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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】放射線硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/46 20060101AFI20230816BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230816BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20230816BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20230816BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20230816BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20230816BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20230816BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230816BHJP
   C08G 63/682 20060101ALI20230816BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230816BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230816BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230816BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C08F2/46
C09D7/65
C09D133/06
C09D201/02
C09J4/00
C09J167/00
C09D11/00
C09J11/06
C08G63/682
C08F2/44 C
B32B27/30 A
B32B27/36
C09D167/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020551459
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2019057015
(87)【国際公開番号】W WO2019185431
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】18164290.1
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505365965
【氏名又は名称】オルネクス ベルギー エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレイマンス、ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ホレン、ユルゲン
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-517363(JP,A)
【文献】特表2014-517086(JP,A)
【文献】特表2014-516368(JP,A)
【文献】特開昭58-091714(JP,A)
【文献】特表2016-522283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
C08G 63/00-64/42
C09D 101/00-201/10
C09J 9/00-201/10
C09D 1/00-10/00
C09J 1/00-5/10
B32B 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含む放射線硬化性成分と、
(II)
(A)ビスフェノールA誘導体化合物を含まず(当該ビスフェノールA誘導体化合物は水素化ビスフェノールAを包含する)、環状エーテルポリオール化合物を含まないポリオール成分であって、環状で、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するポリオール化合物(Ai)を含むポリオール成分、ならびに
(B)少なくとも1つの塩素基および少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物(Bi)を含むポリカルボン酸成分、
(C)任意選択で、少なくとも1つのモノアルコール化合物、
(D)任意選択で、少なくとも1つのモノカルボン酸化合物、
(E)任意選択で、塩素基を含まない少なくとも1つのポリカルボン酸化合物
から調製される塩素化ポリエステル成分と、
(III)任意選択で、少なくとも2つの放射線硬化性エチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのオリゴマー化合物を含む追加の放射線硬化性成分と
を含む放射線硬化性組成物であって、
前記ポリオール成分(A)が少なくとも5重量%の1つまたは複数の環状ポリオール(Ai)を含み、
前記塩素化ポリエステル(II)の塩素含有量が5~75%の間に含まれ、
この放射線硬化性組成物は、ビスフェノールAおよびビスフェノールA誘導体化合物(水素化ビスフェノールAを包含する)のいずれも含まない、放射線硬化性組成物。
【請求項2】
前記ポリオール成分(A)が、非環式脂肪族ポリオール化合物(Aii)をさらに含この非環式脂肪族ポリオール化合物(Aii)が任意選択で少なくとも1つのエーテル官能基を含む、請求項1に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項3】
前記ポリオール成分(A)が少なくとも20重量%の1つまたは複数の環状ポリオール(Ai)を含む、請求項2に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項4】
前記環状ポリオール化合物(Ai)が1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項5】
前記化合物(Bi)がクロレンド酸を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項6】
前記ポリカルボン酸化合物(E)がフタル酸を含む、請求項5に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項7】
ヒドロキシル基とカルボキシル基との当量比が1.0を超える、請求項1~6のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項8】
前記塩素化ポリエステル(II)が、500~5000ダルトンの間に含まれる数平均分子量を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項9】
前記エチレン性不飽和化合物(I)が、ジ(メタ)アクリラートおよび/またはトリ(メタ)アクリラートおよび/またはテトラ(メタ)アクリラートおよび/またはペンタ(メタ)アクリラートおよび/またはヘキサ(メタ)アクリラートから選択される少なくとも1つの(メタ)アクリル化化合物を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項10】
前記塩素化ポリエステル(II)の塩素含有量が10~30%である請求項1~9のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項11】
以下のリスト:光開始剤、顔料、湿潤剤、顔料分散剤、レベリング剤、阻害剤、分散剤、安定剤、消泡剤、フィラーの中から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項12】
前記オリゴマー化合物(III)が、以下の基:エステル、エーテル、ウレタン、エポキシ、アクリル、アミノ基のうちの1つまたは複数を含む骨格を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物を含む接着剤、コーティング、インクまたはワニス組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の放射線硬化性組成物で部分的にまたは完全にコーティングされた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラスチック基板を含むさまざまな基板上のコーティングなどの使用に適した放射線硬化性組成物、これらの組成物の調製およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線硬化性組成物は、食品包装製品を含む多くの異なる用途で使用されている。この分野では当然、健康上の懸念が非常に重要である。
【0003】
今日、ビスフェノールA(BPA)は、さまざまな種類のポリマーを製造するための出発反応物質として、食品包装分野を含む化学産業で広く使用されている。明らかに、BPAの残留物が、BPAで作られた材料に保存されている食品および飲料に少量移行するおそれがある。BPAまたはその誘導体は潜在的にいくらかの毒性を有する可能性があるため(内分泌、変異原性、生殖毒性または発がん性効果が疑われる)、BPAの安全性は疑問視されている。したがって、化学産業、製造業者、消費者および川下使用者は代替品を探している。例えば、ネスレ社は、食品包装からBPAを除去することを推奨している。家具メーカーも、BPAベースのポリマーの使用を減らすことを好んでいる。したがって、特にビスフェノールAベースのオリゴマーまたはポリマーに取って代わることができるであろうオリゴマーまたはポリマー性質の化合物に対する市場ニーズがある。
【0004】
国際公開第2012/136588号パンフレットは、エチレングリコールを含むポリオール成分から、ならびにフタル酸および/または無水フタル酸を含むポリカルボキシ成分から調製された、少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物(A)と、少なくとも1つの不活性OH末端ポリエステル(B)とを含む放射線硬化性組成物を記載している。これらのポリエステルを、光開始活性を含む部分を有するようにさらに修飾することができる。これらの組成物は、例えば、リソグラフィーおよびフレキソ用途に使用される。このような組成物は、通常プラスチックなどの基板上で不十分な接着特性を示す。
【0005】
国際公開第2012/136593号パンフレットは、(i)少なくとも1つの環状エーテルポリオールを含むポリオール成分から、および(ii)ポリ酸成分から調製される、少なくとも1つの(メタ)アクリル化化合物(A)と;少なくとも1つの不活性ポリエステル(B)とを含む放射線硬化性組成物を記載している。このような組成物は、硬化したコーティングの不十分な特性(接着、黄変)をもたらす可能性がある。
【0006】
米国特許出願公開第2010/0051333号明細書は、導電性物質およびバインダー成分を含有する活性エネルギー線硬化性インクを記載している。バインダー成分は、塩素化ポリエステルおよび活性線重合性化合物を含有する。塩素化ポリエステルは、BPA由来化合物から得られるEbecryl(登録商標)436またはEbecryl(登録商標)438などの一般的な市販の塩素化ポリエステルから選択される。米国特許第9446430号明細書は、金属食品容器用の保護コーティングとして使用するためのBPAを含まないコーティング組成物を記載している。組成物は熱硬化される。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的の1つは、BPAを含まない新たな放射線硬化性組成物を提供することである。
本発明は、
(I)少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含む放射線硬化性成分と、
(II)
(A)ビスフェノールA誘導体化合物を実質的に含まず、環状エーテルポリオール化合物を実質的に含まないポリオール成分であって、環状で、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するポリオール化合物(Ai)を含むポリオール成分、および
(B)少なくとも1つの塩素基および少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物(Bi)を含むポリカルボン酸成分、
(C)任意選択で、少なくとも1つのモノアルコール化合物、
(D)任意選択で、少なくとも1つのモノカルボン酸化合物、
(E)任意選択で、塩素基を実質的に含まない少なくとも1つのポリカルボン酸化合物
から調製される塩素化ポリエステル成分と、
(III)任意選択で、少なくとも2つの放射線硬化性エチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのオリゴマー化合物を含む追加の放射線硬化性成分と
を含む放射線硬化性組成物を提供する。
【0008】
上に定義される放射線硬化性成分と、塩素化ポリエステル成分とを含むこのような放射線硬化性組成物は、1つまたは複数の利点を提供しながら、BPAを含まない製品を提供することを可能にすることが分かった。
【0009】
塩素化ポリエステル成分(II)を使用すると、以下の利点のうちの1つまたは複数が提供され得る:
・これらが非毒性であると考えられる、
・これらがUV配合物の他の成分(例えば、アクリラート)との優れた溶解性を有することができる、
・これらが低い粘度を有することができる、
・これらが許容される範囲内のガラス転移温度を有することができる、
・これらが少ない黄変を有することができる、
・これらが酸素阻害に対するいくらかの抵抗性を提供することができる、
・これらを金属およびプラスチックなどの難しい基板のためのプライマーに使用することができる、
・これらをインクの接着促進剤として使用することができる。
【0010】
本発明の組成物は、以下の利点のうちの1つまたは複数を提供することができる:
・これらが許容される硬度を得ることを可能にする、
・移行特性が非常に低いため、これらを食品包装に使用することができる、
・これらが非常に優れた流動特性を有することができる、
・これらが高いUV反応性を有する、
・これらが低い粘度を有することができる、
・これらが少ない黄変を有することができる、
・これらが、いったん硬化すると、優れた機械特性(例えば、優れた耐引っかき性)を有することができる、
・これらがインクおよびワニスの製造に極めて適している、
・これらがプラスチックへの改善した接着を示すことができる、
・これらを、例えば金属およびプラスチックなどの難しい基板にプライマーとして使用することができる、
・これらをインクの接着促進剤として使用することができる、
・これらを複合材料のポリマーマトリックスの製造に使用することができる。
【0011】
最終利用者にとっての利点には以下が含まれる:
・BPAの使用を回避することができるため、より安全な解決策、
・より優れた性能のコーティング、
・プラスチックなどの難しい基板へのより優れた接着。
【0012】
本発明による組成物中にビスフェノールAおよびビスフェノールAの誘導体が存在しないことは、現在の市場の推奨に従うことを可能にし、毒性の懸念なしに最終製品を提供することに寄与し得る。
【0013】
ビスフェノールAの誘導体には、典型的には、水素化BPAが含まれ、これは、ビスフェノールを水素化することによって生成される脂環式構造を有する飽和ジアルコールである。水素化BPAはBPAとは異なり、分解を受けにくいと考えられる飽和構造を有するが、水素化BPAはその製造プロセスのためにBPAの残留物を含有するおそれがあり、一部の消費者または最終利用者は、BPAの誘導体が健康上の懸念に関連することが知られていない場合でも、BPAの誘導体の存在を排除することを好むため、水素化BPAも同様に回避することが通常好まれる。
【0014】
ポリオール成分(A)は、環状エーテルポリオール化合物を実質的に含まない。比較例で示されるように、このような環状エーテルポリオール、例えばイソソルビドの存在は、硬化した組成物の性能に有害な効果を及ぼすことが分かった。さらに、環状エーテルの存在は、硬化した組成物の黄変を引き起こすおそれがある。
【0015】
本放射線硬化性組成物中に存在する(塩素化)ポリエステル成分は、「不活性樹脂」と呼ぶことができる。本文脈において、樹脂(ポリマー成分)は、典型的には(メタ)アクリラート基を含有しないまたはほとんど含有せず、よって、放射線硬化プロセス中に共重合できないため、「不活性」であると言われる。「硬化性反応性基」は、本発明の放射線硬化性組成物がUV照射、電子ビームおよび/または化学線などのエネルギー放射に曝露されると起こる硬化反応に関与することができる基である。製造上の欠陥または貯蔵時の分解により、反応基を本質的に含まないと看做されている樹脂が、実際には少数の反応性基を有する場合がある。1キログラム当たり0.1当量以下の硬化性反応性基を有する樹脂が好ましく;0.01以下がより好ましく;0.003以下がさらにより好ましく;0.001以下がなおより好ましく;ないのが最も好ましい。
【0016】
放射線硬化性組成物で使用されるいくつかの一般的な反応性基は、エチレン性不飽和基、特に例えば(メタ)アクリラート基および/またはビニル基の形態の炭素-炭素二重結合である。結果として、(メタ)アクリラートおよび/またはビニル基を大量に含有する樹脂は、本発明における不活性樹脂としては適格ではない。しかしながら、芳香環に含有される二重結合は、放射線硬化中に一般的に不活性であることが知られている。「(メタ)アクリラート基」とは、アクリラート基、メタクリラート基およびこれらの混合物を意味する。アクリラート基は、通常メタクリラート基に対して好まれる。
【0017】
本発明で使用されるポリエステルは、いくつかの塩素基を有する塩素化ポリエステルを含む。これらの塩素基は、重合反応中に発生する化学修飾に関与する可能性があるが、このような塩素化ポリエステルは、エチレン性不飽和基をほとんどまたは全く含有しないため、依然として不活性樹脂と看做される。
【0018】
本発明で使用される塩素化ポリエステル成分(II)は、当技術分野で知られている任意の方法で製造することができるが、通常は開環反応を含み得る重縮合反応を介して得られる。本発明の塩素化ポリエステル(II)は、直接エステル化反応を介して、おそらくワンポット反応を介して調製することができる。典型的には、本発明の塩素化ポリエステル(II)は、
-本明細書で定義されるポリオール成分(A)、
-本明細書で定義されるポリカルボン酸成分(B)、
-任意選択で、塩素化されていてもされていなくてもよいモノアルコール化合物(C)、
-任意選択で、塩素化されていてもされていなくてもよいモノカルボン酸化合物(D)、
-任意選択で、塩素基を実質的に含まない少なくとも1つのポリカルボン酸化合物(E)
から調製される。
【0019】
典型的には、本発明のポリエステル(II)は、化合物(A)、(B)ならびに存在する場合(C)および/または(D)、および/または(E)を、好ましくは無水条件下で、好ましくは120℃~220℃、より好ましくは150℃~200℃の温度で、反応が実質的に完了するまで反応させることによって調製される。プレポリマーの粘度を低下させるために、5~40重量%、好ましくは10~25重量%の溶媒を添加することによって、反応を促進することができる。溶媒は、好ましくはヘプタン、ヘキサンまたはトルエンである。このプロセスの間、エステル化反応を加速するために触媒を使用することが一般的である。典型的な触媒は、成分(II)の総重量に対して、典型的には約0.1~約2wt%に及ぶ濃度で使用されるアルキル-および/またはアリールスルホン酸などの強酸、あるいは典型的には0.01~0.1wt%に及ぶ濃度で使用される有機金属触媒である。任意選択の典型的な阻害剤は、化合物(II)の総重量に対して、典型的には約0.01~約0.5wt%に及ぶ濃度で使用される、ヒドロキノン、メチルエーテルヒドロキノンなどのフェノール系抗酸化剤である。
【0020】
「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシル基を有する有機化合物を示すことを意図している。ジオールが通常好ましい。
【0021】
環状ポリオール(Ai)は、少なくとも1つの環状基および少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物である。
【0022】
本発明で使用されるポリオール成分(A)は、少なくとも1つの環状基および少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する少なくとも1つの化合物(Ai)を含む。上記のように、ポリエステル成分が、BPAまたはBPA誘導体化合物を全く含まず、環状エーテルポリオール化合物を実質的に含まない化合物から調製されることが重要である。よって、化合物(Ai)は、環状エーテル基ではない環状基を含有する。
【0023】
好ましくは、ポリエステル成分(II)を調製するために使用されるポリオール成分は、5~100重量%(wt%)の1つまたは複数の環状ポリオール(Ai)、および任意選択で0~95wt%の他の適切なポリオールを含む。典型的には、このポリオール成分は、ポリオール成分(A)の総重量に対して、少なくとも10wt%、多くの場合少なくとも20wt%、通常少なくとも30wt%、より典型的には少なくとも40wt%の1つまたは複数の環状ポリオール(Ai)を含む。
【0024】
好ましい環状ポリオール(Ai)は、以下の中から選択される:1)脂肪族環系ポリオール、例えば:トリシクロデカンジメタノール(TCDM);2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM);3(4),8(9)-ビス-(ヒドロキシメチル)-トリシクロ-[5.2.1.02,6]デカン(TCDM);1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、1,3-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、1,3-およびシクロオクタンジオール、ノルボルナンジオール、ピナンジオール、デカリンジオール;1,2-ジシクロヘキシル-エタン-1,2-ジオール、二環(2.2.2)オクタン-1,4-ジオール、または2)芳香族環状ジオール、例えば1,2-ベンゼンジメタノール;1,3-ベンゼンジメタノール;1,4-ベンゼンジメタノール。特に好ましい成分(Ai)は、1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジオール、CHDMおよび1,3-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンである。
【0025】
任意選択で、環状ポリオールとは異なる1つまたは複数の他のポリオールを環状ポリオールに加えて使用して、本発明で使用されるポリエステル(II)を調製してもよい。他のポリオールの量は、典型的にはポリオール成分の総重量に対して、0~95重量%(wt%)で変化する。典型的には、他のポリオールのこの量は、最大で90wt%、通常は最大で80wt%である。多くの場合、この量は最大で70wt%、さらに多くの場合最大で60wt%である。
【0026】
他のポリオールとは、特に、環状ポリオールとは異なる、特に1,4-シクロヘキサンジメタノールとは異なるポリオールを示すことを意図している。本発明の文脈において使用され得る他のポリオールの例としては、それだけに限らないが、(ポリ)エチレングリコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールなど);(ポリ)プロピレングリコール(例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールなど);1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPD);2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール;1-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール;2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール;1,3-ブチレングリコール;1,4-ブタンジオール;2,3-ブタンジオール;2-ブチル-2-エチル-1,3プロパンジオール(BEPD);ペンタンジオール;2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール;1,3-ペンタンジオール;2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール;ヘキシレングリコール;1,6-ヘキサンジオール;3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-プロパノアート(ヒドロキシルピバリルヒドロキシピバラート(HPHP);ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバラート;2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(TMPD);トリメチロールプロパン;グリセロール、ペンタエリスリトール;ジペンタエリスリトール、これらのいずれかのエトキシル化および/またはプロポキシル化形態(例えば、プロポキシル化グリセロールなど);ならびにこれらの(上記のいずれかの)混合物が挙げられる。多くの場合、ポリオールはジオールである。しかしながら、より高い官能性のポリオールを使用してもよい。
【0027】
本発明の成分(B)を調製するために使用されるポリカルボン酸成分は、1つまたは複数の「ポリ酸」を含有することができる。「ポリ酸」という単語は、カルボン酸基とも呼ばれる、2つ以上のカルボキシル基を有する有機化合物を示すことを意図している。ポリ酸の対応する無水物または適切な対応するジアルキルエステルを使用してもよい。以下の説明において、「酸」または「ポリ酸」という単語は、文脈に応じて、酸および/または酸の誘導体、例えば無水物を示すために使用される。無水物は通常、ポリ酸、通常は二酸の縮合生成物である。ジアルキルエステルを使用する場合、ジメチルエステルおよび/またはジエチルエステルが好ましい。好ましいポリ酸は二酸(すなわち、1分子当たり2つのカルボン酸基を有するポリカルボン酸)である。
【0028】
本発明の実施においては、ポリ酸が無水物であってもよい。
【0029】
不活性ポリエステル(II)をエステル交換を介して調製する場合、ポリ酸を(フタル酸ジアルキルエステルなどの)ポリ酸ジアルキルエステルによって置換する。一般的に、このエステルのアルキル鎖は、1~20個、好ましくは1~8個、より好ましくは1~4個の炭素原子を有する。ジメチルエステルおよび/またはジエチルエステルが通常好ましい。しかしながら、好ましくは、不活性ポリエステル(II)は、エステル化反応を介して得られる。
【0030】
好ましくは、飽和および/または芳香族ポリ酸から選択されるポリ酸を使用する。芳香環に含有される二重結合は、放射線硬化中に一般的に不活性であることが知られている(上記参照)。
【0031】
本発明のポリエステル(II)を調製するために使用され得るポリ酸の例としては、それだけに限らないが、フタル酸;無水フタル酸;クロレンド酸;クロレンド酸無水物;コハク酸;アジピン酸;シュウ酸;グルタル酸;ピメリン酸;マロン酸;ブタン二酸;グルタル酸;スベリン酸;アゼライン酸;セバシン酸;1,12-ドデカン二酸;コハク酸無水物;アジピン酸無水物;トリメリット酸無水物;ピロメリット酸二無水物;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA);1,3-シクロヘキサンジカルボン酸;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジメチルカルボン酸;クエン酸;酒石酸、トリメリット酸;ピロメリット酸;およびダイマー二酸、例えばEmpol(登録商標)1018またはPripol(登録商標)1013;ならびにこれらの混合物が挙げられる。また、テレフタル酸および/またはイソフタル酸を使用してもよい。
【0032】
フタル酸;無水フタル酸;イソフタル酸;テレフタル酸;アジピン酸;シュウ酸;グルタル酸;マロン酸;ブタン二酸;グルタル酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジメチルカルボン酸;およびこれらの混合物が特に適している。
【0033】
フタル酸;無水フタル酸;イソフタル酸;テレフタル酸;シュウ酸;マロン酸;およびこれらの混合物が好ましい。また、不活性ポリエステル(II)を、エステル交換を介して調製する場合、これらの化合物がそれらの対応するジアルキルエステルで置換されてもよく、ジメチルエステルおよびジエチルエステルが好ましい。
【0034】
ポリカルボン酸成分が、少なくとも1つの塩素基を有する化合物(Bi)を含有することが重要である。好ましくは、化合物(Bi)が少なくとも2つの塩素基を含有する。より好ましくは、これが、各分子に少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの塩素基を含有する。好ましいポリカルボン酸化合物(Bi)は、クロレンド酸無水物(各分子に6つの塩素基を含有する)、ヘキサクロロフタル酸無水物または二酸およびテトラクロロフタル二酸またはテトラクロロフタル酸無水物(各分子にそれぞれ6つおよび4つの塩素基を含有する)である。
【0035】
モノカルボン酸化合物(D)、および/またはモノアルコール化合物(C)は、ポリエステル成分(II)の任意選択のさらなる構築単位である。
【0036】
上記のポリエステル(通常、OH末端またはCOOH末端)を、任意選択で、1つまたは複数のモノカルボン酸化合物(D)および/またはモノアルコール化合物(C)でキャッピングまたは官能化することができる。
【0037】
本発明の第1の変形によると、不活性ポリエステルがキャッピングされておらず、官能化もされていない。
【0038】
本発明の第2の変形によると、不活性ポリエステルを、これらの1つまたは複数のモノカルボン酸、モノアルコールおよび/または塩素を含まないポリカルボン酸化合物(E)とさらに反応させる。不活性ポリエステル樹脂(II)は、さまざまな方法で調製することができる。いずれかの不活性OH末端ポリエステルを最初に調製し、次いで、これを1つまたは複数のモノカルボン酸化合物(D)とさらに反応させる。いずれかの不活性COOH末端ポリエステルを最初に調製し、次いで、これを1つまたは複数のモノアルコール化合物(C)とさらに反応させる。あるいは、全ての成分を混合してワンポット系で反応させる。
【0039】
使用することができる適切なモノアルコール化合物(C)の例は:メタノール;エタノール;イソプロパノール;n-プロパノール;sec-ブタノール;イソブタノール;n-ブタノール;tert-ブタノール;メチルアミルアルコール;2-メチル-1-ブタノール;シクロヘキサノール;またはこれらのいずれかの混合物である。プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールt-ブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルまたはこれらのいずれかの混合物などのグリコールエーテルも使用することができる。
【0040】
使用することができる適切なモノカルボン酸化合物(D)の例は、安息香酸および置換安息香酸、またはこれらの任意の組み合わせである。置換安息香酸の例としては、tert-ブチル安息香酸(4-tert-ブチル安息香酸、3-tert-ブチル安息香酸または2-tert-ブチル安息香酸など)、ナフタレンカルボン酸、4-ジメチルアミノ安息香酸、2-(4-クロロベンゾイル)安息香酸、o-ベンゾイル安息香酸、2-(4-フェニルベンゾイル)安息香酸またはこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0041】
本発明の不活性ポリエステル(II)は、500~5000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有し得る。本発明の不活性ポリエステル(II)は、1000~10000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0042】
分子量(MnまたはMw)は、典型的には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、典型的にはポリスチレン標準を使用して決定される。最も典型的には、MnおよびMwは、以下に記載されるようにGPCによって測定される。
【0043】
化合物(I)、(II)および(III)の総量に基づいて、バインダー中の不活性ポリエステル(II)の量は、一般的に15~85重量%、好ましくは20~80重量%(wt%)に含まれる。より典型的には、この割合が少なくとも30wt%、より好ましくは少なくとも40wt%である。一般的に、これらの量は70wt%を超えず、より好ましくは60wt%を超えない。
【0044】
好ましくは、本発明の不活性ポリエステル(II)を含む硬化材料は、DMA法ASTM D7028-07によって測定した場合、35~100℃に及ぶガラス転移温度(Tg)を有する。典型的には、Tgは少なくとも40℃、通常少なくとも50℃である。典型的には、Tgは最大で160℃、より好ましくは最大で120℃である。
【0045】
塩素化ポリエステル(II)の塩素含有量は、好ましくは、無希釈塩素化ポリエステル(II)の重量の5~75%に含まれる。塩素含有量は、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%である。塩素含有量は、好ましくは最大で50%、好ましくは最大で30%である。より多くの塩素化は原材料のコストを増加させる。さらに、塩素の量は、反応物質の化学構造に応じて制限される。本発明による組成物は、任意選択で、重合反応に参加しない他の不活性樹脂(IV)、例えば国際公開第2002/38688号パンフレット、国際公開第2005/085369号パンフレット、国際公開第2008/015474号パンフレット、国際公開第2008/004002号パンフレット、欧州特許第1411077号明細書および米国特許第5919834号明細書に記載されるものを含んでもよい。「他の」とは、不活性塩素化ポリエステル(II)とは異なることを意味する。このような任意の不活性樹脂(IV)の例としては、典型的には、炭化水素(スチレン系炭化水素樹脂など)、スチレンアリルアルコール、アクリル系樹脂(アクリル(コ)ポリマーなど)、(ポリ)ウレタン樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂および/またはケトン樹脂が挙げられる。適切な不活性樹脂(IV)の特に好ましい例は、国際公開第2012/136591号パンフレットに記載されている。好ましくは、不活性樹脂(IV)は、イソソルビドも他の環状エーテルビルディングブロックも含有しない不活性ポリエステルである。いくつかの例については、例えば国際公開第2012/136588号パンフレットを参照されたい。
【0046】
このような任意の不活性樹脂(IV)またはこれらの混合物の総量は、通常、不活性樹脂(II)および(IV)の総重量に基づいて、30wt%を超えず、好ましくはこの量は20wt%を超えず、より好ましくはこの量は10wt%を超えない。さらに特には、本発明の組成物は、不活性樹脂(IV)を実質的に含まないものであってよい。
【0047】
実質的に含まないとは、それらの量が組成物の総重量に対して、最大で10wt%、典型的には最大で5wt%であることを意味する。本発明の特定の実施形態では、追加の不活性樹脂(IV)が組成物中に存在しない。
【0048】
(I)、(II)、(III)および(IV)の総量に基づいて、不活性樹脂(II)および(IV)の総量は、一般的に20~80重量%である。より典型的には、この割合が少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%である。一般的に、これらの量は75重量%を超えず、より好ましくは55重量%を超えない。
【0049】
組成物のポリエステル部分、すなわち、不活性樹脂(II)および任意選択の不活性樹脂(IV)を含有する部分に属する成分の量(wt%)、好ましくは以下の通りである:
環状ポリオール:好ましくは、成分(II)+成分(IV)に存在する全てのポリオールの総重量の少なくとも5%、好ましくは最大100wt%、
他のポリオール:成分(II)+成分(IV)に存在する全てのポリオールの総重量の好ましくは少なくとも5%、好ましくは最大95wt%、
塩素化ポリ酸または無水物:成分(II)+成分(IV)に存在する全てのポリ酸の好ましくは少なくとも5wt%、好ましくは最大で100%。
【0050】
他の非塩素化ポリ酸/無水物:成分(II)+(IV)に存在するポリ酸/無水物の総重量の好ましくは0wt%超、好ましくは最大95%。
【0051】
本発明による放射線硬化性組成物は、少なくとも1つの放射線硬化性成分(I)と、任意選択で追加の放射線硬化性成分(III)とを含む。成分(I)および(III)は1つまたは複数のエチレン性不飽和基、好ましくは(メタ)アクリラート基を有する、(メタ)アクリル化化合物、より好ましくはアクリル化化合物とも称される化合物を含む。これらは、モノマー、オリゴマー、ポリマーまたはこれらの混合物の形態であり得る。オリゴマーとポリマーは共に繰り返しモノマー単位を含有し、ポリマーはオリゴマーよりも有意に多いモノマー単位を有する。室温で液体であるものが好ましい。適切な化合物のいくつかの例を以下に示す。
【0052】
任意選択の追加の放射線硬化性成分(III)は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基(典型的にはアクリラート基)だけでなく、別の官能基も含む。好ましくは、この官能基が、ウレタン、エステル、エーテル、エポキシ、アミノおよびアクリルの中から選択される。典型的には、成分(III)がポリマーまたはオリゴマーである。
【0053】
本発明で成分(III)として使用することができる(メタ)アクリル化オリゴマーまたはポリマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリラート、ウレタン(メタ)アクリラート、アルコキシル化(メタ)アクリル化オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリラート、アミノ化(メタ)アクリラート、(メタ)アクリル化(メタ)アクリル化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
適切なポリエステル(メタ)アクリラートの例は、EBECRYL(登録商標)860(オルネクス社)などのアクリル化エポキシ化大豆油化合物、EBECRYL(登録商標)870、EBECRYL(登録商標)657、EBECRYL(登録商標)450(オルネクス社)などの脂肪酸含有ポリエステル(メタ)アクリラート、ならびにEBECRYL(登録商標)800、EBECRYL(登録商標)884、EBECRYL(登録商標)810およびEBECRYL(登録商標)830(オルネクス社)などのポリエステル(メタ)アクリラートである。
【0055】
適切なウレタン(メタ)アクリラートの例は、EBECRYL(登録商標)284、EBECRYL(登録商標)264、EBECRYL(登録商標)210、EBECRYL(登録商標)230、EBECRYL(登録商標)1290(オルネクス社)である。適切なアミノ化(メタ)アクリラートの例は、EBECRYL(登録商標)80、EBECRYL(登録商標)81、EBECRYL(登録商標)83、EBECRYL(登録商標)7100、P115などである。
【0056】
化合物(III)は、典型的には、200~5000ダルトンの分子量(MW)、さらに特には重量平均分子量を有する。典型的には、これらの化合物のMWは少なくとも300ダルトン、より好ましくは少なくとも500ダルトンである。典型的には、これらの化合物のMWは最大で2000ダルトン、より好ましくは最大で1000ダルトンである。
【0057】
しかしながら、特定の実施形態では、本発明の組成物がこのような化合物(III)を実質的に含まない。実質的に含まないとは、組成物中の化合物(III)の量が組成物の総重量に対して、最大で10wt%、典型的には最大で5wt%であることを意味する。
【0058】
しかしながら、最も典型的には、組成物中に存在するエチレン性不飽和化合物は、大部分が、室温で液体であり、低分子量を有する成分(I)として存在する。このような化合物は、典型的には、反応性希釈剤と呼ばれる。これらは通常、500ダルトン未満の分子量を有する。典型的には、成分(I)として使用されるこれらの反応性希釈剤はモノマーである。使用されるモノマーは、単官能性および/または多官能性(メタ)アクリラートであり得る。特に、アクリル化形態が使用される。好ましくは、本発明の組成物は、モノ(メタ)アクリラート、ジ(メタ)アクリラートおよび/またはトリ(メタ)アクリラートおよび/またはテトラアクリラートおよび/またはペンタアクリラートおよび/またはヘキサアクリラートから選択される少なくとも1つのモノマー(I)を含む。
【0059】
適切な化合物(I)の例としては、それだけに限らないが、ブチル(メタ)アクリラート、メチル(メタ)アクリラート、イソブチル(メタ)アクリラート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリラート、シクロヘキシル(メタ)アクリラート、n-ヘキシル(メタ)アクリラート、イソボルニル(メタ)アクリラート、イソオクチル(メタ)アクリラート、n-ラウリル(メタ)アクリラート、オクチル/デシル(メタ)アクリラート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、フェノキシエチル(メタ)アクリラート、ノニルフェノールエトキシラートモノ(メタ)アクリラート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリラート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリラート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート(HDD(M)A)、ジまたはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート(DPGD(M)A、TPGD(M)A)、エトキシル化および/またはプロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート(PETI(M)A)ならびにそのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート(TMPT(M)A)ならびにそのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体、ジ-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート(diTMPT(M)A)グリセロールトリ(メタ)アクリラートならびにそのエトキシル化/またはプロポキシル化誘導体、ジアンヒドロヘキシトールのジ(メタ)アクリラート(イソソルビドジ(メタ)アクリラートなど)ならびにそのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリラートならびにそのエトキシル化または/およびプロポキシル化誘導体、脂肪族グリシジルエーテル、特にアルキル鎖が6~24個の炭素原子、より好ましくは8~18個の炭素原子を含むもの、ならびに/あるいは飽和および不飽和カルボン酸のグリシジルエステル、特にアルキル鎖が6~24個の炭素原子、より好ましくは8~18個の炭素原子を含む長鎖アルキルカルボン酸のグリシジルエステルの(メタ)アクリル酸によるエステル化から得られる(メタ)アクリラートが挙げられる。
【0060】
好ましいモノマー(I)は、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート(HDD(M)A)、ジまたはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート(DPGD(M)A、TPGD(M)A)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート(TMPT(M)A)ならびにそのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート(PETI(M)A)ならびにそのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体、グリセロールトリ(メタ)アクリラートならびにそのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体、ジアンヒドロヘキシトールのジ(メタ)アクリラート(イソソルビドジ(メタ)アクリラートなど)などのジおよび/またはトリ(メタ)アクリル化モノマーである。ジプロピレングリコールジアクリラート(DPGDA)、トリプロピレングリコールジアクリラート(TPGDA)および/またはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート(TMPTA)が特に好ましい。別の好ましい化合物(I)は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリラート(DPHA)である。
【0061】
本発明の塩素化ポリエステル成分(II)は、典型的には反応性希釈剤(I)に可溶性である。
【0062】
上記の希釈モノマー(I)を、任意選択でアミンとさらに反応させて、残留遊離(メタ)アクリラート基を有するアミノ(メタ)アクリラートを形成することができる。「残留遊離」とは、アミンとの反応後に残る(メタ)アクリラート基を意味する。アミンとの反応後、1分子当たり2つまたは3つの(メタ)アクリラート基を有するアミノ(メタ)アクリラートが好ましい。(メタ)アクリラート基は、好ましくはアクリラート基である。
【0063】
アミノ(メタ)アクリラートをそのまま本発明の組成物に添加することができるが、不活性ポリエステル(II)と(メタ)アクリル化化合物(III)とのブレンドにアミンを導入することによってその場で形成することもできる。この反応で使用されるアミンは、一般的に第一級アミンおよび第二級アミンから選択される。少なくとも1つの第一級アミノ基(-NH2)を含む第一級アミンおよび/または少なくとも2つの第二級アミノ基(-NH)を含む第二級アミンが一般的に好ましい。
【0064】
適切なアミノ(メタ)アクリラートの例としては、全てオルネクス社から入手可能であるEBECRYL(登録商標)7100、EBECRYL(登録商標)80、EBECRYL(登録商標)81、EBECRYL(登録商標)83、EBECRYL(登録商標)84、EBECRYL LEO(登録商標)10551、EBECRYL LEO(登録商標)10552およびEBECRYL LEO(登録商標)10553が挙げられる。
【0065】
アミノ(メタ)アクリラートおよびアミン誘導体は一般的に、光活性剤として作用し、II型光開始剤、および特にベンゾフェノン誘導体の存在下で硬化速度を高めることができる。
【0066】
成分(I)、(II)および任意選択の(III)の総量に基づいて、(メタ)アクリル化化合物(I)および(III)の総量は、一般的に放射線硬化性組成物の15~85重量%である。より典型的には、この割合が少なくとも20%である。一般的に、これらの量は75重量%を超えず、好ましくは65重量%を超えず、より好ましくは60重量%を超えない。
【0067】
典型的には、放射線硬化性化合物((I)および(III))の総量に対して、希釈モノマーの量は、20~100重量%である。より典型的には、この割合が少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、一般的には100%である。
【0068】
バインダー、さらに特には化合物(I)、(II)および(III)で構成されるブレンドの粘度は、適当なスピンドルおよび剪断速度を用いてコーンおよびプレート型レオメーターを使用して測定すると、25℃で典型的には1000~500000mPa.sに及ぶ。
【0069】
したがって、本発明による組成物を、適切な任意の方法によって調製することができる。これらは通常、添加した(メタ)アクリル化化合物(I)の少なくとも一部に、塩素化ポリエステル成分(II)および存在する場合、(III)を、好ましくは少なくとも20℃、より好ましくは少なくとも30℃、最も好ましくは少なくとも60℃の温度で溶解することによって調製される。温度は、好ましくは150℃を超えず、より好ましくは110℃を超えない。本発明による組成物は、有機溶媒の存在下で調製することができ、これはその後、例えばストリッピングによって組成物から除去される。他の成分を組成物に添加することができる。より好ましくは、溶媒を使用しない。
【0070】
顔料、分散剤または他の添加剤、電荷および光開始剤などの他の化合物を添加することができる。多くの場合、光開始剤、および任意選択で光活性剤が添加される。
【0071】
一般的に、本発明の組成物は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも10wt%、より好ましくは少なくとも15wt%、最も好ましくは少なくとも20wt%の(メタ)アクリル化化合物(I)を含む。組成物中のこのような化合物(I)の量は、通常、85wt%を超えず、好ましくは75wt%を超えず、より好ましくは65wt%を超えない。
【0072】
一般的に、本発明の組成物は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも40重量%の不活性樹脂(II)および(IV)を含む。組成物中の不活性樹脂(II)および(IV)の量は、通常75重量%を超えず、好ましくは65重量%を超えず、より好ましくは55重量%を超えない。
【0073】
典型的には、本発明の組成物は、(I)、(II)、(III)および(IV)の総重量に基づいて、15~85wt%の間の化合物(I)と、85~15wt%の間の不活性樹脂(II)および(IV)とを含む。
【0074】
一般的に、本発明の組成物は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも30wt%、より好ましくは少なくとも40wt%、最も好ましくは少なくとも50wt%の不活性樹脂(II)を含む。
【0075】
本発明の組成物は、典型的には、一般的にポリマー光開始剤であり得る光開始剤の存在下で、紫外線照射によって硬化される。これらはまた、光開始剤を含まない組成物の使用を可能にする、電子ビーム照射によって硬化することもできる。本発明による組成物は、極めて迅速な硬化を提供している。
【0076】
光開始剤は、存在する場合、典型的には、光重合性化合物100質量部当たり0.1~10質量部の量で添加される。適切な光開始剤の例としては、それだけに限らないが、アリールケトン型光開始剤(アセトフェノン、ベンゾフェノン、アルキルアミノベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンゾインジメチルケタール、ベンゾイルベンゾアートまたは[アルファ]-アシルオキシムエステルなど)、硫黄含有光重合開始剤(スルフィドまたはチオキサントンなど)、アシルホスフィンオキシド(アシルジアリールホスフィンオキシドなど)または他の光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤は、その少なくとも2種類を組み合わせた混合物として使用してもよい。さらに、光重合開始剤は、アミンなどの光増感剤と組み合わせて使用してもよい。
【0077】
代替的に、または更に、本発明の組成物は、ベンゾイルペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルペルオキシドなどの少なくとも1つのラジカル重合開始剤を含み得る。
【0078】
本発明の組成物は、必要に応じて、以下の少なくとも1つをさらに含み得る:紫外線吸収剤、光安定剤、抗酸化剤、熱重合阻害剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料(有機着色顔料、無機顔料)、着色染料、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、分散剤、帯電防止剤、防曇剤および/またはカップリング剤。
【0079】
本発明の特定の実施形態では、組成物がコーティング組成物である。コーティング組成物は、透明(例えばラッカーまたはワニス)であってもよいし、着色されていてもよい。本発明のコーティング組成物は、多種多様な用途で、成形品を含む多種多様な基板および物品上で使用することができる。
【0080】
本発明の組成物で処理またはコーティングされ得る基板には、金属、木材、紙、コンクリート、プラスチック(多孔性および非多孔性)、ガラスならびにコーティング表面が含まれる。コーティング組成物が適用される物品または材料は、例えば、1つまたは複数のコーティング層を既に含有していてもよい(例えば、物品または材料が、プライマーまたはベースコートを既に含有していてもよい)。
【0081】
本発明のコーティング組成物は、特に、紙、木材、金属、コンクリートおよびプラスチックに適用することができる。
【0082】
本発明の組成物は、特に、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、BOPP(二軸延伸ポリプロピレン)、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート(PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー等を含むプラスチックへの優れた接着を示した。
【0083】
本発明の組成物は、インクまたはオーバープリントワニスに使用することができる。これを接着剤として使用することもできる。インクは、リソグラフィー、フレキソグラフィーまたはインクジェット用途で使用されるインクであり得る。本発明のインクは、包装産業で使用され得る。
【0084】
硬化時間および条件は、組成物の成分、コーティング膜の厚み、および使用される活性エネルギー線源によって変化し得る。通常、硬化は、約0.1~約60秒間の照射によって達成される。さらに、硬化反応を完了する目的で、活性エネルギー線を照射した後に加熱処理を行ってもよい。
【0085】
本発明の組成物は、それだけに限らないが、刷毛塗り、ディップコーティング、ローラーコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、真空コーティング、フレキソ印刷、グラビア印刷、リソグラフィー印刷、インクジェット印刷などを含む当技術分野で使用される任意の適切な技術によって適用することができる。
【0086】
本発明の組成物は、典型的には、60℃で400~40000mPa・sの範囲の粘度を有する。より好ましくは、この温度での粘度が、400~20000mPa・s、最も好ましくは400~10000mPa・sの範囲である。
【0087】
溶媒を使用してもよいが、本発明の組成物は、典型的には、最大で0.1重量%の溶媒を含む。通常、この量は最大で0.01重量%、より好ましくは最大で0.001重量%である。
【0088】
硬化後の本発明による組成物は、高硬化速度および低粘度と組み合わせて、プラスチック、金属、ガラス、木材、紙などのさまざまな有機基板および無機基板への優れた接着を得ることをさらに可能にする。特に、ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニル、ポリエステルおよびポリアミドフィルムなどのプラスチック基板への接着が優れたものであり得る。プラスチックは、任意の型、例えば、織型または不織型であることができ、多孔性または透過性等であることができる。プラスチックは剛性であり得るが、好ましくは可撓性である。
【0089】
本発明の組成物の利点は、ある(または別の)接着プライマーを必要とせずに、例えばプラスチックへの優れた接着を得ることを可能にすることである。ポリエステル樹脂(II)に官能基をグラフトすることが可能であることにより、接着および反応性をさらに改善することができる。
【0090】
顔料の湿潤が優れているため、本発明の組成物は、特にリソグラフィー、スクリーンおよびフレキソグラフィー用途のためのインク、特にグラビア用のインクを調製するためのインクビヒクルとして有用となる。
【0091】
本発明の組成物は、多種多様な剛性および可撓性グラフィックス、包装およびラベル基板ならびにほとんどのプラスチック、ガラスおよび金属箔上への印刷に特に適している。本発明の組成物は、グラビア、フレキソグラフィーおよびリソグラフィー用途に非常に適している。これらはナロー、ミッドおよびワイドウェブ用途のためのフレキソインクとして最適である。これらはさらに、リソグラフィーインクとしても極めて適している。
【0092】
したがって、本発明の組成物は、インクを調製するためのインクビヒクルとして有用である。よって、インク(ペーストまたは液体)の調製に使用される典型的な成分を添加することができる。これらの化合物は、一般的に、有機顔料および無機顔料、光開始剤、フィラーならびに添加剤から選択される。
【0093】
本発明の組成物で使用することができる顔料は、例えば、ペーストインクまたは液体インクで使用されるあらゆる顔料である。このような顔料のリストは、カラーインデックスに見出すことができる。顔料は、好ましくは組成物の総重量の0~60重量%、より好ましくは1~50重量%で使用される。有用な市販の顔料は、例えばProcess Yellow13(ジアリライドイエロー-チバ社のIrgalite BAW、クラリアント社のPermanent GR)、Process Magenta Pigment57(Bonaカルシウム-サン社のIlobona4BY、IGM社のIrgalite SMA)、Process Blue15.3(銅フタロシアニン-IGM社のIrgalite GLO、クラリアント社のHostaperm Blue B2G)、Process Black7(酸化カーボンブラック-デグサ社のSpecial Black250、Special Black350)である。
【0094】
本発明の組成物で使用可能な光開始剤は、当技術分野で周知である。これらは、α-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、ベンジルジメチル-ケタール、アシルホスフィン、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン、およびこれらのブレンドから選択することができる。これらは0~15重量%で使用される。一般的に、光活性剤は、アミン誘導体とアミノ(メタ)アクリラート、例えば全てオルネクス社から入手可能である、EBECRYL(登録商標)P115、EBECRYL(登録商標)P116、EBECRYL(登録商標)7100、EBECRYL(登録商標)80、EBECRYL(登録商標)81、EBECRYL(登録商標)83、EBECRYL(登録商標)84、EBECRYL LEO(登録商標)10551、EBECRYL LEO(登録商標)10552およびEBECRYL LEO(登録商標)10553から選択される。一般的に、組成物が紫外光によって硬化される場合、光開始剤およびおそらく光活性剤も添加される。しかしながら、組成物は、電子ビーム光線によって硬化させることもでき、この場合、光開始剤も光活性剤も組成物に添加する必要はない。さらに、有利には、光開始活性を有する部分が組成物中に存在する場合、組成物に光開始剤を全くまたはあまり添加する必要がない。例えば、ベンゾフェノン誘導体を、本発明の不活性ポリエステルにグラフトすることができる。
【0095】
添加剤は通常、安定剤、基板湿潤剤、消泡剤、分散剤などの、インクで一般的に使用されるものである。これらの添加剤の総量は通常10%を超えない。
【0096】
フィラーとして、炭酸カルシウム、タルク(ケイ酸マグネシウム)、カオリン粘土(ケイ酸アルミニウム)、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などの製品を使用することができる。フィラーの量は、一般的に、組成物の総重量の0~15重量%である。
【0097】
本発明による組成物は、組成物の総重量に基づいて、20~70重量%のバインダー(成分(I)、(II)、(III)および(IV)を含有する)、0~50重量%の顔料、および0~50重量%の添加剤、フィラー、光開始剤などから選択される1つまたは複数の通常の成分を含む。典型的には、本発明の組成物は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも20重量%のバインダー、多くの場合、少なくとも40重量%のバインダーを含む。
【0098】
本発明の一態様は、上記のバインダー組成物を含むコーティング組成物、特にインクおよびワニスに関する。本発明のバインダー組成物から調製されるインクおよびワニスが提供される。本発明はまた、本発明によるバインダー組成物が使用されるインク、特にフレキソグラフィーインク、リソグラフィーインクおよびスクリーンインクを調製する方法に関する。
【0099】
フレキソグラフィーインクは、一般的に、顔料分散ステップとレットダウン(letdown)ステップの2つのステップで製造される。本発明による組成物は、これらのステップの一方または両方で使用することができる。本発明による組成物は、好ましくは、少なくとも第1のステップでバインダーとして使用される。第1のステップでは、顔料ならびに任意選択で光開始剤、フィラーおよび/または添加剤を、樹脂(II)、樹脂(IV)および(メタ)アクリル化化合物((I)および(III))を含む組成物の少なくとも一部に添加する。これらを混合し、次いで三本ロールまたはビーズミルで分散させる。良好な分散を達成するためには、数回の工程が必要になる場合がある。分散が困難な顔料は、一般的に、より多くの回の工程を必要とする。良好な顔料湿潤を示す本発明による組成物は、追加の工程の数を制限することを可能にする。
【0100】
組成物、例えば完成したインクは、好ましくは25℃で剪断速度2500s-1で測定される(25mmのコーン直径および1°のコーンについての角度を有するコーンおよびプレート型レオメーターを使用して測定)粘度が300mPa.sより高い。測定は一般的に、25℃でD=0.1s-1~D=2500s-1に及ぶ制御された剪断速度で流動曲線を測定することによって行われる。
【0101】
完成したインクは、好ましくは、少なくとも500mPa.sの上記のように測定される粘度を有する。最終組成物の粘度は一般的に8000mPa.sを超えず、好ましくは4000mPa.sを超えない(25℃および2500s-1にて)。
【0102】
次いで、完成したインクを基板に印刷する。次いで、インクフィルムを、UVランプの下で、例えば120W/cmおよび50m/分で硬化することができる。バインダーが十分に反応性でない場合、インクを硬化させるために数回の工程が必要になることがある。
【0103】
本発明の一態様は、インク、接着剤またはコーティング(オーバープリントワニスを含む)を製造するための本発明の組成物の使用に関する。
【0104】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1つの本発明による組成物と、少なくとも1つの補強材料とを含む(透明なまたは顔料で着色された)複合マトリックスに関する。使用される補強材料は、繊維状であっても非繊維状であってもよい。非繊維状材料の例としては、それだけに限らないが、アルミナ三水和物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、粘土、ガラス微小球、カオリン、金属フィラー、カーボンブラック、マイカ、有機フィラー(木粉、トウモロコシの穂軸、イネ/落花生殻およびナッツの殻)、シリカ、タルク、ウォラストナイトおよび他のナノサイズの材料が挙げられる。繊維状材料の例としては、それだけに限らないが、米国特許第8012573号明細書、欧州特許第2226171号明細書、米国特許第7250209号明細書に記載される、ホウ素繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、天然繊維(それだけに限らないが、麻、黄麻、亜麻、ケナフ、葉繊維など)または合成繊維が挙げられる。多くの場合、ガラスフィラーが補強材料として使用される。適切なガラスフィラーの例としては、それだけに限らないが、ガラス繊維、ガラスクロス、ガラス不織布および他のガラス繊維布、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉末、粉砕ガラス種などが挙げられる。これらの中でも、線膨張係数の減少に極めて有効であることを考慮して、ガラス繊維、ガラスクロスおよびガラス不織布が好ましい。ガラスクロスが最も好ましい。
【0105】
本発明はまた、放射線硬化性組成物を硬化させることによって得られるポリマー組成物、ならびにポリマー組成物で部分的にまたは完全にコーティングされている基板または物品に関する。
【0106】
本発明はまた、本発明の組成物を前記物品または前記基板の少なくとも1つの表面上に適用するステップ、引き続いて適用された層を硬化するステップを含む、物品または基板をコーティングする方法に関する。本発明の組成物は、接着プライマーを必要とすることなく、前記基板または前記物品に直接適用することができる。放射線硬化性組成物を適用する前の物理的処理(例えば、コロナ)および/または化学的処理が、いくつかの場合において好まれ得る。本発明の組成物は、フレキソグラフィープロセス、リソグラフィープロセス、グラビア印刷、スクリーン印刷、凸版印刷、ローラーコーター、カーテンコーターによって、0.5~10μmの1つまたは複数の層に適用することができる。好ましくは、これがフレキソグラフィープロセスによって適用される。コーティングされる材料または表面は、プラスチックを含むことができ、特に、非極性プラスチックを含むプラスチックで形成されていてよい。プラスチックは可撓性であっても剛性であってもよい。
【0107】
さらに、印刷プロセスで放射線硬化性インクの基板への接着を改善する方法であって、本発明の組成物(さらに特に本発明のインク)を基板の表面に適用するステップ、引き続いて放射線、典型的には紫外線によって硬化するステップを含む方法もさらに提供される。本発明の組成物は、フレキソグラフィープロセス、リソグラフィープロセス、グラビア印刷、スクリーン印刷、凸版印刷、ローラーコーター、カーテンコーターによって、0.5~10μmの間の1つまたは複数の層に適用することができる。好ましくは、これがフレキソグラフィープロセスによって適用される。コーティングされる材料または表面は、プラスチックを含むことができ、特に、非極性プラスチックなど、プラスチックで形成されていてよい。プラスチックは可撓性であっても剛性であってもよい。このプロセスの利点は、本発明の組成物を基板上に直接適用することができることである。換言すれば、最初にプライマー層を適用する必要がない。典型的には、基板は、間接的な食品接触のための包装またはラベル基板である。
【0108】
本発明のさらに別の態様は、プラスチック、例えばプラスチック包装上のインクの接着促進剤としての本発明の組成物の使用に関する。包装は、間接的な食品接触のための食品包装などの食品包装であり得る。
【0109】
本発明はまた、本発明による組成物(さらに特にインク)で印刷された可撓性グラフィックス、さらに特に包装またはラベル基板に関する。包装は、間接的な食品接触のための食品包装などの食品包装であり得る。
【0110】
本発明のなおさらなる態様は、困難な基板、例えば、プラスチックまたは金属上のプライマーとしての本発明の組成物の使用に関する。基板は、プラスチックまたはプラスチック含有材料であることができ、特にこれは包装であることができる。包装は、間接的な食品接触のための食品包装などの食品包装であり得る。
【0111】
本発明はまた、以下の1つまたは複数を特徴とし得る:
-ポリオール成分(A)が、任意選択で、少なくとも1つのエーテル官能基を含む非環式脂肪族ポリオール化合物(Aii)をさらに含む、上に定義される放射線硬化性組成物。
-ポリオール成分(A)が少なくとも5重量%の1つまたは複数の環状ポリオール(Ai)を含む、上に定義される放射線硬化性組成物。
-ポリオール成分(A)が少なくとも20重量%の1つまたは複数の環状ポリオール(Ai)を含む、上に定義される放射線硬化性組成物。
-環状ポリオール化合物(Ai)が1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を含む、上に定義される放射線硬化性組成物。
-化合物(Bi)がクロレンド酸を含む、上に定義される放射線硬化性組成物。
-ポリカルボン酸化合物(E)がフタル酸を含む、上に定義される放射線硬化性組成物。
-ヒドロキシル基のカルボキシル基に対する当量比が1.0を超える、上に定義される放射線硬化性組成物。
-塩素化ポリエステル(II)が、500~5000ダルトンの間に含まれる数平均分子量を有する、上に定義される放射線硬化性組成物。
-エチレン性不飽和化合物(I)が、ジ(メタ)アクリラートおよび/またはトリ(メタ)アクリラートおよび/またはテトラ(メタ)アクリラートおよび/またはペンタ(メタ)アクリラートおよび/またはヘキサ(メタ)アクリラートから選択される少なくとも1つの(メタ)アクリル化化合物を含む、上に定義される放射線硬化性組成物。
-少なくとも10重量%の塩素化ポリエステル成分(II)を含む、上に定義される放射線硬化性組成物。
-以下のリスト:光開始剤、顔料、湿潤剤、顔料分散剤、レベリング剤、阻害剤、分散剤、安定剤、消泡剤、フィラーの中から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、上に定義される放射線硬化性組成物。
-少なくとも2つの放射線硬化性エチレン性不飽和基と、以下の基:エステル、エーテル、ウレタン、エポキシ、アクリル、アミノ基のうちの1つまたは複数を含む骨格とを有するオリゴマー化合物を含む追加の放射線硬化性成分(III)を含む、上に定義される放射線硬化性組成物。
-上に定義される放射線硬化性組成物を含む接着剤、コーティング、インクまたはワニス組成物。
-上に定義される放射線硬化性組成物で部分的にまたは完全にコーティングされた物品。
【0112】
ここで本発明を以下の例でより詳細に説明するが、これらは決して限定を意図するものではない。
【0113】
本発明を通して、特に以下の例では、以下の測定方法が適用されている。
【0114】
GPCを介した分子量測定:試料のごく一部をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、3xPLgel 5μm Mixed-D LS 300x7.5mmカラムを備えた液体クロマトグラフ(Merck-Hitachi L7100)に注入する。典型的には、ポリスチレン標準(典型的には、分子量範囲200~400.000g/mol)を内部標準として添加する。試料の成分を、溶液中の分子サイズに基づいてGPCカラムによって分離し、屈折率検出器によって検出する。典型的には、データをPolymer Laboratories Cirrus GPCソフトウェアによって収集および処理する。
【0115】
硬化速度:溶媒摩擦(ADR:アセトン二重摩擦)によって測定される、完全な硬化膜を与える、所与のUVランプの下での最大ベルト速度。最適な性能を有する完全に硬化したコーティングには、最低50ADRが必要である。
【0116】
粘度:所与の温度、通常25℃および剪断速度とも呼ばれるスピンドルの所与の回転速度でのコーン&プレート粘度。
【0117】
ショートネス指数(shortness index)(SI):2.5/2500 1/s剪断速度での粘度の比。
【0118】
光沢(グロス):光沢はTRI-MICROGLOSS20-60-85 SHEEN装置を使用して測定する。測定は60°幾何学で行う。
【0119】
接着:1.2μmのフィルムを試験基板に適用し、60m/分の速度で120W/cmの非焦点中圧水銀ランプからのUV照射に露光し、反応性方法に記載されるように完全に硬化させる。一本の粘着テープ(Tesa 4104)を表面に押し付け、中間層を脱気する。次いで、テープをはぎ取る。テープによって取り除かれた表面の%に基づいて、接着の値を与える:0(取り除かれた正方形が100%)、1(取り除かれた正方形が65~35%)、2(取り除かれた正方形が35~15%)、3(取り除かれた正方形が15~5%)、4(取り除かれた正方形が5%未満)、5(0%)。
【0120】
酸価:酸価(acid number)(または酸価(acid value))は、米国規格の方法(米国材料試験協会(ASTM))D974-64に従って測定され、製品のmg KOH/gで表される。
【0121】
ヒドロキシル価:ヒドロキシル価(またはOHN値)は、ASTM E222-73に従って測定され、製品のmg KOH/gで表される。
【0122】
タック:タックは、恒温水槽に接続されたタックオースコープを使用して2つのローラー間でインクフィルムを分割するために必要な力である。以下の条件および機器を使用した:30℃の水浴を備えたタックオースコープで、少なくとも30分間。タックオースコープのフロント(分配)ローラーに0.3ccのインクを均一に塗布する。フロントローラーとトップ(測定)ローラーを中央(ドライブ)ローラーに接触させて配置し、速度50m/分で20秒間インクを分配する。最終的なタック値を記録する。速度を100m/分に増加させて、20秒間保持する。速度を150m/分に増加させて、20秒間保持する。速度を200m/分に増加させて、20秒間保持する。速度を250m/分に増加させて、20秒間保持する。速度を300m/分に増加させて、20秒間保持する。速度を350m/分に増加させて、20秒間保持する。最終的なタック値を記録する。
【0123】
塩素含有量:充填された塩素化無水物から生じる塩素の重量(塩素化無水物分子内の塩素の理論的%によって計算)を、最終的な不活性ポリエステルの総重量で割る。無希釈ポリエステルの総重量を、ポリエステルを取り出し、希釈前に計量することによって決定する。
【0124】
バインダーの調製
例1(CHDM、Cl含有量24.6%):
ジエチレングリコール152g、無水フタル酸246g、クロレンド酸無水物618gおよびシクロヘキサンジメタノール466gを、攪拌機、温度調節器に取り付けられた熱電対、ガス入口管、真空への接続、および蒸留塔を備えた二重壁ガラス反応器に装入した。次いで、混合物を約165℃の温度に加熱した。水が蒸留されなくなるまで重縮合を続けた。減圧を徐々に適用し、-900mmHgの真空に達しながら、酸価を下げた。酸価が50mg KOH/g(DIN_EN_ISO_2114)に達したら、酸価が20mg KOH/g未満である(典型的には5~12時間の反応後)場合の酸価とヒドロキシル価(DIN_53240_T2)との間のデルタに基づいて酸またはジオールのいずれかで補正を行い、反応性モノマー(TMPTA)950gに希釈して70℃に冷却した。無希釈ポリエステル1425gを取り出し、反応性モノマー(TMPTA)950グラムに希釈しながら再装入した。このようにして得られた不活性ポリエステルは、130mg KOH/gのヒドロキシル価を有していた。このようにして得られたポリエステルのMwは1320g/molであった。希釈されたポリエステルの粘度は1310mPa・sの値を有していた(60℃でMCR装置で測定)。
【0125】
例2(CHDM、高分子量、Cl含有量17%):
ジエチレングリコール199g、無水フタル酸346g、クロレンド酸無水物325gおよびシクロヘキサンジメタノール236gを、攪拌機、温度調節器に取り付けられた熱電対、ガス入口管、真空への接続、および蒸留塔を備えた二重壁ガラス反応器に装入した。次いで、混合物を約177℃の温度に加熱した。水が蒸留されなくなるまで重縮合を続けた。減圧を徐々に適用し、-900mmHgの真空に達しながら、酸価を下げた。酸価が50mg KOH/g(DIN_EN_ISO_2114)に達したら、酸価が20mg KOH/g未満である(典型的には9~16時間の反応後)場合の酸価とヒドロキシル価(DIN_53240_T2)との間のデルタに基づいて酸またはジオールのいずれかで補正を行い、70℃に冷却し、無希釈ポリエステル1048gを取り出し、反応性モノマー(TMPTA)695gに希釈しながら、再装入した。
【0126】
このようにして得られた不活性ポリエステルは、50mg KOH/gのヒドロキシル価を有していた。このようにして得られたポリエステルのMwは2685g/molであった。希釈されたポリエステルの粘度は1750mPa・sの値を有していた(60℃でMCR装置で測定)。
【0127】
例3(CHDM、高分子量、Cl含有量25.7%):
ジエチレングリコール380g、無水フタル酸480g、クロレンド酸無水物1000gおよびシクロヘキサンジメタノール450gを、攪拌機、温度調節器に取り付けられた熱電対、ガス入口管、真空への接続、および蒸留塔を備えた二重壁ガラス反応器に装入した。次いで、混合物を約177℃の温度に加熱した。水が蒸留されなくなるまで重縮合を続けた。減圧を徐々に適用し、-900mmHgの真空に達しながら、酸価を下げた。酸価が50mg KOH/g(DIN_EN_ISO_2114)に達したら、酸価が20mg KOH/g未満である(典型的には9~16時間の反応後)場合の酸価とヒドロキシル価(DIN_53240_T2)との間のデルタに基づいて酸またはジオールのいずれかで補正を行い、70℃に冷却し、無希釈ポリエステル2203gを取り出し、反応性モノマー(TMPTA)1468gに希釈しながら、再装入した。
【0128】
このようにして得られた不活性ポリエステルは、60mg KOH/gのヒドロキシル価を有していた。このようにして得られたポリエステルのMwは2120g/molであった。希釈されたポリエステルの粘度は1820mPa・sの値を有していた(60℃でMCR装置で測定)。
【0129】
比較例1(1R、比較、HBPA、CHDMなし、Cl含有量20.3%、EBECRYL(登録商標)436ポリエステルアクリレートと同様):
ジエチレングリコール78.4g、無水フタル酸127.6g、クロレンド酸無水物319gおよび水素化ビスフェノールA403.8gを、攪拌機、温度調節器に取り付けられた熱電対、ガス入口管、真空への接続、および蒸留塔を備えた二重壁ガラス反応器に装入した。次いで、混合物を約165℃の温度に加熱した。水が蒸留されなくなるまで重縮合を続けた。減圧を徐々に適用し、-900mmHgの真空に達しながら、酸価を下げた。酸価が60mg KOH/gに達したら、酸価が50mg KOH/g未満である(典型的には5~12時間の反応後)場合の酸価とヒドロキシル価(DIN_53240_T2)との間のデルタに基づいて酸またはジオールのいずれかで補正を行い、70℃に冷却した。無希釈ポリエステル892gを取り出し、反応性モノマー(TMPTA)610gに希釈しながら再装入した。
【0130】
このようにして得られた不活性ポリエステルは、140mg KOH/gのヒドロキシル価を有していた。このようにして得られたポリエステルのMwは920g/molであった。希釈されたポリエステルの粘度は1453mPa・sの値を有していた(60℃でMCR装置で測定)。
【0131】
比較例2(2R、比較、イソソルビド、CHDMなし):
ジエチレングリコール303g、無水フタル酸494g、クロレンド酸無水物1235gおよびイソソルビド945gを、攪拌機、温度調節器に取り付けられた熱電対、ガス入口管、真空への接続、および蒸留塔を備えた二重壁ガラス反応器に装入した。次いで、混合物を約165℃の温度に加熱した。水が蒸留されなくなるまで重縮合を続けた。減圧を徐々に適用し、-900mmHgの真空に達しながら、酸価を下げた。酸価が50mg KOH/gに達したら、酸価が20mg KOH/g未満である(典型的には5~12時間の反応後)場合の酸価とヒドロキシル価(DIN_53240_T2)との間のデルタに基づいて酸またはジオールのいずれかで補正を行い、70℃に冷却し、無希釈ポリエステル2843gを取り出し、反応性モノマー(TMPTA)1900gに希釈しながら、再装入した。
【0132】
このようにして得られた不活性ポリエステルは、160mg KOH/gのヒドロキシル価を有していた。このようにして得られたポリエステルのMwは1200g/molであった。希釈されたポリエステルの粘度は1420mPa・sであった(60℃でMCR装置で測定)。
【0133】
比較例3(3R、比較、BPAなし、CHDMなし):
(環状ポリオールなし)エチレングリコール500g、トリメチロールプロパン81g、クロレンド酸無水物706g、イソフタル酸393gおよびフタル酸471gを、攪拌機、温度調節器に取り付けられた熱電対、ガス入口管、真空への接続、および蒸留塔を備えた二重壁ガラス反応器に装入した。次いで、混合物を約165℃の温度に加熱した。水が蒸留されなくなるまで重縮合を続けた。減圧を徐々に適用し、-900mmHgの真空に達しながら、酸価を下げた。酸価が50mg KOH/gに達したら、酸価が25mg KOH/g未満であった(典型的には5~12時間の反応後)場合の酸価とヒドロキシル価(DIN_53240_T2)との間のデルタに基づいて酸またはジオールのいずれかで補正を行い、70℃に冷却し、無希釈ポリエステル2068gを取り出し、反応性モノマー(TMPTA)1300gに希釈しながら、再装入した。
【0134】
このようにして得られた不活性ポリエステルは、112mg KOH/gのヒドロキシル価を有していた。このようにして得られたポリエステルのMwは1810g/molであった。希釈されたポリエステルの粘度は、(60℃でMCR装置で測定された)1571mPa・sであった。
【0135】
比較例4(4R、比較、非塩素化、CHDMなし):
ジエチレングリコール784g、無水フタル酸2453gおよび水素化ビスフェノールA4000gを、攪拌機、温度調節器に取り付けられた熱電対、ガス入口管、真空への接続、および蒸留塔を備えた二重壁ガラス反応器に装入した。次いで、混合物を約165℃の温度に加熱した。水が蒸留されなくなるまで重縮合を続けた。減圧を徐々に適用し、-900mmHgの真空に達しながら、酸価を下げた。酸価が65mg KOH/gに達したら、酸価が48mg KOH/g未満であった(典型的には5~12時間の反応後)場合の酸価とヒドロキシル価(DIN_53240_T2)との間のデルタに基づいて酸またはジオールのいずれかで補正を行い、70℃に冷却し、無希釈ポリエステル8870gを取り出し、反応性モノマー(TMPTA)5950gに希釈しながら、再装入した。
【0136】
配合物:
顔料ペーストを以下のように調製した:上記のように調製したバインダー(希釈ポリエステル)61wt%を、さらなるTMPTA(8wt%)および顔料30wt%(デグサ社のSpecial Black250)および添加剤1wt%(オルネクス社製の安定剤ADDITOL(登録商標)S130)と混合した。
【0137】
ペーストを、7ヘグマン単位(Hegman Unit)または12.7ミクロンの適切な粉砕ゲージが得られるまで、三本ロールミルで粉砕した。
【0138】
インクを、この顔料ペースト(72%)から、バインダー(19%)、光開始剤(8%)および希釈モノマー(1%TMPTA)とさらに混合して、25℃で約100Pa・sの標的粘度を達成することによって調製した。
【0139】
光開始剤ミックス組成物:30%のLambson社製のSpeedcure ITX(イソプロピルチオキサントン);25%のLambson社製のSpeedcure EDB(エチル-4-ジメチルアミノベンゾアート);25%のLambson社製のSpeedcure EHA(2-エチルヘキシル4-(ジメチルアミノ)ベンゾアート);5%のオルネクス社製のADDITOL(登録商標)PBZ。
【0140】
適用結果
【表1】
【0141】
本発明による例についての硬化速度は、イソソルビドおよび業界標準よりも高い。HBPA比較例も高い硬化速度をもたらす。これは、組成物がUVランプ下で2回ではなく1回の工程しか必要とせず、金と時間の節約を可能にするので有利である。
【表2】
【0142】
イソソルビド比較および本発明による例についてのタック値は、特にHBPAベースの比較例と比較して、低く、安定している。全ての測定について、例で得られたタック値は、比較の各々よりも低く、したがって優れている。
【表3】
【0143】
硬化1x30m/分の場合:
-PET上:HBPAによる比較例については劣った接着であるが、他の組成物についてはOK。
-PVC上では、「業界標準」およびイソソルビドについて劣った接着が得られた。HBPAによる比較例については良好な接着が得られ、本発明による例については非常に良好な接着が得られた。
【0144】
硬化3x30m/分の場合:
-「業界標準」およびイソソルビドについてはPVCへの接着はまだない。
-HBPAによる比較例については良好、本発明による例については非常に良好なPVCへの接着。
【0145】
行われた全ての試験について、本発明による例は、他の3つの試料と比較して常に最も好ましい結果を提供していた。
【表4】
【0146】
結合強度は、包装の2つの隣接する層を分離するために必要な単位面積当たりの力(N)である。結合強度値を、動力計を使用して試験した。
【0147】
ハンドコーター、湿性沈着厚み=2ミクロンを使用して、例1、2、3、または比較例1もしくは4による、上記のインクとして配合された組成物を基板(ポリプロピレン)に載せ、適用された層をUV硬化することによって、印刷試料を調製した。2番目の層(2ミクロンの湿性沈着厚み)をいくつかの試料に適用し、UV硬化した。
【0148】
対向基板(ポリエチレン)に、ハンドコーターを使用して接着剤の層を提供し、その後、乾燥させた。印刷基板を接着剤層上に適用し、ローラーを使用して基板と対向基板を互いに押し付けて、積層体を形成した。
【0149】
積層された印刷試料を、層間剥離評価の前に接着剤硬化を可能にするために25℃で7日間保管した。
【0150】
積層体組成物から試料を切り出し、2つのジョーの間に置いた。試料を引き出し、基板を対向基板から分離した。200mm/分の速度で、結合強度値を決定し、試料を層間剥離するのに必要な力(N)を測定した。
【0151】
比較例4Rで得られた結果は、非塩素化ポリエステルが十分な接着を提供しないことを示している。
【0152】
比較1Rで得られた結果は、本発明による非BPA含有試料が、市販のBPA含有試料と類似で、例3に示されるようにさらに優れた結果を達成することができることを示している。
本発明に包含され得る諸態様または諸実施形態は、以下のとおり要約される。
[1].
(I)少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含む放射線硬化性成分と、
(II)
(A)ビスフェノールA誘導体化合物を実質的に含まず、環状エーテルポリオール化合物を実質的に含まないポリオール成分であって、環状で、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するポリオール化合物(Ai)を含むポリオール成分、ならびに
(B)少なくとも1つの塩素基および少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物(Bi)を含むポリカルボン酸成分、
(C)任意選択で、少なくとも1つのモノアルコール化合物、
(D)任意選択で、少なくとも1つのモノカルボン酸化合物、
(E)任意選択で、塩素基を実質的に含まない少なくとも1つのポリカルボン酸化合物
から調製される塩素化ポリエステル成分と、
(III)任意選択で、少なくとも2つの放射線硬化性エチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのオリゴマー化合物を含む追加の放射線硬化性成分と
を含む放射線硬化性組成物。
[2].
前記ポリオール成分(A)が、任意選択で少なくとも1つのエーテル官能基を含む非環式脂肪族ポリオール化合物(Aii)をさらに含む、上記項目1に記載の放射線硬化性組成物。
[3].
前記ポリオール成分(A)が少なくとも5重量%の1つまたは複数の環状ポリオール(Ai)を含む、上記項目1または2に記載の放射線硬化性組成物。
[4].
前記ポリオール成分(A)が少なくとも20重量%の1つまたは複数の環状ポリオール(Ai)を含む、上記項目3に記載の放射線硬化性組成物。
[5].
前記環状ポリオール化合物(Ai)が1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を含む、上記項目1~4のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
[6].
前記化合物(Bi)がクロレンド酸を含む、上記項目1~5のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
[7].
前記ポリカルボン酸化合物(E)がフタル酸を含む、上記項目6に記載の放射線硬化性組成物。
[8].
ヒドロキシル基とカルボキシル基との当量比が1.0を超える、上記項目1~7のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
[9].
前記塩素化ポリエステル(II)が、500~5000ダルトンの間に含まれる数平均分子量を有する、上記項目1から8のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
[10].
前記エチレン性不飽和化合物(I)が、ジ(メタ)アクリラートおよび/またはトリ(メタ)アクリラートおよび/またはテトラ(メタ)アクリラートおよび/またはペンタ(メタ)アクリラートおよび/またはヘキサ(メタ)アクリラートから選択される少なくとも1つの(メタ)アクリル化化合物を含む、上記項目1~9のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
[11].
前記塩素化ポリエステル(II)の塩素含有量が5~75%の間、好ましくは10~30%の間に含まれる、上記項目1~10のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
[12].
以下のリスト:光開始剤、顔料、湿潤剤、顔料分散剤、レベリング剤、阻害剤、分散剤、安定剤、消泡剤、フィラーの中から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、上記項目1~11のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
[13].
前記オリゴマー化合物(III)が、以下の基:エステル、エーテル、ウレタン、エポキシ、アクリル、アミノ基のうちの1つまたは複数を含む骨格を有する、上記項目1~12のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物。
[14].
上記項目1~13のいずれか一項に記載の放射線硬化性組成物を含む接着剤、コーティング、インクまたはワニス組成物。
[15].
上記項目14に記載の放射線硬化性組成物で部分的にまたは完全にコーティングされた物品。