等を飲食品、医薬、医薬部外品、飼料等とする場合、ピロロキノリンキノン又はその塩の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0023】
本発明のPDE3阻害用組成物等は、その形態に応じた適当な方法で摂取又は投与することができる。本発明の効果を充分に得る観点から、本発明のPDE3阻害用組成物等は、経口で摂取(経口投与)されることが好ましい。
本発明のPDE3阻害用組成物等の摂取量(投与量ということもできる)は特に限定されず、PDE3阻害効果、血小板凝集抑制効果又は脳内老廃物排出促進効果が得られるような量(有効量)であればよく、投与形態、投与方法に応じて適宜設定すればよい。
【0024】
一態様において、PDE3阻害用組成物等を、ヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、ピロロキノリンキノン又はその塩の摂取量は、ピロロキノリンキノンとして、1日当たり体重60kgで、好ましくは1~200mgであり、より好ましくは5~60mgであり、さらに好ましくは8~60mgであり、さらにより好ましくは13~60mg、特に好ましくは16~60mgである。また一態様において、ヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、ピロロキノリンキノン又はその塩の摂取量は、ピロロキノリンキノンとして、1日当たり体重60kgで、8~25mgが好ましく、より好ましくは13~25mg、さらに好ましくは16~25mgである。上記量を、1日1回以上、例えば、1日1回~数回(例えば2~3回)に分けて、摂取させることが好ましい。本発明の一態様において、PDE3阻害用組成物等は、ヒトに、体重60kgあたり、1日あたり上記量のピロロキノリンキノン又はその塩を摂取させる又は投与するための経口用組成物であってよい。
【0025】
本発明のPDE3阻害用組成物等は、PDE3阻害又は血小板凝集抑制により予防又は改善が期待できる症状又は疾患の予防又は改善に有用である。例えば、アミロイドβが脳内の血管に沈着すると、認知機能低下等の原因となる。PDE3を阻害して脳内アミロイドβの排出を促進することにより、認知機能低下等の疾患又は症状の予防又は改善が期待できる。
本明細書で症状又は疾患の予防は、症状又は疾患の発症を防止すること、症状又は疾患の発症を遅延させること、症状又は疾患の発症率を低下させること、症状又は疾患の発症のリスクを軽減すること等を包含する。症状又は疾患の改善は、対象を症状又は疾患から回復させること、症状又は疾患を緩和すること、症状の悪化又は疾患の進行を遅延させること又は防止すること等を包含する。
【0026】
本発明のPDE3阻害用組成物等を摂取させる又は投与する対象(投与対象ということもできる)は、特に限定されない。好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
本発明のPDE3阻害用組成物等を摂取させる又は投与する対象として、PDE3阻害を必要とする又は希望する対象、血小板凝集抑制を必要とする又は希望する対象、脳内老廃物排出促進を必要とする又は希望する対象が挙げられる。本発明のPDE3阻害用組成物等は、例えば、PDE3阻害により予防又は改善が期待できる症状又は疾患の予防等を目的として、健常者に対して使用することもできる。
【0027】
本発明のPDE3阻害用組成物等には、ホスホジエステラーゼ3阻害により発揮される機能の表示が付されていてもよい。本発明のPDE3阻害用組成物等には、例えば、「血小板凝集抑制」、「脳内老廃物排出促進」及び「認知機能低下抑制」の1又は2以上の機能の表示が付されていてもよい。
本発明の一実施態様において、本発明のPDE3阻害用組成物等は、上記の表示が付された飲食品であることが好ましい。また上記の表示は、上記の機能を得るために用いる旨の表示であってもよい。
【0028】
本発明は、以下の方法及び使用も包含する。
ピロロキノリンキノン又はその塩を投与する、ホスホジエステラーゼ3を阻害する方法。
ピロロキノリンキノン又はその塩を投与する、血小板凝集抑制方法。
ピロロキノリンキノン又はその塩を投与する、脳内老廃物排出促進方法。
ホスホジエステラーゼ3を阻害するための、ピロロキノリンキノン又はその塩の使用。
血小板凝集を抑制するための、ピロロキノリンキノン又はその塩の使用。
脳内老廃物の排出を促進するための、ピロロキノリンキノン又はその塩の使用。
上記方法及び使用は、治療的な方法又は使用であってもよく、非治療的な方法又は使用であってもよい。ピロロキノリンキノン又はその塩を対象に投与すると、対象においてホスホジエステラーゼ3を阻害することができる。このような作用により、脳内老廃物排出促進が可能となる。また、ピロロキノリンキノン又はその塩を対象に投与すると、対象において血小板凝集を抑制することができる。
【0029】
上記の方法及び使用において、ピロロキノリンキノン又はその塩及びこれらの好ましい態様は、上述した本発明のPDE3阻害用組成物等の場合と同じである。上記方法及び使用においては、1日に1回以上、例えば、1日1回~数回(例えば2~3回)、ピロロキノリンキノン又はその塩を対象に投与すればよい。上記の使用は、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物、より好ましくはヒトにおける使用である。
【0030】
上記方法及び使用においては、PDE3阻害作用、血小板凝集抑制作用又は脳内老廃物排出促進作用が得られる量(有効量ということもできる)のピロロキノリンキノン又はその塩を対象に投与すればよい。ピロロキノリンキノン又はその塩の好ましい投与量や投与対象等は上述した本発明のPDE3阻害用組成物等の場合と同じである。ピロロキノリンキノン又はその塩は、そのまま投与してもよく、ピロロキノリンキノン又はその塩を含む組成物として投与してもよい。例えば、上述した本発明のPDE3阻害用組成物等を投与してもよい。
また、ピロロキノリンキノン又はその塩は、PDE3阻害のため、血小板凝集抑制のため又は脳内老廃物排出促進のために使用される飲食品、医薬、医薬部外品、飼料等の製造のために使用することができる。一態様において、本発明は、ホスホジエステラーゼ3阻害用組成物を製造するための、ピロロキノリンキノン又はその塩の使用;血小板凝集抑制用組成物を製造するための、ピロロキノリンキノン又はその塩の使用;脳内老廃物排出促進用組成物を製造するための、ピロロキノリンキノン又はその塩の使用も包含する。
【実施例
【0031】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これにより本発明の範囲を限定するものではない。
一連の動物実験は、動物愛護管理法他関連法令を遵守し、社内動物実験委員会の審査を経て機関の長が承認した計画に基づき実施した。
【0032】
<実施例1>
BPS Bioscience社のPDE3A Assay Kitを使用し、ピロロキノリンキノンのホスホジエステラーゼ3A(PDE3A)阻害活性を評価した。
【0033】
ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩(三菱ガス化学(株))をジメチルスルホキシド(DMSO)で10μg/mL、30μg/mL、100μg/mLに調製し、ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩溶液を得た。陽性対照としてCilostazol(東京化成工業(株))をDMSOで100μMに調製して、Cilostazol溶液を得た。
基質であるFAM-Cyclic-3’,5’-AMPをPDE Assay Bufferで200nMに調製した。酵素であるPDE3AをPDE Assay Bufferで20ng/mLに調製してPDE3A溶液を得た。
【0034】
上記で調製したFAM-Cyclic-3’,5’-AMP溶液12.5μLと、PDE3A溶液10μLと、ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩溶液又はCilostazol溶液2.5μLとを混和し、1時間室温で静置してサンプル溶液とした。
陽性コントロール溶液は、ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩溶液又はCilostazol溶液の代わりにDMSOを2.5μL添加した以外は、サンプル溶液と同じ方法で調製した。
基質コントロール溶液は、PDE3A溶液の代わりにPDE Assay Bufferを10μL、ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩溶液又はCilostazol溶液の代わりにDMSOを2.5μL添加した以外は、サンプル溶液と同じ方法で調製した。
結合ビーズ(Binding Agent)をBinding Agent diluentで100倍に希釈した。
上記で1時間静置したサンプル溶液、陽性コントロール溶液及び基質コントロール溶液(各N=1)それぞれに、希釈したBinding Agentを50μL添加し、室温で1時間振盪した。
励起波長/蛍光波長=485nm/535nmの条件で蛍光偏光を測定した。
【0035】
PDE3Aが作用するとFAM-Cyclic-3’,5’-AMPが分解し、その分解産物にBinding Agentが結合することで偏光度が大きくなる。逆にPDE3Aが阻害されるとBinding Agentの結合率が低下し、偏光度も小さくなる。これを利用し、蛍光偏光を測定することで被験物質のPDE3A阻害活性を評価した。
蛍光偏光の測定結果から、下記計算式によりPDE3A阻害率(%)を算出した。
PDE3A阻害率(%)=100×{(サンプル溶液の蛍光偏光度)-(基質コントロール溶液の蛍光偏光度)}/{(陽性コントロール溶液の蛍光偏光度)-(基質コントロール溶液の蛍光偏光度)}
【0036】
表1にピロロキノリンキノン二ナトリウム塩(PQQ)及び陽性対照のPDE3A阻害率を示す。ピロロキノリンキノン又はその塩は、PDE3A阻害活性を有することが判明した。
【0037】
【表1】
【0038】
<実施例2>
血小板凝集抑制作用を、下記方法で評価した。
0.5%メチルセルロース水溶液でピロロキノリンキノン二ナトリウム塩を懸濁し、ラットに2mg/kg(body weight)経口投与した(N=5)。コントロールのラットには、0.5%メチルセルロース水溶液を経口投与した(N=5)。
投与1時間後に採血を行い、血小板数を500±50×10個/μLに調整した血漿を調製した。調製した血漿100μLを37℃で1分間撹拌後、コラーゲンを5μg/mLとなるように加え、血小板凝集を惹起した。
【0039】
血小板の凝集に伴い光学的な透過度が減少する性質を利用し、IMI血小板凝集能測定装置(PRP313M型、アイ・エム・アイ(株))を用いて15分間の光透過度の変化を血小板凝集率の変化として記録した。下記計算式によりピロロキノリンキノン二ナトリウム塩の血小板凝集抑制率を算出した。
血小板凝集抑制率(%)=100×{(コントロールの平均血小板凝集率)-(各サンプルの血小板凝集率)}/(コントロールの平均血小板凝集率)
ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩(PQQ)の血小板凝集抑制率(%)の結果(平均±標準誤差)を表2に示す。ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩の投与により、血小板凝集が抑制された。ピロロキノリンキノン又はその塩は、血小板凝集抑制作用を有することが判明した。
【0040】
【表2】