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特許7332607極性ポリマーとポリオールポリエステル及びポリヒドロキシアルカンとのブレンド
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  • 特許-極性ポリマーとポリオールポリエステル及びポリヒドロキシアルカンとのブレンド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】極性ポリマーとポリオールポリエステル及びポリヒドロキシアルカンとのブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/12 20060101AFI20230816BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20230816BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20230816BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C08L33/12
C08K5/053
C08K5/103
B32B27/00 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020539049
(86)(22)【出願日】2019-01-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 US2019012241
(87)【国際公開番号】W WO2019143481
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】62/617,700
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515167791
【氏名又は名称】トリンセオ ユーロップ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チン-ハン(ヘレン)・ワン
(72)【発明者】
【氏名】セシル・ボネ
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ピーダーソン
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530384(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0960589(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アクリルポリマーを有する少なくとも1種の極性ポリマーと、
b)1モル当たり200グラムを超える分子量を持つ少なくとも1種の光沢度改良添加剤とを含み、
前記組成物は、前記極性ポリマーの質量基準で2~40質量パーセントの間の前記光沢度改良添加剤を含み、
前記少なくとも1種の極性ポリマーは、メチルメタクリレートと2~16質量パーセントの1種以上の炭素数1~4のアクリレートとのコポリマーであるアクリルポリマーブレンドであり、
前記少なくとも1種の光沢度改良添加剤は、1,2-ジヒドロキシアルカンブレンドである、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、1モル当たり200グラムを超える重量平均分子量を有し、且つ少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1種の脂肪酸エステルを更に含み、
前記脂肪酸エステルは、動植物油から得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記動植物油から得られる少なくとも2つのヒドロキシル基を含む前記脂肪酸エステルは、エポキシ基含有動植物油と少なくとも1種の水性酸又は水性塩基との反応生成物である、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
前記エポキシ基含有動植物油は、エポキシ基含有藻類油、エポキシ基含有キャノーラ油、エポキシ基含有ココナッツ油、エポキシ基含有ひまし油、エポキシ基含有トウモロコシ油、エポキシ基含有綿実油、エポキシ基含有フラックス油、エポキシ基含有魚油、エポキシ基含有ブドウ種子油、エポキシ基含有ヘンプ油、エポキシ基含有ジャトロファ油、エポキシ基含有ホホバ油、エポキシ基含有マスタード油、エポキシ基含有パーム油、エポキシ基含有パームステアリン、エポキシ基含有なたね油、エポキシ基含有サフラワー油、エポキシ基含有大豆油、エポキシ基含有ひまわり油、エポキシ基含有トール油、エポキシ基含有オリーブ油、エポキシ基含有獣脂、エポキシ基含有豚脂、エポキシ基含有鶏脂、エポキシ基含有亜麻仁油、エポキシ基含有桐油、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
衝撃性改良添加剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記衝撃性改良添加剤は、線状ブロックコポリマー、コアシェルポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、前記極性ポリマーの質量基準で20~60質量パーセントの間の前記衝撃性改良添加剤を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
多層複合構造体であって、
a)請求項1に記載の組成物を含む少なくとも1種のキャップストック層と、
b)少なくとも1種の基材層とを含み、
前記多層複合構造体は、外層及び内層を備え、
前記外層は、外表面を有し、
前記キャップストック層は前記外層であり、且つ前記基材層が前記内層である、多層複合構造体。
【請求項9】
前記基材層は、アクリルポリマー、スチレンポリマー、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)コポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)ポリマー、メチルメタクリレートアクリロニトリルブタジエンスチレン(MABS)コポリマー、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)コポリマー、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、木材/ポリマー複合材、ポリエステル、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、請求項に記載の多層複合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1モル当たり200グラムを超える重量平均分子量のエポキシ基含有アルカン又はエポキシ基含有脂肪酸エステルの開環反応によって生成できる化合物を極性ポリマーとブレンドして、極性ポリマーの光沢度を改良する。これらの化合物は、1分子当たり少なくとも1種、好ましくは2種の極性官能基を含み、これらのポリマーの光沢度を改良するために、極性ポリマー又は少なくとも1種の極性ポリマーを含むブレント物とブレンドされ、その結果、更なる塗工ステップ又は積層ステップを必要とせずに製造操業からすぐに適切な光沢度が得られる。これらの化合物はまた、極性ポリマーの衝撃性強度も改良するか、最低でも低下しない。好ましい化合物は、対応するエポキシ基含有化合物の開環反応によって生成できるポリオールポリエステル及び/又はポリヒドロキシ(例えば、ジヒドロキシ)アルカンである。ポリオールポリエステル及び/又はジヒドロキシアルカンとのこれらの極性ポリマーブレンドは、構造体の表面層、キャップ層、又はキャップストック層、例えば屋外の場所での使用を目的とした押出し形材の外層として(つまり、良好な耐候性が望ましい特性である場合)使用するのに特に適している。ポリオールポリエステル及び/又はポリヒドロキシアルカンは、現在入手可能な潤滑剤(例えば、ポリマー基準で40質量パーセントまで)で典型的に達成可能なレベルよりも高いレベルで極性ポリマーにブレンドされる。これらの添加剤は、極性ポリマーの衝撃性強度も改良するか、少なくとも低下させないこともわかり、これは多層構造体のキャップストック層としての適合性にも貢献している。
【背景技術】
【0002】
アクリルポリマー、アクリルポリマーの誘導体及びコポリマーは、多くの望ましい特性、特に優れた耐候性(良好な耐UV)、UVからの下地基材の保護、耐引っ掻き性を有し、窓枠などの外部の場所で使用できる押出し形材の外側キャップ層又はキャップストック層などの用途に使用するのに魅力的である。外層又はキャップストック層としてのこれらの材料の他の用途は限定されるものはないが、自動車産業;レクリエーション用車両;航空機;農業機械;建物及び建設;屋外のレクリエーション設備;ウォータースポーツ;プール;芝生及び庭の設備;デッキ、レール、支柱、サイディング、フェンス、構造などの剛性と強度を必要とする屋外の構造用途、並びに屋外の構造用途(窓、サイディング、デッキ、手すり、シャッター);電話、ラジオ、テレビ、カセットなどの通信機器;パワーツール;電化製品;事務機器;おもちゃ;家具;医療機器が挙げられる。これらのキャップストック層の他の好適なポリマーは、例えばポリビニリデンフルオライド(PVDF)ポリマーである。
【0003】
しかしながら、これらの材料は、これらの構造体で現在使用される塗工又は積層された外層よりも少ない光沢であることに悩む傾向がある。これらの生成物の製造における塗工又は積層ステップの除去は、製造操業のための材料費用及び時間を大幅に節約することができる。その結果、優れた適合性を有する添加剤にこれらの材料を供給することが望ましいであろうし、それは更なる塗工又は積層ステップを必要とせずに、製造操業の直後に十分に光沢のあるキャップ層を有する構造が得られるであろう。
【0004】
処理中、潤滑剤がキャップストックの樹脂上に表面摩擦を減らすことが知られ、それは、最終生成物の表面光沢度を改良する傾向がある。しかしながら、ステアリン酸及びステアリルアルコールの一般的な潤滑剤は、典型的な処理温度(200~240℃)でかなり揮発する。加えて、光沢度(>2%)が改善されるレベルで、これらの添加剤は、ワックス状の残留物を残し、キャップストック層の品質(滑らかさと均一性)を低下させるプロセス機器(キャリブレーター、ダイなど)にプレートアウトしやすい。
【0005】
したがって、これらの樹脂の望ましい耐候性及び耐衝撃性の特性を維持し、同時に加工装置へのプレートアウト及びワキシーデポジットに抵抗しつつ、光沢度を向上させるためにこれらのキャップストック樹脂に十分に高いレベルで添加されることができ、高い光沢度を有する高品質のキャップ層を提供するであろう添加剤が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、1モル当たり200グラムよりも大きい分子量を持つエポキシ基含有アルカン又はエポキシ基含有脂肪酸エステルの開環反応の生成物として生成され得る化合物を有する極性ポリマーのブレンドに関する。これらの化合物は、極性ポリマーとブレンドする場合、極性ポリマーの光沢度を改良する。これらの化合物は、少なくとも1種の極性官能基を含み、極性ポリマー、又はこれらのポリマーの光沢を改良するために少なくとも1種の極性ポリマーを含むブレンドとブレンドされ、それらは、更なる塗工又は積層ステップを必要とせずに、製造操業の直後に好適な光沢度を有するようになる。これらの化合物はまた、極性ポリマーの衝撃性強度を改良しうる。
【0007】
好ましいこのような光沢度改良化合物は、1モル当たり200グラムよりも大きい分子量を持つエポキシ基含有アルカン又はエポキシ基含有脂肪酸トリグリセリドの開環反応の生成物として便宜上作製されうる。そのような化合物の例は、ポリオールポリエステル及び/又はジヒドロキシアルカンであり、それらは光沢度改良添加剤としての機能を果たす。分子量が1モル当たり200グラムを超え、少なくとも1種の極性基を含むエポキシ基含有アルカン又はエポキシ基含有脂肪酸トリグリセリドの開環反応の他の生成物はまた、光沢度改良添加剤として好適である。これらの材料は、エポキシ基含有アルカン又はエポキシ基含有脂肪酸トリグリセリドの開環反応の生成物として便宜上説明されているが、必ずしもそのような方法で作られる必要はないことを強調する価値がある。
【0008】
極性ポリマーは、アクリルポリマー、アクリロニトリルポリマー及びそれらのブレンド並びにそれらのコポリマーであることが好ましい。他の好適な樹脂は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル、及び例えばポリビニリデンフルオライドポリマー(PVDE)等のフルオロポリマーである。エポキシ基含有アルカン又はエポキシ基含有脂肪酸トリグリセリドの開環反応の生成物の添加はこれらの極性ポリマーの表面光沢度を改良し、塗工工程又は積層工程を必要としない。加えて、光沢度改良添加剤が複合構造体の外側キャップ層として使用される場合、該光沢度改良添加剤はこれらの材料の衝撃性強度を改良することができる。これらの添加剤は優れた耐候性が低下しないことが重要であり、屋外での使用を目的とした複合構造体のキャップストックとしてこれらのポリマー材料を使用するのに耐候性は重要なパラメーターである。
【0009】
本明細書で使用される「ポリオールポリエステル」の用語は、1分子当たり2以上のヒドロキシル基及び1分子当たり2以上のエステル基を含む有機化合物を意味する。ポリオールポリエステルは、好ましくはそれぞれエポキシ基に近接した2つのヒドロキシル基を生成する水性酸又は水性塩基でエポキシ基含有脂肪酸トリグリセリドの開環反応で生成可能な分子である。好ましいポリオールポリエステル分子は、1モル当たり少なくとも200グラムの分子量である。
【0010】
ジヒドロキシアルカンは、好ましくはエポキシ基含有アルケンと、各エポキシ基に対して2つのビシナルヒドロキシル基を生成する水性酸又は水性塩基との開環反応によって作製され得る分子である。好ましい分子は、1モル当たり少なくとも200グラムの分子量を持つ1,2-ジヒドロキシ脂肪族アルカンである。
【0011】
「脂肪酸エステル」の用語は、脂肪酸とアルコールとの反応で生じる化合物を意味する。それらは、脂肪酸モノエステル、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、及びポリオール脂肪酸エステルでありうる。
【0012】
本発明はまた、多層複合構造体に関するものであり、それは使用可能な非限定的な例として、建物及び建設;屋外のレクリエーション設備;ウォータースポーツ;プール;海洋用途、芝生及び庭の設備;デッキ、レール、支柱、サイディング、フェンス、構造及び窓枠等の屋外の構造用途;自動車産業;レクリエーション用車両;航空機;農業機械;電話、ラジオ、テレビ、カセットなどの通信機器;パワーツール;電化製品;事務機器;おもちゃ;家具;医療機器が挙げられる。他の用途は、熱成形に好適な多層複合材料から作製されたシートである。
【0013】
本明細書内では、明確で簡潔な明細書を書くことができるような方法で実施形態が記載されてきたが、実施形態は、本発明から部分的に切り離すことなく、様々に組み合わせられてもよいし、分離されてもよいことが意図されており、また理解されるであろう。例えば、本明細書に記載されているすべての好ましい特徴は、本明細書に記載されている本発明のすべての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の様々な非限定的な態様をまとめると、以下のようになる。
態様1:
a)少なくとも1種の極性ポリマーと、
b)1モル当たり200グラムを超える分子量を持つ少なくとも1種の光沢度改良添加剤とを含み、
前記少なくとも1種の光沢度改良添加剤は、官能基含有直鎖アルカン、官能基含有分岐アルカン、官能基含有脂肪酸エステル及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記少なくとも1種の光沢度改良添加剤は、ビシナルジオール、ヒドロキシリン酸トリエステル、ヒドロキシエステル、ヒドロキシエーテル、ヒドロキシアミノ、ヒドロキシスルフィド、ヒドロキシニトリル、ヒドロキシアミン、末端アルコール、チイラン、ケトン及び環状カーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する、組成物である。
態様2:
前記組成物は、少なくとも1種のビシナルジオール基を含む少なくとも1種の直鎖又は分岐ヒドロキシアルカンを有する、態様1に記載の組成物である。
態様3:
前記少なくとも1種の直鎖又は分岐ヒドロキシアルカンは、1,2-ジヒドロキシアルカンである、態様1又は2に記載の組成物である。
態様4:
前記組成物は、1モル当たり200グラムを超える平均分子量を有し、且つ少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1種の脂肪酸エステルを含み、
前記脂肪酸エステルは、動植物油から得られる、態様1~3に記載の組成物である。
態様5:
前記動植物油から得られる少なくとも2つのヒドロキシル基を含む前記脂肪酸エステルは、エポキシ基含有動植物油と少なくとも1種の水性酸又は水性塩基との反応生成物である、態様1~4に記載の組成物である。
態様6:
前記エポキシ基含有動植物油は、エポキシ基含有藻類油、エポキシ基含有キャノーラ油、エポキシ基含有ココナッツ油、エポキシ基含有ひまし油、エポキシ基含有トウモロコシ油、エポキシ基含有綿実油、エポキシ基含有フラックス油、エポキシ基含有魚油、エポキシ基含有ブドウ種子油、エポキシ基含有ヘンプ油、エポキシ基含有ジャトロファ油、エポキシ基含有ホホバ油、エポキシ基含有マスタード油、エポキシ基含有キャノーラ油、エポキシ基含有パーム油、エポキシ基含有パームステアリン、エポキシ基含有なたね油、エポキシ基含有サフラワー油、エポキシ基含有大豆油、エポキシ基含有ひまわり油、エポキシ基含有トール油、エポキシ基含有オリーブ油、エポキシ基含有獣脂、エポキシ基含有豚脂、エポキシ基含有鶏脂、エポキシ基含有亜麻仁油、エポキシ基含有桐油、エポキシ基含有亜麻仁油、エポキシ基含有桐油及びそれらの混合物からなる群から選択される、態様4又は5のいずれかに記載の組成物である。
態様7:
前記組成物は、前記極性ポリマーの質量基準で2~40質量パーセントの前記光沢度改良添加剤を含む、態様1~6に記載の組成物である。
態様8:
前記組成物を、BYKガードナーマイクロ-グロス75°グロスメータを用いて測定した場合、75°光沢度が53以上であり、且つBYKガードナーマイクロ-トリ-グロス20°/60°/85°グロスメータを用いて測定した場合、60°光沢度が12以上である、態様1~7に記載の組成物である。
態様9:
衝撃性改良添加剤を更に含む、態様1~8に記載の組成物である。
態様10:
前記衝撃性改良添加剤は、線状ブロックコポリマー、コアシェルポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の組成物である。
態様11:
前記組成物は、前記極性ポリマーの質量基準で20~60質量パーセントの前記衝撃性改良添加剤を含む、態様9又は10のいずれかに記載の組成物である。
態様12:
前記極性ポリマーは、アクリルポリマー、アクリロニトリルポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、グリコール変性ポリエステル(PETG)、フルオロポリマー及びそれらのコポリマー、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、態様1~11に記載の組成物である。
態様13:
前記少なくとも1種の極性ポリマーは、アクリルポリマー又はアクリロニトリルポリマーであり、且つホモポリマー、コポリマー、ターポリマー又はそれらの混合物を含む、態様1~12に記載の組成物である。
態様14:
前記極性ポリマーは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソ-オクチルメタクリレート、イソ-オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリロニトリル、シアン化ビニル化合物、スチレンの極性誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを重合した形態で含む、態様1~13に記載の組成物である。
態様15:
前記極性ポリマーは、メチルメタクリレートと2~16質量パーセントの1種以上の炭素数1~4のアクリレートとのコポリマーであるアクリルポリマーである、態様1~14に記載の組成物である。
態様16:
多層複合構造体であって、
a)請求項1に記載の組成物を含む少なくとも1種のキャップストック層と、
b)少なくとも1種の基材層とを含み、
前記多層複合構造体は、外層及び内層を備え、
前記外層は、外表面を有し、
前記キャップストック層は前記外層であり、且つ前記基材層が前記内層である、多層複合構造体である。
態様17:
前記基材層は、アクリルポリマー、スチレンポリマー、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)コポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)ポリマー、メチルメタクリレートアクリロニトリルブタジエンスチレン(MABS)コポリマー、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)コポリマー、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、木材/ポリマー複合材、ポリエステル、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、態様16に記載の多層複合構造体である。
態様18:
前記キャップストック層を、BYKガードナーマイクロ-グロス75°グロスメータを用いて測定した場合、75°光沢度が53以上であり、且つBYKガードナーマイクロ-トリ-グロス20°/60°/85°グロスメータを用いて測定した場合、60°光沢度が12以上である、態様16又は17に記載の多層複合構造体である。
態様19:
前記キャップストック層を、円錐型チップでガードナー衝撃性試験によって測定する場合、平均破損エネルギー(MFE)衝撃性強度は少なくとも0.7in-lb/milである、態様16~18のいずれかに記載の多層複合構造体である。
態様20:
a)少なくとも1種の極性ポリマーと、
b)少なくとも1種の光沢度改良添加剤とを含み、
前記少なくとも1種の光沢度改良添加剤は、少なくとも2種のヒドロキシル基を含有し1モル当たり200グラムを超える分子量を持つヒドロキシアルカン、少なくとも2種のヒドロキシル基を含有し1モル当たり200グラムを超える分子量を持つポリオールポリエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係る特定の実施形態に従って使用されうるエポキシドの開環反応が可能な反応生成物を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、極性ポリマーと光沢度改良添加剤とのブレンドに関する。これらの化合物は、便宜上、1モル当たり200グラムを超える分子量を持つエポキシ基含有アルカン又は脂肪酸エステルの開環反応の生成物として記載されている。これらの分子は、対応するエポキシ基含有化合物の開環反応の反応生成物として便宜上説明できるが、当技術分野で公知のように任意の他の方法によって調製してよいことが注目するに値する。
【0017】
光沢度添加剤は、好ましくは1モル当たり200グラムを超える分子量を持つ線状又は分岐アルカンポリオールを含む。光沢度改良添加剤はまた、1モル当たり200グラムを超える分子量を持つポリオールポリエステルを含んでよい。そのようなポリオールポリエステルは、対応するエポキシ基含有脂肪酸トリグリセリドの開環反応から生成されうる。これらの分子の混合物はまた、明細書に記載されているように光沢度改良添加剤として使用されてよい。
【0018】
本発明はまた、光沢度改良添加剤を含有する極性ポリマーのブレンドが、ポリマーであってもよくポリマーでなくてもよい基材層を覆う外層又はキャップストック層である多層複合構造体に関するものである。
【0019】
別段の表示がない限り、明細書のすべてのパーセンテージは質量パーセンテージであり、すべてのポリマーの分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量である。
【0020】
明細書で使用される「ポリマー」は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されるように20,000g/molを超え、好ましくは50,000g/molを超える重量平均分子量を持つ有機分子を含むことを意味する。
【0021】
明細書に記載されているようにエポキシ基含有動植物油の開環反応によって調製可能なアルカンジオール又はポリオール等の分子の分子量は、その分子の構造に基づいて算出される1モル当たりのグラム単位の分子量とする。これらの材料はある範囲の分子量を含み、明細書に規定されている分子量は推定値のみであることが理解される。
【0022】
明細書に記載されているようにエポキシ基含有動植物油の開環反応によって調製可能なポリオールポリエステル等の分子の分子量は、その分子の構造に基づいて算出される1モル当たりのグラム単位の分子量とする。これらの材料はある範囲の分子量を含み、明細書に規定されている分子量は推定値のみであることが理解される。
【0023】
光沢度改良添加剤
一般に、好適な光沢度改良添加剤は、1モル当たり200グラムを超える分子量及び1分子当たり少なくとも1種、好ましくは少なくとも2つの極性官能基を有する化合物を含む。これらの化合物は、キャップストックポリマーの40質量%までの量でキャップストックポリマーに組み込みうる。
【0024】
これらの光沢度改良添加剤は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて極性ポリマーにブレンドされてよい。非限定的な例としては、他の添加剤の有無にかかわらず最終ブレンドに直接混合すること;光沢度改良添加剤40質量パーセントまで含むマスターバッチを作製し、その後、必要に応じてマスターバッチを希釈すること;又は押出成形部品の製造中に添加剤を押出機に直接供給することが挙げられる。
【0025】
これらの化合物は当技術分野で公知の任意の好適な方法によって製造されてよいが、好適な不飽和分子をエポキシ化し、次いで得られたエポキシ基を試薬および条件に供してエポキシド環を開環させることにより便宜上合成される。
【0026】
一般に、好適な光沢度添加剤は、1モル当たり約200グラムを超える分子量であり且つ1分子当たり少なくとも1種のヒドロキシル基を有するポリオールを含む。
【0027】
特に好適な添加剤は、エポキシ基含有直鎖或いは分岐アルカン、又はエポキシ基含有脂肪酸エステルを有する水性酸又は水性塩基のいずれかを使用するエポキシの開環反応の生成物であるポリオールである。そのような分子は、少なくとも1種以上のビシナルヒドロキシル基の対を含むであろう。脂肪酸エステルは出発材料として、エポキシ基含有脂肪酸トリグリセリドであることが特に好ましい。また、末端位置におけるエポキシ基を有する直鎖脂肪族エポキシ基含有アルカンが出発材料として特に好ましい。エポキシ基含有分岐アルカンはまた、好適な出発材料でもある。
【0028】
これらの化合物の非限定的な例は、すなわち、アーケマによってVikinol(登録商標)として販売された分子量が1モル当たり200グラムを超える1,2 ジヒドロキシアルカン、又はアーケマによって販売された分子量が1モル当たり200グラムを超える植物油ポリオールである。
【0029】
特に植物油由来のポリオールの場合、これらは天然物であり、したがって一連の分子量と構造を含み、必ずしもトリグリセリドのみで構成されているわけではないことを理解すべきであり、また、モノ-、ジ-、又は高次グリセリド、及び1~400mg KOH/g(サンプルの1グラム当たりの水酸化カリウムのミリグラム)の範囲のヒドロキシル価を含んでよい。同様に、1,2 ジヒドロキシアルカンはある範囲の分子量を含み、また1~400mg KOH/gの範囲のヒドロキシル価を有してよい。ヒドロキシル価は、AOCS(アメリカ石油化学者協会)メソッドTx 1a-66に従って測定される。
【0030】
光沢度改良添加剤を生成するエポキシド開環反応の出発材料として好適なエポキシ基含有脂肪酸トリグリセリドの非限定的な例としては、すなわちエポキシ基含有藻類油、エポキシ基含有キャノーラ油、エポキシ基含有ココナッツ油、エポキシ基含有ひまし油、エポキシ基含有トウモロコシ油、エポキシ基含有綿実油、エポキシ基含有フラックス油、エポキシ基含有魚油、エポキシ基含有ブドウ種子油、エポキシ基含有ヘンプ油、エポキシ基含有ジャトロファ油、エポキシ基含有ホホバ油、エポキシ基含有マスタード油、エポキシ基含有キャノーラ油、エポキシ基含有パーム油、エポキシ基含有パームステアリン、エポキシ基含有なたね油、エポキシ基含有サフラワー油、エポキシ基含有大豆油、エポキシ基含有ひまわり油、エポキシ基含有トール油、エポキシ基含有オリーブ油、エポキシ基含有獣脂、エポキシ基含有豚脂、エポキシ基含有鶏脂、エポキシ基含有亜麻仁油、エポキシ基含有桐油、エポキシ基含有亜麻仁油、エポキシ基含有桐油及びそれらの混合物が挙げられる。これらの化合物の完全なエポキシ化は、本発明の実施において必要ではなく、エポキシ化された化合物の完全な開環も必要でないことを理解すべきである。1~400mg KOH/gの範囲のヒドロキシル価は好適である。
【0031】
エポキシ基含有直鎖若しくは分岐アルカン又はエポキシ基含有脂肪酸エステル、特にエポキシ基含有脂肪酸トリグリセリドの他の開環反応の生成物はまた、図1に示されるように光沢度改良添加剤として好適である。
【0032】
図1は、これらのエポキシ基含有分子のエポキシド基の開環反応により、極性ポリマーの光沢度改良添加剤として使用されうる化合物を生成することを示す。得られる分子は、対応するエポキシ基含有分子上に存在していた各エポキシド環に対して少なくとも1種の極性基を含む。一般に、ほとんどの場合、反応物に応じて、2番目の極性基、例えば2番目のヒドロキシル基、リン酸トリエステル、エステル、エーテル、アミノ、スルフィド、ニトリルに隣接する(2つの炭素原子から分離した)ヒドロキシル基を有する。これらは、ビシナルジオール、ヒドロキシリン酸トリエステル、ヒドロキシエステル、ヒドロキシエーテル、ヒドロキシアミノ、ヒドロキシスルフィド、ヒドロキシニトリル、又はヒドロキシアミンとそれぞれ称されうる。隣接するヒドロキシル基を持たない他の基は、末端アルコール、ケトン、チイラン、又は環状カーボネートである。
【0033】
また、エポキシ基含有直鎖若しくは分岐アルカン又は脂肪酸エステルと酸又はアルコールとの反応から生じる部分的に開環されたエポキシ環の生成物として便宜上説明可能な分子が、光沢度改良添加剤としての使用に好適である。これらは、米国特許第9686918号に開示されている反応の中間体として示されており、本号はすべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0034】
また、エポキシ基含有直鎖若しくは分岐アルカン又は脂肪酸エステルとカルボン酸(特に酢酸等の短鎖カルボン酸)との反応から生じる部分的に開環されたエポキシ環の生成物として便宜上説明可能な分子が、光沢度改良添加剤としての使用に好適であり、それは下記にヒドロキシエステルという結果になることが示される。
【0035】
【化1】
【0036】
すべての比率におけるこれらの光沢度改良添加剤のブレンドは、本発明の一部とみなされるものと理解すべきである。また、本発明の一部はこれらの化合物の範囲のブレンドである。非限定的な例は、例えば1,2 ジヒドロキシアルカンの分子量の範囲のブレンド及び/又は上記のような様々な官能基含有動植物油の誘導体のブレンドである。
【0037】
外側キャップストック層又はキャップ層としての極性ポリマー
上記のような光沢度改良添加剤は、多層複合構造体の外側キャップストック層又はキャップ層として使用されることを意図する極性熱可塑性ポリマーと結合される。本開示の例示的態様によるとそのような構造体の非限定的な例は、内側(又は下側)基材層及び外側(又は上側)キャップストック層を含む押出形材である。キャップストック層の厚さは、好ましくは1mil厚~100mil厚、好ましくは3mil厚~25mil厚、より好ましくは4mil厚~20mil厚である。
【0038】
本発明において光沢度改良添加剤が配合されるキャップ層として有用なそのような極性熱可塑性ポリマーとしては限定されるものではないが、極性ポリマー又は例えば重合後のグラフト化等の工程を経て極性基を含むよう修飾されたポリマーが挙げられる。少なくとも1種の極性モノマーを含むコポリマーはそれらと組み合わせる光沢度改良添加剤を有することが好適である。上記のように、ポリマー質量で40%までの光沢度改良添加剤はキャップストックポリマーと結合されうる。
【0039】
光沢度改良成分と組み合わせた場合、改良された光沢度を有するそのような熱可塑性ポリマーとしては限定されるものではないが、アクリルポリマー及びコポリマー、アクリロニトリルポリマー及びコポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、若しくはポリエステル又はそれらのコポリマー、フルオロポリマー、又はそれらの混合物が挙げられる。コモノマーとしては、少なくとも1種のコモノマーが極性部位(例えば、エステル、シアノ、ウレタン、ハロアルキル、炭酸塩等)を含むものである限り、アルケンやスチレン等の非極性モノマーが好適である。同様に、極性ポリマー又はコポリマーと非極性ポリマーとのブレンドはまた、本発明の範囲内であるものとする。
【0040】
明細書で使用されるアクリルポリマーとしては限定されるものではないが、アルキル(メタ)アクリレートを含有するホモポリマー、コポリマー、及びターポリマーが挙げられる。
【0041】
アルキルメタクリレートモノマーは好ましくはメチルメタクリレートであり、それはモノマー混合物の60~100質量%で構成してよい。0~40質量パーセントの他のアクリレート、メタクリレート、及び/又は他のビニルモノマーはまた、モノマー混合物中に存在してよい。モノマー混合物において有用な他のメタクリレート、アクリレート、並びに例えばシアン化ビニルモノマー及びアクリロニトリル等の他のビニルモノマーとしては限定されるものではないが、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びエチルメタクリレート、ブチルアクリレート及びブチルメタクリレート、イソ-オクチルメタクリレート及びアクリレート、ラウリルアクリレート及びラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート及びステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びメタクリレート、メトキシエチルアクリレート及びメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート及びメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート及びメタクリレートモノマー、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリル、並びにシアン化ビニルが挙げられる。また、架橋剤として少量の多官能性モノマーを使用してよい。好適なアクリルポリマーは、メチルメタクリレートのコポリマーであり且つ1種以上の炭素数1~4のアクリレートを2~16質量パーセントである。
【0042】
アクリロニトリルポリマーはまた、キャップストック層に使用されうる。明細書で使用されるようにアクリロニトリルポリマーとしては限定されるものではないが、アクリロニトリル又はメタクリルニトリル及び様々な他のモノマーを含むホモポリマー、コポリマー、又はターポリマーが挙げられる。コポリマーの約20~85質量パーセントはアクリロニトリル又はメタアクリロニトリルであり且つ他のモノマーの約80~15パーセントは1種以上のスチレンモノマー若しくはスチレンモノマーの誘導体、ブタジエンモノマー、又はアルキルメタクリレートモノマーでありうる。非限定的な例としては、ポリ(スチレン-co-アクリロニトリル)(SAN)ポリマー、ポリ(スチレン-co-アクリロニトリル-co-ブタジエン)(ABS)ポリマー、又はアクリル-スチレン-アクリロニトリル(ASA)ポリマーが挙げられる。
【0043】
極性ポリマーのための好適な材料としてはまた、少なくとも1種の極性モノマー(SAN、ABS、MABS、ASAを含む)及びアクリルポリマー、コポリマー、ターポリマー、ブレンド、並びに変性スチレンポリマー又はアクリルポリマーからなるスチレンコポリマーが挙げられる。明細書で使用されるように、それらに組み込まれる少なくとも1種の極性モノマーを有するスチレンコポリマーとしては限定されるものではないが、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)コポリマー、スチレンアクリロニトリル(SAN)コポリマー、メタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)コポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック(SBS)コポリマー及びそれらの部分的又は完全に水素化された誘導体、スチレン-イソプレンコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマー、及びそれらの部分的または完全に水素化された誘導体、スチレン-メチルメタクリレートコポリマー(S/MMA)等のスチレン-(メタ)アクリレートコポリマー、並びにそれらの混合物が挙げられる。好適なスチレンポリマーはASAである。本発明のキャップストック層において有用なスチレンコポリマーは少なくとも10質量パーセント、好ましくは25質量パーセント含有のスチレンモノマーを有してよい。本発明で使用されるポリマーは、乳化重合、溶液重合及び懸濁重合を含む当技術分野で公知の任意の方法で製造されうる。本発明で使用されるスチレンコポリマーは、少なくとも10質量パーセント、好ましくは25質量パーセント含有のスチレンを有してよい。
【0044】
一実施形態において、キャップストック層ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した場合、重量平均分子量が50,000~500,000g/molの間、好ましくは75,000~150,000g/molの間である。アクリルポリマーの分子量分布は単峰性であってよく、又は多分散性指数が1.5を超える多峰性であってよい。
【0045】
フルオロポリマー及びコポリマーはまた、光沢度改良添加剤と共にブレンドするキャップストック層ポリマーとして使用されることに好適である。非限定的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、及び少なくとも60質量パーセントの1種以上のフルオロモノマーを含有するフルオロポリマーが挙げられる。「フルオロモノマー」という用語又は「フッ素化モノマー」という表現は、その構造内に少なくとも1種のフッ素原子、フルオロアルキル基、又はフルオロアルコキシ基を含み、それによってこれらの基が重合するアルケンの二重結合に結合する重合可能なアルケンを意味する。「フルオロポリマー」という用語は、少なくとも1種のフルオロモノマーの重合によって形成されるポリマーを意味し、それはホモポリマー及びコポリマー、並びに熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーの両方を含む。本発明の多層複合構造のキャップストック層で使用するために有用なフルオロポリマーとしては限定されるものでないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)ポリマー、エチレンとテトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンと(EFEP)のターポリマー、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニルのターポリマー(THV)、ポリフッ化ビニル(PVF)、フッ化ビニルのコポリマー、並びにPVDFと官能基含有又は官能基非含有ポリメチルメタクリレートポリマー及びコポリマーとのブレンドが挙げられる。フルオロポリマーは、官能基含有又は官能基非含有でよく、ホモポリマー又はコポリマーであればよく、好ましくはフッ化ビニル;フッ化ビニリデン(VDF);トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2-ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP);例えばパーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)及びパーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)等のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル;パーフルオロ(1,3-ジオキソール);パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)、並びにそれらのブレンドを含む他のフッ素モノマーを持つコポリマーであり得る。
【0046】
本発明の一実施形態において、フルオロポリマーは、ビニリデンフルオライド及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマーである。
【0047】
本発明の一実施形態において、キャップストック層で使用されるポリマーのブレンドは、(メタ)アクリレートモノマーがフルオロポリマーシードの存在下で重合されるアクリル変性フルオロポリマー(AMF)等の2つのポリマーの均質ブレンドでありうる。
【0048】
キャップストック層は、キャップストック層におけるポリマー質量基準で50質量パーセントを超えるフルオロポリマー、好ましくは60質量パーセントを超えるフルオロポリマー、より好ましくは75質量パーセントを超えるフルオロポリマー、100質量パーセント以下のフルオロポリマーを含んでよい。フルオロポリマーに富むキャップストック層は、0~49質量パーセント、好ましくは1~35質量パーセント、より好ましくは5~30質量パーセントの1種以上のアクリルポリマーを含んでいてもよい。好適な実施形態において、フルオロポリマーは、ポリビニリデンフルオライドポリマー又は70~99質量パーセントのビニリデンフルオライド単位と1~30質量パーセントのヘキサフルオロプロピレン単位とのコポリマーである。
【0049】
光沢度改良添加剤と結合する極性ポリマーとしては限定されるものではないが、バルク、溶液、懸濁液、乳化、逆乳化プロセス、及びフリーラジカル重合が挙げられる当該技術分野で公知の任意の方法で製造されうる。
【0050】
一実施形態において、本明細書に記載されたキャップストックポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した場合、重量平均分子量が50,000~500,000g/mol、好ましくは75,000~150,000g/molである。極性キャップストックポリマーの分子量分布は単峰性であってよく、又は多分散性指数が1.5を超える多峰性であってよい。
【0051】
また、本発明は、光沢度改良添加剤を含む外側キャップ層として極性熱硬化性(架橋)及び熱可塑性樹脂キャップストックを使用して実施できることが想定される。
【0052】
本発明はまた、任意のアクリル酸、メタクリル酸及び極性ポリマーとしての無水コポリマーを含むメチルメタクリレートモノマーのコポリマーを含んでもよい。
【0053】
アクリルポリマー及び他の極性ポリマーはまた、他のポリマーとブレンドして、それらの特性を改善するためにブレンドを形成しうる。アクリル又は他の極性ポリマーはまた、それらの特性を改善する添加剤を含んでよい。例としては限定されないが、衝撃性改良剤(衝撃性改良添加剤)、ブロックコポリマー(例えば、アーケマからNanostrength(登録商標)のブランド名で販売されたブロックコポリマーを含む)、フィラー、及びその他の添加剤を含有するポリマーが挙げられる。上記列挙された任意のタイプのリサイクルポリマーはまた、本発明の実施に好適である。実施形態はまた、上記列挙された極性ポリマー、特に上記列挙されたアクリルポリマー、スチレンポリマー、及びアクリロニトリルポリマー、の任意の割合のブレンドを含んでよい。
【0054】
基材又は内層
基材層は、5milから10cm超まで、10milから10cm超まで、好ましくは50milから10cm超まで、より好ましくは100milから10cm超までの厚さでありうる。多層複合構造体の基材層は、熱可塑性又は熱硬化性でよく複合物でよい。
【0055】
基材層としての本発明において有用な熱可塑性としては限定されるものではないが、アクリルポリマー、スチレンポリマー、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0056】
明細書で使用されるように、スチレンポリマーとしては限定されるものではないが、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)コポリマー、スチレンアクリロニトリル(SAN)コポリマー、メタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)コポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック(SBS)コポリマーとその部分的又は完全に水素化された誘導体、スチレン-イソプレンコポリマースチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーとその部分的又は完全に水素化された誘導体、スチレン-メチルメタクリレートコポリマー(S/MMA)等のスチレン-(メタ)アクリレートコポリマー、及びそれらの混合物が挙げられる。好適なスチレンポリマーは、ASAである。本発明のスチレンコポリマーは、少なくとも10質量パーセント、好ましくは少なくとも25質量パーセントで含有するスチレンモノマーを有する。
【0057】
明細書で使用されるアクリルポリマーとしては限定されるものはないが、ホモポリマー、ランダム及びブロックコポリマー並びにアクリルメタクリレート含有ターポリマーが挙げられる。
【0058】
アクリルメタクリレートモノマーは好ましくはメチルメタクリレートであり、それはモノマー混合物の60~100質量パーセントで調製してよい。0~40質量パーセントの他のアクリレート、メタクリレート、及び/又は他のビニルモノマーはまた、モノマー混合物に存在してよい。モノマー混合物において有用な他のメタクリレート、アクリレート、及び他のビニルモノマーは限定されるものはないが、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びエチルメタクリレート、ブチルアクリレート及びブチルメタクリレート、イソ-オクチルメタクリレート及びアクリレート、ラウリルアクリレート及びラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート及びステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びメタクリレート、メトキシエチルアクリレート及びメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート及びメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート及びメタクリレートモノマー、スチレン並びにその誘導体が挙げられる。(メタ)アクリル酸及びアクリル酸等のアルキル(メタ)アクリル酸はまた、モノマー混合物に有用でありうる。また、架橋剤として少量の多官能性モノマーを使用してよい。好適なアクリルポリマーは、メチルメタクリレートと2~16質量パーセントの1種以上の炭素数1~4のアクリレートとのコポリマーである。
【0059】
ポリ塩化ビニル(PVC)基材ポリマーとしては、ポリ塩化ビニル、塩素化PVC、発泡PVCまたは膨張PVC、フィラーを有する0.1~80質量パーセント充填されたPVCまたは膨張PVCを含む充填PVCが挙げられ、そのフィラーとしては限定されるものではないが、セルロース系繊維、炭酸カルシウム、ロジン、石灰石、三水和アルミニウム、石英、酸化亜鉛およびシリカが挙げられる。
【0060】
本発明の一側面においては、基材層において有用である熱可塑性ポリマーは、乳化重合、溶液重合、及び懸濁重合を含む当技術分野で公知の任意の方法で製造され得る。一実施形態において、熱可塑性基材ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した場合、重量平均分子量が50,000~500,000g/mol、好ましくは75,000~150,000g/molである。熱可塑性マトリクスの分子量分布は単峰性であってよく、又は多分散性指数が1.5を超える多峰性であってよい。
【0061】
明細書で使用されるようなスチレンコポリマーとしては限定されるものではないが、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)コポリマー、スチレンアクリロニトリル(SAN)コポリマー、メタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)コポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック(SBS)コポリマー及びその部分的または完全に水素化された誘導体、スチレン-イソプレンコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマー及びその部分的又は完全に水素化された誘導体、スチレン-メチルメタクリレートコポリマー(S/MMA)等のスチレン-(メタ)アクリレートコポリマー、及びそれらの混合物が挙げられる。好適なスチレンポリマーは、ASAである。本発明のスチレンコポリマーは、少なくとも10質量パーセント、好ましくは少なくとも25質量パーセント含有スチレンモノマーを含む。本発明のポリマーは、乳化重合、溶液重合、および懸濁重合を含む、当技術分野で公知の任意の手段によって製造されうる。本発明において有用なスチレンコポリマーは、少なくとも10質量パーセント、好ましくは少なくとも25質量パーセントのスチレン含有量であり得る。
【0062】
明細書で使用されるようにHIPSは、ポリブタジエンゴムを含むポリスチレン化合物を含むことを意味する。
【0063】
スチレンポリマーはまた、他のポリマーとブレンドして、相溶性ブレンドを形成し得る。非限定的な例としては、PVCとブレンドしたASA、及びPMMAとブレンドしたSANが挙げられる。
【0064】
基材に特に好適な熱可塑性物質は、スチレンポリマー(SAN、ABS、MABS、ASA、HIPSを含む)、アクリルポリマー及びPVCである。
【0065】
本発明はまた、熱硬化性プラスチック基材でも機能することが予想されるが、それらは多くの用途において熱可塑性基材ほど有用ではないことが多い。
【0066】
他の適切な基材は、木材/ポリマー複合材、引抜成形ポリウレタン、引抜成形ポリエステル、又は耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を含む。
【0067】
任意の結合層
多層複合構造体はまた、上記のような光沢度改良添加剤を含む外側ポリマー系キャップストック層と内側基材層との密着性を高めるために、任意の結合層を含んでよい。結合層として有用な材料としては限定されるものではないが、エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸コポリマーおよびエチレン/アクリル酸/メタクリル酸グリシジルコポリマー等の官能化ポリオレフィン;スチレンコポリマー(例えば、ArkemaからTacryl(登録商標)の商品名で販売されているスチレンコポリマーを含む);ポリアミド、又はポリアミドコポリマーが挙げられる。
【0068】
任意の結合層は、例えば0.25milから10milまでの厚さでありうる。
【0069】
表面処理
ポリマーへの密着性を改善するために当技術分野で公知されているような表面処理はまた、多層複合構造を作製する際の本発明の実施に利用してよい。非限定的な例としては、コロナ処理若しくはプラズマ処理又は化学処理又は溶媒及びクレンジング剤を使用して、互いに密着して多層複合構造体を形成する各層の表面を準備することが挙げられる。
【0070】
衝撃性改良添加剤
極性ポリマーキャップ層は本明細書に開示されている光沢度改良添加剤(また衝撃性改良特性を有してよい)に加え、極性ポリマーマトリックス基準で例えば20~60質量パーセントの量で衝撃性改良添加剤(衝撃性改良剤)を含みうる。有用な衝撃性改良剤は、線状のブロックコポリマーを含み、当技術分野で公知されているように、好ましくはコアシェルポリマーである。ポリブタジエンゴムは、好適な衝撃性改良剤である。ハードコア、コアシェルの衝撃性改良剤が特に好ましい。
【0071】
他の添加剤
当技術分野で公知の任意の添加剤は、本明細書に開示されている多層複合構造体のいずれか又はすべての層での使用に好適である。添加剤の非限定的な例としては、フィラー、表面改良添加剤、抗酸化剤、光沢度改良添加剤、UV遮断剤及び加工助剤が挙げられる。
【0072】
好適なフィラー又は表面改良成分の非限定的な例としては、カルシウムカーボネート、石膏及び亜麻繊維が挙げられる。着色剤は、本明細書に開示されている任意のポリマー及び層に使用されてよい。先述のポリマー系キャップストック層及び基材層は、1種以上の衝撃性改良剤(衝撃性改良添加剤)、フィラー若しくは繊維、又はポリマー技術に使用されるタイプの他の添加剤を含んでよい。衝撃性改良剤の例としては限定されるものではないが、コアシェル粒子及びブロック又はグラフトコポリマーが挙げられる。添加剤の例としては、例えばUV光阻害剤又は安定剤、潤滑剤、熱安定剤、難燃剤、共力剤、顔料、トナー及び他の着色剤が挙げられる。本発明によれば、典型的な複合ポリマーブレンドで用いられるフィラーの例としては、タルク、カルシウムカーボネート、雲母、艶消し剤、ケイ灰石、白雲岩、ガラス繊維、ホウ素繊維、炭素繊維、カーボンブラック、チタニウムジオキシド等の顔料、又はそれらの混合物が挙げられる。別のポリマー添加剤は、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリアミド、これらのポリマーに基づきコポリマー及びターポリマーを含むポリオレフィン、線状、分岐、ブロック、およびグラフトポリマー構造を含むポリオレフィンを含み得る。艶消し剤の例としては限定されるものではないが、様々な形状の架橋ポリマー粒子が挙げられる。各層のポリマー組成物を含むフィラー及び添加剤の量は限定されるものはないが、ポリマー、添加剤及びフィラーの合計質量の約0.01%~約70%で変えてよい。一般的に、約5%~約45%の量、約10~約40%の量が含まれる。
【0073】
フィラーは、樹脂に対しフィラー間の結合を改良するためにカップリング剤と処理されてよい。例えば、フィラーは、脂肪酸(例えばステアリン酸)、サイレーン、マレイン化ポリプロピレン等の材料と処理されうる。使用されるカップリング剤の量は、フィラーと樹脂との間の結合を改良するために有効な量である。また、本明細書に開示されている組成物の任意の層に使用する好適なものとしては、アクリルビーズ又は粉砕アクリルが挙げられる。標準アクリルポリマーは、ビーズ又は粉砕のいずれかが好適であり、架橋化されたアクリルビーズ又は粉砕アクリルが特に好ましい。
【0074】
当技術分野で一般に公知の抗酸化剤は、本明細書に開示されているポリマーに任意の好適な量で添加するのに好適である。非限定的な例としては、立体障害フェノール、有機リン酸系及びアミンが挙げられる。
【0075】
UV安定性を改良し向上するために当技術分野で一般に公知の添加剤は、任意の多層複合構造体の層に任意の量で使用するのに好適である。非限定的な例としては、立体障害アミン光安定剤(HALS)、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾフェノン、及びシアノアクリレートが挙げられる。
【0076】
明細書に開示されている光沢度改良添加剤に加え、当技術分野で公知の光沢度改良添加剤はまた、外側キャップストック層に使用されてよい。シリカおよび酸化亜鉛等のナノ粒子は特に有用な付加的な光沢度及び耐引掻性改良添加剤として言及されてよい。
【0077】
加工及び製造方法
本明細書に開示されている多層複合構造体を作製する方法は、産業上知られているようなそのような典型的な方法でよい。
【0078】
以下、本発明によれば光沢度改良添加剤と組み合わせて極性ポリマーをキャップストック層として利用する多層複合構造体を作製する際に使用しうる一般的なポリマー加工方法のリストに限定されるものではない。
【0079】
共押出は、2種以上の異なる溶融ポリマー組成物がフィードブロックダイ又はマルチマニホールドダイから同時に押し出されて、各層に異なる機能特性を持つ層状構造を形成するプロセスである。フィードブロックダイは、単一のプロセスでマルチマニホールドダイを供給するのに使用され、多層構造体の製造に優れた柔軟性を提供する。積層は、接着剤の使用により、及び/又は熱と圧力の組み合わせにより、プレハブ式シート層、又はプレハブ式及び押出式シート層を互いに結合するプロセスである。代替方法として、ホットメルトラミネーション又は熱ラミネーションは、通常はニップロール又はロールスタックのトップロールで、押出ダイの外側に2種以上の溶融ポリマー層を接合する。ポリマーのプロセスの他の非限定例としては、2種の別々の層が並行して押し出され、連続プロセスで熱間圧延される押出ラミネート、インサート成形、マルチショット射出成形、圧縮成形、引抜成形、多層ブローフィルム、熱成形、真空成形、射出ブロー成形、ブロー成形及び回転成形が挙げられる。
【0080】
本発明の多層複合構造体は、最終用途のニーズを満たすために層の数及び組成の選択を調整して、2層以上の層を含みうる。この構造体は、当技術分野で公知の任意の方法によって作製されうる。これは、層の別個の形成、それに続く積層、すべての層の共押出、又は共押出と積層の組み合わせ、又は本明細書で言及されている任意のプロセスを含む。
【0081】
本明細書に開示されている多層複合材料は、一般的な平面構造として製造されうる。本発明の一般的な平面多層複合構造体は、任意の好適な方法で三次元部に更に形成されてよい。例えば、熱成形は、シート状のプラスチック材料を特定の処理温度まで加熱し、機械的手段又は空気圧手段によって金型の輪郭に対して熱くて柔軟な材料を形成するプロセスである。
【0082】
多層複合構造体としては限定されるものではないが、平坦なシート、ロッド、又はプロファイルが挙げられるが、任意の与えられた形状を有しうる。多層複合構造体は、優れた構造的完全性、優れた表面外観、高い衝撃強度、高い耐引掻性及び優れたUV耐性を示す。
【0083】
多層複合構造体は、一般に、剛性のある若しくはかなり剛性のある、又は非柔軟性若しくは低柔軟性の構造体になるのに十分な厚さであることが意図されている。多層複合材料は、4cmの厚さにすることも、特定の用途で必要に応じて更に厚くしうる。したがって、多層複合構造体は、例えば外装サイディング、デッキ材、屋根材、シャワーインサート、キッチンカウンター、屋外或いは屋内用の家具、又は当技術分野で周知である他の非限定的な用途等の構造上の目的に好適である。
【0084】
本発明の多層複合構造体において、基材層は、好ましくは10milから10cm超までの厚さ、好ましくは50milから10cm超までの厚さ、より好ましくは100milから10cm超までの厚さである。多層化構造体の、外側キャップストックポリマー層は、好ましくは1milから100milまでの厚さ、好ましくは3milから25milまでの厚さ、より好ましくは4milから20milの厚さである。
【0085】
多層複合構造体の任意の結合層は、好ましくは0.25milから10milまでの厚さである。
【0086】
一実施形態において、本発明の多層複合構造体は上記の光沢度改良添加剤とブレンドされた少なくとも1層のキャップストックポリマー外層と、外側キャップストック層と直接接触している少なくとも1層の内側基材層とを含む。別の実施形態において、多層複合構造体は3層の層を含み、それらのうち内側基材層が2つの外側ポリマーキャップストック層と直接接触しており、キャップストック層の1層は基材層の片側にあり、他のキャップストック層は基板層の反対側にある。
【0087】
更なる別の実施形態において、多層複合構造体は外側キャップストックポリマー層及び内側基材層との間に配置された少なくとも1層の結合層を更に含む。
【0088】
一実施形態において、本発明の多層構造体は、2層以上のポリマー層及び1層以上の結合層を含み、キャップストックポリマー/結合層/ポリエステル系のポリマー/結合層/キャップストックポリマーの5層構造等である。4層構造体はまた、キャップストックポリマー/結合層/基材ポリマー/キャップストックポリマーの4層構造を考えられる。
【0089】
多層キャップストックポリマー層及び/又は多層タイ層が互いに隣接されない層で使用される構造体において、ポリマー系層及び結合層のそれぞれは、同じ又は異なる組成のものであり得るが、好ましい実施形態において複数のポリマー系層のそれぞれは同じであり、複数の結合層のそれぞれは同じである。別の実施形態において、結合層は、互いが直接接触された2以上の結合層からなるものでよい。
【0090】
試験
耐衝撃又は衝撃強さは円錐型チップでガードナー衝撃性テキスト(GIT)を用いて測定される(ASTM D4226 (2009))。結果は、in-lbs/milの単位で平均破損エネルギー(MFE)衝撃性強度として報告される。
【0091】
光沢度は、BYKガードナーマイクロ-グロス75°グロスメータ及びBYKガードナーマイクロ-トリ-グロス20°/60°/85°グロスメータを用いて測定される。測定単位は、DIN 67530、ISO 2813、ASTM D 523および BS 3900 Part D 5規格に準拠する。光沢度は、75°及び/又は60°で測定される。表面光沢度は、一般的に押出し直後に測定される。
【0092】
分解温度は、以下の手順に従って、熱質量分析によって測定される。すなわち、試料の重さを量り、アルミ製の密閉皿に入れ、20℃/minで空気中600℃に加熱した。温度の関数としての質量損失が記録される。したがって、初期質量の5パーセントと10パーセントが失われる温度を報告しうる。
【実施例
【0093】
例1:キャップストック層 ブレンド:
下記のキャップストック層のポリマーブレンドを調製し、発明例Aに従って異なる光沢度改良添加剤をそれぞれ含んでいた。光沢度改良添加剤を含まない比較例のポリマーブレンドも準備した。これらのキャップストック層配合を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
1分当たり300~425回転数(RPM)及び下記表2に示す押出機温度分布で操業した二軸スクリュー押出機で上記表1に示す成分を溶解ブレンドすることで、これらのアクリル製ブレンドキャップ層配合を調製した。
【0096】
【表2】
【0097】
例2:複合構造体:
カスタムメイドの1インチ×4インチのダイと基材層押出機及びキャップストック層押出機の2つの押出機とでPVC基材上に例1に従って作製されたアクリルキャップストックブレンドを共押出しした。
【0098】
PVC基材押出機は、単軸スクリュー押出機であり、168℃(供給端)~182℃(ダイ端)のバレル温度分布で1分当たり9回転(RPM)で操業した。
【0099】
アクリルブレンドキャップストック層押出機は170℃(供給端)~210℃(ダイ端)のバレル温度分布の単軸スクリュー押出機であった。分布の共押出しのダイ温度を165及び200℃に設定した。
【0100】
例1に従って作製された各キャップストック組成物のダイ温度165℃及び200℃で作製された終了後の特性の光沢度及び衝撃性を測定した。
【0101】
厚さ0.006インチ~0.007インチのキャップストック層及び厚さ0.062インチ~0.072インチの全体については、その結果を表3に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
これらの結果から、1,2 ジヒドロキシアルカンブレンドの添加剤と大豆ポリオール-ポリオールポリエステルとが押出し形材のキャップ層の光沢度及び衝撃性強度の両方が大幅に改良されたことは明らかである。更に、1,2 ジヒドロキシアルカンブレンドと大豆ポリオール-ポリオールポリエステルとの添加剤が温度処理条件(詳細は下記表3)の幅を広げたので、キャップ層が高温域で押出し可能となって、それは光沢度と同様にキャップストック層の外観も改良された。
【0104】
例3:光沢度改良添加剤含有ブレンドの分解温度
熱分解温度は、材料が劣化し始める前にどのくらいの温度で押出されるかの目安を提供するという意味で、プラスチックの押出成形の熱操業ウィンドウを決定するのに便利な方法である。
【0105】
例1に従って作製されたキャップストック層ブレンド組成物2及び組成物Aの熱分解温度を測定し比較した。その結果を下記表4に示す。
【0106】
【表4】
【0107】
これらの結果から、ポリオールポリエステルの添加は、アクリルキャップストックの分解温度を約10℃上げたことは明らかである。上述したように、この効果はまた、ポリマーが分解されずに、高温域で押し出すことで改善された光沢度を達成できるように、これらの材料の処理温度条件の幅を広げるのに有用である。予想されるように、ポリオールの添加がキャップストック層と基材層の間の密着性を低下させなかったことも重要である。
【0108】
例4:キャップストック層添加剤含有量
本発明によれば、下記キャップストック層のポリマーブレンドを調製し、異なる量の光沢度改良添加剤をそれぞれ含んでいた。比較例では光沢度改良添加剤を含まないポリマーブレンドも調製した。これらのキャップストック配合は表5に示す。
【0109】
【表5】
【0110】
これらのアクリルブレンドキャップ層配合は、例1と同じ条件を用いて上記表5に示す成分を溶解ブレンドすることで調製された。
【0111】
作製されたアクリルキャップストックブレンドは、カスタムメイドの1インチ×4インチのダイと2つの押出機(基材層押出機とキャップストック層押出機)を用いて、PVC基材上に共押出しされた。
【0112】
PVC基材押出機は168℃(供給端)~182℃(ダイ端)のバレル温度分布で1分当たり8回転数(RPM)で操業する単軸スクリュー押出機であった。
【0113】
アクリルブレンドキャップストック層の押出機は、187℃(供給)~210℃(ダイ端)のバレル温度分布の単軸スクリュー押出機であった。分布の共押出しのダイ温度を168℃及び185℃に設定した。
【0114】
光沢を、作製したキャップストック組成物のそれぞれに185℃のダイ温度で作製した最終分布に呈した。その結果は、0.007インチ~0.009インチの間の厚さのキャップストック層にて表5に示される。これらの結果から、大豆ポリオール-ポリオールポリエステルは押出し形材のキャップ層の光沢度を大幅に改良したことは明らかである。
【0115】
本発明における様々な例示的態様をまとめると以下の通りである。
【0116】
1モル当たり200グラムを超える分子量を持つ少なくとも1種の極性ポリマーと少なくとも1種の光沢度改良添加剤とを含む組成物が開示されている。光沢度改良添加剤は少なくとも1種である、官能基含有直鎖アルカン、官能基含有分岐アルカン、官能基含有脂肪酸エステル、又はこれらの任意の混合物である。光沢度改良添加剤はこれらの官能基を少なくとも1種である、ビシナルジオール、ヒドロキシリン酸トリエステル、ヒドロキシエステル、ヒドロキシエーテル、ヒドロキシアミノ、ヒドロキシスルフィド、ヒドロキシニトリル、ヒドロキシアミン、末端アルコール、チイラン、ケトン、及び環状カーボネートを含んでよい。
【0117】
直鎖又は分岐ヒドロキシアルカンは、少なくとも1種のビシナルジオール基を有しうる。この直鎖又は分岐ヒドロキシアルカンは、1,2-ジヒドロキシアルカンであってよい。
【0118】
組成物は、光沢度改良添加剤として、1モル当たり200グラムを超える重量平均分子量を持つ少なくとも1種の脂肪酸エステルを含みうる。この脂肪酸エステルは、少なくとも2種のヒドロキシル基を含んでよく、動植物油から得られうる。動植物油から得られた少なくとも2つのヒドロキシル基を有する脂肪酸エステルは、水性酸又は水性塩基の少なくとも1種でエポキシ基含有動植物油の反応生成物として合成されうる。
【0119】
エポキシ基含有動植物油は、以下の任意の1種又は混合物でよく、すなわち、エポキシ基含有藻類油、エポキシ基含有キャノーラ油、エポキシ基含有ココナッツ油、エポキシ基含有ひまし油、エポキシ基含有トウモロコシ油、エポキシ基含有綿実油、エポキシ基含有フラックス油、エポキシ基含有魚油、エポキシ基含有ブドウ種子油、エポキシ基含有ヘンプ油、エポキシ基含有ジャトロファ油、エポキシ基含有ホホバ油、エポキシ基含有マスタード油、エポキシ基含有キャノーラ油、エポキシ基含有パーム油、エポキシ基含有パームステアリン、エポキシ基含有なたね油、エポキシ基含有サフラワー油、エポキシ基含有大豆油、エポキシ基含有ひまわり油、エポキシ基含有トール油、エポキシ基含有オリーブ油、エポキシ基含有獣脂、エポキシ基含有豚脂、エポキシ基含有鶏脂、エポキシ基含有亜麻仁油、エポキシ基含有桐油、エポキシ基含有亜麻仁油である。
【0120】
組成物は、極性ポリマーの質量基準で2~40質量%の間の光沢度改良添加剤を含み得る。
【0121】
組成物を、BYKガードナーマイクロ-グロス75°グロスメータを用いて測定した場合、75°光沢度が53以上でありうる。代替又は追加として、組成物を、BYKガードナーマイクロ-トリ-グロス20°/60°/85°グロスメータを用いて測定した場合、60°光沢度が12以上でありうる。
【0122】
更に、組成物は衝撃性改良添加剤を含んでよい。好適な添加剤は、線状ブロックコポリマー、コアシェルポリマー及びそれらの混合物である。この衝撃性改良添加剤の有用な量は、極性ポリマー質量基準で20~60質量パーセントの間である。
【0123】
極性ポリマーは、少なくとも次の1種でありうる:アクリルポリマー、アクリロニトリルポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、グリコール-変性ポリエステル(PETG)、フルオロポリマー、若しくはそれらのコポリマー、又はそれらの混合物である。有利には、極性ポリマーはアクリルポリマー又はアクリロニトリルポリマーである。これらのポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー又は混合物でありうる。好適なモノマーは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソ-オクチルメタクリレート、イソ-オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリロニトリル、シアン化ビニル化合物、スチレンの極性誘導体、及びそれらのモノマーの混合物である。極性ポリマーは有利には、メチルメタクリレートのコポリマーであり且つ1種以上の炭素数1~4の2~16質量パーセントであるアクリルポリマーであってよい。
【0124】
また、少なくとも1種のキャップストック層及び少なくとも1種の基材層を有する多層複合構造体が開示されている。多層複合構造体は外層及び内層を有し、その外層は外表面を有する。キャップストック層は外層であり、且つ基材層が内層である。キャップストック層は、1モル当たり200グラムを超える分子量を有する少なくとも1種の光沢度改良添加剤を組み込む少なくとも1種の極性ポリマーからなる。この光沢度改良添加剤は、少なくとも次の1種である:官能基含有直鎖アルカン、官能基含有分岐アルカン基、官能基含有脂肪酸エステル及びそれらの混合物である。光沢度改良添加剤の官能基は、少なくとも1種でよく、ビシナルジオール、ヒドロキシリン酸トリエステル、ヒドロキシエステル、ヒドロキシエーテル、ヒドロキシアミノ、ヒドロキシスルフィド、ヒドロキシニトリル、ヒドロキシアミン、末端アルコール、チイラン、ケトン、及び/又は環状カーボネートである。好適な複合構造体における基材層は、アクリルポリマー、スチレンポリマー、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)コポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)ポリマー、メチルメタクリレートアクリロニトリルブタジエンスチレン(MABS)コポリマー、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)コポリマー、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、木材/ポリマー複合材、ポリエステル、又はこれらの任意の材料の混合物である。
【0125】
キャップストック層をBYKガードナーマイクロ-グロス75°グロスメータを用いて測定した場合、75°光沢度が少なくとも53である。代替又は追加として、キャップストック層をBYKガードナーマイクロ-トリ-グロス20°/60°/85°グロスメータを用いて測定した場合、60°光沢度が12以上である。
【0126】
円錐型チップでガードナー衝撃性試験によって測定された場合、キャップストック層の破損エネルギー(MFE)衝撃性強度が少なくとも0.7in-lb/milである。
【0127】
本明細書中、組成物は、少なくとも1種の極性ポリマー及び少なくとも1種の光沢度改良添加剤を含んでいる。光沢度改良添加剤は、少なくとも次の1種である:少なくとも2種のヒドロキシル基を含有し1モル当たり200グラムを超える分子量を持つヒドロキシアルカン、少なくとも2種のヒドロキシル基を含有し1モル当たり200グラムを超える分子量を持つポリオールポリエステル、及び/又はこれらの化合物の混合物である。
【0128】
いくつかの実施形態では、本明細書の発明は、組成物またはプロセスの基本的かつ新規な特性に実質的に影響を与えない任意の要素を除外するものとして解釈され得る。更に、いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で指定されていない任意の要素を除外するものと解釈することができる。
【0129】
本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書に例示および記載されているが、本発明は、示された詳細に限定されることを意図していない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の領域および範囲内で、本発明から逸脱することなく、詳細に様々な修正を加えることができる。
図1