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  • 特許-三次元(3D)物品の形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】三次元(3D)物品の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20230816BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20230816BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20230816BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20230816BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20230816BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20230816BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20230816BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20230816BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230816BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230816BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230816BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230816BHJP
【FI】
B29C64/106
B22F3/105
B22F3/16
B22F10/85
B28B1/30
B29C64/112
B29C64/209
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B33Y80/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020558913
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019031765
(87)【国際公開番号】W WO2019217848
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】62/669,474
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】513283512
【氏名又は名称】ザ レジェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】プロット、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】シー、アルバート ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ズー、ピーチョン
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500252(JP,A)
【文献】国際公開第2017/108208(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/00-3/26,10/00-10/85
B28B 1/30
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00,30/00,40/00,50/00,50/02,
70/00,80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを有する装置で三次元(3D)物品を形成する方法であって、前記方法が、
(I)前記装置の前記ノズルで第1の組成物を変形可能な基材上に体積流量で印刷して、前記第1の組成物を含む変形可能な第1のフィラメントを前記変形可能な基材上に形成することであって、前記ノズルおよび前記変形可能な基材のうちの少なくとも一方が、印刷中に他方に対して移動する、形成することと、
(II)変形力を減少させるために前記体積流量を制御することであって、前記変形力は、法線力および接線力のうちの少なくとも1つを含み、前記変形力は、前記ノズルによって前記変形可能な基材に印加され、前記変形可能な第1のフィラメントを含む第1の層を前記変形可能な基材上に得る、制御することと、
追加の変形可能なフィラメント(複数可)および対応する層(複数可)を形成する必要がある場合は、独立して選択された組成物(複数可)で(I)および(II)を繰り返す、制御することと、
(III)前記層(複数可)を固化条件に曝露することと、を含み、
(II)前記体積流量を制御することが、
(II-A)印刷中に前記ノズルによって前記変形可能な基材に印加された前記変形力を測定することと、
(II-B)(II-A)で測定された前記変形力を所定の変形力閾値と比較することと、
(II-C)(II-A)で測定された前記変形力が、前記所定の変形力閾値を超えることに応答して、前記変形力が前記所定の変形力閾値を下回るまで、前記ノズルによって前記変形可能な基材に印加される前記変形力を減少させるように前記体積流量を調節することと、をさらに含み、
前記ノズルによって前記変形可能な基材に印加される前記変形力を減少させるように、前記体積流量を制御することが、前記ノズルの先端部と前記変形可能な基材との間の距離を、(a)前記ノズルで印刷されている前記第1の組成物の寸法、(b)前記ノズルの寸法、もしくは(c)(a)と(b)との両方、と一致させることを含む、方法。
【請求項2】
前記ノズルによって前記変形可能な基材に印加される前記変形力を減少させるように、前記体積流量を制御することが、前記ノズルの先端部と前記変形可能な基材上に以前形成された前記変形可能な第1のフィラメントとの間の接触を最小限にすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記体積流量を制御することが、(i)印刷中に前記第1の組成物が前記ノズルから排出される流量と、(ii)印刷中の前記変形可能な基材と前記ノズルとの間の距離と、(iii)前記変形可能な基材および前記ノズルのうちの少なくとも一方が他方に対して移動する速度と、(iv)前記ノズルのサイズおよび/または形状と、(v)前記変形可能な基材の形状と、のうちの少なくとも1つを選択的に制御することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ノズルによって前記変形可能な基材に印加される前記変形力を減少させるように前記体積流量を制御するためのパラメータを確立するために、前記流量、距離、速度、ノズルサイズおよび/もしくは形状、ならびに/または前記変形可能な基材の前記形状の関数として、(I)の前記体積流量を最初にプロットすることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の組成物を含む前記変形可能な第1のフィラメントの所望の幅および/または形状を決定し、前記変形可能な第1のフィラメントが前記変形可能な基材上で前記所望の幅および/または形状に形成されるように、前記流量、距離、速度、ならびにノズルのサイズおよび/または形状のうちの少なくとも1つを選択的に制御することをさらに含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
(II-D)(II-A)の前記変形力測定、(II-C)の前記体積流量調節、および(II-C)の前記変形力減少を、前記装置と通信する閉ループフィードバック制御装置にリアルタイムで統合することと、
(II-E)その後、前記閉ループフィードバック制御装置で前記体積流量を制御することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
IV)前記装置の前記ノズルで第2の組成物を第2の体積流量で印刷して、前記第2の組成物を含む第2の変形可能なフィラメントを前記第1の層の前記変形可能な第1のフィラメント上に形成することと、
V)前記ノズルによって前記第1の層の前記変形可能な第1のフィラメントに印加される前記変形力を減少させ、前記第2の変形可能なフィラメントを含む第2の層を前記第1の層上に得るように前記第2の体積流量を制御することと、をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(i)前記第1の組成物が前記第1の層の印刷時間よりも長い指触乾燥時間を有し、
前記第2の変形可能なフィラメントが、前記第1の組成物の前記指触乾燥時間内に前記第1の層上に形成されるか、(ii)前記第1および第2のフィラメントが同じであり、互いに連続しているか、または(iii)(i)と(ii)との両方である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月10日に出願された米国仮特許出願第62/669,474号に対する優先権および全ての利点を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、三次元(3D)物品を作製する方法に関し、より具体的には、3Dプリンタを介して変形可能なフィラメントを有する3D物品を作製する方法、およびそれによって形成される3D物品に関する。
【背景技術】
【0003】
3D印刷または付加製造(AM)は、典型的には、デジタルファイルから三次元(3D)個体対象物を作成するプロセスである。3D印刷対象物の作成は、減法プロセスではなく加法プロセスを使用して実現される。加法プロセスでは、対象物は、対象物全体が作成されるまで、材料の連続した層を敷設することによって作成される。これらの層の各々は、最終的に3D印刷された対象物をスライスした水平断面とみなすことができる。
【0004】
付加プロセスは、有機熱可塑性樹脂(例えば、ポリ乳酸(PLA)またはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS))、石膏、粘土、室温加硫(RTV)材料、紙、または金属合金などの、特定の限定的なタイプの材料で実証されている。これらの材料は、物理的または化学的な制限、費用、緩慢な固化(または硬化)時間、不適切な粘度などに基づくと、特定の最終用途に適していない。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、三次元(3D)物品を形成する方法を提供する。本方法は、(I)装置(例えば、3Dプリンタ)のノズルで第1の組成物を変形可能な基材上に体積流量で印刷し、第1の組成物を含む変形可能な第1のフィラメントを変形可能な基材上に形成することを含む。印刷中、ノズルおよび変形可能な基材うちの少なくとも一方が他方に対して移動する。本方法は、(II)3Dプリンタのノズルによって変形可能な基材に印加される変形力を減少させ、変形可能な第1のフィラメントを含む第1の層を変形可能な基材上に得るように、体積流量を制御することをさらに含む。本方法では、(I)および(II)は、任意選択的に、独立して選択された組成物(複数可)で繰り返されて、追加の変形可能なフィラメント(複数可)および対応する層(複数可)を形成することができる。最後に、本方法は、(III)層(複数可)を固化条件に曝露することを含む。
【0006】
本開示はまた、本方法に従って形成された3D物品も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の他の利点は、添付の図面と併せて考えると、以下の詳細な説明を参照することによりさらに良く理解されるように、容易に理解されるであろう。
【0008】
図1】開示された方法を実行するための装置およびノズルの一実施形態の概略図である。
図2A】開示された方法によって企図された体積流量依存性の一シナリオの自由体図である。
図2B】開示された方法によって企図された体積流量依存性の一シナリオの自由体図である。
図2C】開示された方法によって企図された体積流量依存性の一シナリオの自由体図である。
図2D】開示された方法によって企図された体積流量依存性の一シナリオの自由体図である。
図3】開示された方法を実行するための別の装置およびノズルの一実施形態の概略図である。
図4】開示された方法および本明細書に記載された方法に従って作製された実施例1~9の体積流量依存性の接線力図である。
図5】開示された方法および本明細書に記載された方法に従って作製された実施例1~9の体積流量依存性の法線力図である。
図6】開示された方法および本明細書に記載された方法に従って、実施例10~13の作製中および作製後に撮影された静止画像の合成である。
図7】開示された方法および本明細書に記載された方法に従って作製された実施例14の3D物品の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、三次元(3D)物品を形成する方法を提供する。3D物品は、本明細書に開示される方法に従って形成される3D物品に関する様々な態様とともに、以下に記載される独立して選択された組成物で形成される。3D物品は、無数の最終使用用途および産業向けにカスタマイズすることができる。例えば、以下に記載されるように、3D物品は、軟質および/または可撓性であってもよく、(例えば、空気圧アクチュエータとしての)作動用途において利用されてもよい。その代わりにまたはそれに加えて、3D物品は建設用途で利用される剛性構造体であってもよい。さらにまた、3D物品は、生物学的および/またはヘルスケア用途で利用されてもよい。本発明の方法は、異なるタイプの組成物と共に利用して、所望の最終用途に基づいてカスタマイズすることができる様々な特性を有する異なるタイプの3D物品を作製することができる。
【0010】
以下にさらに詳細に記載されるように、本発明の方法は、本明細書に記載された独立して選択される組成物の利用を妨げていたであろう(または、そうでなければ、望ましくない美観および特性を有する3D物品をもたらすであろう)変形力を減少、排除、または選択的に制御することを含む3D印刷プロセスである。一般に、本方法では、変形可能な基材、フィラメント、および層を利用して、複雑さが増大した(例えば、高さが増大した、厚さが減少した、パターンの複雑さが増大した)、かつ歪みが減少した構造体を有する3D物品を形成する。これらおよび他の特徴は、本明細書の説明および実施例を考慮して理解されるであろう。
【0011】
本方法は、(I)装置のノズルで第1の組成物を変形可能な基材上に印刷することを含む。
【0012】
以下に詳細に記載されるように、様々なタイプのノズル、装置(例えば、3Dプリンタ)、および/または3D印刷手法(すなわち、「3D印刷プロセス」)を利用することができる。また以下に記載されるように、様々なタイプの組成物を本方法で利用することができ、これらの組成物は互いに同じであっても異なっていてもよく、独立して選択される。第1の組成物は、本方法における使用に適した組成物に関して以下に記載されるように、固化条件を適用した際に硬化性であるか、またはそうでなければ固化が可能であり得る。
【0013】
装置は、「付加製造」(AM)または「3D印刷」プロセスにおける使用に適している(すなわち、「3Dプリンタ」である)。したがって、本開示は、概して、ASTM Designation F2792-12a、「Standard Terminology for Additive Manufacturing Technologies」を参照することにより、その全体を組み込んでいる。このASTM規格では、「3Dプリンタ」は「3D印刷に使用される機械」と定義され、「3D印刷」は「印刷ヘッド、ノズル、または別のプリンタ技術を使用した材料の堆積を通じた対象物の作製」と定義されている。同様に、「付加製造」は、減法製造手法ではなく、「通常は、層ごとに3Dモデルデータから対象物を作成するために材料を結合するプロセスと定義される。3D印刷に関連付けられ、包含される同義語は、付加作製、付加プロセス、付加技術、付加層製造、層製造、および自由形状作製を含む。AMは、ラピッドプロトタイピング(RP)とも呼ばれることもある。本明細書で使用される場合、「3D印刷」は概して、「付加製造」と置き換え可能であり、逆もまた同様である。
【0014】
一般に、3D印刷は、無数のタイプの特定のAMプロセスを包含し、これらは典型的には、3D印刷プロセスで利用される特定のクラスの3Dプリンタに基づいて参照または分類される。これらの特定のタイプの3D印刷プロセスの例としては、直接押出付加製造、液体付加製造、溶融フィラメント作製、溶融堆積造形、直接インク堆積、材料噴射、ポリジェッティング、シリンジ押出、レーザ焼結、レーザ溶融、ステレオリソグラフィ、粉末充填(結合剤噴射)、電子ビーム溶解、積層体製造、レーザ粉末形成、インク噴射などが挙げられる。このようなプロセスは、本開示の方法において独立してまたは組み合わせて使用されてもよい。3Dプリンタとしては、押出付加製造プリンタ、液体付加製造プリンタ、溶融フィラメント作製プリンタ、溶融堆積造形プリンタ、直接インク堆積プリンタ、選択的レーザ焼結プリンタ、選択的レーザ溶融プリンタ、ステレオリソグラフィプリンタ、粉末充填(結合剤ジェット)プリンタ、材料ジェットプリンタ、直接金属レーザ焼結プリンタ、電子ビーム溶融プリンタ、積層体製造堆積プリンタ、指向性エネルギー堆積プリンタ、レーザ粉末形成プリンタ、ポリジェットプリンタ、インク噴射プリンタ、材料噴射プリンタ、およびシリンジ押出しプリンタが挙げられる。
【0015】
特定の実施形態では、本装置は、溶融フィラメント作製プリンタ、溶融堆積モデリングプリンタ、直接インク堆積プリンタ、液体付加製造プリンタ、材料ジェットプリンタ、ポリジェットプリンタ、材料噴射プリンタ、およびシリンジ押出プリンタから選択された3Dプリンタを備える。
【0016】
さらに、3Dプリンタは、開示された方法に関連付けられた各印刷ステップ中に独立して選択されてもよい。換言すれば、所望であれば、各印刷ステップは、異なる3Dプリンタまたは3Dプリンタの組み合わせを利用することができる。フィラメントおよび/またはそれで形成された層に関して異なる特性を付与するために異なる3Dプリンタを利用することができ、異なる3Dプリンタは、異なるタイプの組成物での使用に特に十分に好適である場合がある。
【0017】
様々なタイプの3D印刷、したがって3Dプリンタは、例えば、利用される組成物および/または機器のタイプに基づいて互いに実質的に重複しているため、本明細書に具体的に列挙されていない3Dプリンタも、本開示の範囲から逸脱することなく利用され得る。したがって、本開示の方法は、前述の3D印刷プロセス、または当技術分野で理解されている他の3D印刷プロセスのいずれか1つを模倣する(すなわち、関連付ける)ことができる。好適な3D印刷プロセスの特定の実施例は、米国特許第5,204,055号および第5,387,380号にも記載されており、それらの開示は、それらのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
上記で紹介したように、その選択に関係なく、本方法は、ノズルを含む装置、例えば3Dプリンタを利用する。しかしながら、他の印刷技術の構成要素、要素、またはデバイス(例えば、物理的および/または電子的)は、装置およびノズルと組み合わせて組み込まれるか、または使用されてもよい。このような構成要素、要素、またはデバイスの例としては、押出機、印刷ベース/プラットフォーム(例えば、静止および/また運動制御印刷ベース/プラットフォーム)、様々なセンサ/検出器(例えば、カメラ、レーザ変位センサ)、コンピュータおよび/またはコントローラなどが挙げられ、これらは各々独立して、またはシステムの一部として使用されてもよい(例えば、構成要素が互いに電子通信している場合)。同様に、3D印刷は概して、コンピュータ生成データソースから物理対象物を作製するために使用される多くの関連技術に関連付けられている。これらの特定のプロセスのいくつかは、特定の3Dプリンタを参照して上記に含まれている。さらに、これらのプロセスのいくつか、および他のものは、以下により詳細に記載される。したがって、以下の3D印刷プロセスの一般的な説明からよりよく理解されるように、多くの構成要素および技術が、本開示の方法に関連して利用され得る。
【0019】
一般に、3D印刷プロセスには共通の開始点があり、これは、対象物を記述するコンピュータ生成データソースまたはプログラムであり得る。コンピュータ生成データソースまたはプログラムは、実際または仮想の対象物に基づくことができる。例えば、3Dスキャナを使用して実際の対象物を走査して走査データを得て、また走査データを使用してコンピュータ生成データソースまたはプログラムを作成することができる。あるいは、コンピュータ生成データソースまたはプログラムは、ゼロから、例えば完全に、または走査データと組み合わせて設計されてもよい。
【0020】
コンピュータ生成データソースまたはプログラムは、典型的には、標準のテッセレーション言語(STL)ファイル形式に変換され、ただし、他のファイル形式も使用され得るか、または追加的に使用され得る。一般に、ファイルは3D印刷ソフトウェアに読み込まれ、3D印刷ソフトウェアによってファイルおよび任意選択的にユーザ入力が取得され、数百、数千、さらには数百万の「スライス」に分離される。3D印刷ソフトウェアは典型的には、機械命令を出力し、これはGコードの形式である場合があり、3Dプリンタによって読み取られて各スライスを構築する。機械命令は3Dプリンタに転送され、3Dプリンタは次いで、このスライス情報に基づいて、機械命令の形式で層ごとに対象物を構築する。これらのスライスの厚さは変化し得る。
【0021】
層ごとの印刷に影響を及ぼすために、3Dプリンタのノズルおよび/または構築プラットフォームは、一般に、X-Y(水平)平面方向に移動し、次いで、各層が完成すると、Z軸(垂直)平面方向に移動する。このようにして、3D物品となる対象物を、1回につき1層ずつ、底部から上方に構築していく。このプロセスは、材料を2つの異なる目的のため、すなわち、対象物を構築する目的、および何もない空中に材料が押出成形されるのを避けるために張り出し部を支持する目的のために使用することができる。あるいは、ノズルは、層が統合され、Z軸において少なくとも部分的に重なり合うように、垂直平面および水平平面において同時に移動する。
【0022】
任意選択的に、得られた対象物は、さらなる加熱、固化、浸潤、焼き出し、および/または焼成などの異なる後処理レジームに供されてもよい。これは、例えば、任意の結合剤の硬化の促進、対象物からの3D物品の補強、任意の硬化している/硬化した結合剤の排除(例えば分解による)、コア材料の強化(例えば焼結/融解による)、ならびに/または粉末および結合剤の特性を融合する複合材料の形成のために、行う場合がある。
【0023】
様々な実施形態では、本開示の方法は、従来の材料押出プロセスを模倣する。材料押出は、一般に、ノズルを通して材料(この場合、第1の組成物)を押し出して、対象物の1つの断面を印刷することによって動作し、これは後続の各層に対して繰り返され得る。ノズルは、印刷中に加熱、冷却、または他の方法で操作することができ、特定の組成物を吐出するのに役立ち得る。
【0024】
ノズルは、任意の寸法を含み、任意のサイズおよび/または形状(例えば、円錐形または切頭円錐形、ピラミッド形、長方形、円筒形など)を有し得る。典型的には、ノズルの寸法は、特定の装置、第1の組成物、および本方法を実施するために使用される任意の他の組成物に基づいて選択される。ノズルに加えて、1つ以上の追加のまたは補足のノズルを使用して本方法を実施することができ、1つ以上の追加のノズルうちのいずれかが、利用されている組成物のうちのいずれか、形成されている特定の層、形成されている3D物品の寸法などに基づいて選択される。例えば、複数のノズルを利用して、特定の組成物を(連続しておよび/もしくは同時に)印刷するか、または構成成分を印刷して特定の組成物をその場で形成することができる。
【0025】
特定の実施形態では、ノズルは、装置に近位で接続されたベースと先端部との間に延在する本体を備え、そこを通って延在する空洞を画定する。ノズルは、典型的には、0.001~100mm、例えば、0.05~1mm、0.05~7mm、0.1~10mm、1~10mm、0.05~10mm、0.05~50mm、または0.1~50mmの内径(di)を含む。ノズルの内径(di)は、典型的には、ノズルの先端部の近位にある空洞のスパンを指す。しかしながら、空洞は、任意の形状、このような円筒形、円錐形、長方形、三角形であってもよく、したがって、ノズルは、ベースと先端部との間のノズルの本体に沿った異なる位置で各々測定された複数の内径を有していてもよい。本明細書に記載されるように、ノズル先端部自体の内径は、「di」という呼称で呼ばれる場合がある。
【0026】
変形可能な基材は限定されず、以下のさらなる説明を前提として、その形成方法中に3D物品を直接支持することができるか、または基材自体が支持されることによって間接的に3D物品を支持することができる(例えば、テーブルによって、変形可能な基材自体が剛性を有する必要がないような)任意の基材であってもよい。変形可能な基材は、例えば、厚さ、組成物、剛性、可撓性などにおいて、不連続性または連続性であり得る。変形可能な基材の組成物は変化してもよく、様々な構成成分ならびに独立して選択された材料および/または組成物を含んでもよい。好適な基材の一般的な例としては、シリコーンおよび他の樹脂などのポリマー、金属、炭素繊維、ガラス繊維など、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。典型的には、変形可能な基材は、以下に記載されるように、例えば、印刷によって、基材組成物から形成される。基材組成物の具体例は、以下にさらに記載される。
【0027】
「変形可能」という用語は、従来の意味での変形可能な基材の文脈で使用され、すなわち、力(例えば、変形力)が印加されたときに再形成(すなわち、変形)される能力を表す。この意味で、変形可能な基材は、印刷プロセス中に印加される力と比較して比較的低い弾性率、および変形力の印加に起因して形状および/またはサイズを変化させる能力を特徴とし、これは、引張(例えば、引っ張る、引きずる)力、圧縮(例えば、押す)力、剪断力、ねじり(例えば、捻る、曲げる)力、またはこれらの組み合わせを含む可能性がある。したがって、本明細書における変形可能な基材および基材組成物の説明および例を考慮して最もよく理解されるように、変形可能な基材は、「軟質」および/または「可撓性」基材としてAM技術において口語的に理解され得る。
【0028】
特定の実施形態では、変形可能な基材は、硬化性組成物をベース基材上に印刷することによって形成される初期フィラメントを含む初期層を含む。いくつかのこのような実施形態では、本方法は、硬化性組成物をベース基材上に印刷して、硬化性組成物を含む初期層を形成し、それにより変形可能な基材を得ることを含む。これらの実施形態では、初期層は、印刷中に硬化性組成物から形成される初期フィラメントを含み得る。初期フィラメントの寸法(例えば、サイズ、形状、密度、高さ、幅など)は、独立して選択することができる。同様に、初期層の様々な物理的特性および/または寸法特性は、独立して選択することができ、典型的には、初期フィラメントの印刷中に選択されたパラメータ(例えば、印刷された初期フィラメントの部分間の間隔、部分の形状および/またはサイズなど)によって制御される。ベース基材は、印刷ベース、ビルドプレート、モールドなどのような任意の対象物であってもよく、上部に配設されたコーティングまたは他のフィルムを含んでもよい。ベース基材はまた、その上に印刷された変形可能な基材から取り外し可能、例えば、剥離可能であってもよい。あるいは、変形可能な基材は、本方法によって形成された3D物品と基材が一体に統合されるように、ベース基材に物理的および/または化学的に結合することができる。一実施形態では、ベース基材は、シリコーン基材、例えば、既に硬化したシリコーンを含む。いくつかの実施形態では、ベース基材は硬化した樹脂を含む。硬化した樹脂および硬化シリコーンの例は、以下にさらに記載される。変形可能な基材の選択に応じて、ベース基材は任意選択的である。例えば、変形可能基材は、硬化性組成物が3Dプリンタから吐出されるときに変形可能基材がその場で浮遊して形成されるように、十分な粘度または剛性を有することがあり、その場合、変形可能な基材は、いかなる基材からも分離され、かつ接触していない。
【0029】
特定の実施形態において、変形可能な基材は、(I)その上に第1の組成物を印刷する間、未硬化である。このような実施形態では、変形可能な基材は、指触乾燥時間、および/またはウェットオンウェット印刷を実施することができる硬化時間を有してもよい。いくつかのこのような実施形態では、本方法は、指触乾燥時間および/または硬化時間内に(すなわち、変形可能な基材が、変形可能な基材がもはや変形可能ではない硬化(cure)/硬化(hardness)状態に達する前に)、第1の組成物を変形可能な基材上に印刷することをさらに含む。これらの実施形態では、本方法は、第1の組成物を上部に印刷する前に変形可能な基材を形成することをさらに含み得る。変形可能な基材は、以下にさらに詳細に記載される基材組成物を印刷することによって(例えば、本明細書に記載されるような印刷プロセスを介して)、形成されてもよい。
【0030】
周囲条件は、(I)第1の組成物を印刷する間に、操作または制御することができる。例えば、所望であれば、変形可能な基材は、固化および/または硬化を助けるために、印刷のステップの前、最中、および/または後に、加熱、冷却、機械的振動、またはその他の方法で操作されてもよい。さらに、変形可能な基材は、任意の印刷ステップ中に移動、例えば、回転されてもよい。同様に、ノズルまたはそれに接続されたディスペンサは、第1の組成物を吐出する前、最中、および後に加熱または冷却することができる。同様に、複数のディスペンサが利用されてもよく、各ディスペンサは独立して選択された特性またはパラメータを有する。本方法は、印刷の各ステップの後に固化および硬化が開始されるように、加熱および/または加湿された環境で実行されてもよい。
【0031】
(I)第1の組成物を印刷する間、ノズルおよび変形可能な基材は、変形可能な基材の上面およびノズルの先端部から測定して、Z軸(垂直)平面で互いに離間して配置される。ノズル先端部と変形可能な基材の上面との間のこの距離は、典型的には、「ノズル高さ」と記載され、本明細書ではそのように呼ばれることがある。ノズル高さを定義および/または測定するために使用される変形可能な基材の上面は、変形可能な基材が配設されるベース基材に対して変形可能な基材の最上部分に位置付けられる必要はないことを理解されたい。むしろ、ノズル高さを定義および/または測定するために使用される変形可能な基材の上面の表面は、変形可能な基材の任意の部分に位置付けることができ、典型的には、第1の層が印刷されたか、印刷されているか、または印刷されるであろう、例えば、ノズル高さが本方法の間に測定されるときに応じて、変形可能な基材の部分上に位置付けられる。例えば、ノズル高さは、典型的には、ノズル先端部の最下部分と、第1の組成物が最初に印刷される変形可能な基材の部分との間の、Z軸に沿った距離として、本方法の開始時に測定される。
【0032】
典型的には、ノズル高さは、以下に記載されるように、無数の要因、例えば、ノズルの寸法、第1の組成物およびその特性(粘度を含む)の選択、変形可能な第1のフィラメントの所望のサイズまたは形状、第1の層の所望の厚さ、形成される3D物品の所望の寸法などに基づいて選択される。これらまたは他の実施形態では、ノズル高さは二次パラメータであり、すなわち、それ自体は選択されないが、以下に記載されるように、別の選択された(すなわち、一次)印刷パラメータによって制御されるかまたはそれに関連付けられる。典型的には、ノズル高さは、1~2000mmの範囲、例えば、1~9mm、1~99mm、10~99mm、または100~2000mmである。しかしながら、いくつかの実施形態では、例えば、別の印刷パラメータ、リアルタイム調節などに基づいて、印刷中にノズル高さが変化する(すなわち、増大および/または減少する)。ノズル高さおよび/または速度は、手動測定(例えば、高さゲージ、定規などを利用するもの)、光学測定(例えば、強度ベースのセンサ、三角測量ベースのセンサ、飛行時間ベースのセンサ、ドップラーセンサなどの光学センサ、走査干渉計、ファイバブラッググレーティングなどを利用するもの)、および/または計算測定(例えば、3D印刷ソフトウェアを利用するもの)などの任意の技術、ならびにそれらの組み合わせおよび/または変形形態によって測定および/または決定されてもよい。
【0033】
変形可能な基材およびノズルのうちの少なくとも一方は、印刷中に他方に対して、ある速度でX-Y(水平)平面内で移動される。この移動は、典型的には、変形可能な基材が配設されている印刷プラットフォームを移動すること、装置のノズルを移動すること、またはその両方などの、上述の印刷条件のうちの1つによって実現される。変形可能な基材および/またはノズルの移動に言及しているが、この移動速度は、典型的には、「ノズル速度」と記載され、本明細書ではそのように呼ばれることがある。ノズル高さのように、ノズル速度は二次パラメータであり得、すなわち、それ自体は選択されないが、以下に記載されるように、別の選択された(すなわち一次)印刷パラメータによって制御されるかまたはそれに関連付けられる。典型的には、ノズル速度は、1~200mm/秒の範囲、例えば、1~100mm/秒、5~150mm/秒、10~100mm/秒、または15~50mm/秒である。しかしながら、いくつかの実施形態では、例えば、別の印刷パラメータ、リアルタイム調節などに基づいて、印刷中にノズル速度が変化する(すなわち、増大および/または減少する)。
【0034】
第1の組成物は本明細書でさらに詳細に記載され、第1の組成物自体ならびに以下にさらに記載される「組成物」に関する以下の記載および実施例を考慮して理解されるべきである。一般に、第1の組成物は、印刷を介して3D物品を形成する際に使用するのに好適な任意の組成物であってもよい。
【0035】
第1の組成物の特性は変化し得、典型的には、第1の組成物で利用される特定の組成物(複数可)に依存する。例えば、第1の組成物の粘度は、印刷に適した任意の粘度であってもよい。典型的には、第1の組成物の粘度は、以下に記載されるように、基材上に形成されたときに、変形可能な第1のフィラメントにある程度の自己支持性を提供するように選択される。このように、第1の組成物の粘度は、動的粘度として定義され得、これは、1,000~100,000,000センチポアズ(cP)の範囲、例えば、30,000~5,000,000cPであり得、ここで、1cPは、1mPa・sに等しい。印刷速度および層間接着力を高めるために、多くの場合、組成物は「チキソトロピー性」であることが望ましい。本明細書における粘度値は、特に明記しない限り、25℃でのものである。第1の組成物の粘度は、第1の組成物を加熱または冷却することによって、例えば、以下に記載されるように、ノズルまたは基材への、またはノズルまたは基材からの熱伝達を介して、周囲条件を変更することなどによって変更(すなわち、増大または減少)することができる。同様に、第1の組成物の弾性率は、例えば、選択された特定の印刷パラメータ、使用される組成物、形成される3D物品などに基づいて変化し得る。さらに、第1の組成物の弾性率は、経時的に、例えば、本方法中を含めて、第1の組成物の硬化(curing)、架橋、および/または硬化(hardening)に起因して変化し得る。典型的には、第1の組成物の弾性率は、0.01~5,000MPaの範囲、例えば、0.1~1,500MPa、0.1~500MPa、0.1~125MPa、0.2~100MPa、0.2~90MPa、0.2~80MPa、0.3~80MPa、0.3~70MPa、0.3~60MPa、0.3~50MPa、0.3~45MPa、0.4~40MPa、または0.5~10MPaである。これらの範囲は、印刷前、印刷中、および/または印刷後など、任意の時点で第1の組成物の弾性率に適用されてもよい。さらに、例えば、第1の組成物の弾性率が経時的に(例えば、印刷中および/または印刷後に)変化し得るとき、このような範囲の2つ以上が第1の組成物に適用され得る。特定の実施形態では、第1の組成物は、印刷時に、120MPa未満、あるいは110MPa未満、あるいは100MPa未満、あるいは90MPa未満、あるいは80MPa未満、あるいは70MPa未満、あるいは60MPa未満、あるいは50MPa未満、あるいは40未満MPa、あるいは30MPa未満の弾性率を有する。
【0036】
典型的には、第1の組成物の特性は、第1の組成物が、印加された力に応じて変形する能力(すなわち、変形性)および印刷中に液体および/または塑性流動を受ける能力(すなわち、流動性)を含むように選択される。以下にさらに記載されるように、このような変形可能性および/または流動性の特性は、例えば、第1の組成物における使用または第1の組成物としての使用のために選択される特定の構成成分に基づいて選択(すなわち、調整)されてもよい。さらに、第1の組成物の変形性および流動性は、例えば、硬化(curing)、架橋、および/または硬化(hardening)に起因して、経時的に変化し得る。
【0037】
第1の組成物は、ノズルの空洞を通過し、ノズル先端部から排出される(例えば、押し出されるかまたは吐出される)。したがって、印刷される第1の組成物の寸法(すなわち、断面形状、高さ、幅、直径など)は、典型的には、空洞の周辺形状および/もしくは寸法によって影響を受け、かつ/または決定付けられる。同様に、印刷中の第1の組成物の形態も、以下でさらに詳細に記載されるように、ノズルによって選択され、影響を受け、かつ/または決定付けられる。
【0038】
第1の組成物は、任意の形態で変形可能な基材上に印刷されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の組成物は、それから形成された第1の層が変形可能な第1のフィラメントを含むように、変形可能な第1のフィラメントとして変形可能な基材上に印刷される。「フィラメント」という用語は、本明細書では、例えば、1つ以上のストランドおよび/または繊維を含む、糸状形態を説明するために使用される。しかしながら、以下に記載されるように、このようなフィラメントの各々、またはこれらの組み合わせは、以下に記載されるように、様々な二次および/または三次形態で形成、配向、配置、またはその他の方法で配設されてもよい。同様に、各フィラメントは、長さに関して連続性または不連続性であってもよく、すなわち、単一の破断していないフィラメントであってもよいか、または複数の別個のフィラメントを含んでもよい。例えば、特定の実施形態では、変形可能な第1のフィラメントは、長さに関して連続性または不連続性であり得る。換言すれば、変形可能な第1のフィラメントは、単一の破断していないフィラメントであってもよいか、または複数の別個のフィラメントを含んでもよい。明確にするために、「変形可能な第1のフィラメント」という用語は、変形可能な第1のフィラメント全体を指すために本明細書で使用され、第1の組成物を含む単一のフィラメントまたは複数のフィラメントの両方に拡張されるか、またそれらを包含するものであり、これらのフィラメントは、各々が独立して選択されて第1の層に形成されてもよく、各々が典型的には変形可能である。同様に、本明細書に記載される他の任意のフィラメントに関して、「フィラメント」という用語自体は、組成物(例えば、第1の組成物、または本明細書に記載される任意の他の組成物)を含む単一のフィラメントまたは複数のフィラメントの両方を指し、したがってこれらを包含し得る。
【0039】
上記で紹介したように、変形可能な第1のフィラメント自体は、任意の形態を含み得る。例えば、変形可能な第1のフィラメントは、ランダム化され、パターン化され、線形の、非線形の、織布の、不織布の、連続性の、不連続性の形態であってもよいか、または任意の他の形態もしくは形態の組み合わせを有してもよい。例えば、変形可能な第1のフィラメントは、マット、ウェブであり得るか、または他の配向を有してもよい。変形可能な第1のフィラメントは、第1の層が変形可能な第1のフィラメントを交差しない様式で含むようにパターン化されてもよい。例えば、変形可能な第1のフィラメントは、複数の線形および平行なフィラメントまたはストランドを含み得る。あるいは、変形可能な第1のフィラメントは、第1の層自体がパターン化またはクロスハッチされたフィラメントを含むように、それ自体と交差してもよい。変形可能な第1のフィラメントのパターンまたはクロスハッチングは、変形可能な第1のフィラメントの各交差点において、直角、鋭角/鈍角、またはこれらの組み合わせを呈してもよく、その配向は、各交差点において独立して選択されてもよい。さらにまた、変形可能な第1のフィラメントは、第1の層の部分、あるいはその全体がフィルムの形態となるように、それ自体と接触および溶融または融合することができる。
【0040】
特定の実施形態では、変形可能な第1のフィラメントは、それ自体と溶融して、第1の層に1つの空隙、あるいは複数の空隙を画定することができる。しかしながら、典型的には変形可能な第1のフィラメントは、溶融物間の空隙が最小化または排除され、第1の層が空隙を含まないか、あるいは実質的に含まないように、変形可能な基材上に形成される。変形可能な第1のフィラメントの空隙充填能力は、以下にさらに記載されるように、(例えば、その粘度、流動性などに影響を及ぼすために)第1の組成物での使用のために選択された特定の構成成分によって、影響を受け得る(すなわち、選択的に増大または減少する)。
【0041】
上記で紹介したように、第1の組成物は、ノズルの空洞を通過し、ノズル先端部から排出される(例えば、押し出される)。したがって、空洞の全体的な形状は、第1の組成物の弾性率と併せて、第1の組成物から形成される変形可能な第1のフィラメントの寸法に影響を及ぼし、かつ/またはそれを決定付けることができる。例えば、ノズルは、拳の組成物がノズルを通過する間に半径方向に圧縮されるように、減少する先端部(すなわち、ベースIDよりも小さい先端部ID(di)を有する)であってもよい。このような場合、第1の組成物の粘弾性特性および押出速度は、変形可能な第1のフィラメントがノズルの先端部ID(di)よりも大きい外径まで減圧される程度を決定付けることになる。さらに、以下にさらに詳細に記載されるように、ノズルの外側部分(例えば、先端部)の形状は、ノズル高さが変形可能な第1のフィラメントの高さよりも小さく、ノズルの外側部分がフィラメントの表面に接触する場合など、変形可能な第1のフィラメントの寸法および/または形状に影響を及ぼすことがある。これらの場合には、ノズルを使用して、他の円筒形状の第1のフィラメントを変形させ(例えば「平滑化し」)、例えば、その上部を平らにし、また変形可能な第1フィラメントを(例えば、それに隣接する空隙を充填するために)外側に広げることなどができる。
【0042】
例として、図1の実施形態に示されるように、装置10は、ノズル12と、ベース基材(例えば、ベースプレート)20と、を含む。ノズル12は、内径(di、24)を含む内部空洞22を画定する。ノズル12は、第1の組成物14を、ベース基材20上に位置付けられている変形可能な基材18上に印刷して、第1のフィラメント16を形成する。第1の組成物14を印刷する間、ノズル12は、距離26だけ変形可能な基材18から離間される。
【0043】
第1の組成物の印刷中、装置および/またはビルドプレート(利用される場合)の振動および移動からのもの、ならびに重力力(例えば、変形可能な基材に直接作用するもの)からのものを含む既知の力が、様々な様式で変形可能な基材に印加され、これは、当該技術分野において理解されるとおり、典型的には、加速度を制御し、静止したビルドプレートを利用し、3Dプリンタの剛性を増大させる従来の方法を通じて克服されている。しかしながら、この開示は、ノズルで上部に第1の組成物を印刷することによって引き起こされるように本明細書に示されている、変形可能な基材に印加される接線力および法線力(すなわち、「変形力」)を減少および/または排除することを含む方法を提供する。複数の連続した層を形成する場合、各先行層は後続の各層の基材とみなすことができ、したがって、本発明の方法は、接線力および法線力を減少および/または排除しながら、多数の連続した層を印刷するのに有利に利用でき、これにより、層および3D物品の歪みを減少および/または排除することができる。
【0044】
より具体的には、第1の組成物を印刷すると、変形可能な基材とノズル先端部との間の変形可能な第1のフィラメントの引きずりおよび/または引っ張りに起因して、変形可能な基材に接線力を印加することができる。(例えば、ノズルから押し出された)印刷中の第1の組成物の運動量が、変形可能な基材に法線力を印加できることも見出された。さらに、ノズルの外側部分(例えば、先端部の側面および/または底部)が変形可能な基材に印刷された第1の組成物に接触する(例えば、それを通って引きずる)ことによって引き起こされる追加の接線力および法線力も見出された。
【0045】
理論に縛られることを望まないが、これらの変形力は、変形可能な基材への3D物品の印刷、軟質および/または変形可能な材料からの3D物品の印刷、および押出ベースのAMを使用した複雑で入り組んだ構造体の印刷における従来の方法の欠陥および欠点の原因となると考えられている。より具体的には、これらの変形力により、変形可能な基材上および/または変形可能なフィラメントで印刷された構造体が一定のレベルで歪み、AMプロセスに劣化および/または不具合を引き起こし、形成される3D物品の精度が損なわれ、形成される3D物品の引張強度が低下することがあると考えられている。さらに、これらの問題は、軟質材料を含む正確で空隙のない3D物品の形成における従来の方法の使用を妨げることが知られている。したがって、以下の説明から理解されるように、本開示の方法は、このような従来の方法の制限を克服し、変形可能な基材、フィラメント、および層を利用して、複雑さが増大した(例えば、高さが増大した、厚さが減少した、パターンの複雑さが増大した)、および歪みが減少した構造体を有する正確に印刷された3D物品を形成する。より具体的には、方法は、ノズルによって変形可能な基材に印加された変形力を(例えば、直接および/または第1の組成物を介して)減少させ、一方で空隙のない層およびまたは形成される3D物品を依然として提供することを含む。特定の実施形態では、変形力は、上述の法線力を含む。これらまたは他の実施形態では、変形力は、上述の接線力を含む。特定の実施形態では、本方法は、上述の接線力と法線力との両方を含む変形力を減少させることを含む。
【0046】
ノズルによって変形可能基材に印加される変形力を減少させるために、本方法は、(I)変形可能な基材上に第1組成物を印刷する間に、(II)第1の組成物が印刷される体積流量を制御することを含む。
【0047】
本明細書では、「体積流量」という用語は、ノズル速度(v)、ノズル高さ(t)、変形可能な基材上の隣接する障害物(例えば、フィラメント、リミッタ、インプラント、または第1の組成物が変形可能な基材上に印刷されている領域に隣接して配置された他の「壁」)の間隔(c)に関連して、印刷されている第1の組成物の寸法(Q)を説明するために使用される。典型的には、隣接する障害物は、本方法中に形成されるフィラメントであり、したがって、間隔係数(c)は、本明細書では、隣接線間隔(c)と呼ばれる。より具体的には、体積流量(Q)は、以下の式1に示されるように、ノズル速度(v)×充填されるべき領域、すなわち隣接線間隔(c)×ノズル高さ(t)に等しいものとして計算されてもよい。
Q=ctv(式1)
【0048】
したがって、(II)体積流量を制御することは、ノズル速度(v)、隣接線間隔(c)、ノズル高さ(t)、またはそれらの組み合わせについて特定の値を独立して選択することを含み得る。特定の実施形態では、(II)体積流量(Q)を制御することは、エッジプロファイル、隣接線間隔(c)などの変形可能な基材の形状を選択的に制御することを含む。
【0049】
典型的には、第1の組成物は自由流動性ではなく、第1の組成物を自己支持性にするのに十分な粘度、すなわちチキソトロピー性を含む。このような場合、空隙のない層および/または第1の組成物を含む3D物品を形成するために、第1の層を形成することは、組成物を(例えば、横方向に)広げ、隣接する間質空間を充填するために、第1の組成物またはそれから形成された第1のフィラメントを圧縮する(例えば、それに圧縮力を印加する)ことを含む。したがって、特定の実施形態では、体積流量(Q)はまた、必要な圧縮力を説明するために、以下の式2に示されるように、圧縮係数(X)も含む。
Xc=Q/tv (2)
【0050】
式(2)は、任意の値(c、t、v、Q)またはこれらの組み合わせを調節して、所与の圧縮係数(X)を実現できるように書き換えることもできる。したがって、圧縮係数(X)は、体積流量(Q)、ノズル速度(v)、隣接線間隔(c)およびノズル高さ(t)の既知の値に基づいて、経験的に測定されてもよく、または数学的に解かれてもよいことが理解されるであろう。したがって、(II)体積流量(Q)を制御することは、体積流量(Q)、ノズル速度(v)、隣接線間隔(c)、ノズル高さ(t)、および圧縮係数(X)のいずれか、またはそれらの任意の組み合わせを調節することを含み得る。したがって、特定の実施形態では、(II)体積流量(Q)を制御することは、第1の組成物が印刷中にノズルから排出される流量(すなわち、体積、速度など)を選択的に制御することを含む。これらまたは他の実施形態では、(II)体積流量(Q)を制御することは、ノズル高さ(t)を選択的に制御することを含む。いくつかの実施形態では、(II)体積流量(Q)を制御することは、ノズル速度(v)を選択的に制御することを含む。特定の実施形態では、圧縮係数(x)は、ノズル先端部ID(di)に対するノズル先端部ID(di)とノズル高さ(t)との間の差の比を表す。したがって、(II)体積流量(Q)を制御することは、ノズルの寸法(例えば、サイズおよび/または形状、先端部ID(di)など)を選択的に制御することを含み得る。
【0051】
典型的には、圧縮係数(X)は0.3~1.5の範囲である。例えば、特定の実施形態では、圧縮係数(X)は、0.7~1.3、例えば、0.8~1.3、0.9~1.3、0.9~1.2、または1~1.1である。しかしながら、典型的には少なくとも以下に依存する圧縮係数(X)については、任意の値を使用することができることが理解されよう:(1)第1の組成物の変形性(例えば、粘度、弾性率、硬化状態など);(2)ノズルから離れる際の第1の組成物の運動エネルギー;(3)重なり合った印刷されたフィラメントのエッジプロファイル(例えば、押出線);および(4)第1の組成物が堆積されている(すなわち、印刷されている)変形可能な基材の領域。例えば、(例えば、第1の組成物として使用するための)より低い粘度を有する材料は、それを使用して形成された層内の空隙のない断面を達成するために、より低い圧縮係数(X)を必要とすることがあり(他の全ての条件が同じである場合)、というのも、このような材料は、より高い粘度を有する材料よりも、隣接する間質空間を変形および充填するのに必要な力が少なくなるからである。さらに、ノズル先端部ID(di)が減少するか、Qとvとが比例して増大する場合、第1の組成物の出口速度が増大し、潜在的に、大きな運動エネルギーおよび大きな変形圧縮を変形可能な基材に付与する。また、層のエッジに隣接する線の圧縮がないことに起因して、隣接線間隔(c)を個別に調節する必要がある。このような場合には、隣接線間隔は、典型的には、cエッジとしてさらに定義され(およびこれによって置き換えられ)、これは通常、cよりも小さい。同様に、組成物(例えば、変形可能な基材、第1の組成物など)が、その第1の層上で、剛性基材(例えば、ベース基材、硬化(hardened)/硬化(cured)層など)に対して押し出されると、組成物は、その上の追加の層によって圧縮されない最終的な最上層よりも多く変形する可能性がある。このような場合、体積流量(Q)は、(II)体積流量(Q)を制御する間に独立して選択することができる追加の圧縮係数をさらに含むことができる。
【0052】
上述のように、ノズルで第1の組成物を印刷することにより、変形可能な基材に変形力が付与される。したがって、特定の実施形態では、(II)体積流量(Q)を制御することは、ノズルの外側部分(例えば、先端部の側面および/または底部)と変形可能な基材上に形成された変形可能な第1のフィラメントとの間の接触を減少させるか、あるいは最小化するか、またはあるいは排除するために、第1の組成物の体積流量(Q)を減少させることを含む。これらまたは他の実施形態では、(II)体積流量(Q)を制御することは、変形可能な基材とノズル先端部との間の変形可能な第1のフィラメントの引きずりおよび/または引っ張りを減少させるか、あるいは最小化するか、あるいは排除するために、第1の組成物の体積流量(Q)を増大または減少させることを含む。特定の実施形態では、(II)体積流量(Q)を制御することは、第1の組成物を変形可能な基材上に印刷する間の第1の組成物の運動量を減少させるか、あるいは最小化するために、第1の組成物の体積流量(Q)を増大または減少させることを含む。
【0053】
例として、4つのシナリオの自由体図を図2A図2Dに示す。各シナリオでは、第1の組成物14は、ノズル12で変形可能な基材18上に体積流量(Q)で印刷される。第1の組成物14を印刷する間、ノズル12は、ノズル高さ(t)だけ変形可能な基材18から離間し、ノズル12は、ノズル速度(v)で変形可能基材18に対して、ある方向に移動する。図2A図2Dにそれぞれ示されるように、シナリオ1~4へ移動すると、体積流量(Q)が増大する。換言すれば、図2の4つのシナリオ全体で、体積流量(Q)は、図2Aの第1の体積流量(Q1)としてさらに定義され、体積流量(Q)は、図2Bの第2の体積流量(Q2)としてさらに定義され、体積流量(Q)は、図2Cの第3の体積流量(Q3)としてさらに定義され、体積流量(Q)は、図2Dの第4の体積流量(Q4)としてさらに定義され、Q1<Q2<Q3<Q4である。
【0054】
第1のシナリオでは、図2Aに示されるように、ノズル12が第1の組成物14を第1の体積流量(Q1)で変形可能な基材18上に印刷する場合、ノズル12は、以前印刷された第1の組成物14と接触しない。このシナリオでは、変形力の構成成分は以下のものを含む:第1の組成物14の重量によって引き起こされる法線力である、Fng;第1の組成物が一旦印刷されると減速することによって引き起こされる法線力である、Fnd;ノズル12が変形可能な基材18上で第1の組成物14を引きずり、引き伸ばすことによって生じる接線力である、Ftd
【0055】
第2のシナリオでは、図2Bに示されるように、ノズル12が第1の組成物14を第2の体積流量(Q2)で変形可能な基材18上に印刷する場合、ノズル12は、以前印刷された第1の組成物14を通って引きずり、その上面を平滑化するように作用する。このシナリオでは、第1のシナリオで存在した3つの力(Fng、Fnd、Ftd)が、2つの追加の力に加えて存在する。Ftnは、ノズル12が変形可能な基材18上に以前印刷された第1の組成物14を通って移動することによって引き起こされる接線力であり、Fnnは、ノズル12が変形可能な基材18上に以前印刷された第1の組成物14と相互作用することによって引き起こされる法線力である。図2Aの第1のシナリオと比較して、第2のシナリオの所与の空間でより多くの最初の組成物12が印刷されており(すなわち、Q2>Q1であることに起因して)、第1の組成物14の重量が増大することに起因してFngを増大させ、第1の組成物14がノズル12から離れて変形可能な基材18上で減速する際の第1の組成物14のより大きな運動量に起因してFndを増大させ、第1の組成物14が以前印刷されたノズル12の移動によってそれほど引き伸ばされなくなるようにFndを減少させる。
【0056】
図2Cに示されるように、第3のシナリオでは、ノズル12が第1の組成物14を第3の体積流量(Q3)で変形可能な基材18上に印刷し、第1の組成物14は、変形可能な基材18に接触する際に、ノズル12の内径から前方に流れる。第1の組成物のこの「外向きの押し出し」は、ノズル12の開口部の前に通じる流れ場を作成する。したがって、この第3のシナリオでは、印刷中に第1の組成物14がノズル12によってもはや引き伸ばされていないので、Ftdは理論的には0である。逆に、FngおよびFndは、上記の第2のシナリオに関して記載したのと同じ理由で(すなわち、図2Bに示される第2のシナリオと比較して)増大すると予想される。
【0057】
最後に、図2Dに示されるように、第4のシナリオでは、ノズル12が第1の組成物14を変形可能な基材18に第4の最も高い体積流量(Q4)で印刷し、流れ場がノズル12自体(すなわち、図2Cの第3のシナリオにおけるようなノズル12の開口部の前と比較して)に移動しており、これにより、第2および第3のシナリオのように、ノズル12の底面に加えて、ノズル12の側面が第1の組成物14を通って引きずることになる。この第4のシナリオでは、Fng、Fnd、およびFtnは全て、図2A図2Dの4つのシナリオの中で最大のレベルになる。
【0058】
上記で紹介したように、本装置は、第1の組成物の印刷を担当する構成要素に加えて、構成要素を備えることができる。例えば、本装置は、センサ(例えば、カメラ、レーザ変位センサ、検出器など)および/または制御システムを備えるか、またはそれらに動作可能に接続されるか、またはそれらと電子通信することができる。
【0059】
特定の実施形態では、本装置はセンサを備える。このような実施形態では、センサは、変形可能な基材に付与された変形力を測定するために使用される。したがって、センサは限定されず、変形力を直接(例えば、変形可能な基材自体の測定を介して)および/または間接的に(例えば、変形力が変形可能な基材から伝達される別の構成要素の測定を介して)測定するのに好適な任意のデバイスであってもよい。さらに、センサは、法線方向の変形力、接線方向の変形力、またはその両方を測定することも可能であり得る。センサは、装置と統合されていても、独立型デバイスとして組み込まれてもよい。さらに、センサ自体は、様々な構成要素(例えば、カメラ、検出器、レーザなど)を備えるシステムであってもよく、または互いに同じかもしくは異なる複数のセンサを備えてもよい。典型的には、センサは、その上に第1の組成物を印刷する間に変形可能な基材に付与された変形力を測定することから変形データを生成する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本装置は制御システムを備える。このような実施形態では、制御システムは、本装置の1つ以上の構成要素を制御するために使用される。したがって、制御システムは限定されず、独立型制御ユニットまたは別個の構成要素(例えば、コンピュータ、コントローラなど)の組み合わせであってもよい。
【0061】
特定の実施形態では、装置自体は、様々な3D印刷構成要素(例えば、ハードウェア)に加えて、1つ以上の埋め込みセンサおよび搭載コンピュータを含む。これらの実施形態では、センサ、コンピュータ、および3D印刷ハードウェアは、特定の入力に応答して(例えば、リアルタイムで)印刷パラメータを調節できる閉ループフィードバック構成に配置される。入力は、センサによって生成された変形データを含んでもよく、これは、コンピュータによって読み取られ、ユーザ指定の値(変形力の閾値など)と比較される。この比較に基づいて、コンピュータは3D印刷ハードウェアを制御して、体積流量(Q)などの1つ以上の印刷パラメータを調節する。センサは、上述のように、ノズル高さ(t)、ノズル速度(v)、層高さなど、またはそれらの組み合わせを決定および/または測定するための光学および/または位置センサを含み得る。その代わりにまたはそれに加えて、本装置は、1つ以上の位置および/または空間評価を測定および/または決定する(例えば、印刷される3D対象物、例えば、その層またはフィラメントの1つ以上の部分の高さ、幅、長さ、形状などを決定する)ために、画像分析を実施するように構成されたコンピュータと通信するカメラを備えてもよい。このようにして、(II)体積流量を制御することは、上述の制御システムおよびセンサを備える閉ループフィードバック制御システムを利用することを含み得る。
【0062】
例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、上述の閉ループフィードバック構成を含む、所定の変形力閾値を(例えば、入力または自動計算を介して)装置に提供することを含む。これらの実施形態では、センサは、ノズルによって変形可能な基材に印加されている変形力を定期的または継続的に測定し、コンピュータは、このように測定された変形力を所定の変形力閾値と定期的または継続的に比較する(すなわち、印刷をリアルタイムで監視する)。さらに、コンピュータは、センサによって測定された変形力が所定の変形力閾値(例えば、閾値は最大閾値である)を超えることに応じて、体積流量(Q)を調節するようにプログラムされている。典型的には、コンピュータは、センサによって測定された変形力が所定の変形力閾値を下回る(すなわち、それより下になる)まで、体積流量(Q)を繰り返しまたは連続的に調節するようにプログラムされている。もちろん、その代わりにまたはそれに加えて、コンピュータは、測定された変形力を最少の所定の変形力閾値と比較してもよい。このような場合、コンピュータは、必要に応じて体積流量(Q)を調節(例えば、増大または減少)させることによって、測定された変形力を最小および最大の所定の変形力閾値の間に維持するようにプログラムされてもよい。
【0063】
上述のように、体積流量(Q)は様々な要因の影響を受け、それらは各々、体積流量(Q)を調節(例えば、増大および/または減少)させるように独立して制御することができ、また使用される特定の組成物(複数可)、基材、および印刷パラメータによって決定付けられる。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、ノズルによって変形可能な基材に印加される変形力を減少させるために体積流量(Q)を選択的に制御するためのパラメータを確立するために、第1の組成物の流量、ノズル速度、ノズル高さ、ノズル寸法(例えば、先端部ID(di)、サイズ、形状など)、および/または変形可能な基材の形状の関数として体積流量(Q)をプロットすることを含む。これらの実施形態では、パラメータは、プロットされた係数のうちの1つに対する特定の変化によって達成される体積流量(Q)に対する調節の絶対値(増大または減少の量)などの様々な情報を含み得る。このようにして、影響を受ける体積流量(Q)に対する調節の程度を選択するために、パラメータを使用することができる。その代わりにまたはそれに加えて、パラメータを使用して、体積流量(Q)に対する特定の調節によって影響を受ける1つ以上の変形力の減少の程度を選択することができる。これらまたは他の実施形態では、体積流量(Q)に対する調節によって影響を受ける変形力の減少における調節の程度は、センサおよびコンピュータを使用して計算され、容積流量(Q)を選択的に制御するためのパラメータを確立するためにプロット中に使用されてもよい。特定の実施形態では、様々な係数のプロットは、自動的に(例えば、本方法の始めに、各組成物を印刷する前に、本方法全体を通じて定期的に、本方法中に継続的になど、実施される。
【0064】
第1の組成物は、第1の層が変形可能な基材上に形成されるように、変形可能な基材上に印刷される。一般に、第1の層は、任意の形状および寸法を有し得る。例えば、第1の層は、従来の層のように連続性である必要はない。同様に、第1の層は一定の厚さを有する必要はない。むしろ、本方法によって形成される3D物品の所望の形状に応じて、第1の層は任意の形態をとることができる。例えば、第1の層は、厚さを含むその寸法において連続性または不連続性であり得るフィルムを含み得る。典型的には、上述のように、第1の層はフィラメントを含む。その代わりにまたはそれに加えて、第1の層は、第1の組成物から形成された溶融液滴を含み得る。溶融液滴は独立してサイズ決定および選択されてもよく、例えば、溶融液滴が互いに接触していてもよく、互いに離間していてもよく、少なくとも部分的に重なり合っていてもよい、などの任意の所望の堆積パターンを有してもよい。特定の実施形態では、第1の層は、空隙がなく、あるいは、実質的に空隙がない。
【0065】
本方法は、任意選択的な追加の層(複数可)のために独立して選択された組成物(複数可)を用いて(I)および(II)を繰り返すことを任意に含み得る。例えば、特定の実施形態では、本方法は、第2の組成物を印刷して、第2の組成物を含む第2の変形可能なフィラメントを第1の層の変形可能な第1のフィラメント上に形成し、第2の変形可能なフィラメントを含む第2の層を第1の層上に得るステップをさらに含む。これらの実施形態では、第2の組成物は、第1の組成物と同じ様式または異なる様式で印刷されてもよい。しかしながら、(I)第1の組成物を印刷して第1の層を形成することに関する上記の説明はまた、第2の組成物を第1の層上に印刷して、その上に第2の層を形成することにも適用でき、各印刷ステップの各態様は独立して選択される。典型的には、第2の組成物は、第2の体積流量で印刷され、このような方法はまた、第2の組成物を上部に印刷する間に、ノズルによって第1の層の変形可能な第1のフィラメントに印加される変形力を減少させるように第2の体積流量を制御することを含んでもよい。第2の体積流量は、第1の組成物が印刷される第1の体積流量と同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、体積流量の各々は、第1の組成物の印刷に関して上述した様式で制御される。概して、第2の層は、第1の層の露出した表面の一部分とのみ接触してもよく、または第1の層と完全に重なり合ってもよい(すなわち、第1の層と同程度であってもよい)。例えば、3D物品の所望の形状に応じて、第2の層は、第1の層の上に選択的に、または完全に構築され得る。以下にさらに詳細に記載するように、第2の組成物は、第1の層を形成するために利用される第1の組成物と同じであっても異なっていてもよい。同様に、追加の層は、上述の印刷ステップで、以下に記載されるように、追加の組成物を利用して形成されてもよい。
【0066】
必要な層の総数は、例えば、3D物品のサイズおよび形状、ならびに個々および集合層の寸法によって異なることになる。当業者は、3D走査、レンダリング、造形(例えば、パラメトリックおよび/もしくはベクトルベースの造形)、彫刻、設計、スライス、製造、ならびに/または印刷ソフトウェアなどの従来の技術を使用して、必要または所望の層の数を容易に決定することができる。特定の実施形態では、3D物品が最終的に固化または硬化した状態になると、個々の層を識別できないことがある。
【0067】
第1の層および任意の追加の(例えば、後続または後半の)層(複数可)は、以下に記載されるように任意選択的に含まれ、本明細書では集合的に「層」と呼ばれる。この意味で、「層」は、本明細書において複数形で使用され、例えば、未固化および/または未硬化の状態で、部分的に固化および/または部分的に硬化した状態で、固化または最終硬化状態でなど、本方法の任意の段階での層に関連している。概して、特定の層に関連する以下の記載は、層が独立して形成されて選択されるので、任意の他の層にも適用可能である。特定の実施形態では、上述のように、本方法は、上部に第1の層を形成する前に変形可能な基材を形成することを含む。したがって、「層」は、概して、層の任意の特性および/または特徴の記載、その固化条件への曝露などに関して、変形可能な基材も包含する。
【0068】
各層は、厚さおよび幅を含む、様々な寸法を有することができる。層の厚さおよび/または幅の許容誤差は、使用される3D印刷プロセスによって異なる場合があり、特定の印刷プロセスは高解像度を有し、他の印刷プロセスは低解像度を有する。層の厚さは均一であるか、または変化する可能性があり、層の平均厚さは同じであっても異なっていてもよい。平均厚さは、概して、印刷直後の層の厚さと関連付けられている。様々な実施形態では、層は独立して、約1~約10,000μm、例えば、約2~約1,000μm、約5~約750μm、約10~約500μm、約25~約250μm、または約50~100μmの平均厚さを有する。より薄く、より厚い厚さもまた企図される。本開示は、層のいずれかの特定の寸法に限定されない。当該技術分野において理解されているとおり、層の厚さおよび/または幅は、手動測定(例えば、厚さゲージ、キャリパー、マイクロメータ、定規などを利用するもの)、光学測定(例えば、強度ベースのセンサ、三角測量ベースのセンサ、飛行時間ベースのセンサ、ドップラーセンサなどの光学センサ、走査型インフェロメトリ、ファイバブラッググレーティングなどを利用するもの)、および/もしくは計算測定(3D印刷ソフトウェアを利用するもの)などの任意の技術、ならびにこれらの組み合わせおよび/もしくは変形形態によって、測定および/または決定されてもよい。典型的には、特定の層の厚さは、特定の層が配設される基材に隣接する第1の部分と第1の部分の反対側の第2の部分との間の距離など、その対向する部分から測定される。この方法では、層の厚さはZ軸でのみ測定されてもよい。しかしながら、隣接する層がX-Y平面内で互いにオフセットされている(すなわち、Z軸内で完全に「積層」されているのではなく、オフセットされている)場合には、層の厚さも同様にオフセットされた様式で測定されてもよい。
【0069】
第2の層が形成される場合、第1および第2のフィラメントは、それぞれ、本明細書では、変形可能な第1のフィラメントおよび変形可能な第2のフィラメントと呼ばれ、これは、独立して選択および形成され得る単一のフィラメントまたは複数のフィラメントを含む、第1および第2の非線形フィラメントの各々に拡張され、またこれを包含する。しかしながら、このような言及は、追加のフィラメントを含む任意の追加の層にも当てはまる場合があることを理解されたい。
【0070】
典型的には、層は実質的に空隙を含まない。しかしながら、特定の実施形態では、層の各々は、層の形態に関係なく、ランダム化および/または選択的に固化されたパターンを有し得る。
【0071】
所望であれば、様々な形状、寸法を有し、任意の好適な材料を含み得る挿入物を、本方法の間に任意の層上に、または少なくとも部分的に任意の層内に、配設または配置することができる。例えば、後続の印刷ステップの間に挿入物を利用することができ、3D物品の形成時に挿入物を3D物品と統合することができる。あるいは、挿入物は、例えば、空洞を残すために、または他の機能的もしくは審美的目的のために、本方法の間の任意のステップで除去されてもよい。このような挿入物を使用すると、印刷のみに依存するよりも、より良好な審美性および経済性が提供され得る。
【0072】
最後に、本方法は、(III)層(複数可)を固化条件に曝露することを含む。固化条件は、第1の層、任意の追加のまたは後続の層(複数可)、および/または変形可能な基材の固化に寄与する任意の条件であり得る。例えば、固化は、層(複数可)の硬化またはその架橋密度の増加の結果であり得る。あるいは、固化は、層内の物理的変化の結果であり得、例えば、好適な組成物に関して以下に記載されるように、組成物および/または対応する層(複数可)のいずれかに存在し得る任意の媒体を乾燥または除去する。各層は独立して選択されるため、固化条件は各層に対して変化し得る。
【0073】
以下に記載されるような特定の組成物の選択に応じて、固化条件は、(i)水分への曝露、(ii)熱への曝露、(iii)照射への曝露、(iv)周囲温度の低下、(v)溶媒への曝露、(vi)機械的振動への曝露、(vii)酸素への曝露、または(viii)(i)~(vi)の組み合わせから選択されてもよい。固化条件は、典型的には、層を少なくとも部分的に固化させ、あるいは固化させる。
【0074】
層は、本方法の任意の時点で固化条件に曝露されてもよく、固化条件への曝露は、本方法で2つ以上の層が形成されるまで遅延される必要はない。例えば、各層は個々に固化条件に曝露されてもよく、または層の全てが集合的に固化条件に曝露されてもよい。具体的には、第2の層を上部に形成する前に、第1の層を固化条件に曝露して、第1の層を少なくとも部分的に固化させることができる。同様に、第2の層は、追加の層について任意の印刷ステップを繰り返す前に、少なくとも部分的に固化させてもよい。これらの層はまた、各印刷ステップの前に少なくとも部分的に繰り返し固化していたとしても、互いに接触しているとき、層は固化条件にさらされるか、または曝露されてもよい。
【0075】
層の少なくとも部分的な固化は、概して硬化を示すが、硬化は他の方法で示されてもよく、固化は硬化とは無関係であってもよい。例えば、硬化していることは、粘度増大、例えば層の増粘、層の温度上昇、層の透明度/不透明度の変化、表面または全体の硬度上昇などによって示されてもよい。概して、層の物理的および/または化学的特性は、各層を少なくとも部分的に固化させて、少なくとも部分的に固化した層をそれぞれ得る際に変更される。例えば、層の変形性は、典型的には、層の固化度の増大と共に減少する。
【0076】
特定の実施形態では、「少なくとも部分的に固化した」は、特定の少なくとも部分的に固化した層が、周囲条件に曝露されてもその形状を実質的に保持することを意味する。周囲条件とは、少なくとも温度、圧力、相対湿度、および少なくとも部分的に固化した層の形状または寸法に影響を及ぼす可能性がある任意の他の条件を指す。例えば、周囲温度は室温である。周囲条件は、加熱する(または高温を加える)固化条件と区別される。「その形状を実質的に保持する」とは、少なくとも部分的に固化した層の大部分がその形状を保持すること、例えば、少なくとも部分的に固化した層が周囲条件に曝露されても流動または変形しないことを意味する。実質的に、とは、少なくとも部分的に固化した層の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、もしくは少なくとも約99.999%、またはより多くの体積が、例えば1分後、5分後、10分後、30分後、1時間後、4時間後、8時間後、12時間後、1日後、1週間後、1か月後などの期間にわたり、同じ形状および寸法に維持されることを意味し得る。言い換えると、形状を実質的に保持するとは、周囲条件への曝露に際し、重力が少なくとも部分的に固化した層の形状に実質的に影響を及ぼさないことを意味する。少なくとも部分的に固化した層の形状は、少なくとも部分的に固化した層がその形状を実質的に保持するかどうかにも影響を及ぼし得る。例えば、少なくとも部分的に固化した層が長方形であるか、または別の単純化した形状を有する場合、少なくとも部分的に固化した層は、より入り組んだ形状を有する少なくとも部分的に固化した層よりもさらに低い固化レベルでの変形に対してより耐性があり得る。
【0077】
より具体的には、1つ以上の層を固化条件に曝露させる前、第1の組成物(さらには第2の組成物および任意の後続の組成物)は概して流動性であり、液体、スラリー、またはゲル、あるいは液体またはスラリー、あるいは液体の形態であり得る。各組成物の粘度は、3Dプリンタのタイプおよびその吐出技術、または他の検討要件に応じて独立して調節することができる。粘度の調節は、例えば、組成物のいずれかを加熱または冷却すること、その組成物の1つ以上の構成成分の分子量を調節すること、溶媒、担体、および/または希釈剤を添加または除去すること、充填剤またはチキソトロープ剤を添加すること、などによって実現することができる。
【0078】
第2の組成物を印刷する前に第1の層を少なくとも部分的に固化させる場合、第2の層を形成するための第2の組成物の印刷は、少なくとも部分的に固化した第1の層が最終的に固化した状態に達する前に、すなわち、少なくとも部分的に固化した第1の層が依然として変形可能な間に行われる。この意味で、少なくとも部分的に固化した第1の層も「未熟」である。本明細書で使用する場合、「未熟」という用語は、当技術分野における従来の理解に従って使用され、部分的な固化および/または部分的な硬化を包含するが、最終的な固化および/または硬化状態は包含しない。部分的な固化および/または硬化状態と最終的な固化および/または硬化状態との区別は、部分的に固化したおよび/または硬化した層が、さらに固化、硬化および/または架橋を受けることができるか否かによる。第1の組成物の構成成分の官能基は、最終的な固化および/または硬化状態においても存在し得るが、立体障害または他の要因のため、未反応のまま残っていてもよい。
【0079】
これらの実施形態では、層を印刷することは、隣接した層が互いに、少なくとも物理的に、かつ化学的にもまた結合し得るような、「ウェットオンウェット」であるとみなすことができる。例えば、特定の実施形態では、組成物の選択に応じて、各層の構成成分は、印刷線を横切って化学的に架橋/硬化することができる。特定の実施形態では、第1の組成物は、第1の層が形成後も未熟のままであるように、第1の層の印刷時間よりも長い指触乾燥時間を有する。これらの実施形態では、第2の変形可能なフィラメントは、第1および第2の層が互いに化学的に架橋/硬化するように、第1の組成物の指触乾燥時間内で第1の層上に形成される。印刷線を横断して伸長する架橋ネットワークを有することには、3D物品の寿命、耐久性、および外観に関する特定の利点があり得る。層はまた、3D物品の支持または別の機能を提供することができる1つ以上の下部構造の周りに形成されてもよい。他の実施形態では、組成物は硬化性ではなく、このため3D物品においては層が互いに単に物理的に結合するだけである。
【0080】
層をウェットオンウェットにて適用する場合、ならびに/または層が部分的にのみ固化したおよび/もしくは部分的にのみ硬化した場合、層を硬化および/または固化条件に曝露する任意の繰り返しステップにより、直前に印刷された層以外の硬化にも影響が及ぼされ得る。上述のように、硬化は印刷線を越えてまたは横断して伸長できるため、また層を含む複合体が典型的には固化条件に供されるため、層を硬化および/または固化条件に曝露する後続のステップに際し、任意の他の部分的に硬化したおよび/または固化した層もまた、さらにあるいは完全に硬化および/または固化し得る。例として、本方法は、第2の組成物を印刷して、少なくとも部分的に固化した第1の層上に第2の層を形成することを含み得る。別の組成物を印刷して第2の層上に別の層を形成することに、別の組成物を印刷して少なくとも部分的に固化した第2の層上に別の層を形成することが含まれるように、別の組成物を印刷して第2の層上に別の層を形成する前に第2の層を固化条件に曝露してもよい。しかしながら、このような実施形態では、第2の層を固化条件に曝露させることにより、第1および第2の組成物の選択に応じて、少なくとも部分的に固化した第1の層もまたさらに硬化および/または固化し得る。同じことが任意の追加または後続の層にも当てはまる。
【0081】
さらに、所望であれば、層の全てまたはいくつかを含む複合体を、最終硬化ステップであり得る最終固化ステップに供してもよい。例えば、3D物品が所望の固化状態にあることを確実にするために、層を印刷および少なくとも部分的に固化させることで形成した複合体を、異なるタイプの固化条件下で層が固化され得る、さらなる固化ステップまたはさらなる固化ステップ群に供してもよい。最終的な固化ステップは、所望であれば、任意の以前の固化ステップ、例えば、各層または任意の層に関連付けられた反復固化ステップと同じであっても異なっていてもよい。
【0082】
基材組成物、第1の組成物、第2の組成物、および後続または追加の層を印刷するために利用される任意の後続または追加の組成物は独立して選択され、互いに同じであっても異なっていてもよい。明確にするため、以下の「組成物(the composition)」または「組成物(the compositions)」への言及は、基材組成物、第1および/もしくは第2の組成物、ならびに/または後続もしくは追加の層を印刷するために利用される任意の後続もしくは追加の組成物に適用可能であり、したがって、特定の組成物のいずれかが任意の他の組成物と同じであることを必要とするものとして解釈されるべきではない。
【0083】
特定の実施形態では、組成物のうちの少なくとも1つ、例えば、基材組成物、第1の組成物、第2の組成物、および/または任意の後続のもしくは追加の組成物は、(a)樹脂、(b)シリコーン組成物、(c)金属、(d)スラリー、または(e)(a)~(d)の組み合わせを含む。
【0084】
特定の実施形態では、組成物のうちの少なくとも1つ、例えば、基材組成物、第1の組成物、第2の組成物、および/または任意の後続のまたは追加の組成物は、樹脂を含む。本明細書の説明を考慮して理解されるように、樹脂は、有機樹脂、シリコーン樹脂、またはこれらの組み合わせを含んでもよく、あるいはそれらであってもよい。好適な有機樹脂の特定の例は、樹脂に関して概して以下に記載され、好適なシリコーン樹脂の特定の例は、シリコーン組成物の様々な構成成分に関してさらに以下に記載される。この意味で、シリコーン組成物で使用するために例示されたシリコーン樹脂は、本明細書に記載された任意の組成物において、またはそれらのいずれかの樹脂として、追加的または代替的に使用されてもよい。
【0085】
「樹脂」という用語は、ポリマー(例えば、天然または合成)を含み、硬化(cured)および/または硬化(hardened)され得る(すなわち、樹脂が未硬化(uncured)および/または未硬化(unhardened)の状態の組成物を含む)組成物を説明するために慣習的に使用される。しかしながら、「樹脂」という用語はまた、硬化および/または硬化した状態の天然または合成ポリマーを含む組成物を示すために従来から使用されている。したがって、「樹脂」という用語は、硬化および/もしくは硬化した樹脂、または未硬化および/もしくは未硬化の樹脂を指すために従来の意味で使用される。したがって、本明細書で使用するとき、「樹脂」という一般用語は、硬化したまたは未硬化の樹脂を指す場合があり、より具体的な用語「硬化した樹脂」および「未硬化の樹脂」は、硬化したまたは未硬化の状態の特定の樹脂を区別するために使用される。また、「未硬化の」という用語は、以下に記載されるように、完全に架橋および/または重合していない組成物または構成成分を指すことも理解されたい。例えば、「未硬化の」樹脂は、ほとんどもしくは全く架橋を受けていないか、または利用可能な硬化部位の100%未満の量、例えば、利用可能な硬化部位の約10~約98%、約15~約95%、約20~約90%、約20~約85%、または約20~約80%の量で架橋されていてもよい。逆に、「硬化した」という用語は、完全に架橋するか、または硬化した組成物に典型的には起因する特性または特徴を達成するのに十分な架橋を受けたときの組成物を指す場合がある。しかしながら、硬化した組成物において利用可能な硬化部位のいくつかは、架橋されていないままであってもよい。同様に、未硬化の組成物中の利用可能な硬化部位のいくつかは架橋され得ることが理解されるべきである。したがって、「硬化した」および「未硬化の」という用語は、機能的および/または説明的な用語であると理解することができる。例えば、硬化した樹脂は、典型的には、有機溶媒への不溶性、周囲条件下での液体および/もしくは塑性流動の欠如、ならびに/または印加された力に応じた変形に対する抵抗によって特徴付けられる。対照的に、未硬化の樹脂は、典型的には、有機溶媒への溶解度、液体および/もしくは塑性流動を受ける能力、ならびに/または印加された力に応じて変形する(例えば、印刷プロセスによって影響を受ける)能力によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、組成物は、未硬化の樹脂を含む。このような実施形態では、未硬化の樹脂は未硬化の状態で組成物中に存在し得るが、(例えば、未硬化の樹脂と組成物の別の構成成分との反応を介して、硬化条件への曝露を介してなど)硬化可能であり得る。未硬化の樹脂は、一旦硬化すると変形可能でなくなる場合がある。
【0086】
一般に、好適な樹脂の例は、モノマー単位(例えば、モノマー、オリゴマー、ポリマーなど)と硬化剤の反応生成物を含む。このような樹脂の形成に使用するのに適した硬化剤は、典型的には、樹脂形成モノマー単位に存在する官能基と反応する少なくとも二官能性分子を含む。例えば、エポキシ樹脂の形成に使用するのに適した硬化剤は、典型的には、エポキシド基と反応する(すなわち、2つ以上のエポキシド反応性官能基を含む)少なくとも二官能性分子である。当該技術分野において理解されているとおり、「硬化剤」および「架橋剤」という用語は、互換的に使用することができる。さらに、硬化剤は、それ自体がモノマー単位であってもよく、その結果、樹脂は、互いに同じであっても異なっていてもよい少なくとも2つのモノマー単位の反応生成物を含む。
【0087】
好適な樹脂は、反応生成物中に存在する特定の官能基に従って、慣習的に命名/識別されている。例えば、「ポリウレタン樹脂」という用語は、イソシアネート(すなわち、イソシアネート官能性を含むモノマー単位)とポリオール(すなわち、アルコール官能性を含む鎖延長剤/硬化剤)の反応生成物を含む高分子化合物を表す。イソシアネートとポリオールの反応により、未反応のモノマーまたは硬化剤のいずれにも存在しなかったウレタン官能基が生成される。しかしながら、特定の場合には、樹脂は、モノマー単位に存在する特定の官能基(すなわち、硬化部位での官能性)に従って命名されている。例えば、「エポキシ樹脂」という用語は、1つ以上のエポキシド基(すなわち、エポキシド官能性)を有するモノマー単位と硬化剤との架橋反応生成物を含むポリマー化合物を表す。しかしながら、一旦硬化すると、エポキシ樹脂は、もはやエポキシではないか、またはエポキシド基を含まないが、当該技術分野において理解されているとおり、硬化後に残っていてもよい任意の未反応または残留エポキシド基(すなわち、硬化部位)については、エポキシではない。しかしながら、他の場合には、好適な樹脂は、反応前および反応後の両方で同じ官能性を各々有する1つ以上のモノマー単位(すなわち、硬化剤自体もモノマー単位である)の反応生成物を含み得る。このような場合、樹脂は、モノマー単位と反応生成物との両方に存在する官能基(例えば、未反応の官能基、または反応中に修飾されるが種類/名称は変化しない官能基)に従って命名することができる。例えば、「シリコーン樹脂」という用語は、シロキサン官能基を含むモノマー単位の反応生成物を含むシロキサン官能性ポリマー化合物を表す。好適な樹脂の特定の例は、熱可塑性エラストマー(TPE)などの長鎖熱可塑性物質、およびモノマー単位(例えば、モノマー、オリゴマー、ポリマーなど)と硬化剤との反応生成物を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、樹脂は、熱硬化性および/または熱可塑性樹脂を含む。「熱硬化性」および「熱可塑性」という用語は、本明細書では従来の意味で使用され、したがって、いずれも特定の樹脂の記述的および/または機能的特徴として理解され得る。例として、「熱可塑性」という用語は、典型的には、特定の温度(例えば、Tgなどの転移温度)より上で柔軟および/または成形可能になり、また特定の温度を下回るまで冷却すると固化する樹脂(例えばプラスチック)を表す。さらに、「熱可塑性」は、典型的には例えば、成形された熱可塑性物品を特定の温度を上回るまで加熱して、再成形前および/または再成形中に柔軟性を回復させた後、新しい形状に再成形することができる。対照的に、「熱硬化性」という用語は、典型的には、軟質固体または粘性液体(例えば、未硬化の樹脂)から不可逆的に硬化する樹脂(例えば、プラスチック)を表す。したがって、一旦硬化(cured)/硬化(hardened)すると、「熱硬化性樹脂」は典型的には、再加熱(例えば、熱硬化性樹脂が1つ以上の材料特性を失う、かつ/または分解する温度よりも大きいTgを含むように加熱すること)を介して、新たな形状に再成形することができない。
【0089】
好適な樹脂の具体例としては、典型的に、ナイロンなどのポリアミド(PA);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステルなどのポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンなどのポリオレフィン;スチレン系樹脂;ポリオキシメチレン(POM);ポリカーボネート(PC);ポリメチレンメタクリレート(PMMA);ポリ塩化ビニル(PVC);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリフェニレンエーテル(PPE);ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルイミド(PEI);ポリスルホン(PSU);ポリエーテルスルホン;ポリケトン(PK);ポリエーテルケトン(PEK);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルケトンケトン(PEKK);ポリアリーレート(PAR);ポリエーテルニトリル(PEN);レゾール系;尿素(例えば、メラミン系);フェノキシ樹脂;トポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素化樹脂;ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系などの熱可塑性エラストマー;ならびにそれらのコポリマー、変形形態、および組み合わせが挙げられる。さらに、例えば、変形性、硬化時間などのような未硬化の樹脂中の特定の特性を改善するために、かつ/または柔軟性、衝撃強度などのような硬化した樹脂(したがって、3D物品)中の特定の特性を改善するために、エラストマーおよび/またはゴムを樹脂に添加または配合することができる。いくつかの実施形態では、樹脂は、媒体または溶媒中に配設されてもよい。
【0090】
特定の実施形態では、組成物のうちの少なくとも1つ、例えば、基材組成物、第1の組成物、第2の組成物、および/または任意の後続または追加の組成物は、ゴムまたはエラストマーシリコーン組成物であり得るシリコーン組成物を含む。このような実施形態では、3D物品は、シリコーンと生物学的システムとの間の優れた適合性を考慮して、生物学的および/またはヘルスケア用途で利用され得る。好適なシリコーン組成物は、(a)ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物;(b)縮合硬化性シリコーン組成物;(c)チオール-エン反応硬化性シリコーン組成物;(d)フリーラジカル硬化性シリコーン組成物;および(e)開環反応硬化性シリコーン組成物から独立して選択されてもよい。これらの実施形態では、シリコーン組成物は、概して硬化性であり、これにより固化条件への曝露は硬化条件への曝露と呼ばれる場合がある。当該技術分野において理解されているとおり、これらのシリコーン組成物は、水分への曝露、熱への曝露、照射への曝露などの異なる硬化条件を介して硬化させてもよい。さらに、これらのシリコーン組成物は、異なるタイプの硬化条件、例えば、熱と照射との両方に曝露することにより硬化可能であり、これらの条件は、一緒に利用されてもよいし、1つのみとして利用されてもよい。さらに、硬化条件への曝露は、異なるタイプのシリコーン組成物の硬化または硬化を開始する可能性がある。例えば、熱は、縮合硬化性シリコーン組成物、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物、およびフリーラジカル硬化性シリコーン組成物の硬化または硬化開始に利用することができる。
【0091】
シリコーン組成物は、硬化条件を適用する際、同じ硬化機序を有してもよいが、なおも互いに独立して選択されてもよい。例えば、第1の組成物は、縮合硬化性シリコーン組成物を含み得、第2の組成物はまた、縮合硬化性シリコーン組成物を含み得、ここで、縮合硬化性シリコーン組成物は、例えば、構成成分、それらの相対的な量などによって互いに異なっていてもよい。
【0092】
特定の実施形態では、本方法で利用されるシリコーン組成物の各々は、硬化条件を適用する際に同じ硬化機序を介して硬化する。これらの実施形態では、硬化条件を適用する際に同じ硬化機序を有することを踏まえると、シリコーン組成物の各々中の構成成分が互いに容易に反応し得ることから、所望であれば、印刷線を横切って硬化することが容易に可能となる。これらの実施形態では、シリコーン組成物の各々は、硬化機序が各シリコーン組成物で同じであるとしても、利用される実際の構成成分およびそれらの相対的な量の点で、なおも互いに異なっていてもよい。対照的に、層の各々が異なるメカニズム(例えば、ヒドロシリル化対縮合)を介して硬化する場合、印刷線を横切ってある程度の硬化があるかもしれないが、これらの層の構成成分は硬化条件を適用した際に互いに反応できない場合があり、他の適用に望ましい場合がある。
【0093】
特定の実施形態では、シリコーン組成物のうちの少なくとも1つは、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物を含む。これらの実施形態では、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(A)1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、(B)オルガノポリシロキサン(A)中のケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合水素原子と反応することができる、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子またはケイ素結合アルケニル基を有する有機ケイ素化合物、および(C)ヒドロシリル化触媒を含む。オルガノポリシロキサン(A)がケイ素結合アルケニル基を含む場合、有機ケイ素化合物(B)は1分子当たり少なくとも2個のケイ素結合水素原子を含み、オルガノポリシロキサン(A)がケイ素結合水素原子を含む場合、有機ケイ素化物(B)は1分子当たり少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を含む。有機ケイ素化合物(B)は、クロスリンカーまたは架橋剤と呼ばれる場合がある。特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)および/または有機ケイ素化合物(B)は、独立して、1分子当たり2個以上のヒドロシリル化反応性官能基(例えば、1分子当たりケイ素結合アルケニル基および/またはケイ素結合水素原子、例えば、1分子中に平均3個、4個、5個、6個またはそれ以上のヒドロシリル化反応性官能基)を含んでいてもよい。このような実施形態では、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、オルガノポリシロキサン(A)の1分子当たりのヒドロシリル化反応性官能基の数および/またはタイプを、有機ケイ素化合物(B)の1分子当たりのヒドロシリル化反応性官能基の数および/またはタイプと異なるように、ヒドロシリル化を介して鎖延長可能であり、かつ架橋可能であるように配合されてもよい。例えば、これらの実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)が1分子当たり少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基を含む場合、有機ケイ素化合物(B)は1分子当たり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を含んでいてもよく、オルガノポリシロキサン(A)が少なくとも2個のケイ素結合水素原子を含む場合、有機ケイ素化合物(B)は1分子当たり少なくとも3個のケイ素結合アルケニル基を含んでいてもよい。したがって、オルガノポリシロキサン(A)の1分子当たりのヒドロシリル化反応性官能基と有機ケイ素化合物(B)の1分子当たりのヒドロシリル化反応性官能基との比は、1:1に等しいか、それよりも小さいか、または大きく、例えば、1:5~5:1、あるいは1:4~4:1、あるいは1:3~3:1、あるいは1:2~2:1、あるいは2:3~3:2、あるいは3:4~4:3であってもよい。
【0094】
オルガノポリシロキサン(A)および有機ケイ素化合物(B)は、独立して直鎖、分枝鎖、環状または樹脂性であってもよい。特に、オルガノポリシロキサン(A)および有機ケイ素化合物(B)は、M単位、D単位、T単位、およびQ単位の任意の組み合わせを含み得る。記号M、D、T、およびQは、オルガノポリシロキサンの構造単位の官能性を表す。Mは単官能単位R SiO1/2を表す。Dは二官能性単位R SiO2/2を表す。Tは三官能性単位RSiO3/2を表す。Qは四官能性単位SiO4/2を表す。これらの単位の一般的な構造式を以下に示す。
【化1】
これらの構造/式において、各Rは、任意の炭化水素、芳香族、脂肪族、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基であり得る。
【0095】
特定のオルガノポリシロキサン(A)および有機ケイ素化合物(B)は、本方法中の3D物品および層の所望の特性に基づいて選択されるものであってもよい。例えば、層がエラストマー、ゲル、樹脂などの形態であることが望ましい場合があり、シリコーン組成物の構成成分を選択することにより、当業者は様々な望ましい特性を実現することができる。
【0096】
例えば、特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)および有機ケイ素化合物(B)のうちの1つは、典型的には、T単位および/またはQ単位を、M単位および/またはD単位と組み合わせて含む、シリコーン樹脂を含む。オルガノポリシロキサン(A)および/または有機ケイ素化合物(B)がシリコーン樹脂を含む場合、シリコーン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、またはMDQ樹脂であってもよい。概して、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が樹脂を含む場合、層(複数可)および得られる3D物品の剛性は増大する。
【0097】
あるいは、他の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)および/または有機ケイ素化合物(B)は、繰り返しD単位を含むオルガノポリシロキサンである。このようなオルガノポリシロキサンは実質的に直鎖であるが、T単位および/またはQ単位に起因するいく分かの分枝鎖を含むことがある。あるいは、このようなオルガノポリシロキサンは直鎖である。これらの実施形態では、層(複数可)および得られる3D物品はエラストマーである。
【0098】
オルガノポリシロキサン(A)および有機ケイ素化合物(B)のケイ素結合アルケニル基およびケイ素結合水素原子は、それぞれ、独立して側枝、末端、または両方の位置に存在し得る。
【0099】
特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、一般式:
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (I)
を有し、式中、各Rは独立して選択されるヒドロカルビル基であり、置換でも非置換であってもよく、各Rは、独立してRおよびアルケニル基から選択され、ただし、Rのうち少なくとも2個はアルケニル基であり、w、x、y、およびzは、w+x+y+z=1となるモル分率である。当該技術分野において理解されるとおり、直鎖オルガノポリシロキサンでは、下付き文字yおよびzは概して0であるのに対し、樹脂では、下付き文字yおよび/またはzは0より大きい。w、x、y、およびzに関し、様々な代替実施形態について以下に記載する。これらの実施形態では、下付き文字wは、0~0.9999、あるいは0~0.999、あるいは0~0.99、あるいは0~0.9、あるいは0.9~0.999、あるいは0.9~0.999、あるいは0.8~0.99、あるいは0.6~0.99の値を有してもよい。下付き文字xは、典型的には、0~0.9、あるいは0~0.45、あるいは0~0.25の値を有する。下付き文字yは、典型的には、0~0.99、あるいは0.25~0.8、あるいは0.5~0.8の値を有する。下付き文字zは、典型的には、0~0.99、あるいは0~0.85、あるいは0.85~0.95、あるいは0.6~0.85、あるいは0.4~0.65、あるいは0.2~0.5、あるいは0.1~0.45、あるいは0~0.25、あるいは0~0.15の値を有する。
【0100】
特定の実施形態では、各RはC~C10ヒドロカルビル基であり、置換または非置換であってもよく、ヒドロカルビル基内に、酸素、窒素、硫黄などのようなへテロ原子を含んでもよい。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環状ヒドロカルビル基およびハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分枝鎖または非分枝鎖構造を有し得る。Rで表されるヒドロカルビル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルなどのアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、およびメチルシクロヘキシルなどのシクロアルキル基;フェニルおよびナフチルなどのアリール基;トリルおよびキシリルなどのアルカリール基;ならびにベンジルおよびフェネチルなどのアラルキル基、が挙げられるが、これらに限定されない。Rで表されるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例としては、3,3,3-トリフルオロプロピル、3-クロロプロピル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、および2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
で表されるアルケニル基は、オルガノポリシロキサン(A)内で同じであっても異なっていてもよく、典型的には、2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子を有し、例えば、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル、およびオクテニルによって例示される。
【0102】
これらの実施形態では、有機ケイ素化合物(B)は、オルガノハイドロジェンシラン、オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンシロキサン、またはこれらの組み合わせとしてさらに定義することができる。有機ケイ素化合物(B)の構造は、直鎖、分枝鎖、環状、または樹脂性であってもよい。非環状ポリシランおよびポリシロキサンにおいて、ケイ素結合水素原子は、末端、ペンダント、または末端とペンダントとの両方の位置に位置することができる。シクロシランおよびシクロシロキサンは、典型的には、3~12個のケイ素原子、あるいは3~10個のケイ素原子、あるいは3~4個のケイ素原子を有する。オルガノハイドロジェンシランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、またはポリシランとすることができる。
【0103】
ヒドロシリル化触媒(C)は、オルガノポリシロキサン(A)と有機ケイ素化合物(B)との間の反応を促進する、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒を含む。ヒドロシリル化触媒(C)は、白金族金属(すなわち、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、およびイリジウム)または白金族金属を含有する化合物を含む、既知のヒドロシリル化触媒のいずれかであってよい。典型的には、白金族金属は、ヒドロシリル化反応における高い活性に基づいて白金である。
【0104】
(C)に好適な具体的なヒドロシリル化触媒としては、Willingにより米国特許第3,419,593号に開示されている塩化白金酸と特定のビニル含有オルガノシロキサンとの錯体が挙げられ、このヒドロシリル化触媒を扱った部分は、参照により本明細書に組み込まれる。このタイプの触媒は、塩化白金酸と1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとの反応生成物である。
【0105】
ヒドロシリル化触媒(C)はまた、表面に白金族金属を有する固体支持体を含む、担持ヒドロシリル化触媒であってもよい。担持触媒は、例えば、反応混合物を濾過することによって、オルガノポリシロキサンから簡便に分離できる。担持触媒の例には、炭素上の白金、炭素上のパラジウム、炭素上のルテニウム、炭素上のロジウム、シリカ上の白金、シリカ上のパラジウム、アルミナ上の白金、アルミナ上のパラジウム、およびアルミナ上のルテニウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
それに加えてまたはその代わりに、ヒドロシリル化触媒(C)はまた、熱可塑性樹脂中にカプセル化された白金族金属を含む、マイクロカプセル化白金族金属含有触媒であってもよい。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒を含むヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、周囲条件下で長期間、典型的には数ヶ月以上安定であるにもかかわらず、熱可塑性樹脂(複数可)の融点または軟化点より高い温度で比較的速やかに硬化する。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒およびその調製方法は当該技術分野で既知であり、米国特許第4,766,176号およびそれに引用されている参考文献、ならびに米国特許第5,017,654号に例示されている。ヒドロシリル化触媒(C)は、単一触媒であってもよいし、構造、形態、白金族金属、錯体形成配位子、および熱可塑性樹脂などの少なくとも1つの特性が異なる2種以上の異なる触媒を含む混合物であってもよい。
【0107】
ヒドロシリル化触媒(C)はまた、またはあるいは、照射および/または加熱を介して硬化を開始し得る、光活性化可能なヒドロシリル化触媒であってもよい。光活性化可能なヒドロシリル化触媒は、特に150~800ナノメートル(nm)の波長を有する放射線への曝露時にヒドロシリル化反応を触媒することができる任意のヒドロシリル化触媒であり得る。
【0108】
光活性化可能なヒドロシリル化触媒の具体例としては、白金(II)β-ジケトネート錯体、例えば、白金(II)ビス(2,4-ペンタンジオエート)、白金(II)ビス(2,4-ヘキサンジオエート)、白金(II)ビス(2,4-ヘプタンジオエート)、白金(II)ビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオエート、白金(II)ビス(1,3-ジフェニル)-1,3-プロパンジオエート)、白金(II)ビス(1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオエート);(η-シクロペンタジエニル)トリアルキル白金錯体、例えば、(Cp)トリメチル白金、(Cp)エチルジメチル白金、(Cp)トリエチル白金、(クロロ-Cp)トリメチル白金、および(トリメチルシリル-Cp)トリメチル白金(ここで、Cpはシクロペンタジエニルを表す);トリアゼンオキシド-遷移金属錯体、例えば、Pt[CNNNOCH、Pt[p-CN-CNNNOC11、Pt[p-HCOCNNNOC11、Pt[p-CH(CH-CNNNOCH、1,5-シクロオクタジエン.Pt[p-CN-CNNNOC11、1,5-シクロオクタジエン.Pt[p-CHO-CNNNOCH、[(CP]Rh[p-CN-CNNNOC11]、およびPd[p-CH(CH-CNNNOCH(ここで、xは1、3、5、11、または17である);(η-ジオレフィン)(σ-アリール)白金錯体、例えば、(η-1,5-シクロオクタジエニル)ジフェニル白金、(η-1,3,5,7-シクロオクタテトラエニル)ジフェニル白金、(η-2,5-ノルボラジエル(norboradienyl))ジフェニル白金、(η-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-ジメチルアミノフェニル)白金、(η-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-アセチルフェニル)白金、ならびに(η-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-トリフルオロメチルフェニル)白金が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、光活性化可能なヒドロシリル化触媒は、Pt(II)β-ジケトネート錯体であり、より典型的には、白金(II)ビス(2,4-ペンタンジオエート)である。ヒドロシリル化触媒(C)は、単一の光活性化可能なヒドロシリル化触媒であっても、または2種以上の異なる光活性化可能なヒドロシリル化触媒を含む混合物であってもよい。
【0109】
ヒドロシリル化触媒(C)の濃度は、オルガノポリシロキサン(A)と有機ケイ素化合物(B)との間の付加反応を触媒するのに十分なものである。特定の実施形態では、ヒドロシリル化触媒(C)の濃度は、オルガノポリシロキサン(A)と有機ケイ素化合物(B)とを合わせた重量に基づいて、典型的には、0.1~1000ppmの白金族金属、あるいは0.5~100ppmの白金族金属、あるいは1~25ppmの白金族金属を提供するのに十分なものである。
【0110】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は2部の組成物であってもよく、オルガノポリシロキサン(A)および有機ケイ素化合物(B)が、別個の部の中にある。これらの実施形態では、ヒドロシリル化触媒(C)は、オルガノポリシロキサン(A)および有機ケイ素化合物(B)の片方または両方と共に存在していてもよい。あるいはさらに、ヒドロシリル化触媒(C)は、オルガノポリシロキサン(A)および有機ケイ素化合物(B)とは別個のものであり、第3の部の中にあってもよく、それによると、ヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物は3部の組成物である。
【0111】
1つの具体的な実施形態では、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、オルガノポリシロキサン(A)としてViMe(MeSiO)128SiMeVi、有機ケイ素化合物(B)としてMeSiO(MeSiO)14(MeHSiO)16SiMe、および(C)として白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を、白金が(A)、(B)、および(C)に基づいて5ppmの濃度で存在するように含む。
【0112】
このようなヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物の固化条件は変化し得る。例えば、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、照射および/または熱に曝露されると固化または硬化し得る。当業者は、ヒドロシリル化触媒(C)の選択が、固化および硬化のための技術にどのように影響を及ぼすかを理解している。特に、光活性化可能なヒドロシリル化触媒は、典型的には、照射による硬化が望まれる場合に利用される。
【0113】
これらまたは他の実施形態では、シリコーン組成物のうちの少なくとも1つは、縮合硬化性シリコーン組成物を含む。これらの実施形態では、縮合硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(A’)1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合ヒドロキシル基または加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン、任意選択的に(B’)1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子、ヒドロキシル基、または加水分解性基を有する有機ケイ素化合物、および(C’)縮合触媒を含む。本方法またはその任意の個々のステップ中、任意のパラメータまたは条件を選択的に制御することができるが、周囲条件の相対湿度および水分含量を選択的に制御し、縮合硬化性シリコーン組成物の硬化速度にさらに影響を及ぼすことができる。
【0114】
オルガノポリシロキサン(A’)および有機ケイ素化合物(B’)は、独立して直鎖、分枝鎖、環状または樹脂性であってもよい。特に、オルガノポリシロキサン(A’)および有機ケイ素化合物(B’)は、上に開示されるオルガノポリシロキサン(A’)および有機ケイ素化合物(B’)と同様に、M単位、D単位、T単位、およびQ単位の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0115】
特定のオルガノポリシロキサン(A’)および有機ケイ素化合物(B’)は、本方法中の3D物品および層の所望の特性に基づいて選択されるものであってもよい。例えば、層がエラストマー、ゲル、樹脂などの形態であることが望ましい場合があり、シリコーン組成物の構成成分を選択することにより、当業者は様々な望ましい特性を実現することができる。
【0116】
例えば、特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A’)および有機ケイ素化合物(B’)のうちの1つは、典型的には、T単位および/またはQ単位を、M単位および/またはD単位と組み合わせて含む、シリコーン樹脂を含む。オルガノポリシロキサン(A’)および/または有機ケイ素化合物(B’)がシリコーン樹脂を含む場合、シリコーン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、またはMDQ樹脂であってもよい。概して、縮合硬化性シリコーン組成物が樹脂を含む場合、層(複数可)および得られる3D物品の剛性は増大する。
【0117】
あるいは、他の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A’)および/または有機ケイ素化合物(B’)は、繰り返しD単位を含むオルガノポリシロキサンである。このようなオルガノポリシロキサンは実質的に直鎖であるが、T単位および/またはQ単位に起因するいく分かの分枝鎖を含むことがある。あるいは、このようなオルガノポリシロキサンは直鎖である。これらの実施形態では、層(複数可)および得られる3D物品はエラストマーである。
【0118】
オルガノポリシロキサン(A’)および有機ケイ素化合物(B’)の、ケイ素結合ヒドロキシル基、ならびにケイ素結合水素原子、ヒドロキシル基、または加水分解性基は、それぞれ、独立して側枝、末端、または両方の位置に存在し得る。
【0119】
当該技術分野において知られているとおり、ケイ素結合ヒドロキシル基は、ケイ素結合加水分解性基を加水分解することから得られる。これらのケイ素結合ヒドロキシル基が縮合し、シロキサン結合を、副生成物としての水と共に形成し得る。
【0120】
加水分解性基の例としては、以下のケイ素結合基、すなわち、H、ハライド基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、カルボキシ基、アルキルイミノオキシ基、アルケニルオキシ基、またはN-アルキルアミド基が挙げられる。アルキルアミノ基は、環状アミノ基であってもよい。
【0121】
特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A’)は、一般式:
(R SiO1/2w’(R SiO2/2x’(RSiO3/2y’(SiO4/2z’ (II)
を有し、式中、各Rは上に定義されており、各Rは、独立してR、およびヒドロキシル基、加水分解性基、またはこれらの組み合わせから選択され、ただし、Rのうちの少なくとも2個はヒドロキシル基、加水分解性基、またはそれらの組み合わせであり、w’、x’、y’、およびz’は、w’+x’+y’+z’=1となるモル分率である。当該技術分野において理解されるとおり、直鎖オルガノポリシロキサンでは、下付き文字y’およびz’は概して0であるのに対し、樹脂では、下付き文字y’および/またはz’は0より大きい。w’、x’、y’、およびz’に関し、様々な代替実施形態について以下に記載する。これらの実施形態では、下付き文字w’は、0~0.9999、あるいは0~0.999、あるいは0~0.99、あるいは0~0.9、あるいは0.9~0.999、あるいは0.9~0.999、あるいは0.8~0.99、あるいは0.6~0.99の値を有してもよい。下付き文字x’は、典型的には、0~0.9、あるいは0~0.45、あるいは0~0.25の値を有する。下付き文字y’は、典型的には、0~0.99、あるいは0.25~0.8、あるいは0.5~0.8の値を有する。下付き文字z’は、典型的には、0~0.99、あるいは0~0.85、あるいは0.85~0.95、あるいは0.6~0.85、あるいは0.4~0.65、あるいは0.2~0.5、あるいは0.1~0.45、あるいは0~0.25、あるいは0~0.15の値を有する。
【0122】
上記のように、縮合硬化性シリコーン組成物は、有機ケイ素化合物(B’)をさらに含む。有機ケイ素化合物(B’)は、直鎖、分枝鎖、環状、または樹脂性であってもよい。一実施形態では、有機ケイ素化合物(B’)は、式R SiX4-qを有し、式中、Rは上記で定義されており、Xは加水分解性基であり、qは0または1である。
【0123】
有機ケイ素化合物(B’)の具体例としては、MeSi(OCH、CHSi(OCHCH、CHSi(OCHCHCH、CHSi[O(CHCH、CHCHSi(OCHCH、CSi(OCH、CCHSi(OCH、CSi(OCHCH、CH=CHSi(OCH、CH=CHCHSi(OCH、CFCHCHSi(OCH、CHSi(OCHCHOCH、CFCHCHSi(OCHCHOCH、CH=CHSi(OCHCHOCH、CH=CHCHSi(OCHCHOCH、CSi(OCHCHOCH、Si(OCH、Si(OC、およびSi(OCなどのアルコキシシラン;CHSi(OCOCH、CHCHSi(OCOCH、およびCH=CHSi(OCOCHなどのオルガノアセトキシシラン;CHSi[O-N=C(CH)CHCH、Si[O-N=C(CH)CHCH、およびCH=CHSi[O-N=C(CH)CHCHなどのオルガノイミノオキシシラン;CHSi[NHC(=O)CHおよびCSi[NHC(=O)CHなどのオルガノアセトアミドシラン;CHSi[NH(C)]およびCHSi(NHC11などのアミノシラン;ならびにオルガノアミノオキシシランが挙げられる。
【0124】
有機ケイ素化合物(B’)は、各々が上述のとおりの、単一のシランであっても、2つ以上の異なるシランの混合物であってもよい。また、3官能性および4官能性シランを調製する方法は、当該技術分野において既知であり、これらのシランのうちの多くのものが市販されている。
【0125】
存在する場合、縮合硬化性シリコーン組成物中の有機ケイ素化合物(B’)の濃度は、オルガノポリシロキサン(A’)を硬化(架橋)するのに十分なものである。利用される有機ケイ素化合物(B’)の具体的な量は、所望の硬化度に応じて異なり、一般に、有機ケイ素化合物(B’)中のケイ素結合加水分解性基のモル数の、オルガノポリシロキサン(A)中のケイ素結合ヒドロキシ基のモル数に対する比が増大するにつれて増大する。有機ケイ素化合物(B’)の最適の量は、通常の実験によって容易に求めることができる。
【0126】
縮合触媒(C’)は、典型的にはケイ素結合ヒドロキシ基(シラノール基)の縮合を促進してSi-O-Si結合を形成するために使用される、任意の縮合触媒であってもよい。縮合触媒の例としては、アミン、金属(例えば、鉛、スズ、亜鉛、鉄、チタン、ジルコニウム)と有機配位子(例えば、カルボキシル、ヒドロカルビル、アルコキシルなど)との錯体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、縮合触媒(C’)は、スズジラウレート、スズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、およびテトラブチルスズなどの、スズ(II)およびスズ(IV)化合物;ならびにチタンテトラブトキシドなどのチタン化合物から選択されてもよい。これらまたは他の実施形態では、縮合触媒(C’)は、亜鉛系、鉄系、およびジルコニウム系触媒から選択されてもよい。
【0127】
存在する場合、縮合触媒(C’)の濃度は、縮合硬化性シリコーン組成物中のオルガノポリシロキサン(A’)の総重量に基づいて、典型的には、0.1~10重量%、あるいは0.5~5重量%、あるいは1~3重量%である。
【0128】
縮合硬化性シリコーン組成物が縮合触媒(C’)を含む場合、縮合硬化性シリコーン組成物は、典型的には2部の組成物であり、オルガノポリシロキサン(A’)および縮合触媒(C’)が、別個の部の中にある。この実施形態では、有機ケイ素化合物(B’)は、典型的には縮合触媒(C’)と共に存在する。あるいはさらに、縮合硬化性シリコーン組成物は3部の組成物であってもよく、オルガノポリシロキサン(A’)、有機ケイ素化合物(B’)、および縮合触媒(C’)が、別個の部の中にある。
【0129】
このような縮合硬化性シリコーン組成物の固化条件は変化し得る。例えば、縮合硬化性シリコーン組成物は、周囲条件、加湿雰囲気、および/または熱に曝露されると固化または硬化し得るが、熱は一般に、固化および硬化を促進させるために利用される。
【0130】
これらまたは他の実施形態では、シリコーン組成物のうちの少なくとも1つは、フリーラジカル硬化性シリコーン組成物を含む。一実施形態では、フリーラジカル硬化性シリコーン組成物は、(A”)平均して少なくとも2個のケイ素結合不飽和基を有するオルガノポリシロキサン、および(C”)フリーラジカル開始剤を含む。
【0131】
オルガノポリシロキサン(A’’)は、直鎖、分枝鎖、環状、または樹脂性であってもよい。特に、オルガノポリシロキサン(A’’)は、上に開示されるオルガノポリシロキサン(A’)および有機ケイ素化合物(B’)と同様に、M単位、D単位、T単位、およびQ単位の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0132】
特定のオルガノポリシロキサン(A’’)は、本方法中の3D物品および層の所望の特性に基づいて選択されるものであってもよい。例えば、層がエラストマー、ゲル、樹脂などの形態であることが望ましい場合があり、シリコーン組成物の構成成分を選択することにより、当業者は様々な望ましい特性を実現することができる。
【0133】
例えば、特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A’’)は、典型的には、T単位および/またはQ単位を、M単位および/またはD単位と組み合わせて含む、シリコーン樹脂を含む。オルガノポリシロキサン(A’’)がシリコーン樹脂を含む場合、シリコーン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、またはMDQ樹脂であってもよい。概して、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が樹脂を含む場合、層(複数可)および得られる3D物品の剛性は増大する。
【0134】
あるいは、他の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A”)は、繰り返しD単位を含む。このようなオルガノポリシロキサンは実質的に直鎖であるが、T単位および/またはQ単位に起因するいく分かの分枝鎖を含むことがある。あるいは、このようなオルガノポリシロキサンは直鎖である。これらの実施形態では、層(複数可)および得られる3D物品はエラストマーである。
【0135】
オルガノポリシロキサン(A”)のケイ素結合不飽和基は、側枝、末端、または両方の位置に存在し得る。ケイ素結合不飽和基は、二重結合および/または三重結合の形態でのエチレン性不飽和を含み得る。ケイ素結合不飽和基の例示的な例としては、ケイ素結合アルケニル基およびケイ素結合アルキニル基が挙げられる。不飽和基は、直接、またはアルキレン基、エーテル、エステル、アミド、もしくは別の基などの架橋基を通じて間接的にケイ素に結合することができる。
【0136】
具体的な実施形態において、オルガノポリシロキサン(A”)は、一般式:
(R SiO1/2w”(R SiO2/2x”(RSiO3/2y”(SiO4/2z” (III)
を有し、式中、各Rは上に定義されており、各Rは、独立してRおよび不飽和基から選択され、ただし、Rのうちの少なくとも2個は不飽和基であり、w”、x”、y”、およびz”は、w”+x”+y”+z”=1となるモル分率である。当該技術分野において理解されるとおり、直鎖オルガノポリシロキサンでは、下付き文字y”およびz”は概して0であるのに対し、樹脂では、下付き文字y”および/またはz”は0より大きい。w”、x”、y”、およびz”に関し、様々な代替実施形態について以下に記載する。これらの実施形態では、下付き文字w”は、0~0.9999、あるいは0~0.999、あるいは0~0.99、あるいは0~0.9、あるいは0.9~0.999、あるいは0.9~0.999、あるいは0.8~0.99、あるいは0.6~0.99の値を有してもよい。下付き文字x”は、典型的には、0~0.9、あるいは0~0.45、あるいは0~0.25の値を有する。下付き文字y”は、典型的には、0~0.99、あるいは0.25~0.8、あるいは0.5~0.8の値を有する。下付き文字z”は、典型的には、0~0.99、あるいは0~0.85、あるいは0.85~0.95、あるいは0.6~0.85、あるいは0.4~0.65、あるいは0.2~0.5、あるいは0.1~0.45、あるいは0~0.25、あるいは0~0.15の値を有する。
【0137】
で表される不飽和基は、同じであっても異なっていてもよく、アルケニル基およびアルキニル基から独立して選択される。Rで表されるアルケニル基は、同じであっても異なっていてもよく、上記のRの記載において定義され例示されるとおりである。Rで表されるアルキニル基は、同じであっても異なっていてもよく、典型的には2~約10個の炭素原子、あるいは2~8個の炭素原子を有し、それには、エチニル、プロピニル、ブチニル、ヘキシニル、およびオクチニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
フリーラジカル硬化性シリコーン組成物は、(i)1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合アルケニル基を有する少なくとも1種の有機ケイ素化合物、(ii)1分子当たり少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1種の有機化合物、(iii)1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合アクリロイル基を有する少なくとも1種の有機ケイ素化合物;(iv)1分子当たり少なくとも1つのアクリロイル基を有する少なくとも1種の有機化合物;ならびに(v)(i)、(ii)、(iii)、および(iv)を含む混合物、から選択される不飽和化合物をさらに含むことができる。不飽和化合物は、直鎖、分枝鎖、または環状構造を有し得る。
【0139】
有機ケイ素化合物(i)は、オルガノシランまたはオルガノシロキサンであり得る。オルガノシランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、またはポリシランであり得る。同様に、オルガノシロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサン、またはポリシロキサンであり得る。シクロシランおよびシクロシロキサンは、典型的には、3~12個のケイ素原子、あるいは3~10個のケイ素原子、あるいは3~4個のケイ素原子を有する。非環状ポリシランおよびポリシロキサンにおいて、ケイ素結合アルケニル基は、末端、ペンダント、または末端およびペンダントの両方の位置に位置し得る。
【0140】
オルガノシランの具体例としては、下記の式:
ViSi、PhSiVi、MeSiVi、PhMeSiVi、PhSiVi、およびPhSi(CHCH=CH
を有するシランが挙げられるがこれらに限定されず、式中、Meはメチル、Phはフェニル、Viはビニルである。
【0141】
オルガノシロキサンの具体例としては、下記の式:
PhSi(OSiMeVi)、Si(OSiMeVi)、MeSi(OSiMeVi)、およびPhSi(OSiMeVi)
を有するシロキサンが挙げられるがこれらに限定されず、式中、Meはメチル、Viはビニル、Phはフェニルである。
【0142】
有機化合物は、1分子当たり少なくとも1個の脂肪族炭素-炭素二重結合を含む任意の有機化合物であってもよく、ただし、その化合物は、オルガノポリシロキサン(A”)が硬化してシリコーン樹脂フィルムを形成するのを妨げないものとする。有機化合物は、アルケン、ジエン、トリエン、またはポリエンであり得る。さらに、非環状有機化合物において、炭素-炭素二重結合は、末端、ペンダント、または末端とペンダントとの両方の位置に位置し得る。
【0143】
有機化合物は、脂肪族炭素-炭素二重結合以外の1つ以上の官能基を含み得る。好適な官能基の例としては、-O-、>C=O、-CHO、-CO-、-C≡N、-NO、>C=C<、-C≡C-、-F、-Cl、-Br、および-Iが挙げられるが、これらに限定されない。フリーラジカル硬化性シリコーン組成物に使用する特定の不飽和有機化合物の好適性は、通常の実験によって容易に求めることができる。
【0144】
脂肪族炭素-炭素二重結合を含む有機化合物の例としては、1,4-ジビニルベンゼン、1,3-ヘキサジエニルベンゼン、および1,2-ジエテニルシクロブタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
不飽和化合物は、各々が上記のとおりの、単一の不飽和化合物であっても、2つ以上の異なる不飽和化合物を含む混合物であってもよい。例えば、不飽和化合物は、単一のオルガノシラン、2つの異なるオルガノシランの混合物、単一のオルガノシロキサン、2つの異なるオルガノシロキサンの混合物、オルガノシランとオルガノシロキサンとの混合物、単一の有機化合物、2つの異なる有機化合物の混合物、オルガノシランと有機化合物との混合物、またはオルガノシロキサンと有機化合物との混合物であってよい。
【0146】
フリーラジカル開始剤(C’’)は、フリーラジカルを生成する化合物であり、オルガノポリシロキサン(A’)の重合を開始するために利用される。典型的には、フリーラジカル開始剤(C’’)は、照射、熱、および/または還元剤による還元によって引き起こされる解離を介してフリーラジカルを生成する。フリーラジカル開始剤(C’’)は、有機パーオキサイドであってもよい。有機パーオキサイドの例としては、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ-p-クロロベンゾイルパーオキサイド、およびビス-2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアロイルパーオキサイド;ジ-t-ブチルパーオキサイド、および2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド;ジクミルパーオキサイドなどのジアラルキルパーオキサイド;t-ブチルクミルパーオキサイド、および1,4-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのアルキルアラルキルパーオキサイド;ならびにt-ブチルパーベンゾエート、t-ブチルパーアセテート、およびt-ブチルパーオクトエートなどのアルキルアリールパーオキサイドが挙げられる。
【0147】
有機パーオキサイド(C”)は、単一のパーオキサイドであっても、2つ以上の異なる有機パーオキサイドを含む混合物であってもよい。有機パーオキサイドの濃度は、オルガノポリシロキサン(A”)の重量に基づいて、典型的には0.1~5重量%、あるいは0.2~2重量%である。
【0148】
フリーラジカル硬化性シリコーン組成物は2部の組成物であってもよく、オルガノポリシロキサン(A”)および有機パーオキサイド(C”)が、別個の部の中にある。
【0149】
他の実施形態では、シリコーン組成物のうちの少なくとも1つは、開環反応硬化性シリコーン組成物を含む。様々な実施形態において、開環反応硬化性シリコーン組成物は、(A’’’)1分子当たり平均して少なくとも2個のエポキシ置換された基を有するオルガノポリシロキサン、および(C’’’)硬化剤を含む。しかしながら、開環反応硬化性シリコーン組成物は、エポキシ官能性オルガノポリシロキサンに特に限定されない。開環反応硬化性シリコーン組成物の他の例としては、シラシクロブタンおよび/またはベンゾシクロブテンを含むものが挙げられる。
【0150】
オルガノポリシロキサン(A’’’)は直鎖、分枝鎖、環状、または樹脂性であってよい。特に、オルガノポリシロキサン(A’’’)は、上に開示されるオルガノポリシロキサン(A’)および有機ケイ素化合物(B’)と同様に、M単位、D単位、T単位、およびQ単位の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0151】
特定のオルガノポリシロキサン(A’’’)は、本方法中の3D物品および層の所望の特性に基づいて選択されるものであってもよい。例えば、層がエラストマー、ゲル、樹脂などの形態であることが望ましい場合があり、シリコーン組成物の構成成分を選択することにより、当業者は様々な望ましい特性を実現することができる。
【0152】
例えば、特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A’’’)は、典型的には、T単位および/またはQ単位を、M単位および/またはD単位と組み合わせて含む、シリコーン樹脂を含む。オルガノポリシロキサン(A’’’)がシリコーン樹脂を含む場合、シリコーン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、またはMDQ樹脂であってもよい。概して、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が樹脂を含む場合、層(複数可)および得られる3D物品の剛性は増大する。
【0153】
あるいは、他の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A’’’)は、繰り返しD単位を含む。このようなオルガノポリシロキサンは実質的に直鎖であるが、T単位および/またはQ単位に起因するいく分かの分枝鎖を含むことがある。あるいは、このようなオルガノポリシロキサンは直鎖である。これらの実施形態では、層(複数可)および得られる3D物品はエラストマーである。
【0154】
オルガノポリシロキサン(A’’’)のエポキシ置換された基は、側枝、末端、または両方の位置に存在し得る。「エポキシ置換された基」は、概して酸素原子が炭素鎖または環系の2個の隣接する炭素原子に直接結合した、1価の有機基、すなわちエポキシ置換基である。エポキシ置換有機基の例としては、2,3-エポキシプロピル、3,4-エポキシブチル、4,5-エポキシペンチル、2-グリシドキシエチル、3-グリシドキシプロピル、4-グリシドキシブチル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル、2-(3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシル)-2-メチルエチル、2-(2,3-エポキシシクロペンチル)エチル、および3-(2,3-エポキシシクロペンチル)プロピルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
特定の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A’’’)は、一般式:
(R SiO1/2w’’’(R SiO2/2x’’’(RSiO3/2y’’’(SiO4/2z’’’ (IV)
を有し、式中、各Rは上に定義されており、各Rは、独立してRおよびエポキシ置換された基から選択され、ただし、Rのうちの少なくとも2つはエポキシ置換された基であり、w’’’、x”、y’’’、およびz’’’は、w’’’+x’’’+y’’’+z’’’=1となるモル分率である。当該技術分野において理解されるとおり、直鎖オルガノポリシロキサンでは、下付き文字y’’’およびz’’’は概して0であるのに対し、樹脂では、下付き文字y’’’および/またはz’’’は0より大きい。w’’’、x’’’、y’’’、およびz’’’に関し、様々な代替実施形態について以下に記載する。これらの実施形態では、下付き文字w’’’は、0~0.9999、あるいは0~0.999、あるいは0~0.99、あるいは0~0.9、あるいは0.9~0.999、あるいは0.9~0.999、あるいは0.8~0.99、あるいは0.6~0.99の値を有してもよい。下付き文字x’’’は、典型的には0~0.9、あるいは0~0.45、あるいは0~0.25の値である。下付き文字y’’’は、典型的には、0~0.99、あるいは0.25~0.8、あるいは0.5~0.8の値を有する。下付き文字z’’’は、典型的には、0~0.99、あるいは0~0.85、あるいは0.85~0.95、あるいは0.6~0.85、あるいは0.4~0.65、あるいは0.2~0.5、あるいは0.1~0.45、あるいは0~0.25、あるいは0~0.15の値を有する。
【0156】
硬化剤(C’’’)は、オルガノポリシロキサン(A’’’)を硬化するのに好適な任意の硬化剤であってもよい。その目的に好適な硬化剤(C’’’)の例としては、フェノール化合物、カルボン酸化合物、酸無水物、アミン化合物、アルコキシ基含有化合物、ヒドロキシル基含有化合物、またはこれらの混合物もしくはこれらの部分的反応生成物が挙げられる。より具体的には、硬化剤(C’’’)の例としては、イミダゾールなどの3級アミン化合物;4級アミン化合物;ホスフィンなどのリン化合物;有機アルミニウム化合物などのアルミニウム化合物;および有機ジルコニウム化合物などのジルコニウム化合物が挙げられる。さらにまた、硬化剤もしくは硬化触媒のいずれか、または硬化剤と硬化触媒との組み合わせを、硬化剤(C’’’)として使用してもよい。硬化剤(C’’’)はまた、光酸または光酸発生化合物であってもよい。
【0157】
硬化剤(C’’’)のオルガノポリシロキサン(A’’’)に対する比は、限定されない。特定の実施形態では、この比は、100重量部のオルガノポリシロキサン(A’’’)当たり、0.1~500重量部の硬化剤(C’’’)である。
【0158】
他の実施形態では、シリコーン組成物のうちの少なくとも1つは、チオール-エン硬化性シリコーン組成物を含む。これらの実施形態では、チオール-エン硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(A’’’’)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合メルカプトアルキル基を有するオルガノポリシロキサン;(B’’’’)オルガノポリシロキサン(A’’’’)中のケイ素結合アルケニル基またはケイ素結合メルカプトアルキル基と反応することができる、1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合メルカプトアルキル基またはケイ素結合アルケニル基を有する有機ケイ素化合物;(C’’’’)触媒;および任意選択的に、(D’’’’)2つ以上のメルカプト基を含有する有機化合物、を含む。オルガノポリシロキサン(A’’’’)がケイ素結合アルケニル基を含む場合、有機ケイ素化合物(B’’’’)および/または有機化合物(D’’’’)は、ケイ素に結合した、かつ/または有機化合物中に、1分子当たり少なくとも2つのメルカプト基を含み、オルガノポリシロキサン(A’’’’)がケイ素結合メルカプト基を含む場合、有機ケイ素化合物(B’’’’)は1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基を含む。有機ケイ素化合物(B’’’’)および/または有機化合物(D’’’’)は、クロスリンカーまたは架橋剤と呼ばれる場合がある。
【0159】
触媒(C’’’’)は、オルガノポリシロキサン(A’’’’)と有機ケイ素化合物(B’’’’)および/または有機化合物(D’’’’)との間の反応を触媒するのに好適な任意の触媒であってもよい。典型的には、触媒(C’’’’)は、i)フリーラジカル触媒;ii)求核試薬;ならびにiii)i)およびii)の組み合わせ、から選択される。触媒(C’’’’)としての使用に好適なフリーラジカル触媒としては、光で活性化するフリーラジカル触媒、熱で活性化するフリーラジカル触媒、レドックス触媒などの室温でのフリーラジカル触媒、およびアルキルボラン触媒ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。触媒(C’’’’)としての使用に好適な求核試薬としては、アミン、ホスフィン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0160】
さらに他の実施形態では、シリコーン組成物のうちの少なくとも1つは、水素化ケイ素-シラノール反応硬化性シリコーン組成物を含む。このような実施形態では、水素化ケイ素-シラノール反応硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(A’’’’’)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合水素原子または少なくとも2つのシリコーン結合ヒドロキシル基を有するオルガノポリシロキサン;(B’’’’’)オルガノポリシロキサン(A’’’’’)中のケイ素結合水素原子またはケイ素結合ヒドロキシル基と反応することができる、1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合ヒドロキシル基または少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物;(C’’’’’)触媒;および任意選択的に、(D’’’’’)活性水素含有化合物、を含む。オルガノポリシロキサン(A’’’’’)がケイ素結合水素原子を含む場合、有機ケイ素化合物(B’’’’’)および/または有機化合物(D’’’’’)は、ケイ素に結合した、かつ/または活性水素含有化合物中に、1分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を含み、オルガノポリシロキサン(A’’’’’)がケイ素結合ヒドロキシル基を含む場合、有機ケイ素化合物(B’’’’’)は1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含む。有機ケイ素化合物(B’’’’’)および/または有機化合物(D’’’’’)は、クロスリンカーまたは架橋剤と呼ばれる場合がある。
【0161】
典型的には、触媒(C’’’’’)は、i)白金などのX族金属含有触媒;ii)金属水酸化物、アミン、またはホスフィンなどの塩基;およびiii)これらの組み合わせ、から選択される。
【0162】
このような水素化ケイ素-シラノール縮合硬化性シリコーン組成物の固化条件は変化し得る。典型的には、このような組成物は二液系として混合され、その後周囲条件下で硬化する。しかしながら、固化中に熱を利用することもできる。
【0163】
シリコーン組成物のいずれかは、任意選択的にかつ独立して、追加の成分または構成成分を、特に、これらの成分または構成成分が組成物のオルガノシロキサンの硬化を妨げない場合には、さらに含んでもよい。追加の成分の例としては、充填剤、阻害剤、接着促進剤、染料、顔料、抗酸化剤、担体媒体、熱安定剤、難燃剤、チキソトロープ剤、流動制御剤、増量充填剤および補強充填剤を含む充填剤、ならびに架橋剤が挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態では、組成物は、セラミック粉末をさらに含む。セラミック粉末の量は変化させることができ、利用される3D印刷プロセスに応じたものでもよい。
【0164】
添加剤のうちの1つ以上は、特定のシリコーン組成物の任意の好適な重量%、例えば、組成物の約0.1重量%~約15重量%、約0.5重量%~約5重量%、または約0.1重量%以下、約1重量%、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または約15重量%以上として存在することができる。
【0165】
特定の実施形態では、シリコーン組成物は剪断減粘性である。剪断減粘特性を有する組成物は、擬塑性と呼ばれる場合がある。当該技術分野において理解されているとおり、剪断減粘特性を有する組成物は、剪断歪み速度が増大すると、粘度が減少することを特徴とする。換言すれば、剪断減粘性組成物の場合、粘度と剪断歪みとは反比例する。シリコーン組成物が剪断減粘性である場合、シリコーン組成物は、特にノズルまたはその他の吐出機構が利用される場合、印刷に特に十分に好適である。シリコーン組成物を含む剪断減粘性組成物の具体例は、Dow Silicones Corporation(Midland,MI)から市販されているXIAMETER(登録商標)9200LSRである。
【0166】
特定の実施形態では、組成物のうちの少なくとも1つ、例えば、基材組成物、第1の組成物、第2の組成物、および/または任意の後続のまたは追加の組成物は、金属を含む。金属は金属または合金のいずれであってもよく、液体であってもスラリーであってもよい。典型的には、低融点金属は、金属および/または金属自体を含む少なくとも1つの組成物が押出機で溶解され、それに応じて印刷および/または堆積され得るように使用される。いくつかの実施形態では、金属を含む多孔質部分は、印刷プロセス中に形成される。あるいは、多孔性ではない金属を含むセクションは、印刷プロセス中に形成され、機能性(例えば、構造的支持、セクション分離など)を追加するためにセクションとして3D物品に組み込むことができる。金属が液体である場合、適切な固化条件および/または機序が利用される。このような固化条件は、十分な冷却と、液体金属が堆積される基材上にすでに存在する別の材料との固体合金の形成を含む。いくつかの実施形態では、金属は、水または非酸化性溶媒などの担体中の金属粒子のスラリーである。スラリーは、それ自体で、または他の方法で多孔質体の非多孔質セクションとして、多孔質セクションに印刷することができる。スラリーから形成された印刷セクションは、レーザ溶解、エッチング、および/または焼結などによってさらに処理することができる。
【0167】
特定の実施形態では、組成物のうちの少なくとも1つ、例えば、基材組成物、第1の組成物、第2の組成物、および/または任意の後続のまたは追加の組成物は、スラリーを含む。一実施形態では、スラリーはセラミックスラリーである。セラミックスラリーは水によって運ばれてもよく、上記の樹脂の1つなどの1つ以上の結合剤と組み合わされてもよい。典型的には、セラミックスラリーは、担体(例えば水)の蒸発および/または乾燥を介して乾燥/固化することができる。乾燥/固化したセラミックスラリーは、対流、熱伝導、または放射などによる加熱によってさらに処理または固化することができる。セラミックスラリーを形成するために使用され得るセラミックは、様々な金属の酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、ケイ化物、ならびにそれらの組み合わせおよび/または変形形態を含む。いくつかの実施形態では、上記のように、スラリーは金属スラリーである。これらのまたは他の実施形態では、スラリーは、樹脂スラリーを含むか、あるいは樹脂スラリーである。樹脂スラリーは、典型的には、水または有機溶媒中の樹脂の溶液または分散液である。樹脂スラリーは、上述の樹脂のうちの1つなどの任意の好適な樹脂を含んでもよく、典型的には、周囲温度または高温での印刷に適した粘度を含む。
【0168】
組成物のいずれかは、任意選択的にかつ独立して、追加の成分または構成成分を、特に、これらの成分または構成成分が組成物の任意の特定の構成成分の硬化を妨げない場合には、さらに含んでもよい。追加の成分の例としては、阻害剤、接着促進剤、染料、顔料、抗酸化剤、担体媒体、熱安定剤、難燃剤、チキソトロープ剤、流動制御添加剤、増量充填剤および補強充填剤を含む充填剤、ならびに架橋剤が挙げられる。様々な実施形態では、組成物は、セラミック粉末をさらに含む。セラミック粉末の量は変化させることができ、利用される3D印刷プロセスに応じたものでもよい。
【0169】
添加剤の各々は、特定の組成物の任意の好適な重量%、例えば、組成物の約0.1重量%~約15重量%、約0.5重量%~約5重量%、または約0.1重量%以下、約1重量%、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または約15重量%以上で存在することができる。
【0170】
特定の実施形態では、組成物は剪断減粘性である。剪断減粘特性を有する組成物は、擬塑性と呼ばれる場合がある。当該技術分野において理解されているとおり、剪断減粘特性を有する組成物は、剪断歪み速度が増大すると、粘度が減少することを特徴とする。換言すれば、剪断減粘性組成物の場合、粘度と剪断歪みとは反比例する。組成物が剪断減粘性である場合、組成物は、特にノズルまたはその他の吐出機構が利用される場合、印刷に特に十分に好適である。シリコーン組成物を含む剪断減粘性組成物の具体例は、Dow Silicones Corporation(Midland,MI)から市販されているXIAMETER(登録商標)9200LSRである。
【0171】
上述の組成物のいずれも、特定のシリコーン組成物に関して上述のとおり、単一の部の組成物であっても、複数部の組成物であってもよい。特定の組成物は反応性が高いため、複数部の組成物により、構成成分の尚早な混合および硬化が防止される。複数部の組成物は、組成物およびその構成成分の選択次第で、例えば、2部の系、3部の系などであってもよい。組成物の任意の構成成分が別個になっていて、残りの構成成分に関して個々に制御されてもよい。
【0172】
特定の実施形態では、組成物が複数部の組成物である場合、複数部の組成物の別個の部を、印刷前および/または印刷中に吐出印刷ノズル、例えば二重吐出印刷ノズル中で混合してもよい。あるいは、別個の部を、印刷直前に組み合わせてもよい。あるいはさらに、別個の部を、吐出印刷ノズルから吐出された後に、例えば印刷の細流を交差させることによって、または層の形成の際に別個の部を混合することによって、組み合わせてもよい。
【0173】
組成物は、第1の組成物に関連して上述した動的粘度のいずれかなど、様々な粘度のものであり得る。特定の実施形態では、組成物の粘度は、動粘度としてさらに定義され、25℃で500センチストークス(cSt)未満、250センチストークス(cSt)未満、または100センチストークス(cSt)未満であり、1cSt=1mm・s-1=10-6・s-1である。いくつかの実施形態では、組成物は、25℃で1~1,000,000cSt、1~100,000cSt、または1~10,000cStの動粘度を含む。各組成物の粘度は、その1つ以上の構成成分の量および/または分子量を変更することによって変化させることができる。粘度は、ノズルまたは装置の構成要素、特に任意のノズルまたは吐出機構と一致するように調節されて、熱、速度、または印刷に関連付けられた他のパラメータを制御することができる。当技術分野で容易に理解されるように、動的および/または動粘度は、「Standard Test Method for Kinematic Viscosity of Transparent and Opaque Liquids(and Calculation of Dynamic Viscosity)」と題するASTM D-445(2011);「Standard Test Method for Determination of Dynamic Viscosity and Derived Kinematic Viscosity of Liquids by Oscillating Piston Viscometer」と題するASTM D-7483(2017);「Standard Test Method for Determination of Dynamic Viscosity and Derived Kinematic Viscosity of Liquids by Constant Pressure Viscometer」 と題するASTM D-7945(2016);および/または「Standard Test Method for Dynamic Viscosity and Density of Liquids by Stabinger Viscometer (and the Calculation of Kinematic Viscosity)」と題するASTM D7042(2016)など、ならびにそれらの変形形態および/または組み合わせに記載されているものなどの様々な方法および技法に従って測定することができる。
【0174】
本明細書の開示から理解されるように、組成物は、印刷に好適な任意の形態であってもよく、その後、印刷後の固化に好適な形態であってもよい。したがって、利用される各組成物は、独立して、液体、固体、または半固体の形態であってもよい。例えば、各組成物は、選択された特定の組成物および印刷条件に応じて、また上述のように、細流および/または液滴を形成するのに好適な液体、粉末、および/または熱溶融可能な固体として利用されてもよい。
【0175】
特に第1の組成物に関して上述したように、組成物の好適な例の弾性率は変化し、例えば、本方法中を含む、組成物の硬化、架橋、および/または硬化に起因して経時的に変化し得る。典型的には、組成物の弾性率は、0.01~5,000MPaの範囲、例えば、0.1~150MPa、0.1~125MPa、0.2~100MPa、0.2~100MPa、0.2~90MPa、0.2~80MPa、0.3~80MPa、0.3~70MPa、0.3~60MPa、0.3~50MPa、0.3~45MPa、0.4~40MPa、または0.5~10MPaである。これらの範囲は、印刷前、印刷中、および/または印刷後など、任意の時点で組成物の弾性率に適用されてもよい。さらに、例えば、組成物の弾性率が経時的に(例えば、印刷中および/または印刷後に)変化するとき、このような範囲の2つ以上が組成物に適用され得る。特定の実施形態では、組成物は、印刷時に、120MPa未満、あるいは110MPa未満、あるいは100MPa未満、あるいは90MPa未満、あるいは80MPa未満、あるいは70MPa未満、あるいは60MPa未満、あるいは50MPa未満、あるいは40未満MPa、あるいは30MPa未満の弾性率を有する。当技術分野で容易に理解されるように、弾性率は、「Standard Test Method for Tensile Properties of Plastics」と題するASTM D638(2014)などに記載されているものなどの様々な方法および技法に従って、ならびにこれらの変形形態および/または組み合わせを介して測定されてもよい。
【0176】
固化条件が加熱を含む場合、固化条件への曝露は、典型的には、層(複数可)を高温で一定の期間加熱することを含む。高温および期間は、特定のシリコーン組成物の選択、少なくとも部分的に固化した層の所望の架橋密度、層(複数可)の寸法などを含む多くの要因に基づいて変化し得る。特定の実施形態では、高温は、室温より上から500℃、あるいは30~450℃、あるいは30~350℃、あるいは30~300℃、あるいは30~250℃、あるいは40~200℃、あるいは50~150℃である。これらまたは他の実施形態では、期間は、0.001~600分、あるいは0.04~60分、あるいは0.1~10分、あるいは0.1~5分、あるいは0.2~2分である。
【0177】
層(複数可)を熱に曝露するために、任意の熱源を利用することができる。例えば、熱源は、対流式オーブン、急速熱加工、熱浴、ホットプレート、または輻射熱であってもよい。さらに所望であれば、上記で紹介したように、層(複数可)を選択的に硬化させるために、ヒートマスクまたは他の同様のデバイスを利用してもよい。
【0178】
特定の実施形態では、加熱することは、(i)上部に層を印刷する基材を介して伝導加熱すること、(ii)3Dプリンタまたはその構成要素を介してシリコーン組成物を加熱すること、(iii)赤外線加熱すること、(iv)高周波またはマイクロ波加熱すること、(v)伝熱流体による加熱用浴、(vi)シリコーン組成物の発熱反応により加熱すること、(vii)磁気加熱すること、(viii)電場振動で加熱すること、および(ix)これらの組み合わせ、から選択される。本方法が、例えば各個々の層に関連して2つ以上の加熱ステップを含む場合、各加熱ステップは独立して選択される。
【0179】
このような加熱技術は当技術分野で既知である。例えば、伝熱流体は概して不活性流体、例えば、水であり、シリコーン組成物を印刷する際に層を取り囲み層と接触することができ、これにより層の少なくとも部分的な硬化が開始される。(ii)3Dプリンタまたはその構成要素を介してシリコーン組成物を加熱することに関して、シリコーン組成物の任意の部分を加熱して残りの部分と組み合わせてもよく、または組成物全体を加熱してもよい。例えば、シリコーン組成物の一部分(例えば1つの構成成分)を加熱してもよく、残りの部分と組み合わせると、シリコーン組成物の硬化が開始される。加熱された部分と残りの部分とを組み合わせるのは、組成物を印刷するステップの前、最中、および/または後であってもよい。構成成分を別個に印刷してもよい。
【0180】
その代わりにまたはそれに加えて、固化条件は、照射への曝露であってもよい。
【0181】
照射のために独立して利用されるエネルギー源は、電磁スペクトル全域の様々な波長を発し得る。様々な実施形態では、エネルギー源は、紫外線(UV)放射、マイクロ波放射、高周波放射、赤外線(IR)放射、可視光線、X線、ガンマ線、振動電場、または電子ビーム(eビーム)のうちの少なくとも1つを発する。1つ以上のエネルギー源を利用してもよい。
【0182】
特定の実施形態では、エネルギー源は、少なくともUV放射を発する。物理学では、UV放射は伝統的に4つの領域、すなわち、近紫外線(400~300nm)、中間紫外線(300~200nm)、遠紫外線(200~100nm)、および極紫外線(100nm未満)に区分される。生物学では、UV放射に対して3つの従来の区分、すなわち、近紫外線(400~315nm)、化学線(315~200nm)、および真空紫外線(200nm未満)が観察されてきた。特定の実施形態では、エネルギー源は、UV放射、あるいは化学線を発する。UVA、UVB、およびUVCの用語は、UV放射の様々な波長範囲を表すために業界でも一般的である。
【0183】
特定の実施形態では、層(複数可)を硬化させるために利用される放射線は、UV範囲外の波長を有し得る。例えば、400nm~800nmの波長を有する可視光を使用することができる。別の例として、800nmを超える波長を有するIR放射を使用することができる。
【0184】
他の実施形態では、eビームを利用して層(複数可)を硬化させることができる。これらの実施形態では、加速電圧は約0.1~約10MeVとすることができ、真空度は約10~約10-3Paとすることができ、電子電流は約0.0001~約1アンペアとすることができ、電力は約0.1ワット~約1キロワットで変化させることができる。線量は、典型的には、約100マイクロクーロン/cm2~約100クーロン/cm、あるいは約1~約10クーロン/cmである。電圧に応じて、曝露の時間は、典型的には約10秒~1時間であるが、さらに短いかまたはさらに長い曝露時間も利用することができる。
【0185】
本方法に従って形成される3D物品は限定されず、本開示の方法を実施するのに好適なAMプロセスを使用して形成可能な任意の3D物品であってもよい。典型的には、3D物品は、本開示の変形可能な組成物を使用して形成されるものなどの、可撓性構成要素および/または薄壁を含む。例えば、特定の実施形態では、3D物品は、それに印加される空気力(例えば、空気圧)に応じて、曲がるか、移動するか、または他の方法で屈曲することができる空気圧アクチュエータである。これらまたは他の実施形態では、3D物品は、生物学的(例えば、医療および/または歯科)デバイスである。このような実施形態では、3D物品は、例えばそれらの高い生体適合性に起因して、本開示の可撓性シリコーン組成物を使用して有利に形成され得る。このような医療デバイスの例としては、プロテーゼ、チューブ(例えば、栄養チューブ)、ドレーン、カテーテル、インプラント(例えば、長期および/または短期)、シール、ガスケット、シリンジピストン、歯科用ガードなどが挙げられる。
【0186】
以下の実施例は、本方法およびそれによって形成された3D物品を説明するものであり、本発明を説明することを意図しており、本発明を限定することを意図していない。
【0187】
一般的な手順:
以下の実施例の各々では、本発明の方法に従って3D物品が形成される。具体的には、3D物品は、図3の10で一般的に示される装置で形成される。より具体的には、装置10は、内径(di)を有するノズル12(SmoothFlow(商標)Tapered Tip、Nordson Corporation (Weslake,Ohio)から入手可能)を含み、運動制御ロボット37(オープンソースのFDMマシン(Rostock MaxTM V3 by SeeMeCNC(登録商標)(Goshen,Indiana,USA))に基づく、プリズム入力デルタロボット型3Dプリンタ運動制御プラットフォーム)に接続されている。ノズル12はまた、ディスペンサ36(Nordson EFD(Westlake,Ohio)によるOptimumシリンジバレルから形成され、70±10kPaまで加圧され、コントローラ34(Viscotec(Toging am Inn, Germany)によるModel EC200コントローラ)によって制御されるプログレッシブキャビティポンプ38(Preeflow eco-PEN 450)に供給される)に接続されている。第1の組成物(Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan)から入手可能なオキシム硬化型シリコーンシーラントであるDOWSIL(商標)737 Neutral Cure Sealant)(図示せず)がディスペンサ36に導入され、装置10のノズル12で基材18(ポリ乳酸トッププレート上に第1の組成物で形成された変形可能な基材を既に印刷したもの)に印刷され、変形可能な第1のフィラメント(図示せず)を形成する。第1の組成物の印刷の間、変形可能な基材とノズルは選択的に制御された距離(すなわち、ノズル高さ(t))だけ離間され、基材およびノズルのうちの少なくとも一方は他方に対して、選択的に制御された速度(すなわち、ノズル速度(v))で移動し、体積流量(Q)は選択的に制御されて、第1の層(図示せず)が得られる。次いで、第1の層は、固化条件に曝露されて、3D物品を形成する。
【0188】
実施例1~9:
3D物品は、上記の一般的な手順に従って作製される。以下の表2は、実施例1~9で利用される様々なパラメータを示している。
【表1】
【0189】
実施例1~9の各々では、上記の一般的な手順の実施中に、ベース基材は、図3に示されるように、ビルドプレート19(ミラー23を有する25.83mm×0.82mmの真ちゅう片持ち梁21によって支持されたポリ乳酸ベースプレート20)によって支持されている。第1の組成物(例えば、DOWSIL(商標)737 Neutral Sealant)を印刷することによって生じる片持ち梁の変位は、(表示パネル32(Keyence(Itasca,Illinois,USA)によるModel LK-GD500)に接続されたレーザ変位センサ30(Keyence(Itasca,Illinois,USA)によるModel LK-G10)を介して)レーザビームによって測定され、(KeyenceによるLK-Navigator softwareを介して)記録され、変形力測定値に変換される。具体的には、ノズルの移動方向に生じる変位を接線力に変換し、ノズルの移動方向に直角の方向に生じる変位を法線力に変換する。変形力測定の結果を図4および5に示す。
【0190】
具体的には、図4は、実施例1~9の第1の組成物の印刷中にノズル内径(di)およびノズル高さ(t)を変化させることによって制御される、体積流量(Q)の関数としての総接線力(F)の測定された平均値および標準偏差を提供する。
【0191】
図5は、実施例1~9の第1の組成物の印刷中にノズル内径(di)およびノズル高さ(t)を変化させることによって制御される、体積流量(Q)の関数としての総法線力(F)の測定された平均値および標準偏差を提供する。
【0192】
図4および図5に示されるように、第1の組成物を印刷している間、ノズルから基材に印加される変形力(F+F)は、体積流量(Q)を制御することによって減少する。
【0193】
実施例10~13:
3D物品は、上記の一般的な手順に従って作製される。以下の表2は、実施例10~13で利用される様々なパラメータを示している。
【表2】
【0194】
実施例10~13の各々では、第1の組成物は、上部に印刷される最上層が変形可能な基材であるように、ベース基材上に連続した層に印刷される。高速カメラ(PhotronによるModel FASTCAM-1024PCI)を利用して、第1の組成物の印刷中に画像を捕捉してノズルを観察する。次に、実施例10~13で作製された3D物品の各々の断面が硬化後に取られ、断面画像を提供するために撮影される。実施例10~13の捕捉画像および断面画像を図6に示す。
【0195】
図6に示されるように、第1の組成物を印刷している間、ノズルによって基材に印加される変形力(F+F)は、体積流量(Q)を制御することによって減少する。より具体的には、実施例10~13に例示される特定の実施形態では、所定の内径(di)およびノズルの高さ(t)において、体積流量(Q)を減少させることは、ノズルによって変形可能な基材に印加される変形力(例えば、全接線力(F))を減少させることが示されている。
【0196】
実施例10~13で作製された3D物品の断面の幅も測定され、以下の表3に示される。
【表3】
【0197】
例10で示されているように、体積流量(Q)が0.22ml/分よりも下に設定されている場合、観測された接線力(F)は、所与の内径(di)およびノズル高さ(t)において減少する。図6および表3に示されるように、実施例10で形成された物品の壁の幅は、実施例10~13で利用された全ての4つの体積流量(Q)の中で最も薄く、約1.20mmである。他のプロセスパラメータを一定に保ったままQをさらに0.28ml/分(実施例11)に増大させると、Fの明確な増加が観察される。図6に示されるように、ノズルの後方エッジは、実施例11の3D物品を形成する間に、変形可能な基材上に印刷された第1の組成物を通ってわずかに引きずられる。さらに、実施例11で形成された物品の壁の幅は、表3に示されるように、実施例10で測定された1.20mmの壁幅と比較して、1.57mmに増大している。
【0198】
同様に、実施例12でQがさらに0.34ml/分に増大すると、(実施例10および11と比較して)Ftの別の明確な増加が観察される。図6に示されるように、実施例11と比較して、実施例12の3D物品を形成する間に、変形可能な基材上に印刷された第1の組成物を通してノズルの後方エッジのより大きな領域を通って引きずられる。さらに、実施例12で形成された物品の壁の幅は、実施例11で測定された1.57mmの壁幅と比較して、1.8mmに増大している。最後に、実施例13でQが最高レベル、0.40ml/分に増大した場合、実施例10~13の間でFtの最大の増大が観察される。図6に示されているように、実施例13の3D物品を印刷する間、ノズルは第1の組成物を通って引きずり、その結果、印刷中に、ある量の第1の組成物がノズルの周囲(例えば、その前および側面)に蓄積する。さらに、実施例13で形成された物品の壁の幅は、表3に示されるように2.24であり、これは、実施例10~13で利用された4つの体積流量(Q)の全ての中で最大の幅である。
【0199】
実施例14
上記の一般的な手順に従って、中空の手(つまり、3D物品)が作製される。
【0200】
ノズルの内径(di)は0.25mmである。
【0201】
ノズル高さ(t)は0.21mmである。
【0202】
ノズル速度(v)は20mm/秒である。
【0203】
体積流量(Q)は0.28である。
【0204】
より具体的には、図7に示されるように、実施例14の中空の手は、手のひら部分を形成するための2列の壁および手の指へ、からの1列の壁を使用して、高さ120mmに形成される。手のひら部分の2列の壁は、サポートのない架橋のための安定したベースを提供し、指の1列の壁は、その先端部を印刷する際の過度の押し出しを最小限に抑える。
【0205】
添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」の表現、およびそこに記載される特定の化合物、組成物、または方法に限定されず、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態間で異なり得ることを解されたい。様々な実施形態の特定の特徴または態様を説明するための本明細書に依拠する任意のマーカッシュグループに関して、他のすべてのマーカッシュメンバーから独立した各々のマーカッシュグループの各メンバーから異なる、特別な、かつ/または予期しない結果が得られる可能性がある。マーカッシュグループの各メンバーは、個別に、およびまたは組み合わせて依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に好適なサポートを提供する。
【0206】
さらに、本開示の様々な実施形態の説明に依拠する任意の範囲および部分範囲は、添付の特許請求の範囲の範疇に独立してかつ集合的に含まれ、かかる値が本明細書に明示的に書かれていない場合であっても、それらの全体および/または小数値を含む全ての範囲を説明および企図すると理解される。当業者は、列挙された範囲および部分範囲が本開示の様々な実施形態を十分に説明し、有効にし、かつかかる範囲および部分範囲が関連する半分、3分の1、4分の1、5分の1などにさらに詳しく説明され得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、下3分の1、すなわち0.1~0.3、中3分の1、すなわち0.4~0.6、および上3分の1、すなわち0.7~0.9にさらに詳しく説明され得、これは、個別および集合的に添付の特許請求の範囲の範疇にあり、個別および/または集合的に依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に好適なサポートを提供する。さらに、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「以下」などの範囲を定義または変更する言語に関して、かかる言語は部分範囲、および/または上限もしくは下限を含むことを理解されたい。別の例として、「少なくとも10」という範囲には、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などが本質的に含まれ、各部分範囲は、個別および/または集合的に依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に好適なサポートを提供する。最後に、開示された範囲内の個別の数字は、依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に好適なサポートを提供する。例えば、「1~9」という範囲には、3などの様々な個別の整数、ならびに4.1などの小数点(または小数)を含む個別の数値が含まれ、これは、依拠され得、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態に好適なサポートを提供する。
【0207】
本発明を例示的に説明してきたが、使用されている用語は、限定ではなく説明の言葉の性質であることを意図していることを理解されたい。明らかに、上記の教示に照らして、本発明の多くの修正および変形が可能である。本発明は、具体的に記載された以外の方法で実施され得る。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
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図7