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特許7332606倒立容器アセンブリ及び粘稠な洗浄組成物を含む洗浄製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】倒立容器アセンブリ及び粘稠な洗浄組成物を含む洗浄製品
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/04 20060101AFI20230816BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20230816BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20230816BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20230816BHJP
   C11D 1/94 20060101ALI20230816BHJP
   C11D 1/83 20060101ALI20230816BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20230816BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20230816BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20230816BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20230816BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20230816BHJP
   C11D 3/34 20060101ALI20230816BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20230816BHJP
   C11D 1/88 20060101ALI20230816BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20230816BHJP
   B65D 47/20 20060101ALI20230816BHJP
   B65D 51/24 20060101ALI20230816BHJP
   B65D 47/06 20060101ALI20230816BHJP
   A47L 15/42 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
C11D17/04
C11D1/14
C11D1/29
C11D1/75
C11D1/94
C11D1/83
C11D3/37
C11D1/722
C11D1/72
C11D3/04
C11D3/20
C11D3/34
C11D17/08
C11D1/88
B65D83/00 G
B65D47/20 111
B65D51/24 700
B65D47/06 400
A47L15/42 Z
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020538779
(86)(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 US2019013741
(87)【国際公開番号】W WO2019143653
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】18151770.7
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ブラウワーズ、カトリーン
(72)【発明者】
【氏名】ブレクマン、カルル・ギスラン
(72)【発明者】
【氏名】キューレールス、ロビー・レニルド・フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】アヒルワル、ディーパック
(72)【発明者】
【氏名】サンダース、グレタ・アニー・レナタ
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-537692(JP,A)
【文献】特開2007-176594(JP,A)
【文献】特表2016-503832(JP,A)
【文献】特開平07-132979(JP,A)
【文献】特表2012-516908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 17/04
C11D 1/14
C11D 1/29
C11D 1/75
C11D 1/94
C11D 1/83
C11D 3/37
C11D 1/722
C11D 1/72
C11D 3/04
C11D 3/20
C11D 3/34
C11D 17/08
C11D 1/88
B65D 83/00
B65D 47/20
B65D 51/24
B65D 47/06
A47L 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
倒立容器アセンブリ(10)と、前記倒立容器アセンブリ(10)に収容された食器手洗い用液体洗浄組成物(100)と、を備える洗浄製品であって、前記倒立容器アセンブリ(10)が、底面(12)及び前記底面(12)から離れる方向に位置する頂面(13)を有し、前記底面(12)が開口部(14)を有する倒立容器(11)と、前記倒立容器(11)の前記底面(12)に取り付けられた液体ディスペンサー(15)と、を備え、
a)前記洗浄組成物(100)が、前記組成物全体の15重量%~40重量%の界面活性剤系を含み、前記界面活性剤系が、
i)アルキルサルフェート、アルキルアルコキシサルフェート、及びこれらの混合物からなる群から選択され、5%~60%の重量平均分枝レベルを有する、アニオン性界面活性剤と、
ii)両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される第1の共界面活性剤系と、を含み、
前記組成物が、8:1~1:1の重量比で前記アニオン性界面活性剤と前記第1の共界面活性剤系とを含み、
前記組成物が、直径40mm、角度2.008°の円錐プレート形状を有する回転レオメーターを、切頭部間隙を56μmとして使用した剪断粘度試験方法により、定常剪断を適用し、20℃で0.1/s~1000/sの剪断速度の範囲で剪断粘度を測定したときに、10/sで、500mPa・s~1,500mPa・sの剪断粘度を有する、洗浄製品。
【請求項2】
前記重量比が4:1~2:1である、請求項1に記載の洗浄製品。
【請求項3】
前記組成物の前記界面活性剤系が、更に、前記組成物全体の0.1重量%~10重量%の第2の共界面活性剤系を含む、請求項1又は2に記載の洗浄製品。
【請求項4】
前記第2の共界面活性剤系が、非イオン性界面活性剤を含む、請求項3に記載の洗浄製品。
【請求項5】
前記アニオン性界面活性剤及び前記非イオン性界面活性剤が、2:1~50:1の比で存在する、請求項4に記載の洗浄製品。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤が、アルキルエトキシル化界面活性剤である、請求項4又は5に記載の洗浄製品。
【請求項7】
前記アルキルエトキシル化界面活性剤が、アルキル鎖に9~15個の炭素原子を含み、アルコール1モル当たり5~12単位のエチレンオキシドを含む、請求項6に記載の洗浄製品。
【請求項8】
前記第1の共界面活性剤系が、両性界面活性剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の洗浄製品。
【請求項9】
前記両性界面活性剤が、アミンオキシド界面活性剤である、請求項1~8のいずれか一項に記載の洗浄製品。
【請求項10】
前記アミンオキシド界面活性剤が、直鎖状又は分枝状アルキルアミンオキシド、直鎖状又は分枝状アルキルアミドプロピルアミンオキシド、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の洗浄製品。
【請求項11】
前記組成物が、20℃の蒸留水中10%希釈で測定したときに、5~12の範囲のpHを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の洗浄製品。
【請求項12】
前記組成物が、前記組成物全体の0.1重量%~5重量%の両親媒性アルコキシル化ポリアルキレンイミンを更に含み、前記両親媒性アルコキシル化ポリアルキレンイミンが、100~5,000ダルトンの平均分子量範囲を有するポリエチレンイミン主鎖を含むアルコキシル化ポリエチレンイミンポリマーである、請求項1~11のいずれか一項に記載の洗浄製品。
【請求項13】
前記組成物が、前記組成物全体の0.1重量%~10重量%の、式(I)の少なくとも1種のエチレンオキシド(EO)-プロピレンオキシド(PO)-エチレンオキシド(EO)トリブロックコポリマーを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の洗浄製品。:
(EO)x-(PO)y-(EO)x
(I)
(式中、
各xは、独立して、平均して1~80であり、
yは、平均して1~60である)
【請求項14】
前記組成物が、前記組成物全体の0.05重量%~2重量%の塩を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の洗浄製品。
【請求項15】
前記塩が、一価、二価の無機塩又はこれらの混合物である、請求項14に記載の洗浄製品。
【請求項16】
前記塩が、塩化ナトリウムである、請求項15に記載の洗浄製品。
【請求項17】
前記組成物が、前記組成物全体の1重量%~10重量%のヒドロトロープを更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の洗浄製品。
【請求項18】
前記ヒドロトロープが、クメンスルホン酸ナトリウムである、請求項17に記載の洗浄製品。
【請求項19】
前記組成物が、前記組成物全体の0.01重量%~25重量%の有機溶媒を更に含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の洗浄製品。
【請求項20】
前記有機溶媒がアルコールである、請求項19に記載の洗浄製品。
【請求項21】
前記アルコールが、エタノール、ポリアルキレングリコール及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項20に記載の洗浄製品。
【請求項22】
前記液体ディスペンサー(15)が、接続スリーブ(17)を備える前記ディスペンサー(15)の本体(16)を備え、前記接続スリーブ(17)が、前記倒立容器(11)の前記開口部(14)に近接する外面に係合するように適合可能である、請求項1~21のいずれか一項に記載の洗浄製品。
【請求項23】
前記接続スリーブ(17)が、前記倒立容器(11)に収容された前記組成物との流体連通を確立するための内部排出導管(18)を画定するために径方向に離間している、請求項22に記載の洗浄製品。
【請求項24】
前記液体ディスペンサー(15)が、前記内部排出導管(18)を横切って延在する弁(19)を備え、前記弁(19)が、前記倒立容器(11)の内部に収容された前記洗浄組成物(100)と接触させるための内側(20)と、前記外部雰囲気に曝露させるための外側(21)とを有し、前記弁(19)が、前記弁の内側(20)に対する圧力が前記弁の外側(21)に対する圧力を超えたときに応答して開放可能な分注オリフィス(22)を画定し、前記液体ディスペンサー(15)が、前記弁(19)の前記内側(20)の上方に位置するバッフル(30)を更に備える、請求項22又は23に記載の洗浄製品。
【請求項25】
前記液体ディスペンサー(15)が、前記弁(19)の上流に局在する耐衝撃性システム(23)、及び存在する場合バッフル(30)を更に備え、前記耐衝撃性システム(23)が、内部に空洞(25)を有し、前記本体(16)から長手方向にかつ前記スリーブ(17)から径方向に内向きに延在する筐体(24)を備え、前記筐体(24)が、前記倒立容器(11)から前記筐体(24)への前記組成物の流路を提供する少なくとも1つの入口開口部(26a)と、前記分注オリフィス(22)が開放されたときに前記筐体(24)から前記外部雰囲気への前記組成物の放出経路を提供する少なくとも1つの出口開口部(26b)と、を備え、前記空洞(25)が、圧縮性物質(110)によって部分的に占有されるように適合する、請求項22~24のいずれか一項に記載の洗浄製品。
【請求項26】
前記液体ディスペンサー(15)が、閉止蓋を含まない、請求項1~25のいずれか一項に記載の洗浄製品。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の洗浄製品を用いて食器を洗浄する方法であって、倒立容器(11)を圧搾して、底面(12)における開口部(14)から洗浄組成物(100)を分注する工程を含む方法。
【請求項28】
前記倒立容器(11)からの洗浄組成物(100)の漏出を低減又は防止するための、請求項1~26のいずれか一項に記載の洗浄製品の使用。
【請求項29】
前記倒立容器(11)からの前記洗浄組成物(100)の糸引きを低減又は防止するための、請求項1~26のいずれか一項に記載の洗浄製品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一時的な液体圧の増大(例えば、水撃圧(hydraulic hammer pressure))によって引き起こされる望ましくない液体漏出を実質的に低減/防止するため、及び/又は吐出(dosing)時の液体の糸引きの低減/防止を実質的に改善するために、倒立容器アセンブリと、特定の界面活性剤系を有する食器手洗い用液体洗浄組成物と、を備える洗浄製品に関する。
【背景技術】
【0002】
倒立容器は、内部に収容された液体洗剤を分注するために「底部」に開口部を有する容器である。典型的には、消費者は、倒立容器の側面を圧搾して液体洗剤を分注する。消費者製品をパッケージ化するための倒立容器の使用は、特に食器手洗い用液体洗浄製品の分野において、より一般的になってきている。例えば、Method Products Inc.のブランド「Method Dish Soap」及び小売業者Lidlのブランド「Geschirr Spul Mittel」の洗剤は、倒立容器にパッケージ化されている(図1a及び1bを参照)。消費者は、人間工学的に操作が容易であることから倒立容器を好む。例えば、従来の直立容器とは異なり、倒立容器は、特により大きなサイズのボトルを使用する場合及び/又は高齢の消費者の場合に消費者にとって不便であるか又は困難であり得る、液体洗剤を吐出するために手首をねじり続けることを必要としない。更に、倒立容器によって最後の一滴まで吐出することも容易になるが、これは、「頂部」に開口部を有する従来の直立容器ではより困難である。用語「底部」及び「頂部」は、保管時、すなわち、使用中ではないときに容器に意図される配置に従って解釈されるべきである。例えば、容器が保管されているとき、倒立容器は底部に開口部を有し、直立容器は頂部に開口部を有する。倒立容器の更なる利点は、開放状態で放置されたときに香料及び/又は溶媒が蒸発するリスクを最小限に抑えることにより、物理的安定性及び/又は香料寿命に正の影響を与えることである。また、倒立容器は、吐出される液体洗剤が、容器を回転させた際に外部空気と混合されること(この混合は最終的に「空気」吐出時の飛び散りにつながる場合がある)を回避する。
【0003】
倒立容器に特有の課題は、特に倒立容器が閉止蓋を含まない場合の漏出防止である。本明細書で使用するとき、用語「閉止蓋」は、吐出される液体が底部開口部を通って出られるようにするために消費者が固体部材を物理的に除去/移動させなければならないように、ボトルの出口を閉塞する物理的閉塞(すなわち、固体部材)を意味する。閉止蓋の例は、閉鎖位置と開放位置との間で移動可能な押し上げ式キャップである。当業者であれば、他の可能な閉止蓋についても理解しているであろう。以下の品目は「閉止蓋」とは見なされないことが理解されるであろう:一方向若しくは二方向の弁又はボトルの出口に位置するバッフル、あるいは輸送中の漏出を防止するために適用され、最初の使用前に除去されるストリップ。
【0004】
閉止蓋がないことは、もう一方の手で蓋を開閉する必要がないことに加えて、必要な工程がより少ないため吐出操作が迅速になるので、吐出操作を片手操作にするために消費者に好まれる。倒立容器の内部に収容された液体は、定常状態(すなわち、保管)中及び/又は衝撃時、特に衝撃時に漏出する傾向がある。例えば、保管中に、倒立容器が、内部圧力の上昇及び漏れにつながる可能性がある温度変化、具体的には増加(例えば、日当たりの良い窓の横やコンロの上部付近に置かれた倒立容器、等)を受けたときに、漏れが発生する場合がある。具体的には、「衝撃」とは、倒立容器が取り扱われる、輸送される、落とされる、又は倒されるときを意味する。衝撃の結果として、水撃圧とも呼ばれる一時的な液体圧が倒立容器の内部で増大し、底部の開口部を通じた漏出を引き起こす可能性がある。
【0005】
漏出問題に対処するためのこれまでの試みは、弾力性弁を開口部に組み込むことを伴う(例えば、国際公開第2004/02843号(Method Products)を参照されたい)。しかしながら、弾力性弁を用いたとしても、依然としてある程度の漏出が生じる場合があることが観察されている。他の試みでは、弾力性弁の上にバッフルを組み込んでいるが(例えば、特開2007/176594号(ライオン)及び国際公開第2000/6038号(Aptar Group)を参照されたい)、具体的には倒立容器に関しての、より具体的には衝撃時の漏出の問題は完全には解決されていない。更に他の試みは、支持基部として機能する蓋(国際公開第2009/156317号(Unilever)を参照されたい)を有する圧縮可能な倒立容器の内部に流動性の粘稠な(少なくとも500Pa・s)洗濯用組成物を組み込むことを伴う。これらの解決策のいずれも、上記の問題に十分には対処していない。
【0006】
この漏出の問題は、これらの市販の食器洗い用液体洗浄組成物が比較的高度に粘稠(すなわち、>3,000mPa・s)であり、これにより、組成物の吐出及び特に溶解がより困難になり、このような高い製品粘度に到達することを困難にする技術の使用において配合者が制限を受ける可能性があるという事実によって複雑化する。消費者が液体組成物の分注を停止すると(すなわち、倒立容器の側面に力を印加するのを停止すると)、これらの組成物が「糸引き」する傾向があることも観察されている。「糸引き」は、液体組成物が倒立容器の底部の開口部に付着したままとなり、底部の開口部と外部環境との間で「毛状物(capillary)」を形成する現象である。糸引きの結果として、液体組成物の一部が、底部の開口部の周辺及び内部に残される。この液体組成物は、乾燥してクラストを形成する傾向がある。クラストが蓄積した場合、最終的に開口部が閉塞される。あるいは、糸引きしている液体組成物は、保管時に重力の影響下で落下し、最終的には傷つきやすい保管面を損傷する場合がある。
【0007】
これらの市販の食器洗い用液体洗浄組成物の界面活性剤系が、当該組成物の高粘稠プロファイルの一因となり、観察される漏出及び/又は糸引きを引き起こすと考えられる。例えば、Method Productsのブランド「Method Dish Soap」の洗剤は、アニオン性-非イオン性界面活性剤系を含み、小売業者Lidlのブランド「Geschirr Spul Mittel」の洗剤は、高度に粘稠なアルキルエトキシサルフェートアニオン性界面活性剤及びココアミドプロピルベタイン双性イオン界面活性剤系を8:1超の比率で含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2004/02843号
【文献】特開2007/176594号
【文献】国際公開第2000/6038号
【文献】国際公開第2009/156317号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、倒立容器アセンブリと、その中に収容された食器手洗い用液体洗浄組成物と、を備える改善された洗浄製品が依然として必要とされている。液体組成物の特定の界面活性剤系は、倒立容器が衝撃を受けたとき、特に落下したとき又はひっくり返ったときに、液体の漏出を実質的に低減又は防止するのに役立つことが望ましい。また、液体組成物の特定の界面活性剤系は、倒立容器からの液体の定常状態の漏出を実質的に低減又は防止するのに役立つことも望ましい。また、好ましくは吐出時、より好ましくは吐出が完了したときの液体組成物の糸引きを実質的に低減又は防止するために、倒立容器と、特定の界面活性剤系を有する液体組成物とを備える、改善された洗浄製品が必要とされている。好ましくは、この製品配合アプローチはまた、製品の吐出及び溶解プロファイルを促進することを目的としたより低い製品粘度を可能にする。また、製品の溶解がより速いと、製品が有効状態になったことの合図をユーザーに示す泡の生成がより速くなる。本出願人は、本明細書で以下に説明する改善された洗浄製品をとおして、上述の必要性のうちのいくつか又は全てが少なくとも部分的に満たされ得ることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、倒立容器アセンブリと、8:1~1:1の比でアニオン性界面活性剤及び第1の共界面活性剤系を含む界面活性剤系を有する洗浄組成物とを含む洗浄製品が、改善された漏出及び/又は糸引き防止を示すという驚くべき発見に基づいて、これらの必要性のうちの1つ以上を満たす。
【0011】
一態様では、本発明は、倒立容器アセンブリと、食器手洗い用液体洗浄組成物とを含む洗浄製品を提供することによって、これらの必要性に対処する。倒立容器アセンブリは、開口部を有する底面と、当該底面から離れる方向に位置する頂面とを有する倒立容器を備える。液体ディスペンサーは、倒立容器の底面に取り付けられる、好ましくは取り外し可能に取り付けられる。液体ディスペンサーは、倒立容器の底部からの洗浄組成物の分注を調節する。洗浄組成物は、i)アニオン性界面活性剤、好ましくはアルキルサルフェート、アルキルアルコキシサルフェート、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは当該アルキルアルコキシサルフェートがアルキルエトキシサルフェートである、アニオン性界面活性剤と、ii)両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、両性界面活性剤、好ましくはアミンオキシド界面活性剤である第1の共界面活性剤系と、を含む界面活性剤を全組成物の1重量%~60%重量%含み、当該組成物は、8:1~1:1、好ましくは4:1~2:1、より好ましくは3.5:1~2.5:1の重量比で当該アニオン性界面活性剤と当該第1の共界面活性剤系とを含む。この特定の界面活性剤系は、より低い剪断粘度を有する洗浄組成物を可能にし、特に衝撃中の漏出を実質的に低減若しくは防止するように及び/又は分注が完了した後の液体の糸引きの可能性を防止するように効果的に機能する。
【0012】
別の態様では、本発明は、特許請求の範囲による洗浄製品を用いて食器を洗浄する方法であって、倒立容器を圧搾して、底面における開口部から洗浄組成物を分注する工程を含む方法に関する。
【0013】
更に別の態様では、本発明は、好ましくは倒立容器が水撃圧に曝されたときに、倒立容器からの洗浄組成物の漏出を実質的に低減又は防止するための、特許請求の範囲による洗浄製品の使用に関する。
【0014】
更に別の態様では、本発明は、好ましくは分注が完了したときに、洗浄組成物の糸引きを実質的に低減又は防止するための、特許請求の範囲による洗浄製品の使用に関する。
【0015】
更に別の態様では、本発明は、本発明による液体洗浄組成物と、倒立容器及び請求されるとおり当該倒立容器に取り付けられた、好ましくは取り外し可能に取り付けられた液体ディスペンサーを備える倒立容器アセンブリと、を備える洗浄製品に関する。好ましくは、倒立容器は、閉鎖キャップ又はシールを備えない。
【0016】
本発明の1つの目的は、洗浄組成物が漏出しないように、倒立容器が衝撃を受けたとき、特に落下したとき又はひっくり返ったときの漏出の低減及び/又は防止が実質的に改善された、本明細書に記載の洗浄製品を提供することである。このような改善された洗浄製品は、倒立容器のより雑な取り扱い又は誤用にも適応するであろう。
【0017】
本発明の別の目的は、洗浄組成物の定常状態の漏出を実質的に低減及び/又は防止する、本明細書に記載の洗浄製品を提供することである。洗浄組成物は、液体を分注するために倒立容器に力を意図的に印加しない限り漏出しないことが有利である。これにより、液体が分注されることを潜在的に阻止し得る、分注オリフィスの付近に形成される汚い液体乾燥物、又は影響を受けやすい表面上に残されると最終的に表面の損傷につながる、保管領域でのちらかりが回避される。
【0018】
本発明の更なる目的は、洗浄組成物が倒立容器の底部における開口部の周辺及び内側で乾燥し、クラストを形成することのないように、分注が完了した後の液体の糸引きを実質的に低減及び/又は防止する、本明細書に記載の洗浄製品を提供することである。このような改善された洗浄製品は、液体のちらかり、及び液体ディスペンサーの周囲で液体のクラストが乾燥するのを回避して、分注の問題を防止するであろう。
【0019】
本発明の更なる目的は、容器をひっくり返す必要なく容易かつ正確に吐出することを可能にする、本明細書に記載の洗浄製品を提供することである。これは、より迅速かつ改善された人間工学的な吐出体験(すなわち、より快適で、手首にかかるストレスが少なく、必要とされる力が少ない、等)に寄与すると考えられる。
【0020】
更に、本発明の更なる目的は、倒立容器内の液体の最後の一滴までの利用を可能にする、本明細書に記載の洗浄製品を提供することである。これにより無駄を最小限に抑えることが本発明の利点である。
【0021】
本発明の別の利点は、より大きなサイズの倒立容器(例えば、>450mL)の使用を可能にすることである。改善された洗浄製品は、より大きな倒立容器と共に使用されるとき、より高い重量許容範囲を可能にし、それによって液体の漏出を実質的に低減/防止することが期待される。
【0022】
本発明のこれらの並びに他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明から当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本明細書は、本発明について具体的に示し、明確に特許請求する「特許請求の範囲」で完結するが、本発明は添付の図についての以下の説明からより良く理解されると考えられ、図面全体をとおして、同様の数字は同様の部分を指定するために使用される。
図1A】(国際公開第2004/02843号に開示されているとおりの)Method Products Inc.製の倒立容器にパッケージ化された食器洗い用液体洗剤「Method Dish Soap」を示す。
図1B】小売業者Lidl製の倒立容器にパッケージ化された食器洗い用液体洗剤「Geschirr Spul Mittel」を示す。
図2】本発明の一態様による洗浄製品の斜視図を示す。洗浄製品は、液体ディスペンサー(15)に接続された倒立容器(11)と、その中に収容された洗浄組成物(100)と、を備える倒立容器アセンブリ(10)を備える。
図3】本発明による液体ディスペンサー(15)の斜視図を示す。
図4】本発明による液体ディスペンサー(15)の本体(16)の斜視図を示す。
図5】本発明による液体ディスペンサー(15)の弁(19)の内側(20)の平面図を示す。
図6】本発明による液体ディスペンサー(15)の弁(19)の外側(21)の斜視底面図を示す。
図7】バッフル(30)を備える本発明による図3の液体ディスペンサー(15)の斜視図を示す。
図8】本発明による液体ディスペンサー(15)の耐衝撃性システム(23)の斜視図を示す。
図9】「衝撃」前かつ圧縮性物質(110)が圧縮されていない状態の、本発明による液体ディスペンサー(15)の耐衝撃性システム(23)の断面図を示す。
図10】漏出耐性試験方法からの落下試験装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特許請求の範囲は本明細書に記載及び/又は示される具体的なデバイス、装置、方法、条件又はパラメータに限定されるものではなく、本明細書で使用される用語は例としてのみ本発明の特定の態様を記載する目的で使用され、特許請求された本発明を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。
【0025】
本明細書で使用するとき、特許請求項において使用される「a」及び「an」などの冠詞は、特許請求される又は記載されるものの1つ以上を意味すると理解される。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「備える(comprising)」、「有する(having)」、「収容する(containing)」、及び「含む(including)」のいずれも、最終結果に悪影響を与えない他の工程、成分、要素等を加えることができることを意味する。これらの用語の各々は、「からなる」及び「から本質的になる」という用語を包含する。特に明記されない限り、本明細書における要素及び/又は機器は、世界中の多くの供給業者及び供給源から広く入手可能であると考えられる。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「圧縮性」は、圧力の上昇の影響下で体積を減少させる物質の能力を意味し、体積減少は少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、最も好ましくは少なくとも10%である。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「消費者」は、製品を購入する顧客に加えて洗浄製品を使用する人を含むことを意味する。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「水撃圧」は、典型的には倒立容器(11)への衝撃の結果として、倒立容器(11)内の液体が突然停止又は方向転換(すなわち、勢いが変化)させられたときに生じる、一時的な圧力増大を意味する。水撃圧はまた、「衝撃力」と呼ぶこともできる。水撃圧が液体ディスペンサー(15)によってどうしても吸収されない場合、その力は(瞬間的に)弁を開放し、液体の漏出を引き起こす場合がある。
【0030】
用語「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」とは、非限定的であることを意味する。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語「定常状態」は、静止時の倒立容器(11)の内部の液体の定圧特性を意味する。
【0032】
本明細書にて開示された寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、このような寸法はそれぞれ、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図されている。例えば、「1.2cm」と開示される寸法は、「約1.2cm」を意味することを意図する。
【0033】
本明細書に述べられ、かつ特許請求される、出願人らによる発明のパラメータのそれぞれの値を決定するには、本出願の試験方法の項に開示される試験方法が使用されなければならない点は理解されよう。
【0034】
本発明の全ての実施形態では、特にそうでない旨が具体的に述べられない限り、文脈から明らかであるように、全ての割合は、組成物全体の重量によるものである。特にそうでない旨が具体的に述べられない限り、全ての比は重量比であり、全ての測定は、特に指定しない限り25℃で行われる。
【0035】
洗浄製品
本出願人らは、驚くべきことに、倒立容器アセンブリ(10)と、食器洗い用液体洗浄組成物(100)とを含む改善された洗浄製品が、漏出及び液体の糸引きの低減/防止を実質的に改善することを見出した。本質的に、解決策は、アニオン性界面活性剤及び第1の共界面活性剤系、好ましくは両性界面活性剤、より好ましくはアミンオキシド界面活性剤を含む特定の界面活性剤系を有する洗浄組成物(100)であって、当該アニオン性界面活性剤及び当該第1の共界面活性剤系が、8:1~1:1、好ましくは4:1~2:1、より好ましくは3.5:1~2.5:1の重量比で存在する洗浄組成物を処方することである。実際に、本発明者らは、この特定の界面活性剤系により、洗浄組成物(100)がより低い剪断粘度プロファイル(すなわち、≦10,000mPa・s)を有することが可能になり、このことが、倒立容器(11)の衝撃時の漏出及び/又は吐出時、好ましくは吐出が完了したときの洗浄組成物(100)の糸引きを実質的に低減/防止することを見出した。理論に束縛されるものではないが、本明細書における洗浄組成物(100)中の特定の界面活性剤系は、液体洗浄組成物(100)の弾性特性に影響を及ぼし、当該組成物が低剪断で高弾性を有することを可能にし、その結果、製品が保管時又は「水撃」衝撃時に漏出しにくくなると考えられる。特定の界面活性剤系はまた、組成物が高剪断で低弾性を有することを可能にし、その結果、好ましくは吐出時、より好ましくは吐出が完了したときの液体の糸引きが実質的に低減又は防止される。
【0036】
説明を容易にするために、本発明の洗浄製品は、図2に示す位置を参照して、上部/頂部、下部/底部、水平などの用語を用いて説明される。引き続き図2を参照すると、本発明の洗浄製品は、倒立容器アセンブリ(10)と、倒立容器アセンブリ(10)に収容された食器手洗い用液体洗浄組成物(100)と、を備えることが理解されるであろう。倒立容器アセンブリ(10)は、底面(12)(図示せず)と、底面(12)から離れる方向に位置する頂面(13)と、を有する倒立容器(11)を備える。底面(12)は開口部(14)を有し、液体ディスペンサー(15)は、倒立容器(11)の底部から分注される液体を調整するために倒立容器(11)の底面(12)に取り付けられ、好ましくは取り外し可能に取り付けられる。
【0037】
洗浄組成物
本発明の洗浄組成物(100)は、漏出及び/又は糸引きの防止を改善すると同時に、製品のより低い剪断粘度プロファイルも可能にするために、特定の界面活性剤系を含む。組成物は、全組成物の1重量%~60重量%、好ましくは5重量%~50重量%、より好ましくは8重量%~45重量%、最も好ましくは15重量%~40重量%の界面活性剤系を含む。界面活性剤系は、8:1~1:1、好ましくは4:1~2:1、より好ましくは3.5:1~2.5:1の重量比でアニオン性界面活性剤及び第1の共界面活性剤を含む。
【0038】
好ましくは、洗浄組成物(100)のpHは、20℃の蒸留水中10%希釈で測定したときに5~12、より好ましくは7.5~10である。組成物のpHは、当該技術分野において既知のpH調整成分を使用して調整することができる。
【0039】
本発明の組成物は、ニュートン流体又は非ニュートン流体とすることができるが、好ましくはニュートン流体である。好ましくは、当該組成物は、10mPa・s~10,000mPa・s、好ましくは100mPa・s~5,000mPa・s、より好ましくは300mPa・s~2,000mPa・s、又は最も好ましくは500mPa・s~1,500mPa・s、あるいはこれらの組み合わせの剪断粘度を有する。剪断粘度は、本明細書に記載の剪断粘度試験方法に従って測定される。
【0040】
組成物は、好ましくは0.5g/mL~2g/mL、より好ましくは0.8g/mL~1.5g/mL、最も好ましくは1g/mL~1.2g/mLの密度を有する。
【0041】
本発明の洗浄組成物(100)は、食器手洗い用洗剤として使用するのに特に好適である。当該組成物は、食器を洗浄するために水をはったシンクにおいて希釈形態で使用するのに非常に好適である。また、当該組成物は、汚れた食器上に、又は任意に予め濡らしておいた洗浄用具上に、好ましくはスポンジ上に直接吐出された場合に使用することもできる。
【0042】
アニオン性界面活性剤
好ましくは、本発明の洗浄組成物(100)のための界面活性剤系は、界面活性剤系の60重量%~90重量%、好ましくは65重量%~85重量%、より好ましくは70重量%~80重量%のアニオン性界面活性剤を含む。アニオン性界面活性剤は、好ましくはサルフェート及び/又はスルホネート及び/又はスルホスクシネートアニオン性界面活性剤から選択される任意のアニオン性洗浄界面活性剤とすることができる。特に好ましいアニオン性界面活性剤は、アルキルサルフェート、アルキルアルコキシサルフェート、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましいアニオン性界面活性剤は、5未満、好ましくは3未満、より好ましくは2未満、かつ0.5超のモル平均エトキシル化度を有する、アルキルエトキシサルフェート、又は混合アルキルサルフェート-アルキルエトキシサルフェートアニオン性界面活性剤系である。
【0043】
好ましくは、アルキルエトキシサルフェート、又は混合アルキルサルフェート-アルキルエトキシサルフェート、アニオン性界面活性剤は、5%~約60%、好ましくは10%~50%、より好ましくは20%~40%の重量平均分枝レベルを有する。この分枝率は、より良好な溶解及び泡の持続に寄与する。これは、低温における洗剤の安定性にも寄与する。好ましくは、アルキルエトキシサルフェートアニオン性界面活性剤、又は混合アルキルサルフェート-アルキルエトキシサルフェートアニオン性界面活性剤は、8~16、好ましくは12~15、より好ましくは12~14の平均アルキル炭素鎖長、及び好ましくは25~45%の重量平均分枝率を有する。この比を有する洗剤は、良好な溶解及び泡性能を示す。アルキル炭素鎖長の制御によらなくとも、平均エトキシル化度及び平均分枝も、有機溶媒を過剰に必要とせずとも洗浄組成物(100)の剪断粘度を制御するのに役立つ。
【0044】
アルキルエトキシル化サルフェートアニオン性界面活性剤が混合物である場合、平均アルコキシル化度は、混合物の全成分のモル平均アルコキシル化度(すなわち、モル平均アルコキシル化度)である。モル平均アルコキシル化度の計算には、アルコキシレート基を有さないサルフェートアニオン性界面活性剤成分の重量も含めるべきである。
【0045】
モル平均アルコキシル化度=(x1×界面活性剤1のアルコキシル化度+x2×界面活性剤2のアルコキシル化度+....)/(x1+x2+....)
式中、x1、x2、...は、混合物の各サルフェートアニオン性界面活性剤のモル数であり、アルコキシル化度は、各サルフェートアニオン性界面活性剤中のアルコキシ基の数である。
【0046】
界面活性剤が分枝状である場合、好ましい分枝基は、アルキルである。典型的には、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、環状アルキル基及びこれらの混合から選択される。単一又は複数のアルキル分枝が、本発明の組成物で使用されるサルフェートアニオン性界面活性剤を作製するために使用される出発アルコールのヒドロカルビル主鎖に存在する可能性がある。
【0047】
分枝状サルフェートアニオン性界面活性剤は、単一のアニオン性界面活性剤、又はアニオン性界面活性剤の混合物であってよい。単一の界面活性剤の場合、分枝の割合は、界面活性剤が誘導される元のアルコールにおいて分枝しているヒドロカルビル鎖の重量割合を指す。
【0048】
界面活性剤混合物の場合、分枝率は重量平均であり、以下の式に従って定義される。
分枝の重量平均(%)=[(x1アルコール1中の分枝状アルコール1の重量%+x2アルコール2中の分枝状アルコール2の重量%+....)/(x1+x2+....)]100
(式中、x1、x2は、本発明の洗剤用のアニオン性界面活性剤の出発物質として使用したアルコールの全アルコール混合物中の各アルコールの重量(グラム)である)。重量平均分枝度の計算には、分枝基を有しないアニオン性界面活性剤成分の重量も含めるべきである。
【0049】
好適な対イオンとしては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アルカノールアンモニウム、又はアンモニウム若しくは置換アンモニウムが挙げられるが、好ましくはナトリウムである。
【0050】
市販されているサルフェートの好適な例としては、Shell社製のNeodolアルコール、Sasol社製のLial-Isalchem及びSafol(登録商標)、Procter & Gamble Chemicals社製の天然アルコールをベースにしたものが挙げられる。本明細書に用いるのに好適なスルホネート界面活性剤としては、C8~C18アルキル又はヒドロキシアルキルスルホネートの水溶性塩;C11~C18アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、修飾されたアルキルベンゼンスルホネート(MLAS);メチルエステルスルホネート(MES);及びα-オレフィンスルホネート(AOS)が挙げられる。これらとしてはまた、10~20炭素原子のパラフィンをスルホネート化することによって得られる、モノスルホネート及び/又はジスルホネートであり得るパラフィンスルホネートが挙げられる。スルホネート界面活性剤としては、アルキルグリセリルスルホネート界面活性剤も挙げられる。
【0051】
第1の共界面活性剤
本発明の組成物の界面活性剤系は、第1の共界面活性剤を含む。当該組成物は、好ましくは、洗浄組成物(100)の0.1重量%~20重量%、より好ましくは0.5重量%~15重量%、特に2重量%~10重量%の第1の共界面活性剤を含む。好ましくは、本発明の洗浄組成物(100)のための界面活性剤系は、界面活性剤系の10重量%~40重量%、好ましくは15重量%~35重量%、より好ましくは20重量%~30重量%の第1の共界面活性剤を含む。
【0052】
本明細書で使用するとき、用語「第1の共界面活性剤」は、アニオン性界面活性剤と共配合される全ての共界面活性剤の中で最も高い濃度で存在する非アニオン性界面活性剤を意味する。好ましくは、一次共界面活性剤は、両性界面活性剤、双性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
本発明の組成物は、好ましくは、両性界面活性剤としてアミンオキシドを含む。好ましくは、アミンオキシド界面活性剤は、直鎖状又は分枝状アルキルアミンオキシド界面活性剤、直鎖状又は分枝状アルキルアミドプロピルアミンオキシド界面活性剤、及びこれらの混合物、より好ましくは直鎖状アルキルジメチルアミンオキシド界面活性剤、更により好ましくは直鎖状C10アルキルジメチルアミンオキシド界面活性剤、直鎖状C12~C14アルキルジメチルアミンオキシド界面活性剤、及びこれらの混合物、最も好ましくは直鎖状C12~C14アルキルジメチルアミンオキシド界面活性剤からなる群から選択される。
【0054】
好ましくは、アミンオキシド界面活性剤は、アルキルジメチルアミンオキシド又はアルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、好ましくはアルキルジメチルアミンオキシド、特にココジメチルアミノオキシド、最も好ましくは、C12~C14アルキルジメチルアミンオキシドである。
【0055】
あるいは、アミンオキシド界面活性剤は、ローカットアミンオキシド及びミッドカットアミンオキシドを含む、アミンオキシドの混合物である。本発明の組成物のアミンオキシドは、更にまた、
a)当該アミンオキシドの10重量%~45重量%の式R1R2R3AO(式中、R1及びR2は、独立して、水素、C1~C4アルキル、又はこれらの混合物から選択され、R3は、C10アルキル又はその混合物から選択される)のローカットアミンオキシドと、
b)当該アミンオキシドの55重量%~90重量%の式R4R5R6AO(式中、R4及びR5は、独立して、水素、C1~C4のアルキル、又はこれらの混合物から選択され、R6は、C12~C16のアルキル又はこれらの混合物から選択される)のミッドカットアミンオキシドと、を含み得る。
【0056】
本明細書に用いるための好ましいローカットアミンオキシドにおいて、R3はn-デシルである。本明細書に用いるための別の好ましいローカットアミンオキシドにおいて、R1及びR2は両方ともメチルである。本明細書に用いるのに特に好ましいローカットアミンオキシドにおいて、R1及びR2は両方ともメチルであり、R3はn-デシルである。
【0057】
好ましくはアミンオキシドは、アミンオキシドの5重量%未満、より好ましくは3重量%未満の式R7R8R9AO(式中、R7及びR8は、水素、C1~C4アルキル、及びこれらの混合物から選択され、R9は、C8アルキル及びその混合物から選択される)のアミンオキシドを含む。R7R8R9AOを含む組成物は、不安定になる傾向があり、強力な泡マイレージを提供しない。
【0058】
好ましくは、双性界面活性剤は、ベタイン界面活性剤である。好適なベタイン界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アミドアゾリニウムベタイン、スルホベタイン(INCIスルタイン)及びホスホベタインが挙げられ、好ましくは式(I):
-[CO-x(CH-N(R)(R)-(CH-[CH(OH)-CH-Y- (I)
[式中、
R1は飽和又は不飽和C6~22アルキル残基であり、好ましくはC8~18アルキル残基、特に飽和C10~16アルキル残基、例えば、飽和C12~14アルキル残基であり、
Xは、NH、NR4(C1~4アルキル残基R4を有する)、O、又はSであり、
nは、1~10の数、好ましくは2~5、特に3であり、
xは、0又は1、好ましくは1であり、
R2及びR3は、独立して、ヒドロキシエチル、好ましくはメチルなどの、ヒドロキシ置換される可能性のあるC1~4アルキル残基であり、
mは1~4の数、特に1、2又は3であり、
yは、0又は1であり、
Yは、COO、SO、OPO(OR5)O又はP(O)(OR5)Oであり、R5は、水素原子H又はC1~4アルキル残基である]を満たすものである。
【0059】
好ましいベタインは、式(Ia)のアルキルベタイン、式(Ib)のアルキルアミドプロピルベタイン、式(Ic)のスルホベタイン、及び式(Id)のアミドスルホベタインであり;
-N(CH-CHCOO- (Ia)
-CO-NH(CH-N(CH-CHCOO- (Ib)
-N(CH-CHCH(OH)CHSO-(Ic)
-CO-NH-(CH-N+(CH-CHCH(OH)CHSO- (Id)
式中、R1は式(I)と同じ意味を有する。特に好ましいベタインは、カルボベタイン[式中、Y-=COO-]であり、特に式(Ia)及び式(Ib)のカルボベタイン、より好ましくは、式(Ib)のアルキルアミドベタインである。
【0060】
好ましいベタインは例えば、ココアミドプロピルベタインである。
【0061】
好ましくは、本発明の組成物の界面活性剤系は、アニオン性界面活性剤の第1の共界面活性剤に対する重量比、好ましくは、アニオン性界面活性剤のアミンオキシド界面活性剤に対する重量比が8:1~1:1、好ましくは4:1~2:1、より好ましくは3.5:1~2.5:1である界面活性剤系を含む。
【0062】
非イオン性界面活性剤
好ましくは、本発明の組成物の界面活性剤系は、全組成物の0.1重量%~10重量%の第2の共界面活性剤系を更に含む。本明細書で使用する場合、用語「二次共界面活性剤」は、主界面活性剤、すなわち、最高濃度で存在するアニオン性界面活性剤及び一次共界面活性剤としての両性/双性/これらの混合物を除いて、二番目に高い濃度で存在する共界面活性剤を意味する。好ましくは、二次共界面活性剤系は、非イオン性界面活性剤を含む。好ましくは、本発明の組成物の界面活性剤系は、当該界面活性剤系の1重量%~25重量%、好ましくは1.25重量%~20重量%、より好ましくは1.5重量%~15重量%、最も好ましくは1.5重量%~5重量%の非イオン性界面活性剤を更に含む。
【0063】
好ましくは、非イオン性界面活性剤は、直鎖状又は分枝状の一級若しくは二級アルキルアルコキシル化非イオン性界面活性剤、好ましくはアルキルエトキシル化非イオン性界面活性剤であって、好ましくは、そのアルキル鎖に平均9~15個、好ましくは10~14個の炭素原子を含み、アルコール1モル当たり平均5~12単位、好ましくは6~10単位、最も好ましくは7~8単位のエチレンオキシドを含む、非イオン性界面活性剤である。本明細書に用いるのに好適な他の非イオン性界面活性剤としては、脂肪族アルコールポリグリコールエーテル、アルキルポリグルコシド、及び脂肪酸グルカミド、好ましくはアルキルポリグルコシドが挙げられる。好ましくは、アルキルポリグリコシド界面活性剤は、C8~C16アルキルポリグリコシド界面活性剤、好ましくはC8~C14アルキルポリグリコシド界面活性剤であり、好ましくは0.1~3、より好ましくは0.5~2.5、更により好ましくは1~2の平均重合度を有するものである。最も好ましくは、アルキルポリグリコシド界面活性剤は、0.5~2.5、好ましくは1~2、最も好ましくは1.2~1.6の平均重合度で、10~16、好ましくは10~14、最も好ましくは12~14の平均アルキル炭素鎖長を有する。C8~C16アルキルポリグルコシドは、いくつかの供給元から市販されている(例えば、Seppic CorporationからのSimusol(登録商標)界面活性剤;及びBASF CorporationからのGlucopon(登録商標)600 CSUP、Glucopon(登録商標)650 EC、Glucopon(登録商標)600 CSUP/MB、並びにGlucopon(登録商標)650 EC/MB)。好ましくは、当該組成物は、アニオン性界面活性剤及び非イオン生界面活性剤を、2:1~50:1、好ましくは2:1~10:1の比で含む。
【0064】
両親媒性ポリマー
好ましくは、本発明の組成物は、全組成物の0.01重量%~5重量%、好ましくは0.2重量%~3重量%、より好ましくは0.3重量%~1重量%の、両親媒性アルコキシル化ポリアルキレンイミン及びこれらの混合物からなる群から選択される両親媒性ポリマー、好ましくは両親媒性アルコキシル化ポリアルキレンイミンを更に含み得る。
【0065】
好ましくは、両親媒性アルコキシル化ポリアルキレンイミンは、100~5,000ダルトン、好ましくは400~2,000ダルトン、より好ましくは400~1,000ダルトンの平均分子量範囲を有するポリエチレンイミン主鎖を含むアルコキシル化ポリエチレンイミンポリマーであり、当該アルコキシル化ポリエチレンイミンポリマーは、
(i)修飾当たり平均約1~約50のアルコキシ部分を有するポリアルコキシレン鎖による窒素原子当たり1つ若しくは2つのアルコキシル化修飾であって、アルコキシル化修飾の末端アルコキシ部分が、水素、C1~C4アルキル、若しくはこれらの混合物でキャップされている、アルコキシル化修飾、
(ii)1つのC1~C4アルキル部分の付加、及び修飾当たり平均約1~約50のアルコキシ部分を有するポリアルコキシレン鎖による窒素原子当たり1つ若しくは2つのアルコキシル化修飾であって、末端アルコキシ部分が、水素、C1~C4アルキル、若しくはこれらの混合物でキャップされている、アルコキシル化修飾、又は
(iii)これらの組み合わせを更に含み、
当該アルコキシ部分は、エトキシ(EO)及び/又はプロポキシ(PO)及び/又はブトキシ(BO)を含み、当該アルコキシル化修飾がEOを含む場合、PO又はBOも含む。
【0066】
好ましい両親媒性アルコキシル化ポリエチレンイミンポリマーは、アルコキシル化鎖内にEO基及びPO基を含み、PO基は、好ましくはアルコキシ鎖の末端位置に存在し、アルコキシル化鎖は、好ましくは水素で末端保護されている。
【0067】
例えば、ポリエチレンイミン主鎖の末端窒素原子に対し可能な修飾を以下に示すが、これらに限定されるものではない(ただし、Rはエチレンスペーサーを表し、EはC1~C4アルキル部分を表し、X-は適切な水溶性対イオンを表す)。
【0068】
【化1】
【0069】
また、例えば、ポリエチレンイミン主鎖における内部窒素原子に対し可能な修飾を以下に示すが、これらに限定されるものではない(ただし、Rはエチレンスペーサーを表し、EはC~Cアルキル部分を表し、X-は適切な水溶性対イオンを表す)。
【0070】
【化2】
【0071】
ポリエチレンイミン主鎖のアルコキシル化修飾は、平均約1~約50のアルコキシ部分、好ましくは約20~約45のアルコキシ部分、最も好ましくは約30~約45のアルコキシ部分を有するポリアルコキシレン鎖による水素原子の置換からなる。アルコキシ部分は、エトキシ(EO)、プロポキシ(PO)、ブトキシ(BO)、及びこれらの混合物から選択される。しかし、エトキシ単位のみを含むアルコキシ部分は、本発明の範囲外である。好ましくは、ポリアルコキシレン鎖は、エトキシ/プロポキシブロック部分から選択される。より好ましくは、ポリアルコキシレン鎖は、3~30の平均エトキシル化度及び1~20の平均プロポキシル化度を有するエトキシ/プロポキシブロック部分、より好ましくは、20~30の平均エトキシル化度及び10~20の平均プロポキシル化度を有するエトキシ/プロポキシブロック部分である。
【0072】
より好ましくは、エトキシ/プロポキシブロック部分は、3:1~1:1、好ましくは2:1~1:1の、エトキシ単位のプロポキシ単位に対する相対比を有する。最も好ましくは、ポリアルコキシレン鎖は、プロポキシ部分ブロックが末端アルコキシ部分ブロックである、エトキシ/プロポキシブロック部分である。
【0073】
この修飾により、ポリエチレンイミン主鎖の窒素原子は永久的に四級化され得る。永久的な四級化度は、ポリエチレンイミン主鎖の窒素原子の0%~30%であってよい。永久的に四級化されるのはポリエチレンイミン主鎖の窒素原子の30%未満であることが好ましい。最も好ましくは、四級化度は0%である。
【0074】
好ましいポリエチレンイミンは、式(II)の一般構造を有し、
【0075】
【化3】
ポリエチレンイミン主鎖の重量平均分子量は600であり、式(II)のnは平均10であり、式(II)のmは平均7であり、式(II)のRは、水素、C~Cアルキル、及びこれらの混合物から選択され、好ましくは水素である。式(II)の永久的な四級化度は、ポリエチレンイミン主鎖の窒素原子の0%~22%であってよい。このポリエチレンイミンの分子量は、好ましくは10,000~15,000である。
【0076】
別のポリエチレンイミンは、式(II)の一般構造を有するが、ポリエチレンイミン主鎖の重量平均分子量は600であり、式(II)のnは平均24であり、式(II)のmは平均16であり、式(II)のRは、水素、C~Cアルキル、及びこれらの混合物から選択され、好ましくは水素である。式(II)の永久的な四級化度は、ポリエチレンイミン主鎖の窒素原子の0%~22%であってよい。このポリエチレンイミンの分子量は、好ましくは25,000~30,000である。
【0077】
最も好ましいポリエチレンイミンは、式(II)の一般構造を有し、ポリエチレンイミン主鎖の重量平均分子量は600であり、式(II)のnは平均24であり、式(II)のmは平均16であり、式(II)のRは水素である。式(II)の永久的な四級化度は、ポリエチレンイミン主鎖の窒素原子の0%である。このポリエチレンイミンの分子量は、好ましくは25,000~30,000、最も好ましくは28,000である。
【0078】
これらのポリエチレンイミンは、国際公開第2007/135645号により詳細に記載されているとおり、例えば、二酸化炭素、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸、過酸化水素、塩酸、酢酸などの触媒の存在下でエチレンイミンを重合させることによって調製することができる。
【0079】
トリブロックコポリマー
本発明のアルキレンオキシドトリブロックコポリマーは、式(I)によるアルキレンオキシド部分を有するトリブロックコポリマーとして定義される:
(EO)x-(PO)y-(EO)x
(I)
(式中、EOは、エチレンオキシドを表し、各xは、EOブロック内のEO単位の数を表す)。各xは、独立して、平均して1~80、好ましくは3~60、より好ましくは5~50、最も好ましくは5~30である。好ましくは、xは、両EOブロックについて同じであり、「同じ」とは、2つのEOブロック間でxの変動が最大2単位以内、好ましくは最大1単位以内であることを意味し、より好ましくは、両xは同じ単位数である。POは、プロピレンオキシドを表し、yは、POブロック中のPO単位の数を表す。各yは、平均して1~60、好ましくは10~55、より好ましくは10~50、最も好ましくは15~48である。
【0080】
好ましくは、トリブロックコポリマーの、yの各xに対する比は、1:1~3:1、好ましくは1.5:1~2.5:1である。好ましくは、トリブロックコポリマーの全EOの平均重量割合は、当該トリブロックコポリマーの30重量%~50重量%である。好ましくは、トリブロックコポリマーの全POの平均重量割合は、当該トリブロックコポリマーの50重量%~70重量%である。トリブロックコポリマーにおけるEO及びPOの平均総重量%は合計100%になることが理解される。トリブロックコポリマーの平均分子量は、140~10500、好ましくは800~8500、より好ましくは1000~7300、更により好ましくは1300~5500、最も好ましくは2000~4800である。平均分子量は、1H NMR分光法(Thermo scientific application note No.AN52907を参照)を用いて求められる。これは、分子量の測定及びコポリマー組成分析を含む、ポリマーを特性評価するために確立されたツールである。
【0081】
環状ポリアミン
好ましくは、洗浄組成物(100)は、環状ポリアミンを更に含む。本発明の環状ポリアミンは、洗浄ポリアミンである。洗浄ポリアミンは、洗浄組成物(100)の一部として洗浄に役立つアミン官能基を含む。本発明の組成物は、好ましくは、組成物の0.1重量%~10重量%、より好ましくは0.2~5重量%、特に0.3重量%~2重量%の環状ポリアミンを含む。
【0082】
本明細書では、用語「環状アミン」は、単一のアミン及びその混合物を包含する。本アミンは、それが使用される洗浄媒体のpHに応じてプロトン化を受けることができる。本発明の環状ポリアミンは、以下の式(I):
【0083】
【化4】
(式中、R、R、R、R、及びRは、独立して、NH2、-H、1~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状アルキル、及び1~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状アルケニルからなる群から選択され、nは、0~3であり、好ましくはnは1であり、Rのうちの少なくとも1個はNH2であり、残りのRは、独立して、NH2、-H、1~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状アルキル、及び1~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状アルケニルからなる群から選択される)に一致する。好ましくは、環状ポリアミンは、nが1であり、RがNH2であり、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つがCH3であり、残りのRがHである、ジアミンである。
【0084】
本発明のアミンは、少なくとも2つの一級アミン官能基を有する環状アミンである。一級アミンは、環状アミン内の任意の位置に存在してよいが、油脂洗浄の観点から、一級アミンが1,3位に存在するときにより良好な性能が得られることが分かっている。置換基のうちの1つが-CH3であり、残りがHである環状アミンが、改善された油脂洗浄性能を提供することも見出されている。したがって、本発明の洗浄組成物(100)で使用するのに最も好ましい環状ポリアミンは、2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、及びこれらの混合物からなる群から選択される環状ポリアミンである。
【0085】
本発明の組成物は、i)塩、ii)ヒドロトロープ、iii)有機溶媒、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの活性物質を含み得る。
【0086】

本発明の組成物は、全組成物の0.05重量%~2重量%、好ましくは0.1重量%~1.5重量%、又はより好ましくは0.5重量%~1重量%の塩、好ましくは一価の無機塩、二価の無機塩、又はこれらの混合物、より好ましくは塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、又はこれらの混合物、最も好ましくは塩化ナトリウムを含み得る。
【0087】
ヒドロトロープ
本発明の組成物は、全組成物の0.1重量%~10重量%、又は好ましくは0.5重量%~10重量%、又はより好ましくは1重量%~10重量%のヒドロトープ又はその混合物、好ましくはクメンスルホン酸ナトリウムを含み得る。
【0088】
有機溶媒
本発明の組成物は、有機溶媒を含み得る。好適な有機溶媒としては、C4~14エーテル及びジエーテル、ポリオール、グリコール、アルコキシル化グリコール、C6~C16グリコールエーテル、アルコキシル化芳香族アルコール、芳香族アルコール、脂肪族直鎖状又は分枝状アルコール、アルコキシル化脂肪族直鎖状又は分枝状アルコール、アルコキシル化C1~C5アルコール、C8~C14アルキル及びシクロアルキル炭化水素及びハロ炭化水素、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、有機溶媒としては、アルコール、グリコール、及びグリコールエーテル、あるいはアルコール及びグリコールが挙げられる。本組成物は、全組成物の0重量%~50重量%未満、好ましくは0.01重量%~25重量%、より好ましくは0.1重量%~10重量%、又は最も好ましくは0.5重量%~5重量%の有機溶媒、好ましくはアルコール、より好ましくはエタノール、ポリアルキレングリコール、より好ましくはポリプロピレングリコール、及びこれらの混合物を含む。
【0089】
補助成分
本明細書の洗浄組成物(100)は、任意に、ビルダー(例えば、好ましくはシトレート)、キレート剤、コンディショニングポリマー、洗浄ポリマー、表面改質ポリマー、汚れ凝集ポリマー、構造化剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、皮膚若返り有効成分、酵素、カルボン酸、スクラブ粒子、漂白剤及び漂白活性剤、香料、悪臭抑制剤、顔料、染料、乳白剤、ビーズ、真珠光沢粒子、マイクロカプセル、Ca/Mgイオンなどのアルカリ土類金属などの無機カチオン、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤(例えば、NaClなどの塩、並びに他の一価、二価、及び三価の塩)、並びにpH調整剤及び緩衝手段(例えば、クエン酸などのカルボン酸、HCl、NaOH、KOH、アルカノールアミン、リン酸及びスルホン酸、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩、重炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾールなど)などの多くの他の補助成分を含み得る。
【0090】
本発明の第1の態様に関連して説明される本発明の組成物の要素は、変更すべきところは変更して、本発明の他の態様にも適用される。
【0091】
倒立容器アセンブリ
倒立容器アセンブリ(10)は、倒立容器(11)と、倒立容器(11)の底面(12)に取り付けられた液体ディスペンサー(15)とを備える。
【0092】
液体ディスペンサー
図3に示されるように、液体ディスペンサー(11)は、3つの基本部品、本体(16)と、弁(19)(図示せず)と、好ましくは耐衝撃性システム(23)と、を備える。好ましくは、液体ディスペンサー(15)は、閉止蓋又はシールを含まない。典型的には、シールは輸送のために含まれるものであり、除去され、洗浄製品の最初の使用後に廃棄される。
【0093】
図4を参照すると、液体ディスペンサー(15)は本体(16)を備える。本体(16)は、倒立容器(11)の底部において開口部(14)に近接する外面に係合するよう、好ましくは取り外し可能に係合するように適合した接続スリーブ(17)を上端部(A)に備える。好ましくは、この配置は、液体ディスペンサー(15)と倒立容器(11)との間に漏れ止め接触を提供し、これは漏出を防止するのに役立つ。
【0094】
あるいは、接続スリーブ(17)は、倒立容器(11)の開口部(14)に近接する内面に係合するよう、好ましくは取り外し可能に係合するように適合してもよい。換言すれば、倒立容器(11)は、液体ディスペンサー(15)の本体(16)の水平外部に位置する接続スリーブ(17)に取り付けられる。しかしながら、この代替的な配置は、ディスペンサー(15)と倒立容器(11)との間の接触部を通過する液体の漏出リスクがより高いので、あまり好ましくない。
【0095】
本体(16)は、非限定的な例として、協働するねじ山、クリンピング、クリッピング手段、留め金手段、スナップ嵌め手段、溝配置、差し込み装具、又は永久溶接を含む、当業者に一般的に知られている好適な取り付け手段によって、倒立容器(11)の開口部(14)に係合、好ましくは取り外し可能に係合し得る。好ましくは、倒立容器(11)の開口部(14)の外面上の雄ねじは、(図4に示すように)接続スリーブ(17)上に成形された雌ねじにねじ込まれる。
【0096】
本体(16)は、長手方向軸(L)に沿って軸方向に配置された中央部分(15)を備える。接続スリーブ(17)は、好ましくは、中央部分(15)に向かって径方向に内向きに離間しており、内部排出導管(18)を画定する。この排出導管(18)は、倒立容器(11)に収容された液体と外部雰囲気との流体連通を確立するための流路として機能する。使用時には、接続スリーブ(17)は、漏出することなく洗浄組成物(100)が液体ディスペンサー(15)に入ることができるように、液体ディスペンサー(15)と倒立容器(11)との間に、倒立容器(11)に収容された流体シールを形成することが理解されるであろう。
【0097】
好ましくは、本体(16)は、倒立容器(11)が(図2に示すように)平坦な表面上にその底部を安定して載置できるように適合した外部部分(14)を底端部(B)に備える。外部部分(14)は、本体(16)と一体的に形成されてもよい。例えば、外部部分(14)は、図4に示されるように、底部(B)に向かって軸方向に下向きに、かつ径方向に外向きに延在する環状フランジ構造(例えば、スカート)を備える。図4は、円錐台形形状を有する本体(16)の外部部分(14)を示しているが、必ずしもこの形状には限定されない。倒立容器(11)がその底部を安定して載置したままでいられるものである限り、円筒形、角錐形、ディスク形状、複数脚部などの他の形状を使用することもできる。
【0098】
本体(16)が本明細書に示され、記載されているが、特定の要件に応じて望ましい場合がある多くの変形例が存在することを理解すべきである。例えば、接続スリーブ(17)及び外部部分(14)は、均一な材料厚みを有すると示されているが、いくつかの用途では、材料厚みが変化することが望ましい場合がある。更なる例として、いくつかの表面が、特定の形状(例えば、円錐台形、平面、等)を有するものとして本明細書で説明されているが、具体的な用途に応じて、それらの表面に対して他の特定の形状が望ましい場合がある。
【0099】
好ましくは、液体ディスペンサー(15)は、内部排出導管(18)を横切って延在する、本体(16)に局在する弁(19)を更に備える。図5に示されるように、弁(19)は、倒立容器(11)の内部に収容された洗浄組成物(100)と接触させるための内側(20)と、外部雰囲気に曝露させるための(図6に示すような)外側(22)とを有する。弁(19)は、弁の内側(20)に対する圧力が弁の外側(21)に対する圧力を超えたときに応答して開放可能な分注オリフィス(22)を画定する。
【0100】
弁(19)は、好ましくは、本体(16)内に搭載された、可撓性、エラストマー性、弾力性、2方向双方向性、自動閉鎖式のスリット型弁である。弁(19)は、分注オリフィス(23)を画定するスリット(25)のスリットを有する。例えば、分注オリフィス(23)は、例えば倒立容器(11)を圧搾したときに、倒立容器(11)の内部の圧力の増大に応答して、スリットをとおして液体を分注するために開放することができる、1つのスリット(25)又は2つ以上の交差スリット(25)から形成され得る。
【0101】
弁(19)は、典型的には、弁(19)の両側での圧力差が低減した際に、応答して分注オリフィス(23)を閉鎖して、当該分注オリフィスを通る液体の流れを止めるように設計される。弁(19)を閉鎖位置で維持するために必要な圧力の量は、弁(19)の内部抵抗力に部分的に依存する。「内部抵抗力」(すなわち、クラッキング圧)は、弁(19)の変形/開放に対する所定の抵抗閾値を指す。換言すれば、弁(20)は、弁(19)の内側(20)に対して耐える液体の定常状態の圧力下で閉じたままであるように、変形/開放に抵抗しない傾向がある。弁を変形させる/開くために必要とされる圧力の量は、この内部抵抗力に打ち勝つものでなければならない。この内部抵抗力は、液体漏れを引き起こすほど低すぎてはならず、又は液体の1回分の分注を困難にするほど高すぎてはならない。したがって、弁(19)は、好ましくは、少なくとも10mbar、好ましくは少なくとも25mbar、より好ましくは250mbar未満、更により好ましくは150mbar未満、最も好ましくは75mbar未満である弁(19)の内部抵抗力を有する。好ましくは、分注オリフィス(23)は、外側(21)上の弁に対して弁の内側(20)との間に少なくとも10mbar、好ましくは少なくとも25mbarの圧力差(Δ)が存在するときに開放位置にあるように設計される。好ましくは、分注オリフィス(23)を開放するために必要な、弁の内側(20)に及ぼされる力は、少なくとも10mbar、好ましくは少なくとも25mbarである。好ましくは、弁(10)は、0.1cm~10cm、より好ましくは0.3cm~5cm、最も好ましくは0.5cm~2cmの表面積を有する。好ましくは、弁(19)は、1mm~10mm、より好ましくは2mm~5mmの高さを有する。静止状態において分注オリフィス(23)が完全に閉鎖した位置のままでいられる限り、他の寸法を使用してもよい。
【0102】
図5に示されるように、弁(19)は、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは複数(すなわち、3つ以上)の、遠位端(26)に向かって径方向に外向きに延在する平坦な自動封止スリット(25)を有する可撓性中央部分(24)を備える。スリット弁は、1つ以上のスリットが、弁が液体ディスペンサー(1)内に形成及び/又は設置された後にのみ完全に完成するような弁を含めて、その最終機能形態に1つ以上のスリットを有する任意の弁を指すことを意図していることを理解されたい。各スリット(25)は、好ましくは、弁(19)の遠位端(26)に到達する直前に終端する。好ましくは、スリット(25)は真っ直ぐである(図6に示されるように)、又は様々な異なる形状、サイズ、及び/又は配置(図示せず)を有していてよい。好ましくは、交差するスリット(25)は、互いに等間隔であり、長さが等しい。
【0103】
引き続き図6を参照すると、交差スリット(25)は、弁(19)における4つのほぼ扇形の等しいサイズのフラップ(27)を画定する。フラップ(27)は、圧力差に応答して(図5に示されるような)閉鎖静止位置と(図6に示されるような)開放位置との間で配置を変化させる、弁(19)の開放可能部分として特徴付けることができる。弁(19)は、外部雰囲気の通気を調整するのに十分に可撓性であるように設計される。例えば、弁(19)が閉じているとき、弁の外側(21)に対する圧力が弁の内側(20)に対する圧力を所定の大きさだけ超えたときに、閉鎖フラップ(27)又は開放可能部分は内向きに移動し続けて閉鎖位置を経て、弁フラップ(27)を内向きに開放することができる。外部雰囲気のこのような通気能力は、倒立容器(11)内の内部圧力を外部雰囲気の圧力と等しくするのに役立つ。弁(19)は、通気して空気を倒立容器(11)に戻す開放圧が使用中に倒立容器(11)がへこむのを避けるのに十分に低くなるように、設計されることが理解される。換言すれば、使用後に初期形状に戻ろうとする倒立容器(11)の弾力性(すなわち、圧搾力)は、通気開放圧よりも高い。
【0104】
好ましくは、弁(19)は、静止時に倒立容器(11)が起立している表面に接触せず、吐出時に洗浄される表面にも接触しない。これまで、弁(19)は、本体(16)内に向かって拡大され、好ましくは載置面から少なくとも1mm、より好ましくは少なくとも5mm、更により好ましくは少なくとも1cmに配置されてきた。弁(19)を表面と接触させずに上方に配置することにより、倒立容器(11)の保管時に、弁(19)を通り表面汚染及び潜在的に表面損傷を引き起こす毛管浸出のリスクが低くなる。
【0105】
弁(19)は、好ましくは、可撓性、柔軟性、弾性、及び弾力性の材料から一体構造として成形される。好適な材料としては、例えば、シリコンゴム(米国Dow Corning Corp.製のD.C.99-595-HC、Wacker Silicone Co.製の WACKER 3003-40シリコンゴム材料として入手可能)を含む熱硬化性ポリマーなどが挙げられ、好ましくは、40ショアAの硬度比、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low-density polyethylene、LLDPE)、低密度ポリエチレン(low density polyethylene、LDPE)、LLDPE/LDPEブレンド、アセテート、アセタール、超高分子量ポリエチレン(ultra-high-molecular weight polyethylene、UHMW)、ポリエステル、ウレタン、エチレン酢酸ビニル(ethylene-vinyl-acetate、EVA)、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、又は熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer、TPE)を有する。弁(19)はまた、熱可塑性プロピレン、エチレン及びスチレンなどの他の材料(これらのハロゲン化対応物を含む)から形成することもできる。好適な弁は、SimpliSqueeze(登録商標)弁ラインアップを含めてAPTAR Companyなどから市販されている。
【0106】
弁(19)は、通常閉鎖位置にあり、倒立容器(11)が圧搾されない限り液体が漏出しないように、倒立容器(11)内の液体の圧力に耐えることができる。残念ながら、弁(19)の設計は、全ての状況下で、特に倒立容器(11)が衝撃を受けてかなりの一時的な液体圧の増大を引き起こした場合、倒立容器(11)の内部からの液体漏出を防止する効果を制限する。したがって、本出願人らは、驚くべきことに、バッフル(23)及び/又は耐衝撃性システム(23)を液体ディスペンサー(15)に組み込むことによって、衝撃後の一時的な液体圧の増大を吸収し、液体ディスペンサー(15)からの液体漏出を実質的に低減又は防止するのに役立つことができることを見出した。
【0107】
好ましくは、液体ディスペンサー(15)はバッフル(30)を更に備える。好ましくは、バッフル(30)は、存在する場合、(下記のように)弁(19)の内側(20)と耐衝撃性システム(23)との間に位置する。図7に示されるように、バッフル(30)は、好ましくは、バッフル(30)が上流の水撃圧に曝されたときに、排出導管(18)の少なくとも一部への液体流を閉塞させる閉鎖位置との間の閉塞部材(31)の移動を調整する少なくとも1つの支持部材(32)によって支持される閉塞部材(31)を備える。理論に束縛されるものではないが、バッフル(30)は、水撃に対する追加の反力として作用し、その結果、潜在的な漏出リスクを更に低減すると考えられる。換言すれば、バッフル(30)は、水撃の乱流運動エネルギーから弁(19)を保護するための波よけ装置として機能する。好適なカスタムメイドのバッフル(30)は、APTARグループから入手することができる。
【0108】
好ましくは、液体ディスペンサー(15)は、弁(19)の上流に局在する(図8に示すような)耐衝撃性システム(23)を更に備える。耐衝撃性システム(23)は、筐体(24)内に空洞(25)(図示せず)を有する筐体(24)を備える。筐体(24)は、本体(16)から長手方向に、スリーブ(17)から径方向に内向きに延在する。筐体(24)は実質的に剛性の構造体であり、プラスチック材料、好ましくは熱可塑性材料、より好ましくはポリプロピレンから成形され得る。図8に示すように、筐体(31)は、好ましくは、長手方向軸(L)に沿って10mm~200mm、好ましくは15mm~150mm、より好ましくは20mm~100mmの長さを有する、上端部(C)に向かってドームを有する実質的に円筒形状である。円筒形状の筐体(24)は、好ましくは、5mm~40mm、好ましくは10mm~30mmの直径を有する。しかしながら、筐体(24)は、例えば、楕円形、角錐形、矩形などの任意の所望のサイズ及び形状を有し得ることを理解すべきである。しかしながら、筐体(24)のサイズ及び形状は、必然的に、圧縮性物質(110)に必要な内部体積に応じ変化する。例えば、より大きな体積の圧縮性物質(110)が必要とされる場合、より長い直径の筐体が好ましい場合がある。好ましくは、筐体(24)は、200mm~250,000mm、好ましくは1,500mm~75,000mmの内部体積を有する。好ましくは、圧縮性物質(110)は、1,000mm~最大20,000mm、好ましくは1,500mm~15,000mm、最も好ましくは2,000mm~最大10,000mmの体積を有する。
【0109】
更に、筐体(24)は、倒立容器(11)から筐体(24)内への液体の流路を提供する少なくとも1つの入口開口部(26a)を備える。好ましくは、入口開口部(26a)は、排出導管(18)と弁(19)との間の開口部である。語句「少なくとも1つの」入口開口部(26a)は、筐体(24)上に位置する1つ以上の入口開口部(26a)を意味する。例えば、1つのより大きな入口開口部(26a)又は複数のより小さな入口開口部(26a)を有することが望ましい場合がある。倒立容器(11)の内部に収容される液体の剪断粘度及び密度が、入口開口部(26a)のサイズ、形状、及び数の設計に考慮されることが予想されるであろう。入口開口部(26a)は、倒立容器(11)の内部に収容された液体及び筐体(24)の流体連通を確立するための液体流路を提供するための開口部として機能する。図8に示されるように、入口開口部(26a)は、好ましくは筐体(24)の底部付近に配置され、好ましくは、1mm~25mm、好ましくは5mm~20mmの長さを有し、1mm~10mm、好ましくは3~7mmの高さを有する矩形状である。あるいは、倒立容器(11)から筐体(24)内へと十分な液体流を依然として提供することができる限り、他の形状及びサイズの入口開口部(26a)も動作可能である。他の非限定的な例では、筐体(24)は、底部付近に等距離で配置された3つの小さな円形の入口開口部(26a)、又は筐体(24)の半分を取り囲む1つの半円を有し得る。好ましくは、入口開口部(26a)は、1mm~250mm、好ましくは15mm~150cmの総表面積を有する。また、入口開口部(26a)は筐体(24)の底部に向かって配置されることが好ましい。
【0110】
筐体(24)は、分注オリフィス(23)が開放されたときに筐体(24)から外部雰囲気への液体の放出経路を提供する少なくとも1つの出口開口部(26b)を更に備える。
【0111】
図9に示すように、筐体(24)は、空洞(25)を更に備える。空洞(25)は、筐体(24)内の中空の開放空間である。空洞(25)は、圧縮性物質(110)によって部分的に占有されるように適合される。好ましくは、圧縮性物質(110)は、弁の内側(20)と弁の外側(21)との間の圧力平衡化を可能にし、分注オリフィス(23)の応答による閉鎖を可能にする/維持することができる。換言すれば、圧縮性物質(110)は、倒立容器(11)の「衝撃」前には、弁(19)を閉鎖されたままにし、そして、倒立容器(11)内に液体を保持するのに十分な圧力において、圧縮されていないままである。空洞(25)はまた、「衝撃」前に液体によって部分的に占有される。
【0112】
好ましくは、圧縮性物質(110)は、気体、発泡体、例えばスポンジ若しくはバルーンなどの軟質物質、他の粘弾性物質(例えば、ポリシロキサン)、又はピストンから選択され、好ましくは気体、より好ましくは空気である。出願人らは、分注オリフィス(23)の応答による閉鎖可能な状態を維持するために、倒立容器(11)の体積に対する定常状態の筐体(24)内の気体、好ましくは空気の体積の好ましい比は、0.001よりも高く、好ましくは0.005~0.05、より好ましくは0.01~0.02であることを見出した。理論に束縛されることを望むものではないが、輸送又は使用中の予期される曝露条件下で漏れのリスクを実質的に低減又は防止するために最小圧縮閾値が望ましいと考えられる。この最小圧縮閾値は、倒立容器(11)の内部に保管され得る液体の体積と直接相関する。
【0113】
倒立容器
本発明を任意の種類の倒立容器と共に使用することができることは明らかであろう。好ましくは、洗浄製品は、図2に示す種類の倒立容器(11)と共に使用される。倒立容器(11)は、記載されている範囲で、転倒させることなく表面上に載置することができるものである限り任意の好適な形状又は設計であってよい。倒立容器(11)は、熱可塑性ポリマーなどの任意の可撓性プラスチック材料で作製することができる。可撓性材料は、倒立容器(11)を変形させるのに十分に圧縮性であり、液体の吐出を可能にし、更に、吐出後の変形からの比較的迅速な形状回復を可能にするのに十分に可撓性である。好ましくは、可撓性プラスチック材料は、ポリカーボネート、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ポリ塩化ビニル(polyvinylchloride、PVC)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleentereftalaat、PET)など、又はこれらのブレンド若しくは多層構造である。可撓性プラスチック材料はまた、エチレンビニルアルコール(ethylene vinyl alcohol、EVOH)などのような特定の水分又は酸素バリア層を含んでもよい。可撓性プラスチック材料はまた、ボトル、又は他の容器などに由来する、消費活動後のリサイクル材料を部分的に含んでもよい。倒立容器(11)は、液体が倒立容器(2)から液体ディスペンサー(1)に入ることができるように、底面に開口部(14)(図示せず)を含む。開口部(12)(図示せず)は、倒立容器(11)の底面(12)に位置する。換言すれば、倒立容器(11)は底部から吐出される。
【0114】
引き続き図2を参照すると、倒立容器(11)は、好ましくは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの弾性的に変形可能な側壁又は側壁(3)を有する、圧搾可能な倒立容器(11)である。好ましくは、倒立容器(11)は、15mmの側壁で5N~30Nのたわみ、好ましくは15mmの側壁で10N~25Nのたわみ、より好ましくは15mmの側壁(3)で18Nのたわみを有することを特徴とする。消費者は倒立容器(2)を把持することができ、弾性的に変形可能な側壁(3)を圧搾又は圧縮して、圧力を印加して(「印加力」とも呼ばれる)、洗浄組成物(100)を倒立容器(11)から押し出すことができる。その結果、内部圧力が増大すると、倒立容器(2)と弁(19)との間の液体が分注オリフィス(23)を通じて外部雰囲気に分注される。圧搾又は圧縮力が取り除かれると、弾性的に変形可能な側壁(3)が解放されて、外部雰囲気から空洞(25)に空気を通気して、空間(32)内の圧縮性物質(110)を減圧し、弾性的に変形可能な側壁(3)をその元の形状に戻す。更に、通気によって、筐体(24)の空洞(25)に外部雰囲気からの空気が再補充される。通気された空気は、入口開口部(26a)を介して倒立容器(11)内に戻って、分注された液体の体積を補う。
【0115】
例えば、より大きいサイズの倒立容器(11)は、より大きな液体体積を保持することができる。これらのより大きなサイズの倒立容器(11)が衝撃を受けると、水撃時により高質量の液体が移動し、そのため、過渡液体力(F=m×a-ニュートンの第2法則、ここで「F」は力であり、「m」は移動している液体の質量であり、「a」は移動している液体の加速速度である)がより大きくなり、したがって筐体(24)への圧力が生じる。単位体積当たりの圧縮性物質(110)に吸収され得る過渡圧力には限界があるので、その閾値を超えると、残りの過渡圧力が弁(19)上に移動し、それに応じて漏出を引き起こす。したがって、最終的な水撃曝露時の漏出を防止するのに十分な耐衝撃性バッファを有するように、倒立容器(11)に入る液体の体積がより大きい場合にはより大きな体積の圧縮性物質(110)が必要とされる。
【0116】
試験方法
本明細書に記載され、特許請求される本発明をより完全に理解し得るためには、以下に記載するアッセイを用いなければならない。
【0117】
試験法1:耐漏液試験
耐漏液試験の目的は、「衝撃」中に倒立容器からの液体の漏れを防止する液体ディスペンサーの能力を評価することである。衝撃は、液体ディスペンサー側を下にして、一定の高さから平坦な表面上に倒立容器が落下したときに生じる。落下は、倒立容器内の衝撃で生じる一時的な液体圧力の増加を模擬することを想定している。規定の落下高さから落下させたときに漏出した液体の体積/重量の測定をとおして、液体ディスペンサーの耐漏液能を評価する。より少ない漏出の体積/重量は、液体ディスペンサーのより良好な耐漏液能と相関する。方法の工程は、以下のとおりである。
1.図10に示すような、落下試験装置を使用する。この装置は、およそ12cmの直径を有する2つの頂部及び底部開放端円筒管からなり、すなわち、外側管(34)は、外側管(34)の中へ垂直方向に移動可能な内側管(33)をきつく取り囲み、外側管(34)は、外側管(34)上に適用された評価尺度によって外側管(34)内の内側管(33)の相対的高さの視覚的評価を可能にするカットアウトセクションを有する。取り外し可能なレバー(35)を内側管(33)の底部に適用し、内側管(33)内で倒立容器(2)をその開口部を下向きに位置付けてレバー上に載るようにする。レバーが手動で取り外されると、倒立容器が落下し、曝露後の漏れた液体の量が計量される。そのため、漏れた液体を捕らえるために、紙片が開放端外側容器の底部の硬質表面上に配置される。落下試験の前後に秤で紙の重量を測定して、漏れた液体の量を画定する。手動による取り外しの前にレバーが位置付けられた高さは、落下高さとして測定される。
【0118】
2.規定の体積(例えば、400mL)を有する倒立容器(2)に、倒立容器内の規定の充填レベル(400mL)まで、試験される食器洗い用液体洗剤を充填する。液体充填レベル、及びディスペンサーシステムを含む倒立容器の種類及び液体体積は、異なる処方を相互比較するために一定に保たれる。
【0119】
3.図4に示すように、弁(Aptar Group、Inc.から入手可能なSimplicity 21-200「Simplisqueeze(登録商標)」弁)を備える液体ディスペンサーを倒立容器(2)と組み立てる。液体ディスペンサーは、平坦面上に静置するための円錐台形状の外部部分(例えば、底部直径65mm、頂部直径34mm、及び高さ30mm)を有し、任意に、内部に展開されたバッフル(例えば、直径7mm、4mmの中央ボールから外側に出ている5つのリブ)、本発明による耐衝撃システム(30)、又はその両方を装備している。液体分注システムが接続される容器は、Procter&Gamble Companyから商品名Fairy Original(Dark Green)として2017年12月に英国で市販されている食器洗い用洗剤容器である。
【0120】
4.落下試験機の落下の高さ(2cm~15cm)を設定する。
【0121】
5.外側管(34)の下端部の開口部に合わせて、約7cm×7cmの紙片を切り取る。
【0122】
6.Mettler Toledo PR1203天秤を使用して紙片を秤量し、その重量を記録する。
【0123】
7.紙片を外側管(34)の下部端の開口部の下に置く。
【0124】
8.組み立てられた液体ディスペンサー及び倒立容器(2)を、液体ディスペンサー側を下にして、落下試験機の内側管(33)内に置く。
【0125】
9.迅速かつ滑らかな動きで、落下試験機内のレバーを引き戻す。
【0126】
10.管並びに組み立てられた液体ディスペンサー及び倒立容器を落下試験機から取り出す。
【0127】
11.紙片をもう一度秤量し、重量を記録する。紙の重量差を計算する。デルタは液体ディスペンサーから漏れた液体の量に対応する。
【0128】
12.各試験条件について合計5回繰り返すために、工程5~11を更に4回繰り返す。
【0129】
13.落下高さ及び洗剤組成物あたりの平均漏出重量を計算し、報告する。
【0130】
試験方法2:液体糸引き耐性試験
液体糸引き耐性試験の目的は、倒立容器に対する指圧が解放されたとき、吐出の終わりに毛状物の糸引きの形成を防止/低減する液体洗剤組成物の能力を評価することである。HAAKE(商標)CaBER(商標)1毛状物破断伸びレオメーター(Thermo Scientific)を使用して、試験サンプルを特定のひずみまで伸長させた際に形成された毛状物の破断時間を測定することによって、比較用及び例示的な製剤の液体糸引きプロファイルを評価する。サンプル直径を6mmに、初期サンプル高さを3mmに、最終サンプル高さを17.27mmに設定し、延伸プロファイルを線型に設定し、ストライクタイムを100msに設定する。
【0131】
試験方法3:剪断粘度試験
TA instrumentから市販されているDHR-1回転レオメーターを使用して、液体洗剤組成物の剪断粘度を測定する。具体的には、直径40mm、角度2.008°の円錐プレート形状を使用し、切頭部間隙は56μmとした。定常剪断を適用して、20℃で0.1~1000 1/sの剪断速度の範囲で剪断粘度を測定し、10/sでの剪断粘度を報告する。
【実施例
【0132】
以下の実施例は、本発明を更に例証するために与えられるものであり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の多くの変更が可能であることから、本発明を制限するものとして解釈すべきではない。
【0133】
実施例1:漏液耐性プロファイル
液体の漏出を実質的に低減又は防止するために、本明細書に開示される試験方法に記載の複合シリコーンバルブ及びバッフルシステムを備える液体ディスペンサーを備える倒立容器に添加された、本発明による洗浄組成物(100)(本発明の組成物1及び2)を備える洗浄製品の能力を評価し、本発明の範囲外の比較組成物(比較組成物1及び2)及び市販の製剤(2017年11月にドイツで市販されている比較組成物3-小売業者Lidlの「Geschirr Spul Mittel」Green Tea&Rose食器洗い液)と相互比較した。
【0134】
表1に記載される成分の標準的な混合によって、前述の組成物を作製する。
【0135】
【表1】
【0136】
漏液耐性試験の結果を以下の表2にまとめる。結果は、本発明及び比較組成物の落下高さの関数として漏出した液体組成物の量(g)を示す。
【0137】
【表2】
【0138】
この結果から、本発明による規定の重量比の範囲内でアニオン性界面活性剤と、両性界面活性剤(本発明の組成物1)又は双性イオン性界面活性剤(本発明の組成物2)から選択される第1の共界面活性剤とを含む液体組成物は、別の第1の共界面活性剤系(比較組成物1及び2)又は本発明による重量比の範囲外でアニオン性界面活性剤及び双性イオン性共界面活性剤系を含む比較組成物(比較組成物3)と比較して、水撃圧作用に対してより高い堅牢性を有することが分かる。
【0139】
実施例2:液体糸引きプロファイル
本発明による洗浄組成物(100)(本発明の組成物1及び2)を含む洗浄製品の液体の糸引きを実質的に低減又は防止する能力を、本明細書に開示する液体糸引き耐性試験方法に従って評価し、本発明の範囲外の比較組成物(比較組成物1及び2)及び市販の先行技術の製剤(2017年11月にドイツで市販されている比較組成物3-小売業者Lidlの「Geschirr Spul Mittel」Green Tea&Rose食器洗い液)と相互比較した。また、これらの製剤を、0.2%のポリプロピレングリコールMW2000の単一の変数付加により初期生成物粘度を3,820mPa・s~1,045mPa・sに低下させた比較組成物3の製剤(比較組成物4)に対して相互比較した。回転速度12RPMのスピンドル31を備えるBrookfield型DV-Eを使用して、20℃で、比較組成物4の粘度の低下を測定する。
【0140】
液体糸引き耐性試験の結果を以下の表3にまとめる。この結果は、本明細書に記載の試験プロトコルに従って、液体組成物の毛状物破断時間(s)を示す。
【0141】
【表3】
【0142】
この結果から、液体洗剤組成物の液体糸引きプロファイルは、主に最終製品粘度により決定されることが分かる。すなわち、試験した他の本発明及び比較の製品組成物と比較して最終製品粘度が高い(すなわち、3,820mPa・s対約1,100mPa・s)比較組成物3は、著しく長い毛状物破断時間を示す。したがって、液体の糸引きを防止/低減するためには、低い製品粘度が望ましい。低い製品粘度では漏出リスク(静的及び衝撃時)が増大するので、本発明による界面活性剤系を配合することは、所望の漏出及び糸引き低減/防止プロファイルの両方をもたらすために非常に好ましい。
【0143】
本明細書における全ての割合及び比率は、特に指示しない限り、重量で計算される。全ての百分率及び比率は、別途記載のない限り、全組成に基づいて計算される。
【0144】
本明細書の全体をとおして与えられる全ての最大数値限定は、それよりも小さい全ての数値限定を、かかるより小さい数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているかのように含むものと理解すべきである。本明細書の全体をとおして与えられる全ての最小数値限定は、それよりも高い全ての数値限定を、かかるより高い数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているかのように含む。本明細書の全体をとおして与えられる全ての数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に含まれる全てのより狭い数値範囲を、そのようなより狭い数値範囲の全てがあたかも本明細書に明示的に記載されているかごとく、包含するものである。
【0145】
本明細書にて開示された寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、このような寸法はそれぞれ、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図されている。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10