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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ガスセンサ及びガスセンサの保護部材
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
G01N27/409 100
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020060446
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021156860
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】劉 孫超
(72)【発明者】
【氏名】神前 和裕
(72)【発明者】
【氏名】大場 健弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 憲治
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-245663(JP,A)
【文献】特開2016-095223(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104847468(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
G01N 27/41
G01N 27/419
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサであって、
軸線方向に延びるセンサ素子と、
前記センサ素子の径方向周囲を取り囲んで該センサ素子を保持する主体金具と、
前記主体金具に直接又は間接的に取り付けられ、前記ガスセンサの外表面を構成すると共に、前記主体金具よりも後端側に延びる筒状の外表部材と、
前記外表部材の外周の固定領域に脱着可能に固定される筒状の保護部材と、
を備え、
前記保護部材は、第1の円弧部と、第2の円弧部と、前記固定領域に接して固定される固定部と、を有し、
前記固定部を前記固定領域に固定して前記保護部材を前記外表部材の外周に固定した状態で、前記軸線方向から見たとき、
前記第1の円弧部と前記第2の円弧部は、前記外表部材の外面の全周の合計90%以上を覆うことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記保護部材は、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部のそれぞれに別個の前記固定部が接続され、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部が分離可能となる2つの部材からなることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記保護部材は、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部が接続部にて接続され、前記接続部が径方向に回動して前記第1の円弧部と前記第2の円弧部の径方向の間隔を拡縮可能であることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記保護部材を前記外表部材の外周に固定した状態で、前記軸線方向から見たとき、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部が前記外表部材の外面の全周を覆うことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記外表部材の外面は径方向内側に縮径する縮径部を有し、前記縮径部が前記固定領域となり、
前記固定部は前記縮径部に嵌合されて固定されることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記外表部材は、自身の内部へ外気を導入する通気孔を有し、
前記外表部材の内面に、前記通気孔を塞ぐようにして通気性を有するフィルタが配置され、
前記第1の円弧部と前記第2の円弧部は、前記通気孔の径方向周囲を覆うと共に、前記通気孔と外部とを連通させる隙間を前記軸線方向に前記通気孔と異なる位置に有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記第1の円弧部と前記第2の円弧部の中心角の合計が360度を超えることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記第1の円弧部と前記第2の円弧部の直径が同一であり、
前記第1の円弧部の周方向の一方の端部は前記外表部材の外表面を覆い、他方の端部は前記第2の円弧部の周方向の一方の端部を覆っており、
前記第2の円弧部の周方向の前記一方の端部は前記外表部材の外表面を覆い、他方の端部は前記第1の円弧部の周方向の前記一方の端部を覆うことを特徴とする請求項7に記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記第1の円弧部の直径が前記第2の円弧部の直径より大きく、
前記第1の円弧部の中心角が180度を超え、
前記第2の円弧部の周方向両側の端部は前記第1の円弧部に覆われることを特徴とする請求項7又は8に記載のガスセンサ。
【請求項10】
前記固定部は弾性を有し、
前記軸線方向から見たとき、前記固定部は中心角が180度を超え、開口部を有する円弧状であって、
前記開口部の周方向の最小間隔が、前記固定領域の外径よりも小さく、
かつ前記開口部の両端縁には、前記最小間隔より周方向の間隔が広がるガイド部が形成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【請求項11】
軸線方向に延びるセンサ素子と、前記センサ素子の径方向周囲を取り囲んで該センサ素子を保持する主体金具と、前記主体金具に直接又は間接的に取り付けられ、前記センサ素子の外表面を構成すると共に、前記主体金具よりも後端側に延びる筒状の外表部材とを備えたガスセンサの保護部材であって、
前記保護部材は、前記外表部材の外周の固定領域に脱着可能に固定され、
かつ、第1の円弧部を有する第1の保護部材と、第2の円弧部を有する第2の保護部材と、前記外表部材に接して固定される固定部と、を有し、前記第1の保護部材と前記第2の保護部材とが分離可能な2つの部材であり、
前記固定部を前記外表部材に固定して前記保護部材を前記外表部材の外周に固定した状態で、前記軸線方向から見たとき、
前記第1の円弧部と前記第2の円弧部は、前記外表部材の外面の全周の合計90%以上を覆うことを特徴とするガスセンサの保護部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出ガス中に晒され、この中の特定ガス成分を検出するセンサ素子を備えるガスセンサ及びガスセンサの保護部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関の燃費向上や燃焼制御を行うガスセンサとして、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサや空燃比センサが知られている。
このようなガスセンサとして、特定ガスの濃度検出を行うセンサ素子を主体金具に保持すると共に、センサ素子の後端側を金属製の外筒の内部に収容した構造が一般的に用いられている。ここで、センサ素子の検出セルは、酸素濃度の基準となる外気に晒される基準電極と、被検出ガス中に晒される検知電極とを有しており、外筒の内部に収容されたセンサ素子に外気を導入する必要がある。
【0003】
このため、外筒のうちセパレータに対向する側面に通気孔を設け、この通気孔を覆うように撥水性のフィルタを配置するガスセンサが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
このガスセンサでは、フィルタの外側にさらに保護外筒を配置し、保護外筒の側面にも通気孔を設けることで、外気が各通気孔とフィルタを介して外筒の内部に導入される。
【0004】
ところで、保護外筒及びその通気孔は外部に露出しており、自動車の洗車時の高圧水等が通気孔に直接当たり、その水圧がフィルタの耐水圧を超えるとセンサ素子内に水が浸入し、センサの検出精度が低下したり、動作不良となるおそれがある。
そこで、センサ素子を保護カバーで覆うことが対策として考えられる。例えば、切れ目を有する断面C字の環状の金属製カバーを遮熱に用いる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
この技術によれば、金属カバーの切れ目にガスセンサのリード線を入り込ませながら取り付けることで、自動車等に設置後のリード線付きのガスセンサに容易にカバーを脱着できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-211981号公報(図1
【文献】特開2004-245663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2記載の技術の場合、金属カバーの切れ目にリード線を割り込ませる必要から、金属カバーを拡径して切れ目を広げながらガスセンサに取付けている。この場合、金属カバーを広げすぎると塑性変形し、ガスセンサへの取付け力が低下したりカバーの形状が変形するので、作業を慎重に行う必要がある。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、ガスセンサの周囲に保護部材を容易かつ変形させずに脱着可能に固定でき、ガスセンサへ異物が直接当たることを抑制したガスセンサ及びガスセンサの保護部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガスセンサは、軸線方向に延びるセンサ素子と、前記センサ素子の径方向周囲を取り囲んで該センサ素子を保持する主体金具と、前記主体金具に直接又は間接的に取り付けられ、前記ガスセンサの外表面を構成すると共に、前記主体金具よりも後端側に延びる筒状の外表部材と、前記外表部材の外周の固定領域に脱着可能に固定される筒状の保護部材と、を備え、前記保護部材は、第1の円弧部と、第2の円弧部と、前記固定領域に接して固定される固定部と、を有し、前記固定部を前記固定領域に固定して前記保護部材を前記外表部材の外周に固定した状態で、前記軸線方向から見たとき、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部は、前記外表部材の外面の全周の合計90%以上を覆うことを特徴とする。
【0008】
このガスセンサによれば、保護部材が、第1の円弧部と、第2の円弧部とを有するので、第1の円弧部と第2の円弧部とを合わせるようにして固定部を介して外表部材に固定することで、外表部材の外面の全周の合計90%以上を覆うことができる。
その結果、外表部材の外面を確実に覆ってガスセンサへ異物が直接当たることを抑制できる。又、第1の円弧部と第2の円弧部とを合わせるようにして外表部材の外面に取り付ければよいので、1つの円弧部を無理に広げる必要がなく、保護部材を容易かつ変形させずに脱着可能に固定できる。
保護部材が飛石等で破損した場合も同様に、容易にガスセンサから取り外すことができる。
【0009】
本発明のガスセンサにおいて、前記保護部材は、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部のそれぞれに別個の前記固定部が接続され、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部が分離可能となる2つの部材からなっていてもよい。
このガスセンサによれば、保護部材を容易かつ変形させずに脱着可能にガスセンサに固定することができる。
【0010】
本発明のガスセンサにおいて、前記保護部材は、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部が接続部にて接続され、前記接続部が径方向に回動して前記第1の円弧部と前記第2の円弧部の径方向の間隔を拡縮可能であってもよい。
このガスセンサによれば、保護部材を容易かつ変形させずに脱着可能にガスセンサに固定することができる。
【0011】
本発明のガスセンサにおいて、前記保護部材を前記外表部材の外周に固定した状態で、前記軸線方向から見たとき、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部が前記外表部材の外面の全周を覆ってもよい。
このガスセンサによれば、外表部材の外面の全周(100%)を隙間なく覆うことができ、外表部材の保護効果が確実になる。
【0012】
本発明のガスセンサにおいて、前記外表部材の外面は径方向内側に縮径する縮径部を有し、前記縮径部が前記固定領域となり、前記固定部は前記縮径部に嵌合されて固定されてもよい。
このガスセンサによれば、外表部材に設けられた縮径部を利用して保護部材を固定することができる。
【0013】
本発明のガスセンサにおいて、前記外表部材は、自身の内部へ外気を導入する通気孔を有し、前記外表部材の内面に、前記通気孔を塞ぐようにして通気性を有するフィルタが配置され、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部は、前記通気孔の径方向周囲を覆うと共に、前記通気孔と外部とを連通させる隙間を前記軸線方向に前記通気孔と異なる位置に有してもよい。
このガスセンサによれば、第1の円弧部と第2の円弧部で通気孔を閉塞することなく、隙間Gから通気孔と外部とを連通させることができる。
【0014】
本発明のガスセンサにおいて、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部の中心角の合計が360度を超えてもよい。
このガスセンサによれば、第1の円弧部と前記第2の円弧部が周方向に重なるので、外表部材の外面の全周(100%)を隙間なく覆うことができ、外表部材の保護効果が確実になる。
【0015】
本発明のガスセンサにおいて、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部の直径が同一であり、前記第1の円弧部の周方向の一方の端部は前記外表部材の外表面を覆い、他方の端部は前記第2の円弧部の周方向の一方の端部を覆っており、前記第2の円弧部の周方向の前記一方の端部は前記外表部材の外表面を覆い、他方の端部は前記第1の円弧部の周方向の前記一方の端部を覆ってもよい。
このガスセンサによれば、第1の円弧部と第2の円弧部の両端同士を互い違いに重ねるので、第1の円弧部と、第2の円弧部とを合わせる際、両円弧部の両端が干渉せず、組み付け作業が容易になる。又、第1の円弧部と第2の円弧部の両端同士が重なるので、外表部材の外面の全周(100%)を隙間なく覆うことができ、外表部材の保護効果が確実になる。
【0016】
本発明のガスセンサにおいて、前記第1の円弧部の直径が前記第2の円弧部の直径より大きく、前記第1の円弧部の中心角が180度を超え、前記第2の円弧部の周方向両側の端部は前記第1の円弧部に覆われてもよい。
このガスセンサによれば、第1の円弧部と、第2の円弧部とを合わせる際、両円弧部の両端が干渉せず、組み付け作業が容易になる。
【0017】
本発明のガスセンサにおいて、前記固定部は弾性を有し、前記軸線方向から見たとき、前記固定部は中心角が180度を超え、開口部を有する円弧状であって、前記開口部の周方向の最小間隔が、前記固定領域の外径よりも小さく、かつ前記開口部の両端縁には、前記最小間隔より周方向の間隔が広がるガイド部が形成されていてもよい。
このガスセンサによれば、ガイド部を外表部材の被固定部に押し当てると、ガイド部が被固定部の外面に沿って拡径するので、固定部を被固定部に当てる際のガイドとなる。
【0018】
本発明のガスセンサの保護部材は、軸線方向に延びるセンサ素子と、前記センサ素子の径方向周囲を取り囲んで該センサ素子を保持する主体金具と、前記主体金具に直接又は間接的に取り付けられ、前記センサ素子の外表面を構成すると共に、前記主体金具よりも後端側に延びる筒状の外表部材とを備えたガスセンサの保護部材であって、前記保護部材は、前記外表部材の外周の固定領域に脱着可能に固定され、かつ、第1の円弧部を有する第1の保護部材と、第2の円弧部を有する第2の保護部材と、前記外表部材に接して固定される固定部と、を有し、前記第1の保護部材と前記第2の保護部材とが分離可能な2つの部材であり、前記固定部を前記外表部材に固定して前記保護部材を前記外表部材の外周に固定した状態で、前記軸線方向から見たとき、前記第1の円弧部と前記第2の円弧部は、前記外表部材の外面の全周の合計90%以上を覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、ガスセンサの周囲に保護部材を容易かつ変形させずに脱着可能に固定でき、ガスセンサへ異物が直接当たることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係るガスセンサの軸線方向に沿う断面図である。
図2】保護部の分解斜視図である。
図3】保護部をガスセンサに固定した状態の斜視図である。
図4】保護部を加締め部に固定する方法を示す断面図である。
図5】保護部を加締め部に固定した状態を示す断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係るガスセンサにおける保護部の分解斜視図である。
図7】保護部をガスセンサに固定した状態の斜視図である。
図8】保護部を加締め部及び溶接部に固定した状態を示す断面図である。
図9】第1の円弧部と第2の円弧部が接続部にて接続された実施形態を軸線方向から見た図である。
図10】第1の円弧部の直径が第2の円弧部の直径より大きい実施形態を軸線方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)1の軸線O方向に沿う全体断面図、図2は保護部210,220の分解斜視図、図3は保護部210,220をガスセンサ1に固定した状態の斜視図、図4は保護部210を加締め部C1に固定する方法を示す断面図、図5は保護部210,220を加締め部C1、C2に固定した状態を示す断面図、である。
なお、図4図5図3のA-A線に沿う(つまり加締め部C2の後端側から先端側に向かって見た)断面図である。
このガスセンサ1は、自動車や各種内燃機関の排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサである。
【0022】
図1において、ガスセンサ1は、排気管に固定されるためのねじ部139が外表面に形成された筒状の主体金具138と、軸線O方向(ガスセンサ1の長手方向:図中上下方向)に延びる板状形状をなすセンサ素子10と、主体金具138に取り付けられて後端側に延び、センサ素子10の後端部を覆う筒状の外筒144と、外筒144を覆う筒状の保護外筒190と、外筒144と保護外筒190の間に挟持されたフィルタ180と、後述する2つの保護部材210,220と、その他の部材と、を備えている。
センサ素子10の後端側の両面に複数の電極パッド(図示せず)が並んでいる。一方、センサ素子10の先端のガス検出部11は、アルミナ等の多孔質保護層14で覆われている。
【0023】
主体金具138は、ステンレスから構成され、軸線方向に貫通する貫通孔154を有し、貫通孔154の径方向内側に突出する棚部152を有する略筒状形状に構成されている。この貫通孔154には、センサ素子10の先端部を自身の先端よりも突出させるように当該センサ素子10が配置されている。さらに、棚部152は、軸線方向に垂直な平面に対して傾きを有する内向きのテーパ面として形成されている。
【0024】
なお、主体金具138の貫通孔154の内部には、センサ素子10の径方向周囲を取り囲む状態で略環状形状のアルミナ製のセラミックホルダ151、粉末充填層153(以下、滑石リング153ともいう)、および上述のセラミックスリーブ106がこの順に先端側から後端側にかけて積層されている。
また、セラミックスリーブ106と主体金具138の後端部140との間には、加締めパッキン157が配置されている。なお、主体金具138の後端部140は、加締めパッキン157を介してセラミックスリーブ106を先端側に押し付けるように、加締められている。
【0025】
一方、図1に示すように、主体金具138の先端側(図1における下方)外周には、センサ素子10の突出部分を覆うと共に、複数の孔部を有する金属製(例えば、ステンレスなど)二重のプロテクタである、外部プロテクタ142および内部プロテクタ143が溶接等によって取り付けられている。
【0026】
主体金具138の後端側外周には、外筒144が固定されている。また、後端側端子金具40の後端側にはそれぞれリード線146が接続され、リード線146は後端側セパレータ95の後端側へ引き出されている。
そして、外筒144の後端部144e(図1における上方)の開口部には、後端側セパレータ95から引き出された6本のリード線146(図1では2本のみを表示)が挿通されるリード線挿通孔170hが形成された、ゴム製のグロメット170が配置されている。後端部144eは径方向内側に加締められ、グロメット170が外筒144の内側に固定されている。
【0027】
また、主体金具138の後端部140より突出されたセンサ素子10の後端側(図1における上方)には、先端側セパレータ90が配置され、外表面から径方向外側に突出する鍔部90pが備えられている。先端側セパレータ90は、鍔部90pが保持部材169を介して外筒144に当接することで、外筒144の内部に保持される。
又、グロメット170と先端側セパレータ90の間に後端側セパレータ95が配置され、グロメット170の弾性力により後端側セパレータ95が先端側セパレータ90を先端側へ押圧する。これにより、鍔部90pが保持部材169側へ押し付けられ、先端側セパレータ90及び後端側セパレータ95は、外筒144の内部に互いに接続された状態で(つまり、軸線O方向に分離せずに)保持されている。
【0028】
先端側セパレータ90には4個の先端側端子金具30が保持され、後端側セパレータ95にも4個の後端側端子金具40が保持されている。
そして、先端側端子金具30と、後端側端子金具40とはそれぞれ先端側と後端側に配置されて互いに接続されている。詳細には、先端側端子金具30の後端側が筒状部33をなし、この筒状部33に後端側端子金具40の先端の先細りの筒部を嵌挿するようになっている。
そして、センサ素子10の後端側に配置された上述の電極パッドには、先端側端子金具30がそれぞれ電気的に接続され、センサ出力信号が先端側端子金具30、後端側端子金具40からリード線146を介して外部に取り出されると共に、後端側端子金具40、先端側端子金具30を介してヒータ部に電力を供給するようになっている。
なお、後端側端子金具40の後端側にリード線146が圧着されており、リード線146はグロメット170のリード線挿通孔170hを通して外部に引き出されている。
【0029】
センサ素子10自身は公知の構成であり、図示はしないが酸素イオン透過性の固体電解質体と1対の電極とを有するガス検出部と、ガス検出部を加熱して一定温度に保持するヒータ部とを備えている。又、ガス検出部の1対の電極は、酸素濃度の基準となる外気に晒される基準電極と、被検出ガス中に晒される検知電極とからなる。
そして、外筒144の内部に収容されたセンサ素子10に外気を導入するため、外筒144の側面には第1通気孔144hが周方向に等間隔で複数個設けられている。又、外筒144の径方向外側には、第1通気孔144hを塞ぐようにして、通気性を有する樹脂製のフィルタ180が配置されている。さらに、フィルタ180の外側には、フィルタ180を径方向外側から囲むようにして、金属製の保護外筒190が嵌められている。
保護外筒190にも、フィルタ180を介して第1通気孔144hと重なるように第2通気孔190hが設けられ、各通気孔144h、190h及びフィルタ180を介してガスセンサ1の内部に外気を導入及び排出可能になっている。
フィルタ180は、撥水性を有し、通気は可能であるが水分の浸入を防止できるものである。
【0030】
そして、保護外筒190の外側からフィルタ180を介して径方向内側に加締められた加締め部C1,C2により、外筒144、フィルタ180及び保護外筒190が一体に固定されている。
本例では、加締め部は、それぞれ第1通気孔144h及び第2通気孔190hよりも先端側の加締め部C1と、第1通気孔144h及び第2通気孔190hよりも後端側の加締め部C2の2個形成されている。
加締め部C1,C2は、保護外筒190の周囲の外面よりも径方向内側に縮径する縮径部をなす。
【0031】
次に、本発明の特徴部分である保護部材210,220について説明する。
図2に示すように、保護部材は、第1の円弧部212を有する第1の保護部材210と、第2の円弧部222を有する第2の保護部材220が分離可能な2つの部材からなる。保護部材210,220はいずれも金属板からなり、径方向に弾性的に撓むことが可能である。
詳しくは第1の保護部材210は、軸線O方向から見て略半円状で後端側へ向かってテーパ状に拡径する第1の円弧部212と、第1の円弧部212の先端側に一体に接続されて第1の円弧部212よりも中心角が大きい固定部214とを備える。固定部214は軸線方向から見たときC字状をなし、その開口部の両端縁には周方向外側へ向かって間隔が広がるガイド部214a、214bが形成されている。
第2の保護部材220は、第1の保護部材210を径方向に反転させ、さらに軸線O方向に反転させたものであり、第1の保護部材210と同一部材である。従って、第2の保護部材220は、第1の保護部材210と同様に、第2の円弧部222及び固定部224を一体に備える。又、固定部224の開口部の両端縁にガイド部224a、224bを有する。
【0032】
そして、図2図3に示すように、第1の保護部材210の固定部214のガイド部214a、214bを、径方向外側から加締め部C1に押し当てると、固定部214が弾性的に拡径して加締め部C1に入り込み、加締め部C1の外周面を締め付けるように嵌合して固定される。
つまり、図4に示すように、本例では、第1の保護部材210の固定部214は中心角θ1が180度を超え、開口部の周方向の最小間隔D2が、加締め部C1の外径D1よりも小さく、かつガイド部214a、214bの周方向の間隔が最小間隔D2より広がっている。
これにより、ガイド部214a、214bを加締め部C1に押し当てると、ガイド部214a、214bが加締め部C1の外面に沿って拡径するので、固定部214を加締め部C1に挿入する際のガイドとなる。
第2の保護部材220も同様に、その固定部224のガイド部224a、224bを、径方向外側から加締め部C2に押し当てると、固定部224が弾性的に拡径して加締め部C2に入り込み、加締め部C2の外周面を締め付けるように嵌合して固定される。
【0033】
このようにして、図5に示すように、軸線O方向から見たとき、第1の円弧部212と、第2の円弧部222とが合わさるようにして、保護外筒190の外面の全周の合計90%以上を覆うようになる。
なお、本例では、第1の円弧部212と第2の円弧部222とは同一形状で、かつ中心角θ2(図4)がいずれも180度である。そして、図5に示すように、第1の円弧部212の両端と第2の円弧部222の両端とがぴったりと接しており、保護外筒190の外面の全周(100%)を覆っている。
【0034】
以上のように、保護部材210,220が、第1の円弧部212と、第2の円弧部222とを有するので、第1の円弧部212と第2の円弧部222とを合わせるようにして加締め部C1、C2に固定することで、保護外筒190の外面の全周の合計90%以上を覆うことができる。
その結果、保護外筒190の外面を確実に覆ってガスセンサ1へ異物が直接当たることを抑制できる。又、第1の円弧部212と第2の円弧部222とを合わせるようにして保護外筒190の外面に取り付ければよいので、1つの円弧部を無理に広げる必要がなく、保護部材210,220を容易かつ変形させずに脱着可能に固定できる。
保護部材210,220が飛石等で破損した場合も同様に、容易にガスセンサ1から取り外すことができる。
なお、センサ素子10への異物の衝突ではなく、ガスセンサ1の本体への異物衝突を抑制している。つまり、本例では、保護部材210,220は、ガスセンサ1の構成部材である保護外筒190を保護し、さらに、フィルタ180への直接的な異物衝突を抑制する。
【0035】
加締め部C1、C2が特許請求の範囲の「固定領域」及び「縮径部」に相当する。
保護外筒190が特許請求の範囲の「外表部材」に相当する。
なお、「外表部材」は、主体金具138に直接又は間接的に取り付けられ、センサ素子10の外表面を構成すると共に、主体金具138よりも後端側に延びる筒状である。つまり、図2に示すように、主体金具138に直接取り付けられた外筒144のうち、保護外筒190で覆われない領域R1(つまり、軸線O方向に保護外筒190と主体金具138の間の領域)も、「外表部材」に相当する。
【0036】
又、図1に示すように、本実施形態では、第1の円弧部212と第2の円弧部222は、第2通気孔190hの径方向周囲を覆うと共に、第2通気孔190hと外部とを連通させる隙間Gを軸線O方向に第2通気孔190hと異なる位置に有する。具体的には、隙間Gは第1の円弧部212の先端縁と、第2の円弧部222の後端縁に形成されている。一方。第1の円弧部212と第2の円弧部222は、軸線O方向に第2通気孔190hと重なっていると共に、径方向に第2通気孔190hと離間している(図5)。
このようにして、第1の円弧部212と第2の円弧部222で第2通気孔190hを閉塞することなく、隙間Gから第2通気孔190hと外部とを連通させることができる。
第2通気孔190hが特許請求の範囲の「通気孔」に相当する。
【0037】
次に、図6図8を参照し、本発明の第2の実施形態に係るガスセンサ1Bについて説明する。
なお、本発明の第2の実施形態に係るガスセンサ1Bは、保護部230,240が異なること以外は、第1の実施形態に係るガスセンサ1と同一の構成であるので、同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図6は本発明の第2の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)1Bにおける保護部230,240の分解斜視図、図7は保護部230,240をガスセンサ1Bに固定した状態の斜視図、図8は保護部230,240を加締め部C2及び溶接部W1に固定した状態を示す断面図、である。
なお、図8は加締め部C2の後端側から先端側に向かって見た断面図である。
【0038】
図6に示すように、保護部材は、第1の円弧部232を有する第1の保護部材230と、第2の円弧部242を有する第2の保護部材240が分離可能な2つの部材からなる。保護部材230,240はいずれも金属板からなり、径方向に弾性的に撓むことが可能である。
詳しくは第1の保護部材230は、軸線O方向から見て略半円状で軸線O方向にストレートに延びる第1の円弧部232と、第1の円弧部232の先端側に一体に接続されて第1の円弧部232よりも中心角が大きい固定部234とを備える。固定部234は軸線方向から見たときC字状をなし、その開口部の両端縁には周方向外側へ向かって間隔が広がるガイド部234a、234bが形成されている。
第2の保護部材240は、第1の保護部材230を径方向に反転させ、さらに軸線O方向に反転させたものであり、第1の保護部材230と同一部材である。従って、第2の保護部材240は、第1の保護部材230と同様に、第2の円弧部242及び固定部244を一体に備える。又、固定部244の開口部の両端縁にガイド部244a、244bを有する。
【0039】
ここで、外筒144の先端は、主体金具138の周囲に全周溶接により取り付けられる溶接部W1を形成している。そして、溶接部W1の外面は、その周囲の外筒144の外面よりも径方向内側に縮径する縮径部を形成している。
そして、図6図7に示すように、第1の保護部材230の固定部234のガイド部234a、234bを、径方向外側から溶接部W1に押し当てると、固定部234が弾性的に拡径して溶接部W1に入り込み、溶接部W1の外周面を締め付けるように嵌合して固定される。
第2の保護部材240も同様に、その固定部244のガイド部244a、244bを、径方向外側から加締め部C2に押し当てると、固定部244が弾性的に拡径して加締め部C2に入り込み、加締め部C2の外周面を締め付けるように嵌合して固定される。
このようにして、図7に示すように、第1の円弧部232と、第2の円弧部242とは、保護外筒190の外面だけでなく、外筒144の領域R1の外面をも覆っている。
【0040】
このようにして、図8に示すように、軸線O方向から見たとき、第1の円弧部232と、第2の円弧部242とが合わさるようにして、保護外筒190及び領域R1の外面の全周の合計90%以上を覆うようになる。
その結果、保護外筒190及び領域R1の外面を確実に覆ってガスセンサ1へ異物が直接当たることを抑制できる。又、第1の円弧部232と第2の円弧部242とを合わせるようにして保護外筒190及び領域R1の外面に取り付ければよいので、1つの円弧部を無理に広げる必要がなく、保護部材230,240を容易かつ変形させずに脱着可能に固定できる。
【0041】
なお、本例では、第1の円弧部232と第2の円弧部242とは同一形状で、かつ中心角θ2(図4に相当)がいずれも180度である。一方、第1の円弧部232と第2の円弧部242の内径D3は、保護外筒190及び領域R1の外径D1よりも十分に大きい。
これにより、図8に示すように、第1の円弧部232と第2の円弧部242とを、それぞれの軸心AX1,AX2を図8の上下方向にずらして配置することができる。
その結果、第1の円弧部232と第2の円弧部242の両端同士を互い違いに重ねることができる。具体的には、第1の円弧部232の周方向の一方の端部232e1は外表部材(保護外筒190及び領域R1)の外表面を覆い、他方の端部232e2は第2の円弧部242の周方向の一方の端部242e2を覆う。又、第2の円弧部242の周方向の一方の端部242e2は外表部材(保護外筒190及び領域R1)の外表面を覆い、他方の端部242e1は第1の円弧部232の周方向の一方の端部232e1を覆う。
なお、第1の円弧部232と第2の円弧部242の内径D3は「同一」であるが、「同一」は、公差を許容するものであり、例えば±0.1mm程度の差を許容する。第1の実施形態の第1の円弧部212と第2の円弧部222の寸法差も同様である。又、図8の符号232i、242iは、それぞれ第1の円弧部232と第2の円弧部242の内面を表す。
【0042】
以上のように、第1の円弧部232と第2の円弧部242の両端同士を互い違いに重ねるので、第1の円弧部232と、第2の円弧部242とを合わせる際、両円弧部232、242の両端が干渉せず、組み付け作業が容易になる。
又、第1の円弧部232と第2の円弧部242の両端同士が重なるので、外表部材(保護外筒190及び領域R1)の外面の全周(100%)を隙間なく覆うことができ、外表部材の保護効果が確実になる。
溶接部W1が特許請求の範囲の「固定領域」及び「縮径部」に相当する。
【0043】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、図9に示すように、第1の円弧部252と第2の円弧部256が接続部259にて接続されて分離不能であって、保護部材250が1つの部材からなっていてもよい。接続部259は、例えば蝶番や、樹脂製の可撓部材からなり、接続部259が径方向に回動して第1の円弧部252と第2の円弧部256の径方向の間隔を拡縮可能である。
これにより、第1の実施形態と同様、軸線O方向から見たとき、第1の円弧部252と第2の円弧部256とが合わさるようにして、保護外筒190の外面の全周の合計90%以上を覆うことができる。又、接続部259を回動させながら第1の円弧部252と第2の円弧部256とを合わせるようにして取り付ければよいので、1つの円弧部を無理に広げる必要がなく、1つの保護部材250を容易かつ変形させずに脱着可能に固定できる。
【0044】
なお、第1の円弧部252と第2の円弧部256の周方向の一端には、第1の実施形態と同様、それぞれ固定部254、258が一体に接続されると共に、固定部254、258の端縁にガイド部254a、258aを有する。
そして、第1の円弧部252と第2の円弧部256の周方向の他端同士が接続部259にて接続されている。
【0045】
又、例えば、図10に示すように、第1の円弧部262の直径が第2の円弧部272の直径より大きく、第1の円弧部262の中心角θ2が180度を超えるようにしてもよい。そして、第1の実施形態と同様に各円弧部262,272を保護外筒190に組み付けた状態で、第2の円弧部272の周方向両側の端部272e1、272e2は第1の円弧部262に覆われている。
これにより、第2の実施形態と同様、第1の円弧部262と、第2の円弧部272とを合わせる際、両円弧部262、272の両端が干渉せず、組み付け作業が容易になる。
又、第1の円弧部262と第2の円弧部272の両端同士が重なるので、外表部材(保護外筒190)の外面の全周(100%)を隙間なく覆うことができ、外表部材の保護効果が確実になる。
【0046】
センサ素子は、上述の板状素子に限らず、筒状でもよい。又、加締め部および溶接部の位置や個数も上記に限定されない。
又、ガスセンサとしては、酸素センサ、全領域ガスセンサの他、NOxセンサが挙げられる。
【符号の説明】
【0047】
1、1B ガスセンサ
10 センサ素子
138 主体金具
144 外筒
144h 第1通気孔
180 フィルタ
190 外表部材(保護外筒)
190h 通気孔(第2通気孔)
210~250 保護部材
212、232、252、262 第1の円弧部
222、242、256、272 第2の円弧部
214、224、234、244、254,258 固定部
214a、214b、224a、224b、234a、234b、244a、244b、254a、258a ガイド部
232e1 第1の円弧部の周方向の一方の端部
232e2 第1の円弧部の周方向の他方の端部
242e1 第2の円弧部2の周方向の他方の端部
242e2 第2の円弧部2の周方向の一方の端部
259 接続部
O 軸線
C1,C2 固定領域、縮径部(加締め部)
W1 固定領域(溶接部)
R1 外表部材(外筒の保護外筒で覆われない領域)
G 隙間
θ1 固定部の中心角
θ2 円弧部の中心角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10