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特許7332597炭化水素ガスを改質するための方法および装置
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  • 特許-炭化水素ガスを改質するための方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】炭化水素ガスを改質するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
C01B3/38
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020530986
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2018081404
(87)【国際公開番号】W WO2019110265
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】PA201700697
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】モーデンスン・ピーダ・ムルゴー
(72)【発明者】
【氏名】ウストベアウ・マーティン
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/180888(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/186608(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0015549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素ガスおよび水蒸気を含む炭化水素供給流を改質するための方法であって、以下の段階:
a)任意に第1の触媒を含む合成ガス発生反応器において、炭化水素供給流から第1の合成ガスを生成する段階;
b)水蒸気改質、メタン化および逆水性ガスシフト反応に活性を有する第2の触媒を含むポストコンバータに、加熱されたCOリッチ流を供給する段階;
c)前記ポストコンバータにおいて、前記第1の合成ガスおよび前記加熱されたCOリッチ流の水蒸気改質、メタン化および逆水性ガスシフト反応を実施して、生成物合成ガスを生成し、ここで、前記第2の触媒は、電源を用いて抵抗加熱によって電気的に加熱される段階、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記合成ガス発生反応器が水蒸気メタン改質反応器であり、該水蒸気メタン改質反応器が、この水蒸気メタン改質反応器から出る第1の合成ガスが650℃~950℃の間の温度を有することを保証するのに十分な温度まで、少なくとも1つの改質器管内で第一触媒を加熱するために配置された熱源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水蒸気メタン改質反応器が抵抗加熱および/または誘導加熱によって加熱される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記合成ガス発生反応器が自熱式改質反応器であり、該自熱式改質反応器が、この自熱式改質反応器から出る第1の合成ガスが900℃~1100℃の間の温度を有することを確実にするように調整された操業条件を有する、請求項に記載の方法。
【請求項5】
段階b)において、添加される前記加熱されたCOリッチ流の量および/または組成が、前記生成物合成ガスのH/CO比が2.5未満であることを保証するように調整される、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
加熱されたCOリッチ流のCOと炭化水素供給流の炭化水素との間のモル比が0.5より大きい、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素供給流が、さらに、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、アルゴン、高級炭化水素(C 、n≧2、m≧4)またはそれらの組合せのうちの1つ以上を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記炭化水素供給流の水蒸気対炭素比が0.4~2.0の間である、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記加熱されたCOリッチ流が、少なくとも50乾燥モル%のCO 含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記加熱されたCOリッチ流が、さらに、水蒸気、水素、メタン、一酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、窒素、アルゴンまたはこれらの組合せのうちの1つ以上を含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1の合成ガスに加えられる前に、前記加熱されたCOリッチ流が350~950℃の間の温度に加熱される、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
炭化水素ガスおよび水蒸気を含む炭化水素供給流を改質するための装置であって、前記装置は、
-任意に、第1の触媒を含み、かつ、前記炭化水素供給流から第1の合成ガスを発生させるように配置された合成ガス発生反応器、
-水蒸気改質、メタン化および逆水性ガスシフト反応に活性を有する第2の触媒を収容するポストコンバータ、
-第1の合成ガスを前記ポストコンバータに導くための導管、
-前記ポストコンバータの上流の第1の合成ガスに加熱されたCOリッチ流を添加するための、および/または、前記ポストコンバータに直接的に加熱されたCOリッチ流を添加するための手段
を含み、
前記装置が、前記第2の触媒を抵抗加熱によって電気的に加熱するために配置された電源を含む、
前記装置。
【請求項13】
前記合成ガス発生反応器が水蒸気メタン改質反応器であり、該水蒸気メタン改質反応器が、この水蒸気メタン改質反応器を出る第1の合成ガスが650℃~950℃の間の温度を有することを保証するのに十分な温度まで、少なくとも1つの改質器管内で第1の触媒を加熱するように配置された熱源を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記合成ガス発生反応器が自熱式改質反応器であり、該自熱式改質反応器が、この自熱式改質反応器から出る第1の合成ガスが900℃~1100℃の間の温度を有することを確実にするように調整された操業条件を有する、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記ポストコンバータが、抵抗加熱によって加熱されるように配置されている、請求項12~14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記第1の触媒が改質触媒である、請求項12~15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記第2の触媒が、水蒸気メタン改質、メタン化および逆水性ガスシフト反応に活性を有する触媒である、請求項12~16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
添加される前記加熱されたCO リッチ流の量および/または組成が、前記生成物合成ガスのH /CO比が2.5未満であることを保証するように調整されている、請求項12~17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記加熱されたCO リッチ流が、少なくとも50乾燥モル%のCO を含む、請求項12~18のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明の実施形態は、一般に、炭化水素ガスおよび水蒸気を含む供給流を改質する方法および装置に関する。特に、本発明は、比較的低H/CO比率の合成気体を生産することを目的とした改質工程および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
炭化水素供給流の水蒸気改質による触媒合成ガス生産は数十年前から知られている。吸熱水蒸気改質反応は、典型的には水蒸気改質器(SMR)で行われる。水蒸気改質器または水蒸気メタン改質器は、吸熱反応のための熱を供給するために、多くの触媒充填管(チューブ)を、反応炉または焼成ヒーターに配置する。チューブの長さは通常10~14m、内径は7~15cmである。吸熱反応の熱は、燃焼器内で燃料を燃焼させて供給される。蒸気改質器からの合成ガス出口温度は、合成ガスの用途に依存するが、通常は650℃~980℃の範囲であろう。
【0003】
また、水蒸気改質による触媒合成ガス生成に用いられる触媒上の炭素生成は、とくにH/CO比率が比較的低い合成ガスの生成にとって課題であることが知られている。したがって、このような合成ガスには、炭素形成に抵抗性の触媒が必要である。このような耐炭素触媒は、例えば、貴金属触媒、部分不動態化ニッケル触媒および促進ニッケル触媒である。さらに、COリッチガス(豊富なガス)の工業規模の改質は、炭素生成を避けるためにガスの重大性を低下させるために、通常、水の共供給を必要とする。熱力学的観点からは、供給中のCO濃度が高く、水蒸気濃度が低く、H/CO比率の低い合成気体の産生を促進することが有利である。しかしながら、このような条件での操作は、触媒上での炭素形成の可能性のために実行不可能であろう。
【0004】
水蒸気改質による低H/CO比の合成ガスの代替生産は、比較的低H/CO比の合成ガスの生産に用いられる硫黄不動態化改質(SPARG)プロセスである。このプロセスでは、生成された合成ガスを脱硫して無硫黄合成ガスを生成する必要がある。
【0005】
低H/CO-比の合成ガスを生産するための種々の過程の詳細は、“Industrial scale experience on steam reforming of CO-rich gas”, P.M. Mortensen & I. Dybkjaer, Applied Catalysis A: General, 495 (2015), 141-151に示される。
【0006】
Autothermal Reforming(自熱式改質)(ATR)に基づく方法は、特に一酸化炭素に対する水素の低比率が必要な場合、合成ガスの生産の代替ルートである。ATR反応器の主な要素は、燃焼器、燃焼チャンバー、および耐火性ライニング(裏打ち)された圧力シェル内に含まれる触媒床である。ATR反応器においては、化学量論量以下の酸素による炭化水素供給の部分燃焼に続いて、水蒸気改質触媒の固定床で部分燃焼原料の水蒸気改質が行われる。水蒸気改質も高温のため燃焼室内である程度行われる。水蒸気改質反応は水ガスシフト反応を伴う。典型的には、ガスは、水蒸気改質および水ガスシフト反応に関して、反応器の出口で平衡にあるか、または平衡に近い。出口気体の温度は、典型的には、850℃~1100℃の領域にある。ATRの詳細および詳細な記述は、本技術分野において、“Studies in Surface Science and Catalysis”, Vol. 152, ”Synthesis gas production for FT synthesis”; Chapter 4, p.258-352, 2004などで見ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】“Industrial scale experience on steam reforming of CO2-rich gas”, P.M. Mortensen & I. Dybkjaer, Applied Catalysis A: General, 495 (2015), 141-151
【文献】“Studies in Surface Science and Catalysis”, Vol. 152, “Synthesis gas production for FT synthesis”; Chapter 4, p.258-352, 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ATRは、炭化水素供給流との反応で酸素と水蒸気、および場合によっては二酸化炭素を用いて合成ガスを形成する。出口ガス中の一酸化炭素に対する水素の比率は、炭化水素供給流および/またはATR反応器に添加される水蒸気および二酸化炭素の量を含む選択された操作条件に依存する。二酸化炭素の量を増やすと、生成ガス中の水素と一酸化炭素の比は減少するが、流量が多いため反応器のサイズも大きくなる。
【0009】
合成ガスは、熱部分酸化(TPOX)に基づくプロセスによっても生成されることができる。TPOX反応器において、炭化水素供給流と酸化剤は高温において耐火性ライニング反応器中で触媒なしに熱反応する。TPOXから出る合成ガスの温度は、しばしば、約1200~1300℃か、さらにはそれ以上になるであろう。触媒は関与しない。スス(煤煙)の生成を促進する可能性があるため、原料にはほとんどまたは全く水蒸気や二酸化炭素が添加されない。
【0010】
「合成ガス」という用語は、水素、一酸化炭素、およびおそらくは二酸化炭素、ならびにアルゴン、窒素などの少量の他のガスを含むガスを示すことを意味する。
【0011】
発明の概要
以下では、本発明の実施態様について言及する。しかしながら、本発明は具体的に記載された実施形態に限定されないことを理解すべきである。代わりに、異なる実施形態に関係しているか否かにかかわらず、以下の特徴および構成要素の任意の組合せが、本発明を実施および実践するために考慮される。
【0012】
本発明の一態様は、炭化水素ガスおよび水蒸気を含む炭化水素供給流を改質するための方法を提供し、前記方法は以下の段階を含む:
a)任意に第1の触媒を含む合成ガス発生反応器において、炭化水素供給流から第1の合成ガスを生成する;b)水蒸気改質、第2の触媒を含むポストコンバータに加熱されたCOリッチ流を供給し;c)前記ポストコンバータにおいて少なくとも水蒸気改質、メタン化および第1の合成ガスおよび加熱されたCOリッチ流の逆水性ガスシフト反応を実施して、生成物合成ガスを生成し、ここで、前記第2の触媒は、電源の手段によって電気的に加熱される。
【0013】
本発明の方法は、2つの異なった反応器で行われる2段階の工程であり、ここでは、2つの反応器の間の第1の合成ガスに加熱されたCOリッチガスを加えるか、またはポストコンバータに直接的に入れる。加熱したCOリッチガスを第1の合成ガスに加えるか、または、ポストコンバータ内の第1の合成ガスと混合する。
【0014】
こうして、この第1の合成ガスは、加熱されたCOリッチガスと混合される。この混合により、ポストコンバータ内のガスのH/C比およびO/C比が合成ガス発生反応器内のH/C比およびO/C比と異なることが可能となり、それによって低H/CO比を有する一酸化炭素および生成物合成ガスの生成が促進される。この文書内で、「低H/CO比を有する流」という用語は、H/CO比が2.5未満のガス流、好ましくはH/CO比が2.0未満のガス流、より好ましくはH/CO比が1.8未満のガス流、さらに好ましくはH/CO比が1.6未満のガス流など、COリッチガス流を意味することを意味する
【0015】
ポストコンバータ内の触媒の温度は、炭素が触媒上に形成されるのを避けるために十分に高く保つべきである。この最低気温は操作条件に依存するが、通常は750℃を超えるか、より望ましくは800℃を超えるとよい。ポストコンバータ内の第2の触媒および生成物合成ガスの温度は、1050℃以下、またはより好ましくは1000℃以下であろう。電気加熱により第2の触媒床を加熱することにより、炭素形成が起こるための臨界温度以下に第2の触媒の温度が低下しないことを保証することが可能である。
【0016】
「第1の合成ガスを生成する」という用語は、以下の反応をカバーすることを意味する:
-水蒸気メタン改質反応器中の第1の触媒上の第1の炭化水素供給流の反応、
-化学量論以下の量の酸素による炭化水素供給材料の部分燃焼、続いて第1の触媒上の部分燃焼炭化水素供給流の水蒸気改質の組み合わせ、
-触媒を使用せずに熱部分酸化反応器中での熱部分酸化、および
-触媒部分酸化反応器中の第1の触媒上での接触部分酸化。
【0017】
この文書中において、S/Cという用語は蒸気対炭素比の略である。蒸気対炭素比は、ガス中の炭化水素中の炭素のモルに対する蒸気のモルの比である。したがって、S/Cは蒸気の総モル数をガス中の炭化水素からの炭素の総モル数で割ったものである。O/Cという用語は、原子の酸素対炭素比の略である。酸素対炭素比は、ガス中の炭素のモル数に対する酸素のモル数の比である。H/Cという用語は、原子の水素対炭素比の略である。水素対炭素の比は、ガス中の炭素のモル数に対する水素のモル数の比である。S/C比の「C」はH/C比とO/C比の「C」とは異なることに留意すべきである。なぜなら、S/C「C」は炭化水素のみからのものであるのに対し、O/CとH/Cでは「C」はガス中のすべての炭素を表すからである。
【0018】
用語「ポストコンバータ」は、水蒸気改質、メタン化、および逆水性ガスシフト反応がポストコンバータにおいて平衡に向かって進行する、水蒸気メタン改質器などの合成ガス生成反応器の下流の反応器を示すことを意味する。合成ガス発生反応器からの合成ガスはポストコンバータで生成物合成ガスに変換され、生成物合成ガスは合成ガス発生反応器からの合成ガスよりもH/CO比率が低い。
【0019】
合成ガス反応器またはポストコンバータに導入する前にCOリッチガスを加熱するので、COリッチガスと第1の合成ガスの組合せは、第2の触媒上での炭素生成を回避できるように十分に高温である;したがって、合成ガスは、典型的な改質よりも臨界条件で生成することができる。例えば、加熱されたCOリッチガスは、第1の合成ガスまたはポストコンバータに添加される前に約800℃に加熱される。
【0020】
この文書の中で、「COリッチガス」とは、少なくとも50乾燥モル%COを含むガスを意味し、例えば、少なくとも70乾燥モル%CO、少なくとも90乾燥モル%COを含むガスを意味する。
【0021】
さらに、「改質」という用語は、以下の反応の1つ以上による改質反応を意味する:
【化1】
【0022】
反応(i)と(ii)は水蒸気メタン改質反応であるが、反応(iii)は乾燥メタン改質反応である。
【0023】
高級炭化水素、すなわち、C、n≧2、m≧4の場合、
式(i)が次式で一般化される
+nHO→nCO+(n+m/2)H (iv),
ここでn≧2、m≧4
【0024】
典型的には、改質は水ガスシフト反応(v)を伴う:
【化2】
【0025】
「水蒸気メタン改質」とは、反応(i)および(ii)をカバーすることを意味し、「メタン化」とは、反応(i)の逆反応をカバーすることを意味する。したがって、「水蒸気メタン改質/メタン化反応」とは、(i)および(ii)平衡に向かって進行する反応を意味する。「逆水性ガスシフト」とは、反応(v)の逆反応を意味する。ほとんどの場合、これらの反応はすべて、関係する反応器の触媒床または触媒ゾーンからの出口で平衡にあるか、または平衡に近い。
【0026】
「炭化水素供給流」という用語は、1つ以上の炭化水素、および、場合によってはCOおよび/または水蒸気などの他の構成成分を有する炭化水素ガスを含む供給流を示すことを意味する。「炭化水素ガス」という用語は、1つ以上の炭化水素、および場合によっては他の構成成分、例えば水素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、アルゴンおよびそれらの混合物を含む流(流れ)を示すことを意味する。「炭化水素ガス」の例は、天然ガス、町ガス、またはメタンと高級炭化水素の混合物であり得る。典型的には、炭化水素供給流は、水蒸気および可能なら炭化水素ガスが加えられた二酸化炭素に加えて、少量の水素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、またはアルゴン、またはこれらの組み合わせを含む炭化水素ガス流である。
【0027】
典型的には、炭化水素ガスは、内部の硫黄を除去するために脱硫を受け、それによって、プロセスにおける触媒の不活性化を回避することができる。
【0028】
任意に、炭化水素ガスは、水蒸気と共に、脱硫段階の下流で通常行われる工程の初期段階として、より高級の炭化水素を変換するために、約350~550℃の温度範囲で、反応(iv)に従って断熱的プレ改質を経ることになる。これは、後続のプロセス段階において、触媒上のより高級の炭化水素からの炭素形成のリスクを忌避する。
【0029】
一実施形態においては、第2の触媒は、抵抗加熱および/または誘導加熱によって加熱される。これは、反応のための熱を供給するように配置されたコンパクトな触媒を提供し、したがってコンパクトなポストコンバータを提供する。
【0030】
一実施形態においては、合成ガス発生反応器は、水蒸気メタン改質反応器であり、当該水蒸気メタン改質反応器は、水蒸気メタン改質反応器から出る第1の合成ガスが約650℃~約950℃の温度を有することを確実にするのに十分な温度まで、少なくとも1つの改質器管内で第1の触媒を加熱するように配置された熱源を含む。
【0031】
一実施形態においては、水蒸気メタン改質反応器は、抵抗加熱および/または誘導加熱によって加熱される。これは、非常に迅速に加熱され得る、コンパクトな水蒸気メタン改質反応器を提供する。また、メタン改質反応器を迅速に加熱することで、オン/オフしやすい小ユニットとしても適している。水蒸気メタン改質反応器内の触媒は、モノリスであってもよく、および/または触媒活性物質で被覆された強磁性材料で作られていてもよい。
【0032】
一実施形態においては、合成ガス発生反応器は、自熱式改質反応器から出る第1の合成ガスが850℃~1100℃の温度を有することを確実にするように調整された操作条件を有する自熱式改質(ATR)反応器である。
【0033】
別の実施形態においては、合成ガス発生反応器は熱酸化(TPOX)反応器であり、熱酸化反応器から出る第1の合成ガスが1100~1500℃の温度を有することを確実にするように調整された操作条件を有する。
【0034】
一実施形態においては、段階b)において、添加される加熱されたCOリッチ流の量および/または組成は、生成物合成気体のH/CO比率が2.5未満であることを確実にするように調整される。加熱されたCOリッチ流が、例えば少なくとも80乾燥モル%のCOのような非常に高いCOの含有量を有する場合、生成物ガス流のH/CO比率が2.5未満であることを保証するのに充分な加熱されたCOリッチ流の量は、加熱されたCOリッチ流がより低いCOの濃度、例えば50乾燥モル%のCOを有する場合よりも少ない。有利には、加熱されたCOリッチ流の量および/または組成を調整して、生成物ガス流のH/CO比率が1.5未満、またはさらに1未満になるようにする。
【0035】
一実施形態においては、加熱されたCOリッチ流のCOのモル流量と炭化水素供給流の炭化水素のモル流量との比率は0.5よりも大きい。加熱されたCOリッチ流のCOのモル流と炭化水素供給流の炭化水素のモル流の間の比率は、例えば、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1またはさらにそれ以上である。
【0036】
一実施形態においては、炭化水素供給流は、さらに、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、アルゴン、高級炭化水素またはそれらの組合せのうちの1つ以上を含むことができる。
【0037】
一実施形態においては、炭化水素供給流の水蒸気対炭素の比は約0.4~約2.0である。
【0038】
一実施形態においては、加熱されたCOリッチ流は、少なくとも50乾燥モル%のCO、好適には少なくとも70乾燥モル%のCO、および最も好適には少なくとも90乾燥モル%のCOを含む。
【0039】
加熱されたCOリッチ流は、実質的に純粋なCOであってもよい。
【0040】
一実施形態においては、加熱されたCOリッチ流は、さらに、水蒸気、水素、メタン、一酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、窒素、アルゴンまたはこれらの組合せのうちの1つ以上を含む。このような加熱されたCOリッチ流は、例えば還元ガス工程からのリサイクルガス流であってもよい。
【0041】
一実施形態においては、第1の合成ガスまたはポストコンバータに加える前に、加熱されたCOリッチ流は約350~約950℃の間の温度まで加熱される。ここでは、加熱されたCOリッチ流が加熱されるので、加熱されたCOリッチ流とポストコンバータ内の第1の合成ガスの組合せは、第2の触媒上での炭素生成を回避するために十分に高温である。したがって、合成ガスは、典型的な改質よりも臨界条件で生成することができる。好適には、加熱されたCOリッチ流は、改質された気流に加えられる前に約650℃に加熱される。
【0042】
一実施形態においては、加熱されたCOリッチガスは、第1の合成ガスの少なくとも一部との組合せ前および/またはポストコンバータへの流入前に、約500℃~1100℃の間の温度を有する。好適には、ポストコンバータ内の著しく低温になることを避け、結果として第2の触媒のコーキングを避けるために、加熱されたCOリッチガスの温度は600℃を上回り、より好適には、加熱されたCOリッチガスの温度は、約700℃またはそれより高い温度である。
【0043】
本発明の別の態様は、炭化水素ガスおよび水蒸気を含む炭化水素供給流の改質のための装置に関し、この装置は、以下を含む:
-任意に、第1の触媒を含み、前記炭化水素供給流から第1の合成ガスを発生させるように配列された、合成ガス発生反応器、
-水蒸気改質、メタン化および逆水性ガスシフト反応に活性な第2の触媒を収容するポストコンバータ、
-第1の合成ガスを前記ポストコンバータに伝導するための導管、
-ポストコンバータの上流の第1の合成ガスに加熱されたCOリッチ流を加えるための手段、および/または、前記ポストコンバータに直接加熱されたCOリッチ流を加えるための手段を含み、
ここで、前記装置は、前記第2の触媒を電気的に加熱するために配置された電源を含む。
【0044】
本装置の実施形態の詳細は、方法の実施形態に関連して記載されているのと同様である。これらについては、再度詳細には記載しない。
【0045】
一実施形態においては、第1の触媒は改質触媒、例えばニッケルベースの触媒である。一実施形態においては、第2の触媒は、水蒸気メタン改質、メタン化、および逆水性ガスシフト反応に活性な触媒である。したがって、第1および第2の触媒は同一であっても異なっていてもよい。改質触媒の例としては、Ni/MgAl、Ni/Al、Ni/CaAl、Ru/MgAl、Rh/MgAl、Ir/MgAl、MoC、WoC、CeO、Alキャリア上の貴金属であるが、改質に適した他の触媒も考えられる。水蒸気改質触媒は、水蒸気メタン改質触媒またはメタン改質触媒とも示される。
【0046】
一実施形態において、第2の触媒は、巨視的支持体を含み、ここで、巨視的支持体は、電気的伝導性物質を含み、そして、巨視的支持体はセラミックコーティングを支持し、ここで、巨視的支持体とセラミックコーティングは、酸化物コーティングと巨視的支持体との間に化学結合を形成するために酸化性空気中で焼結されており、ここでセラミックコーティングは触媒活性粒子を支持する。巨視的支持体は、鉄、クロム、アルミニウムまたはそれらの合金を含むことができる。このような第2の触媒は、抵抗加熱によく適している。
【0047】
セラミックコーティングは、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウムおよび/またはセリウム、および/またはカルシウムを含む酸化物であってもよい。
【0048】
第2の触媒は、巨視的支持体を含むことができ、巨視的支持体は強磁性材料を含み、巨視的支持体はセラミックコーティングを支持し、セラミックコーティングは触媒活性粒子を支持する。このような第2の触媒は誘導加熱によく適している。
【0049】
ポストコンバータにおける改質反応のための触媒活性は、従来の固定床の(ペレット)触媒、触媒ハードウエア、または構造化触媒のいずれかによって得ることができる。触媒ハードウエアの場合、触媒物質は金属表面、すなわち支持体の表面に直接添加される。金属表面の触媒コーティング(洗浄コーティング)は周知のプロセスである(例えば、.Cybulski, A., and Moulijn, J. A., Structured catalysts and reactors, Marcel Dekker, Inc, New York, 1998, Chapter 3に記載されており、引例として本明細書に組み込まれる)。
【0050】
巨視的支持体の適切な材料、好ましくはCrおよび/またはAlを含むフェライト鋼は、好ましくは800℃以上の温度に加熱される。Crおよび/又はAl酸化物の層を形成するために。この層は、セラミックの鋼への良好な接着を容易にする。セラミック前駆体を含むスラリーの薄層を表面に噴霧、塗布または浸漬などの方法で塗布(適用)する。コートの塗布後、通常350~1000℃の範囲の温度でスラリーを乾燥し、焼成する。最後に、セラミック層に触媒活性物質、例えば触媒活性粒子を含浸させる。あるいは、触媒活性物質をセラミック前駆体と同時に塗布(適用)する。
【0051】
触媒ハードウエアは、プロセスガスが流れるチャネル壁に直接触媒を付着させるか、または構造化要素の形態で金属の巨視的支持体に付着させた触媒のいずれかである。構造化された要素は、触媒への支持(支持体)を提供するのに役立つ。
【0052】
構造化要素は、隣接する層の間に存在する流動路(チャンネル)を有する複数の層を含む装置である。層は、隣接する層を一緒に配置することによって、流動路(チャンネル)が、例えば、互いに交差することができるか、または直線チャンネルを形成することができる要素を生じるような形で形成される。構造化要素は、例えば、US5536699、US4985230、EP396650、EP433223およびEP208929にさらに記載されている。
【0053】
構造化要素は、例えば、ストレートチャネル(直線チャネル)の要素である。例えば、ストレートチャネルモノリスは、抵抗加熱がポストコンバータに使用される場合、本発明の方法で使用するのに適している。高表面構造要素など、他の触媒構造要素も適用できる。構造化触媒の例には触媒化モノリスが含まれる
【0054】
触媒の量は、所与の操作条件でのメタン改質反応、メタン化反応および逆水性ガスシフト反応に必要な触媒活性に合わせることができる。この方法では、圧力低下はより低く、触媒の量は必要以上ではなく、高価な貴金属を使用する場合に特に有利である。
【0055】
図面の簡単な説明
本発明の実施形態を、例示的に、および添付の図を参照して説明する。添付の図は、本発明の実施形態の例のみを示しており、したがって、本発明は、他の同等に効果的な実施形態を認めることができるため、その範囲を限定するものではないと考えられることに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、本発明による装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
詳細な説明
以下は、添付の図に示される本発明の実施形態の詳細な説明である。実施形態は例であり、本発明を明確に伝えるように詳細に記載されている。しかし、提供される詳細の量は、予想される実施形態の変動を制限することを意図したものではなく、逆に、添付のクレームによって定義される本発明の精神および範囲内に入る全ての改変、同等物、および代替物をカバーすることを意図する。
【0058】
図1は、本発明による炭化水素ガスおよび水蒸気を含む炭化水素供給流を改質するための装置100を示す模式図である。当該装置100は、合成ガス発生反応器10を含み、この例では、水蒸気メタン改質器(SMR)である。SMR反応器10は、1つ以上の熱源を含み、従来の燃焼式蒸気メタン改質器であってよく、例えば、側面燃焼式、上面燃焼式、底面燃焼式またはテラス燃焼式改質器である。SMR反応器10は、改質触媒を収容する複数の改質管(図1には1本の管のみが示されている)を有する。SMR反応器10は、炭化水素供給流3、例えば、水蒸気2と組み合わせた炭化水素ガス流1を改質管に供給するための入口と、SMR反応器10から第1の合成ガス4を放出するための出口とを有する。熱源および操作条件は、少なくとも1つの改質器管内で触媒を、合成ガス発生反応器から出る第1の合成ガスが約650℃~約950℃の温度を有することを確実にするのに十分な温度まで加熱するように配置される。
【0059】
さらに、装置100は、第2の触媒25を収容するポストコンバータ20を含む。第2の触媒25は、水蒸気メタン改質、メタン化および逆水性ガスシフト反応を触媒するのに活性である。
【0060】
さらに、この装置は、加熱されたCOリッチ流5とするCOリッチ流を加熱するためのヒーター(図示せず)、例えば、焼成ヒーターを含む。導管が、SMR反応器10からの出口をポストコンバータ20への入口に接続する。加熱されたCOリッチ流5を、ポストコンバータ20の上流の第1の合成ガス4に加え、それによって混合ガス流6を生成する。この混合ガス流6はポストコンバータ20への入口であり、生成物合成ガス7は生成物ガスとして反応器20から出る。生成物合成ガス7は、ポストコンバータ20の下流でさらに処理を受けることができる。
【0061】
ポストコンバータ20は、混合ガス流6を平衡化し、それによってCO生成を増加させ、結果として生じる生成物合成ガス7のH/CO比率を、第1の合成ガス4と比較して減少させるように働く。
【0062】
電源30が設けられ、電気ライン31が電源30とポストコンバータ20との間、および/又は電源とポストコンバータ20内の第2の触媒25との間に設けられる。第2の触媒25が抵抗加熱により加熱されるように配置されている場合、電気ライン31は、発電源と第2の触媒25を接続する。第2の触媒25が誘導加熱により加熱されるように配置されている場合、第2の触媒25の少なくとも一部内に交流磁場を発生させるために、第2の触媒25を囲む誘導コイルまたはポストコンバータの少なくとも一部に交流電流を供給するように、動力源を配置する。
【0063】
図1に示す実施形態では、ポストコンバータ20に入れる前に、加熱されたCOリッチ流5を混合ガス流6に第1の合成ガス流に加える。しかしながら、代替的に、加熱されたCOリッチ流路5と第1の合成ガス4を、第2の触媒25の床の上流で混合するために、ポストコンバータ20に別々に添加してもよい。
【0064】
図1に示す実施形態では、SMR反応器10は水蒸気メタン改質反応器である。代わりに、合成ガス発生反応器10は自熱式改質反応器とすることができる。
【実施例
【0065】
例:
プロセスの計算例を以下の表1に示す。炭化水素ガス、COおよび水蒸気を含み、S/C比が1.0である炭化水素供給流を、図1に示すように本発明のSMR反応器10に供給する。この炭化水素供給流は、SMR反応器10に入れる前に650℃に加熱され、SMR反応器10内で、ガスは改質(再形成)され、950℃の温度を有する第1の合成ガスとしてSMR反応器10から出る。
【0066】
第1の合成ガスの所定の組成についての黒鉛炭素に対するメタン分解反応の平衡温度は994℃であり、第1の合成ガスの黒鉛炭素に対するBoudouard(ブドウアルド)反応の平衡温度は927℃である。したがって、第1の合成ガスの温度は、メタン分解反応の平衡温度よりも低く、Boudouard反応の平衡温度よりも高く、その結果、第1の合成ガス(またはSMR内のガス)は炭素形成に親和性を持たない。
【0067】
これに関連して、メタン分解温度(T(MDC))は、メタンのグラファイトへの分解の平衡定数
【化3】
がガスの反応指数(反応商)に等しい温度として計算される。この温度よりも高い温度では、黒鉛状炭素の生成が起こりうる。反応指数QCは、メタンの分圧に対する水素の分圧の二乗の比率、すなわちQC=P H2/PCH4として定義される。
【0068】
Boudouard平衡温度(T(BOU))は、同様の方法で計算されるが、Boudouard反応
【化4】
から、この場合、黒鉛状カーボンの生成は、温度がこの温度よりも低いときに起こり得る。
【0069】
COガスを650℃に加熱して、加熱されたCOガスの形態で加熱されたCOリッチ流を形成し、混合ガス(第1の合成ガスおよび加熱されたCOガス)が791℃の温度でポストコンバータ20に入る。
【0070】
ポストコンバータ20内では、混合流は平衡化され、すなわち、逆水性ガスシフト、メタン化および改質反応を受け、それによって生成物合成ガスを形成する。ポストコンバータから出る生成物合成ガスの出口温度は、電気加熱により950℃に制御され、これは1205℃のガスのメタン分解平衡温度よりかなり低く、845℃のガスのBoudouard温度より上である。したがって、生成物合成ガス(またはポストコンバーター内のガス)には炭素生成の可能性が生じない。
【0071】
【表1】
【0072】
このように、本発明の装置および方法を使用する場合、比較的高CO量の合成ガス流を提供することができ、表1の例では、H/CO比率は0.7である。
【0073】
単独の水蒸気メタン改質器で同様の合成ガスを製造するには、表2に示すように、同時供給ガスと同じ合成ガスを得るために大量のHOとCOを必要とするであろう。表2に示す比較例では、表1の生成物合成ガスと同じ生成物合成ガスが水蒸気メタン改質器で達成される。しかしながら、HOとCOの非常に大量の供給が蒸気メタン改質器に添加され、大きなSMRをもたらす炭素生成を避ける必要がある。表2の例においては、SMRの出口合成ガス流量が10308Nm/hであるのに対し、表1の装置では、実質的に同量のHとCOの生産では6545Nm/hに過ぎない。したがって、本発明の思想は、はるかに小さな水蒸気メタン改質器デザインを可能にする。このことは、本発明が改造にも有用であることを示している。
【表2】
図1