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特許7332628爆発の可能性のある区域で使用される産業車両用のバッテリ電源
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】爆発の可能性のある区域で使用される産業車両用のバッテリ電源
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/30 20210101AFI20230816BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20230816BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20230816BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20230816BHJP
   H01M 50/296 20210101ALI20230816BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20230816BHJP
   H01M 50/367 20210101ALI20230816BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20230816BHJP
【FI】
H01M50/30
H01M50/202 501S
H01M50/249
H01M50/284
H01M50/296
H01M50/35 201
H01M50/367
H01M50/213
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020560547
(86)(22)【出願日】2019-01-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2019050136
(87)【国際公開番号】W WO2019141524
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】102018100912.7
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520266753
【氏名又は名称】ストックリン ロジスティック アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Stoecklin Logistik AG
【住所又は居所原語表記】Wahlenstrasse 161, 4242 Laufen, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ バックハウス
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-054353(JP,A)
【文献】特開2014-160573(JP,A)
【文献】特開2011-049011(JP,A)
【文献】特開2017-069004(JP,A)
【文献】特開2017-117615(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0054307(US,A1)
【文献】米国特許第5441123(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/30-50/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング本体(47)と蓋(4)とを有するハウジング(2)を備える、爆発の可能性のある区域で使用される産業車両(8)用のバッテリ電源(1)であって、
前記ハウジング本体(47)は、車両用バッテリ(25)が配置された内室(20)を有するバッテリトレイ(3)を受け入れるための受入室(48)を有し、前記蓋(4)は、固定手段(53)を使用して前記ハウジング本体(47)に解放可能に固定可能であり、
前記バッテリトレイ(3)は、バッテリトレイ蓋(49)と、ベース(16)から離れるように延在する横側壁(17)及び縦側壁(18)を有する前記ベース(16)と、を有し、
前記ベース(16)に隣接する領域では、少なくとも1つの前記横側壁及び前記縦側壁(17、18)は、前記内室(20)内へ前記横側壁及び前記縦側壁(17、18)を貫通する凹部(19)を有し、
前記凹部(19)は、前記ハウジング(2)内で引き起こされる爆発に起因する重畳波が生じる領域内の、前記ベース(16)の上方の前記バッテリトレイ(3)の前記内室(20)のベース側端部領域に配置され、
自由空間又は空所(34)が前記車両用バッテリ(25)の外面と前記凹部(19)との間に残存するように設けられることを特徴とする、バッテリ電源(1)。
【請求項2】
前記ベース(16)は、上面視において、縦側部及び横側部を有する矩形構造を有し、
前記縦側部は、前記横側部の長手延伸部より大きい長手延伸部を有し、
前記内室(20)を形成するために、前記横側壁及び前記縦側壁(17、18)は、前記ベース(16)から該ベースに対してある角度で離れるように延在し、
前記横側部に配置される前記横側壁(17)は、それぞれの前記横側壁(17)の前記長手延伸部の中央の領域に配置される貫通凹部(19)を有し、
前記縦側部にそれぞれ配置される前記縦側壁(18)は、それぞれの前記縦側壁(18)の前記縦側部の相対する端部領域(22)に配置される2つの貫通凹部(19)を有することを特徴とする、請求項1に記載のバッテリ電源(1)。
【請求項3】
前記凹部(19)は、それぞれの前記横側壁及び前記縦側壁(17、18)を貫通する矩形壁開口(21)として形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリ電源(1)。
【請求項4】
30mm以下の空洞面幅及び6.3μm以下の平均粗さを有する、微細加工された空洞面(33)は、前記ハウジング本体(47)に面する蓋面(31)と、前記蓋(4)に面する前記ハウジング本体(47)の表面との間に形成されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のバッテリ電源(1)。
【請求項5】
前記蓋(4)は、複数のねじ接続部(53)によって前記ハウジング本体(47)上に解放可能に配置され、
前記ねじ接続部(53)は、前記蓋(4)の外周線(28)に沿って並ぶように設けられ、互いから所定の間隔をあけて配置されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のバッテリ電源(1)。
【請求項6】
前記バッテリトレイ(3)に解放可能に固定される中間蓋(36)は、前記受入室(48)と前記バッテリトレイ蓋(49)の下側(35)との間に設けられ、
前記中間蓋は、前記中間蓋(36)の上側(38)と、前記バッテリトレイ蓋(49)の前記下側(35)との間に受入室(37)を形成し、電子回路(14)を受け入れるように形成されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のバッテリ電源(1)。
【請求項7】
前記車両用バッテリ(25)を充電するための電気的充電接続を提供するためのケーブルねじ接続部(5、6、7、10、11)と、前記産業車両(8)に電気エネルギーを提供するための電気出力接続部と、によって特徴付けられる、請求項1からのいずれか一項に記載のバッテリ電源(1)。
【請求項8】
前記産業車両(8)を動作させるための接触器(43)によって切り替え可能な負荷電力回路と、前記車両用バッテリ(25)を充電するための接触器(44)によって切り替え可能な充電電力回路と、によって特徴付けられる、請求項1からのいずれか一項に記載のバッテリ電源(1)。
【請求項9】
外部回路が、電力なしで前記負荷電力回路を交互に切り替えるように、かつ、前記充電電力回路が切り替えられた負荷電力回路に電力を供給することなしに前記充電電力回路を相互接続するように、前記接触器(43、44)に結合される外部切り替え可能な接続装置(45)によって特徴付けられる、請求項に記載のバッテリ電源(1)。
【請求項10】
インターフェース装置(12)であって、特に、前記車両用バッテリ(25)に機能的に結合される電子回路(14)と、前記車両用バッテリ(25)を充電するための外部充電装置との間でデータ及び/又は信号を交換するためのCANバスインターフェース装置の形態の前記インターフェース装置(12)によって特徴付けられる、請求項からのいずれか一項に記載のバッテリ電源(1)。
【請求項11】
前記車両用バッテリ(25)は、前記バッテリトレイ(3)の前記ベース(16)に広範囲にわたって平行に配置される、複数のリン酸鉄リチウム電池(39)から形成され、前記内室(20)から前記凹部(19)まで気流を通過させるための空所(41)が前記電池(39)間に設けられることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のバッテリ電源(1)。
【請求項12】
産業車両(8)であって、前記産業車両(8)を駆動させる及び/又は荷物を移動させるための少なくとも1つの電気作動式駆動装置を有し、請求項1から11のいずれか一項に記載のバッテリ電源(1)によって特徴付けられる、産業車両(8)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに従って、ハウジング本体とカバーとを有するハウジングを備える、爆発の可能性のある区域で使用される産業車両用のバッテリ電源であって、ハウジング本体は、車両用バッテリが配置された内室を有する、バッテリトレイを受け入れるための受入室を有し、カバーは固定手段によってハウジング本体に解放可能に固定可能であり、バッテリトレイは、バッテリトレイカバーと、ベースから離れるように延在する壁を有する該ベースとを有する、バッテリ電源に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式産業車両は、例えば、化学工業又は製薬工業など、爆発の可能性のある区域で使用されることも多く、このような産業車両は、例えば、ATEX指令などの適用可能な点火保護タイプ規制に従って使用が承認される、ここでは特に、ATEX指令2014/34/EUの2G又は2Dデバイスカテゴリに従って認証される電力供給源によってのみ動作可能である。
【0003】
したがって、このような産業車両は、電気エネルギー供給源で動作されなければならず、この供給源は、一方では十分な電力を提供し、他方では上記の規制に従って許可されるハウジングに搭載される。今まで、対応するハウジングに配置される鉛酸バッテリが主に、電気エネルギー供給源として使用されている。
【0004】
鉛酸バッテリに基づくこのようなバッテリ電源の実質的な不利点は、これらが、産業車両の昼間勤務に対して単一のバッテリ電源のみを使用する複数交代操業に適していないことであるが、これは、これらバッテリ電源が十分な容量を有さないため、いくつかのこのようなバッテリ電源を産業車両ごとに用意しておく必要があり、昼間勤務の間に交換されなければならず、また、この後再充電されなければならないからである。
【0005】
鉛酸バッテリに基づくこのようなバッテリ電源の充電動作のために、爆発の可能性のある動作区域と別個の設備が必要であり、この設備は、充電するときに現れる酸煙の形成のために、かつ、酸水素ガス形成の危険性のために、外気供給部に接続されなければならず、一方では明らかに取扱費用を増加させ、他方ではこのように整備された産業車両の操業費の増加の一因にもなる、排気システムを備えなければならない。
【0006】
鉛酸に基づくこのようなバッテリ電源が使用される場合、通常、昼間勤務に対して産業車両ごとに3~4つのバッテリ電源を用意しておく必要があり、このことから、上述のかなりの費用がすぐに明らかになる。
【0007】
従って、他の電気エネルギー供給源を使用することによってこの費用を低減させることが望ましい。
【0008】
坑内採鉱用のバッテリ電源が、独国特許出願公開第102004008569号から知られており、これは、リチウム電池が配置されている圧力抵抗性バッテリハウジングを有し、ここで記述される特徴は、過出力制限及び/又は過電圧制限のための本質安全回路がバッテリハウジングに設けられることである。この文献から知られるバッテリハウジングは、バッテリトレイと、バッテリトレイに結合され、本質安全回路が配置される追加のハウジングとを有し、リチウム電池は、圧力抵抗ハウジングに配置されていることが分かり、一連のリチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、又は、液状電解質を有するリチウム電池から選択される。
【0009】
ここで、バッテリハウジング及びカバーの囲壁の壁厚、及び上記の構成部品間のねじ込み接続は、特定の最大爆発圧による爆発がバッテリハウジングの内室で生じるときに耐圧性がありかつ気密になるようにバッテリハウジングが密閉されたままであるように設計され、上記の爆発圧はリチウム電池で予想される最大破裂圧力によって決定される。
【0010】
産業車両に設けられ、リチウムポリマー技術、二酸化コバルトリチウム技術、リチウムマンガン技術、チタン酸リチウム技術、又はリン酸鉄リチウム技術に基づく電池を用いる、車両用バッテリが、欧州特許第2945215号から知られている。さらに、この既知の車両用バッテリは、産業車両及び/又は充電装置とデータを交換するためのバッテリ管理システムに設けられている。。しかしながら、この既知の車両用バッテリは、爆発の可能性のある区域での使用の表示を許可する性質を全く有さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これに基づいて、本発明の根底にある目的は、爆発の可能性のある区域で使用される産業車両用のバッテリ電源を作製することであって、上記のバッテリ電源は、一方ではガス及び粉塵を有する地帯での使用が許可され、他方では上述される取り扱いの手間を低減し、さらに、危険発生時に、バッテリ電源のハウジング内での予想外に高い爆発圧がハウジングの破裂をもたらさないように形成される、バッテリ電源を作製することである。このようなバッテリ電源を有する産業車両も提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を解決するために、本発明は、請求項1で特定される特徴を有する。この有利な実施形態はさらなる請求項に記載されている。本発明に従って作製される産業車両は請求項14で特定される特徴を有する。
【0013】
本発明は、ハウジング本体とカバーとを有するハウジングを備える、爆発の可能性のある区域で使用される産業車両用のバッテリ電源であって、ハウジング本体は、車両用バッテリが配置された内室を有するバッテリトレイを受け入れるための受入室を有し、カバーは固定手段によってハウジング本体に解放可能に固定可能であり、バッテリトレイは、バッテリトレイカバーと、ベースから離れるように延在する壁を有する該ベースを有し、ベースに隣接する領域では、少なくとも1つの壁は、内室まで壁を貫通する凹部を有する、バッテリ電源をもたらす。
【0014】
本発明によるバッテリ電源を使用することにより、使用される車両用バッテリのバッテリトレイにおいて生じる爆発発生時に、ベースに隣接する領域において、難燃性を有するように形成される少なくとも1つの凹部を介するバッテリトレイの少なくとも1つの壁において、制御不能な方法でバッテリトレイが破裂する、及び/又は、蓋が持ち上がるもしくはバッテリトレイから解放されることが回避されるような程度まで爆発圧が低減することが実現される。
【0015】
このように、爆発圧は、バッテリトレイの内室又は受入室から、バッテリトレイの周辺部への圧力を、バッテリトレイの外部へ向かうバッテリトレイ内の爆発によって引き起こされるいかなる炎も放つことなく解放することによって防止可能であることにより、もはや、バッテリトレイが制御不能に破裂する危険性はない、及び/又は、蓋が、制御不能な方法でバッテリトレイから部分的に又は完全に分離しないようにする。
【0016】
ベースに隣接する領域におけるバッテリトレイの壁の少なくとも1つの凹部の配置の結果として、重畳波、ひいては、最初の爆発波の圧力より大きい圧力による爆発波と、バッテリトレイ内の爆発波を重畳させることによって形成される圧力ピークが、バッテリトレイの破裂圧力を下回る圧力まで低減可能であること、また、バッテリトレイの蓋に作用する力をバッテリトレイの内室から加えても、制御されない方法で、蓋がバッテリトレイから上がること又は分離することにはならないことも、実現される。より高い圧力をバッテリトレイより下のレベルまで軽減することによって、この構成では、このような破裂圧力が、バッテリトレイの外側での爆発のように制御不能な方法で軽減されず、バッテリトレイを取り囲むバッテリ電源のハウジングの破裂の危険につながる可能性があり、それにより、バッテリ電源のハウジングの破裂に対する防爆がもはやないこととなる。バッテリ電源のハウジング内のより高い圧力を制御された方法で軽減することによって、バッテリ電源のハウジングが破裂する危険性は取り除かれる。
【0017】
また、バッテリ電源のハウジングの内側でのこの制御された圧力放出によって、バッテリ電源のハウジングの蓋が所定の方法でハウジングのハウジング本体上に残存することが保証され、ハウジングの蓋とハウジング本体との間に、ハウジングの周辺部から内室又は受入室内に酸素を透過可能とする空洞が出現するという状況は生じない。バッテリ電源の蓋とハウジングとの間に空洞が形成されることで、受入室内の破裂圧力の膨張発生時に、このような酸素の透過が生じる可能性があるが、これは、本発明による構成によって防止される。
【0018】
本発明の発展によると、バッテリトレイのベースは、上面視したときに、縦側部及び横側部を有する矩形構造を有し、縦側部は横側部の長手延伸部より大きい長手延伸部を有し、内室を形成するために、壁は、ベースから該ベースに対してある角度で離れるように延在し、横側部に配置される壁は、それぞれの壁の長手延伸部の中央の領域に配置される貫通凹部を有し、縦側部にそれぞれ配置される壁は、それぞれの壁の縦側部の相対する端部領域に配置される2つの貫通凹部を有することが提供される。
【0019】
本発明によるバッテリ電源の発展の一部として、具体的には、バッテリトレイの内室における最悪のシナリオとして想定される爆発発生時に、重ね合わせ波又は重畳波は、バッテリトレイのベースとバッテリトレイの蓋との間で前後に及ぶ爆発波によって形成される、初期爆発波に基づいて形成され、重畳波は、バッテリトレイから蓋が意図せずに持ち上がることにつながり得る、初期爆発波の圧力に対する非常に大きな圧力の増大、ひいては、バッテリトレイが蓋に影響を与える際にバッテリトレイからの重畳圧力の制御不能な解放をもたらすことが示されている。
【0020】
バッテリトレイのベースに隣接するバッテリトレイの壁に少なくとも1つの凹部を形成することによって、重畳波又は重畳圧力によって形成される超過圧力は、バッテリトレイの内室から、安全にバッテリトレイの内室又は受入室の外部に解放可能であり、それにより、バッテリトレイが破裂する及び/又は蓋がバッテリトレイから持ち上がる危険性は最小限になり得る又は排除可能である。特に、バッテリトレイの内室における超過内圧は、バッテリトレイの2つの横側部のそれぞれの壁に、対応する凹部を形成することによって、かつ、バッテリトレイの蓋が制御不能な方法で解放される、及び/又は、バッテリトレイの蓋とバッテリトレイの周壁との間に意図しない間隙が形成される危険性が回避可能であるような程度に、バッテリトレイの2つの縦側部のそれぞれの壁に2つの凹部をそれぞれ形成することによって、バッテリトレイの外部に安全に解放可能であることが示されている。
【0021】
バッテリトレイから外部に解放される圧力は、ハウジングの内室に、すなわち、バッテリ電源のハウジング本体とハウジングの蓋との間の内室に残存することで、爆発によって引き起こされる爆発ガス及び炎も、バッテリ電源のハウジングを介して外部に達し得ないようにし、上記のハウジングは、爆発の可能性のある周辺部において空洞なく形成され、かつ圧力抵抗性を有するように封止される。
【0022】
この構成によって、ハウジングの周辺部から、ハウジングの内室及びバッテリトレイの内室への酸素の流入を促進する空洞が、ハウジング本体とハウジング本体の蓋との間に広がる危険性が排除されることも示されている。これは、蓋がバッテリトレイ上に残存するとき、バッテリトレイの内室における爆発にかかわらず回避することができるため、爆発の結果として形成される火炎前面を即時に阻止し、このように、バッテリトレイの内室及びハウジングの内室から、ハウジングの外部に逃れる火炎前面を回避することができる。
【0023】
本発明の発展によると、凹部は、それぞれの壁を貫通する矩形壁開口として形成されることも提供される。例えば、これにより、バッテリトレイの壁の製造が簡素化されるが、これは、壁開口がウォータージェット切断プロセスによって形成することができるためであり、例えば、バッテリトレイの壁が金属物質、特に合金鋼から製造可能であるためであり、このように、凹部はまた、より大きい壁厚を有する壁でも費用効率の高い方法で製造可能である。
【0024】
本発明の発展によると、凹部は、バッテリトレイの内室のベース側端部領域に形成され、ハウジングの形式試験の一部としてハウジング内で引き起こされた試験的爆発の結果として現れる試験的爆発内圧を、バッテリトレイ及び/又は閉鎖されたハウジングを開放する爆発内圧より小さい、バッテリトレイ内に広がっている許容内圧まで低減させる全体表面を有することも提供される。
【0025】
本発明による、バッテリ電源のハウジングの形式試験の一部として、バッテリトレイに試験ガスが充填され、電気点火によってバッテリトレイの内室において制御された爆発が突然引き起こされ、バッテリトレイの内室に結果として生じた爆発内圧は、バッテリトレイの垂直方向に分布したいくつかの箇所で測定される。ここで、層状の圧力分布は、バッテリトレイの内室において設定され、これは、バッテリトレイの、ベースと蓋との間を数回往復する爆発波によって実現され、このように、バッテリトレイの、ベース及び蓋に反射した結果として重畳波が形成され、上記の重畳波は、実質的に、初期爆発波の圧力レベルより高い圧力レベルを有することが示されている。
【0026】
少なくとも1つの凹部、特に、上記で特定された箇所における、バッテリトレイの横壁及び縦壁上の凹部を配置することによって、バッテリトレイの内室における重畳圧力は、バッテリトレイのハウジングの空洞面を開く制御不能な変形、又は、バッテリトレイが破壊される危険性を生じさせることなく、バッテリトレイの外部へと逃がすことが可能であり、従って、重畳波は、本発明によるバッテリ電源のバッテリトレイの内室及びハウジングの内室又は受入室から、制御されない方法で逃れることができる。
【0027】
本発明の発展によると、ハウジング内で引き起こされる爆発に起因する、また車両用バッテリの電池の爆発によっても生じ得る重畳波が生じる領域内の、ベースの上方のバッテリトレイの内室のベース側端部領域に凹部が配置されることも提供される。この構成によって、いかなる潜在的な火炎前面も難燃性凹部を介してバッテリトレイの内室から逃れることができないように、バッテリトレイのベースの領域における重畳波の結果として生じる最大圧力を、バッテリトレイの内室から逃がすことが可能になる。
【0028】
具体的には、爆発の結果としてバッテリトレイの内室に現れる火炎前面は、ベースの領域におけるバッテリトレイの内室における過剰な圧力の結果として、及び、これによって、蓋の領域の酸素を濃縮することによって生じた酸素分布の結果として、バッテリトレイを立位で上方に移動させ、すなわち、バッテリトレイのベース上に形成される凹部から離れるように誘導されるため、これは、バッテリトレイのハウジングから出て火炎前面が外方に通り抜けないことが示されている。
【0029】
ここで、より詳細に以下に説明されるバッテリトレイの構成により、火炎前面は消火されるため、外方に通り抜けることなくバッテリトレイ内に保持される。
【0030】
本発明の発展によると、所定の空洞面幅及び6.3μm未満又は以下の平均粗さを有する、微細加工された空洞面は、ハウジング本体に面するカバー面と、蓋に面するハウジング本体の表面との間に形成されることが提供される。この構成によって火炎前面は既に述べたように消火されることになるが、これは、所定の空洞面幅及び6.3μm未満又は以下の平均粗さを有する、この微細加工された空洞面を使用して、周辺部からハウジング及び/又はバッテリトレイの内室への酸素の流入が回避されることで、火炎前面が内室で消火されるからである。
【0031】
本発明の発展によると、蓋は、複数のねじ接続部によってハウジングのハウジング本体上に解放可能に配置され、ねじ接続部は、蓋の外周線に沿って並ぶように設けられ、互いから所定の間隔をあけて配置されることも提供される。ねじ接続部の所定の間隔は特に、ねじ接続部の間で30~80mm、特に50~65mmの範囲の間隔であるため、内室への酸素の流入を防止する閉鎖力が空洞面において実現され、これによって火炎前面は消火される。
【0032】
本発明の発展によると、受入室とバッテリトレイ蓋の下側との間に配置可能な中間蓋が設けられることも提供される。上記の中間蓋は、中間蓋の上側と、バッテリトレイ蓋の下側との間に受入室を形成し、電子回路を受け入れるように形成される。
【0033】
この構成を使用して、車両用バッテリの電池から分離した受入室はバッテリトレイに形成され、上記の受入室は、電子回路又は印刷回路基板を受け入れるために形成され、これが、例えば、電池の状態を監視するセンサと、産業車両のコントローラもしくは制御装置、及び/又は電池を充電するための外付け充電装置との間の通信又はデータ交換のために機能することが実現される。
【0034】
本発明の発展によると、バッテリ電源、特にバッテリトレイは、車両用バッテリを充電するための電気的充電接続部を提供するためのケーブルねじ継ぎ手と、産業車両に電気エネルギーを提供するための電気出力接続部とを備えることも提供される。
【0035】
ケーブルねじ接続部は、本発明によるバッテリ電源の試験の一部として許可され、かつ維持されなければならない形式試験済みケーブルねじ接続部とすることができる。同様の方法で、車両用バッテリを充電するための電気的充電接続部、及び産業車両に電気エネルギーを提供するための電気出力接続部はまた、このようなケーブルねじ接続部によってバッテリトレイ上に設けることができる。
【0036】
本発明の発展によると、バッテリ電源は、産業車両を動作させるための接触器によって切り替え可能な負荷電流回路と、車両用バッテリを充電するための接触器によって切り替え可能な充電電力回路と、を有することも提供される。ここで、産業車両を動作させる、すなわち、産業車両を駆動させ、充電電力回路の接触器によって充電電流を電池に送り込むために充電電力回路が自由に切り替えられるとすぐに、接触器によって電力なしで産業車両の荷物搬送手段を上げる又は下げるために、負荷電力供給を切り替える構成が可能である。このように、産業車両及び電池の充電の同時動作が防止される。
【0037】
本発明の発展によると、バッテリ電源は、外部回路又は外部から起動させる回路が、電力なしで負荷電力回路を交互に切り替えるように、外部から切り替え可能であり、かつ接触器に結合される付属装置を有し、充電電力回路が切り替えられるときに負荷電力回路に電力を供給することなしに充電電力回路が貫通接続されることで、既に上述したように、産業車両及びバッテリ電源の電池の充電の同時動作は回避されることも提供される。
【0038】
本発明の発展によると、バッテリ電源は、特に車両用バッテリに機能的に結合される電子回路と、車両用バッテリを充電するための外部充電装置との間でデータ及び/又は信号を交換するためのCANバスインターフェース装置の形態のインターフェース装置を有することも提供される。この構成によって、車両用バッテリと外部充電装置との間のマスタースレーブ構成が可能になり、それにより、電池の状態データは例えば、電子回路装置を介して外部充電装置に送信されるため、車両用バッテリの電池を充電する及び/又は動作させるための電荷補償プロセス又は電荷平衡プロセスが可能である。
【0039】
本発明の発展によると、車両用バッテリは、バッテリトレイのベースに広範囲にわたって平行に配置される、複数のリン酸リチウム電池から形成され、バッテリトレイの内室から凹部まで気流を通過させるための空洞が電池間に形成されることも提供される。この構成によって、空洞又は自由空間は、特に円筒状に形成されたリン酸リチウム電池の並列配置の結果として、電池のハウジング本体の間にそれぞれ存在することが可能になる。上記の空洞は、重畳波を、バッテリトレイのベースの領域における凹部(単数又は複数)の方向に通過させるために利用可能であることで、重畳波は、凹部(単数又は複数)の方へ移動可能であり、既に上述されている圧力放出は、凹部(単数又は複数)を介して行われ得る。
【0040】
最後に、本発明はまた、既に上述されているように、産業車両を駆動させる及び/又は荷物を移動させるための少なくとも1つの電気作動式駆動装置を有する産業車両を提供し、産業用車両はバッテリ電源を有する。特に、爆発の可能性のある区域で動作させるための産業車両が提供される。
【0041】
例えば、産業車両は、フォークリフト車を駆動させ、かつフォークリフト車のストローク装置を使用して荷物を上げる又は下げるために形成される自動運転フォークリフト車であってもよく、車両を駆動させる又は荷物を操作するために上述したバッテリ電源によって電気エネルギーが提供される。
【0042】
本発明について、ここで以下に示される図面によってより詳細に後述する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明による一実施形態による、バッテリ電源のバッテリトレイの斜視図である。
図2図1によるバッテリトレイの側面図である。
図3図1によるバッテリトレイの正面図である。
図4】バッテリ電源のハウジングのハウジング本体に配置されるように設けられる蓋の上からの上面図である。
図5】バッテリトレイの斜視図である。
図5A】バッテリ電源のハウジングのハウジング本体の斜視図である。
図6図2による、VI-VIを横断する線による断面図である。
図7】車両用バッテリが配置されているバッテリトレイの斜視分解組立図である。
図8】本発明によるバッテリ電源が配置されているフォークリフト車の形態の産業車両の側面図である。
図9】ハウジングの蓋と共にバッテリ電源のハウジングに配置されるバッテリトレイの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明による一実施形態による、バッテリ電源1のバッテリトレイ3の斜視図を示す。
【0045】
図9に最も一般的な感覚で示されるバッテリ電源1は、受入空間48(図5A)において、図5によってより詳細に明確になるバッテリトレイ3を受け入れることができ、図4によってより詳細に明確になる蓋4を受け入れることができるハウジング本体47を有するハウジング2を有する。
【0046】
バッテリトレイ3は、陰極を提供するケーブルねじ接続部6と、図8により明確に見られるフォークリフト車9であってよい産業車両8に電気エネルギーを提供するための電気出力接続部に陽極を提供するためのケーブルねじ接続部7と、の形態のケーブルねじ接続部5を有するバッテリトレイ蓋49(図7)を有する。
【0047】
同様に、バッテリトレイ蓋49上に、陰極を接続する充電ソケットを提供するためのさらなるケーブルねじ接続部10と、車両用バッテリ25を充電するためにより詳細に示されない充電装置の陽極を接続する充電ソケットを提供するためのケーブルねじ接続部11と、が設けられる。
【0048】
さらに、概略的にのみ示されるインターフェース装置12が、バッテリトレイ蓋49上に設けられる。このインターフェース装置は、示される実施形態では、図6により明確に見られる電子切換装置14と充電装置との間のCANバス通信接続部を接続するための7分極データプラグ13と、電子切換装置14と産業車両8との間のCANバス通信接続部を接続するために形成される7分極データプラグ15と、を備える。
【0049】
バッテリトレイ3は、図1及び図5によって例として示されるようなベース16を有し、いずれの場合にも、このベース16から2つの横側壁17及び2つの縦側壁18が、バッテリトレイ蓋49の方向に直角に延在し、バッテリトレイ3の示される実施形態では、横側壁17は縦側壁18よりも長手延伸部が小さい。
【0050】
図1に見られるように、示される実施形態では、バッテリトレイ3はベース16に隣接する領域における横側壁17に凹部19を有し、この凹部は、壁開口21として形成され、かつ、バッテリトレイ3の外部の領域又は空間から、バッテリトレイ3に形成される内室20内に延在する(図6を参照)。
【0051】
同様に、凹部19はまた、バッテリトレイ3のベース16の領域に、実際は、壁開口21の形態で、図1において選定された斜視図により見ることができない横側壁17に形成される。
【0052】
横壁17の凹部19はまた、バッテリトレイ3の外部の領域又は空間から、バッテリトレイ3に形成される内室20内に延在する。
【0053】
さらに、図1は、縦側壁18が、壁開口21の形態で、実際にはまた、バッテリトレイ3のベース16の領域において、特に、縦側部18の相対する端部領域22に2つの凹部19を有し、バッテリトレイ3の示される実施形態では、各端部領域22は対応する横側壁17に接する。
【0054】
図1で選定された斜視により見ることができない縦側壁18もまた、壁開口21の形態の2つの凹部19を有する。この2つの凹部19は、上述される方法に対応する方法で縦側壁18のそれぞれの端部領域上に形成され、また、バッテリトレイ3の外部の領域又は空間から、バッテリトレイ3の内室20内に延在する。
【0055】
図2は、既に上述されているように、バッテリトレイ3と、バッテリトレイ3のベース16の領域に形成される2つの凹部19を有する縦側壁18と、の側面図を示す。
【0056】
バッテリ電源1のバッテリトレイ3の示される実施形態では、凹部19はそれぞれ、130mmの長手側延伸部及び25mmの高さ延伸部を有する矩形構造を有し、凹部19はそれぞれ、バッテリトレイ3の下側24、すなわち、ベース16の下側から見たとき、それぞれ20mmの間隔があけられた下縁部23を有し、それによって、既に上述されている構成は、凹部19がベース16に隣接する領域にそれぞれ形成されるように設定される。
【0057】
図3は、横側壁17のベース又は下側の領域において、130mmの長手延伸部及び25mmの高さ延伸部を有する矩形凹部19を有し、またベース16の下側24から20mmの間隔を有する下縁部23を有する横側壁17を有するバッテリトレイ3の正面図を示す。
【0058】
既に上述されているように、相対する横側壁17は凹部19を有し、相対する縦側壁18は2つの凹部19を有し、この凹部19は、一方では横側壁17の長手延伸部の中央に配置され、他方では縦側壁18の長手延伸部の2つの端部領域22に配置される。
【0059】
縦側壁18及び横側壁17の壁開口21の形態の各凹部19の構成及び設置は、バッテリトレイ3の内室20に配置される車両用バッテリ25の考えられる爆発のため、圧力が凹部19によって残圧レベル、バッテリ電源1のハウジング2が爆発によって意図せずに開放されない、すなわち、例えば破裂しない、及び、蓋4がまたハウジング本体47上に残存する、すなわち、ハウジング本体47から持ち上がらないほど低い残圧レベルまで軽減可能であるように、又は、バッテリ電源1の蓋4とハウジング本体47との間に空洞が形成され、この空洞によって、ハウジング2の受入室48内に酸素を透過させる又は流入させることが可能になるように、選定される(図面の図6を参照)。
【0060】
バッテリトレイ3上の各凹部19の構成及び設置は、内室20における爆発の結果として現れ、ベース16とバッテリトレイ蓋49との間で前後に及ぶ重ね合わせ波又は重畳波の結果として現れる、バッテリ電源1のバッテリトレイ3の内室20の過剰な圧力が、ハウジング2の乱暴で意図しない開放をもたらさないように特に選定されるが、これは、バッテリトレイ3のベース16の領域における過剰圧力波の結果として現れる過剰な圧力又は圧力ピークが、具体的には、このように構成されかつ設置される凹部19によって、所望の方法のままでバッテリ電源1のハウジング2を出ていくような残圧レベルまで低減可能である、すなわち、火炎前面がハウジングの受入室48から広がることを可能にするような、ハウジング2上に出現する開口部又は間隙はないからである。凹部19を通してバッテリトレイ3の内室20から外に現れる火炎前面はしたがって、上で既に説明したように、凹部19がバッテリトレイ3のベース16の領域に配置されることによって防止される。
【0061】
図4は、ハウジング2の蓋4の上からの上面図を示す。
【0062】
容易に分かるように、バッテリ及び電源を充電するためのケーブルを産業車両9に向けるために設けられるケーブルねじ接続部6、7、10、11がまた、蓋4の上側26に配置され、ケーブルねじ接続部Exdとすることができるさらなる3つのケーブルねじ接続部55が配置され、これらを介してデータプラグ13及び15ならびにパイロット接触部45と接続するための接続線が、データ交換及び通信のためにバッテリトレイ蓋49上に配置可能である。蓋4の外周線28に沿って並ぶように配置され、互いから所定の間隔をあけて配置される複数の孔又は開口部27が蓋4上に設けられ、バッテリ電源1又は蓋4の示される実施形態では、この間隔は55~65mmの値を有する。この公報に述べられるケーブルねじ接続部は全て、爆発の可能性のある区域で使用するために設けられるようなケーブルねじ接続部としてもよい。
【0063】
図9に示される複数のねじボルト53は、孔27に挿入可能であり、このねじボルトは、図9に示されるように、ハウジング本体47の上側フランジ面30上のねじ孔29で係合可能である。
【0064】
ハウジング本体47のフランジ面30と、蓋4の下側の対応するフランジ面又は蓋面31とは、ここで、図9による、微細加工された空洞面33が、フランジ面30と蓋面31との間に出現するように微細加工されるように設計され、この空洞面は、6.3μmの平均粗さ及び30mmの空洞面幅を有する。ねじボルト53は、高い予張力によってねじ孔29にねじ込まれ、微細加工された空洞面33によって、バッテリトレイ3の内室20における爆発発生時に、火炎前面が空洞面33を通ってバッテリハウジング2の外部の方向に広がり得ないこと、及び、微細加工された空洞面33を介して受入室48及び内室20への酸素の流入又は流れ込みが回避されることが保証され、蓋4の方向における内室20において広がる火炎前面のこの酸素消費により、火炎前面は自動的に消火される。
【0065】
図6は、図2による、VI-VIの横断によるバッテリトレイ3の断面図を示す。
【0066】
バッテリトレイ3は、縦側部18が配置されているベース16を有し、この縦側部18において、バッテリトレイ3の外部から内室20内に延在する壁開口21の形態の凹部19が形成される。
【0067】
図6に概略的にのみ示されている車両用バッテリ25は、内室20における配置で位置し、これは、図7によって以下により詳細に説明される。
【0068】
内室20における車両用バッテリ25の配置はここで、自由空間又は空所34が車両用バッテリ25の外面と凹部19との間に残存するように選定され、この空所によって、内室20における爆発によって引き起こされる圧力波が凹部19の方向に広がることが可能になる。このように、重畳波はまた、凹部19の方向に広がることができ、重畳波によって引き起こされる圧力振幅は、ハウジング2の受入室48におけるバッテリトレイ3の内室20と周辺部との間の部分圧力放出によって軽減可能であることで、バッテリハウジング2の所定の破裂圧力より低い残圧レベルが内室20及び受入室48に残存するため、バッテリハウジング2の破裂、又は、バッテリハウジング2の局部的な分裂による開放、及び、バッテリハウジング2の蓋4の制御不能な解放を回避することが実現される。
【0069】
さらに、図6及び図7に見られるように、バッテリトレイ蓋49に解放可能に配置することができ、図7により詳細に見ることができる中間蓋36が、内室20とバッテリトレイカバー49の下側35との間に配置される。この中間蓋は、中間蓋の上側38とバッテリトレイ蓋49の下側35との間に受入室37を形成する。中間蓋36は、概略的に示されるねじ接続部50によってバッテリトレイ3の縦側部及び横側部に固定可能であり、バッテリトレイ蓋49は、概略的に示されるねじ接続部51によってバッテリトレイ3に固定可能である。
【0070】
電子回路装置又は印刷回路基板14は受入室37に配置可能であり、この印刷回路基板は、上で既に説明されているものであり、車両用バッテリ25の状態又は車両用バッテリ25の電池を監視するのと同時に、データプラグ13上に配置されるパイロット接触部45を介して切り替え可能である回路を有することで、例えば、負荷電力回路用の回路に統合される接触器43、及び、充電電力回路用の回路に統合される接触器44によって、又は、産業車両8を動作させるための負荷電力回路の切り替え可能接触器43、44を切り替えることによって、電力なしで切り替え可能であり、充電電力回路は、負荷電流回路が切り替えられた充電電力回路に電力を供給することなしに、車両用バッテリを再充電するために相互接続可能であり、産業車両8を動作させるのと同時に、車両用バッテリ25を充電することが回避される。
【0071】
図7は、車両用バッテリ25が配置されているバッテリトレイ3の斜視分解組立図を示す。車両用バッテリ25は、それぞれが円筒体40として形成される複数のリン酸鉄リチウム電池LiFePO 39を有し、空所又は自由空間41はそれぞれ、電池39の間に形成され、この自由空間は、凹部19の方向に空所41を通して広がることができる、既に上で複数回説明した圧力波の経路として機能し、このように、バッテリトレイ3の外部の領域の方向における内室20の外への、既に述べた部分圧力放出を行うことができる。
【0072】
図5Aは、ハウジング47の上側に形成される微細加工されたフランジ面30を有し、複数のねじ孔29を有するバッテリ電源1のハウジング2のハウジング本体47の斜視図を示し、これによって、図4に示される蓋4は、図9に示されるねじボルト53のねじ係合によってねじ孔29に解放可能に配置することができる。
【0073】
図9は、バッテリトレイ3が受入室48内に配置されているバッテリ電源1の斜視図を示し、ここで、選定された図では、バッテリ電源1のハウジング2の蓋4は省略されている。蓋4をフランジ面30上に配置することによって、既に上で述べた空洞面33が形成され、これによって、バッテリトレイ3の内室20への酸素の流入を防止することで、内室20における爆発の結果として現れる火炎前面は、酸素消費によって自動的に消火され、かつ、バッテリ電源1のハウジング2の外部に逃れることが不可能となる。バッテリトレイ3の外壁は、ハウジング本体47の内壁と共に中間室54をそれぞれ形成し、これは、バッテリトレイ3の内室20から外への圧力放出のための爆発室として機能する。
【0074】
図8は、本発明によるバッテリ電源1を備えたフォークリフト車9を示し、このフォークリフト車は、工場又は同様な爆発の可能性のある区域で動作するための産業車両として提供される。
【0075】
フォークリフト車9は、電動式でバッテリ電源1によって移動させることができ、フォークリフト車9の概略的に示される電気駆動モータ46によって、荷受手段42を電動式に上げ下げすることができる。ここで、フォークリフト車9を動作させるための電気エネルギーは、本発明によるバッテリ電源1によって提供され、この特徴として、バッテリ電源1の容量が産業車両8の昼間勤務全体には十分であるため、勤務全体の間、バッテリ電源1を車両用バッテリ25の再充電プロセスにあてる必要がない。
【0076】
本発明によると、バッテリ電源は、爆発の可能性のある区域での使用のために提供され、上記の点火保護タイプ規制を満たし、特に、ATEX指令2014/34/EUの2G又は2Dデバイスカテゴリとして承認され、ガス及び粉塵を有する地帯での使用のために提供される。特に、バッテリ電源1は、爆発グループII及びこの下位グループIIA、IIB、ならびにIIB+Hの規制を満たし、特に、この特徴として、バッテリ電源のハウジング内のいかなる爆発の結果として生じる重畳波もまた、ハウジングの破裂をもたらすことはなく、代わりに、重畳波を伴う超過圧力は、残圧レベルまで軽減され、これによって、ハウジングの破壊がもたらされることはなく、特に、結果として、もはや爆発からのいかなる保護もないことになるようなバッテリハウジングの蓋の開放又は引き剥がしがもたらされることはない。
【0077】
本発明によるバッテリ電源の試験目的でのガス混合物を使用して行われる試験的爆発の過程で、圧力波の重畳の結果として21.8バールの圧力ピークがハウジングの内室に現れ、これらの圧力ピーク値は本発明によるバッテリ電源の設計によって8バールを下回る値に下げられ得るため、ハウジングの破裂及びハウジングの蓋の意図しない分離が回避可能であり、それにより爆発保護が目的に従って維持可能であることが示されている。
【0078】
さらに、本発明によるバッテリ電源の設計によって、今まで、既知のバッテリ電源を備えた産業車両の安定性を増大させるために必要であった重量プレート又は質量プレートを省くことができることも保証される。
【0079】
本発明によるバッテリ電源のハウジングの蓋は、上記のATEX指令による2G/2Dデバイスカテゴリの形式試験済みケーブルねじ接続部を特徴とし、これによって、車両用バッテリを充電するためのバッテリケーブル、及び産業車両にエネルギーを提供するためのバッテリケーブルの両方が案内可能である。通信線、CANバス線、又は本発明によるバッテリ電源の車両用バッテリ及び/又は電子回路装置と、外部装置、回路、又は機器と、の間のデータ及び/又は信号の送信用の線は、ケーブルねじ接続部だけでなく、産業車両の電気駆動モータに電気エネルギーを提供するための線を通して案内可能である。
【0080】
今まで使用されていた鉛酸バッテリと比較して、本発明によるバッテリ電源による使用のために提供されるリン酸鉄リチウム電池によって、バッテリ電源の提供される電気容量の大幅な増大が保証され、充電によって、例えば、およそ200アンペア時の容量を実現できる。
【0081】
車両用バッテリの負荷回路は、産業車両を駆動させ、かつ産業車両の荷受手段を上げる又は下げるための接触器によって制御される負荷回路と、接触器を介して取り付けられる車両用バッテリを充電するための負荷回路と、に分けられる。2つの負荷回路は、技術的に互いに分離させることで、車両用バッテリの充電プロセスの間、産業車両が移動できないようにする。同様に、車両用バッテリを充電するためにバッテリ電源に設けられる接続装置は、産業車両の動作のための電気エネルギーを放出する車両用バッテリの動作中に電力を供給しないことが保証される。
【0082】
バッテリ電源の接続装置に設けられる充電装置のパイロット接触部によって、充電保護装置又は接触器、電力なしで産業車両に電気エネルギーを放出するための負荷電流回路を切り替えるための接触器の作動を介して車両用バッテリの充電電力回路が閉じられるようになり、従って、車両用バッテリの充電が可能となるが、同時に、負荷回路を介して車両用バッテリを放電させることはもはや可能ではない。
【0083】
パイロット接触部を閉じることによって、バッテリ電源の電子回路装置と、外部充電装置との間の、上記のCANバス通信インターフェースを介したデータ交換が開始されることで、充電サイクルは、電荷平衡プロセスを使用することによって車両用バッテリを形成するために設けられるリン酸鉄リチウム電池の充電状態に従って行われてもよい。
【0084】
バッテリ電源の蓋とハウジングとの間に形成された微細加工された空洞面によって、バッテリトレイ内の爆発後の火炎前面の形成時にハウジングの内室又は受入室への酸素の流入又は流れ込みが防止されることが保証されるため、火炎前面は自動的に消火される。
【0085】
より詳細に上で個々に説明されない本発明の特徴に関しては、一般的に、特許請求の範囲及び図面を明示的に参照する。
【符号の説明】
【0086】
1 バッテリ電源
2 ハウジング
3 バッテリトレイ
4 蓋
5 ケーブルねじ接続部
6 ケーブルねじ接続部
7 ケーブルねじ接続部
8 産業車両
9 フォークリフト車
10 ケーブルねじ接続部
11 ケーブルねじ接続部
12 インターフェース装置
13 データプラグ
14 回路装置/印刷回路基板
15 データプラグ
16 ベース
17 横側壁
18 縦側壁
19 凹部
20 内室
21 壁開口
22 端部領域
23 下縁
24 下側
25 車両用バッテリ
26 上側
27 孔
28 外周線
29 ねじ孔
30 フランジ面
31 蓋面
32 端部領域
33 空洞面
34 自由空間/空所
35 下側
36 中間蓋
37 受入室
38 上側
39 リン酸鉄リチウム電池
40 本体
41 自由空間/空きスペース
42 荷受手段
43 接触器
44 接触器
45 パイロット接触子
46 駆動モータ
47 ハウジング本体
48 受入室
49 バッテリトレイ蓋
50 ねじ接続部
51 ねじ接続部
53 ねじボルト
54 中間空洞
55 ケーブルねじ接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図5A
図6
図7
図8
図9