(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】B型肝炎ウイルス感染症を予防し且つ/又は処置するのに使用するための阻害剤
(51)【国際特許分類】
G01N 33/15 20060101AFI20230816BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20230816BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230816BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230816BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20230816BHJP
G01N 33/576 20060101ALI20230816BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230816BHJP
A61K 31/713 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
G01N33/15 Z
A61P31/20
G01N33/50 Z
G01N33/53 D
G01N33/53 M
G01N33/569 L
G01N33/576 B
C12N15/113 100Z
A61K31/713 ZNA
(21)【出願番号】P 2020512471
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2018073535
(87)【国際公開番号】W WO2019043193
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-24
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507241492
【氏名又は名称】アンスティトゥート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシャルシュ・メディカル・(インセルム)
(73)【特許権者】
【識別番号】511264559
【氏名又は名称】オスピス シヴィル ド リヨン
【氏名又は名称原語表記】HOSPICES CIVILS DE LYON
(73)【特許権者】
【識別番号】504217063
【氏名又は名称】サントル レオン ベラール
(73)【特許権者】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】523165352
【氏名又は名称】ユニヴェルスィテ クラウド ベルナール リヨン 1
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ピエール・キヴィー
(72)【発明者】
【氏名】バルバラ・テストニ
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・ズーリム
(72)【発明者】
【氏名】マエル・ロカテリ
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】Journal of Hepatology,2016年,Vol.64,pp.781-789
【文献】Int. J. Mol. Sci.,2015年,Vol.16,pp.17589-17610
【文献】World Journal of Hepatology,2016年,Vol.8, No.21,pp.863-873
【文献】肝臓,2017年04月20日,58巻,4号,pp.217-227
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
G01N 33/00-33/98
C12N 15/113
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)候補化合物の存在下及び非存在下で肝細胞をHBVに感染させる工程;
b)候補化合物の存在下及び非存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合を測定する工程;
c)候補化合物の存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合レベルを、候補化合物の非存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合レベルと比較する工程;並びに
d)候補化合物の存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合レベルが、候補化合物の非存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合レベルと比較して、低下している場合
、HBVのHBc及び/又はcccDNAとのHIRA相互作用能を阻害するために適した候補化合物を同定する工程、
を含む
、HBVのHBc及び/又はcccDNAとのHIRA相互作用能を阻害するために適した候補化合物を同定するためのin vitroスクリーニング方法。
【請求項2】
HIRAのcccDNAまたはHBcへの結合の測定は
a)肝細胞の核抽出;
b)得られた核の超音波処理;
c)HIRAに対する抗体又はHBcに対する抗体での免疫沈降;
d)得られた免疫複合体の精製;並びに
e)HIRA及びcccDNA又はHIRA及びHBcを含む免疫複合体の定量化、
を含む、請求項1に記載のin vitroスクリーニング方法。
【請求項3】
HIRAのcccDNAへの結合を測定するための免疫複合体の定量化は、cccDNA特異的プライマーを使用して定量的PCRによって行われる、請求項2に記載のin vitroスクリーニング方法。
【請求項4】
HIRAのHBcへの結合を測定するための免疫複合体の定量化は、HIRAに対する抗体での免疫複合体のウエスタンブロット及び/又はHBcに対する抗体での免疫複合体のウエスタンブロットによって行われる、請求項2に記載のin vitroスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B型肝炎ウイルス感染症の予防及び/又は処置並びにB型肝炎ウイルス感染症を予防し且つ/又は処置するのに適した候補化合物を同定するためのin vitroスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎は、肝臓を攻撃し、急性及び慢性の両疾患を引き起こす恐れのある、B型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされるウイルス感染症である。これは全世界に及ぶ主要な公衆衛生問題である。推定2億5,700万人がB型肝炎ウイルス感染症(B型肝炎表面抗原陽性と定義されている)とともに生活している。2015年に、B型肝炎は、(肝硬変及び肝細胞癌を含めて)たいていは合併症によるが、88万7000人の死亡をもたらした。
【0003】
B型肝炎ウイルスのライフサイクルは複雑である。B型肝炎は、その複製プロセスの一部として逆転写を使用する非レトロウイルス型ウイルスである。ウイルスは、細胞の表面の受容体に結合することにより細胞に進入する。次いで、ウイルス膜は宿主細胞の膜と融合して、DNA及びコアタンパク質を細胞質に放出する。ウイルスは宿主酵素によってつくられたRNAにより増殖するので、ウイルスのゲノムDNAは細胞核に移行する必要がある。コアタンパク質は、部分的に二本鎖であるウイルスDNA(不完全性環状(rc)DNA)から解離し、次いで、このDNAは、(宿主DNAポリメラーゼによって)完全に二本鎖になり、4つのウイルスmRNAの転写のテンプレートとして機能する共有結合閉環DNA(cccDNA)に変換される。最大のmRNA(これはウイルスゲノムよりも長い)を使用して、ゲノムの新しいコピーをつくり、その結果、カプシドコアタンパク質及びウイルスRNA依存性DNAポリメラーゼを作る。これらの4つのウイルス転写産物は更なるプロセシングを受け、子ウイルス粒子の形成に進むが、子ウイルス粒子は、細胞から放出され、又は核に戻され且つリサイクルされて、更に多くのcccDNAコピーが産生される。次いで、長鎖mRNAは、ウイルスPタンパク質がその逆転写酵素活性によりDNAを合成する、細胞質に戻される。
【0004】
cccDNAの形成及びクロマチン化につながるメカニズムはまだ大部分が不明であり、その解明は、cccDNAの持続性を損なう新しい治療標的の同定に向けた第1の段階となるであろう。cccDNAのクロマチン化は、細胞ヒストンによるウイルスゲノムパッケージングに左右される可能性があり、これは、HBVカプシドタンパク質(HBc)及び/又はHBV Xタンパク質(HBx)等のウイルスタンパク質の影響を受ける可能性がある。
【0005】
驚くべきことに、本発明者らは、外来(incoming)ウイルスDNAのクロマチン化が非常に初期の事象であり、これにはヒストンシャペロンHIRAが必要であることを発見した。本発明者らは、ヒストンシャペロンHIRAがcccDNAに結合すること、したがって、HIRAとcccDNAの間の相互作用は、新しい治療標的を意味することを示した。更に、HBV Xタンパク質(HBx)はこのプロセスに必要ではないが、一方、HBVカプシドタンパク質(HBc)が主要な役割を果たしている可能性があり、したがって、HIRAとHBcの間の相互作用もまた、新しい治療標的を意味する。
【0006】
HIRAは、ヒストンH3.3バリアントをヌクレオソームに優先的に配置するヒストンシャペロンである。HIRAをコードする遺伝子は、細胞老化関連ヘテロクロマチン形成に重要な役割を果たす。これらの形成は、老化細胞で発生する不可逆的な細胞周期の変化を媒介する可能性がある。DiGeorge症候群等の一部のハプロ不全症候群の一次候補遺伝子、及びこの遺伝子の不十分な産生が、正常な胚発生を撹乱する可能性がある、とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Tuerk C. and Gold L.、Science、1990、249(4968):505~10頁
【文献】Jayasena S.D.、Clin. Chem.、1999、45(9):1628~50頁
【文献】Hirt B. Selective extraction of polyoma DNA from infected mouse cell cultures.J Mol Biol. 1967
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、一態様によれば、本発明は、B型肝炎ウイルス(HBV)感染症を予防し且つ/又は処置するのに使用するためのヒストンシャペロンHIRA阻害剤に関する。
【0009】
本発明は、B型肝炎ウイルス感染症を予防し且つ/又は処置する医薬の製造のためのヒストンシャペロンHIRA阻害剤の使用に関する。
【0010】
本発明はまた、治療有効量のヒストンシャペロンHIRA阻害剤をそれを必要とする対象に投与する工程を含む、B型肝炎ウイルス感染症を予防し且つ/又は処置する方法にも関する。
【0011】
本発明はまた:
a)候補化合物の存在下及び非存在下で肝細胞をHBVに感染させる工程;
b)候補化合物の存在下及び非存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合を測定する工程;
c)候補化合物の存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合レベルを、候補化合物の非存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合レベルと比較する工程;並びに
d)候補化合物の存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合レベルが、候補化合物の非存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合レベルと比較して、低下している場合、B型肝炎ウイルス感染症を予防し且つ/又は処置するのに適すると、候補化合物を同定する工程、
を含む、
B型肝炎ウイルス感染症を予防し且つ/又は処置するのに適した候補化合物を同定するためのin vitroスクリーニング方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による「B型肝炎ウイルス」又は「HBV」とは、あらゆる血清型又は遺伝子型のあらゆるB型肝炎ウイルスを意味する。
【0013】
「HIRA」とは、本明細書では、HIRAタンパク質のあらゆる天然アイソフォーム、その対立遺伝子変異体、そのスプライス変異体、及びオーソロガスタンパク質を意味する。通常、ヒトHIRAタンパク質の配列は、2011年2月2日現在Genbank受託番号CAG30389の下に記載されおり、又は2006年2月21日現在UniProtKB受託番号P54198の下に記載されており、配列番号34のアミノ酸配列に相応する。
【0014】
本発明による「ヒストンシャペロンHIRA阻害剤」又は「HIRA阻害剤」とは、HIRAの生物学的活性を阻害し又は低減させる任意の化合物を意味する。HIRAの生物学的活性は、HIRAコード遺伝子の発現及び/又はHIRAタンパク質の量に;その標的との、特にHBVのHBc及びcccDNAとのHIRA相互作用に、左右される。したがって、HIRA阻害剤は、HIRA発現を低減させ若しくは阻害する、又は、その標的との、特にHBVのHBc及び/又はcccDNAとのHIRA相互作用能力を低減させ若しくは阻害する可能性がある。
【0015】
「HIRA発現」とはまた、機能的HIRAを提供するために切断及び成熟により、特にHIRA mRNAプロセシングの阻害をもたらす任意の反応により、HIRA mRNAを転写的に又は転写後に修飾する事象を指す;これにはまた、翻訳中にHIRAタンパク質を修飾する事象、並びに翻訳後修飾も含まれる。
【0016】
「HIRA発現の阻害剤」とは、HIRA遺伝子の発現及び/又はHIRAタンパク質の発現を阻害する生物学的効果を有する任意の化合物を指す。本発明の一実施形態では、HIRA遺伝子発現の前記阻害剤は、低分子阻害性RNA(siRNA)又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。好ましくは、前記阻害剤は、HIRAのメッセンジャーRNA又はその一部と少なくとも80%、好ましくは少なくとも95%の相補的残基を有するヌクレオチド配列を有する。本発明の一実施形態では、HIRA遺伝子発現の前記阻害剤は、配列GGAUAACACUGUCGUCAUC(配列番号1)と少なくとも80%、85%、90%、好ましくは少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するsiRNAである。
【0017】
核酸配列同一性は、当業者であれば良く知られている方法により計算することができる。同一性の百分率は、Needleman-Wunschアラインメントアルゴリズムに基づいてペアワイズグローバルアラインメントを実行して、例えばNeedleを使用して、ギャップオープンペナルティ10及びギャップ伸長ペナルティ0.5でのDNAFULLマトリクスを使用して、その全長に沿って2つの配列の最適なアラインメント(ギャップを含む)を見つけることによって計算することができる。
【0018】
低分子阻害性RNA(siRNA)は、本発明で使用する遺伝子発現の阻害剤として機能することができる。低分子二本鎖RNA(dsRNA)、又は低分子二本鎖RNAの産生を引き起こすベクター又は構築物を用いて、遺伝子発現を低減させることができ、その結果、遺伝子発現は特異的に阻害される(すなわち、RNA干渉又はRNAi)。適切なdsRNA又はdsRNAをコードするベクターを選択する方法は、配列が既知の遺伝子については当技術分野でよく知られている。
【0019】
本発明で使用するHIRAの阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)構築物に基づくとしてよい。アンチセンスRNA分子及びアンチセンスDNA分子を含めて、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、HIRA mRNAに結合することにより、したがってmRNA分解に至る防止的結合により、HIRAの活性を直接ブロックするように作用すると思われる。例えば、少なくとも約15塩基であり、HIRA転写物配列のユニーク領域に相補的であるアンチセンスオリゴヌクレオチドを、例えば、従来のホスホジエステル技術により合成し、例えば静脈内注射又は注入により投与することができる。その配列が知られている遺伝子の遺伝子発現を特異的に阻害するためのアンチセンス技術を使用する方法は、当技術分野で良く知られている。アンチセンスオリゴヌクレオチドをホスホロチオエートで修飾して、ヌクレアーゼによるそのin vivo加水分解が防止可能であることに更に留意されたい。こういった修飾は、当該分野で良く知られている。HIRAの阻害剤として有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、既知の方法により調製することができる。これには、例えば、固相ホスホロアマダイト(phosphoramadite)化学合成等の化学合成に関する技術が含まれる。また、これらを、RNA分子をコードするDNA配列のin vitro又はin vivo転写によって作製することができる。そのようなDNA配列は、T7又はSP6ポリメラーゼプロモーター等の適切なRNAポリメラーゼプロモーターを組み込んでいる多種多様なベクターに組み込むことができる。
【0020】
本明細書で使用する場合、「相互作用の阻害剤」という用語は、1つ又は複数の分子、核酸、ペプチド、タンパク質の直接的又は間接的な会合を防止し又は低減させることを意味する。
【0021】
本明細書で使用する場合、「HBV共有結合閉環(ccc)DNA及び/又はHBVカプシドタンパク質とのHIRA相互作用の阻害剤」という用語は、競合によって又は分子のうちの1つに固定することによって、HIRAとcccDNA及び/又はHBcとの間の相互作用を防止できる分子である。好ましくは、阻害剤は化学分子、ペプチド、タンパク質、アプタマー、抗体又は抗体断片である。特定の実施形態では、阻害剤は抗体又は抗体断片である。
【0022】
一実施形態では、HBVカプシドタンパク質とのHIRA相互作用の阻害剤は、Leu464、Cys465及びIle466からなる群のうちから選択される、HIRA(2006年2月21日現在利用可能なUniProtKB受託番号P54198、配列番号34)の1個又はいくつかのアミノ酸に固定する分子である。
【0023】
一実施形態ではHBVカプシドタンパク質とのHIRA相互作用の阻害剤は、Ser78、His80、Cys136、Leu137、Thr138、Phe139、Gly140、Arg141及びThr171からなる群のうちから選択される、HBVカプシドタンパク質(1996年11月1日現在UniProtKB受託番号Q89714、配列番号35)の1個又はいくつかのアミノ酸に固定する分子である。
【0024】
「ペプチド」とは、2から30個のアミノ酸を含むアミノ酸配列を意味する。「タンパク質」とは、少なくとも31個のアミノ酸、好ましくは50~500個のアミノ酸を含むアミノ酸配列を意味する。
特定の実施形態では、ペプチドは、配列CLTFGR(配列番号36)を含む又はそれからなる。
【0025】
「抗体」とは、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を意味する。したがって、抗体という用語は、完全な抗体分子だけでなく、抗体断片並びに抗体及び抗体断片の変異体(誘導体を含む)も包含する。具体的には、本発明による抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(例えば、キメラ、ヒト化抗体又はヒト抗体)、ポリクローナル又はモノクローナル抗体の断片、又はダイアボディに相応し得る。
【0026】
「抗体断片」とは、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を意味する。抗体断片の例には、Fv、Fab、F(ab')2、Fab'、Fd、dAb、dsFv、scFv、sc(Fv)2、CDR、ダイアボディ及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0027】
「アプタマー」とは、分子認識の観点から抗体の代替物となる分子のクラスである。アプタマーは、高い親和性及び特異性を持って実質的にあらゆるクラスの標的分子を認識する能力を備えるオリゴヌクレオチド又はオリゴペプチド配列である。このようなリガンドは、Tuerk C. and Gold L.、Science、1990、249(4968):505~10頁に記載の、ランダム配列ライブラリーの試験管内分子進化(SELEX)法によって単離することができる。ランダム配列ライブラリーは、コンビナトリアルケミストリによるDNA合成により取得可能である。このライブラリーでは、各メンバは、ユニーク配列の、事実上化学的に修飾されている、直線状オリゴマーである。このクラスの分子についての可能な修飾、用途及び利点については、Jayasena S.D.、Clin. Chem.、1999、45(9):1628~50頁に総説がある。次いで、上記の通りにHIRAに対するアプタマーを同定した後に、当業者であればHIRAを阻害するものを容易に選択することができる。好ましくは、アプタマーは、10から30Daのオリゴヌクレオチド又はポリペプチドである。
【0028】
特定の実施形態では、本発明による抗体、抗体断片又はアプタマーは、HIRAのLeu464、Cys465及びIle466からなる群のうちから選択される1個若しくはいくつかのアミノ酸に、又は、HBVカプシドタンパク質のSer78、His80、Cys136、Leu137、Thr138、Phe139、Gly140、Arg141、及びThr171からなる群のうちから選択される1個又はいくつかのアミノ酸に、特異的に結合する
【0029】
好ましい実施形態では、本発明による抗体、抗体断片又はアプタマーは:
- HIRAのアミノ酸464~466、又は
- HBVカプシドタンパク質のアミノ酸78~80、又は
- HBVカプシドタンパク質のアミノ酸136~141(配列番号36)、又は
- HBVカプシドタンパク質のアミノ酸171
に特異的に結合する。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明による抗体、抗体断片又はアプタマーは:
- HIRAのアミノ酸464~466、又は
- HBVカプシドタンパク質のアミノ酸136~141(配列番号36)
に特異的に結合する。
【0031】
化合物がHIRA阻害剤であるか否かを判定する方法は、当業者に良く知られている。例えば、当業者であれば、化合物がHIRA発現を低下させるか否かを評価することができる。本発明によれば、「HIRAの発現レベル」は、HIRA mRNA又はそのフラグメントを定量化することにより、又はHIRAタンパク質の量を定量化することにより決定される。例えば、HIRA mRNAの量はRT-qPCRによって定量化することができる。この分析に使用できるプライマーは、配列番号2~3の配列のプライマーとすることができる。
【0032】
化合物がHIRAの阻害剤であるか否かを判定する他の方法は、例えば、HIRAがある役割を果たすと知られている現象の1つを測定することにより、HIRAの生物活性を測定することによるものとしてよい。
【0033】
例えば、本発明者らは、HIRAが肝細胞におけるHBVのクロマチン化に関与していることを実証した。実際、HIRAの生物活性は、HBVに曝露された肝細胞のcccDNA量を測定することにより評価できる。cccDNAレベルは、特にcccDNA特異的プライマー及びcccDNA特異的プローブを使用したqPCRによって測定することができる。具体的には、cccDNA特異的プライマーは配列番号4~5の配列のプライマーとすることができ、cccDNA特異的プローブは配列番号6の配列のプローブとすることができる。これらのプライマー配列及びプローブの配列((table 1(表1)を参照されたい)
【0034】
【0035】
は、HBV rcDNAのニックにまたがり且つその「ギャップ領域」にハイブリッドを形成する。
【0036】
本発明者らは、HIRAがcccDNA及びHBcに結合することを実証したが、化合物がHIRAの阻害剤であるか否かを判定するその他の方法は、例えば、当該化合物の存在下で、cccDNA及び/又はHBcとのHIRAの相互作用の阻害を測定することによるものとしてよい。
【0037】
本発明の文脈において、「処置する」又は「処置」という用語は、治療用途(すなわち、所定の疾患を有する対象での)を指し、かかる障害又は状態の1つ又は複数の症状の進行を戻すこと、緩和すること、阻害することを意味する。したがって、処置とは、疾患の完全な治癒に至る処置だけでなく、疾患の進行を遅らせ、且つ/又は対象の生存を延長する処置も指す。
【0038】
「予防する」とは、予防的使用を意味する(すなわち、所定の疾患を発症しやすい対象において)。
【0039】
好ましくは、B型肝炎ウイルス感染症を予防し且つ/又は処置するのに使用するためのHIRA阻害剤を、対象に使用する。「対象」又は「個体」とは、例えば、HBV感染症に罹患している又はこれに罹患する可能性がある、ヒト又はげっ歯類(マウス、ラット)、ネコ、イヌ若しくは霊長類等の非ヒト哺乳類とすることができる。通常、対象はヒトである。
【0040】
HIRA阻害剤は、薬学的に許容される担体と一緒に、医薬組成物に有利には製剤化される。
【0041】
「薬学的に」又は「薬学的に許容される」とは、適宜、哺乳類、特にヒトに投与した場合に有害反応、アレルギー反応又は他の不都合な反応を生じることがない分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とは、非毒性の固体、半固体又は液体のフィラー、希釈剤、封入材料又は任意の種類の製剤補助剤を指す。
【0042】
本発明の組成物に使用できる薬学的に許容される担体及び賦形剤には、それらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化性薬物送達系(SEDDS)、例えば、d-a-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート、医薬剤形において使用される界面活性剤、例えばTweens又は他の類似のポリマー送達マトリックス、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、バッファ物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂、が含まれる。
【0043】
当業者であれば理解されるように、医薬組成物は、投与について意図された経路に適合するように適切に製剤化される。投与について適切経路の例には、局部経路、経口経路、鼻腔内経路、眼球内経路、非経口経路が含まれ、及び筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内又は局所の各注射が含まれる。組成物が経口投与に適した形態、すなわち、有効成分を胃腸の酵素から保護できる形態であれば、経口経路を使用することができる。好ましくは、本発明による使用のためのHIRA阻害剤は、局部経路、経口経路、鼻腔内経路、眼球内経路、非経口経路により、又は筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内又は局所の各注射により投与される。
【0044】
好ましくは、医薬組成物は注射用製剤について薬学的に許容される担体を含有する。これらは、特に、無菌で等張性の生理食塩水(リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウム等又はかかる塩の混合物)とすることができ、又は、適宜、滅菌水若しくは生理食塩水の添加により、注射用溶質を形成することができる乾燥した、特に、凍結乾燥の組成物とすることができる。
【0045】
投与に使用される用量を、様々なパラメータに応じて、特に使用される投与様式、関連する病状、或いは所望の処置期間に応じて適合することができる。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要な用量よりも低いレベルで、化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に高めることは、十分に当業者の範囲内である。しかし、製品の1日量は、成人1人当たり1日当たりに0.01から1,000mgの広い範囲にわたり変化させることができる。好ましくは、組成物は、処置される対象に対する投与量の対症調節向けに、有効成分0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500mgを含有する。医薬は、典型的には、有効成分約0.01mgから約500mg、好ましくは、有効成分1mgから約100mgを含有する。有効量の薬物は、1日当たりに、0.0002mg/kgから約20mg/kg体重、特に、1日当たりに約0.001mg/kgから7mg/kg体重の投与量レベルで、通常供給される。
【0046】
医薬組成物の所望の特性に、特に本発明によるHIRA阻害剤の安定性に関して、及び考慮される投与の経路に影響を与えないように、医薬組成物中の賦形剤の性質及び量を調整することは、当業者にとって通常である。
【0047】
好ましくは、本発明のHIRA阻害剤の有効量、好ましくは治療有効量が投与される。「有効量」とは、所望の治療結果又は予防結果を達成するのに、必要な投与量及び期間において、有効である量を指す。
【0048】
本発明のHIRA阻害剤の「治療有効量」とは、個体の病状、年齢、性別、及び体重、並びにHIRA阻害剤の能力等の要因に従って変化することができ、その結果、所望の治療結果を引き出す。治療有効量は、治療上有益な効果がHIRA阻害剤の任意の毒性又は有害作用を上回る量を、包含する。治療有効量は、有益性、例えば臨床的有益性を付与するのに十分な量も包含する。
【0049】
特定の実施形態では、本発明による使用のためのHIRA阻害剤は、HBVに感染した肝細胞の核におけるcccDNA量を減少させる。具体的には、HIRA阻害剤は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%、cccDNAレベルを低減させる。cccDNAレベルは、特にcccDNA特異的プライマー及びプローブを使用するqPCRにより測定することができる。具体的には、cccDNA特異的プライマーは配列番号4~5の配列のプライマーとすることができ、cccDNA特異的プローブは配列番号6の配列のプローブとすることができる。
【0050】
本発明はまた:
a)候補化合物の存在下及び非存在下で肝細胞をHBVに感染させる工程;
b)候補化合物の存在下及び非存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合を測定する工程;
c)候補化合物の存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合レベルを、候補化合物の非存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合レベルと比較する工程;並びに
d)候補化合物の存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合レベルが、候補化合物の非存在下でHBVに感染した肝細胞におけるHIRAのcccDNA又はHBcへの結合レベルと比較して、低下している場合、B型肝炎ウイルス感染症を予防し及び/又は処置するのに適すると、候補化合物を同定する工程、を含む、
B型肝炎ウイルス感染症を予防し且つ/又は処置するのに適した候補化合物を同定するためのin vitroスクリーニング方法にも関する。
【0051】
好ましくは、HIRAのcccDNA又はHBcへの結合の測定は:
a)肝細胞の核抽出;
b)得られた核の超音波処理;
c)HIRAに対する抗体又はHBcに対する抗体での免疫沈降;
d)得られた免疫複合体の精製;並びに
e)HIRA及びcccDNA又はHIRA及びHBcを含む免疫複合体の定量化、
を含む。
【0052】
「免疫複合体」とは、その標的に結合した、工程c)で使用される抗体を含む複合体を指す。具体的には、標的は、別の分子に、特に目的の結合パートナーに結合することができる。本発明による方法では、定量化される免疫複合体は:
1)工程c)でHIRAに対する抗体を使用する場合、(i)HIRAに対する抗体、HIRA及びcccDNA、若しくは(ii)HIRAに対する抗体、HIRA及びHBc、
又は
2)工程c)でHBcに対する抗体を使用する場合、HBcに対する抗体、HBc、及びHIRA
を含む。
【0053】
本発明による方法では、HIRAのcccDNAへの結合を測定するための免疫複合体の定量化が行われる、すなわちHIRAに対する抗体、HIRA及びcccDNAを含む免疫複合体の定量化が行われるが、これは、配列番号4~5の配列のプライマー及び配列番号6の配列のプローブ等のcccDNA特異的プライマー及びプローブを使用する定量的PCRによるのが好ましい。
【0054】
本発明による方法では、HIRAのHBcへの結合を測定するための免疫複合体の定量化が行われる、すなわちHIRAに対する抗体、HIRA及びHBc、又は、HBcに対する抗体、HBc及びHIRA、を含む免疫複合体の定量化が行われるが、これは、HIRAに対する抗体での免疫複合体のウエスタンブロット及び/又はHBcに対する抗体での免疫複合体のウエスタンブロットによるのが、好ましい。具体的には、HIRAに対する抗体、HIRA及びHBcを含む免疫複合体の定量化は、HBcに対する抗体でのウエスタンブロットにより行うのが好ましい。具体的には、HBcに対する抗体、HBc、及びHIRAを含む免疫複合体の定量化は、HIRAに対する抗体でのウエスタンブロットにより行うのが好ましい。
【0055】
本発明によるこれらの方法で使用できる抗体は、実施例で使用されるものであるのが好ましい(table 3(表3)を参照されたい)。
【0056】
本出願を通して、「含む(comprising)」という用語は、特に言及する全ての特徴、及び任意の、更なる、不特定の特徴をも包含するものと解釈されたい。本明細書で使用する場合「含む」という用語の使用はまた、特に言及する特徴以外の特徴が存在しない(すなわち、「からなる(consisting of)」)実施形態も開示する。
【0057】
更に、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。
【0058】
本発明について、以下の図及び実施例に鑑みて更に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】ウイルスパラメータ(cccDNA、全DNA、pgRNA、及び全RNA)に対する感染前のHIRA消失の効果を示す図である。 (A)HepG2-NTCP細胞を4日以内に2回トランスフェクトし、4日目にHBV 250vge/細胞(vge:ウイルスゲノムコピー又は均等物)に感染させ、次いで、2日後に採集した。細胞内の全HBV DNA及び全HBV RNAを抽出し、cccDNA、全HBV DNA、pgRNA(プレゲノムRNA)及び全HBV RNAの各定量化のためにqPCRに供した。ハウスキーピング遺伝子への正規化後に、結果をsiLUC(CTL)トランスフェクト細胞の百分率として表した。(B、C)HepG2-NTCP細胞を4日以内に2回トランスフェクトし、4日目にHBV 250vge/細胞に感染させ、続いて、感染後3日目と5日目にテノフォビル(Teno)処理(100μM)を行った。次いで、感染後1、2、3及び7日目に細胞を採集し、ウイルスパラメータを上記の通りに分析した。
【
図2】cccDNA上のHIRA結合、ヒストンH3結合及びヒストンバリアントH3.3結合の評価を示す図である。 (A) HepG2-NTCP細胞を2時間から3日まで、HBV 250vge/細胞に感染させた。架橋及び核抽出後、HIRA、panH3、及びH3.3ヒストン変異体に対する抗体を使用してChIP実験を実施した。そうした同じ細胞で、細胞内全HBV DNAを抽出し、T5で消化し、cccDNA qPCRで分析した(B)。全HBV RNAも抽出し、またレトロ転写(retrotranscribed)し、pgRNAの出現をqPCRによって分析した(C)。HKG=ハウスキーピング遺伝子。3
【
図3】HIRAのcccDNAへの結合及びcccDNAの確立におけるHBxの関与の評価を示す図である。 (A) 初代ヒト肝細胞を4時間から7日まで、HBV野生型(WT)又はΔHBxウイルス250vge/細胞に感染させた。架橋及び核抽出後、HIRAに対する抗体を使用してChIP実験を実施した。 (B) 4日以内にPHHを2回トランスフェクトし、4日目に2日間、HBV野生型又はΔHBxウイルス250vge/細胞に感染させた。細胞内全HBV DNAを抽出し、続いてcccDNA及び全HBV DNA(tDNA)のqPCR定量化を行った。
【
図4】HBVコアタンパク質とのHIRA相互作用の評価を示す図である。 HepG2-NTCP細胞を、2時間から3日まで、HBV 250vge/細胞に感染させた。架橋及び核抽出後に、HBcタンパク質に対する抗体を使用してChIP実験を実施した。
【
図5A】ウイルスcccDNAの確立に対する感染前のHIRAダウンレギュレーションの効果を示す図である。 (A) HIRAサイレンシングの実験タイムライン。HepG2-NTCP細胞をsiRNA抗HIRA又は非標的指向性siRNAで2回トランスフェクトし、次いで、4%PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞でHBVを16時間接種した。感染の2日後に分析のために細胞を採集した。
【
図5B】ウイルスcccDNAの確立に対する感染前のHIRAダウンレギュレーションの効果を示す図である。 (B) siRNAトランスフェクション後のHIRA mRNA発現及びタンパク質発現を、リアルタイムqPCR(左パネル)及びウエスタンブロット(右パネル)により、感染時(DO pi)及び細胞採集時(D2 pi)で決定した。デンシトメトリー分析の結果を画像の下に示す。
【
図5C】ウイルスcccDNAの確立に対する感染前のHIRAダウンレギュレーションの効果を示す図である。 (C) pi(感染後)2日目のcccDNA量をqPCR(左パネル)及びサザンブロッティング(右パネル)により測定した。HIRA mRNA発現はハウスキーピング遺伝子Gusbで正規化し、トランスフェクション試薬(TRA)で処理した細胞の百分率として表した。アクチンタンパク質を、ウエスタンブロッティング分析のローディング対照として利用した。cccDNA量は、トランスフェクション試薬(TRA)で処理した細胞の百分率として表した。サザンブロッティングでは、DIG結合プローブを使用してHBV DNA及びミトコンドリアDNAを明らかにした(材料及び方法のセクションを参照されたい)。ミトコンドリアDNAを内部ローディング対照として使用した。cccDNAバンドの特異性が、EcoRIでの消化後の直鎖状化によって実証されている。ミトコンドリアDNAシグナルで正規化されたcccDNAバンドのデンシトメトリー分析を、画像の下に示す。
【
図6】HIRAトランス補完(Transcomplementation)がcccDNAの確立をレスキューすることを示す図である。 (A) サイレンシング後のHIRA発現のレスキューの実験タイムライン。HepG2-NTCP細胞をsiRNA抗HIRA又は非標的指向性siRNAで2回トランスフェクトし(材料及び方法を参照されたい)、次いで、pEYFP-N1-HIRAでトランスフェクトした後に、4%PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞でHBVを16時間接種した。感染の2日後に分析のために細胞を採集した。 (B) siRNAトランスフェクション後のHIRA mRNA発現及びタンパク質発現を、リアルタイムqPCR(左パネル)及びウエスタンブロット(右パネル)により、感染時及び細胞採集時で決定した。 (C)pi2日目のcccDNA量をqPCRにより測定した。HIRA mRNA発現はハウスキーピング遺伝子Gusbで正規化し、トランスフェクション試薬(TRA)で処理した細胞の百分率として表した。アクチンタンパク質を、ウエスタンブロッティング分析のローディング対照として利用した。cccDNA量は、トランスフェクション試薬(TRA)で処理した細胞の百分率として表した。
【
図7A】cccDNAへのHIRA結合及びヒストン変異体H3.3結合の評価を示す図である。HepG2-NTCP細胞を4%PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞で16時間までの間感染させ、次いで、広範囲に洗浄し、指定された時点の間培養し、その後に、HIRA(A)、H3.3(B)、RNAポリメラーゼII(C)、及びE2F(D)に対する抗体を使用して、ChIP分析を行った。E2F ChIPを陰性対照として使用した。免疫沈降したcccDNAを、qPCRにより定量化し、NoAb条件で正規化した後にインプットの百分率として表した。(E~F) HepG2-NTCP感染細胞におけるウイルスcccDNA及び3.5Kb RNAのqPCR定量化。cccDNAの定量化はb-グロビン量で正規化されており、一方、相対的RNA量はハウスキーピング遺伝子GUSB発現で正規化することにより計算した。グラフは、少なくとも3つの独立した実験の平均を表す。NoAb:無抗体;LLoD:検出の下限。
【
図7B】cccDNAへのHIRA結合及びヒストン変異体H3.3結合の評価を示す図である。HepG2-NTCP細胞を4%PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞で16時間までの間感染させ、次いで、広範囲に洗浄し、指定された時点の間培養し、その後に、HIRA(A)、H3.3(B)、RNAポリメラーゼII(C)、及びE2F(D)に対する抗体を使用して、ChIP分析を行った。E2F ChIPを陰性対照として使用した。免疫沈降したcccDNAを、qPCRにより定量化し、NoAb条件で正規化した後にインプットの百分率として表した。(E~F) HepG2-NTCP感染細胞におけるウイルスcccDNA及び3.5Kb RNAのqPCR定量化。cccDNAの定量化はb-グロビン量で正規化されており、一方、相対的RNA量はハウスキーピング遺伝子GUSB発現で正規化することにより計算した。グラフは、少なくとも3つの独立した実験の平均を表す。NoAb:無抗体;LLoD:検出の下限。
【
図7C】cccDNAへのHIRA結合及びヒストン変異体H3.3結合の評価を示す図である。HepG2-NTCP細胞を4%PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞で16時間までの間感染させ、次いで、広範囲に洗浄し、指定された時点の間培養し、その後に、HIRA(A)、H3.3(B)、RNAポリメラーゼII(C)、及びE2F(D)に対する抗体を使用して、ChIP分析を行った。E2F ChIPを陰性対照として使用した。免疫沈降したcccDNAを、qPCRにより定量化し、NoAb条件で正規化した後にインプットの百分率として表した。(E~F) HepG2-NTCP感染細胞におけるウイルスcccDNA及び3.5Kb RNAのqPCR定量化。cccDNAの定量化はb-グロビン量で正規化されており、一方、相対的RNA量はハウスキーピング遺伝子GUSB発現で正規化することにより計算した。グラフは、少なくとも3つの独立した実験の平均を表す。NoAb:無抗体;LLoD:検出の下限。
【
図7D】cccDNAへのHIRA結合及びヒストン変異体H3.3結合の評価を示す図である。HepG2-NTCP細胞を4%PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞で16時間までの間感染させ、次いで、広範囲に洗浄し、指定された時点の間培養し、その後に、HIRA(A)、H3.3(B)、RNAポリメラーゼII(C)、及びE2F(D)に対する抗体を使用して、ChIP分析を行った。E2F ChIPを陰性対照として使用した。免疫沈降したcccDNAを、qPCRにより定量化し、NoAb条件で正規化した後にインプットの百分率として表した。(E~F) HepG2-NTCP感染細胞におけるウイルスcccDNA及び3.5Kb RNAのqPCR定量化。cccDNAの定量化はb-グロビン量で正規化されており、一方、相対的RNA量はハウスキーピング遺伝子GUSB発現で正規化することにより計算した。グラフは、少なくとも3つの独立した実験の平均を表す。NoAb:無抗体;LLoD:検出の下限。
【
図7E】cccDNAへのHIRA結合及びヒストン変異体H3.3結合の評価を示す図である。HepG2-NTCP細胞を4%PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞で16時間までの間感染させ、次いで、広範囲に洗浄し、指定された時点の間培養し、その後に、HIRA(A)、H3.3(B)、RNAポリメラーゼII(C)、及びE2F(D)に対する抗体を使用して、ChIP分析を行った。E2F ChIPを陰性対照として使用した。免疫沈降したcccDNAを、qPCRにより定量化し、NoAb条件で正規化した後にインプットの百分率として表した。(E~F) HepG2-NTCP感染細胞におけるウイルスcccDNA及び3.5Kb RNAのqPCR定量化。cccDNAの定量化はb-グロビン量で正規化されており、一方、相対的RNA量はハウスキーピング遺伝子GUSB発現で正規化することにより計算した。グラフは、少なくとも3つの独立した実験の平均を表す。NoAb:無抗体;LLoD:検出の下限。
【
図7F】cccDNAへのHIRA結合及びヒストン変異体H3.3結合の評価を示す図である。HepG2-NTCP細胞を4%PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞で16時間までの間感染させ、次いで、広範囲に洗浄し、指定された時点の間培養し、その後に、HIRA(A)、H3.3(B)、RNAポリメラーゼII(C)、及びE2F(D)に対する抗体を使用して、ChIP分析を行った。E2F ChIPを陰性対照として使用した。免疫沈降したcccDNAを、qPCRにより定量化し、NoAb条件で正規化した後にインプットの百分率として表した。(E~F) HepG2-NTCP感染細胞におけるウイルスcccDNA及び3.5Kb RNAのqPCR定量化。cccDNAの定量化はb-グロビン量で正規化されており、一方、相対的RNA量はハウスキーピング遺伝子GUSB発現で正規化することにより計算した。グラフは、少なくとも3つの独立した実験の平均を表す。NoAb:無抗体;LLoD:検出の下限。
【
図7G】cccDNAへのHIRA結合及びヒストン変異体H3.3結合の評価を示す図である。HepG2-NTCP細胞を4%PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞で16時間までの間感染させ、次いで、広範囲に洗浄し、指定された時点の間培養し、その後に、HIRA(A)、H3.3(B)、RNAポリメラーゼII(C)、及びE2F(D)に対する抗体を使用して、ChIP分析を行った。E2F ChIPを陰性対照として使用した。免疫沈降したcccDNAを、qPCRにより定量化し、NoAb条件で正規化した後にインプットの百分率として表した。(E~F) HepG2-NTCP感染細胞におけるウイルスcccDNA及び3.5Kb RNAのqPCR定量化。cccDNAの定量化はb-グロビン量で正規化されており、一方、相対的RNA量はハウスキーピング遺伝子GUSB発現で正規化することにより計算した。グラフは、少なくとも3つの独立した実験の平均を表す。NoAb:無抗体;LLoD:検出の下限。
【
図7H】cccDNAへのHIRA結合及びヒストン変異体H3.3結合の評価を示す図である。HepG2-NTCP細胞を4%PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞で16時間までの間感染させ、次いで、広範囲に洗浄し、指定された時点の間培養し、その後に、HIRA(A)、H3.3(B)、RNAポリメラーゼII(C)、及びE2F(D)に対する抗体を使用して、ChIP分析を行った。E2F ChIPを陰性対照として使用した。免疫沈降したcccDNAを、qPCRにより定量化し、NoAb条件で正規化した後にインプットの百分率として表した。(E~F) HepG2-NTCP感染細胞におけるウイルスcccDNA及び3.5Kb RNAのqPCR定量化。cccDNAの定量化はb-グロビン量で正規化されており、一方、相対的RNA量はハウスキーピング遺伝子GUSB発現で正規化することにより計算した。グラフは、少なくとも3つの独立した実験の平均を表す。NoAb:無抗体;LLoD:検出の下限。
【
図8】慢性感染中のHIRAダウンレギュレーションの効果を示す図である。 HepG2-NTCP細胞を4% PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞で16時間までの間感染させ、次いで、広範囲に洗浄し、指定された時点の間培養し、その後に、HIRAに対する抗体を使用して(A)又はHIRAに対する抗体、次いでHBc対する抗体を使用して(B)、ChIP分析を行った。免疫沈降したcccDNAを、qPCRで定量化し、インプットの百分率として表した。(C~D)確定感染にサイレンシング実験を実施した。HepG2-NTCP細胞を4% PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞でHBVに感染させた。5日後、細胞をsiRNA抗HIRA又は非標的指向性siRNAで2回トランスフェクトした。第2のトランスフェクションの48時間後(すなわち、感染後9日目)に細胞を採集した。(C) siRNAトランスフェクション後のHIRA mRNA発現をリアルタイムqPCRにより決定した。HIRA mRNA発現はハウスキーピング遺伝子Gusbで正規化し、トランスフェクション試薬(TRA)で処理した細胞の百分率として表した。(D) cccDNA量をqPCRにより測定した。cccDNA量は、トランスフェクション試薬(TRA)で処理した細胞の百分率として表した。NoAb:無抗体。
【
図9】HIRAのcccDNAへの結合及びcccDNAの確立におけるHBx関与の評価を示す図である。 (A) HepG2-NTCP細胞を4%PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞で4時間感染させた。cccDNA上のHIRA及びH3.3のレベルをChlPqPCRによって分析した。(B)
図6Aに示した実験タイムラインに従って、HepG2-NTCP細胞を、HIRAに対するsiRNAでトランスフェクトし、4%PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞でHBVで16時間接種した。感染の2日後に分析のために細胞を採集した。pi2日目のcccDNA量をqPCRにより測定し、トランスフェクション試薬(TRA)で処理した細胞の百分率として表した。
【
図10A】HBVコアタンパク質とのHIRA相互作用の評価を示す図である。 (A) HepG2-NTCP細胞を4%PEG8000の存在下でMOI 250vge/細胞で16時間までの間感染させ、次いで、広範囲に洗浄し、指定された時点の間培養し、その後に、HBc対する抗体を使用してChIP分析を行った。cccDNA上のHBcレベルをChlPqPCRによる感染動態により分析した。
【
図10B】HBVコアタンパク質とのHIRA相互作用の評価を示す図である。 (B) 同じcccDNA分子上でのHIRA及びHBcの同時存在を、HIRAに対する抗体を最初に使用して、次に免疫沈降用の抗体抗HBcを使用して、感染の24時間後にシーケンシャルChlPqPCRにより評価した。
【
図10C】HBVコアタンパク質とのHIRA相互作用の評価を示す図である。 (C) HBcとHIRAの間の近接性を、感染24時間後にHBVに感染したHepG2-NTCP細胞で近接ライゲーションアッセイ(PLA)により評価した。PLAシグナルは矢印で示されている。非感染HepG2-NTCP細胞及びHBc抗体又はHIRA抗体のみで染色した感染HepG2-NTCP細胞を陰性対照として使用した(右パネル)。
【
図10D】HBVコアタンパク質とのHIRA相互作用の評価を示す図である。 (D) HBc発現を誘導するためにテトラサイクリン10μg/mlで48時間処理したHepaRG-TR-HBc細胞中で、HBcとHIRAの間の共免疫沈降を実現した。細胞溶解物をHBcに対する抗体で免疫沈降させ、抗体抗HBc及びHIRAを用いたウエスタンブロッティング分析に供した。テトラサイクリンで処理していないHepaRG-TR-HBc細胞由来の溶解物を陰性対照として使用した。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
HIRAの役割の研究
材料及び方法
siRNAトランスフェクション
HIRAに対するsiRNA(それぞれの:ON-TARGETplus HIRA siRNA;ON-TARGETplus LUC siRNA、Dharmacon社)(Table 2(表2))
【0061】
【0062】
及びルシフェラーゼ(10nM)を、Lipofectamine RNAiMAX(ThermoFisher社)を使用して、製造元のプロトコルに従って、感染前にHepG2-NTCP細胞及びPHH中に、トランスフェクトした。
【0063】
細胞培養、HBV感染及び複製中のウイルスパラメータの分析
HepG2-NTCP細胞を、ペニシリン(Life Technology社)、ストレプトマイシン(Life Technology社)、ピルビン酸ナトリウム(Life Technology社)、5%ウシ胎児血清(FCS; Fetalclone II(商標)、PERBIO社)を添加したDMEM培地で、105細胞/cm2で播種した。翌日、培地を取り替え、2.5%DMSO(SIGMA社)で補完した。72時間後、4%PEG800の存在下で16時間、感染多重度250で細胞を感染させた。次いで、細胞をPBSで広範囲に洗浄し、採集するまで2.5%DMSOを含有する完全DMEM培地で維持した。ウイルスのRNA及びDNAの細胞内蓄積、HBe抗原及びHBs抗原の分泌は、それぞれRT-qPCR、qPCR及びサザンブロッティング、及びELISAによってモニタリングした。要約すると、HBeAg及びHBsAgは、製造元の指示書に従って化学発光免疫測定キット(Autobio社、中国)を使用して、ELISAにより培養培地で定量化した。MasterPure(商標)Complete DNA Purification Kit(Epicentre社)を使用して、感染細胞から全DNAを精製した。HBV cccDNA検出の特異性を高めるために3ヌクレアーゼ消化を行ったが、これは、HBV rcDNAのニックにまたがり且つその「ギャップ領域」にハイブリッドを形成するプライマー(及びプローブ)の使用に基づいて(table 1(表1)を参照されたい)、選択的cccDNA qPCRの前に、全DNA500ngで37℃で45分間、T5エキソヌクレアーゼ(Epicentre社)10Uを使用して、行った。
【0064】
NucleoSpin(登録商標)RNAキット(Macherey-Nagel社)を使用して感染細胞から全RNAを抽出し、製造元の指示書(Invitrogen社、Carlsbad、米国)に従ってSuperscript III逆転写酵素を使用してcDNAにレトロ転写した。Applied QuantStudio 7 machine及びTaqMan Advanced Fast Master Mix又はSYBR Green Master Mixを使用して、全HBV DNA及びcccDNAのリアルタイムPCRを実行した(プライマー及びプローブの例を参照されたい、table 1(表1))。
【0065】
Hirt手順及びサザンブロット分析
DNAは、修正Hirt手順に従って抽出した(Hirt B. Selective extraction of polyoma DNA from infected mouse cell cultures.J Mol Biol. 1967)。製造業者の指示書に従って、DIG標識プローブ、APコンジュゲート抗DIG抗体(Roche社)及びCDP-Star(登録商標)(Roche社)の混合物を使用して、DNA 90μgをサザンブロット分析に供した。
【0066】
クロマチン免疫沈降(ChIP)
ChIP実験は、感染後2時間から3日まで、感染細胞で行った。細胞をリン酸バッファ生理食塩水(PBS)で洗浄し、37℃で1%ホルムアルデヒドとともに15分間インキュベートし、0.125Mグリシンでクエンチした。核抽出物の調製の場合、細胞を溶解バッファ(PIPES 5mM、KCl 85mM、NP-40 0.5%、PMSF 1mM、プロテアーゼ阻害剤カクテル(PIC)1×)で溶解した。ダウンシング(douncing)(10回)及び遠心分離後、核を超音波処理バッファ(SDS 1%、EDTA 10mM、Tris-HCl pH8 50mM、PMSF 1mM、PIC 1×)に再懸濁した。超音波処理の後、プロテインAセファロースを用いてRipaバッファでクロマチンを清浄し、次いで、抗体2~5μgを使用して4℃で一晩、免疫沈降に供した。次いで、免疫複合体をプロテインGアガロースビーズと4℃で2時間インキュベートし、洗浄し、Tris-HCl pH8 10mM、EDTA 5mM、NaCl 50mM、SDS 1%、Proteinase K 50μg、PIC 1×、に溶出した。免疫沈降したDNAを抽出し、cccDNA特異的プライマー(table 1(表1)を参照されたい)を使用してqPCRによって定量化した。試料は、ΔCt=Ct(インプット)-Ct(免疫沈降)であるΔCt法を使用して、インプットDNAに正規化し、インプットの百分率として表した。
【0067】
共免疫沈降
共免疫沈降実験をHepaRG-TR-HBc細胞で行ったが、ここで、HBcタンパク質の発現はドキシサイクリン処理(10μg/ml)すると誘導できる。核抽出及び抗体インキュベーションをChIP実験のように実施した(上を参照されたい)。次いで、免疫複合体をプロテインGアガロースビーズと4℃で2時間インキュベートし、洗浄し、2×Laemmliバッファ(65.8mM Tris-HCl、pH6.8、2.1%SDS、26.3%(w/v)グリセロール、0.01%ブロモフェノール青)に溶出して、タンパク質を放出及び変性させた。全細胞溶解物(インプット)を6×Laemmliバッファでインキュベートした。タンパク質を標準の12%勾配ゲルで分離し、ニトロセルロース膜にブロットした。ブロットを5%ミルクのPBSで1時間ブロックし、4℃で一晩、ブロッキングバッファ中の一次抗体で染色した(HIRA 1:500、HBc 1:500)。一次抗体のインキュベーション後に、ブロットをTBS-Tween(TBST、0.2M Tris-HCl 1.5M NaCl、0.05 Tween 20)で3回洗浄し、二次抗体で室温で1時間染色し、TBSTで3回再度洗浄した。検出については、Biorad Clarity Western ECL及びChemiDoc XRSシステム(Biorad社)を使用して行った。
【0068】
近接ライゲーションアッセイ
近接ライゲーションアッセイ(PLA)は、製造元の指示書(DU092014Duolink(登録商標)、DUO92004Duolink(登録商標)、DUO92002Duolink(登録商標)、及びDUO82040Duolink(登録商標))に従って、HepG2-NTCP感染細胞で実施した。要約すると、室温(RT)で30分間4%PFAにより固定し、1Mグリシンによりクエンチした後、PBS-Triton 0.3%でRTで30分間細胞を透過処理し、次いで、37℃で30分間ブロッキングバッファでブロックした。細胞を2つの一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。PLAプローブを希釈し、37℃で1時間カバースリップに加えた。37℃で30分間のライゲーション工程の後に、37℃で100分間増幅した。最後に、DAPIを含むMounting Mediumで、カバースリップをスリップ上に搭載した。
【0069】
抗体
ChIP及び共免疫沈降実験は、以下の抗体を使用して実施した。
【0070】
【0071】
結果
本発明者らは、siRNA媒介ノックダウン(siHIRA)によって、HBV cccDNAの確立及び複製に対するHIRAダウンレギュレーションの効果を調査した。HIRAノックダウンの効率は、対照としてルシフェラーゼsiRNA(CTL)を使用して、トランスフェクション後のHIRA mRNAレベルを定量化することによって決定した。siHIRAのトランスフェクションは、トランスフェクション後24時間から96時間までHIRA mRNAの内因性レベルをほぼ70%低減させ、感染後2日目でほぼ50%の消失のままであった(
図1A)が、一方、ルシフェラーゼsiRNAはHIRA mRNAレベルに対して全く効果が無かった。
【0072】
qPCR分析は、HIRA発現のノックダウンにより、特に、細胞内全HBV DNA、全HBV RNA、及びプレゲノム(pg)RNAの低下を伴って、cccDNAレベルが50%低減するという結果を示した(
図1A)。サザンブロッティング分析により、とりわけ感染後3日目に、cccDNAの低減が確認された。反対に、rcDNAレベルは安定したままで、ウイルス侵入の欠落を排除し、且つrcDNAからcccDNAへの移行が不完全であるか遅延するかいずれかである可能性を示唆している。Tenofovir(Teno)、pgRNAからrcDNAへの変換をブロックするヌクレオシドアナログを使用すると、細胞質からのヌクレオカプシドのリサイクルを阻害することが可能となった。この条件では、HIRA mRNAが基礎レベルに戻った場合(
図1B)、感染後7日目でもcccDNA量はダウンレギュレートされたままであったが、一方、未処理の細胞ではcccDNAレベルは基礎レベルに戻った(
図1C)。これらの結果が示唆するところは、HIRA消失が、ヌクレオカプシドのリサイクルを圧倒する必要があるcccDNA形成の遅延につながるのではなく、cccDNA形成の遮断につながることである。
【0073】
クロマチン免疫沈降分析により、HIRAは、既に感染後2時間でcccDNAに結合していることがわかった(
図2A)。この結合は、感染後3日まで持続した。HIRAのリクルートメントは、ヒストン変異体H3.3の沈着と付随して起こった。実際、cccDNA上のH3.3の存在は、感染後2時間後に観察でき、24時間まで安定であり、感染48時間後に増加した。
【0074】
安定ヌクレオソームの成分である全ヒストンH3に関しては、これは、感染後2時間~8時間の間で早期のリクルートメントを示し、次いで、結合の第2波が、これはより遅く且つより進行性であるが、感染後12時間から始まり、感染後72時間でなお上昇していた。感染48時間後のcccDNAへのH3.3結合及び全H3結合の増加は、qPCRによる出現に関するpgRNA動態によって指示される通り、cccDNA転写活性の開始と相関していた(
図2B、
図2C)。
【0075】
HIRA-媒介cccDNAの確立におけるウイルスタンパク質HBxの関与の可能性を調査するために、本発明者らはΔHBxウイルス株を利用した。クロマチン免疫沈降分析により、cccDNAへのHIRA結合はHBxタンパク質の非存在によって影響されないことがわかった(
図3A)。同様に、Xタンパク質発現の非存在下でのHIRAのsiRNA媒介ノックダウンにより、WTウイルスと比較して、cccDNAレベル及び細胞内全HBV DNAは同様に低減するという結果であった(
図3B)。
【0076】
ChIP実験により、本発明者らは、HBVミニ染色体上のHIRAのリクルートメントと相関して(
図2A)、HBcが感染2時間後早くもcccDNAに結合することを実証できた(
図4)。次いで、本発明者らは、上記2つのタンパク質間の相互作用の可能性を調査することにした。第1に、共免疫沈降により、本発明者らは、HIRAが、誘導性の様式でHBcを発現するHepaRG細胞株においてHBcと相互作用できることを示した。第2に、発明者らは、HBV感染肝細胞で近接ライゲーションアッセイ(PLA)を実行し、感染後24時間すぐのHBcとHIRAとの間の相互作用を示した。
【0077】
全体で、本発明者の結果が示唆するところは、外来ウイルスDNAのクロマチン化は非常に初期の事象であり、ヒストンシャペロンHIRAが必要であること、したがって、cccDNAとのHIRA相互作用の阻害とは、調査すべき新しい治療標的を意味しているかもしれないこと、である。HBxはこのプロセスに必要ではないが、HBcは主要な役割を果たす可能性もあり、したがって、cccDNAにHIRAをリクルートする際のHBcの特定の役割を調査することについて新しい展望が、HBcによって開かれる。
【0078】
(実施例2)
HIRAの役割の補完的研究
方法及び材料
野生型HBVウイルス接種源及び変異HBVウイルス接種源の産生
HBV接種源を、ポリエチレン-グリコール-MW-8000(PEG8000、SIGMA社)沈降(8%最終)により、ろ過したHepAD38細胞(Ladnerら、1997)又はK6(HBx陰性ウイルス;Luciforaら、JHep 2011)上澄液から調製した。力価が少なくとも1×1010vge/mLに達するウイルスストックをエンドトキシンフリーについて試験し、感染に使用した。
【0079】
細胞培養及びHBV感染
HepG2-NTCP細胞を、ペニシリン(Life Technology社)、ストレプトマイシン(Life Technology社)、ピルビン酸ナトリウム(Life Technology社)、5%ウシ胎児血清(FCS;Fetalclone II(商標)、PERBIO社)を添加したDMEM培地に105細胞/cm2で播種した。翌日、培地を取り替え、2.5%DMSO(SIGMA社)を補完した。72時間後、細胞を4%PEG800の存在下で16時間までの間感染多重度250で感染させ、次いで広範囲に洗浄し、採集するまで2.5%DMSOを含有する完全DMEM培地で指定された時点の間培養した。ウイルスRNA及びウイルスDNAの細胞内蓄積を、RT-qPCR、qPCR、及びサザンブロッティングによってモニタリングした。デノボDNA合成分析の場合、細胞は感染の24時間前及びウイルス接種中に20μM BrdU(Sigma社)で処理した。
【0080】
複製中のウイルスパラメータの分析及びqPCR
MasterPure(商標)Complete DNA Purification Kit(Epicentre社)を使用して、感染細胞から全DNAを精製した。TaqMan(登録商標)Gene Expression assay ID:Pa03453406_s1を使用して、全HBV DNAを定量化した。HBV cccDNA検出の特異性を高めるため、qPCRに先行して、全DNA500ngについてT5エキソヌクレアーゼ(Epicentre社)10Uを使用してヌクレアーゼ消化を行った。HBV rcDNAの「ギャップ領域」にまたがるプライマー及びプローブを使用して(Table 4(表4)を参照されたい)、
【0081】
【0082】
選択的cccDNA qPCRを実行した。HBV単量体プラスミド(pHBV-EcoRI)の連続希釈液を定量化の標準液として使用した。正規化については、ヒトb-グロビン(TaqMan(登録商標)アッセイID Hs00758889_s1)を測定することによりヒト肝細胞の数を推定し、一方、ヒトゲノムDNA(Roche Applied Science社、Mannheim、ドイツ)を定量化の標準曲線として使用した。NucleoSpin(登録商標)RNAキット(Macherey-Nagel社)を使用して感染細胞から全RNAを抽出し、製造元の指示書(Invitrogen社、Carlsbad、米国)に従ってSuperscript III逆転写酵素を使用してレトロ転写した。3.5kbのウイルスRNA(pgRNA及びプレコアRNAを含む)及び全HBV RNAを、前述のプライマー及びプローブを使用して増幅した(Table 4(表4))。HIRA mRNA発現のプライマーをTable 4(表4)に列記する。ヒトハウスキーピング遺伝子GUSb(TaqMan(登録商標)アッセイID Hs00939627_m1)の発現を正規化に使用した。Applied QuantStudio 7 machine及びTaqMan Advanced Fast Master Mix又はSYBR Green Master Mix(ThermoFischer社)を使用して、リアルタイムPCRを実行した。
【0083】
プラスミド及びsiRNA細胞のトランスフェクション
pEYFP-N1-HIRA構築物を、製造元のプロトコルに従ってTransIT-2020(MirusBio LLC社)を使用してHepG2-NTCP細胞及びPHHにトランスフェクトした。HIRAを標的とするsiRNA(ON-TARGETplus HIRA siRNA GGAUAACACUGUCGUCAUC、配列番号1)及び陰性対照として利用する9-11位で変異させた相応するsiRNA(siRNA CTL:GGAUAACAGACUCGUCAUC、配列番号13)を、製造元の指示書に従って、Lipofectamine RNAiMAX試薬(ThermoFisher社)を使用してHepG2-NTCP細胞及びPHHに、10nMの濃度で、トランスフェクトした
【0084】
Hirt抽出及びサザンブロット分析
DNAを、修正Hirt手順に従って抽出した。DNA90μgを、製造元の指示書に従って、DIG標識プローブ(下に列記のプライマーと「PCR DIGプローブ合成キット」(Roche社)を使用して合成)、APコンジュゲート抗DIG抗体(Roche社)及びCDP-Star(登録商標)(Roche社)の混合物を使用して、サザンブロット分析に供した。ミトコンドリアDNAを内部ローディング対照として利用した。
【0085】
【0086】
【0087】
クロマチン免疫沈降(ChIP)
ChIP実験は、感染後指定された時点(30分から72時間まで)で行った。要約すると、細胞をリン酸バッファ生理食塩水(PBS)で洗浄し、37℃で1%ホルムアルデヒドとともに15分間インキュベートし、0.125Mグリシンでクエンチした。核抽出物の調製の場合、細胞を溶解バッファ(PIPES 5mM、KCl 85mM、NP-40 0.5%、PMSF 1mM、プロテアーゼ阻害剤カクテル(PIC)1×)で溶解した。ダウンシング(douncing)(10回)及び遠心分離後、核を超音波処理バッファ(SDS 1%、EDTA 10mM、Tris-HCl pH8 50mM、PMSF 1mM、PIC 1×)に再懸濁した。超音波処理の後、プロテインAセファロースを用いてRipaバッファでクロマチンを清浄し、次いで、Table 4(表4)に指示されている抗体2~5μgを使用して、又は無抗体で4℃で一晩、免疫沈降に供した。次いで、免疫複合体をプロテインGアガロースビーズと4℃で2時間インキュベートし、洗浄し、Tris-HCl pH8 10mM、EDTA 5mM、NaCl 50mM、SDS 1%、Proteinase K 50μg、PIC 1×、に溶出した。免疫沈降したDNAを抽出し、cccDNA特異的プライマーを使用してqPCRによって定量化した(table 4(表4)を参照されたい)。試料は、ΔCt=Ct(インプット)-Ct(免疫沈降)であるΔCt法を使用してインプットDNAに正規化し、無抗体シグナルで正規化後にインプットの百分率として表した。
【0088】
シーケンシャルクロマチン免疫沈降
一晩の免疫沈降まで、ChIP実験のように細胞を処理した。次いで、免疫複合体をプロテインGアガロースビーズと4℃で2時間インキュベートし、洗浄し、10mM DTTに溶出した。次いで、Re-ChIPバッファ(1%Triton X-100; 2mM EDTA;150mM NaCl;20mM Tris-HCl pH8)中の抗体2~5μgを使用して、溶出試料を4℃での一晩の免疫沈降に再び曝した。次いで、免疫複合体を、上記の標準的なクロマチン免疫沈降のように処理した。
【0089】
ウエスタンブロッティング
細胞を、PIC 1×及びPMSF 1×を添加したRIPAバッファに溶解させた。タンパク質を、4~20% mini-PROTEAN@TGX stain-Free(商標)Precast Gel(Bio-Rab Laboratories社)に移行させ、ニトロセルロース膜(Bio-Rab Laboratories社)上へと移した。ブロットを5%ミルクのTBS(1×Tris Buffered Saline(Sigma社))で1時間ブロックし、4℃で一晩、ブロッキングバッファの一次抗体で染色した。一次抗体のインキュベーション後に、ブロットをTBST(0.1%Tween 20を含む1×TBS)で3回洗浄し、HRP-コンジュゲート二次抗体で室温で1時間染色し、TBSTで3回再度洗浄した。検出については、Biorad Clarity Western ECL及びChemiDoc XRSシステム(Biorad社)を使用して行った。抗体をTable 7(表7)
【0090】
【0091】
に列記する。
【0092】
タンパク質共免疫沈降(co-IP)
タンパク質共免疫沈降実験を、HepaRG-TR-HBc細胞株で行った。HBcの発現は48時間ドキシサイクリン処理(10μg/ml)により誘導した。核抽出及び抗体インキュベーションをChIP実験のように実施した。次いで、免疫複合体をプロテインGアガロースビーズと4℃で2時間インキュベートし、洗浄し、2×laemmliバッファ(65.8mM Tris-HCl、pH6.8、2.1%SDS、26.3%(w/v)グリセロール、0.01%ブロモフェノール青)に溶出して、タンパク質を放出及び変性させた。細胞溶解物の1/10を、インプット条件として利用する、6×laemmliバッファでインキュベートし、前述の通り、免疫沈降試料と一緒にウエスタンブロッティング分析に供した。使用した抗体をTable 7(表7)に列記する。
【0093】
近接ライゲーションアッセイ
製造元の指示書(DUO92014Duolink(登録商標)、DUO92004Duolink(登録商標)、DUO92002Duolink(登録商標)、及びDUO82040Duolink(登録商標))に従って、感染したHepG2-NTCP細胞で近接ライゲーションアッセイ(PLA)を実施した。要約すると、RTで30分4%PFAで固定し、1Mグリシンでクエンチした後、PBS-Triton 0.3%でRTで30分間細胞を透過処理し、次いで、37℃でブロッキングバッファで30分ブロックした。2つの一次抗体とともに4℃で一晩細胞をインキュベートした(Table 7(表7)を参照されたい)。PLAプローブを希釈し、37℃で1時間カバースリップに加えた。37℃で30分間のライゲーション工程の後に、増幅を37℃で100分間実施した。最後に、DAPIを含むMountingMediumで、カバースリップをスリップ上に搭載した。画像を共焦点顕微鏡ツァイスLSM 780 NLOで取得した。
【0094】
結果
本発明者らは、siRNA媒介ノックダウン(siHIRA)によって、HBV cccDNAの確立及び複製に対するHIRAダウンレギュレーションの効果を調査した。HIRAノックダウンの効率は、対照として位置9及び11で変異した抗HIRA siRNA(CTL)を使用して、トランスフェクション後のHIRA mRNAレベルを定量化することによって決定した。siHIRAのトランスフェクションは、HIRA mRNAレベル及びタンパク質レベルの内因性レベルをほぼ70%低減させたが、一方、ルシフェラーゼsiRNAはHIRA mRNA発現又はタンパク質発現に対して全く効果が無かった(
図5B)。
【0095】
qPCR分析は、HIRA発現のノックダウンにより、qPCR及びサザンブロッティングにより測定されたcccDNAレベルが50%低減するという結果を示した(
図1C)。反対に、rcDNAレベルは依然として安定しており、ウイルス侵入の欠落を排除し、且つrcDNAからcccDNAへの移行が不完全であるか遅延するかいずれかである可能性を示唆している。
【0096】
HBV cccDNAの確立におけるHIRAの関与を更に確認するために、HBV感染の8時間前にpEYFP-N1-HIRA構築物をトランスフェクトすることによりHepG2-NTCP細胞でサイレンシングした後に、HIRA発現をレスキューした(
図6A)。qRT-PCR及びウエスタンブロッティングの両方によるHIRA発現の分析により、mRNAレベルとタンパク質レベルの両方でそのレベルの回復を確認した(
図6B)。並行して、cccDNAの量をqPCRで評価したが、これは非サイレンシング対照(TRA)のレベルに戻った(
図6C)。
【0097】
クロマチン免疫沈降分析により、HIRAは、既に感染後30分でcccDNAに結合していることがわかった(
図7A)。この結合は、感染後3日まで持続した。HIRAのリクルートメントは、ヒストン変異体H3.3の沈着と付随して起こった(
図7B)。実際、cccDNA上のH3.3の存在は、感染後30分後に観察でき、24時間まで安定であり、感染48時間後に増加した。
【0098】
感染48時間後のcccDNAへのH3.3結合の増加は、qPCR(
図7F)及びcccDNAへのRNA Pol IIのリクルート(
図7C)による出現に関するpgRNA動態によって示される通り、cccDNAプールの増幅(
図7E)及びcccDNA転写活性の開始と相関していた。
【0099】
rcDNAからcccDNAへの変換中のHIRAによるH3.3取り込みの動態を定める試みで、BRdUの取り込みの動態及びcccDNAへのRPA70のリクルートメントについて調査した(
図7G~
図7H)。rcDNAからcccDNAへの変換には、宿主細胞のDNA修復経路、及びプラス鎖の完成及び両鎖のライゲーションのためにPOLKの活性が関与すると考えられているので、ウイルス接種の前及び最中にHepG2-NTCP細胞をBrdUで処理し、次いで、BrdU特異的抗体を使用してChIP分析を実行し、cccDNAへの新しいヌクレオチドの取り込みを検出した。
図7Gに示す通り、外来HBVゲノムからのcccDNA形成の初期フェーズに相応する、30分~12時間の間に、有意なBrdUの取り込みは見られない。反対に、BrdUの取り込みは、新しいrcDNAの転写及び合成の開始に付随して増加する。興味深いことに、本発明者らは、新たに合成されたrcDNAを核にリサイクルしてcccDNAに変換可能である場合、RPA70が30分から12時間までに限りcccDNAにリクルートされて、72時間で再度戻ることを発見した(
図7H)。全体で、これらのChIPデータが示唆するところは、ヒストン沈着は、両方のDNA鎖が完成したが、それらのうちの少なくとも1つがライゲーションされていないcccDNA前駆体上で発生し、これは、感染細胞の核に見られる主たるPF-rcDNA種に相応する、ということである。この仮説を更に確認するために、
図7において免疫沈降DNAもまた、PF-rcDNA及びcccDNAに共通のHBV二本鎖領域に位置するプライマーで増幅した。分析によって、cccDNAに関して免疫沈降したHBV DNAの百分率に差がないことがわかり、したがって、免疫沈降した材料は、完全な鎖を持つHBV DNAによって主に構成されていることが確認された(データは示さず)。
【0100】
感染後4時間から7日まで行った、ChIP実験(
図8A)により、本発明者らは、感染が慢性とされる場合でも、HIRAがcccDNAに結合して見いだされることを示すことができた。更に、シーケンシャルChIPは、陰性対照と比較して、HBcがHIRAと同じcccDNA分子に結合して見いだされることを示した(無抗体-無抗体、無抗体-HIRA、HBc-無抗体、
図8B)。最後に、感染時でのcccDNAへのHIRAの機能的存在を調査するために、サイレンシング実験を確定感染に実施した。実際、感染5日後、細胞をsiHIRAでトランスフェクトした(より良好なノックダウンを得るために、5日目に第1回、7日目に第2回)。感染後9日目に、タンパク質、RNA、及びDNAを採集した。RNA及びタンパク質の発現分析により、HIRAノックダウンの強力な効果が示された(
図8C)。3.5Kb RNAレベル及び全HBV RNAレベルは、HIRAノックダウンによって損なわれたように見えた(
図8D)。こういった予備的な結果によってcccDNA生物学に関してHIRAの更なる役割が示唆されており、cccDNA転写活性の維持にHIRAが関与している可能性がある。
【0101】
HIRA-媒介cccDNAの確立におけるウイルスタンパク質HBxの関与の可能性を調査するために、本発明者らはΔHBxウイルス株を利用した。クロマチン免疫沈降分析により、cccDNAへのHIRA結合はHBxタンパク質の非存在によって影響されないことがわかった(
図3A及び
図9A)。同様に、Xタンパク質発現の非存在下でのHIRAのsiRNA媒介ノックダウンにより、WTウイルスと比較して、cccDNAレベル及び細胞内全HBV DNAは同様に低減するという結果であった(
図3B及び
図9B)。
【0102】
ChIP実験により、本発明者らは、HBVミニ染色体上のHIRAのリクルートメントと相関して(
図7A)、HBcが感染30分後早くもcccDNAに結合することを実証できた(
図10A)。次いで、本発明者らは、2つのタンパク質間の相互作用の可能性を調査することにした。
第1に、共免疫沈降により、本発明者らは、HIRAが、誘導性の様式でHBcを発現するHepaRG細胞株においてHBcと相互作用可能であることを示し、2つのタンパク質がウイルスゲノムの非存在下でも会合できることを示唆した(
図10B)。第2に、本発明者らは、HBV感染肝細胞で近接ライゲーションアッセイ(PLA)を実行し、感染後24時間すぐのHBcとHIRAとの相互作用を示した(
図10C)。更に、シーケンシャルChIP実験によって、HBc及びHIRAが感染の24時間後に同じcccDNA分子に結合できる可能性を指摘した(
図10D)。
【0103】
(実施例3)
HIRAとのHBcの相互作用のコンピュータでの研究
Protein DataBank(PDB)とは、結晶構造とタンパク質の構造及び機能に関する情報とを含有する国際的なタンパク質データベースである。この情報を使用して、
HBcダイマー(受託番号:1GQT)の結晶構造及び
HIRAタンパク質(受託番号:2i32、2018年7月26日、利用可能)の一部を検索した。
【0104】
PRISMサーバー(構造マッチングによるタンパク質相互作用)は、バイオインフォマティクスのリソースポータルであり、これは、タンパク質-タンパク質相互作用の大規模構造モデリング向けの計算手法及びアプローチを提供する。PRISMサーバーを使用してタンパク質-タンパク質相互作用の予測を行い、HBc/HIRA相互作用の異なる4つの予測モデルを明らかにした。
サーバーには、Table 8(表8)
【0105】
【0106】
に列記するように、2つのタンパク質間で相互作用が可能な、相互作用する構造、インターフェース、アミノ酸を予測するツールが含まれている。例えば、選択モデル1では、HIRAのイソロイシン466(配列番号34の配列に示されている)はHBcタンパク質のシステイン136(配列番号35の配列に示されている)と相互作用している可能性がある。
【0107】
このコンピュータでの実験によって、相互作用するのに-5.73から-1.05kJ/molのエネルギーを必要とする、可能性のある異なる4つのインターフェースを通してのHBcとHIRAとの予測相互作用が示されている。必要なエネルギーが負であるほど、タンパク質-タンパク質相互作用が潜在的により効率的になる。
【配列表】