(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】感圧性接着剤ならびにその調製および使用
(51)【国際特許分類】
C09J 183/07 20060101AFI20230816BHJP
C09J 183/02 20060101ALI20230816BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20230816BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230816BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230816BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J183/02
C09J183/05
C09J11/06
C09J7/38
C09J5/00
(21)【出願番号】P 2020504686
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(86)【国際出願番号】 US2019041917
(87)【国際公開番号】W WO2020055505
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-07-04
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウォンポム、チャン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポキュポナ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユンヨン
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-139515(JP,A)
【文献】国際公開第2016/139955(WO,A1)
【文献】特開昭60-190458(JP,A)
【文献】特開2010-37557(JP,A)
【文献】特開平5-98239(JP,A)
【文献】特表2004-506778(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107873042(CN,A)
【文献】特開平4-311765(JP,A)
【文献】特表2006-520838(JP,A)
【文献】特表2019-522686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感圧性接着剤組成物であって、
(A)単位式(R
1R
2
2SiO
1/2)
a(R
2
2SiO
2/2)
bを含む、100~70重量部のビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンであって、式中、各R
1が、独立して選択される、2~6個の炭素原子のアルケニル基であり、各R
2が、独立して選択される、脂肪族不飽和を含まない一価ヒドロカルビル基であり、下付き文字aが、2の平均値を有し、下付き文字bが、1以上であり、数(a+b)が、前記ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンに、100,000~1,000,000の重量平均分子量と、前記ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて、0超~0.1%未満の総アルケニル含有量とを提供するのに十分な値を有する、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンと、
(B)単位式(R
3
3SiO
1/2)
e(SiO
4/2)
fを含む、1~30重量部のポリオルガノシリケート樹脂であって、式中、各R
3が、独立して選択される、1~10個の炭素原子を有する一価ヒドロカルビル基であり、下付き文字eおよびfが、モル比(e/f)<0.9であり、かつ数(e+f)が前記樹脂に8,000~25,000の重量平均分子量を与えるのに十分な値を有するような値を有し、出発材料(B)が、前記ポリオルガノシリケート樹脂の重量に基づいて、1%を超えるシラノール含有量をさらに含む、ポリオルガノシリケート樹脂と、
(C)単位式(HR
4
2SiO
1/2)
g(R
4
3SiO
1/2)
h(R
4
2SiO
2/2)
i(HR
4SiO
2/2)
jを含む、0.01~5重量部のポリオルガノ水素シロキサンであって、
式中、各R
4が、独立して選択される、1~10個の炭素原子のアルキル基であり、下付き文字g、h、i、およびjが、g≧0であり、h≧0であり、数(g+h)が2の平均値を有し、i≧0であり、j>0であり、かつ数(g+j)>0であり、前記数(g+j)が、前記ポリオルガノ水素シロキサンに少なくとも1%のシリコン結合水素原子を提供するのに十分な値を有するような値を有する、ポリオルガノ水素シロキサンと、
(D)10~5,000ppmの白金族金属を前記組成物に提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
(E)前記組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて100重量部当たり、0.05超~5.0重量部のヒドロシリル化反応抑制剤と、
(F)前記組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて、10重量%~90重量%の有機溶媒と、を含み、
前記出発材料の全てが、シリコン結合水素含有量対脂肪族不飽和基含有量のモル比が前記組成物中で0.7~20になるように選択される、感圧性接着剤組成物。
【請求項2】
出発材料(A)が、50~99%の出発材料A-1)および1%~50%の出発材料A-2)を含み、出発材料A-2)が、単位式:(R
1R
2
2SiO
1/2)
a(R
2
2SiO
2/2)
b(R
1R
2SiO
2/2)
cを有し、式中、下付き文字cが、1以上であり、数(a+b+c)が、出発材料A-2)に100,000~1,000,000の重量平均分子量を提供するのに十分な値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
各R
1が、ビニル、アリル、またはヘキセニルであり、各R
2が、メチルまたはフェニルであり、各R
3が、メチルであり、各R
4が、メチルまたはフェニルである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
出発材料(A)が、A-1-1)ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、またはA-1-1)前記ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンとA-2-1)ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)との組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
出発材料(B)が、11,000~25,000の重量平均分子量、1%超~5%のシラノール含有量、および0.5≦(e/f)<0.9を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
下付き文字g=0であり、下付き文字h=2であり、下付き文字i=0であり、出発材料(C)が単位式C-2):(R
4
3SiO
1/2)
2(HR
4SiO
2/2)
jを有し、式中、下付き文字jが30~300である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
出発材料(D)が、出発材料(D)の重量に基づいて、5,000ppmの白金を提供するのに十分な量で、ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン中に溶解される白金錯体を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
出発材料(E)が、E-1)アセチレンアルコール、E-2)シリル化アセチレン化合物、またはE-3)E-1)およびE-2)の両方を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
E-1)が、エチニルシクロヘキサノールを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
E-2)が、[(1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ]トリメチルシランを含む、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
出発材料(E)が、E-3)E-1)およびE-2)の両方である、請求項8~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
出発材料(F)が、トルエンを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
液晶デバイスまたは有機発光ダイオードデバイス等のディスプレイデバイスを保護するウレタンフォームを転写するためのキャリアテープを形成するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
1)デバイス対向表面と、前記デバイス対向表面とは反対にある反対表面とを有するウレタンフォーム基材を提供することと、
2)請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物を、プラスチックフィルムの表面と前記ウレタンフォーム基材の前記反対表面との間に挟むことと、
3)前記組成物を硬化させて感圧性接着剤を形成し、それにより前記ウレタンフォーム基材の前記反対表面上にキャリアテープを形成することと、
任意選択により、4)前記ウレタンフォーム基材の前記デバイス対向表面をディスプレイデバイスの背面に接着することと、
任意選択により、5)前記ウレタンフォーム基材の前記反対表面から前記キャリアテープを除去することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35U.S.C.§119(e)に基づき2018年9月14日に出願された米国仮特許出願第62/731113号の利益を主張する。米国仮特許出願第62/731113号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
感圧性接着剤組成物は、ヒドロシリル化反応を介して硬化可能である。組成物を硬化させることによって調製された感圧性接着剤は、異なる基材に選択的に接着する。感圧性接着剤組成物、およびそれを硬化させることによって調製された感圧性接着剤は、ディスプレイデバイスの加工中に保護を提供するキャリアテープで使用するために電子工学用途において有用である。
【背景技術】
【0003】
OLEDデバイスおよびLCDデバイス等のディスプレイデバイスの製造および使用の過程において、ディスプレイデバイスを、衝撃、例えば、地面への落下から保護する必要がある。ウレタンフォームは、ディスプレイデバイスの衝撃吸収材である。しかしながら、ウレタンフォームは、柔らかくて薄く、単独で取り扱うことができない。ウレタンフォームをディスプレイデバイスに転写するには、キャリアテープが必要になる。
【発明の概要】
【0004】
感圧性接着剤組成物は、
(A)単位式(R1R2
2SiO1/2)a(R2
2SiO2/2)bを含む、100~70重量部のビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンであって、式中、各R1が、独立して選択される、2~6個の炭素原子のアルケニル基であり、各R2が、独立して選択される、脂肪族不飽和を含まない一価ヒドロカルビル基であり、下付き文字aが、2の平均値を有し、下付き文字bが、1以上であり、数(a+b)が、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンに、100,000~1,000,000の重量平均分子量と、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて、0超~0.1%未満の総アルケニル含有量とを提供するのに十分な値を有する、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンと、
(B)単位式(R3
3SiO1/2)e(SiO4/2)fを含む、1~30重量部のポリオルガノシリケート樹脂であって、
式中、各R3が、独立して選択される、1~10個の炭素原子を有する一価ヒドロカルビル基であり、下付き文字eおよびfが、モル比(e/f)<0.9であり、かつ数(e+f)が樹脂に8,000Da~25,000Daの重量平均分子量を与えるのに十分な値を有するような値を有し、ポリオルガノシリケート樹脂が、ポリオルガノシリケート樹脂の重量に基づいて、1%を超えるシラノール含有量をさらに含む、ポリオルガノシリケート樹脂と、
(C)単位式(HR4
2SiO1/2)g(R4
3SiO1/2)h(R4
2SiO2/2)i(HR4SiO2/2)jを含む、0.01~5重量部のポリオルガノ水素シロキサンであって、
式中、各R4が、独立して選択される、1~10個の炭素原子のアルキル基であり、下付き文字g、h、i、およびjが、g≧0であり、h≧0であり、数(g+h)が2の平均値を有し、i≧0であり、j>0であり、かつ数(g+j)>0であり、数(g+j)が、ポリオルガノ水素シロキサンに少なくとも1%のシリコン結合水素原子を提供するのに十分な値を有するような値を有する、ポリオルガノ水素シロキサンと、
(D)10~5,000重量ppmの白金族金属を組成物に提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
(E)組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて100重量部当たり、0.05超~5.0重量部のヒドロシリル化反応抑制剤と、
(F)組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて、10重量%~90重量%の有機溶媒と、を含み、
出発材料の全てが、シリコン結合水素含有量対脂肪族不飽和基含有量のモル比が組成物中で0.7~20になるように選択される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本明細書に記載の感圧性接着剤組成物を使用したOLEDデバイスを加工する方法を示す図である。
【0006】
参照番号
101 キャリアテープ
102 OLEDデバイス
103 ウレタンフォーム基材
104 デバイス対向表面
105 反対表面
106 表面
107 プラスチックフィルム
108 感圧性接着剤
109 キャリアテープ
110 背面
111 OLEDデバイス
112 第2のプラスチックフィルム
113 両面テープ
【0007】
感圧性接着剤組成物は、
(A)単位式(R1R2
2SiO1/2)a(R2
2SiO2/2)bを含む、100~70重量部のビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンであって、式中、各R1が、独立して選択される、2~6個の炭素原子のアルケニル基であり、各R2が、独立して選択される、脂肪族不飽和を含まない一価ヒドロカルビル基であり、下付き文字aが、2の平均値を有し、下付き文字bが、1以上であり、数(a+b)が、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンに、100,000~1,000,000の重量平均分子量と、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて、0超~0.1%未満の総アルケニル含有量とを提供するのに十分な値を有する、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンと、
(B)単位式(R3
3SiO1/2)e(SiO4/2)fを含む、1~30重量部のポリオルガノシリケート樹脂であって、
式中、各R3が、独立して選択される、1~10個の炭素原子を有する一価ヒドロカルビル基であり、下付き文字eおよびfが、モル比(e/f)<0.9であり、かつ数(e+f)が樹脂に8,000Da~25,000Daの重量平均分子量を与えるのに十分な値を有するような値を有する、ポリオルガノシリケート樹脂と、
(C)単位式(HR4
2SiO1/2)g(R4
3SiO1/2)h(R4
2SiO2/2)i(HR4SiO2/2)jを含む、0.01~5重量部のポリオルガノ水素シロキサンであって、
式中、各R4が、独立して選択される、1~10個の炭素原子のアルキル基であり、下付き文字g、h、i、およびjが、g≧0であり、h≧0であり、数(g+h)が2の平均値を有し、i≧0であり、j>0であり、かつ数(g+j)>0であり、数(g+j)が、ポリオルガノ水素シロキサンに少なくとも1%のシリコン結合水素原子を提供するのに十分な値を有するような値を有する、ポリオルガノ水素シロキサンと、
(D)10~5,000ppmの白金族金属を組成物に提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
(E)組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて100重量部当たり、0.05超~5.0重量部のヒドロシリル化反応抑制剤と、
(F)組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて、10重量%~90重量%の有機溶媒と、を含み、
出発材料の全ては、全体のSiH/Viモル比が組成物中で0.7~20になるように選択される。
【0008】
出発材料(A)ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサン
感圧性接着剤組成物中の出発材料(A)は、単位式A-1):(R1R2
2SiO1/2)a(R2
2SiO2/2)bを含むビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンであって、式中、各R1が、独立して選択される、2~6個の炭素原子のアルケニル基であり、各R2が、独立して選択される、脂肪族不飽和を含まない一価ヒドロカルビル基であり、下付き文字aが、2の平均値を有し、下付き文字bが、1以上であり、数(a+b)が、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンに、100,000~1,000,000の重量平均分子量を提供するのに十分な値を有し、下付き文字aが、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンの総アルケニル含有量がビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて0超~0.1%未満であるような値を有する、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンを含む。
【0009】
単位式A-1)において、各R1は、独立して選択される、2~6個の炭素原子のアルケニル基である。代替として、各R1は、ビニル、アリル、またはヘキセニルであってもよい。代替として、各R1は、ビニルであってもよい。ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンの総アルケニル含有量は、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて、0超~0.1%未満である。
【0010】
単位式A-1)において、各R2は、独立して選択される、脂肪族不飽和を含まない一価ヒドロカルビル基である。代替として、各R2は、アルキルまたはアリールであってもよい。代替として、各R2は、メチルまたはフェニルであってもよい。代替として、各R2は、メチルであってもよい。
【0011】
単位式A-1)において、下付き文字aは、2の平均値を有し、下付き文字bは、1以上であり、数(a+b)は、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンに、100,000~1,000,000の重量平均分子量と、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて0%超~1%未満のアルケニル含有量とを提供するのに十分な値を有する。代替として、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンは、500,000~1,000,000、代替として500,000超~1,000,000、代替として500,000超~900,000、および代替として600,000~800,000、ならびに代替として700,000のMwを有してもよい。代替として、下付き文字bは、4,000~6,000であってもよく、代替として、下付き文字bは、4,500~5,500であってもよい。出発材料A-1)は、A-1-1)ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、A-1-2)ビス-フェニル,メチル,ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、A-1-3)ビス-ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、A-1-4)ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、A-1-5)ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、またはA-1-6)A-1-1)、A-1-2)、A-1-3)、A-1-4)、およびA-1-5)のうちの2つ以上の組み合わせによって例示される。出発材料A-1)は、出発材料(A)の総重量に基づいて、50%~100%、代替として50%~99%の量で存在してもよい。
【0012】
出発材料(A)は、任意選択により、単位式A-2):(R1R2
2SiO1/2)a(R2
2SiO2/2)b(R1R2SiO2/2)cを含む1つ以上のペンダントアルケニル基を有するビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンであって、式中、R1、R2、ならびに下付き文字aおよびbが上述の通りであり、下付き文字cが1以上であり、数(a+b+c)が、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンに、100,000~1,000,000の重量平均分子量を提供するのに十分な値を有し、数(a+c)が、単位式A-2)のビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンの総アルケニル含有量が単位式A-2)のビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて0超~1%未満であるような値を有する、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサン、をさらに含んでもよい。代替として、式A-2)において、下付き文字bは、4,000~6,000であってもよく、代替として、下付き文字bは、4,500~5,500であってもよい。代替として、下付き文字cは、0~50であってもよく、代替として、下付き文字cは、5~30であってもよい。代替として、式A-2)のビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンは、500,000~1,000,000、代替として500,000超~1,000,000、代替として500,000超~900,000、および代替として600,000~800,000、ならびに代替として700,000のMwを有してもよい。出発材料A-2)は、出発材料(A)の総重量に基づいて、0~50%、代替として1%~50%も量で存在してもよい。
【0013】
出発材料A-2)は、A-2-1)ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)によって例示される。代替として、出発材料(A)は、A-1-1)またはA-1-1)およびA-2-1)の組み合わせであってもよい。
【0014】
対応するオルガノハロシランの加水分解および縮合または環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化等の、出発材料(A)としての使用に適切なポリジオルガノシロキサを調製する方法は、当技術分野において既知である。
【0015】
感圧性接着剤組成物中の出発材料(A)の量は、組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて、100~70重量部である。代替として、出発材料(A)の量は、同じ基準で、100~80重量部、代替として90~80重量部、代替として90~70重量部、および代替として100~90重量部であってもよい。
【0016】
出発材料(B)ポリオルガノシリケート樹脂
出発材料(B)として有用なポリオルガノシリケート樹脂は、単位式B-1):
(R3
3SiO1/2)e(SiO4/2)fを含む。
【0017】
単位式B-1)において、各R3は、独立して選択される、1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基である。代替として、各R3は、アルキル、アルケニル、およびアリールからなる群から選択されてもよい。代替として、各R3は、メチル、ビニル、およびフェニルから選択されてもよい。代替として、R3基の少なくとも3分の1、代替として少なくとも3分の2分は、メチル基である。代替として、各R3は、メチルであってもよい。
【0018】
単位式B-1)において、下付き文字eおよびfは、モル比(e/f)<0.9、代替として0.5<(e/f)<0.9になるような値を有する。数(e+f)は、ポリオルガノシリケート樹脂に、8,000Da~25,000Da、代替として11,000Da~25,000Da、代替として18,000Da~25,000DaのMwを与えるのに十分な値を有する。代替として、下付き文字eは、50<e<200になるような値を有してもよい。代替として、下付き文字fは、50<f<200になるような値を有してもよい。ポリオルガノシリケート樹脂は、ベンゼン、トルエン、キシレン、およびヘプタン等の液体炭化水素によって例示される、出発材料(F)として本明細書に記載のもの等の溶媒中、または低粘度直鎖および環状ポリジオルガノシロキサン等の液体有機ケイ素化合物中で可溶性である。
【0019】
調製するとき、ポリオルガノシリケート樹脂は、上述の式中の単位を含み、ポリオルガノシリケート樹脂は、さらに、シリコン結合ヒドロキシル(シラノール)基を有する単位を含み、式Si(OSiR3
3)4のネオペンタマーを含んでもよく、式中、R3は、上述の通りであり、例えば、ネオペンタマーは、各R3がメチルである場合に、テトラキス(トリメチルシロキシ)シランであってもよい。29SiNMR分光法を使用して、ヒドロキシル含有量ならびにMおよびQ単位のモル比を測定し、ここで、この比は、ネオペンタマーからMおよびQ単位を除いて、{M(樹脂)}/{Q(樹脂)}として表される。M:Q比は、ポリオルガノシリケート樹脂の樹脂部分のトリオルガノシロキシ基(M単位)の総数の、樹脂部分中のシリケート基(Q単位)の総数に対するモル比を表す。
【0020】
上述のポリオルガノシリケート樹脂のMwは、存在するR3で表される炭化水素基の種類を含む様々な要因に依存する。ポリオルガノシリケート樹脂のMwは、ネオペンタマーを表すピークが測定から除外されている場合、GPCを使用して測定された重量平均分子量を指す。適切なGPC技術は、本明細書の参考実施例に記載されている。
【0021】
米国特許第8,580,073号の段3、行5~段4、行31、および米国特許公報第2016/0376482号の段落[0023]~[0026]は、本明細書に開示される感圧性接着剤組成物における使用に適切なポリオルガノシリケート樹脂であるポリオルガノシリケート(例えば、MQ)樹脂を開示するために、参照により本明細書に組み込まれる。ポリオルガノシリケート樹脂は、対応するシランの共加水分解等の任意の適切な方法によって、またはシリカヒドロゾル反応法によって調製することができる。ポリオルガノシリケート樹脂は、Daudtらに対する米国特許第2,676,182号、Rivers-Farrellらに対する米国特許第4,611,042号、およびButlerらに対する米国特許第4,774,310号において開示される過程等のシリカヒドロゾル反応過程によって調製してもよい。上述のDaudtらの方法は、酸性条件下で、シリカヒドロゾルを、トリメチルクロロシラン等の加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン、またはそれらの混合物と反応させることと、M-単位およびQ-単位を有するコポリマーを回収することとを伴う。代替として、ポリオルガノシリケート樹脂は、キャッピングされていなくてもよい。得られたポリオルガノシリケート樹脂は、概して、2%~5%のヒドロキシル基(シラノール含有量)を含有する。
【0022】
ポリオルガノシリケート樹脂を調製するために使用する中間体は、トリオルガノシランおよび4つの加水分解性置換基を有するシランまたはアルカリ金属シリケートであってもよい。トリオルガノシランは、式R3
3SiX1を有してもよく、R3は、上述の通りであり、X1は、ハロゲン、アルコキシ、またはヒドロキシル等の加水分解性置換基を表す。4つの加水分解性置換基を有するシランは、式SiX2
4を有し得、各X2は、ハロゲン、アルコキシ、またはヒドロキシルである。適切なアルカリ金属シリケートには、ナトリウムシリケートが含まれる。
【0023】
上述のように調製したポリオルガノシリケート樹脂は、典型的には、シリコン結合ヒドロキシル基、すなわち式HOSi3/2および/またはHOR3
2SiO1/2をさらに含む。ポリオルガノシリケート樹脂は、29SiNMRで測定した、1%超~5%のシリコン結合ヒドロキシル基(シラノール含有量)を含み得、適切な技術は、本明細書の参考実施例に記載されている。感圧性接着剤組成物に使用するポリオルガノシリケート樹脂は、1%超、代替として2%超、代替として2.5%超、代替として1%超~5%、代替として2%~5%、代替として2%超~5%、代替として2.5%~5%、および代替として2.5%超~5%のシラノール含有量を含有してもよい。
【0024】
ポリオルガノシリケート樹脂の量は、組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて1~30重量部である。代替として、樹脂の量は、同じ基準で、1~20、代替として5~30、代替として1~25、代替として5~25、および代替として5~20重量部であってもよい。
【0025】
出発材料(C)架橋剤
出発材料(C)は、0.01~5重量部のポリオルガノ水素シロキサンである。出発材料(C)は、感圧性接着剤組成物中で架橋剤として作用し得る。
【0026】
出発材料(C)は、分子当たり、少なくとも2つ、代替として少なくとも3つのシリコン結合水素原子を有し得る。出発材料(C)は、単位式C-1):
(HR4
2SiO1/2)g(R4
3SiO1/2)h(R4
2SiO2/2)i(HR4SiO2/2)jを含む。
【0027】
単位式C-1)において、各R4は、独立して選択される、1~10個の炭素原子のアルキル基である。代替として、各R4は、アルキルおよびアリールからなる群から選択されてもよい。代替として、各R4は、メチルおよびフェニルから選択されてもよい。代替として、各R4は、メチルであってもよい。
【0028】
単位式C-1)において、下付き文字g、h、i、およびjは、g≧0であり、h≧0であり、数(g+h)が2の平均値を有し、i≧0であり、j>0であり、かつ数(g+j)>0であり、数(g+j)が、ポリオルガノ水素シロキサンに、少なくとも1%のシリコン結合水素原子を提供するのに十分な値を有するような値を有する。代替として、下付き文字gは、0であってもよい。代替として、下付き文字hは、2であってもよい。代替として、数(i+j)は、30~500であってもよい。代替として、下付き文字iは、0であってもよい。代替として、下付き文字jは、2~500、代替として2<j<500、および代替として下付き文字jは、30~300であってもよい。
【0029】
代替として、下付き文字gは、0であってもよく、下付き文字iは、0であってもよく、下付き文字hは、2であってもよく、出発材料(C)は、単位式C-2):(R4
3SiO1/2)2(HR4SiO2/2)jを有してもよく、式中、R4は、上述の通りである。単位式C-2)において、下付き文字jは、30~300であってもよい。
【0030】
出発材料(C)のポリオルガノ水素シロキサンは、
C-3)ジメチル水素シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
C-4)ジメチル水素シロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、
C-5)ジメチル水素シロキシ末端ポリメチル水素シロキサン、
C-6)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、
C-7)トリメチルシロキシ末端ポリメチル水素シロキサン、ならびに
C-8)C-1)、C-2)、C-3)、C-4)、C-5)、C-6)およびC-7)のうちの2つ以上の組み合わせ、によって例示される。代替として、出発材料(C)は、C-6)、C-7)、またはC-6)およびC-7)の両方の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0031】
オルガノハロシランの加水分解および縮合等のオルガノ水素ポリシロキサンの調製の方法は、当技術分野において既知である。
【0032】
出発材料(C)の量は、感圧性接着剤組成物の全出発材料中の脂肪族不飽和一価炭化水素基(例えば、アルケニル)の濃度および全出発材料のシリコン結合水素(SiH)含有量(すなわち、出発材料(C)およびSiHを含有する任意の他の出発材料)を含む様々な要因に依存する。しかしながら、出発材料(C)の量は、感圧性接着剤組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて100重量部当たり、0.01~5重量部であってもよい。代替として、出発材料(C)の量は、同じ基準で、0.1~5重量部、代替として0.02~5重量部、代替として0.02~1重量部、代替として0.03~5重量部、代替として0.03~1重量部、代替として0.05~5重量部、および代替として0.05~1重量部であってもよい。
【0033】
出発材料(D)ヒドロシリル化反応触媒
出発材料(D)は、ヒドロシリル化反応触媒である。ヒドロシリル化反応触媒は、当技術分野で既知であり、市販されている。ヒドロシリル化反応触媒は、白金族金属触媒を含む。ヒドロシリル化反応触媒は、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、およびイリジウムから選択される金属であり得、代替として白金である。代替として、ヒドロシリル化反応触媒は、このような金属の化合物、例えば、クロリドトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)(Wilkinsonの触媒)、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウムもしくは[1,2-ビス(ジエチルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム等のロジウムジホスフィンキレート、塩化白金酸(Speierの触媒)、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、および上述化合物の低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体またはマトリクスもしくはコアシェル型構造にマイクロカプセル化した白金化合物であってもよい。低分子量オルガノポリシロキサンとの白金の錯体には、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体(Karstedtの触媒)が含まれる。これらの錯体は、樹脂マトリクス中にマイクロカプセル化され得る。代替として、ヒドロシリル化反応触媒は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を含んでもよい。代替として、ヒドロシリル化反応触媒は、ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン中に溶解された白金錯体を含んでもよい。例示的ヒドロシリル化反応触媒は、米国特許第3,159,601号、同第3,220,972号、同第3,296,291号、同第3,419,593号、同第3,516,946号、同第3,814,730号、同第3,989,668号、同第4,784,879号、同第5,036,117号、および同第5,175,325号、ならびにEP0 347 895Bに記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化反応触媒およびそれを調製する方法は、米国特許第4,766,176号および同第5,017,654号において例示されているように、当技術分野において既知である。
【0034】
本明細書で使用する触媒の量は、出発材料(A)、(B)、および(C)の選択、ならびにシリコン結合水素原子および脂肪族不飽和基のそのそれぞれの含有量、ならびに存在する抑制剤の種類および量を含む様々な要因に依存するが、触媒の量は、SiHと脂肪族不飽和基とのヒドロシリル化反応を触媒するのに十分であり、代替として、触媒の量は、感圧性接着剤組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて、10ppm~10,000ppmの白金族金属、代替として1,000ppm~9,000ppm、代替として2,000ppm~8,000ppm、代替として3,000ppm~7,000ppm、代替として4,000ppm~6,000ppm、および代替として5,000ppmを提供するのに十分である。
【0035】
出発材料(E)抑制剤
感圧性接着剤組成物は、出発材料(E)ヒドロシリル化反応抑制剤をさらに含む。ヒドロシリル化反応のための抑制剤は、E-1)アセチレンアルコール、E-2)シリル化アセチレン化合物、ならびにE-3)E-1)およびE-2)の両方の組み合わせによって例示される。
【0036】
出発材料E-1)に適切なアセチレンアルコールは、3-メチル-1-ブチン-3-オール等のメチルブチノール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のエチニルシクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のジメチルヘキシノール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、およびそれらの2つ以上の組み合わせによって例示される。代替として、出発材料E-1)は、エチニルシクロヘキサノールを含んでもよい。適切なアセチレンアルコールは、例えば、Sigma Aldrichから市販されている。
【0037】
出発材料E-2)のシリル化アセチレン化合物は、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリメチルシラン、[(1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ]トリメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス[(1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ]ジメチルシラン、メチル[トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ)]シラン、メチル[トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)]シラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリエチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)トリメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルビニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)トリメチルシラン、およびそれらの組み合わせによって例示される。代替として、出発材料E-2)は、メチル[トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ)]シラン、[(1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ]トリメチルシラン、またはそれらの組み合わせによって例示される。代替として、出発材料E-2)は、メチル[トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ)]シランを含んでもよい。抑制剤として有用なシリル化アセチレン化合物は、酸受容体の存在下で上述のアセチレンアルコールをクロロシランと反応させることによって、アセチレンアルコールをシリル化する等の当技術分野において既知の方法によって調製してもよい。
【0038】
代替として、E-3)E-1)およびE-2)の組み合わせを抑制剤として使用してもよい。例えば、抑制剤は、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のエチニルシクロヘキサノール、および[(1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ]トリメチルシランを含んでもよい。
【0039】
抑制剤の量は、感圧性接着剤組成物の所望のポットライフ、感圧性接着剤組成物を硬化させるために選択する温度、使用する特定の抑制剤、ならびに使用する他の出発材料の選択および量を含む様々な要因に依存する。しかしながら、存在する場合、抑制剤の量は、感圧性接着剤組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて100重量部当たり、0.05超~5重量部、代替として0.1~5重量部であり得る。
【0040】
出発材料(F)溶媒
出発材料(F)は、溶媒である。溶媒は、感圧性接着剤組成物の流動およびポリオルガノシリケート樹脂等のある特定の出発材料の導入を促進し得る。本明細書で使用する溶媒は、出発材料の流動化を助けるが、本質的にそれらと反応しないものである。溶媒は、出発材料の溶解度および揮発性に基づいて選択され得る。溶解度は、出発材料を溶解および/または分散させるのに十分な溶媒を指す。揮発性は、溶媒の蒸気圧を指す。溶媒が過度に揮発性である(蒸気圧が高過ぎる)場合、ヒドロシリル化反応中に感圧性接着剤組成物に気泡が形成し得、その気泡が亀裂を引き起こし、そうでなくても感圧性接着剤の特性を弱化させるか、またはそれに悪影響を及ぼし得る。しかしながら、溶媒が十分に揮発性でない(蒸気圧が低過ぎる)場合、溶媒は、感圧性接着剤組成物を硬化させることによって調製された感圧性接着剤中に可塑剤として残り得る。
【0041】
適切な溶媒には、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、および他の低分子量ポリオルガノシロキサン、例えば、米国ミシガン州ミッドランドのDow Silicones Corporationから市販されている0.5~1.5cStのDOWSIL(登録商標)200FluidsおよびDOWSIL(登録商標)OS FLUIDS等の、適切な蒸気圧を有するポリオルガノシロキサンが含まれる。
【0042】
代替として、溶媒は、有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒は、ベンゼン、トルエン、またはキシレン等の芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、またはオクタン等の脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、またはメチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ホワイトスピリット、ミネラルスピリット、ナフサ、n-メチルピロリドン、またはそれらの組み合わせであり得る。代替として、出発材料(F)は、トルエン等の芳香族炭化水素を含んでもよい。適切な有機溶媒は、当技術分野において既知であり、例えば、Fisher Scientificから市販されている。溶媒の量は、溶媒の選択、その蒸気圧、および溶媒中の他の出発材料の溶解度を含む様々な要因に依存するが、溶媒の量は、組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて10%~90%であり得る。代替として、溶媒の量は、同じ基準で、20%~80%、および代替として30%~70%であってもよい。
【0043】
選択された出発材料および量によって、感圧性接着剤組成物に、0.7~20のシリコン結合水素結合含有量対脂肪族不飽和基含有量のモル比(全体のSiH/Vi比)が提供される。代替として、全体のSiH/Vi比は、1~20、代替として1超~20、代替として1~15、代替として1超~15、代替として1~10、代替として1超~10、および代替として5~15であってもよい。
【0044】
本明細書に記載の感圧性接着剤は、シリコン結合加水分解性基を有し、かつ感圧性接着剤組成物に頻繁に添加されて1つ以上基材への感圧性接着剤の接着を改善する従来の接着促進剤および定着添加剤等の、感圧性接着剤組成物の調製および使用の条件下でポリオルガノシリケート樹脂のシラノール基と反応することができる加水分解性基を含有する材料を含まなくてもよい。理論に拘束されることを望まないが、接着促進剤の任意の加水分解性基が、感圧性接着剤を基材に接着させるように作用する代わりに、ポリオルガノシリケート樹脂のシラノールと反応し、樹脂を誘導体化すると考えられている。例えば、加水分解性基を有するシラン、その部分縮合物、およびオリゴシロキサン、例えば、アルコキシ等の炭化水素オキシ、アセチル等のアシル、オキシム、およびケトキシムは、本明細書に記載の感圧性接着剤組成物に意図的に添加されず、存在しないか、またはポリオルガノシリケート樹脂と反応するのに不十分なレベルで存在する。同じ理由で、感圧性接着剤組成物は、水を含まなくてもよく、ならびに/またはその表面上に加水分解性基を有し得る処理済みおよび未処理の充填剤および他の粒子を含まなくてもよい。
【0045】
感圧性接着剤組成物の作製方法
感圧性接着剤組成物は、周囲温度または昇温での混合等の任意の簡便な手段によって全出発材料を組み合わせることを含む方法によって調製することができる。例えば、感圧性接着剤組成物を昇温で調製する場合、および/または感圧性接着剤組成物を一液型組成物として調製する場合、抑制剤を、ヒドロシリル化反応触媒の前に添加し得る。
【0046】
この方法は、溶媒(例えば、ポリオルガノシリケート樹脂および/またはヒドロシリル化反応触媒)中に1つ以上の出発材料を供給することをさらに含み得、組成物中の他の出発材料のうちの1つ以上と組み合わせるときに溶媒に溶解され得る。
【0047】
代替として、感圧性接着剤組成物は、例えば、感圧性接着剤組成物が使用前に長期間、例えば、感圧性接着剤組成物の基材上へのコーティング前に最大6時間保管される場合に、多液型組成物として調製してもよい。多液型組成物において、ヒドロシリル化反応触媒は、シリコン結合水素原子、例えば、ポリオルガノ水素シロキサンを有する任意の出発材料とは別の部分に保管され、この部分は、感圧性接着剤組成物の使用直前に組み合わされる。
【0048】
例えば、多液型組成物は、混合等の任意の簡便な手段によって、(A)ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサン、(C)ポリオルガノ水素シロキサン、および任意選択により上述の1つ以上の他の追加の出発材料のうちの少なくともいくつかを含む出発材料を組み合わせることによって調製されて、基剤部分を形成し得る。硬化剤は、混合等の任意の簡便な手段によって、(A)ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサン、(D)ヒドロシリル化反応触媒、および任意選択により上述の1つ以上の他の追加の出発材料のうちの少なくともいくつかを含む出発材料を組み合わせることによって調製され得る。出発材料は、周囲温度または昇温で組み合わせられ得る。出発材料(E)ヒドロシリル化反応抑制剤は、基剤部分、硬化剤部分、または別々の追加部分のうちの1つ以上に含まれ得る。出発材料(B)ポリオルガノシリケート樹脂、および出発材料(F)溶媒は、各々独立して、基剤部分、硬化剤部分、または別々の追加部分に添加され得る。代替として、1つ以上の出発材料は、別々の追加部分に添加されてもよい。二液型組成物を調製する場合、基剤部の硬化剤部分に対する量の重量比は、1:1~10:1の範囲であり得る。感圧性接着剤組成物は、ヒドロシリル化反応を介して硬化して、感圧性接着剤を形成する。
【0049】
上述の方法は、1つ以上の追加のステップをさらに含んでもよい。上述のように調製した感圧性接着剤組成物を使用して、接着剤物品、例えば、感圧性接着剤(上述の感圧性接着剤組成物を硬化させることによって調製される)を基材上に形成し得る。ゆえに、この方法は、感圧性接着剤組成物を基材に塗布することをさらに含み得る。
【0050】
感圧性接着剤組成物を基材に塗布することは、任意の簡便な手段によって行うことができる。例えば、感圧性接着剤硬化型組成物は、グラビアコータ、コンマコータ、オフセットコータ、オフセット-グラビアコータ、ローラーコータ、リバース-ローラーコータ、エアナイフコータ、またはカーテンコータによって基材上に塗布してもよい。
【0051】
基材は、感圧性接着剤組成物を硬化させて感圧性接着剤を基材上に形成するために使用する硬化条件(後述する)に耐え得る任意の材料であり得る。例えば、120℃以上、代替として150℃以上の温度での熱処理に耐え得る任意の基材が適切である。このような基材に適切な材料の例として、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルフィド(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、またはポリプロピレン(PP)等のプラスチックフィルムが挙げられる。基材は、ウレタンフォームであってもよい。代替として、感圧性接着剤組成物を、2つの基材の間、例えば、ウレタンフォームとPET等のプラスチックフィルムとの間に挟んでもよい。基材の厚さは重要ではないが、厚さは5マイクロメートル~300マイクロメートルであり得る。
【0052】
感圧性接着剤の基材への結合を改善するために、接着剤物品を形成するための方法は、任意選択により、感圧性接着剤組成物を塗布する前に基材を処理することをさらに含み得る。基材を処理することは、感圧性接着剤組成物を基材に塗布する前に、プライマを塗布すること、または基材をコロナ放電処理、エッチング、もしくはプラズマ処理に供すること等の、任意の簡便な手段によって行われ得る。
【0053】
フィルムまたはテープ等の接着剤物品は、上述の感圧性接着剤組成物を上述の基材上に塗布することによって調製され得る。例えば、感圧性接着剤組成物は、PET等の基材のうちの1つにコーティングされ得る。この方法は、硬化の前および/または硬化中に溶媒の全部または一部を除去することをさらに含み得る。溶媒を除去することは、感圧性接着剤組成物を完全に硬化させることなく溶媒を蒸発させる温度で加熱すること、例えば、70℃~120℃、代替として50℃~100℃、および代替として70℃~80℃の温度で、溶媒の全部または一部を除去するのに十分な時間(例えば、30秒~1時間、代替として1分~5分)、加熱すること等の、任意の簡便な手段によって行われ得る。ウレタンフォーム等の第2の基材は、硬化前に感圧性接着剤組成物と、または硬化後に感圧性接着剤と接触し得る。
【0054】
感圧性接着剤組成物を硬化させることは、80℃~200℃、代替として90℃~180℃、代替として100℃~160℃、および代替として110℃~150℃の温度で、感圧性接着剤組成物を硬化させるのに十分な時間(例えば、30秒~1時間、代替として1~5分)、加熱することによって行われ得る。硬化速度を上げる必要がある場合、またはその過程のオーブンの温度を下げる必要がある場合、触媒レベルを上げることができる。これにより、感圧性接着剤が基材上に形成される。硬化は、基材をオーブン内に置くことによって行われ得る。基材に塗布される感圧性接着剤組成物の量は、特定の用途に依存するが、その量は、硬化後の感圧性接着剤の厚さが5um~100umであり得、保護フィルムについては厚さが、6um~50um、代替として8um~40um、代替として10um~30um、代替として9um~15um、および代替として9um~11umであり得るように十分であり得る。
【0055】
本明細書に記載のように調製した接着剤物品(例えば、キャリアテープ)を形成するために組成物を硬化させることによって調製される感圧性接着剤組成物および感圧性接着剤は、電子デバイス処理での使用に適切である。例えば、一実施形態では、接着剤物品は、衝撃から保護するために、OLEDデバイス加工方法またはLCDデバイス加工方法等のディスプレイデバイス加工方法で使用され得る。
【0056】
図1は、キャリアテープ109の加工のための方法およびOLEDデバイス111の保護におけるその使用を示す。この方法は、
図1aにおいて、1)デバイス対向表面104と、デバイス対向表面104とは反対にある反対表面105とを有するウレタンフォーム基材103を提供することと、
図1bにおいて、2)プラスチックフィルム107の表面106とウレタンフォーム基材103の反対表面105との間に本明細書に記載の感圧性接着剤組成物を挟むことと、
3)感圧性接着剤組成物を硬化させて感圧性接着剤108を形成し、それによりウレタンフォーム基材103の反対表面105上にキャリアテープ109を形成することと、を含む。
図1cは、この方法が、4)ウレタンフォーム基材103のデバイス対向表面104を、図面にOLEDデバイス111として示すモバイルディスプレイデバイスの背面110に接着することをさらに含み得ることを示す。
図1dは、この方法が、5)ウレタンフォーム基材103の反対表面105からキャリアテープ109を除去することをさらに含み得ることを示す。
【0057】
この方法のステップ1)では、ウレタンフォーム基材103のデバイス対向表面104を第2のプラスチックフィルム112に取り付け、ステップ4)の前に第2のプラスチックフィルムを除去し得る。ウレタンフォーム基材103のデバイス対向表面104は、OLEDデバイス111の背面110とウレタンフォーム基材103のデバイス対向表面104との間に挟まれた両面テープ113を介してOLEDデバイス111背面110に接着される。
【実施例】
【0058】
これらの実施例は、本発明のいくつかの実施形態を例証するためのものであり、請求項に記載された本発明の範囲を限定するものとして解釈するべきではない。表1の出発材料を、本明細書の実施例において使用した。
【表1】
【0059】
参考実施例1-分子分布
出発材料の分子分布を、トリプル検出器アレイ(屈折率、直角光散乱、および粘度計)を備えたGPCで分析した。試料の0.5%をGPC分析に使用した。ポリスチレン標準のMwは580~100,000の範囲であり、分子量決定には3次較正曲線を使用した。試料および標準の両方をHPLCグレードの酢酸エチルで希釈した。
【0060】
参考実施例2-M/Q比およびOH重量%の計算方法
M/Q比およびOH%(シラノール含有量)を、29Si NMR結果を使用して計算した。式Me3Si-O-SiMe3の二量体は試料中に観察されず、15~8ppmで式(Me3SiO1/2)の広いメインM単位、M4QのM、8.4ppmでネオペンタマーが観察された。-95~-104ppmでQ3[OHSiO3/2]、-104~120ppmでQ4[SiO2]が、29Si NMR結果で観察された。全体のM/Q比を、樹脂とネオペンタマーのM単位の積分値から計算した。-95~-104ppmでのQ3は、樹脂のキャッピングされていないOH官能基を表すため、総OH重量を総樹脂重量で割って、OH重量%を計算した。
【0061】
参考実施例3-感圧性接着剤組成物試料を調製するための一般的な手順。
グループ1の試料を、30部のビス-ビニル末端ジメチルポリシロキサン、またはビス-ビニル末端ポリジメチルシロキサンとビス-ビニル末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)との混合物と、f-1)トルエンとを混合して、30%の溶液を作製することによって調製した。各溶液にMQ樹脂、c-1)架橋剤、および抑制剤を添加した。この混合物を均質化した後、0.5部のd-1)触媒(組成物中に25ppmのPtを提供するのに十分)を添加した。各出発材料の量は、組成物のSiH/ビニルのモル比=10を提供するのに十分であった。表2は、異なる実施例における各出発材料の量を示す。
【表2】
【0062】
上述のように調製した感圧性接着剤試料を基材にコーティングし、硬化させ、以下の試験方法に従って評価した。
【0063】
参考実施例4-テープ調製(コーティングおよび硬化)
実施例1~実施例20で調製した感圧性接着剤組成物を、75umのウレタン下塗りPETフィルム上に塗布し、硬化させた。得られた感圧性接着剤は10um厚の層であった。コーティングされたフィルムを3.5分間150℃で加熱することによって、感圧性接着剤シートを生成した。硬化後、フィルムに25umPET剥離フィルムをラミネートし、幅2.54mmのストリップに切断した。75umのウレタン下塗りPETは、SKC SH-86として市販されていた。25umのPETフィルムは、KOLON CD-901として市販されていた。
【0064】
参考実施例5-剥離力測定
感圧性接着剤層は、発効日2018年のASTM D1000に指定される180°引き剥がし試験に従って測定した剥離フィルムへの接着強度を示した。
「テープ調製」で調製したテープを2kgの重量のゴムローラーでロールプレスし、測定前に30分間RTで保存した。剥離力を、引張試験機(試験装置;AR-1000(Cheminstrument Company))で測定した。接着力は、12インチ/分の一定速度で引張試験機を使用して、被着体の表面に対して180°の角度で感圧性接着剤テープから剥離フィルムを剥ぎ取ることによって測定した。
【0065】
参考実施例6-ウレタンフィルム上の接着力測定
上述の「テープ調製」で調製したテープを、剥離フィルムから引き剥がし、ゴムローラーで発生させた2kgfの圧力下で、ウレタンフォーム-PETラミネートフィルム(韓国のS&K Polytechから入手したNANOCELLTM PSRシリーズ)の形態で被着体に接着した。30分後、被着体をPETから剥離させ、引張試験機(試験装置;AR-1000(Cheminstrument Company))に載置した。接着力は、12インチ/分の一定速度で引張試験機を使用して、被着体の表面に対して180°の角度で被着体から感圧性接着剤テープを剥ぎ取ることによって測定した。
【0066】
参考実施例7-85℃/85%RH条件下での保存後の定着試験
上述のように調製した接着剤層を、85℃/85%RHの条件下で1週間保存した。保存後、フィルムをRTで30分間保存し、PSA上で5回クロスカットした。表面を最大限の強度で指で擦ることで、PSAが擦り取られないという結果になるはずである。
評価基準:
良好(O):PSAはPETから擦り取られなかった
不良(X):PSAはPETから簡単に擦り取られなかった
【0067】
参考実施例8-接着安定性
剥離力を、上述の「テープ調製」で説明した新しく調製したテープを用いて、1日、3日、1週間後に連続して測定した。剥離力のデータを比較し、違い(増加)を評価する。
良好(O):1週間のデータは、1日のデータから50%を超えて増加しなかった
不良(X):1週間のデータは、1日のデータから50%を超えて増加した
【0068】
参考実施例9-ウレタン表面上の視覚的移行試験
「テープ調製」で調製したテープを剥離フィルムから引き剥がし、ゴムローラーで発生させた2kgfの圧力下でウレタンフォーム-PETラミネートフィルム(韓国のS&K Polytechから入手)の形態で被着体に接着した。1週間後、PSAテープを剥離させ、ウレタン表面を慎重に観察した。ウレタンフォーム表面は、元々マットであり、表面が湿潤または任意の色変化を示した場合、シリコーンがウレタンフォーム上に移行した。
評価基準:
良好(O):ウレタン表面は試験前のようにマットに見える
不良(X):ウレタン表面は、シリコーン移行によりつるつるしているように見える
【表3】
【0069】
実施例2、3、5~15、17、18、および20は、比較である。実施例1、4、16、および19は、実際の実施例である。表3は、実施例1、4、16、および19全てが、特性の有益な組み合わせを有すること、すなわち、実施例1、4、16、および19の全てが良好な特性、すなわちPET上で5gf/インチ以下の接着、ウレタンフォーム上で25gf/インチ以上の接着、良好な定着、および低い視覚的移行の組み合わせにおいて予想外の利益を有することを示している。加えて、実施例16および19は、シリル化アセチレン化合物が感圧性接着剤組成物中に含まれる場合に、良好な接着安定性のさらなる予想外の利益を示す。
【0070】
比較実施例3、5、8、10、13、15、18、および20は各々、出発材料(A)のビニル官能性ポリメチルシロキサン上に高いビニル含有量(0.1%超)を有した。これらの比較実施例は、ビニル含有量が高く、かつ感圧性接着剤組成物中の他の出発材料が同じに保たれている場合に、上述の条件下で調製および試験された感圧性接着剤が、ウレタン上で接着不良を有する傾向があることを示した。例えば、比較実施例3および5は、実施例1および4および比較実施例2よりもウレタンフォーム上の接着が低かった。また、比較実施例18および20は、実施例16および19および比較実施例17よりもウレタンフォーム上の接着が低かった。さらに、感圧性接着剤組成物が、ジメチルビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサンを含まずにビス-ジメチルビニル-シロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)を含んだ場合(すなわち、出発材料A)の全てがペンダントビニル基を有した場合)、ウレタンフォームへの接着は、比較実施例2、7、12、および17に示すように、比較的低いビニル含有量(9.06%)であっても合格しなかった。
【0071】
比較実施例11~15は、ポリオルガノシリケート樹脂のMwが6,000(上述の8,000~25,0000よりも低い)であった場合に、上述の条件下で調製および試験された感圧性接着剤が、移行不良、定着不良、またはその両方を有したことを示した。
【0072】
比較実施例6~10は、1%の低シラノール含有量(すなわち1%超~5%の範囲より低い)および1の高M/Q比(すなわち0.9超)を有する、キャッピングされたポリオルガノシリケート樹脂を使用した場合に、上述の条件下で調製および試験された感圧性接着剤が、ウレタンフォーム上の接着不良を有したことを示した。
【0073】
産業上の利用可能性
本明細書に記載の感圧性接着剤組成物を使用して、異なる基材に選択的に接着する感圧性接着剤を調製することができる。感圧性接着剤は、キャリアフィルムに有用であり、支持して使用後に容易に層剥離されるのに十分な接着をウレタンフォーム基材上で有する。ウレタンフォーム基材上の接着は、参考実施例に記載の技術で測定した場合、25gf/インチ以上であり得る。PET等のプラスチックフィルム上の接着は、10gf/インチ以下、代替として5gf/インチ以下であり得る。理論に拘束されることを望まないが、異なる基材上のこのような選択的接着が、既知のシリコーン感圧性接着剤では一般的ではないと考えられ、このようなシリコーン感圧性接着剤は、PETおよびウレタンフォーム基材上でほぼ同じ接着力を有すると予想されるだろう。
【0074】
用語の定義と用法
特に指定がない限り、全ての量、比、および割合は、重量に基づく。組成物中の全出発材料の量は、合計で100重量%になる。発明の概要および要約は、参照により本明細書に組み込まれる。特に明細書の文脈による指定がない限り、冠詞「a」、「an」、および「the」は、各々1つまたは複数を指す。特に指定がない限り、単数形には複数形が含まれる。範囲の開示は、範囲自体およびその範囲内に包含されるもの、ならびに端点も含む。例えば、8,000~25,000の範囲の開示には、8,000~25,000の範囲だけでなく、8,000、11,005、12,013、13,442、14,596、および25,000を個別に、ならびにその範囲内に包含される任意の他の数も含まれる。さらに、例えば、8,000~25,000の範囲の開示には、8,000~10,000、9,000~12,000、11,000~16,000、および15,000~25,000、ならびにその範囲に包含される任意の他の部分集合が含まれる。同様に、マーカッシュ群の開示には、群全体と、その群に包含される個々の要素および下位群も含まれる。例えば、マーカッシュ群の、水素原子、アルキル基、アルケニル基、またはアリール基の開示には、要素のアルキルを個別に、下位群のアルキルおよびアリール、ならびにその群に包含される他の個々の要素および下位群が含まれる。
【0075】
「アルキル」は、分岐、環状、または直鎖の飽和一価炭化水素基を意味する。アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル(n-プロピルおよび/またはイソ-プロピルを含む)、ブチル(イソ-ブチル、n-ブチル、tert-ブチル、および/またはsec-ブチルを含む)、ペンチル(イソペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、および/またはtert-ペンチルを含む)、およびヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシル、ならびに6個以上の炭素原子の分岐または環状飽和一価炭化水素基が挙げられる。アルキル基は、少なくとも1個の炭素原子を有する。代替として、アルキル基は、1~12個の炭素原子、代替として1~10個の炭素原子、代替として1~6個の炭素原子、代替として1~4個の炭素原子、代替として1~2個の炭素原子、および代替として1個の炭素原子を有してもよい。
【0076】
「アラルキル」および「アルカリール」は各々、ペンダントおよび/または末端アリール基を有するアルキル基、またはペンダントアルキル基を有するアリール基を指す。例示的アラルキル基には、ベンジル、トリル、キシリル、フェニルエチル、フェニルプロピル、およびフェニルブチルが含まれる。アラルキル基は、少なくとも7個の炭素原子を有する。単環式アラルキル基は、7~12個の炭素原子、代替として7~9個の炭素原子、および代替として7~8個の炭素原子を有してもよい。多環式アラルキル基は、7~17個の炭素原子、代替として7~14個の炭素原子、および代替として9~10個の炭素原子を有してもよい。
【0077】
「アルケニル」は、一価炭化水素基が二重結合を有する非環式分岐または非分岐一価炭化水素基を意味する。アルケニル基は、ビニル、アリル、およびヘキセニルを含む。アルケニル基は、少少なくとも2個の炭素原子を有する。代替として、アルケニル基は、2~12個の炭素原子、代替として2~10個の炭素原子、代替として2~6個の炭素原子、代替として2~4個の炭素原子、および代替として2個の炭素原子を有してもよい。
【0078】
「アルキニル」は、一価炭化水素基が三重結合を有する非環式分岐または非分岐一価炭化水素基を意味する。アルキニル基は、エチニルおよびプロピニルを含む。アルキニル基は、少なくとも2個の炭素原子を有する。代替として、アルキニル基は、2~12個の炭素原子、代替として2~10個の炭素原子、代替として2~6個の炭素原子、代替として2~4個の炭素原子、および代替として2個の炭素原子を有してもよい。
【0079】
「アリール」は、環炭素原子から水素原子を除去することによりアレーンから誘導される炭化水素基を意味する。アリールは、フェニルおよびナフチルによって例示されるが、これらに限定されない。アリール基は、少なくとも5個の炭素原子を有する。単環式アリール基は、5~9個の炭素原子、代替として6~7個の炭素原子、および代替として6個の炭素原子を有してもよい。多環式アリール基は、10~17個の炭素原子、代替として10~14個の炭素原子、および代替として12~14個の炭素原子を有してもよい。
【0080】
用語「含む(comprise)」およびその派生語、例えば、含む(compris(ing)またはcomprise(s))は、「含む(including)」、「含む(include)」、「本質的に~からなる」、および「~からなる」の概念を意味および包含するために最も広義本明細書に使用される。例証的な例を列挙するための「例えば(for example)」、「例えば(e.g.)」、「等(such as)」、および「含む(including)」の使用は、列挙される例のみに限定されない。したがって、「例えば」または「等」は、「例えば、~に限定されない」または「等であるが~に限定されない」を意味し、他の類似または同等の例を包含する。
【0081】
一般に、本明細書で使用する場合、値の範囲内のハイフン「-」またはダッシュ「-」は、「から(to)」または「から(through)」であり;「>」は、「上回る」または「より大きい」であり;「≧」は、「少なくとも」または「以上」であり;「<」は、「下回る」または「未満」であり;「{≦}」は、「最大で」または「以下」である。個別基準で、前述の特許の出願、特許、および/または特許出願公開の各々は、参照によりその全体が1つ以上の非限定的な実施形態に明示的に組み込まれる。
【0082】
【発明を実施するための形態】
【0083】
第1の実施形態では、キャリアテープを加工するための方法は、
1)デバイス対向表面と、デバイス対向表面とは反対にある反対表面とを有するウレタンフォーム基材を提供することと、
2)感圧性接着剤組成物を、プラスチックフィルムの表面とウレタンフォーム基材の反対表面との間に挟むことであって、感圧性接着剤組成物が、
(A)100~70重量部のビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンであって、
A-1)出発材料(A)の重量に基づいて、50%~100%、代替として50%~99%の、単位式(R1R2
2SiO1/2)a(R2
2SiO2/2)bの第1のビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンであって、式中、各R1が、独立して選択される、2~6個の炭素原子のアルケニル基であり、各R2が、独立して選択される、脂肪族不飽和を含まない一価ヒドロカルビル基であり、下付き文字aが、2の平均値を有し、下付き文字bが、1以上であり、数(a+b)が、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンに、100,000~1,000,000の重量平均分子量と、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて、0超~0.1%未満の総アルケニル含有量とを提供するのに十分な値を有する、第1のビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンと、
A-2)出発材料(A)の重量に基づいて、0~50%、代替として1%~50%の、単位式:(R1R2
2SiO1/2)a(R2
2SiO2/2)b(R1R2SiO2/2)cの第2のビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンであって、式中、下付き文字cが、1以上であり、数(a+b+c)が、出発材料A-2)に100,000~1,000,000の重量平均分子量を提供するのに十分な値を有する、第2のビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンと、を含む、ビス-アルケニル末端ポリジオルガノシロキサンと、
(B)単位式(R3
3SiO1/2)e(SiO4/2)fを含む、1~30重量部のポリオルガノシリケート樹脂であって、
式中、各R3が、独立して選択される、1~10個の炭素原子を有する一価ヒドロカルビル基であり、下付き文字eおよびfが、モル比(e/f)<0.9であり、かつ数(e+f)が樹脂に8,000Da~25,000Daの重量平均分子量を与えるのに十分な値を有するような値を有する、ポリオルガノシリケート樹脂と、
(C)単位式(HR4
2SiO1/2)g(R4
3SiO1/2)h(R4
2SiO2/2)i(HR4SiO2/2)jを含む、0.01~5重量部のポリオルガノ水素シロキサンであって、
式中、各R4が、独立して選択される、1~10個の炭素原子のアルキル基であり、下付き文字g、h、i、およびjが、g≧0であり、h≧0であり、数(g+h)が2の平均値を有し、i≧0であり、j>0であり、かつ数(g+j)>0であり、数(g+j)がポリオルガノ水素シロキサンに少なくとも1%のシリコン結合水素原子を提供するのに十分な値を有するような値を有する、ポリオルガノ水素シロキサンと、
(D)10~5,000ppmの白金族金属を組成物に提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
(E)組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて100重量部当たり、0.05超~5.0重量部、代替として0.1~5.0重量部のヒドロシリル化反応抑制剤と、
(F)組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて、10重量%~90重量%の有機溶媒と、を含み、
出発材料の全てが、全体のSiH/Viモル比が組成物中で0.7~20になるように選択される、挟むことと、
3)組成物を硬化させて感圧性接着剤を形成し、それによりウレタンフォーム基材の反対表面上にキャリアテープを形成することと、を含む。
【0084】
第2の実施形態では、第1の実施形態の方法におけるステップ2)は、感圧性接着剤組成物をプラスチックフィルムの表面上にコーティングし、その後溶媒を除去することによって行われる。
【0085】
第3の実施形態では、第2の実施形態の方法において、ウレタンフォーム基材の反対表面を、ステップ2)後に感圧性接着剤組成物と、またはステップ3)後に感圧性接着剤と接触させる。
【0086】
第4の実施形態では、第1の実施形態の方法におけるステップ2)は、感圧性接着剤組成物をウレタンフォーム基材の反対表面上にコーティングし、その後溶媒を除去することによって行われる。第2の実施形態の方法では、ウレタンフォーム基材の反対表面を、ステップ2)の後に感圧性接着剤組成物と、またはステップ3)の後に感圧性接着剤と接触させる。第5の実施形態では、第4の実施形態の方法において、プラスチックフィルムの表面を、ステップ2)後に感圧性接着剤組成物と、またはステップ3)後に感圧性接着剤と接触させる。
【0087】
第6の実施形態では、ディスプレイデバイスを加工するための方法は、第1~第5の実施形態のいずれか1つのステップ1)~3)の後、4)ウレタンフォーム基材のデバイス対向表面をディスプレイデバイスの背面に接着することを含む。
【0088】
第7の実施形態では、第6の実施形態の方法は、5)ウレタンフォーム基材の反対表面からキャリアテープを除去することをさらに含む。
【0089】
第8の実施形態では、第6または第7の実施形態の方法において、ステップ1)において、ウレタンフォームのデバイス対向表面を、第2のプラスチックフィルムに取り付け、第2のプラスチックフィルムをステップ4)の前に除去する。
【0090】
第9の実施形態では、第6~第8の実施形態のいずれか1つの方法において、ウレタンフォーム基材のデバイス対向表面を、ディスプレイデバイスの背面とウレタンフォーム基材のデバイス対向表面との間に挟まれた両面テープを介してディスプレイデバイスの背面に接着する。
【0091】
第10の実施形態では、前述の実施形態のいずれか1つの方法において、各R1は、ビニル、アリル、またはヘキセニルであり、各R2は、メチルまたはフェニルであり、各R3は、メチルであり、各R4は、メチルまたはフェニルである。
【0092】
第11の実施形態では、前述の実施形態のいずれか1つの方法において、出発材料(A)は、ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、またはビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンとビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)との組み合わせを含む。
【0093】
第12の実施形態では、前述の実施形態のいずれか1つの方法において、出発材料(B)は、11,000~25,000の重量平均分子量、1%超~5%のシラノール含有量、および0.5≦(e/f)<0.9を有する。
【0094】
第13の実施形態では、前述の実施形態のいずれか1つの方法において、下付き文字g=0であり、下付き文字h=2であり、下付き文字i=0であり、出発材料(C)が単位式:(R4
3SiO1/2)2(HR4SiO2/2)jを有し、式中、下付き文字jが30~300である。
【0095】
第14の実施形態では、前述の実施形態のいずれか1つの方法において、出発材料(D)は、出発材料(D)の重量に基づいて5,000ppmの白金を提供するのに十分な量で、ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン中に溶解した白金錯体を含む。
【0096】
第15の実施形態では、前述の実施形態のいずれか1つの方法において、出発材料(E)は、E-1)アセチレンアルコール、E-2)シリル化アセチレン化合物、またはE-3)E-1)およびE-2)の両方を含む。
【0097】
第16の実施形態では、第15の実施形態の方法において、E-1)は、エチニルシクロヘキサノールを含む。
【0098】
第17の実施形態では、第15の実施形態の方法において、E-2)は、[(1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ]トリメチルシランを含む。
【0099】
第18の実施形態では、第15~第17の実施形態のいずれか1つの方法において、出発材料(E)は、E-3)E-1)およびE-2)の両方である。
【0100】
第19の実施形態では、前述の実施形態のいずれか1つの方法において、出発材料(F)は、トルエンを含む。
【0101】
第20の実施形態では、第6~第19の実施形態のいずれか1つの方法に従ってディスプレイデバイスが調製される。
【0102】
第21の実施形態では、第20の実施形態において、ディスプレイデバイスは、OLEDである。
【0103】
第22の実施形態では、第20の実施形態において、ディスプレイデバイスは、LCDである。