(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】時間管理装置、時間管理装置の時間管理方法、時間管理装置の時間管理プログラムおよび時間管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20230816BHJP
G06Q 10/1091 20230101ALI20230816BHJP
E04G 23/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06Q10/1091
E04G23/00 ESW
(21)【出願番号】P 2020053450
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 治
(72)【発明者】
【氏名】松澤 好洋
(72)【発明者】
【氏名】松本 恵美
(72)【発明者】
【氏名】劉 ルイ嵐
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247003(JP,A)
【文献】特開2014-106781(JP,A)
【文献】特開2010-285748(JP,A)
【文献】特開2008-217114(JP,A)
【文献】特開2005-234664(JP,A)
【文献】特開2010-198394(JP,A)
【文献】特開平8-339068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
E04G 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置との無線通信を確立できない非通信環境において、構造物の新設工事または補修工事に用いられる複数の材料の時間を管理するための時間管理装置であって、
前記時間管理装置が、通信環境にあるか非通信環境にあるかを判定する通信環境判定部と、
前記時間管理装置が、通信環境にある場合、前記複数の材料が製造されてから前記複数の材料を使用することが可能な使用可能時間、前記複数の材料のパッケージが開封されてから前記複数の材料を使用することが可能な開封後使用可能時間および使用することが可能となった前記複数の材料を用いて前記新設工事または前記補修工事を行うことが可能な可使時間を、前記情報処理装置から取得して管理する時間管理部と、
前記時間管理装置が、通信環境から非通信環境へと移動した場合、使用可能な状態となった前記複数の材料を用いた前記新設工事または前記補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻を記録する施工時刻記録部と、
非通信環境において、前記施工時刻記録部が記録した前記施工開始時刻および前記施工終了時刻と、前記使用可能時間、前記開封後使用可能時間および前記可使時間の少なくともいずれか1つと、に基づいて、使用可能な状態となった前記複数の材料の使用の可否を判定する使用可否判定部と、
前記使用可否判定部による判定結果を出力する判定結果出力部と、
前記時間管理装置が、非通信環境から通信環境へと復帰した場合、非通信環境において記録された前記施工開始時刻および前記施工終了時刻を前記情報処理装置へ送信する時刻送信部と、
を備えた時間管理装置。
【請求項2】
前記時間管理部は、前記時間管理装置が通信環境にある場合、前記複数の材料のうち少なくとも2つを混合して、攪拌することにより得られる攪拌材料の攪拌材料可使時間を取得する攪拌材料可使時間取得部をさらに有し、
前記時間管理装置が、通信環境から非通信環境へと移動した場合、前記攪拌材料の攪拌開始時刻および攪拌終了時刻を記録する攪拌時刻記録部をさらに備え、
前記使用可否判定部は、前記攪拌開始時刻および前記攪拌終了時刻と、前記攪拌材料可使時間と、に基づいて、前記攪拌材料の使用の可否を判定する請求項1に記載の時間管理装置。
【請求項3】
前記時刻送信部は、前記時間管理装置が、非通信環境から通信環境へと復帰した場合、非通信環境において記録した前記攪拌開始時刻および前記攪拌終了時刻を前記情報処理装置へ送信する請求項2に記載の時間管理装置。
【請求項4】
前記構造物は、トンネルおよび暗渠の少なくともいずれかを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の時間管理装置。
【請求項5】
前記時間管理装置は、作業員が持ち運び可能な携帯端末である請求項1~4のいずれか1項に記載の時間管理装置。
【請求項6】
情報処理装置との無線通信を確立できない非通信環境において、構造物の新設工事または補修工事に用いられる複数の材料の時間を管理するための時間管理装置の時間管理方法であって、
前記時間管理装置が、通信環境にあるか非通信環境にあるかを判定する通信環境判定ステップと、
前記時間管理装置が、通信環境にある場合、前記複数の材料が製造されてから前記複数の材料を使用することが可能な使用可能時間、前記複数の材料のパッケージが開封されてから前記複数の材料を使用することが可能な開封後使用可能時間および使用することが可能となった前記複数の材料を用いて前記新設工事または前記補修工事を行うことが可能な可使時間を、前記情報処理装置から取得して管理する時間管理ステップと、
前記時間管理装置が、通信環境から非通信環境へと移動した場合、使用可能な状態となった前記複数の材料を用いた前記新設工事または前記補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻を記録する施工時刻記録ステップと、
非通信環境において、前記施工時刻記録ステップにおいて記録した前記施工開始時刻および前記施工終了時刻と、前記使用可能時間、前記開封後使用可能時間および前記可使時間の少なくともいずれか1つと、に基づいて、使用可能な状態となった前記複数の材料の使用の可否を判定する使用可否判定ステップと、
前記使用可否判定ステップにおける判定結果を出力する判定結果出力部と、
前記時間管理装置が、非通信環境から通信環境へと復帰した場合、非通信環境において記録された前記施工開始時刻および前記施工終了時刻を前記情報処理装置へ送信する時刻送信ステップと、
を含む時間管理装置の時間管理方法。
【請求項7】
情報処理装置との無線通信を確立できない非通信環境において、構造物の新設工事または補修工事に用いられる複数の材料の時間を管理するための時間管理装置の時間管理プログラムであって、
前記時間管理装置が、通信環境にあるか非通信環境にあるかを判定する通信環境判定ステップと、
前記時間管理装置が、通信環境にある場合、前記複数の材料が製造されてから前記複数の材料を使用することが可能な使用可能時間、前記複数の材料のパッケージが開封されてから前記複数の材料を使用することが可能な開封後使用可能時間および使用することが可能となった前記複数の材料を用いて前記新設工事または前記補修工事を行うことが可能な可使時間を、前記情報処理装置から取得して管理する時間管理ステップと、
前記時間管理装置が、通信環境から非通信環境へと移動した場合、使用可能な状態となった前記複数の材料を用いた前記新設工事または前記補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻を記録する施工時刻記録ステップと、
非通信環境において、前記施工時刻記録ステップにおいて記録した前記施工開始時刻および前記施工終了時刻と、前記使用可能時間、前記開封後使用可能時間および前記可使時間の少なくともいずれか1つと、に基づいて、使用可能な状態となった前記複数の材料の使用の可否を判定する使用可否判定ステップと、
前記使用可否判定ステップにおける判定結果を出力する判定結果出力部と、
前記時間管理装置が、非通信環境から通信環境へと復帰した場合、非通信環境において記録された前記施工開始時刻および前記施工終了時刻を前記情報処理装置へ送信する時刻送信ステップと、
をコンピュータに実行させる時間管理装置の時間管理プログラム。
【請求項8】
情報処理装置と時間管理装置との間で無線通信を確立できない非通信環境において、構造物の新設工事または補修工事に用いられる複数の材料の時間を管理するための時間管理システムであって、
前記情報処理装置は、前記時間管理装置と無線通信を確立できる通信環境にある場合、前記複数の材料が製造されてから前記複数の材料を使用することが可能な使用可能時間、前記複数の材料のパッケージが開封されてから前記複数の材料を使用することが可能な開封後使用可能時間および使用することが可能となった前記複数の材料を用いて前記新設工事または前記補修工事を行うことが可能な可使時間を前記時間管理装置に送信する時間管理部を備え、
前記時間管理装置は、
通信環境から非通信環境へと移動した場合、使用可能な状態となった前記複数の材料を用いた前記新設工事または前記補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻を記録する施工時刻記録部と、
非通信環境において、前記施工時刻記録部が記録した前記施工開始時刻および前記施工終了時刻と、前記使用可能時間、前記開封後使用可能時間および前記可使時間の少なくともいずれか1つと、に基づいて、使用可能な状態となった前記複数の材料の使用の可否を判定する使用可否判定部と、
前記使用可否判定部による判定結果を出力する判定結果出力部と、
非通信環境から通信環境へと復帰した場合、非通信環境において記録された前記施工開始時刻および前記施工終了時刻を前記情報処理装置へ送信する時刻送信部と、
を備え、
前記情報処理装置は、前記時間管理装置から送信された前記施工開始時刻および前記施工終了時刻を記憶する時刻記憶部をさらに備えた、時間管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間管理装置、時間管理方法、時間管理プログラムおよび時間管理システムに関し、特に、構造物の補修・補強工事に用いる補修材料の時間を管理するための時間管理装置、時間管理方法および時間管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、時間管理装置、時間管理装置の時間管理方法および時間管理装置の時間管理プログラムに関する。特に、構造物の新設工事または補修工事に用いられる材料の時間を管理する時間管理装置、時間管理装置の時間管理方法および時間管理装置の時間管理プログラムに関する。
【0003】
例えば、高度経済成長時代に構築されたインフラ構造物の多くが耐用年数である50年を迎えようとしているなか、点検、調査・診断、補修・補強の適切な維持管理サイクルの実施によって、構造物をリニューアルすることで、各種の構造物の長寿命化を図ることが可能となる。また、補修工事等では対応できない構造物の場合、新設工事を行うことにより、構造物の耐用年数を延長することが行われる。
【0004】
また特に、補修・補強工事を実施する際に用いる補修材料の履歴を記録して、把握しておくことは、補修・補強工事の品質や、補修・補強工事を行った後の各種の構造物の耐久性の証明等に役立つ。それだけではなく、その後の構造物の維持管理を行うためのデータとして有効に用いることが可能なことから、詳細かつ適切な情報の集約と記録の保管が求められる。かつ、これらの情報を、必要な時にいつでも容易に活用できるようにする体制が求められている。
【0005】
このような各種の構造物をリニューアルするための補修・補強工事に用いる補修材料は、好ましくは、袋体、缶体、ボトル体、ロール体等として、梱包されてパッケージ化された状態で、補修・補強工事の工事現場に多種・多量に投入されるようになっている。搬入された補修材料は、構造物の補修・補強箇所の種別や部位に応じて、1種または2種以上の補修材料が適宜選択され、攪拌されたり組み合わされたりすることで、例えば、多数の補修・補強箇所毎に、各々、必要な所定の数量が使用されることになる。このため、これらの多数の補修・補強箇所毎に使用される補修材料を各々管理するための情報は、データが膨大に且つ複雑になることで、情報の集約のための負担が大きくなる。
【0006】
例えば、トンネルの補修工事では、発注者が必要な資材を指定し、施工業者は、発注者が指定した資材を用いて補修工事を行う。施工業者は、発注者に対して、発注者が指定した資材を用いて補修工事を行ったことを証明する必要があり、資材を使い終わった後も、資材が収容されていたパッケージ等を保管しておかなければならず、管理に多大な手間を要していた。そこで、このような、管理を必要としない、管理方法が求められていた。
【0007】
一方、建設材料などの運搬物の流通過程を管理するためのトレーサビリティシステム(例えば、特許文献1参照)が開発されている。また、製品メーカが、製品の出荷後に製品に不具合や事故が発生した場合に備えて、製品の位置情報を管理するためのトレーサビリティサポートシステム(例えば、特許文献2)が開発されている。特許文献1のトレーサビリティシステムでは、建設材料等の運搬物に直接ICタグ等を付するのではなく、運搬物の受け渡しをする設備間で運搬物に関する管理情報の受け渡しを行うことで、運搬物の流通履歴を管理するようになっている。特許文献2のトレーサビリティサポートシステムでは、製品の納品後に、製品の所有者が携帯端末によって製品に貼付されたバーコードを読み込んで、携帯端末から所有者情報を、携帯端末の位置情報と共にトレーサビリティサポート装置に送信する。これにより、製品毎に製品の保証期間、所有者情報、位置情報を管理するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5324357号公報
【文献】特開2018-63473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、トンネルなどの構造物においては、トンネル内部の施工現場においては、無線通信による通信が行えない場所が多く、資材等の管理を適切に行うことが困難であった。本発明は、無線通信が確立できない非通信環境であっても、資材の管理を適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る時間管理装置は、
情報処理装置との無線通信を確立できない非通信環境において、構造物の新設工事または補修工事に用いられる複数の材料の時間を管理するための時間管理装置であって、
前記時間管理装置が、通信環境にあるか非通信環境にあるかを判定する通信環境判定部と、
前記時間管理装置が、通信環境にある場合、前記複数の材料が製造されてから前記複数の材料を使用することが可能な使用可能時間、前記複数の材料のパッケージが開封されてから前記複数の材料を使用することが可能な開封後使用可能時間および使用することが可能となった前記複数の材料を用いて前記新設工事または前記補修工事を行うことが可能な可使時間を、前記情報処理装置から取得して管理する時間管理部と、
前記時間管理装置が、通信環境から非通信環境へと移動した場合、使用可能な状態となった前記複数の材料を用いた前記新設工事または前記補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻を記録する施工時刻記録部と、
非通信環境において、前記施工時刻記録部が記録した前記施工開始時刻および前記施工終了時刻と、前記使用可能時間、前記開封後使用可能時間および前記可使時間の少なくともいずれか1つと、に基づいて、使用可能な状態となった前記複数の材料の使用の可否を判定する使用可否判定部と、
前記使用可否判定部による判定結果を出力する判定結果出力部と、
前記時間管理装置が、非通信環境から通信環境へと復帰した場合、非通信環境において記録された前記施工開始時刻および前記施工終了時刻を前記情報処理装置へ送信する時刻送信部と、
を備えた。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る時間管理装置の時間管理方法は、
情報処理装置との無線通信を確立できない非通信環境において、構造物の新設工事または補修工事に用いられる複数の材料の時間を管理するための時間管理装置の時間管理方法であって、
前記時間管理装置が、通信環境にあるか非通信環境にあるかを判定する通信環境判定ステップと、
前記時間管理装置が、通信環境にある場合、前記複数の材料が製造されてから前記複数の材料を使用することが可能な使用可能時間、前記複数の材料のパッケージが開封されてから前記複数の材料を使用することが可能な開封後使用可能時間および使用することが可能となった前記複数の材料を用いて前記新設工事または前記補修工事を行うことが可能な可使時間を、前記情報処理装置から取得して管理する時間管理ステップと、
前記時間管理装置が、通信環境から非通信環境へと移動した場合、使用可能な状態となった前記複数の材料を用いた前記新設工事または前記補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻を記録する施工時刻記録ステップと、
非通信環境において、前記施工時刻記録ステップにおいて記録した前記施工開始時刻および前記施工終了時刻と、前記使用可能時間、前記開封後使用可能時間および前記可使時間の少なくともいずれか1つと、に基づいて、使用可能な状態となった前記複数の材料の使用の可否を判定する使用可否判定ステップと、
前記使用可否判定ステップにおける判定結果を出力する判定結果出力部と、
前記時間管理装置が、非通信環境から通信環境へと復帰した場合、非通信環境において記録された前記施工開始時刻および前記施工終了時刻を前記情報処理装置へ送信する時刻送信ステップと、
を含む。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る時間管理プログラムは、
情報処理装置との無線通信を確立できない非通信環境において、構造物の新設工事または補修工事に用いられる複数の材料の時間を管理するための時間管理装置の時間管理プログラムであって、
前記時間管理装置が、通信環境にあるか非通信環境にあるかを判定する通信環境判定ステップと、
前記時間管理装置が、通信環境にある場合、前記複数の材料が製造されてから前記複数の材料を使用することが可能な使用可能時間、前記複数の材料のパッケージが開封されてから前記複数の材料を使用することが可能な開封後使用可能時間および使用することが可能となった前記複数の材料を用いて前記新設工事または前記補修工事を行うことが可能な可使時間を、前記情報処理装置から取得して管理する時間管理ステップと、
前記時間管理装置が、通信環境から非通信環境へと移動した場合、使用可能な状態となった前記複数の材料を用いた前記新設工事または前記補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻を記録する施工時刻記録ステップと、
非通信環境において、前記施工時刻記録ステップにおいて記録した前記施工開始時刻および前記施工終了時刻と、前記使用可能時間、前記開封後使用可能時間および前記可使時間の少なくともいずれか1つと、に基づいて、使用可能な状態となった前記複数の材料の使用の可否を判定する使用可否判定ステップと、
前記使用可否判定ステップにおける判定結果を出力する判定結果出力部と、
前記時間管理装置が、非通信環境から通信環境へと復帰した場合、非通信環境において記録された前記施工開始時刻および前記施工終了時刻を前記情報処理装置へ送信する時刻送信ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る時間管理システムは、
情報処理装置と時間管理装置との間で無線通信を確立できない非通信環境において、構造物の新設工事または補修工事に用いられる複数の材料の時間を管理するための時間管理システムであって、
前記情報処理装置は、前記時間管理装置と無線通信を確立できる通信環境にある場合、前記複数の材料が製造されてから前記複数の材料を使用することが可能な使用可能時間、前記複数の材料のパッケージが開封されてから前記複数の材料を使用することが可能な開封後使用可能時間および使用することが可能となった前記複数の材料を用いて前記新設工事または前記補修工事を行うことが可能な可使時間を前記時間管理装置に送信する時間管理部を備え、
前記時間管理装置は、
通信環境から非通信環境へと移動した場合、使用可能な状態となった前記複数の材料を用いた前記新設工事または前記補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻を記録する施工時刻記録部と、
非通信環境において、前記施工時刻記録部が記録した前記施工開始時刻および前記施工終了時刻と、前記使用可能時間、前記開封後使用可能時間および前記可使時間の少なくともいずれか1つと、に基づいて、使用可能な状態となった前記複数の材料の使用の可否を判定する使用可否判定部と、
前記使用可否判定部による判定結果を出力する判定結果出力部と、
非通信環境から通信環境へと復帰した場合、非通信環境において記録された前記施工開始時刻および前記施工終了時刻を前記情報処理装置へ送信する時刻送信部と、
を備え、
前記情報処理装置は、前記時間管理装置から送信された前記施工開始時刻および前記施工終了時刻を記憶する時刻記憶部をさらに備えた。
【発明の効果】
【0014】
本発明の時間管理装置によれば、無線通信が確立できない非通信環境であっても、資材の管理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る時間管理装置の動作の概略を説明するための図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る時間管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る時間管理装置の判定テーブルの一例を説明するための図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る時間管理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る時間管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る時間管理装置の攪拌材料判定テーブルの一例を説明するための図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る時間管理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る時間管理システムの構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0017】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての時間管理装置100について、
図1~
図5を用いて説明する。時間管理装置100は、情報処理装置110との無線通信を確立できない非通信環境において、構造物の新設工事または補修工事に用いられる複数の材料の時間を管理するための装置である。
図1は、本実施形態に係る時間管理装置100の動作の概略を説明するための図である。
【0018】
なお、本実施形態においては、構造物としてトンネル140およびトンネル140の補修工事を例に説明するが、非通信環境における新設工事や補修工事が必要な構造物であれば、これには限定されない。構造物は、例えば、暗渠や、山間部の構造物、海底構造物など、時間管理装置100が、無線通信によりネットワークに接続できない環境にある構造物が該当する。
【0019】
また、工事の内容も補修工事には限定されず、トンネル140などの新設工事であってもよい。さらに、時間管理装置100は、作業員120が持ち運び可能な携帯端末であり、例えば、タブレット端末やスマートフォン、ウェアラブル端末(眼鏡型、時計型)、ラップトップパソコンであるが、これらには限定されない。
【0020】
ここで、補修工事に用いられる補修材料130には、様々な使用期限が定められており、この使用期限を経過した補修材料130を用いて補修工事を行った場合、補修工事に必要な強度や、要求される耐用期限を実現できなくなることがある。そのため時間管理装置100は、情報処理装置110と連携しつつ、補修に用いられる補修材料130の時間を管理する。
【0021】
例えば、トンネル140の補修工事を行う場合を考える。まず、必要な補修材料130を運搬用車両でトンネル140の入り口付近まで運搬し、トンネル140の入り口付近に補修材料130を仮置きする搬入作業を行う。その後、必要な補修材料130をトンネル内部まで運搬して、補修工事を行う。
【0022】
この場合、トンネル140の入り口付近では、時間管理装置100は、無線通信を介してネットワークに接続することができ、情報処理装置110へアクセスできるので、必要なタイミングで、必要なデータを情報処理装置110から取得して、利用できる。
【0023】
しかしながら、トンネル140の内部においては、無線通信用の電波が届かないため、時間管理装置100は、情報処理装置110から必要なタイミングで、必要なデータを取得することができない。そのため、時間管理装置100は、トンネル140の内部の非通信環境下の補修箇所においては、情報処理装置110との連携ができない状態で、各々の補修材料130の時間を管理しなければならない。
【0024】
そこで、時間管理装置100は、情報処理装置110と通信ができる環境にある場合(通信環境)、使用可能時間111、開封後使用可能時間112および可使時間113を情報処理装置110から取得する。ここで、使用可能時間111は、補修材料130が製造されてからその補修材料130を使用することが可能な時間であり、開封後使用可能時間112は、補修材料130のパッケージが開封されてから補修材料130を使用することが可能な時間である。また、可使時間113は、使用することが可能とった補修材料130を用いて補修工事を行うことが可能な時間である。
【0025】
そして、補修材料130をトンネル140内の補修箇所まで運び、補修工事を開始する。時間管理装置100は、補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻114を取得し、記録する。時間管理装置100は、取得した使用可能時間111、開封後使用可能時間112、可使時間113と、施工開始時刻および施工終了時刻114とに基づいて、補修材料130の使用可否を判定する。
【0026】
なお、トンネル140などの大規模構造物においては、多数の補修箇所が存在し、最初の補修箇所の施工においては、可使時間113などを徒過していなくても、次の補修箇所へと移動する間に、可使時間を徒過する可能性もある。そのため、作業員120は、トンネル140内で、補修材料130を用いた補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻114を、時間管理装置100を用いて記録する。記録される施工開始時刻および施工終了時刻114は、1つの補修材料130について1回とは限らない。1つの補修材料130をトンネル内の複数の補修箇所の補修に用いることがあるからである。
【0027】
そして、時間管理装置100は、トンネル140内において、取得した補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻114を用いて、補修材料130の使用可否の判定を行う。時間管理装置100は、判定結果150を時間管理装置100のディスプレイなどの表示装置に出力する。作業員120は、判定結果150に基づいて、補修材料130の使用の可否を判断する。トンネル140内での補修工事が終了し、時間管理装置100が情報処理装置110と無線通信が可能な環境に復帰すると、時間管理装置100は、記録していた施工開始時刻および施工終了時刻114を情報処理装置110へと送信する。
【0028】
これにより、情報処理装置110は、時間管理装置100と一時的に通信が行えなくても、不足していた施工開始時刻および施工終了時刻114を取得することができ、データベースを更新して、補修材料130の使用履歴を一元的に管理することが可能となる。したがって、情報処理装置110では、事後的ではあるが、補修材料130の使用状況について追跡することが可能となる。
【0029】
ここで、運搬された補修材料130が収容されているパッケージには、パッケージを識別可能な識別情報を含むラベルが貼り付けられている。ラベルは、二次元コードが代表的であるが、これには限定されず、例えば、一次元コードや、RFID(Radio Frequency Identifier)タグやICタグなどであってもよい。
【0030】
そして、現場の作業員120は、時間管理装置100を用いてパッケージのラベルを読み取る。ラベルを読み取った時間管理装置100は、ラベルからパッケージを識別するための識別情報を抽出し、情報処理装置110へアクセスし、材料名、製造年月日、使用可能時間111、開封後使用可能時間112、可使時間113、製品名などの各種情報を取得する。この時点で、使用期限を徒過している補修材料130があれば、その補修材料130は廃棄され、作業員120は、代わりの補修材料130を手配する。
【0031】
その後、作業員120は、補修材料130をトンネル内の施工現場まで搬送する。施工現場において、作業員120は、補修材料130を用いた補修工事を開始した時刻と、終了した時刻とを時間管理装置100を用いて記録する。施工現場では、時間管理装置100は、情報処理装置110と通信を行うことができないので、時間管理装置100自身で時間管理を行う。
【0032】
図2は、本実施形態に係る時間管理装置の構成を説明するためのブロック図である。時間管理装置100は、通信制御部201、通信環境判定部202、時間管理部203、施工時刻記録部204、使用可否判定部205、判定結果出力部206、時刻送信部207およびコード読取部208を有する。
【0033】
ここで、時間管理装置100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ネットワークインターフェース、およびストレージを有する。ここで、CPUは、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで
図2に示した時間管理装置100の各機能構成を実現する。CPUは、複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROMは、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインターフェースは、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPUは、1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインターフェースは、CPUとは独立した他のCPUを有して、RAMの領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAMとストレージとの間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい。さらに、CPUは、RAMにデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPUは、処理結果をRAMに準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインターフェースやDMACに任せる。
【0034】
RAMは、CPUが一時記憶のワークエリアとして使用するメモリである。RAMには、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する領域が確保されている。ストレージには、データベースや各種のパラメータ、モジュール、あるいは本実施形態の実現に必要なデータまたはプログラムが記憶されている。例えば、ストレージには、時間管理装置100の全体を制御するための制御プログラムが記憶されている。
【0035】
さらに、時間管理装置100は、入出力インターフェースをさらに備えてもよい。入出力インターフェースには、表示部、操作部、記憶媒体が接続される。入出力インターフェースには、さらに、音声出力部であるスピーカや、音声入力部であるマイク、あるいはGPS(Global Positioning System)位置判定部が接続されてもよい。なお、RAMやストレージには、時間管理装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータが記憶されていてもよい。
【0036】
通信制御部201は、情報処理装置110またはその他の外部機器との間の通信を制御する。通信制御部201は、無線通信により情報処理装置110との通信を確立する。通信環境判定部202は、時間管理装置100が、情報処理装置110との通信を確立できる環境(通信環境)にあるか、通信を確立できない環境(非通信環境)にあるかを判定する。
【0037】
時間管理部203は、使用可能時間管理部231、開封後使用可能時間管理部232および可使時間管理部233を有する。時間管理部203は、時間管理装置100が、通信環境にある場合、使用可能時間111、開封後使用可能時間112および可使時間113を情報処理装置110から取得して、管理する。
【0038】
使用可能時間管理部231は、複数の補修材料130が製造されてから複数の補修材料130を使用することが可能な期間である使用可能時間111を、情報処理装置110から取得して、管理する。使用可能時間111は、補修材料130の種類や特性、法令などに応じて予め定められている。したがって、情報処理装置110は、例えば、補修材料130の製造メーカのデータベースなどから使用可能時間111を取得し、データベースなどに格納している。使用可能時間管理部231は、例えば、情報処理装置110のデータベースにアクセスして使用可能時間111を取得する。
【0039】
開封後使用可能時間管理部232は、複数の補修材料130のパッケージが開封されてから、複数の補修材料130を使用することが可能な期間である、開封後使用可能時間112を、情報処理装置110から取得して、管理する。パッケージ開封前の補修材料130は、適切な湿度や雰囲気中に暴露されているため、比較的長期に渡って保管できる場合もある。しかしながら、一旦封が開けられると、湿度や雰囲気が変化したり、コンタミネーションが発生したりするので、補修材料130の品質をコントロールすることが困難となる。そのため、補修材料130の製造メーカは、開封後の補修材料130の劣化の具合から、予め開封後の使用期限を定めている。したがって、情報処理装置110は、例えば、補修材料130の製造メーカのデータベースや取扱説明書などから開封後使用可能時間112を取得し、所定のデータベースなどに格納している。開封後使用可能時間管理部232は、例えば、情報処理装置110のデータベースにアクセスして開封後使用可能時間112を取得する。
【0040】
可使時間管理部233は、使用することが可能となった複数の補修材料130を用いて補修工事を行うことが可能な期間である可使時間113を、情報処理装置110から取得して、管理する。補修材料130は、例えば、パッケージを開封しただけでは施工に用いることはできない。補修材料130を用いて施工を行うには、例えば、パッケージ開封後に、補修材料130をバケツやプラ舟に開けて、施工箇所まで運ぶことにより、補修工事を行うことができる。したがって、情報処理装置110は、例えば、補修材料130の製造メーカのデータベースなどから可使時間113を取得し、所定のデータベースなどに格納している。可使時間管理部233は、例えば、情報処理装置110のデータベースにアクセスして可使時間113を取得する。
【0041】
施工時刻記録部204は、時間管理装置100が、通信環境から非通信環境へと移動した場合、使用可能な状態となった複数の補修材料130を用いた補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻を取得して、記録する。具体的には、作業員120が、施工開始時刻および施工終了時刻114を、時間管理装置100に付属する入力装置を用いて入力する。あるいは、時間管理装置100上で時間管理用のアプリケーションが起動している場合には、作業員120が、施工開始ボタンおよび施工終了ボタンをタップすることにより、施工開始時刻および施工終了時刻114が入力される。
【0042】
使用可否判定部205は、施工時刻記録部204が記録した施工開始時刻および施工終了時刻114と、使用可能時間111、開封後使用可能時間112および可使時間113の少なくともいずれか1つと、に基づいて、使用可能な状態となった複数の補修材料130の使用の可否を判定する。つまり、使用可否判定部205は、記録された施工開始時刻および施工終了時刻114と、取得した使用可能時間111などと、時間管理装置100が有する時計による現在時刻とを比較して、補修材料130の使用可否を判定する。
【0043】
ここで、例えば、補修材料130として塗料を用いる場合を考える。また、補修材料130を用いて、複数個所の補修を行うものとする。塗料に含まれる揮発性溶剤成分が蒸発して、塗料が使えなくなる時間として、次の3つのものがある。すなわち、1番目は、使用可能時間管理部231が管理する時間であり、塗料の製造後パッケージングされ、未開封の状態での使用期限である使用可能時間111である。次に、2番目は、塗料のパッケージを開封した後の使用期限である開封後使用可能時間112である。そして、3番目は、パッケージの開封後、塗料をバケツなどの移し替えた状態での使用期限である、可使時間113である。
【0044】
そして、使用可否判定部205は、塗料のおかれた状況に応じて、これらの3つの使用期限のいずれか1つと、現在の時刻とを比較することにより、補修材料130の使用可否を判定する。例えば、塗料がパッケージ(缶)に封入され、未開封のままであれば、使用可否判定部205は、使用可能時間111と現在時刻とを比較し、現在時刻が使用可能時間111内にあるか否かを判定することにより、補修材料130の使用可否を判定する。これにより、パッケージングされた状態であるにもかかわらず、既に使用期限が経過しているものを排除することができる。
【0045】
また、例えば、塗料のパッケージが開封された状態にある場合、使用可否判定部205は、開封後使用可能時間112と現在時刻とを比較し、現在時刻が開封後使用可能時間112内にあるか否かを判定することにより、補修材料130の使用可否を判定する。
【0046】
さらに、例えば、塗料がパッケージからバケツなどに移し替えられ、施工に使用される状態にある場合、使用可否判定部205は、可使時間113と現在時刻とを比較し、現在時刻が可使時間113内にあるか否かを判定する。これにより、補修材料130の使用可否を判定する。
【0047】
使用可否判定部205は、塗料に含まれる揮発性溶剤成分が蒸発して塗料が使えなくなるまでの標準時間(可使時間113)と施工開始時刻および施工終了時刻114とを比較して、塗料の使用の可否を判定する。
【0048】
そして、施工終了後にも補修材料130が余っていて、次回の施工に余りの補修材料130が利用できる場合には、余った補修材料130を元のパッケージに戻し、一旦保管し、次の施工の際にパッケージを再開封して、使用可能状態とすることがある。この場合、使用可否判定部205は、前回の施工開始時刻および施工終了時刻から得られる時間情報を、使用可能時間111、開封後使用可能時間112および可使時間113に加味して、現在時刻と比較することにより、補修材料130の使用可否を判定する。
【0049】
判定結果出力部206は、使用可否判定部205による判定結果150を出力する。例えば、判定結果出力部206は、判定結果150を時間管理装置100のディスプレイなどの表示部や、時間管理装置100以外のディスプレイや、モニタ、プロジェクタなどに出力する。表示部は、出力された判定結果150を表示する。作業員120は、出力された判定結果150を参照して、補修材料130の使用可否を判断する。補修材料130が使用できない場合、作業員120は、補修材料130を廃棄するなどの処理を行う。
【0050】
時刻送信部207は、時間管理装置100が、非通信環境から通信環境へと復帰した場合、非通信環境において記録された施工開始時刻および施工終了時刻を、通信制御部201を介して情報処理装置110へ送信する。
【0051】
コード読取部208は、複数の補修材料130のパッケージに取り付けられた二次元コード210を読み取る。各々の補修材料130が収容されるパッケージには、各々のパッケージを識別可能な識別情報を含む二次元コード210が、識別情報ラベルとして取り付けられている。コード読取部208は、二次元コード210に含まれる識別情報を読み取った二次元コード210から抽出する。具体的には、コード読取部208は、二次元コードリーダであり、二次元コード210に含まれる補修材料130の識別情報を抽出する。
【0052】
識別情報には、複数の補修材料130の使用可能時間111や、開封後使用可能時間112、可使時間113、施工開始時刻および施工終了時刻114などが紐付けられて、情報処理装置110が有するデータベースなどに格納されて管理されている。
【0053】
なお、パッケージに二次元コード210が貼付されていない場合、作業員120が、手入力により識別情報を時間管理装置100に入力してもよい。なお、二次元コードを用いる代わりに、RFID(Radio-Frequency Identification)タグや、非接触型IC(Integrated Circuit)チップなどを用いてもよい。
【0054】
図3は、本実施形態に係る時間管理装置100が有する判定テーブル300の一例を説明するための図である。判定テーブル300は、補修材料ID(Identifier)301に関連付けて、管理時間302および施工時刻303を記憶する。補修材料ID301は、各々の補修材料130を識別するための識別子であり、補修材料130に一意に割り振られている。管理時間302は、使用可能時間111、開封後使用可能時間112および可使時間113を含む。管理時間302は、時間管理装置100が、通信環境にある場合に、情報処理装置110から取得される。施工時刻303は、補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻114を含む。施工時刻303は、時間管理装置100が、非通信環境にある場合、例えば、作業員120が、時間管理装置100の入力装置等を用いて入力して得られる。そして、時間管理装置100は、判定テーブル300を参照して、補修材料130の使用の可否を判定する。
【0055】
図4は、本実施形態に係る時間管理装置100の処理手順を説明するフローチャートである。
図4に示したフローチャートは、時間管理装置100の不図示のCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を用いて実行し、
図2に示した時間管理装置100の各機能構成を実現する。
【0056】
ステップS401において、通信環境判定部202は、時間管理装置100が、情報処理装置110との間の無線通信を確立できるか通信環境から、無線通信を確立できない非通信環境へと移動して、非通信環境にあるか否かを判定する。非通信環境にない場合(通信環境にある場合;ステップS401のNO)、時間管理装置100は、ステップS403へ進む。ステップS403において、時間管理装置100は、情報処理装置110から使用可能時間111、開封後使用可能時間112および可使時間113を取得する。非通信環境にある場合(ステップS401のYES)、時間管理装置100は、ステップS405へ進む。
【0057】
ステップS405において、施工時刻記録部204は、使用可能な状態となった複数の補修材料130を用いた補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻114を取得して、記録する。ステップS407において、使用可否判定部205は、記録した施工開始時刻および施工終了時刻114と、使用可能時間111、開封後使用可能時間112および可使時間113の少なくともいずれか1つと、に基づいて、使用可能な状態となった複数の補修材料130の使用の可否を判定する。ステップS409において、判定結果出力部206は、判定結果を出力する。
【0058】
ステップS411において、通信環境判定部202は、時間管理装置100が、非通信環境から通信環境へと復帰したか否かを判定する。通信環境へと復帰していない場合(ステップS411のNO)、時間管理装置100は、ステップS405へ戻る。通信環境へと復帰した場合(ステップS411のYES)、時間管理装置100は、ステップS413へ進む。ステップS413において、時刻送信部207は、記録した施工開始時刻および施工終了時刻114を情報処理装置110へ送信する。
【0059】
本実施形態によれば、補修工事の施工現場において、時間管理装置が、施工開始時刻および施工終了時刻を記録するので、時間管理装置が、非通信環境にあっても、補修材料の時間管理を確実、適切に行うことができる。補修材料の時間管理を適切に行うので、不良補修材料を用いた補修工事を行うことがないので、補修工事の信頼性がより向上する。
【0060】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る時間管理装置について、
図5~7を用いて説明する。
図5は、本実施形態に係る時間管理装置の構成を説明するためのブロック図である。本実施形態に係る時間管理装置は、上記第1実施形態と比べると、攪拌材料可使時間取得部および攪拌時刻記録部を有する点で異なる。その他の構成および動作は第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0061】
時間管理装置500は、時間管理部503および攪拌時刻記録部509を有する。時間管理部503は、攪拌材料可使時間取得部531を備える。攪拌材料可使時間取得部531は、複数の材料のうち少なくとも2つを混合して、攪拌することにより得られる攪拌材料の攪拌材料可使時間532を取得する。ここで、攪拌材料は、複数の材料を混ぜて、練り合わせて得られる混練材料であり、複数の材料を混合した混合材料の攪拌が終了すると得られる材料である。
【0062】
なお、コード読取部208は、攪拌材料の製造に必要な複数の材料のパッケージに貼付された二次元コード510を読み取る。そして、時間管理装置500は、攪拌される材料のそれぞれの使用可能時間111、開封後使用可能時間112および可使時間113を情報処理装置110から取得する。
【0063】
攪拌材料可使時間取得部531は、複数の材料を混合し、攪拌して得られる攪拌材料可使時間532を情報処理装置110から取得する。つまり、各々の材料を単独で使用する場合と、複数の材料を混ぜ合わせて攪拌材料として使用する場合とでは、可使時間に違いが生じるからである。
【0064】
例えば、攪拌材料Aが、補修材料a1と補修材料a2とから得られるとする(A=a1+a2)。この場合、単独の補修材料a1および補修材料a2が、それぞれ、t1およびt2という可使時間113を持っていたとしても、攪拌材料Aの攪拌材料可使時間532は、単純に、t1およびt2のうち短い方(または長い方)とはならない場合もある。そのため、攪拌材料可使時間取得部531は、攪拌材料としての攪拌材料可使時間532を情報処理装置110から取得する。攪拌材料としての攪拌材料可使時間532は、実験や経験則等により予め決められており、所定のデータベースに格納されている。なお、攪拌材料可使時間取得部531は、時間管理装置500が通信環境にある場合に、情報処理装置110から攪拌材料可使時間532を取得する。
【0065】
攪拌時刻記録部509は、時間管理装置500が、通信環境から非通信環境へと移動した場合、攪拌材料の攪拌開始時刻および攪拌終了時刻591を記録する。すなわち、攪拌材料は、トンネル140内の補修箇所の近辺において、補修工事の施工開始直前に製造される。そのため、時間管理装置500が、非通信環境にある場合に、材料の混合および攪拌(混練)が行われる。したがって、時間管理装置500は、非通信環境に移動した場合に、攪拌開始時刻および攪拌終了時刻591を記録する。
【0066】
攪拌材料については、複数の材料が混合され攪拌されている間も、使用可能時間111などが減少していく。そのため、攪拌中の時間も考慮に入れて、攪拌材料の使用可否を判定するために、攪拌開始時刻および攪拌終了時刻591を記録する。なお、記録した攪拌開始時刻および攪拌終了時刻591は、時間管理装置500が通信環境に復帰した際に、時刻送信部207から情報処理装置110へと送信される。
【0067】
そして、使用可否判定部205は、記録した攪拌開始時刻および攪拌終了時刻591と、攪拌材料可使時間532とに基づいて、攪拌材料の使用可否を判定する。使用可否判定部205は、具体的には、例えば、攪拌開始時刻および攪拌終了時刻591および攪拌材料可使時間532と、現在時刻とを比較することにより使用可否を判定する。なお、この場合、時間管理装置500は、非通信環境にあるので、いわゆるネットワーク上の時計を利用できないので、時間管理装置500が備える時計の時刻が現在時刻の基準となる。スタンドアローン状態の時間管理装置500が備える時計と、ネットワーク上の時計とでは、誤差が生じる可能性がある。しかしながら、この誤差は、使用可否の判定に影響を与える可能性はごく小さいものと考えられる。
【0068】
図6は、本実施形態に係る時間管理装置500の攪拌材料判定テーブル600の一例を説明するための図である。攪拌材料判定テーブル600は、攪拌材料ID601に関連付けて、混合材料602、攪拌時刻603および可使時間604を記憶する。攪拌材料ID601は、攪拌材料を識別するための識別子である。混合材料602は、攪拌材料を得るために必要な、補修材料130の組み合わせである。例えば、攪拌材料IDが、M0001の攪拌材料は、補修材料IDがR0001とR1010との補修材料130を混合して、攪拌することにより得られることが分かる。攪拌時刻603は、攪拌の開始時刻と終了時刻とである。可使時間604は、攪拌材料を用いて補修工事を行うことが可能な時間である。そして、時間管理装置500は、攪拌材料判定テーブル600を参照して、攪拌材料の使用可否を判定する。
【0069】
図7は、本実施形態に係る時間管理装置500の処理手順を説明するためのフローチャートである。
図7に示したフローチャートは、時間管理装置500の不図示のCPUが、ROM、RAMを用いて実行し、
図5に示した時間管理装置500の各機能構成を実現する。
【0070】
ステップS701において、攪拌材料可使時間取得部531は、複数の材料のうち少なくとも2つを混合して、攪拌することにより得られる攪拌材料の攪拌材料可使時間532を取得する。ステップS703において、攪拌時刻記録部509は、時間管理装置500が通信環境から非通信環境へ移動した場合、攪拌材料の攪拌開始時刻および攪拌終了時刻591を記録する。
【0071】
本実施形態によれば、攪拌材料を用いた施工であっても、非通信環境において、攪拌材料の時間を適切、確実に管理できる。
【0072】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係る時間管理システムについて、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態に係る時間管理システムの構成を説明するためのブロック図である。本実施形態に係る時間管理システムは、上記第1実施形態および第2実施形態と比べると、情報処理装置が、通信制御部、時間管理部、施工時刻記憶部、使用可否判定部および判定結果送信部を有する点で異なる。その他の構成および動作は第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0073】
時間管理システム800は、時間管理装置500と情報処理装置810とを含む。ここで、時間管理装置500は、例えば、作業員が持ち運び可能な携帯端末である。そして、情報処理装置810は、通信制御部811、時間管理部813、施工時刻記憶部814、使用可否判定部815および判定結果送信部816を有する。時間管理部803は、使用可能時間管理部831、開封後使用可能時間管理部832および可使時間管理部833を有する。
【0074】
通信制御部801は、時間管理装置500またはその他の外部機器との間の通史を制御する。その他の機能等については、通信制御部201と同様である。時間管理部803は、時間管理部203と同様の機能を有する。時刻記憶部804は、時間管理装置500が、通信環境から非通信環境へと移動した場合、使用可能な状態となった複数の補修材料130を用いた補修工事の施工開始時刻および施工終了時刻を時間管理装置500から受信する。時刻記憶部804は、受信した施工開始時刻および施工終了時刻を記憶する。時刻記憶部804は、さらに、攪拌材料の攪拌開始時刻および攪拌終了時刻591を記憶する。使用可否判定部805は、使用可否判定部205と同様に、補修材料130の使用可否を判定する。判定結果送信部806は、使用可否判定部805による判定結果を時間管理装置100へ送信する。
【0075】
なお、本実施形態においては、時間管理装置500が通信環境にある場合、時間管理装置500は、時間管理部503における処理を情報処理装置810の時間管理部803に任せる。つまり、時間管理装置500は、時間管理装置500が非通信環境にある場合に、時間管理部503による処理を実行する。
【0076】
また、情報処理装置810は、時間管理部813において時間を管理する他に、気温、湿度などの施工環境、材料搬入時の立会い者および施工作業者、施工場所などの位置情報を記録して管理してもよい。この場合、時間管理装置500が非通信環境下にあれば、これらの情報は、時間管理装置500において収集され、記録される。時間管理装置500が、非通信環境下から通信環境下に移動したら、時間管理装置500は、収集、記録した情報を情報処理装置810へと送信し、情報処理装置810において、これらの情報も合わせて総合的に管理される。すなわち、時間管理システム800においては、攪拌材料の時間を管理するとともに、複数の材料について、いつ、誰が、どの材料を、どれくらい混ぜて攪拌材料を作り、どこに使用したかの情報を記録し、管理できる。これらの情報は、時間管理装置500が、非通信環境にある場合には、時間管理装置500において、記録され、管理されているので、時間管理装置500が通信環境へと復帰したら、記録された情報を情報処理装置810へと送信する。これにより、情報処理装置810が時間管理装置500と通信ができない状態が発生しても、時間管理装置500において、様々な情報を記録し管理しているので、情報処理装置810は、複数の材料について、一貫して管理することができる。以上説明したように、時間管理システム800においては、攪拌材料の時間を管理するのみならず、時間以外の様々な情報も時間と同様に管理することができる。
【0077】
本実施形態によれば、攪拌材料を用いた施工であっても、通信環境および非通信環境のいずれにおいても、攪拌材料の時間を適切、確実に管理できる。また、時間以外の様々な情報も合わせて管理することにより、攪拌材料の時間のみならず、様々な情報をまとめて管理することができる。
【0078】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0079】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。