(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】人の姿勢及び視覚行動を判定する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/113 20060101AFI20230816BHJP
G02C 13/00 20060101ALN20230816BHJP
A61B 5/11 20060101ALN20230816BHJP
G06T 7/00 20170101ALN20230816BHJP
【FI】
A61B3/113
G02C13/00
A61B5/11 120
G06T7/00 660Z
(21)【出願番号】P 2020502369
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2018069508
(87)【国際公開番号】W WO2019016267
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-21
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オレリー・ル・カン
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・フリッカー
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0299360(US,A1)
【文献】特表2017-507370(JP,A)
【文献】特表2015-515291(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110892311(CN,A)
【文献】米国特許第07742623(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0034032(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の視覚及び姿勢行動を判定する方法であって、
- 前記人の複数の像が受信される人像受信ステップS1と、
- 前記人が前記複数の像の各像にいる状況を表す状況データを判定するように、前記人の前記複数の像が解析される状況判定ステップS2と、
- 前記人の少なくとも1つの眼球運動パラメータを判定するように、前記人の前記複数の像が解析される解析ステップS3と、
- 前記少なくとも1つの眼球運動パラメータ及び前記状況データに少なくとも基づいて、前記人の前記視覚及び姿勢行動が判定される姿勢及び視覚行動判定ステップS4と、 - 基準姿勢及び視覚行動データが受信される基準姿勢及び視覚行動データ受信ステップS5であって、前記基準姿勢及び視覚行動データは、基準人に適合されている特定の処方箋のレンズを着用する前記基準人の適切な姿勢及び視覚行動に対応する、基準姿勢及び視覚行動データ受信ステップS5と、
- レンズ利用異常を判定するように、基準姿勢及び視覚行動データと前記人の前記姿勢及び視覚行動とが比較される比較ステップS6であって、前記レンズ利用異常は、前記レンズの不適切な利用及び/又は前記人に適合されていないレンズの利用を意味する、比較ステップS6と、を含む方法。
【請求項2】
- 前記人の処方箋データが受信される処方箋データ受信ステップS7と、
- 前記人の前記処方箋データ並びに前記姿勢及び視覚行動に少なくとも基づいて、着用者に適合されている光学機能が判定される光学機能判定ステップS8と、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光学機能は、少なくとも1つの状況で前記人に適合されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記人に適合されている屈折機能は、前記光学機能判定ステップ中に判定される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記人に適合されているエレクトロクロミック機能は、前記光学機能判定ステップ中に判定される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記人像受信ステップ中に受信される前記人の前記複数の像は、少なくとも1つの遠隔像データベースから受信される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記人像受信ステップ中に受信される前記人の前記複数の像は、前記人の顔の少なくとも一部を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記人の顔の前記一部は、少なくとも前記人の眼を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記人像受信ステップ中に受信される前記人の前記複数の像は、前記人の静止像及び/又は映像を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの眼球運動パラメータは、少なくとも前記人の注視方向と関連する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの眼球運動パラメータは、少なくとも前記人の注視距離と関連する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの眼球運動パラメータは、少なくとも前記人の頭部の位置及び向きと関連する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記状況データは、前記像の前記人によって実行される活動と関連する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記状況データは、前記像の前記人の視覚的環境と関連する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
- 前記状況判定ステップ前に、前記少なくとも1つの状況を表す状況データが受信される状況データ受信ステップS20と、
- 前記状況判定ステップ後に、前記少なくとも1つの状況における前記少なくとも1人の人の複数の像が選択される像選択ステップS21と
を更に含み、前記少なくとも1人の人の前記選択された複数の像は、前記解析ステップ中に解析される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
- 前記状況判定ステップ及び前記解析ステップ前に、眼科用単焦点レンズを着用しているか又は眼科用レンズを着用していない前記人の前記像が選択される像選択ステップS11
を更に含み、前記状況判定ステップ及び前記解析ステップは、前記選択された像において実行される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
人のための眼科用レンズを製造する方法であって、
- 請求項3~16のいずれか一項に記載の方法を用いて、眼科用レンズの光学機能が判定される光学機能判定ステップと、
- 光学レンズが製造される製造ステップS14と、
を含む方法。
【請求項18】
プロセッサにアクセス可能な命令の1つ又は複数の記憶された列を含むコンピュータプログラムであって、前記プロセッサによって実行される場合、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を前記プロセッサに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項19】
請求項18に記載のコンピュータプログラムの命令の1つ又は複数の列を保持するコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の姿勢及び視覚行動を判定する方法、本発明の方法によって得られる、人に適合されている光学レンズ、本発明の方法によって得られる光学機能に基づいて光学機能が適合されるプログラマブル光学レンズ並びに本発明の方法に対応する命令の1つ又は複数の記憶された列を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、アイウェア機器を有することを望む人は、アイケア専門家のところに行く。
【0003】
アイケア専門家は、注文依頼書を光学実験室に送信することにより、光学実験室でアイウェア機器を注文する。この注文依頼書は、人データ、例えば人の処方箋、眼鏡フレームデータ(例えば、人が選択している眼鏡フレームのタイプ)及びレンズデータ(例えば、人が選択している光学レンズのタイプ)を含む。
【0004】
光学実験室は、注文依頼書を受信し、この注文依頼書を光学レンズ設計者ソフトウェアに送信する。この光学レンズ設計者ソフトウェアは、注文依頼書に含まれるデータの一部を使用して、人に供給されるべき光学レンズの設計を計算する。光学レンズ設計者ソフトウェアによって判定された光学設計を光学実験室に送信し、計算された設計に基づいて光学レンズを製造する。
【0005】
製造された光学レンズを処理して、注文依頼書に応じた光学処理を追加することができる。
【0006】
その後、光学レンズをアイケア専門家に送る。光学レンズをアイケア専門家に送り、眼鏡フレームに装着する前に光学レンズを眼鏡フレームに適合するように縁取りし得る。
【0007】
現在の光学レンズ配送方法には、幾つかの欠点がある。
【0008】
近年、新しい光学設計が考案されている。これらの新しい光学設計は、人に応じて一層カスタマイズされる。このようなカスタマイズ光学設計を計算するために、レンズ設計者は、人に関するデータを一層必要とする。文言「光学設計」は、眼科用レンズの屈折機能を定義することができるパラメータのセットを示す。一般的に、人に関するデータを非常に標準的な環境で測定又は評価する。典型的に、アイケア専門家は、平均的な状態に対応する標準検査のセットを行う。例えば、遠方視力処方を判定する場合、アイケア専門家は、約5mの距離で文字を認識する検査下の人を有する。
【0009】
近方視力処方を判定する場合、アイケア専門家は、約40cmで文章を読む着用者を有し得る。
【0010】
通常、視力検査の大部分は、カスタマイズされない。
【0011】
光学機能をカスタマイズする例は、欧州特許出願公開第1834206号明細書に開示のように、与えられるべき光学機能を適合させるように点滅光を見る場合、人の相対的な頭部及び眼の動きを考慮している。
【0012】
人の頭部及び眼の相対的な動きの測定は、通常、標準的な環境(例えば、アイケア専門実験室)で行われる。
【0013】
例示のように、着用者パラメータの大部分の判定は、非常に標準的な環境で行われる。
【0014】
光学設計の最近の進歩は、パラメータを判定する状態のカスタマイズが光学機能の影響を与えるところまで光学機能のより多くのカスタマイズを可能にする。
【0015】
従って、カスタマイズパラメータ(例えば、人の姿勢及び視覚行動)を判定する方法であって、実施することが容易且つ迅速な方法の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、このような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的のため、本発明は、人の姿勢及び視覚行動を判定する方法であって、
- 人の複数の像が受信される人像受信ステップと、
- 人が複数の像の各像にいる状況を表す状況データを判定するように、人の複数の像が解析される状況判定ステップと、
- 人の少なくとも1つの眼球運動パラメータを判定するように、人の複数の像が解析される解析ステップと、
- 少なくとも1つの眼球運動パラメータ及び状況データに少なくとも基づいて、人の姿勢及び視覚行動が判定される姿勢及び視覚行動判定ステップと
を含む方法を提案する。
【0018】
有利には、本発明の方法は、状況に関して判定される人の眼球運動パラメータに基づいて姿勢及び視覚行動を判定することを可能にする。典型的に、異なる視覚的環境において又は異なる活動若しくは特定の活動を人に実行させながら眼球運動パラメータを判定する。
【0019】
典型的に、人の像は、人自身によって与えられ、大体の場合に人がいる状況又は人が特定の光学機能を有することを望む状況を表す像であり得る。
【0020】
例えば、人が外でチェスをすることを望む場合、本発明の方法で受信される像は、外でチェスをするこの人の像であり得る。眼球運動パラメータを、与えられた像に基づいて判定し得、人の姿勢及び視覚行動を判定するために眼球運動パラメータを使用し得る。有利には、姿勢及び視覚行動の正確な判定を可能にする「日常生活」で眼球運動パラメータを判定する。更に、本発明の方法は、人の生活において異なる時間に対応する像を受信する場合、時間と共に眼球運動パラメータの展開を比較することができる。
【0021】
その上、本発明の方法は、姿勢及び視覚行動に基づいて、レンズ利用異常(例えば、光学レンズの不適切な利用及び/又は人に適合されていない光学レンズの利用)を判定することができる。
【0022】
更に、本発明の方法は、姿勢及び視覚行動に基づいて、着用者に適合されている光学機能を判定することができる。
【0023】
単独又は組み合わせで考慮可能な更なる実施形態によれば、
- 方法は、
- 基準姿勢及び視覚行動データが受信される基準姿勢及び視覚行動データ受信ステップであって、基準姿勢及び視覚行動データは、基準人に適合されている特定の処方箋のレンズを着用する基準人の適切な姿勢及び視覚行動に対応する、基準姿勢及び視覚行動データ受信ステップと、
- レンズ利用異常を判定するように、基準姿勢及び視覚行動データと人の姿勢及び視覚行動とが比較される比較ステップであって、レンズ利用異常は、レンズの不適切な利用及び/又は人に適合されていないレンズの利用を意味する、比較ステップと
を更に含み、及び/又は
- 方法は、
- 人の処方箋データが受信される処方箋データ受信ステップと、
- 人の処方箋データ並びに姿勢及び視覚行動に少なくとも基づいて、着用者に適合されている光学機能が判定される光学機能判定ステップと
を更に含み、及び/又は
- 光学機能は、少なくとも1つの状況で人に適合されており、及び/又は
- 人に適合されている屈折機能は、光学機能判定ステップ中に判定され、及び/又は
- 人に適合されているエレクトロクロミック機能は、光学機能判定ステップ中に判定され、及び/又は
- 人像受信ステップ中に受信される人の複数の像は、少なくとも1つの遠隔像データベースから受信され、及び/又は
- 人像受信ステップ中に受信される人の複数の像は、人の顔の少なくとも一部、例えば少なくとも人の眼)を含み、及び/又は
- 人像受信ステップ中に受信される人の複数の像は、人の静止像及び/又は映像を含み、及び/又は
- 少なくとも1つの眼球運動パラメータは、少なくとも人の注視方向と関連し、及び/又は
- 少なくとも1つの眼球運動パラメータは、少なくとも人の注視距離と関連し、及び/又は
- 少なくとも1つの眼球運動パラメータは、少なくとも人の頭部の位置及び向きと関連し、及び/又は
- 状況データは、像における人によって実行される活動と関連し、及び/又は
- 状況データは、像における人の視覚的環境と関連し、及び/又は
- 方法は、
- 状況判定ステップ前に、少なくとも1つの状況を表す状況データが受信される状況データ受信ステップと、
- 状況判定ステップ後に、少なくとも1つの状況における少なくとも1人の人の複数の像が選択される像選択ステップと
を更に含み、
- 少なくとも1人の人の選択された複数の像は、解析ステップ中に解析され、且つ/又は
- 方法は、状況判定ステップ及び解析ステップ前に、眼科用単焦点レンズを着用しているか又は眼科用レンズを着用していない人の像が選択される像選択ステップを更に含み、状況判定ステップ及び解析ステップは、選択された像において実行され、且つ/又は
- 方法は、光学機能判定ステップ中に判定される光学機能が、プログラマブルレンズの光学機能を制御するために配置されたプログラマブルレンズデバイス制御器に送信される光学機能送信ステップを更に含み、且つ/又は
- 方法は、光学機能判定ステップ中に判定される光学機能を有する光学レンズが製造される製造ステップを更に含む。
【0024】
本発明は、人のための眼科用レンズを製造する方法であって、
- 本発明による方法を用いて、眼科用レンズの光学機能が判定される光学機能判定ステップと、
- 光学レンズが製造される製造ステップと
を含む方法にも関する。
【0025】
本発明は、本発明の方法によって得られる、人に適合されている光学レンズに更に関する。
【0026】
本発明は、プロセッサにアクセス可能な命令の1つ又は複数の記憶された列を含むコンピュータプログラム製品であって、プロセッサによって実行される場合、本発明による方法のステップをプロセッサに少なくとも実行させるコンピュータプログラム製品に更に関する。
【0027】
本発明は、コンピュータ可読記憶媒体に記録されているプログラムを有するコンピュータ可読記憶媒体であって、このプログラムは、本発明による方法のステップをコンピュータに少なくとも実行させる、コンピュータ可読記憶媒体にも関する。
【0028】
本発明は、命令の1つ又は複数の列を記憶し、且つ本発明による方法のステップを少なくとも実行するように適合されているプロセッサを含むデバイスに更に関する。
【0029】
ここで、本発明の実施形態について、下記の図面を参照してごく一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明による方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に例示のように、本発明による人の姿勢及び視覚行動を判定する方法は、
- 人像受信ステップS1、
- 状況判定ステップS2、
- 解析ステップS3、
- 姿勢及び視覚行動判定ステップS4
を含む。
【0032】
人像受信ステップS1中に人の複数の像が受信される。
【0033】
人像受信ステップ中に受信される像は、遠隔像データベースから受信され得る。
【0034】
例えば、この方法は、遠隔像データベース(例えば、ソーシャルネットワークデータベース)に接続して人の像を受信するステップを含み得る。
【0035】
典型的に、人は、少なくとも1つのソーシャルネットワーク又は個人データベースで入手できるその人の像及び/又は映像にアクセスできる。
【0036】
人は、記憶媒体(例えば、ハードドライブ、USBキー、DVD、ブルーレイ又は任意の既知の記憶手段)を介して像を供給し得る。
【0037】
像受信ステップ中に受信される像は、絵などの静止像及び/又は映像を含み得る。像は、二次元像又は奥行き情報を更に含む三次元像であり得る。
【0038】
方法の精度を向上させるために、好ましくは、人の顔の少なくとも一部は、像供給ステップ中に供給される像で見ることができる。例えば、少なくとも人の眼は、この像で見ることができる。
【0039】
本発明の方法は、人に関する人データが供給される人データ供給ステップS10を更に含み得る。人データは、例えば、人が選択している眼鏡フレームのタイプ、形状、寸法並びに/又は人の瞳孔間距離及び/若しくは着用状態パラメータに関する情報若しくは人の姿勢及び視覚行動を判定するのに有用である、人に関する任意の情報を含み得る。
【0040】
図1に例示のように、本発明の方法は、像選択ステップS11を更に含み得る。像選択ステップS11中に供給像の少なくとも一部が選択される。
【0041】
例えば、人の顔の少なくとも一部、例えば人の眼を含む像が選択される。
【0042】
眼科用単焦点レンズを着用しているか又は眼科用レンズを着用していない人の像が像選択ステップ中に選択され得る。
【0043】
像選択ステップは、像が供給された情報に基づき得る。例えば、各像は、像を撮影した日付の表示を含み得る。人が眼科用累進多焦点レンズを着用し始めた日付を知ると、像選択ステップは、その日付に基づいて像を選択し、人が眼科用累進多焦点レンズを着用し始めた日付前の像のみを保持するステップを含み得る。
【0044】
像選択ステップは、絵における人を識別する像解析ステップを含み得る。
【0045】
例えば、人の顔の少なくとも一部が像にあることを確認するために、像を解析して、像の顔を検出する。例えば、米国特許第6697502号明細書に開示の顔検出方法を使用し得る。
【0046】
人のうちの1人で顔が検出されたことを確認するために、顔認識方法、例えばW.Y.Zhao,R.Chellappa,Image-based Face Recognition:Issues and Methods,Image Recognition and Classification,Ed.B.Javidi,M.Dckker,2002,pp.375-402に開示の方法を使用し得る。
【0047】
方法は、選択された像に対する雑音低減を含み得る。
【0048】
状況判定ステップS2中、人が複数の像の各像にいる状況を表す状況データを判定するように、人の複数の像が解析される。
【0049】
状況判定ステップは、特に顔認識が像選択ステップの一部でない場合、顔認識を含み得る。
【0050】
状況データは、像における人によって実行される活動と関連し得る。
【0051】
例えば、状況データは、人によって実行される活動を直接識別し得るか、又はこのような活動を判定することができるデータ、例えばデータベース及び/又はルックアップテーブルから人の活動を判定することができる表示であり得る。
【0052】
人活動データは、人自身により、例えば活動のリストで活動を選択することにより直接供給され得る。
【0053】
更に、人活動データは、像の解析に基づいて判定され得る。
【0054】
識別される活動は、例えば、運転、スポーツ、ゴルフの実施、テニスの実施、アーチェリーの実施、読書、歩行、パラグライディングなどであり得るが、これらに限定されない。
【0055】
HAR(人間活動認識)における大部分の研究者は、監視分類アルゴリズムを使用する。このアルゴリズムをラベル付きサンプルで訓練して、分類モデルを生成する。次に、このモデルを使用して入力データを分類する。調査から、最も人気のあるアルゴリズムは、決定木、k最近傍、ナイーブベイズ、サポートベクターマシン及びニューラルネットワークである。
【0056】
人間活動認識方法の例は、SULONG,GHAZALI,and AMMAR MOHAMMEDALI,“RECOGNITION OF HUMAN ACTIVITIES FROM STILL IMAGE USING NOVEL CLASSIFIER.”Journal of Theoretical&Applied Information Technology 71.1(2015)に記載されている。
【0057】
状況データは、像における人の視覚的環境と関連し得る。
【0058】
例えば、状況データは、人の視覚行動に影響を与える像における人の環境の任意のパラメータと関連し得る。
【0059】
例えば、状況データは、像における人によって受信された光のスペクトル特性及び強度と関連し得る。
【0060】
更に、状況データは、人の環境の温度及び/若しくは湿度、人の環境に含まれるアレルゲン及び/若しくは汚染物質の量及び/若しくはタイプ、並びに/又は人の位置特定の表示、例えば屋内又は屋外及び/若しくは人の活動を実行する場所、起伏及び/若しくは水への近傍などと関連し得る。
【0061】
解析ステップS3中、人の少なくとも1つの眼球運動パラメータを判定するように、複数の像が解析される。
【0062】
人の眼球運動パラメータは、眼球運動、例えば注視低下、及び/又はサッカード、例えば頭部と眼との調整、及び/又は輻輳、及び/又は瞼の開き、及び/又は瞳孔径、及び/又はまばたき頻度、及び/又はまばたきの持続時間、及び/又はまばたきの強さ、及び/又は人の頭部の位置及び/又は向き、例えば読書距離を含み得る。
【0063】
解析ステップ中に収集されたデータを後処理して、人の優位眼などの更なる情報を判定するか、又は人の活動のタイプ及び/若しくは人の環境に応じて人によって最も使用されている光学レンズの領域を識別することができる。
【0064】
例えば、各像に対して、人によって観察される点までの距離を評価してから、その近接を判定する。活動がこの場合に遠視力である場合、近接は、0と等しくなるように設定される。
【0065】
状況が既知である二次元像で2つの物体間の距離を計算するために奥行きを考慮する。
【0066】
典型的に、二次元像で2つの要素(例えば、眼及び物体)間の距離を判定するために、2つの要素の輪郭を検出する輪郭探索を実行してから、2つの要素の形状の重心間のユークリッド測定を行う。
【0067】
像の奥行きを考慮する距離を計算するために、三次元情報を取得してユークリッド距離を変換する方法を使用し得る。このような方法は、D.Gonzales-Aguilera,The Photogrammetric Record 23(122):208-227(June 2008)による「From 2D TO 3D Through Modelling Based On A Single Image」に開示されている。
【0068】
距離を判定する方法は、像に存在する要素のサイズを知る必要がある場合がある。例えば、人の両眼が像に存在し、人の瞳孔間距離が既知である場合、この要素を基準要素として使用し得る。
【0069】
像に存在する既知のサイズの任意の要素(例えば、クレジットカード、眼鏡フレーム、スマートフォン)を、距離を計算する基準要素として使用し得る。
【0070】
従って、本発明の方法は、供給像で既知の寸法の要素を識別するステップを更に含み得る。
【0071】
注視距離に加えて、人の頭部角度及び注視方向を像で評価し得る。
【0072】
例えば、米国特許出願公開第20070268295号明細書に開示の方法を用いて人の姿勢を判定し得、その判定から頭部角度を推測し得る。
【0073】
静止像からの注視方向推定:Krystian Radlak;Michal Kawulok;Bogdan Smolka;Natalia Radlak;Multimedia Signal Processing(MMSP),2014 IEEE 16th International Workshopに開示の方法を用いて注視方向を判定し得る。
【0074】
姿勢及び視覚行動判定ステップS4中、少なくとも1つの眼球運動パラメータ及び状況データに少なくとも基づいて、人の姿勢及び視覚行動が判定される。
【0075】
図1に例示のように、本発明の方法は、基準姿勢及び視覚行動データが受信される基準姿勢及び視覚行動データ受信ステップS5を更に含み得る。基準姿勢及び視覚行動は、基準人に適合されている特定の処方箋の光学レンズを着用する人の適切な姿勢及び視覚行動に対応する。
【0076】
基準姿勢及び視覚行動は、特定の活動を行い、この特定の活動に適合されている特定の処方箋の光学レンズを着用する人の適切な姿勢及び視覚行動に対応し得る。
【0077】
比較ステップS6中、光学レンズ利用異常を判定するように、基準姿勢及び視覚行動データと人の姿勢及び視覚行動とが比較される。
【0078】
レンズ利用異常は、光学レンズの不適切な利用及び/又は人に適合されていない光学レンズの利用を意味する。
【0079】
図1に例示のように、本発明の方法は、処方箋データ受信ステップS7を更に含み得る。
【0080】
処方箋データ受信ステップ中、人の処方箋に関する処方箋データが受信される。
【0081】
人の処方箋は、例えば、人の眼の前に位置するレンズにより、人の視力障害を矯正するために、眼科医によって判定された屈折力、乱視及び必要に応じて追加の光学特性のセットである。例えば、追加の累進多焦点レンズのための処方箋は、屈折力及び遠視力点における乱視(係数及び軸)の値並びに必要に応じて追加の値を含む。
【0082】
例えば、人の処方箋は、正視者の処方箋であり得る。
【0083】
光学機能判定ステップS8中、人の処方箋データ及び姿勢及び視覚行動に少なくとも基づいて、人に適合されている光学機能が判定される。
【0084】
光学機能判定は、光学機能の所定のリスト中で最適な光学機能を選択するステップを含み得る。
【0085】
次に、選択された光学機能は、処方箋データ、少なくとも1つの眼球運動パラメータ及び状況データに基づいてカスタマイズされ得る。
【0086】
本発明の実施形態によれば、人の処方箋データ並びに姿勢及び視覚行動に基づく最適化アルゴリズムを用いて、光学機能が判定され得る。
【0087】
本発明の意味では、光学機能は、光学レンズを通過する光線上の光学レンズの効果を各注視方向に与える機能に対応する。
【0088】
光学機能は、屈折機能、エレクトロクロミック機能、光吸収、偏光機能、コントラスト能力の向上などを含み得る。
【0089】
屈折機能は、注視方向に応じたレンズ屈折力(平均屈折力、乱視など)に対応する。本発明による方法を用いて、屈折機能が最適化され得る。
【0090】
例えば、人に与えられるべき眼科用レンズが累進多焦点レンズである場合、近方視力及び遠方視力ゾーンの相対位置、及び/又は設計のタイプ、及び/又は累進の長さ、及び/又は累進多焦点通路のサイズ、及び/又は異なる視力ゾーンの幅の間で光学機能の様々なパラメータを最適化するために、本発明による方法が使用され得る。
【0091】
本発明の意味では、累進多焦点レンズは、遠方視力ゾーン、近方視力ゾーン及びこれらのゾーン間の累進多焦点通路(又は経路)を有する眼科用レンズである。累進多焦点通路は、境界線又はプリズム飛びなしで、遠方視力ゾーンから近方視力ゾーンへの漸進的屈折力累進を与える。
【0092】
本発明の意味では、累進多焦点レンズの累進の長さは、適合クロスと、遠方視力点における平均球面に対して85%の差を平均球面が有する経度線上の点との間のレンズ表面で垂直に(着用状態で)測定された距離に対応する。
【0093】
文言「光学設計」は、眼科用レンズの屈折機能を定義することができるパラメータのセットを示す、眼科分野における当業者から知られている広く使用されている文言であり、各眼科用レンズ設計者は、特に眼科用累進多焦点レンズのために設計者自身の設計を有する。例に関して、眼科用累進多焦点レンズ「設計」は、全ての距離で明確に見える老眼の能力を元に戻すだけでなく、また全ての生理的視覚機能(例えば、中心視覚、中心窩外視覚、両眼視力)を最適に顧慮し、望ましくない乱視を最小化するように累進多焦点表面を最適化した結果である。例えば、累進多焦点レンズ設計は、
- 日常生活活動中にレンズ着用者によって使用される主注視方向(経度線)に沿った屈折力プロファイル、
- レンズの側面上の、即ち主注視方向から離れている屈折力(平均屈折力、乱視など)の分布
を含む。
【0094】
これらの光学特性は、眼科用レンズ設計者によって定義及び計算された「設計」の一部であり、累進多焦点レンズで与えられる。例えば、人が、眼を動かす人のカテゴリ若しくは頭部を動かす人のカテゴリ又は任意の中間カテゴリである場合、眼(水平又は垂直)の注視方向の範囲を測定することによって検出することができる。
【0095】
人が眼を動かす人のカテゴリである場合、累進多焦点ハード設計が提案され、着用者が頭部を動かす人である場合、ソフト設計が提案される一方、中間カテゴリの場合、ハード及びソフト設計間の妥協が提案されるべきである。
【0096】
カテゴリは、注視方向の最小/最大又は差異に基づいて判定され得る。
【0097】
本発明による方法を用いて、人に供給されるべき光学レンズの領域のサイズを最適化し得る。実際に、本発明による方法は、人によって使用される光学レンズの領域のサイズに関する情報を提供することができる。各人は、異なるサイズの領域を使用し得、従って光学レンズのサイズを人のニーズに一致するように調整し得る。
【0098】
光学レンズの最適化は、眼鏡フレームにおける光学レンズの位置の最適化であり得る。特に、人の眼に対する光学レンズの基準点(例えば、プリズム基準点)の位置は、本発明による方法によって最適化され得る。
【0099】
例えば、遠方視力に対する注視方向を異なる状況で判定し、平均注視方向をとり、眼鏡フレーム形状でこの平均注視方向の影響を判定し、この位置で累進多焦点レンズの適合クロスを位置決めすることができる。
【0100】
本発明の実施形態によれば、光学レンズの透過機能を最適化することができる。本発明の意味では、透過機能は、波長の範囲にわたって平均透過を各注視方向に与える機能に対応する。波長の範囲にわたる平均透過は、光学系を通して透過される波長の対応する範囲内で入射光の強度の百分率に対応する。
【0101】
例えば、異なる透過機能(例えば、人の環境に適合されている0~4のカテゴリ(ISO8980-3))を提案するか、又は特定のUV遮断解決策(例えば、Crizal UV ARコーティング)又は偏光レンズを提案するために、状況データを使用し得る。
【0102】
本発明の実施形態によれば、光学機能判定ステップは、人に対する特定のタイプのレンズの処方箋の形態をとることができる。例えば、解析ステップが、視覚疲労を示す赤色発光に対して頻繁な催涙を示す場合、視覚強度を減少するレンズを人に提案することができる。レンズの例は、Essilor antifatigue(商標)である。
【0103】
本発明の実施形態によれば、眼鏡フレーム(例えば、人が像において着用している眼鏡フレームと同じタイプの眼鏡フレーム)に適合するように製造及び縁取りされた標準的な光学レンズを最適化するために、本発明による方法が使用され得る。
【0104】
本発明の実施形態によれば、光学機能は、少なくとも1つの状況で人に適合されている。
【0105】
図1に例示のように、本発明の方法は、状況判定ステップ前に、状況データ受信ステップS20を更に含み得る。
【0106】
状況データ受信ステップS20中、少なくとも1つの状況を表す、例えば人の選択に対応する状況データが受信される。
【0107】
第2の像選択ステップS21中、状況データに対応する像が選択される。解析ステップ中、少なくとも1つの状況における少なくとも1人の人の複数の像が解析される。
【0108】
有利には、光学機能は、例えば、特定の活動及び/又は特定の視覚的環境に対する特定の状況に最適化される。
【0109】
本発明は、人のための眼科用レンズを製造する方法であって、
- 本発明による方法を用いて、眼科用レンズの光学機能が判定される光学機能判定ステップと、
- 光学レンズが製造される製造ステップS14と
を含む方法にも関する。
【0110】
本発明は、本発明の方法によって得られる、人に適合されている光学レンズにも関する。
【0111】
代わりに、調整可能レンズ(例えば、プログラマブルレンズ)の光学機能を最適化するために、本発明による最適化方法が使用され得る。
【0112】
従って、本発明の方法は、光学機能判定ステップ中に判定される光学機能が、プログラマブルレンズの光学機能を制御するために配置されたプログラマブルレンズデバイス制御器に送信される光学機能送信ステップS12を更に含み得る。
【0113】
本発明は、一般的な発明概念の限定なく(特に、装着型検出デバイスは、頭部装着型デバイスに限定されない)、実施形態を用いて上述されている。
【0114】
ごく一例として与えられ、添付の特許請求の範囲によってのみ決定される本発明の範囲を限定するように意図されない上述の例示的な実施形態を参照する際、多くの更なる修正形態及び変更形態が当業者に示唆される。
【0115】
特許請求の範囲において、用語「含む」は、他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「1つ(a)」又は「1つ(an)」は、複数を排除しない。異なる特徴を互いに異なる従属請求項で述べるという単なる事実は、これらの特徴の組み合わせを有利に使用できないことを意味しない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。