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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】防汚組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/10 20060101AFI20230816BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20230816BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20230816BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230816BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20230816BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20230816BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230816BHJP
【FI】
C09D133/10
C09D5/16
C09D133/04
C09D7/63
C09D133/00
C09D133/14
C09D7/61
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020526563
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2018081419
(87)【国際公開番号】W WO2019096926
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】1718899.6
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1807388.2
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515168776
【氏名又は名称】ヨトゥン アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イスムルジフ, アスラン エム
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリクセン, セリア
(72)【発明者】
【氏名】ダーリン, マリト
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03078715(EP,A1)
【文献】国際公開第2008/105122(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/066632(WO,A1)
【文献】特開2016-089167(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080391(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/069777(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/001619(WO,A1)
【文献】特開2015-28103(JP,A)
【文献】特表2006-503115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防汚コーティング組成物であって、
(A)
(i) トリイソプロピルシリルメタクリレートモノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーとを含む30質量%から75質量%のシリルエステル共重合体と、
(ii) 20質量%から55質量%のモノカルボン酸またはその誘導体と、
(iii) 25℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する5質量%から20質量%のアクリル共重合体と
を含むバインダーであって、成分(i)と成分(iii)が異なるバインダー、および
(B)トラロピリル
を含む、組成物。
【請求項2】
前記シリルエステル共重合体(i)が、30質量%から70質量%の量で存在する、請求項1に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項3】
前記シリルエステル共重合体が、モノマーとして:
(a)トリイソプロピルシリルメタクリレートと、
(b)式(I)
【化1】
(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、環状エーテルであり、Xは、C1-C4アルキレン基である。)の化合物および/または式(II)
【化2】
(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、少なくとも1つの酸素原子または窒素原子を有するC3-C18置換基である。)の化合物である。)の化合物と、任意に
(c)式(III)
【化3】
(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、C1-C8ヒドロカルビル基である。)の1つ以上のモノマーと
を含む、請求項1に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項4】
式(II)で、Rが、式-(CHCHO)-R(式中、Rは、C1-C10アルキルまたはC6-C10アリール置換基であり、mは、1から6の範囲の整数である。)の基である、請求項3に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項5】
が、式-(CHCHO) (式中、Rは、C1-C10アルキル置換基であり、mは、1から3の範囲の整数である。)の基である、請求項4に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項6】
成分(b)が、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、およびテトラヒドロフルフリルメタクリレートの1つ以上を含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項7】
前記アクリル共重合体(iii)が、アクリル共重合体の総質量に基づいて、0.5質量%から10質量%のカルボン酸含有モノマーを含む、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項8】
前記アクリル共重合体(iii)が、モノマーとして:
a)式(IV)
【化4】
(式中、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、C1-C20ヒドロカルビル置換基である。)の少なくとも1つの(メタ)アクリレートと、
b)アクリル共重合体の総質量に基づいて、少なくとも1つの0.5質量%から10質量%のカルボン酸含有モノマーと
を含む、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項9】
前記モノカルボン酸またはその誘導体(ii)がガムロジンである、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項10】
亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、ジネブおよび4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンから選択される1つ以上の殺生物剤をさらに含む、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項11】
防汚コーティング組成物の総質量に基づいて、2質量%から40質量%(乾燥固形物)のシリルエステル共重合体(i)を含む、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項12】
防汚コーティング組成物の総質量に基づいて、2質量%から30質量%(乾燥固形物)のモノカルボン酸(ii)を含む、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項13】
防汚コーティング組成物の総質量に基づいて、1.0質量%から15質量%(乾燥固形物)のアクリル共重合体(iii)を含む、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項14】
前記コーティング組成物が、0.2質量%未満の無機防汚銅化合物を含む、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項15】
物体を汚損から保護する方法であって、前記方法が、汚損を受ける前記物体の少なくとも一部を請求項1から14のいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物でコーティングする工程を含む、方法。
【請求項16】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の防汚コーティング組成物でコーティングした物体。
【請求項17】
は、オキソラン、オキサン、ジオキソラン、任意に置換されたジオキサンである、請求項3に記載の防汚コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋防汚コーティング組成物、より具体的には、トリイソプロピルシリルメタクリレートをモノマーとして含むシリルエステル共重合体を含む海洋防汚コーティング組成物に関する。組成物はさらに、低いガラス転移温度を有し、好ましくは酸性モノマー、モノカルボン酸またはそれらの誘導体および殺生物剤としてトラロピリルを含むアクリル共重合体を含む。本発明はさらに、物体を汚損から保護する方法、および本発明の防汚組成物でコーティングした物体に関する。
【背景技術】
【0002】
海水に沈んだ表面は、例えば、緑藻および褐藻、フジツボ、ムール貝、ハオリムシなどの海洋生物による汚損を受ける。例えば、船舶、石油プラットフォーム、ブイなどの海洋構造物では、このような汚損は、望ましくなく、経済的影響を有する。汚損(ファウリング)は、表面の生分解、負荷の増加および腐食促進につながる可能性がある。船舶では、汚損は、摩擦耐性を増加させ、それは、減速および/または燃料消費の増加をもたらす。それは、操作性の低下ももたらす可能性がある。
【0003】
海洋生物の定着と成長を防止するために、防汚塗料が使用される。これらの塗料は、一般に、顔料、充填剤、添加剤および溶媒などの種々の成分と一緒に、生理活性物質(殺生物剤)と一緒にフィルム形成バインダーを含む。殺生物剤は、緑藻および褐藻、草、粘液などの軟らかい汚損に対して有効なものと、フジツボ、ムール貝、ハオリムシなどの硬い汚損に対して有効なものに広く分けることができる。
【0004】
水中物体の維持はコストがかかるため、塗布された防汚コーティングは、特定のサービス間隔の間、有効であるべきである。商船のための通常のサービス間隔は、24か月から90か月の範囲にある。物体を汚損から保護することは、サービス間隔全体を通してコーティングフィルムからの殺生物剤の制御放出を必要とする。それは、制御研磨速度を有する自己研磨防汚コーティングを使用することによりもたらされる最善である可能性がある。速すぎる研磨は、コーティングフィルムの急速な消費につながり、無防備な表面をもたらす。遅すぎる研磨は、殺生物剤の不十分な放出につながり、それは、汚損からの有効な保護にとって致命的である。耐用年数にわたる制御分解は、殺生物剤の一定の放出とそれによる優れた汚損保護をもたらす。
【0005】
今日の市場で最も成功した防汚コーティングシステムは、シリルエステル共重合体に基づいている。バインダーマトリックスは、多くの場合、アクリレートおよびロジンまたはロジン誘導体などの他のバインダーと一緒になったシリルエステル共重合体からなり、防汚コーティングフィルムの自己研磨特性と機械的特性を調整する。
【0006】
伝統的に、防汚コーティングは、例えば、酸化第一銅、チオシアン酸銅などの銅系殺生物剤を含む。過去10年間に、新たな無金属の有機殺生物剤が市場に出てきた。それらの有効性は、配合物中の殺生物剤の低負荷を可能にする。トラロピリルは、フジツボ、ヒドロ虫、ムール貝、カキ、ハオリムシなどの硬殻汚損生物の広域スペクトルに対して非常に有効であることが示された有機殺生物剤である。トラロピリルを殺生物剤として使用するシリルエステル共重合体に基づく防汚コーティング組成物は、例えば、欧州特許出願公開第3078715号明細書、日本特許出願公開第2016089167号明細書に開示されている。
【0007】
しかし、シリル(メタ)アクリル酸バインダーを使用して、船舶のための特定のサービス間隔を持続する無機銅殺生物剤のない防汚コーティングを開発することは困難である。防汚コーティング組成物中の無機銅殺生物剤を有機殺生物剤と取り替えることは、原材料間の微調整されたバランスを変えるであろう。これは、コーティングフィルム特性に影響を及ぼし、多くの場合、コーティングフィルムの制御されていない、または予測できない分解をもたらす可能性がある。
【0008】
多くの場合、コーティングの制御研磨特性および良好な機械的特性、例えば、亀裂抵抗およびコーティングフィルム硬度は、バインダー成分の比率を調整することにより達成できる。しかし、トリイソプロピルシリルメタクリレート共重合体とロジンの比率を変更するだけでは、伝統的な防汚コーティングと同じ制御研磨特性および良好な機械的特性を有する、無機銅殺生物剤のない防汚コーティングを配合することは困難である。トラロピリルを含む防汚コーティング組成物は、市場の無機銅殺生物剤のない他の解決策よりも海洋汚損に対する幅広い保護をもたらす解決策を提供する。
【0009】
顧客に経済的に実行可能な長期の防汚解決策を提供するために、防汚コーティングは、コーティングシステムの耐用年数全体を通して一定速度で研磨され、良好な汚損保護を提供することが重要である。不十分な汚損保護は、燃料消費および/または水面下の船体洗浄のコストなどの運用コストを増加させるであろう。許容可能なフィルム厚さでコーティングシステムを塗布できることも重要である。大きなフィルム厚さは、塗布される塗料とドック内の延長時間のコストに関して、顧客にとってコストがかかり、ドック使用料の増加と営業外の延長時間をもたらす。大きなフィルム厚さを塗布する他の不利益は、塗布中の垂れおよび乾燥中の溶媒の放出不良のリスクであり、乾燥時間の増加、軟らかいコーティングおよび/または海水に浸漬されると膨れおよび剥離などのコーティング不良のリスクをもたらす。
【0010】
したがって、コーティングシステムの制御研磨速度および制御分解速度を有する、シリルメタクリレート共重合体およびトラロピリルを含む防汚コーティング組成物が必要である。
【0011】
本発明者らは、トリイソプロピルシリルメタクリレート共重合体およびモノカルボン酸をバインダーマトリックスの第3の成分としてアクリル共重合体と一緒に使用し、続いて最終バインダー混合物を最適化することにより制御研磨特性および良好な機械的特性を達成できることを見いだした。彼らは、このバインダーをトラロピリルと組み合わせて使用することにより、改善した防汚性能を有する自己研磨防汚システムが提供されることを立証した。さらに、本発明の防汚組成物は、亀裂に対する非常に良好な抵抗と非常に良好な自己研磨特性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許出願公開第3078715号明細書
【文献】日本特許出願公開第2016089167号明細書
【発明の概要】
【0013】
一態様では、本発明は、防汚コーティング組成物であって、
(A) (i)トリイソプロピルシリルメタクリレートモノマーを含む30質量%から80質量%のシリルエステル共重合体と、
(ii)20質量%から55質量%のモノカルボン酸またはその誘導体と、
(iii)25℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する5質量%から20質量%のアクリル共重合体と
を含むバインダーであって、成分(i)と成分(iii)が異なるバインダー、および
(B)トラロピリル
を含む、組成物に関する。
【0014】
別の態様では、本発明は、物体を汚損から保護する方法であって、前記方法が、汚損を受ける前記物体の少なくとも一部を本明細書で定義した防汚コーティング組成物でコーティングする工程を含む方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、本明細書で定義した防汚コーティング組成物でコーティングした物体に関する。
【0016】
別の態様から見ると、本発明は、トラロピリルを含む、防汚コーティング組成物中の本明細書で定義したバインダー(A)の使用、すなわち、このような組成物のためのバインダーとしての使用に関する。
【0017】
定義
「海洋防汚コーティング組成物」、「防汚コーティング組成物」または単に「コーティング組成物」という用語は、表面に塗布されると表面上の海洋生物の成長を防止または最小化する組成物を指す。
【0018】
「ヒドロカルビル基」という用語は、C原子およびH原子のみを含み、したがって、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アリールアルキル基などをカバーする任意の基を指す。
【0019】
「アクリル共重合体」という用語は、(メタ)アクリレートモノマー由来の反復単位を含む共重合体を指す。一般に、アクリル共重合体は、少なくとも80質量%の(メタ)アクリレートモノマー由来の反復単位、すなわち、アクリレートおよび/またはメタクリレートモノマーを含む。
【0020】
「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
【0021】
本明細書で使用する「モノカルボン酸」という用語は、-COOH基を含む化合物を指す。
【0022】
本明細書で使用する「樹脂酸」という用語は、樹脂中に存在するカルボン酸の混合物を指す。
【0023】
以下の文章で使用される「ロジン」という用語は、「ロジンまたはその誘導体」をカバーするために使用されている。
【0024】
「バインダー」という用語は、シリルエステル共重合体および組成物の実質と強度をもたらすマトリックスを一緒に形成する任意の他の成分を含む組成物の一部を定義する。典型的には、本明細書で使用される「バインダー」という用語は、モノカルボン酸およびアクリル共重合体と一緒になったシリルエステル共重合体、すなわち、本明細書で定義した成分(i)、(ii)および(iii)を意味する。
【0025】
「Tg」という用語は、ガラス転移温度を意味する。
【0026】
所与のモノマーの質量%が示される場合、質量%は、共重合体中に存在する各モノマーの総計(質量)に対するものである。
【0027】
「組成物の総質量に基づく質量%」という用語は、別に特定されない限り、最終の、すぐに使える組成物中に存在する成分の質量%を指す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、(i)トリイソプロピルシリルメタクリレートモノマーを含むシリルエステル共重合体と、(ii)モノカルボン酸またはその誘導体と、(iii)特定の質量比のアクリル共重合体との混合物を含むバインダーをトラロピリルと一緒に含む新たな防汚コーティング組成物に関する。
【0029】
シリルエステル共重合体(i)
シリルエステル共重合体は、トリイソプロピルシリルメタクリレートのモノマーを含む。一実施形態では、シリルエステル共重合体は、少なくともモノマー、トリイソプロピルシリルメタクリレートおよび親水性(メタ)アクリレートを含む。典型的には、トリイソプロピルシリルメタクリレートモノマーの質量パーセントは、シリルエステル共重合体全体の総質量に対して5質量%から80質量%、好ましくは30質量%から75質量%、例えば40質量%から70質量%の範囲にある。親水性(メタ)アクリレートモノマーは、シリルエステル共重合体全体の総質量に対して2質量%から50質量%、例えば5質量%から30質量%の量で存在してもよい。追加のシリルエステル(メタ)アクリレートモノマー、親水性(メタ)アクリレートモノマーおよび/または非親水性(メタ)アクリレートモノマーは、さらに本明細書に記載のように存在してもよい。
【0030】
特に好ましい実施形態では、シリルエステル共重合体は、モノマーとして:
(a)トリイソプロピルシリルメタクリレート、
(b)式(I)
【0031】
【化1】
【0032】
(式中、R1は、水素またはメチル基であり、R2は、環状エーテル(例えば、オキソラン、オキサン、ジオキソラン、任意にアルキル置換ジオキサン)であり、Xは、C1-C4アルキレン基である。)の化合物、
および/または式(II)
【0033】
【化2】
【0034】
(式中、R3は、水素またはメチル基であり、R4は、少なくとも1つの酸素原子または窒素原子、好ましくは少なくとも1つの酸素原子を有するC3-C18置換基である。)の化合物、
任意に
(c)式(III)
【0035】
【化3】
【0036】
(式中、R5は、水素またはメチル基であり、R6は、C1-C8ヒドロカルビル基である。)の1つ以上のモノマーを含む。
【0037】
モノマー
一実施形態では、シリルエステル共重合体は、少なくともモノマー、トリイソプロピルシリルメタクリレート(a)および少なくとも1つの親水性モノマー(b)を含む。
シリルエステル共重合体中の所与のモノマーの質量%が示される場合、質量%は、共重合体中に存在する各モノマーの総計(質量)に対するものである。したがって、トリイソプロピルシリルメタクリレート(a)および親水性(メタ)アクリレートモノマーが、シリルエステル共重合体中の唯一のモノマーである場合、トリイソプロピルシリルメタクリレートの質量%は、[トリイソプロピルシリルメタクリレート(a)(質量)/(トリイソプロピルシリルメタクリレート(a)(質量)+親水性(メタ)アクリレートモノマー(b)(質量))]×100%として計算される。トリイソプロピルシリルメタクリレート(a)、親水性(メタ)アクリレートモノマー(b)および非親水性(メタ)アクリレートモノマー(c)のみが存在する場合、トリイソプロピルシリルメタクリレートの質量%は、[トリイソプロピルシリルメタクリレート(a)(質量)/(トリイソプロピルシリルメタクリレート(a)(質量)+親水性(メタ)アクリレートモノマー(b)(質量)+非親水性(メタ)アクリレートモノマー(c)(質量))]×100%として計算される。
【0038】
共重合体は、好ましくは、>80質量%、好ましくは>90質量%、より好ましくは>95質量%、特に>98質量%のトリイソプロピルシリルメタクリレート(a)、親水性(メタ)アクリレートモノマー(b)および非親水性(メタ)アクリレートモノマー(c)の組合せを含む。
【0039】
成分(a)はトリイソプロピルシリルメタクリレートであり、それは、好ましくは、共重合体の5質量%から80質量%、好ましくは30質量%から75質量%、特に40質量%から70質量%を形成する。
【0040】
成分(b)(総計)は、好ましくは、共重合体の2質量%から50質量%、好ましくは共重合体の3質量%から40質量%、特に共重合体の4質量%から35質量%、より特に5質量%から30質量%を形成する。これらの質量%値は、存在する成分(b)モノマーの総計を指す。
【0041】
比率(a):(b)(質量/質量)は、好ましくは、40:60から95:5の範囲、好ましくは50:50から95:5の範囲、特に55:45から93:7の範囲、最も好ましくは60:40から90:10の範囲にある。好ましくは、共重合体中の(a)の質量分率は、成分(b)のそれよりも大きい。
【0042】
共重合体中の(a)+(b)の量は、好ましくは、最大95質量%、例えば最大90質量%、特に最大85質量%である。共重合体中の(a)+(b)の量は、30質量%から95質量%または40質量%から85質量%の範囲にあってもよい。
【0043】
親水性(メタ)アクリレートモノマー成分(b)
特定の実施形態では、シリルエステル共重合体は、式(I)
【0044】
【化4】
【0045】
(式中、R1は、水素またはメチル基であり、R2は、環状エーテル(例えば、オキソラン、オキサン、ジオキソラン、任意にアルキル置換ジオキサン)であり、Xは、C1-C4アルキレン基、好ましくはC1-C2アルキレン基である。)の少なくとも1つのモノマーを含む。
【0046】
環状エーテルは、環内に単一の酸素原子または環内に2つまたは3つの酸素原子を含んでもよい。環状エーテルは、2つから8つの炭素原子、例えば3つから5つの炭素原子を含む環を含んでもよい。環全体は、4つから8つの原子、例えば5つの原子または6つの原子を含んでもよい。
【0047】
環状エーテルの環は、例えば1つ以上の、例えば1つのC1-C6アルキル基により置換されてもよい。その置換基は、X基に結合する位置を含む環上の任意の位置にあってもよい。
【0048】
式(I)の適切な化合物としては、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソプロピリデングリセロールメタクリレート、グリセロールホルマールメタクリレートおよび環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートが挙げられる。
【0049】
式(I)は、最も好ましくは、以下の構造:
【0050】
【化5】
【0051】
を有するテトラヒドロフルフリルアクリレートを表す。
【0052】
さらなる実施形態では、共重合体は、式(II):
【0053】
【化6】
【0054】
(式中、R3は、水素またはメチル基であり、R4は、少なくとも1つの酸素原子または窒素原子、好ましくは少なくとも1つの酸素原子を含むC3-C18置換基である。)の1つ以上のモノマーを含んでもよい。
【0055】
上記式に示すように、「親水性(メタ)アクリレート」という用語は、式(II)中のR4基が少なくとも1つの酸素原子または窒素原子、好ましくは少なくとも1つの酸素原子を含むことを必要とする。以下に詳細に説明するように、式(III)(R6単位がCおよびHの原子のみからなる。)の追加の非親水性(メタ)アクリレートモノマーも存在してもよい。
【0056】
一実施形態では、シリルエステル共重合体は、上記式(II)(R4基は、式-(CH2CH2O)m-R7で表され、式中、R7は、C1-C10ヒドロカルビル置換基、好ましくはC1-C10アルキルまたはC6-C10アリール置換基であり、mは、1から6、好ましくは1から3の範囲の整数である。好ましくは、R4は、式-(CH2CH2O)m-R7で表され、式中、R7は、アルキル置換基、好ましくはメチル基またはエチル基であり、mは、1から3、好ましくは1または2の範囲の整数である。)の少なくとも1つのモノマーを含む。
【0057】
一実施形態では、シリルエステル共重合体は、2-メトキシエチルメタクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルメタクリレートおよび2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレートの1つ以上を含む。
【0058】
特に好ましいモノマー(b)としては、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、およびテトラヒドロフルフリルメタクリレートが挙げられる。
【0059】
一実施形態では、シリルエステル共重合体は、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレートをモノマーとして含まない。
【0060】
本明細書で使用する式(I)および式(II)は、「極性」(メタ)アクリレートモノマーまたは「親水性」(メタ)アクリレートモノマーを定義する。これらのモノマーをトリイソプロピルシリルメタクリレートと一緒に使用することは、制御分解を示すバインダーの形成を確実にする。
【0061】
好ましくは、シリルエステル共重合体は、式(I)のモノマーまたは式(II)のモノマーを含む。式が表すこれら両方からのモノマーを一般に有することは、好ましくない。
【0062】
追加の非親水性(メタ)アクリレートモノマー(c)
シリルエステル共重合体は、式(III)
【0063】
【化7】
【0064】
(式中、R5は、水素またはメチル基であり、R6は、C1-C8ヒドロカルビル置換基、好ましくはC1-C8アルキル置換基、最も好ましくはメチル基、エチル基、n-ブチル基または2-エチルヘキシル基である。)の1つ以上の追加の非親水性(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。式(III)によるモノマーは、本明細書では「非親水性」モノマーと呼ばれる。
【0065】
本発明のすべての実施形態において、シリルエステル共重合体は、好ましくは、少なくとも1つの追加の非親水性メタクリレートモノマーおよび/または非親水性アクリレートモノマーを含む。1つ以上の非親水性(メタ)アクリレートモノマーが存在する場合、シリルエステル共重合体中のこれらの非親水性(メタ)アクリレートモノマーの合計は、好ましくは、最大60質量%、好ましくは55質量%以下、例えば5質量%から55質量%の範囲、特に10質量%から50質量%の範囲にある。
【0066】
好ましい実施形態では、モノマーのトリイソプロピルシリルメタクリレート(a)、成分(b)および式(III)による任意の非親水性(メタ)アクリレートモノマーは、シリルエステル共重合体中のモノマーの>80質量%、好ましくは>90質量%、特に>95質量%を一緒に形成する。
【0067】
好ましい実施形態では、シリルエステル共重合体は、非親水性モノマーのメチルメタクリレートおよび/またはn-ブチルアクリレートの1つ以上を含む。
【0068】
本発明のすべての実施形態において、好ましくは、メチルメタクリレートが含まれる。存在する場合、メチルメタクリレートは、好ましくは、共重合体の2質量%から60質量%の量で、好ましくは共重合体の5質量%から50質量%の量で存在する。好ましい実施形態では、トリイソプロピルシリルメタクリレート(a)、成分(b)およびメチルメタクリレートは、シリルエステル共重合体中のモノマーの>50質量%、好ましくは>55質量%、特に>60質量%を一緒に形成する。
【0069】
存在する場合、n-ブチルアクリレートは、好ましくは、1質量%から30質量%、特に2質量%から20質量%の量で存在する。
【0070】
シリルエステル共重合体は、追加のエチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。適切なエチレン性不飽和モノマーの代表例としては、スチレン、酢酸ビニル、トリイソプロピルシリルアクリレート、2-(トリメチルシロキシ)エチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸酢酸亜鉛および(メタ)アクリル酸ネオデカン酸亜鉛が挙げられる。存在する場合、任意の追加のエチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、共重合体の20質量%以下、好ましくは共重合体の10質量%以下を形成する。
【0071】
シリルエステル共重合体の特性
シリルエステル共重合体は、当該技術分野で知られている重合反応を使用して調製できる。シリルエステル共重合体は、モノマー混合物を重合開始剤の存在下で、従来の方法の溶液重合、バルク重合、乳化重合、分散重合および懸濁重合などの種々の方法のいずれかによって、または制御重合技術によって重合させることにより取得できる。このシリルエステル共重合体を使用したコーティング組成物の調製では、共重合体は、好ましくは、有機溶媒で希釈されて適切な粘度を有するポリマー溶液をもたらす。この観点から、溶液重合を使用することが望ましい。
【0072】
フリーラジカル重合のための適切な開始剤の例としては、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)および1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)などのアゾ化合物;およびtert-アミルペルオキシピルベート、tert-ブチルペルオキシピルベート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、1,1’-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、ポリエーテルポリ-tert-ブチルペルオキシカーボネート、ジ-tert-ブチルペルオキシドおよびジベンゾイルペルオキシドなどの過酸化物が挙げられる。これらの化合物は、単独で、または、それら2つ以上の混合物として使用される。
【0073】
有機溶媒の例としては、キシレン、トルエン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン;ブチルアセテート、tert-ブチルアセテート、アミルアセテート、プロピルプロピオネート、n-ブチルプロピオネート、イソ酪酸イソブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル;n-ブタノール、イソブタノール、メチルイソブチルカルビノール、ベンジルアルコールなどのアルコール;ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールなどのエーテルアルコール;揮発油、リモネンなどの脂肪族炭化水素;および任意に2つ以上の溶媒の混合物が挙げられる。
【0074】
これらの化合物は、単独で、または、それらの2つ以上の混合物として使用される。シリルエステル共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、勾配共重合体またはブロック共重合体であってもよい。共重合体は、好ましくは、ランダム共重合体である。
【0075】
このように取得されたオルガノシリルエステル基を含むポリマーは、好ましくは、5,000から100,000、好ましくは15,000から80,000、より好ましくは20,000から60,000の質量平均分子量(Mw)を有する。Mwは、実施例セクションに記載のように測定される。
【0076】
共重合体は、好ましくは、少なくとも15℃、好ましくは少なくとも20℃、例えば少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有し、すべての値は、実施例セクションに記載のTg試験に従って測定される。80℃未満、例えば70℃未満、例えば60℃未満などの値が好ましい。
【0077】
シリルエステル共重合体は、キシレン溶液などのポリマー溶液として提供されてもよい。ポリマー溶液は、好ましくは、30質量%から90質量%、好ましくは40質量%から85質量%、より好ましくは45質量%から75質量%の固形分を有するように調節される。
【0078】
本発明の組成物中に存在するシリルエステル共重合体の量は、バインダー(A)の総質量に基づいて、30質量%から80質量%(乾燥固形物)、好ましくは30質量%から75質量%、より好ましくは35質量%から70質量%(乾燥固形物)、さらに好ましくは40質量%から60質量%(乾燥固形物)である。
【0079】
本発明の最終の防汚コーティング組成物は、好ましくは、全コーティング組成物に基づいて、2質量%から40質量%(乾燥固形物)の、例えば3質量%から30質量%(乾燥固形物)の、特に5質量%から20質量%(乾燥固形物)のシリルエステル共重合体を含む。
【0080】
モノカルボン酸(ii)
本発明の防汚コーティング組成物は、モノカルボン酸またはその誘導体を含む。
【0081】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在するモノカルボン酸は、好ましくは、5から50の炭素原子、より好ましくは10から40の炭素原子、さらに好ましくは12から25の炭素原子を含む。
【0082】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在するモノカルボン酸は、好ましくは、樹脂酸、樹脂酸の誘導体、C6-C20環状モノカルボン酸、C5-C24非環状脂肪族モノカルボン酸、C7-C20芳香族モノカルボン酸およびそれらの混合物から選択される。
【0083】
モノカルボン酸の誘導体としては、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩(例えば、カルボン酸カルシウム塩、カルボン酸マグネシウム塩)および遷移金属カルボン酸塩などのモノカルボン酸の金属塩(例えば、カルボン酸亜鉛塩、カルボン酸銅塩)が挙げられる。好ましくは、金属カルボン酸塩は遷移金属カルボン酸塩であり、特に好ましくは、金属カルボン酸塩はカルボン酸亜鉛塩である。金属カルボン酸塩は、防汚コーティング組成物中にその場で生成されてもよい。
【0084】
樹脂酸の代表例としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマル酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマリン酸、コミュン酸およびメルクス酸、セコデヒドロアビエチン酸が挙げられる。
【0085】
樹脂酸は、天然源由来であり、それ自体、通常酸の混合物として存在することが理解されよう。樹脂酸は、ロジン酸とも呼ばれる。樹脂酸源の代表例は、ガムロジン、ウッドロジンおよびトール油ロジンである。コロフォニーおよびコロフォニウムとも呼ばれるガムロジンが特に好ましい。好ましいロジンは、85%超の樹脂酸を含むものであり、さらに好ましくは、90%超の樹脂酸を含むものである。
【0086】
市販グレードのロジンは、多くの場合、ASTM D509で指定されたカラースケールXC(最も明るい)、XB、XA、X、WW、WG、N、M、K、I、H、G、F、E、D(最も暗い)に関する文字の指定により、その色に従って分類される。本発明の組成物のための好ましいカラーグレードは、X、WW、WG、N、M、K、Iであり、さらに好ましくはWWである。市販グレードのロジンは、通常ASTM D465で指定された155mgKOH/gから180mgKOH/gの酸価を有する。本発明の組成物のための好ましいロジンは、155mgKOH/gから180mgKOH/gの酸価、より好ましくは160mgKOH/gから175mgKOH/gの酸価、さらに好ましくは160mgKOH/gから170mgKOH/gの酸価を有する。市販グレードのロジンは、通常ASTM E28で指定された70℃から80℃の軟化点(環球式)を有する。本発明の組成物のための好ましいロジンは、70℃から80℃、より好ましくは75℃から80℃の軟化点を有する。
【0087】
樹脂酸誘導体の代表例としては、部分水添ロジン、完全水添ロジン、不均化ロジン、ジヒドロアビエチン酸、ジヒドロピマリン酸およびテトラヒドロアビエチン酸が挙げられる。
【0088】
C6-C20環状モノカルボン酸の代表例としては、ナフテン酸、1,4-ジメチル-5-(3-メチル-2-ブテニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,3-ジメチル-2-(3-メチル-2-ブテニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,2,3-トリメチル-5-(1-メチル-2-プロペニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,4,5-トリメチル-2-(2-メチル-2-プロペニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,4,5-トリメチル-2-(2-メチル-1-プロペニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1,5,6-トリメチル-3-(2-メチル-1-プロペニル)-4-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1-メチル-4-(4-メチル-3-ペンテニル)-4-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1-メチル-3-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、2-メトキシカルボニル-3-(2-メチル-1-プロペニル)-5,6-ジメチル-4-シクロヘキセン-1-イル-カルボン酸、1-イソプロピル-4-メチル-ビシクロ[2,2,2]2-オクテン-5-イル-カルボン酸、1-イソプロピル-4-メチル-ビシクロ[2,2,2]2-オクテン-6-イル-カルボン酸、6-イソプロピル-3-メチル-ビシクロ[2,2、2]2-オクテン-8-イル-カルボン酸および6-イソプロピル-3-メチル-ビシクロ[2,2,2]2-オクテン-7-イル-カルボン酸が挙げられる。
【0089】
C5-C24非環状脂肪族モノカルボン酸の代表例としては、バーサティック(商標)酸、ネオデカン酸、2,2,3,5-テトラメチルヘキサン酸、2,4-ジメチル-2-イソプロピルペンタン酸、2,5-ジメチル-2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸、2,2-ジエチルヘキサン酸、ピバル酸、2,2-ジメチルプロピオン酸、トリメチル酢酸、ネオペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、16-メチルヘプタデカン酸および12,15-ジメチルヘキサデカン酸が挙げられる。非環状脂肪族モノカルボン酸は、好ましくは、液体の非環状C10-C24モノカルボン酸または液体の分岐C10-C24モノカルボン酸から選択される。非環状C10-C24モノカルボン酸の多くは、天然源由来であってもよく、その場合、遊離形では、通常種々の分岐度を有する異なる鎖長の酸の混合物として存在することが理解されよう。
【0090】
好ましくは、モノカルボン酸は、ガムロジン、ガムロジンの誘導体、非環状C10-C24モノカルボン酸、C6-C20環状モノカルボン酸またはそれらの混合物である。酸の混合物は、好ましくは、少なくとも1つの樹脂酸、ガムロジンまたはガムロジンの誘導体を含む。ガムロジンが最も好ましい。
【0091】
一実施形態では、モノカルボン酸の誘導体は、金属カルボン酸塩ではない。
【0092】
本発明の組成物中に存在するモノカルボン酸の量は、バインダー(A)の総質量に基づいて、20質量%から55質量%(乾燥固形物)、好ましくは25質量%から51質量%(乾燥固形物)、より好ましくは30質量%から50質量%(乾燥固形物)である。
【0093】
本発明の最終の防汚コーティング組成物は、好ましくは、全コーティング組成物に基づいて、2質量%から30質量%(乾燥固形物)の、例えば4質量%から25質量%(乾燥固形物)の、特に5質量%から20質量%(乾燥固形物)のモノカルボン酸を含む。
【0094】
アクリル共重合体(iii)
本発明の文脈において、「アクリル共重合体」という用語は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のエステルおよびメタクリル酸のエステルに基づく少なくとも1つのモノマーを含む共重合体を指す。共重合体(iii)が、本発明のバインダー(A)中の共重合体(i)と異なることが要件である。
【0095】
アクリル共重合体は、25℃未満、好ましくは10℃未満、より好ましくは0℃未満、さらに好ましくは-10℃未満のTgを有し、すべての値は、実施例セクションに記載のTg試験に従って測定される。25℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するアクリル共重合体の使用により、最終の防汚コーティング組成物の粘度が減少するため、必要とされ得る溶媒含有量が減少することが想定される。
【0096】
アクリル共重合体は、好ましくは、酸官能性を有するモノマー以外に親水性モノマーを含まない。
【0097】
好ましくは、アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸単位、より好ましくは、60mgKOH/gポリマー未満、より好ましくは40mgKOH/gポリマー未満、さらに好ましくは25mgKOH/gポリマー未満の酸価を有する(メタ)アクリル酸単位を含む。好ましくは、酸価は、2mgKOH/gポリマー超、例えば5mgKOH/gポリマー超である。酸価は、実施例セクションに記載のように測定される。
【0098】
一実施形態では、アクリル共重合体は、アクリル共重合体の総質量に基づいて、0.50質量%から10質量%のカルボン酸含有モノマーを含む。
【0099】
特に好ましい実施形態では、アクリル共重合体は、モノマーとして:
i 式(IV):
【0100】
【化8】
【0101】
(式中、R8は、水素またはメチル基であり、R9は、C1-C20ヒドロカルビル置換基である。)の少なくとも1つの(メタ)アクリレートと
ii アクリル共重合体の総質量に基づいて、0.50質量%から10質量%の少なくとも1つのカルボン酸含有モノマーと
を含む。
【0102】
iおよびiiに定義されるモノマーの組合せは、アクリル共重合体の少なくとも80質量%、例えば少なくとも85質量%、好ましくは少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも95質量%を構成する。別の特定の実施形態では、iおよびiiに定義されるモノマーの組合せは、アクリル共重合体の最大95質量%、例えばアクリル共重合体の最大99質量%を表す。
【0103】
明確になるように、「iおよびiiに定義されるモノマーの組合せ」は、式(IV)の2つ以上のモノマーまたは2つ以上のカルボン酸含有モノマーを有する可能性を含む。アクリル共重合体は、好ましくは、式(IV)のモノマーおよび上記iおよびiiに記載のカルボン酸含有モノマー以外のいかなるモノマーも10質量%未満、好ましくは5質量%未満、好ましくは2質量%未満含む。特定の実施形態では、成分iおよびiiは、アクリル共重合体のモノマー成分全体を構成する。
【0104】
特定の実施形態では、アクリル共重合体は、シリルエステルモノマーなどの加水分解性モノマーを含まない。好ましくは、アクリル共重合体は、非加水分解性である。
【0105】
好ましくは、アクリル共重合体は、10,000g/molから50,000g/mol、好ましくは15,000g/molから45,000g/molの質量平均分子量(Mw)を有する。
【0106】
アクリル共重合体は、実施例セクションに記載の酸価試験に従って測定された2mgKOH/gポリマーから60mgKOH/gポリマー、例えば5mgKOH/gポリマーから40mgKOH/gポリマーの酸価を有する。
【0107】
バインダー(A)は、アクリル共重合体の5質量%から20質量%(乾燥固形物)、好ましくは7質量%から15質量%(乾燥固形物)、例えば10質量%を含む。
【0108】
本発明では、防汚組成物は、好ましくは、全コーティング組成物に基づいて、アクリル共重合体の1.0質量%から15質量%(乾燥固形物)、好ましくは1.2質量%から10質量%(乾燥固形物)、より好ましくは1.5質量%から8質量%(乾燥固形物)を含む。
【0109】
(メタ)アクリレートモノマーi
アクリル共重合体に使用される(メタ)アクリレートモノマーは、好ましくは、式(IV):
【0110】
【化9】
【0111】
(式中、R8は、水素またはメチル基であり、R9は、C1-C20ヒドロカルビル基、好ましくはC1-8アルキル置換基、最も好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基または2-エチルヘキシル基である。特に好ましいR9基は、メチル基、n-ブチル基および2-エチルヘキシル基である。)で表される。
【0112】
式(IV)によるモノマーは、本明細書では、「非親水性」モノマーと呼ばれる。
【0113】
特定の実施形態では、アクリル共重合体は、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよび2-エチルヘキシルメタクリレートから選択される式(IV)の少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーを含む。特定の実施形態では、アクリル共重合体は、式(IV)の少なくとも2つの異なるモノマーを含む。
【0114】
特定の実施形態では、アクリル共重合体は、一方のモノマーとしてメチルメタクリレートと、式(IV)の少なくとも1つの他方のモノマーとを含む。さらなる特定の実施形態では、アクリル共重合体は、少なくともメチルメタクリレートとn-ブチル(メタ)アクリレートとを含む。式(IV)の1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーが存在する場合、アクリル共重合体中のこれらの(メタ)アクリレートモノマーの合計の質量パーセントは、好ましくは、アクリル共重合体の総質量に基づいて、最大99.5質量%、例えば最大99.2質量%、例えば最大99.0質量%、例えば最大98.5質量%、例えば98.0質量%である。
【0115】
さらに、式(IV)の1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーが存在する場合、アクリル共重合体中のこれらの(メタ)アクリレートモノマーの合計の質量パーセントは、好ましくは、アクリル共重合体の総質量に基づいて、少なくとも80質量%、例えば少なくとも85質量%、例えば少なくとも90質量%、例えば少なくとも92質量%である。
【0116】
存在する場合、メチルメタクリレートは、好ましくは、アクリル共重合体の1.0質量%から50質量%、好ましくは1.5質量%から30質量%、より好ましくは1.5質量%から25質量%の量で存在する。
【0117】
存在する場合、n-ブチルアクリレートは、好ましくは、アクリル共重合体の50質量%から99質量%、好ましくは55質量%から98質量%、より好ましくは65質量%から97質量%、例えば70質量%から95質量%の量で存在する。
【0118】
カルボン酸含有モノマーii
アクリル共重合体に使用されるカルボン酸含有モノマーは、コーティングフィルム中のアクリル共重合体の相溶性の改善をもたらすのに役立つ。カルボン酸含有モノマーは、本明細書では、互換的に酸性モノマーと呼ばれる。酸性モノマー含有量の最適範囲の上では、高い粘度を有するアクリル共重合体が取得されるが、酸性モノマー含有量の最適範囲の下では、アクリル共重合体はコーティングフィルム中を移動しやすいことが分かった。アクリル共重合体の高い粘度は、塗料の調製と塗布に大量の溶媒が必要であることを意味する。これは、厳しいVOC規制のため、望ましくない。
【0119】
好ましくは、酸性モノマーは、アクリル共重合体の質量に基づいて、0.5質量%から10質量%の量で存在する。さらなる特定の実施形態では、カルボン酸含有モノマーは、アクリル共重合体の質量に基づいて、0.5質量%から8.0質量%、例えば0.7質量%から8.6質量%、例えば1.0質量%から7.5質量%、例えば1.2質量%から7.0質量%、例えば1.3質量%から6.5質量%、例えば1.4質量%から6.0質量%の量で存在する。
【0120】
カルボン酸含有モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、2-カルボキシメチルメタクリレート、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレアートおよびモノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルサクシネートが挙げられる。好ましくは、カルボン酸含有モノマーは、アクリル酸またはメタクリル酸、より好ましくはメタクリル酸である。アクリル酸とメタクリル酸の両方の組合せを使用してもよい。カルボン酸含有アクリル共重合体は、好ましくは、いかなるN-ビニルラクタムモノマーも含まない。特に、N-ビニルピロリドンを含まないことが好ましい。
【0121】
アクリル共重合体の調製
アクリル共重合体は、当該技術分野で知られている重合反応を使用して調製できる。アクリルポリマーは、好ましくは、付加重合または連鎖成長重合を使用して調製される。ポリマーは、例えば、重合開始剤および任意に連鎖移動剤の存在下で従来の方法の溶液重合、バルク重合、乳化重合、分散重合および懸濁重合などの種々の方法のいずれかまたは制御重合技術によりモノマー混合物を重合させることにより取得できる。このポリマーを使用したコーティング組成物の調製では、ポリマーは、好ましくは、有機溶媒で希釈されて適切な粘度を有するポリマー溶液をもたらす。この観点から、溶液重合を使用することが望ましい。
【0122】
フリーラジカル重合のための適切な開始剤の例としては、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)および1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)などのアゾ化合物;およびtert-アミルペルオキシピルベート、tert-ブチルペルオキシピルベート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、1,1’-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、ポリエーテルポリ-tert-ブチルペルオキシカーボネート、ジ-tert-ブチルペルオキシドおよびジベンゾイルペルオキシドなどの過酸化物が挙げられる。これらの化合物は、単独で、または、それらの2つ以上の混合物として使用される。
【0123】
有機溶媒の例としては、キシレン、トルエン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン;ブチルアセテート、tert-ブチルアセテート、アミルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピルプロピオネート、n-ブチルプロピオネート、イソ酪酸イソブチルなどのエステル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル;n-ブタノール、イソブタノール、メチルイソブチルカルビノール、ベンジルアルコールなどのアルコール;ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールなどのエーテルアルコール;リモネンなどのテルペン;揮発油などの脂肪族炭化水素;および任意に2つ以上の溶媒の混合物が挙げられる。これらの化合物は、単独で、または、それらの2つ以上の混合物として使用される。好ましくは、芳香族炭化水素とケトン、エステル、エーテル、アルコールおよびエーテルアルコールから選択される1つ以上の溶媒との混合物である。
【0124】
アクリル共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、勾配共重合体またはブロック共重合体であってもよい。アクリル共重合体は、好ましくは、ランダム共重合体である。
【0125】
他のバインダー成分
上記の成分(i)、(ii)および(iii)に加えて、防汚コーティングフィルムの特性を調整するために追加のバインダーを使用できる。使用できるバインダーの例としては、
ポリ(N-ビニルピロリドン)共重合体およびポリ(エチレングリコール)共重合体などの親水性共重合体;
ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(エチルビニルエーテル)、ポリ(イソブチルビニルエーテル)、ポリ(塩化ビニル-コ-イソブチルビニルエーテル)などのビニルエーテルポリマーおよびビニルエーテル共重合体;
ポリ(n-ブチルアクリレート)およびポリ(n-ブチルアクリレート-コ-イソブチルビニルエーテル)などの(メタ)アクリルホモポリマーおよび(メタ)アクリル共重合体;
上記のポリマー群のいずれかからの高分子可塑剤が挙げられる。高分子可塑剤という用語は、25℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するポリマーを指す。
【0126】
本発明の防汚コーティング組成物中に存在し得る他のバインダーの追加例としては、
トリイソプロピルシリルアクリレートを含む共重合体などのシリルエステル(メタ)アクリレート共重合体;
(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸水酸化亜鉛、(メタ)アクリル酸ネオデカン酸亜鉛または(メタ)アクリルオレイン酸亜鉛を含む共重合体などの金属(メタ)アクリレート共重合体;
ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(2-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(4-ヒドロキシ吉草酸)ポリカプロラクトンおよび上記単位から選択される単位の2つ以上を含む脂肪族ポリエステル共重合体などの飽和脂肪族ポリエステル;
国際公開第2009100908号公報に記載のポリオキサレート;
ロジンおよび水添ロジンの、メチルエステル、グリセロールエステル、ポリ(エチレングリコール)エステル、ペンタエリスリトールエステルなどのエステル、好ましくはガムロジンおよび水添ガムロジンのエステル;
二量体化ロジンおよび重合ロジン;
アルキド樹脂および変性アルキド樹脂;
C5脂肪族モノマー、C9芳香族モノマー、インデンクマロンモノマーまたはテルペンまたはそれらの混合物から選択される少なくとも1つのモノマーの重合のみから形成された炭化水素樹脂などの炭化水素樹脂が挙げられる。
【0127】
成分(i)、(ii)および(iii)に加えて、さらなるバインダーが存在する場合、バインダー(A):バインダーの質量比は、70:30から99:1、好ましくは75:25から95:5、特に80:20から90:10の範囲にあってもよい。
【0128】
殺生物剤
防汚コーティング組成物はさらに、表面上の海洋汚損を防止または表面から除去できる化合物を含む。この点では、以下の構造を有する4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]が存在する必要がある。
【0129】
【化10】
【0130】
市販のトラロピリルの例としては、Janssen PMP製のEconeaが挙げられる。
【0131】
この殺生物剤に加えて、他の防汚化合物が存在し得る。防汚剤、防汚剤、殺生物剤、毒物という用語は、表面上の海洋汚損を防止するように作用する業界で既知の化合物を説明するために使用される。本発明の防汚剤は、海洋防汚剤である。
【0132】
好ましい追加の生理活性物質は、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、エチレンビス(ジチオカルバミド酸)亜鉛[ジネブ]、2-(tert-ブチルアミノ)-4-(シクロプロピルアミノ)-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン[シブトリン]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[DCOIT]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-フェニルスルファミド[ジクロロフルアニド]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-p-トリルスルファミド[トリルフルアニド]、トリフェニルボランピリジン[TPBP]および4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]である。
【0133】
一実施形態では、組成物は、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]を含まない。
【0134】
異なる殺生物剤が異なる海洋汚損生物に対して作用するため、当該技術分野で知られているように殺生物剤の混合物を使用できる。
【0135】
より好ましくは、フジツボ、ハオリムシ、コケムシおよびヒドロ虫などの海洋無脊椎動物;海藻などの植物;藻類および珪藻;およびバクテリアに対して有効な殺生物剤の混合物である。この点では、最も好ましい選択肢は、トラロピリルと、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、ジネブ、ジクロロフルアニドおよび4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンから選択される1つ以上の選択された殺生物剤との組合せである。
【0136】
一実施形態では、組成物は、組成物全体の総質量に対して、0.5質量%未満の無機銅殺生物剤、好ましくは0.2質量%未満の無機銅殺生物剤、さらに好ましくは0.1質量%未満の無機銅殺生物剤を含む。最も好ましくは、組成物は、無機銅殺生物剤を含まない。
【0137】
別の実施形態では、本発明の組成物は、銅ピリチオン、有機金属銅化合物を含む。
【0138】
別の実施形態では、組成物は、いかなる銅系殺生物剤も含まない。
【0139】
殺生物剤(トラロピリルなど)の配合量は、コーティング組成物の最大20質量%、例えば0.5質量%から15質量%、例えば1.0質量%から12質量%を形成してもよい。殺生物剤の量は、最終用途と使用される殺生物剤に応じて変化するであろうことが理解されよう。
【0140】
使用されるトラロピリルの量は少ない。組成物中の通常の量は、0.5質量%から10.0質量%、例えば1.5質量%から6.0質量%、特に2.0質量%から4.5質量%である。
【0141】
一部の殺生物剤は、カプセル化されてもよく、または不活性担体に吸着されてもよく、または制御放出のための他の材料に結合されてもよい。これらのパーセントは、存在する活性殺生物剤の量を指し、したがって、使用されたいかなる担体も指さない。
【0142】
他の成分
バインダー(A)、トラロピリル(B)および上記の任意成分のいずれかに加えて、本発明による防汚コーティング組成物は、任意に、他のバインダー、無機顔料または有機顔料、増量剤および充填剤、添加剤、溶媒およびシンナーの中から選択される1つ以上の成分をさらに含んでもよい。
【0143】
顔料は、無機顔料、有機顔料、またはそれらの混合物であってもよい。無機顔料が好ましい。無機顔料の例としては、二酸化チタン、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポンおよびグラファイトが挙げられる。有機顔料の例としては、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ナフトールレッドおよびジケトピロロピロールレッドが挙げられる。顔料は、任意に、塗料組成物中により容易に分散させるために表面処理されてもよい。
【0144】
増量剤および充填剤の例は、ドロマイト、プラストライト、方解石、石英、重晶石、マグネサイト、シリカ、霞石閃長岩、ウォラストナイト、タルク、亜塩素酸塩、雲母、カオリン、パイロフィライトおよび長石などの鉱物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウムおよびシリカなどの合成無機化合物;コーティングありなしの中空ガラスビーズおよび中実ガラスビーズ、コーティングありなしの中空セラミックビーズおよび中実セラミックビーズ、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート-コ-エチレングリコールジメタクリレート)、ポリ(スチレン-コ-エチレングリコールジメタクリレート)、ポリ(スチレン-コ-ジビニルベンゼン)、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)などの高分子材料の多孔性ビーズおよびコンパクトビーズなどの高分子無機微粒子である。
【0145】
好ましくは、本発明の組成物中に存在する増量剤および/または顔料の総量は、組成物の総質量に基づいて、2質量%から60質量%、より好ましくは5質量%から50質量%、さらに好ましくは7質量%から45質量%である。当業者は、増量剤および顔料の含有量は、粒径分布、粒子形状、表面形態、粒子表面-樹脂親和性、存在する他の成分およびコーティング組成物の最終用途に応じて変化するであろうことを理解するであろう。
【0146】
防汚コーティング組成物に添加され得る添加剤の例は、強化剤、レオロジー調整剤、湿潤分散剤、消泡剤および可塑剤である。
【0147】
強化剤の例は、フレークおよび繊維である。繊維としては、例えば、国際公開第00/77102号公報に記載のように、天然無機繊維および合成無機繊維ならびに天然有機繊維および合成有機繊維が挙げられる。繊維の代表例としては、鉱物ガラス繊維、ウォラストナイト繊維、モンモリロナイト繊維、トバモライト繊維、アタパルジャイト繊維、焼成ボーキサイト繊維、火山岩繊維、ボーキサイト繊維、ロックウール繊維および鉱物綿からの加工鉱物繊維が挙げられる。好ましくは、繊維は、25μmから2,000μmの平均長さと1μmから50μmの平均厚さを少なくとも5の平均長さと平均厚さとの間の比率で有する。好ましくは、強化剤は、組成物の総質量に基づいて、本発明の組成物中に0質量%から20質量%、より好ましくは0.5質量%から15質量%、さらに好ましくは1質量%から10質量%の量で存在する。
【0148】
レオロジー調整剤の例としては、チキソトロープ剤、増粘剤および沈降防止剤が挙げられる。レオロジー調整剤の代表例は、ヒュームドシリカ、有機変性粘土、アミドワックス、ポリアミドワックス、アミド誘導体、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、水添ヒマシ油ワックス、エチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムおよびそれらの混合物などのシリカである。活性化を必要とするレオロジー調整剤は、そのままコーティング組成物に添加されて、塗料製造プロセス中に活性化されてもよく、または、それらは、予め活性化された形態で、例えば溶媒ペーストでコーティング組成物に添加されてもよい。好ましくは、レオロジー調整剤は、各々、コーティング組成物の総質量に基づいて、本発明の組成物中に0質量%から5.0質量%、より好ましくは0.2質量%から3.0質量%、さらに好ましくは0.5質量%から2.0質量%の量で存在する。
【0149】
可塑剤の例は、高分子可塑剤、塩素化パラフィン、フタル酸、リン酸エステル、スルホンアミド、アジピン酸、エポキシ化植物油およびスクロースアセテートイソブチレートである。好ましくは、可塑剤は、コーティング組成物の総質量に基づいて、本発明の組成物中に0質量%から10質量%、より好ましくは0.5質量%から7質量%、さらに好ましくは1質量%から5質量%の量で存在する。
【0150】
脱水剤および安定剤は、防汚コーティング組成物の貯蔵安定性を改善する。脱水剤は、好ましくは、水分および水をコーティング組成物から除去する化合物である。それは、水捕捉剤または乾燥剤とも呼ばれる。脱水剤は、水を吸収するか、または水を結晶水として結合する吸湿材であってもよい。これらは、よく乾燥剤と呼ばれる。このような化合物の例としては、無水硫酸カルシウム、硫酸カルシウム半水和物、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸亜鉛、モレキュラーシーブおよびゼオライトが挙げられる。脱水剤はまた、化学的に水と反応する化合物であってもよい。水と反応する脱水剤の例としては、トリメチルオルトギ酸、トリエチルオルトギ酸、トリプロピルオルトギ酸、トリイソプロピルオルトギ酸、トリブチルオルトギ酸、トリメチルオルト酢酸、トリエチルオルト酢酸、トリブチルオルト酢酸およびトリエチルオルトプロピオネートなどのオルトエステル;ケタール;アセタール;エノールエーテル;トリメチルホウ酸、トリエチルホウ酸、トリプロピルホウ酸、トリイソプロピルホウ酸、トリブチルホウ酸およびトリ-tert-ブチルホウ酸などのオルトホウ酸塩;トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびエチルポリケイ酸などのオルガノシラン;およびp-トルエンスルホニルイソシアネートなどのイソシアネートが挙げられる。
【0151】
好ましい脱水剤は、テトラエトキシシランなどのオルガノシラン、および無機の乾燥剤である。オルガノシランの使用は特に好ましい。
【0152】
安定剤は、好ましくは、酸捕捉剤である。安定剤の例は、国際公開第2014064049号公報に記載のビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2-メチルフェニル)カルボジイミド、1,3-ジ-p-トリルカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物などである。
【0153】
好ましくは、脱水剤および安定剤は、各々、組成物の総質量に基づいて、本発明の組成物中に0質量%から5質量%、より好ましくは0.5質量%から2.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%から2.0質量%の量で存在する。
【0154】
非常に好ましくは、防汚組成物は溶媒を含む。この溶媒は、好ましくは揮発性であり、好ましくは有機である。有機溶媒およびシンナーの例は、キシレン、トルエン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン;ブチルアセテート、tert-ブチルアセテート、アミルアセテート、イソアミルアセテート、プロピルプロピオネート、n-ブチルプロピオネート、イソ酪酸イソブチルなどのエステル;エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチル3-エトキシプロピオネートなどのエーテルエステル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル;n-ブタノール、イソブタノール、メチルイソブチルカルビノール、ベンジルアルコールなどのアルコール;ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールなどのエーテルアルコール;リモネンなどのテルペン;揮発油などの脂肪族炭化水素;および任意に2つ以上の溶媒およびシンナーの混合物である。
【0155】
好ましい溶媒は、芳香族溶媒、特にキシレンおよび芳香族炭化水素の混合物である。
【0156】
溶媒の量は、好ましくは、できるだけ少ない。溶媒含有量は、組成物の最大45質量%、好ましくは組成物の最大40質量%、例えば35質量%であってもよいが、15質量%以下、例えば10質量%以下であってもよい。再び、当業者は、一部の原材料は、溶媒を含み、上記の総溶媒含有量に寄与すること、および溶媒含有量は、存在する他の成分およびコーティング組成物の最終用途に応じて変化するであろうことを理解するであろう。
【0157】
あるいは、コーティングは、コーティング組成物中のフィルム形成成分のための有機非溶媒中に、または水性分散液中に分散され得る。
【0158】
本発明の防汚コーティング組成物は、好ましくは、40体積%超、例えば45体積%超、例えば50体積%超、好ましくは55体積%超の固形分を有するべきである。
【0159】
より好ましくは、防汚コーティング組成物は、500g/L未満、好ましくは420g/L未満、より好ましくは400g/L未満、例えば380g/L未満の揮発性有機化合物(VOC)の含有量を有するべきである。VOC含有量は、計算(ASTM D5201-01)または例えば、米国EPA法24またはISO 11890-2に記載のように、好ましく測定できる
【0160】
本発明の防汚コーティング組成物は、汚損を受けるいかなる物体表面も全部または一部に塗布できる。表面は、永久にまたは断続的に水面下(例えば、潮の動き、種々の積荷作業またはうねりにより)にある可能性がある。物体表面は、通常、船舶の船体または石油プラットフォームまたはブイなどの固定された海洋物体の表面であるであろう。コーティング組成物の塗布は、いかなる便利な手段により、例えば物体への塗装(例えばブラシまたはローラーで)またはスプレーにより達成できる。典型的には、表面は、コーティングを可能にするために、海水から分離される必要があるであろう。コーティングの塗布は、当該技術分野で従来知られているように達成できる。
【0161】
防汚コーティングを物体(例えば船体)に塗布すると、物体の表面は、単一の防汚コーティングのみによっては保護されない。表面の性質に応じて防汚コーティングを既存のコーティングシステムに直接塗布できる。このようなコーティングシステムは、種々の一般タイプ(例えばエポキシ、ポリエステル、ビニルまたはアクリル、またはそれらの混合物)の塗料の数層を含んでもよい。コーティングされていない表面(例えばスチール、アルミニウム、プラスチック、複合材、ガラス繊維または炭素繊維)に始まって、フルコーティングシステムは、通常、防食コーティング(例えば硬化性エポキシコーティングまたは硬化性変性エポキシコーティング)の1つまたは2つの層、タイコート(例えば硬化性変性エポキシコーティングまたは物理乾燥ビニールコーティング)の1つの層および防汚塗料の1つまたは2つの層を含むであろう。例外的な場合には、防汚塗料のさらなる層が塗布されてもよい。表面が、以前の塗布から、きれいでそのままの防汚コーティングである場合、新たな防汚塗料は、直接、通常1つまたは2つ、例外的な場合にはより多くのコーティングとして塗布できる。
【0162】
本発明は、ここで以下の非限定的な実施例を参照して定義されるであろう。
【0163】
実施例
材料および方法
試験
ポリマー溶液の粘度の測定
毎分12回転のLV-2スピンドルまたはLV-4スピンドルを備えたBrookfield DV-I粘度計を使用して、ASTM D2196 Test Method Aに従ってポリマーの粘度を測定した。測定前にポリマー溶液を23.0℃±0.5℃に調整した。
【0164】
ポリマー溶液の不揮発性物質含有量の測定
ISO 3251に従ってポリマー溶液中の不揮発性物質含有量を測定した。0.5g±0.1gの試験サンプルを取り出し、換気オーブン内で150℃で30分間乾燥させた。残留物質の質量を不揮発性物質(NVM)であるとみなした。不揮発性物質含有量を質量パーセントで表現する。示した値は、3つの並列の測定値の平均である。
【0165】
ポリマーの分子量分布の測定
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリマーを特徴付けた。シリーズのAgilent製の2つのPLgel5μmMixed-Dカラム、1ml/分の一定流量の溶出液としてテトラヒドロフラン(THF)および屈折率(RI)検出器を備えたMalvern Omnisec Resolve and Revealシステムを使用して、分子量分布(MWD)を測定した。Agilent製のnarrowポリスチレン標準Polystyrene Medium EasiVials(4ml)Red、YellowおよびGreenを使用してカラムを較正した。カラムオーブン温度および検出器オーブン温度は35℃であった。サンプル注入量は100μlであった。Malvern製のOmnisec 5.1ソフトウェアを使用してデータを処理した。25mgの乾燥ポリマーに対応する量のポリマー溶液を5mlのTHF中に溶解させることによりサンプルを調製した。GPC測定のためのサンプリングの前にサンプルを室温で最小3時間維持した。分析前にサンプルを0.45μmナイロンフィルターにより濾過した。質量平均分子量(Mw)およびMw/Mnとして示した多分散性指数(PDI)を表に記載する。
【0166】
ガラス転移温度の測定
示差走査熱量計(DSC)測定によりガラス転移温度(Tg)を取得した。TA InstrumentsのDSC Q200でDSC測定を実行した。約10mgの乾燥ポリマー材料に対応する少量のポリマー溶液をアルミ缶へ移すことによりサンプルを調製し、サンプルを、50℃で最小16時間-20時間、その後、換気加熱キャビネット内で150℃で3時間乾燥させた。-80℃から120℃の温度範囲内で10℃/分の加熱速度と10℃/分の冷却速度で空き缶を参照として使用して加熱-冷却-加熱手順を行うことにより、測定を実行した。TA Instruments製Universal Analysisソフトウェアを使用してデータを処理した。第2の加熱の、ASTM E1356-08で定義されるガラス転移範囲の変曲点を、ポリマーのTgとして記載する。
【0167】
比色滴定による酸価の測定
ISO 2114:2000 Method Aに記載の手順に従ってポリマーの酸価を測定した。ポリマー溶液の計量した量をJotun Thinner No.17に溶解させた。フェノールフタレインを色指示薬として添加し、赤色が現れて、溶液が攪拌される間に10秒-15秒間安定するまでエタノール中の0.1MのKOH溶液で溶液を滴定した。試験したポリマー溶液の測定された不揮発性物質に基づいて乾燥ポリマーの酸価を計算した。記載の酸価は、3つの並列の測定値の平均値である。
【0168】
共重合体溶液S1の調製手順
撹拌機、コンデンサー、窒素注入口および供給口を備えた温度制御反応容器に60.0部のキシレンを充填した。反応容器を加熱して85℃の反応温度で維持した。50.0部のトリイソプロピルシリルメタクリレート、30.0部の2-メトキシメタクリレート、10.0部のn-ブチルアクリレート、10.0部のメチルメタクリレートおよび0.8部の2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)のプレミックスを調製した。プレミックスを窒素雰囲気下2時間にわたって一定速度で反応容器に充填した。さらに1時間の反応後、0.2部の2,2’-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)および7.5部のキシレンの追加開始剤溶液の後添加を添加した。反応容器を反応温度でさらに1.5時間維持した。次いで、反応器を110℃に加熱して、その温度で1時間維持した。最後に、33.5部のキシレンを添加して、反応器を室温に冷却した。上記の部は、すべて質量部である。
【0169】
共重合体溶液S8の調製手順
95℃の反応温度と表1Aに示した成分量で上記共重合体溶液S1のために記載のプロセスを使用して共重合体溶液S8を調製した。
【0170】
共重合体溶液S2-S7およびCS1-CS2の一般調製手順
ある量の溶媒を、撹拌機、コンデンサー、窒素注入口および供給口を備えた温度制御反応容器に充填した。反応容器を加熱して95℃の反応温度で維持した。モノマー、開始剤および溶媒のプレミックスを調製した。プレミックスを窒素雰囲気下2時間にわたって一定速度で反応容器に充填した。さらに1時間の反応後、追加開始剤溶液の後添加を添加した。反応容器を反応温度でさらに1.5時間維持した。次いで、反応器を105℃に加熱して、この温度で1時間維持した。最後に、反応器を室温に冷却した。
【0171】
共重合体溶液A1の調製手順
49.5部のキシレンおよび20.0部の1-メトキシ-2-プロパノールを撹拌機、リフラックスコンデンサー、窒素注入口および供給口を備えた温度制御反応容器に充填した。反応容器を加熱して85℃の反応温度で維持した。95.0部のn-ブチルアクリレート、4.2部のメチルメタクリレート、2.8部のメタクリル酸、20.5部のキシレンおよび1.60部の2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)のプレミックスを調製した。プレミックスを窒素雰囲気下2.5時間にわたって一定速度で反応容器に充填した。さらに1時間の反応後、0.32部の2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)および10.0部のキシレンの追加開始剤溶液の後添加を添加した。反応容器を反応温度でさらに1時間維持し、次いで、室温に冷却した。成分量を質量部で示す。
【0172】
共重合体溶液は、以下の特性:
NVM:49.4質量%;Mw28,700;Tg-35℃;酸価19mgKOH/g(乾燥ポリマー)
を有していた。
【0173】
共重合体溶液A2からA4の調製手順
95℃の反応温度と表1Bに示した反応器充填、原料充填と追加充填の成分量で共重合体溶液A1のために記載の手順を使用して共重合体溶液を調製した。
【0174】
ポリマー溶液を室温に冷却する前に共重合体溶液A3の希釈を行った。
【0175】
ロジン酸亜鉛塩溶液の調製
ポルトガル産ガムロジン(キシレン中60%、酸価109mgKOH/g)、116.5gの酸化亜鉛および57.5gのキシレンの1400gの溶液を撹拌機、ディーンスタークトラップ、リフラックスコンデンサーを備えた2Lの温度制御反応容器に充填した。反応混合物を加熱して還流させた。水がディーンスタークトラップでそれ以上凝縮しなくなるまで反応混合物を140℃-150℃で還流した。ガムロジン亜鉛塩の生成溶液を濾過し、キシレンで希釈した。
【0176】
ロジン酸亜鉛塩溶液は、64.1質量%の不揮発性物質を有していた。
【0177】
【表1A】
【0178】
【表1B】
【0179】
【表2】
【0180】
防汚コーティング組成物の一般調製手順
表3-4、表6-7および表9に示した比率で成分を混合した。250mlの塗料缶内でガラスビーズ(直径約2mm)の存在下で振動シェーカーを15分間使用して混合物を分散させた。試験前にガラスビーズを濾過した。
【0181】
円錐平板粘度計を使用した塗料粘度の測定
10000s-1の剪断速度で動作し0P-10Pの粘度測定範囲を提供する、23℃の温度に設定されたデジタル円錐平板粘度計を使用して、ISO 2884-1:1999に従って防汚塗料組成物の粘度を測定した。3つの測定値の平均として結果を示す。
【0182】
防汚コーティング組成物の揮発性有機化合物(VOC)含有量の計算
ASTM D5201に従って防汚コーティング組成物の揮発性有機化合物(VOC)含有量を計算した。
【0183】
コーティングフィルムのKonig振り子硬度の測定
振り子硬度試験器を使用してコーティングフィルムの硬度を測定した。
【0184】
ISO 1522:2006に従って試験を実行した。
【0185】
防汚コーティング組成物の各々を、300μmの間隙サイズのフィルムアプリケーターを使用して透明なガラス板(100mm×200mm×2mm)に塗布した。コーティングフィルムを23℃および50%の相対湿度で1週間、次いで、換気加熱キャビネット内で50℃で72時間乾燥させた。乾燥コーティングフィルムのコーティングフィルム硬度を、Erichsen299/300振り子硬度試験器を使用して23℃および50%の相対湿度で測定した。振幅を6度から3度に弱める振り子振動数として硬度を定量化する。振幅の大きな値は、コーティングの高い硬度を示す。加熱キャビネット内の強制乾燥後のコーティングフィルムの3つの並列の測定値の平均として結果を記載する。
【0186】
コーティングフィルムの加速亀裂試験
エアレススプレーを使用してSafeguard Plus(韓国Chokwang Jotun Ltd.製2成分ポリアミド硬化ビニルエポキシ系コーティング)でPVCパネルをコーティングした。製品アプリケーションガイドに従ってパネルを乾燥させ、硬化させた。硬化させたプレコーティングパネルに800μmの間隙サイズのフィルムアプリケーターを使用して防汚コーティングを塗布した。塗布されたコーティングフィルムを40℃で海水に浸漬前に52℃で72時間乾燥させた。等間隔でパネルを取り出し、周囲条件下24時間の乾燥および52℃で24時間の乾燥後評価する。亀裂について視覚的に10×倍率でパネルを評価し、ISO 4628-4:2005に記載のように評価した。亀裂の密度およびサイズを記載した。次いで、パネルを再浸漬させた。6か月暴露後の結果を記載する。
【0187】
海水中の回転ディスク上の防汚コーティングフィルムの研磨速度の測定
コーティングフィルムのフィルム厚さの減少を経時的に測定することにより研磨速度を測定した。この試験のためにPVCディスクを使用した。600μmの間隙サイズのフィルムアプリケーターを使用して、コーティング組成物を放射ストライプとしてディスクに塗布した。乾燥コーティングフィルムの厚さを表面プロファイラーにより測定した。最初の乾燥フィルム厚さは、塗布された防汚コーティング組成物の固形分と塗布速度に依存する。試験したコーティングについての通常の最初の乾燥フィルム厚さは、235μm±30μmであった。
【0188】
PVCディスクをシャフトに取り付け、海水が流れる容器内で回転させた。濾過して325°C±2°Cに温度調整した天然海水を使用した。回転シャフトの速度は、ディスク上で16ノットの平均シミュレーション速度を示した。フィルム厚さを測定するために、PVCディスクを等間隔で取り出した。ディスクをすすぎ、フィルム厚さを測定する前に室温で一晩乾燥させた。結果をフィルム消費、すなわち最初のフィルム厚さと所与の時間に測定した厚さとの間の差として示した。薄い非研磨溶脱層が、通常10μm-20μmの厚さで表面に残る場合、またはフィルムが表面から完全に研磨除去される場合、コーティングフィルムは、完全に研磨されるとみなした。それは、結果の表中にPTと示される。研磨インデックスは、52週と78週との間の研磨速度を26週と52週との間の研磨速度で割って取得される。2.0未満の研磨インデックス値を有するコーティングフィルムは、制御研磨を示すとみなす。
【0189】
【表3】
【0190】
【表4】
【0191】
【表5】
【0192】
表5の比較例CPA-1からCPA-4は、防汚コーティング組成物中に成分(iii)の存在がなければ長期にわたって防汚コーティングフィルムの研磨が制御されていないことを示す。同じことが、比較例CPA-5に示すように、成分(iii)の量が少ない場合に当てはまる。
【0193】
表5の比較例CPA-6からCPA-8は、防汚コーティングフィルムが軟らかく、防汚コーティング組成物中に大量の成分(iii)を使用する場合に機械的に損傷しやすいことを示す。CPA-6からCPA-7の研磨は、高い研磨インデックスにより示すように、制御されていない。CPA-8のコーティングは、亀裂抵抗不良も有する。
【0194】
表5の比較例CPA-9は、トリイソプロピルシリルアクリレート共重合体の使用が、防汚コーティングフィルムの制御されていない研磨をもたらすことを示す。
【0195】
【表6】
【0196】
【表7】
【0197】
【表8】
【0198】
表8の比較例CPB-1からCPB-5は、防汚コーティング組成物中に成分(iii)の存在がなければ長期にわたって防汚コーティングフィルムの研磨が制御されていないことを示す。
【0199】
表8の比較例CPB-6からCPB-7は、親水性モノマーのない成分(i)の使用が、防汚剤の十分な放出を経時的にもたらすには遅すぎる研磨をもたらすことを示す。
【0200】
表8の比較例CPB-8からCPB-9は、トリイソプロピルシリルアクリレート共重合体の使用が、防汚コーティングフィルムの制御されていない研磨をもたらすことを示す。
【0201】
【表9】
【0202】
【表10】