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  • 特許-合成樹脂製キャップ 図1
  • 特許-合成樹脂製キャップ 図2
  • 特許-合成樹脂製キャップ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】合成樹脂製キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/04 20060101AFI20230816BHJP
   B65D 41/34 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B65D41/04 200
B65D41/34 110
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020546755
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2019030818
(87)【国際公開番号】W WO2020054259
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018171089
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 靖文
(72)【発明者】
【氏名】川村 伸生
(72)【発明者】
【氏名】小野 淳史
(72)【発明者】
【氏名】梅木 慎吾
【審査官】岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-068236(JP,A)
【文献】特表2001-511744(JP,A)
【文献】米国特許第06126027(US,A)
【文献】特開2014-069828(JP,A)
【文献】特開2009-107704(JP,A)
【文献】国際公開第2012/020637(WO,A1)
【文献】特開2013-107677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/04
B65D 41/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天壁と、この天壁の外周部から下方に向かって延び、容器口部の雄ねじに螺合する雌ねじを有するスカート壁とを備え、前記天壁の下面には、前記容器口部の内周面に密着する環状の中足と、前記容器口部の外周面に密着する環状の外足とを一体的に形成してある合成樹脂製キャップであって、
前記スカート壁の内周面は、上側から、湾曲して前記外足の外周面に繋がる折り返し部と、下側ほど内径が大となり縦断面形状が円弧状である傾斜部と、内径が一定のストレート部とを有し、前記傾斜部は前記折り返し部よりも上下幅が大となっていて、
前記外足の外周面は、上側から、湾曲して前記スカート壁の内周面に繋がる折り返し部と、下側ほど内径が小となり、該外周面の大半を占める傾斜部とを有し、
前記スカート壁の前記折り返し部と前記外足の前記折り返し部とは、縦断面視において同一円周上に位置するように連なる状態で構成され、その曲率半径は、前記スカート壁の前記傾斜部の縦断面視の曲率半径よりも小さく、
前記天壁の外周部の天面は外側ほど低くなるように湾曲し、該天壁の中央部の天面は前記外周部の内周端から天面中心に向かってフラットに延び、
前記天壁の下面において前記外足の内側に連なる部位よりも二つの前記折り返し部の境界を下方に位置させ、
前記天壁の下面において前記外足の内側に連なる部位は前記中央部に対応する位置にあり、前記境界は前記外周部に対応する位置にあることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項2】
前記外足の内周面は下側に向かって拡径し、鉛直面に対する前記外足の内周面の傾斜角が10°~16°である請求項1に記載の合成樹脂製キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、飲料物等の内容物を収容する容器の口部に装着される合成樹脂製キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の合成樹脂製キャップとして、天壁(頂板部)とその周縁から降下したスカート壁(スカート状側壁)とを有するキャップ本体を備え、天壁内面に、容器口部の内面に密着する中足(インナーリング)と、容器口部の外面に密着する外足(アウターリング)とが形成されたものが知られている(特許文献1)。
【0003】
斯かるキャップでは、容器口部の内外面に中足及び外足が密着し、容器内部の密封性が確保されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-9853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のキャップでは、図3(A)に示すように、キャップ本体の内面においてスカート壁の上端から外足の付け根にかけて延びる折り返し部50の縦断面視が比較的角張っているため、応力が集中して割れが生じ易いという問題がある。なお、こうした割れは、容器の密封性の低下に繋がることにもなる。
【0006】
そこで、図3(B)に示すように、上記折り返し部50の縦断面視を一定の曲率半径を持つ円弧状とすることも考えられるが、特にスカート壁の薄肉化を図った場合に、割れ防止の点で対策が不十分となる恐れがある。
【0007】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、割れ防止に有効であり、ひいては密封性を高めることが可能な合成樹脂製キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る合成樹脂製キャップは、天壁と、この天壁の外周部から下方に向かって延び、容器口部の雄ねじに螺合する雌ねじを有するスカート壁とを備え、前記天壁の下面には、前記容器口部の内周面に密着する環状の中足と、前記容器口部の外周面に密着する環状の外足とを一体的に形成してある合成樹脂製キャップであって、前記スカート壁の内周面は、上側から、湾曲して前記外足の外周面に繋がる折り返し部と、下側ほど内径が大となり縦断面形状が円弧状である傾斜部と、内径が一定のストレート部とを有し、前記傾斜部は前記折り返し部よりも上下幅が大となっていて、前記外足の外周面は、上側から、湾曲して前記スカート壁の内周面に繋がる折り返し部と、下側ほど内径が小となり、該外周面の大半を占める傾斜部とを有し、前記スカート壁の前記折り返し部と前記外足の前記折り返し部とは、縦断面視において同一円周上に位置するように連なる状態で構成され、その曲率半径は、前記スカート壁の前記傾斜部の縦断面視の曲率半径よりも小さく、前記天壁の外周部の天面は外側ほど低くなるように湾曲し、該天壁の中央部の天面は前記外周部の内周端から天面中心に向かってフラットに延び、前記天壁の下面において前記外足の内側に連なる部位よりも二つの前記折り返し部の境界を下方に位置させ、前記天壁の下面において前記外足の内側に連なる部位は前記中央部に対応する位置にあり、前記境界は前記外周部に対応する位置にある(請求項1)。
【0009】
上記合成樹脂製キャップにおいて、前記外足の内周面は下側に向かって拡径し、鉛直面に対する前記外足の内周面の傾斜角が10°~16°であってもよい(請求項2)。
【発明の効果】
【0010】
本願発明では、割れ防止に有効であり、ひいては密封性を高めることが可能な合成樹脂製キャップが得られる。
【0011】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の合成樹脂製キャップでは、スカート壁において外足に連なる部分の肉厚が大きくなるのでストレス(応力)が掛かった際における割れの発生を効果的に防止することができる。
【0012】
請求項2に係る発明の合成樹脂製キャップでは、外足の付け根付近を肉厚にして密封性の向上を図ることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る合成樹脂製キャップの構成を概略的に示す底面図、(B)は(A)のA-A線切断図である。
図2図1(A)のB-B線切断図である。
図3】(A)~(C)は、従来例と本発明の合成樹脂製キャップを比較して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0015】
図1(A)及び(B)、図2に示す合成樹脂製キャップ(以下、キャップという)1は、例えばペットボトル等の容器の口部M(図2参照)に装着されて使用されるものであり、コンプレッション成形又はインジェクション成形によって、ポリエチレンで一体的に成形されている。なお、キャップ1を形成する素材は、特に限定されるものではなく、本実施形態で用いたポリエチレンの他、ポリプロピレン等が好適に用いられる。
【0016】
また、図1(A)及び(B)に示すように、キャップ1は、平面視において略円形状の天壁2と、この天壁2の外周部から下向きに延びる略円筒状のスカート壁3を有している。ここで、スカート壁3の外周面にはローレット溝4を、内周面には雌ねじ5を設けてあり、この雌ねじ5は容器口部の外周に形成された雄ねじM1(図2参照)に結合(螺合)可能である。
【0017】
そして、容器口部Mの雄ねじM1にスカート壁3の雌ねじ5が結合するようにキャップ1を回転させて容器口部Mに装着すると、天壁2の内面(下面)に連設された環状の中足(インナーリング)6、環状リブ7及び環状の外足(アウターリング)8が容器口部Mに密着し、これにより、容器口部が密封された状態となる(図3参照)。すなわち、図2に仮想線で示すように、キャップ1が容器口部Mに装着された状態では、中足6は容器口部M内に差し込まれて容器口部Mの内周面に密着し、環状リブ7は容器口部Mの環状の上端面に密着し、外足8は容器口部Mの外周面に密着するように構成されている。
【0018】
また、キャップ1は、未開封(開栓が一度もされていないこと)を証明する機能を有するピルファープルーフキャップであり、容器口部Mに装着された未開封のキャップ1の開封時(最初の開栓時)に、雄ねじM1と雌ねじ5の結合が解除されるようにキャップ1を回転させると、キャップ1は容器口部Mから離脱するが、スカート壁3の下部に連結されたタンパーエビデンスバンド(以下、単に「バンド」という)9は容器口部Mに残留するように構成されている。
【0019】
すなわち、スカート壁3の下部には、スカート壁3の全周にわたって延びる環状弱化部10を介してバンド9を連結してあり(図3参照)、環状弱化部10は、スカート壁3とバンド9との境界の内周側に存在する複数のブリッジ10aと、スカート壁3とバンド9とを上下に画するようにスカート壁3及びバンド9の周方向に延びるスリット10bとで構成され、ブリッジ10aが所定の力で引っ張られると破断するように、ブリッジ10aの一部(外周部分)もスリット10bで切断されている。
【0020】
また、バンド9の内周側には、内向きに突出する係止片(フラップ)11を、周方向に間隔をおいて複数(本例では8個)設けてある(図1図2参照)。各係止片11は、キャップ1が容器口部Mに装着された状態で、容器口部Mの外周において雄ねじM1よりも下方に形成された環状突起(ビード部)M2の略下側へ位置し、開栓操作によって環状突起M2に係止する(図3参照)。すなわち、係止片11は、環状突起M2に下方から係止可能に構成され、開封の際に、環状弱化部10より上方にあるキャップ本体部(スカート壁3及び天壁2)は容器口部Mから離脱し、環状弱化部10より下方にあるバンド9は容器口部Mに残留し、これに伴って環状弱化部10は破断する。
【0021】
ここで、バンド9はキャップ本体部(スカート壁3及び天壁2)と一体成形され、バンド9に設けられる係止片11は、図2に示すように上向きに突出する状態となる。
【0022】
そして、本実施形態では、図2中の拡大図に示すように、スカート壁3の内周面は、上側から、湾曲して外足8の外周面に繋がる折り返し部12と、下側ほど内径が大となる傾斜部13と、内径が一定のストレート部14とを有し、傾斜部13は折り返し部12よりも上下幅が大となっている。具体的には、折り返し部12の上下幅は0.05mm~0.3mm、傾斜部13の上下幅は0.5mm~2.0mmとなるように設けることが考えられる。
【0023】
また、図2中の拡大図に示すように、外足8の外周面は、上側から、湾曲してスカート壁3の内周面に繋がる折り返し部15と、下側ほど内径が小となる傾斜部16とを有し、スカート壁3の折り返し部12と外足8の折り返し部15とは、縦断面視において同一円周上に位置するように構成され、その曲率半径は、スカート壁3の傾斜部13の縦断面視の曲率半径よりも小さい。本例では、折り返し部12,15の縦断面視の曲率半径は0.1mm、傾斜部13の縦断面視の曲率半径は3mmである。
【0024】
このような構成により、本実施形態のキャップ1では、スカート壁3において外足8に連なる部分の肉厚が大きくなるのでストレス(応力)が掛かった際における割れの発生を効果的に防止することができる。すなわち、図3(C)は、本実施形態のキャップ1の要部を示し、この図において破線は同図(B)のスカート壁3を示している。そして、同図(B)の例では、スカート壁3から外足8にかけての折り返し部50を縦断面視において同一円周上に位置するように湾曲させているが、本例のキャップ1のように傾斜部13を設けていない分、その折り返し部50の曲率半径が大きくなり、それだけスカート壁3において外足8に連なる部分の肉厚が小さくなる。これに対して、傾斜部13を設けた本例のキャップ1では、同図(C)に示すように、スカート壁3から外足8にかけての折り返し部12,15を縦断面視において同一円周上に位置するように湾曲させるに際し、その折り返し部12,15が占める領域が狭くなるとともに、ストレート部14と折り返し部12との間に傾斜部13を設けた分だけスカート壁3を厚肉になる。
【0025】
また、外足8の内周面は下側に向かって拡径し、その勾配θ(図2中の拡大図参照)は10°以上、好ましくは12°~16°である。このような構成により、外足8の付け根付近を肉厚にして密封性の向上を図ることが容易となる。さらに、この効果は、天壁2の下面において外足8と環状リブ6の間の部位よりも、外足8の折り返し部15とスカート壁3の折り返し部12との境界を下方に位置させ、外足8が外側に倒れ難くしてあることによって増強される。しかも、この密封性の向上は、天壁2において中足6の内周側の部位より外周側の部位(特に天壁2における中足6と外足8との間の部位)を厚肉にしたことによっても増強される。
【0026】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0027】
例えば、上記実施の形態では、傾斜部13の縦断面形状を円弧状としているが、これに限らず、例えば、傾斜部13の縦断面形状を下側ほど外側に位置するように一定の勾配で傾斜する形状としてもよい。すなわち、傾斜部13は、縦断面視において、折り返し部12,15と同一円周状に位置せず、折り返し部12よりも緩やかな勾配で、かつ、折り返し部12よりも広範囲にわたって下側に向かって拡径していればよい。
【0028】
本明細書で挙げた変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 合成樹脂製キャップ
2 天壁
3 スカート壁
4 ローレット溝
5 雌ねじ
6 中足
7 環状リブ
8 外足
9 タンパーエビデンスバンド
10 環状弱化部
10a ブリッジ
10b スリット
11 係止片
12 折り返し部
13 傾斜部
14 ストレート部
15 折り返し部
16 傾斜部
50 折り返し部
M 容器口部
M1 雄ねじ
M2 環状突起
θ 勾配
図1
図2
図3