(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】停止ケーブル引き込みシステム
(51)【国際特許分類】
B64F 1/02 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
B64F1/02
(21)【出願番号】P 2020561660
(86)(22)【出願日】2019-05-03
(86)【国際出願番号】 US2019000020
(87)【国際公開番号】W WO2019212602
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-01
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504097650
【氏名又は名称】エンジニアード・アレスティング・システムズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ENGINEERED ARRESTING SYSTEMS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2550 Market Street, Aston, PA 19014, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー, カーク, エフ.
(72)【発明者】
【氏名】アグレン, ジャスティン, エス.
(72)【発明者】
【氏名】シャニー, トラビス, エル.
(72)【発明者】
【氏名】レヴェスク, クリストファー, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スミス, スコット, エー.
(72)【発明者】
【氏名】ニールド, ケネス, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アロヨ―マルケス, アイザック
(72)【発明者】
【氏名】スコット, クレイグ, エイチ.
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06394390(US,B1)
【文献】特開平07-315788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の滑走路を横切って滑走路交差ケーブルを固定するための停止ケーブル引き込みシステムであって、
支持アームアセンブリと、
滑走路交差ケーブルを支えるケーブル支持ブロックアセンブリと、
第1の回転軸であって、航空機のロールオーバイベントの間に前記支持アームアセンブリが第1の回転軸を中心に回転し、前記ケーブルは前記滑走路の上方に維持される第1の回転軸と、
第2の回転軸であって、引き込みイベントの間に前記ケーブル支持ブロックアセンブリが第2の回転軸を中心に回転し、前記ケーブルが滑走路トラフ内に引き込まれる第2の回転軸と、
前記ケーブル支持ブロックアセンブリを前記支持アームアセンブリに固定するロック機構と、
引き込みアームアセンブリを備え、
前記ロック機構がロックされた場合に、航空機が前記ケーブル支持ブロックアセンブリに圧力をかけると前記支持アームアセンブリが第1の回転軸を中心に回転し、
前記引き込みアームアセンブリは、ロック機構を解放して、前記ケーブル支持ブロックアセンブリを前記支持アームアセンブリから切り離し、
前記ロック機構のロックが解除された場合に、前記ケーブル支持ブロックアセンブリが第2の回転軸を中心に回転して、前記ケーブルを前記滑走路トラフ内に引き込む停止ケーブル引き込みシステム。
【請求項2】
前記ロック機構は、ロックピンを受け入れる1つまたは複数のロックブロックを有する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、航空機の滑走路内に取り付けられた支持ボックス内に収容されており、且つカバープレートによって覆われている請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ケーブル支持ブロックアセンブリはモジュール式である請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記ケーブル支持ブロックアセンブリはケーブル支持ブロック及びハウジングを有し、前記ケーブル支持ブロックは前記ハウジングに対して取り外せるように固定可能である請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記支持アームアセンブリが第1の回転軸として機能する主軸を有し、
前記引き込みアームアームアセンブリが第2の回転軸として機能する支持ブロック軸を有する請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ケーブル支持ブロックアセンブリがロックピンを支持するハウジングを有する請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記ケーブル支持ブロックアセンブリを前記支持アームアセンブリに固定するために前記ロックピンを収容する1つまたは複数のロックブロックを有する支持アームを更に備える請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
引き込みアーム及び移動アクチュエータを更に備え、前記移動アクチュエータが前記引き込みアームアセンブリに動作可能に結合された請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
ケーブルを介してラッチロックに接続された移動アクチュエータを更に備える請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
可動トロリを更に備え、前記可動トロリが第1の位置にある場合に、前記ケーブル支持ブロックアセンブリは前記可動トロリに対する回転が許容され、前記可動トロリが第2の位置にある場合に、前記ケーブル支持ブロックアセンブリの前記可動トロリに対する回転が妨げられる請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記停止ケーブル引き込みシステムが、ケーブルリリーフの窪みを有するトップカバーを備える請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
航空機の滑走路を横切って滑走路交差ケーブルを固定するための停止ケーブル引き込みシステム用のモジュール式ケーブル支持ブロックであって、
前記滑走路交差ケーブルを収容するための開口部を規定するモジュール式支持ブロックと、
前記モジュール式支持ブロックを収容するハウジングであって、
前記停止ケーブル引き込みシステムの支持アームに回転可能に取り付けられるよう構成されており且つ前記モジュール式支持ブロックが該ハウジングに対して取り外し可能に固定されたハウジングと、
前記モジュール式支持ブロックを前記ハウジングに対して固定するロック機構とを備えるモジュール式ケーブル支持ブロック。
【請求項14】
前記停止ケーブル引き込みシステムの前記支持アームに対する前記モジュール式ケーブル支持ブロックの回転を規制するロックが前記ハウジングに設けられた請求項13に記載のモジュール式ケーブル支持ブロック。
【請求項15】
取り外し可能な固定は、前記モジュール式支持ブロック及び前記ハウジングの一方に沿って配置された複数の挿入溝を介してなされ、該複数の挿入溝は前記モジュール式支持ブロック及び前記ハウジングの他方に配置された複数のトラックと協働する請求項13
又は14に記載のモジュール式ケーブル支持ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照:本出願は、2018年5月3日に出願され「高速航空機ロールオーバのための停止ケーブル引き込み機構」と題された米国仮出願第62 / 666389号、及び2018年8月21日に出願され「高速航空機ロールオーバのための停止ケーブル引き込み機構」と題された米国仮出願第62 / 720737号に関連し、それらの優先権を主張するものであり、それぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の分野は、航空機の滑走路を横切って(滑走路に交差して)使用するための停止ケーブル(アレスティングケーブル)引き込み機構に関する。引き込み機構は、航空機のロールオーバ/偏向イベント(事象)の間にケーブルを滑走路表面の下方に退かせることなく、(航空機のテールフックによる捕捉のために)ケーブルを滑走路の上に持ち上げるように機能する。停止ケーブル引き込み機構は、航空機の高速ロールオーバによる移動アクチュエータの損傷を防ぐためにも設計されている。開示されたシステムは、ロールオーバイベントが引き込みに使用される移動アクチュエータに影響を与えたり負荷をかけたりせず、且つ偏向されるシステムの質量が最小化されるように、引き込みに関連するコンポーネントをロールオーバによる偏向に対して分離する。
【背景技術】
【0003】
滑走路を横切ってケーブルを引き上げることによって航空機の機能を減速させるために使用される航空機停止システムの1つのタイプ。これらのシステムは、テールフックを装備した航空機が着陸する必要がある滑走路(商用または軍用)に設置されることがよくある。使用中、航空機のテールフックは、ケーブルとかみ合って、航空機を安全に停止させることが可能である。
【0004】
航空機停止システム10の1つのコンポーネントは、停止ケーブル引き込み機構である。
図1に示すように、これらの機構は、滑走路交差ケーブル(滑走路横断ケーブル)12が使用されていないときに障害物のない滑走路を提供するために、滑走路交差ケーブル12を滑走路表面の下方で滑走路にまたがるトラフに引き込むために使用される。飛行操作中、停止ケーブル引き込み機構14は、ケーブル12をバッテリ(すなわち、係合準備完了)位置まで上昇させる。この位置は、滑走路交差ケーブルを滑走路の上方の正しい高さに保持し、航空機のテールフックが航空機停止システムに接続されたケーブルと係合できるようにし、航空機を制御された安全な停止状態にする。
図1は、滑走路を横切って延在するケーブル12を備えた航空機停止システム10を示している。
図2は、
図1のシステムを、滑走路エッジシーブ(滑走路端滑車)150およびブレーキシステム/エネルギー吸収体152とともに示している。これらのコンポーネントは、安全な航空機停止のためにケーブル12に固定されているペイアウトテープ154を管理するように滑走路に沿って配置されている。
図3は、滑走路横断ペンダントケーブル12に係合するテールフックを備えた航空機の概略図を示している。
【0005】
図1及び
図2を参照すると、滑走路表面の下方に取り付けられた(据え付けられた)複数の個別の引き込み機構14がある。引き込み機構14の操作は、飛行操作及び要件に応じて、管制塔システム16または停止システムの近くの滑走路の外に配置された制御システムから行われる。
【0006】
これらのシステムは、航空機が高速で移動する滑走路に設置されているため、機構14は、ロールオーバ(乗り越え)イベントの間に航空機の車輪からの衝撃荷重を経験することが多い。これは、結果的にシステムが頻繁に定期的なメンテナンスを受けることを意味する。 市場で入手可能な現在の停止ケーブル引き込み機構は、高速航空機のロールオーバの力に耐えるように設計されていない。これらの機構は通常、最大25ノットのロールオーバに対してのみ評価される。しかし、現在の軍事操作手順は、停止ケーブル引き込み機構は25ノットを超えるロールオーバ速度に耐えることができなければならないと指示している。したがって、停止ケーブル引き込み機構の改善が望ましい。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の発明者らは、滑走路表面の下にケーブルを下げるために使用される移動アクチュエータを、ロールオーバによる偏向に関連するコンポーネントから切り離す停止引き込みシステムを設計した。これらのコンポーネントを分離すると、移動アクチュエータと関連コンポーネントをロールオーバイベントに関連する動的負荷から分離するのに役立つ。これにより、間もなく開示されるシステムは、高速および高周波のロールオーバイベントに耐えることができ、移動アクチュエータ及びシステム全体の寿命および動作範囲(運行上の限界)を延ばすことができる。
【0008】
本開示のある実施態様によれば、滑走路交差ケーブルを支える(収容する、受け入れる)ように構成されたケーブル支持ブロックアセンブリと、第1の回転軸であって、航空機のロールオーバイベントの間に支持アームアセンブリが第1の回転軸を中心に回転し、ケーブルは滑走路の上方に維持される第1の回転軸と、第2の回転軸であって、引き込みイベントの間にケーブル支持ブロックアセンブリが第2の回転軸を中心に回転し、ケーブルが滑走路トラフ内に引き込まれる第2の回転軸とを備える、航空機の滑走路を横切って滑走路交差ケーブル(滑走路横断ケーブル)を固定するための停止ケーブル引き込みシステムを提供され得る。システムはまた、支持ブロックアセンブリを支持アームアセンブリに固定するロック機構を有するケーブル支持ブロックアセンブリを備えた支持アームアセンブリを含み得る。いくつかの例では、ロック機構がロックされた場合に、航空機がケーブル支持ブロックアセンブリに圧力をかけると支持アームアセンブリが第1の回転軸を中心に回転する。このシステムはまた、引き込みアームアセンブリを有し得て、ここで、引き込みアームアセンブリは、ロック機構を解放して、支持ブロックアセンブリを支持アームアセンブリから切り離すように機能する。いくつかの例では、ロック機構のロックが解除された場合に、支持ブロックアセンブリが第2の回転軸を中心に回転して、ケーブルを滑走路トラフ内に引き込む。支持アームアセンブリは、第1の回転軸として機能する主軸を有してもよく、引き込みアームは、第2の回転軸14として機能する支持ブロック軸を有し得る。停止ケーブル引き込みシステムは、ケーブルリリーフの窪みを有するトップカバー(頂部カバー)を備える支持ボックス内に配置され得る。
【0009】
ケーブル支持アセンブリを支持アームアセンブリにロックするために、支持アームは、支持ブロックアセンブリを支持アームアセンブリに固定するためにロックピンを収容する1つまたは複数のロックブロックを有し得る。 引き込みアームおよび移動アクチュエータが備えられてもよく、移動アクチュエータは引き込みアームアセンブリに動作可能に結合される。
【0010】
別の例では、移動アクチュエータは、ケーブルを介してラッチロックに結合することができる。更なる例では、可動トロリが備えられてもよく、可動トロリが第1の位置にあるとき、ケーブル支持ブロックは可動トロリに対する回転が許容され、可動トロリが第2の位置にあるとき、 ケーブル支持ブロックは可動トロリに対する回転が妨げられる。
【0011】
また、航空機の滑走路を横切って滑走路横断ケーブルを固定するための停止ケーブル引き込みシステム用のモジュール式ケーブル支持ブロックも提供され得る。モジュール支持ケーブル支持ブロックは、滑走路横断ケーブルを収容するための開口部を規定するモジュール式支持ブロックと、モジュール式支持ブロックを収容するハウジングであって当該モジュール式支持ブロックが当該ハウジングに対して取り外し可能に固定されたハウジングと、モジュール支持ブロックをハウジングに対して固定するロック機構とを備える。いくつかの例では、取り外し可能な固定は、モジュール式支持ブロック及びハウジングの一方に沿って配置された複数の挿入溝を介してなされ、当該複数の挿入溝はモジュール式支持ブロック及びハウジングの他方に配置された複数のトラックと協働する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は航空機の滑走路を横断して延在し、一連の停止ケーブル引き込み機構を介して配置されている滑走路横断ケーブルの側面斜視図である。
【0013】
【
図2】
図2は追加のシステムコンポーネントを備えた
図1のシステムを示している。
【0014】
【
図3】
図3は滑走路横断ペンダントケーブルを捕捉するテールフックを備えた航空機の概略図を示す。
【0015】
【
図4】
図4はケーブルを上昇/バッテリ/準備完了位置に配置する、従来技術の停止ケーブル引き込み機構の側面平面図である。
【0016】
【
図5】
図5はケーブルを引き込み位置に配置する、
図4の停止ケーブル引き込み機構の側面平面図である。
【0017】
【
図6】
図6はケーブルをロールオーバ位置に配置する、
図4の停止ケーブル引き込み機構の側面平面図である。
【0018】
【
図7】
図7は本開示の停止ケーブル引き込み機構の一実施態様の側面斜視図である。
【0019】
【
図8】
図8はケーブルを上昇/バッテリ/準備完了位置に配置する、支持ボックス内に位置する停止ケーブル引き込み機構の側面斜視図である。
【0020】
【
図9】
図9は開示された停止ケーブル引き込みシステムに関連して使用するための支持アームアセンブリの一実施態様の側面斜視図である。
【0021】
【
図10A】
図10Aは支持アームアセンブリに対して所定の位置にロックされたケーブル支持ブロックアセンブリの正面斜視図である。
【0022】
【
図10B】
図10Bはロールオーバ中のケーブル支持ブロックアセンブリ及び支持アームアセンブリの動きの側面平面図である。
【0023】
【
図11】
図11はロールオーバ中のケーブル支持ブロックアセンブリ及び支持アームアセンブリの動きの側面斜視図であり、支持アームアセンブリから切り離された引込みアームアセンブリの位置も示している。
【0024】
【
図12】
図12は開示された停止ケーブル引き込みシステムに関連して使用するための引き込みアームアセンブリの一実施態様の上面斜視図である。
【0025】
【
図13】
図13は支持アームアセンブリに対する支持ブロックアセンブリの引き込みを可能にする、ロック機構に係合および解放される引き込みアームアセンブリの前面斜視図を示している。
【0026】
【
図14】
図14は引込み位置にある開示された停止ケーブル引き込みシステムの側面斜視図を示す。
【0027】
【
図15】
図15はモジュール式ケーブル支持ブロックの一実施態様の分解図を示す。
【0028】
【
図16】スカラップ状のケーブル収容部を有するカバープレートの上面斜視図を示す。
【0029】
【0030】
【0031】
【
図19A-19B】
図19A、
図19Bは引き込み/ローラ機構の別の実施態様を示している。
図19A及び
図19Bは、ケーブルを介したロック機構の解放、及び支持ブロックの引き込み位置への回転を示している。
【0032】
【0033】
【
図21】
図21は引き込み/ローラ機構の更なる実施態様の正面平面図を示す。
【0034】
【0035】
【発明を実施するための形態】
【0036】
停止ケーブル引込み機構(アレスティングケーブル引込み機構)は、一般に、航空機の滑走路の上方及び下方に滑走路横断ケーブル(滑走路交差ケーブル)を上昇および下降させるように設計されている。その機構は、また、航空機のタイヤによるロールオーバ(乗り越え)にも耐えられる必要がある。本開示は、航空機のロールオーバからの力を経験するコンポーネントから引き込みコンポーネントを切り離す停止ケーブル引き込み機構を提供する。 これにより、必要とするメンテナンスを削減しつつより高い航空機速度に耐えることができる、より堅牢なシステムが提供される。
【0037】
軍事作戦中、停止ケーブル引き込み機構のシステムはバッテリ位置(すなわち、持ち上げられて係合準備が整った位置)に置かれることが多く、航空機のロールオーバによる頻繁な衝撃にシステムがさらされる。 ロールオーバによる衝撃の頻度は、実際の引き込みコンポーネントに損傷を与える可能性があり、引き込み機構が確実に動作するのを妨げる可能性があり、またはシステムの追加のサービスまたは修理が必要になる可能性がある。
【0038】
現在の停止ケーブル引き込み機構に関する上記の問題のいくつかに基づいて、本発明の発明者は、頻繁な高速航空機のロールオーバの力をより効果的に吸収および分散するシステムを提供することが望ましいことに気付いた。より強力でより堅牢な機構が開発された。開示されたシステムの改善された堅牢性は、メンテナンスコストの削減に役立つことが可能であり、且つ必要なメンテナンス作業が少ないため、飛行オペレーション中にメンテナンス担当者をアクティブな滑走路の外に位置させて危険から守るのに役立つことが可能である。そのシステムはまた、頻繁な高速航空機のロールオーバの力を吸収および分散するのにより効果的であり、メンテナンスに費やされる時間を削減しながら、操作性および信頼性を向上させる。
【0039】
背景として、最も一般的に使用されている現在の停止ケーブル引き込み機構14は、BAK-14Mと呼ばれ、その一例が
図4~6に示されている。 この機構14は、カバープレート20に取り付けられ且つ支持ボックス22内にある、支持アーム18と呼ばれる単一のアセンブリからなる。支持ボックス22は、滑走路表面の下方に据え付けられ、カバープレート20は滑走路表面と同一平面上にある(面一である)。支持アーム18は、リンケージアセンブリ(結合アセンブリ)24と移動アクチュエータ(モーションアクチュエータ)26を含む、引き込みプロセスに必要なコンポーネントを含む。支持アーム18はまた、支持ボックス22の上方に延在し、滑走路の上方に滑走路横断ケーブルを固定するために使用されるケーブル支持ブロック30を含む。
図4は、ケーブルを持ち上げた位置にあるケーブル支持ブロック30を示している。移動アクチュエータ26の作動は、結合アセンブリ24(一般に、図示したように2つのトグルリンクとして形成される)の引き込み運動を引き起こし、この引き込み運動は、
図5に示すように、ケーブル支持ブロック30をピボット点32を中心に動かしてケーブル支持ブロック30を引き込む。この動作は、ケーブル支持ブロックを滑走路トラフ(滑走路溝)に引っ込める必要がある場合に発生する。
【0040】
航空機がケーブル支持ブロック30上を転がると、支持アーム18全体が
図6に示されるロールオーバ位置にそれる(偏る)。この実施例では、支持アーム18には下向きに力がかかる。ねじりばね34は、支持アーム18の偏向能力を追加する支持アーム軸に沿って備えられる。移動アクチュエータ26を支える支持アームは、下方に移動して、ダウンストップバンパ28に衝撃を与える。ねじりばね34はまた、衝撃エネルギーを吸収するのを助けることができる。圧縮ばね36は、結合アセンブリ24および移動アクチュエータ26をそれらのバッテリ位置に戻すのを助ける。航空機の車輪が支持アーム18 /ケーブル支持ブロック30上を転がると、ねじりばね34の位置エネルギーは、支持アーム18 /ケーブル支持ブロック30を
図4の上昇位置に戻す。
【0041】
ロールオーバイベント(ロールオーバ事象)の間に偏る(偏向する)コンポーネントでもある支持アーム18に関連して引き込みプロセスに必要なコンポーネントを組み込むことにより、支持アーム18の質量が増加し得て、これにより、引き込みコンポーネントが経験する力を増加させ得る(F=ma)。 さらに、移動アクチュエータ26および他の引き込みコンポーネントは、すべての航空機のロールオーバイベントの衝撃を経験し、更にシステムの損傷に寄与する。
【0042】
軍事手順では、テールフックを装備した航空機が着陸するときはいつでも滑走路横断ケーブルを上げて準備しておくよう、しばしば要求される。したがって、停止ケーブル引き込み機構は、着陸のたびにロールオーバによる航空機の車輪の力を経験する可能性がある。 また、本発明の発明者は、航空機のロールオーバイベントの間に、滑走路横断ケーブルが、引き込みコマンド中にするように滑走路表面の下方に移動すべきではないことをつきとめた。滑走路横断ケーブルは、テールフックの係合が必要な場合に備えて、航空機のロールオーバの間は滑走路表面の上方に留まる必要がある。滑走路横断ケーブルが滑走路表面の上方の位置を維持することに失敗すると、フックスキップの可能性、即ち航空機のテールフックが停止システムに完全に係合されない失敗の可能性が生じ得る。
【0043】
したがって、記載された実施態様は、引き込みアセンブリアームをロールオーバ/偏向コンポーネントから分離する停止ケーブル引込みシステム40を提供する。引込みアセンブリアームは、ペンダントケーブル(つりケーブル)を滑走路の上方のバッテリ位置に配置するためにシステムのケーブル支持ブロックを上昇させ、且つシステムケーブル支持ブロックとケーブルを滑走路と同一平面又は滑走路の下方に配置するために、即ち滑走路のトラフ(溝)内の引込み位置に配置するためにシステムケーブル支持ブロックとケーブルを引込み位置に下げるコンポーネントを支持する。偏向コンポーネントは、ロールオーバイベントの間にケーブル支持ブロックを下げることができるコンポーネントを支持するが、航空機の車輪が通過するとすぐに準備完了位置にはね返って、戻る。システムコンポーネントを相互に分離することで、より堅牢で信頼性の高いシステムが提供される。
【0044】
ここで
図7を参照すると、システム40は、滑走路表面の下方に据え付けられた支持ボックス22内に含まれ得る。開示されたシステム40は、システム40が後付け可能であるように、現在設置されている(及び/又は従来技術の)支持ボックス22と共に使用することが可能である。これにより、追加の滑走路土木工事や大規模な掘削作業を必要とせずに、システム40を既存の引き込み機構設備に設置することができる。 既存のシステムの既存の電力、モーションコントロール、及び/又はセンサ機能は、変更せずに使用できる。
図7は、航空機の滑走路表面48に対して取り付けられた支持ボックス22を示している。滑走路48は、滑走路表面48の長さに延びるトラフ(溝)50を有して設計されている。システム40が使用されていないとき、引き込み機構システムコンポーネント(以下で詳細に説明される)を使用して、ケーブル12をトラフ50に下げることができる。上昇位置にあるとき、ケーブル12は、ケーブル支持ブロック44を通って延在する。下降位置にあるとき、ケーブル支持ブロック44は、ケーブル12がトラフ50に収容されるように、前方に引っ込められる/回転される。
【0045】
システム40は、3つの主要な位置で動作する。
図8は、バッテリ位置にあるシステム40を示しており、これは、上昇位置にあるシステムである。滑走路横断ケーブルは、滑走路表面の上方の支持ブロック44内に取り付けられ、必要であれば航空機のテールフック係合の準備が整っている。
図9は、システム40の支持アームアセンブリ52を示している。
図10Aは、ロックされた構成(形状、配置)の支持アーム52の拡大図を示している。
図10B及び
図11は、ロールオーバ位置にあるシステム支持アーム52を示しており、これは、偏向位置にあるシステムである。この位置は、航空機のタイヤが支持ブロック44に衝突し、衝撃エネルギーを吸収するために、荷重下でアセンブリを偏向および回転させるときに達成される。この位置では、滑走路横断ケーブルは滑走路表面の上方に留まる。この偏向位置であっても滑走路横断ケーブル12が滑走路表面の下方に退く(引っ込む)ことを許さないことは、フックスキップを防ぐのに役立つ(フックスキップとは、航空機が必要なときにケーブルに係合できないことである)。
【0046】
図12は、システム40の引き込みアセンブリ68を示している。
図13は、システム40の引き込みの中間ステップを示し、
図14は、完全に引き込まれた構成のシステムを示している。この位置では、滑走路横断ケーブル12は、カバープレート20(航空機の滑走路表面48と同一平面上にある)の下にあり、トラフ内に位置することができ、障害物のない滑走路を作成する。この位置は、滑走路がテールフックを装備した航空機によって使用されておらず、ケーブルがアクセス可能であることを要求されない場合に使用し得る。ここで、これらの図と、引き込みイベントとは区別されるイベントとしてロールオーバイベントを調整するコンポーネントを参照する。
【0047】
ケーブル支持ブロック44の動きは、
図9及び
図10に示される支持アームアセンブリ52、及び
図12に示される引き込みアセンブリ68を介して制御される。これらのコンポーネントは、ケーブル支持ブロック44の説明したタイプの動き、及びその結果としての滑走路横断ケーブル12の動きを引き起こすために協働する。
【0048】
図9及び
図10は、支持アームアセンブリ52を示しており、これはまた、
図11及び
図13、
図14によって他のシステムコンポーネントと組み合わせて示されている。支持アームアセンブリ52は、複数の回転軸を含む。 第1の回転軸54は、ロールオーバ中の支持アームアセンブリ52の回転を提供する(
図10B、
図11に示されている)。 この第1の回転軸54は、ケーブル支持ブロック44を含む支持アーム52が、ロールオーバ衝撃中に加えられたエネルギーを吸収することを可能にする。第2の回転軸56は、引き込み(
図13、
図14に示される)中のケーブル支持ブロック44およびその関連コンポーネント(
図15に示されるように集合的に支持ブロックアセンブリ80と呼ばれることがある)の回転を提供する。この第2の軸56は、支持ブロックアセンブリ80が滑走路表面より下に回転することを可能にする。これらの2つの異なる回転軸を提供することで、高速ロールオーバ中に引き込みコンポーネントが過度の力を受けるのを防ぐ。これらの異なる回転軸の機能については、以下でさらに詳細に説明する。
【0049】
より具体的に
図9を参照すると、支持アームアセンブリ52は、ケーブル支持ブロックアセンブリ80に固定され得る。ケーブル支持ブロックアセンブリ80は、ケーブル収容開口部58を備えたケーブル支持ブロック44を含む。この開口部58は、
図7に示すように、使用中の滑走路横断ケーブル12を収容して支持する。ケーブル支持ブロックアセンブリ80はまた、ロック機構66および保持プレート88を支持するハウジング82を含む。(
図15は、一実施態様を示しており、当該実施形態では、ケーブル支持ブロックアセンブリ80のこれらのコンポーネントはモジュール式であり、以下でより詳細に説明される。ただし、モジュール性は必須ではないことを理解されたい。)
図10Aに示されるように、ロック機構66は、支持アームアセンブリ52上のサイドロックブロック160と、支持ブロックアセンブリ80のハウジングのロックピン162とによって規定され得る。
図10A及び
図10Bに示されるように、ロックブロック160は、 ロックピン162を収容するように構成された湾曲した背面164を備える。ロックピン162が図示したようにサイドロックブロック160に係合すると、支持ブロックアセンブリ80は、支持アームアセンブリ52にしっかりと固定され、支持アームアセンブリ52と一緒に動く。この集合的な動きは、
図10A及び
図11に示されるロールオーバイベントによって示される。
【0050】
図9に戻ると、支持アームアセンブリ52はまた、第1の回転軸54を規定する主軸60を有する。主軸に関連するのは、1つまたは複数のロールオーバねじりばね62である。主軸60および1つまたは複数のロールオーバねじりばね62は、
図10B及び
図11に示されるように、支持アームアセンブリ52に、ロールオーバイベントの間に支持ボックス22内に偏向される能力を提供する。1つまたは複数のロールオーバねじりばねが主軸60の周りに巻かれている。ばね62は、支持ボックスカバープレート20にほぼ平行に延在する後部支持体63を有してもよい。後部支持体63は、主軸60を中心とする支持アームアセンブリ52の回転中にカバープレート20にぶつかってカウンターレバー支持を提供するのを助ける。これは、
図11に示されている。この図では、ロックピン162は、 支持ブロックアセンブリ80および支持アーム52が互いに固定され、単一のユニットとして移動するように係合されている。
【0051】
ロールオーバ圧力が(例えば、航空機の車輪からの力の形で)ケーブル支持ブロック44に加えられると、それは、支持アームアセンブリ52を下向きに回転させ、主軸60に関して枢動させ、
図9及び
図10Aによって示される位置から
図10B及び
図11によって示される位置まで移動する。ケーブル支持ブロック44は、カバープレート20に対して下向きに押し下げられ、その結果、それは、支持ボックス22内に部分的に下がる。主軸60は、支持アームアセンブリ52の後方に配置される。ねじりばね62は、航空機の車輪圧力のエネルギーの一部を吸収する。 第1の軸54を中心にした枢動は、支持アームアセンブリ52の当接部材166が引込みアセンブリ68上に配置されたダウンストップバンパ(降下停止バンパ)78に接触するまで続く(
図12は、引き込みアセンブリ68自体を示し、以下でより詳細に説明される)。 ロールオーバイベントの間、ケーブル12はトラフ50内に引っ込められないことに留意することが重要である。代わりに、
図11のロールオーバ位置によって示されるように、ケーブル12は滑走路表面の上方に留まる。従来技術のシステムでは、ケーブルがトラフに引っ掛かり、テールフックイベントの間にバッテリ位置にない可能性があった。しかしながら、この開示されたシステムでは、支持ブロック44およびその関連コンポーネント(アセンブリ(80))は、ロック機構66によって支持アームアセンブリ52の他のコンポーネントに対して回転することが抑制されるため、ケーブル12はトラフ内へと回転しない。ロールオーバの間に支持アーム52が軸54を中心に回転し、支持ブロックアセンブリ80と支持アームアセンブリ52との間のロックにより、支持ブロックが軸56を中心に枢動するのを防ぐような形状になっている。ケーブル12は、上部カバー20上の同一平面へ下がることができ、ケーブルがトラフに押し込まれるのに十分な円弧がない。支持アーム52、当接部材166およびダウンストップバンパ78によって規定されるストップはまた、ケーブル12の更なる引き込みの防止を助けることができる。
【0052】
一実施例では、ケーブル12が支持ボックス22のカバープレート20に衝突する場所にケーブル12に沿ってスカラップ形状を提供することが可能である。別の実施例では、ケーブル12が静止するための領域を提供するために、カバープレート20に沿ってスカラップ形状168を提供することが可能である。一実施例を
図16に示した。このケーブルリリーフのくぼみは、航空機のロールオーバ中にケーブル12とカバープレート20の間のシザリング運動(はさみで切り取る運動)によって引き起こされる損傷を軽減する可能性がある。
【0053】
記載された偏向構成は、ロールオーバ中の航空機の車輪からの圧力によってのみ維持される。ねじりばね62は、ロールオーバの力の一部を吸収する。 ロールオーバ車輪力からの圧力がケーブル支持ブロック44から解放されると、ねじりばね62の位置エネルギーにより、(ロックされたケーブル支持ブロックアセンブリ80と共に)支持アームアセンブリ52が、
図9及び
図10Aのバッテリ位置に跳ね返る。これは、ケーブル12を支持するケーブル支持ブロック44が、必要であればケーブル12を航空機のテールフックに提供するのに間に合うようにバックアップされる(上方に戻される)ことを確実にする。 このばねの解放は、一方向の進入障壁に沿って配置された金属スパイクに例えることができる。車両の車輪がスパイクの上を転がると、スパイクは準備ができた位置に跳ね返ることが可能である。
【0054】
次に、
図12~
図14を参照して、ケーブル支持ブロック40の引き込みを説明する。引き込みは、支持アームアセンブリ52の第2の回転軸56に沿って起こる。引き込み中、ケーブル支持ブロックアセンブリ80は、ロック解除されるか、または、そうでなければ、ロック機構66の解放を介して支持アームアセンブリ52から解放される。引き込みは、ケーブル支持ブロックアセンブリ80を動かすが、支持アームアセンブリ52は動かさない。支持アームアセンブリ52は静止したままであり、引き込み中に支持ボックス22内の第1の軸54を中心に枢動または回転しない。第2の回転軸56は、支持アームアセンブリ52に対する支持ブロックアセンブリ80の移動を可能にする。
図11のロールオーバ構成と
図14の引き込み構成との比較は、どの回転軸がアクティブであるかを説明するのに役立つ。
【0055】
支持アームアセンブリ52の第2の回転軸56は、引き込みのために使用される。 これは、ケーブル支持ブロック44を滑走路表面48の下に完全に引き込み、保管または不使用のためにトラフ50に引き込むプロセスである。これは、上記のロールオーバ偏向とは異なる。
図9に示されるように、第2の回転軸56は、支持ブロック軸70によって規定される。支持ブロック軸70は、1つまたは複数の支持ブロックねじりばね72に関連付けられている。支持ブロック軸70は、引き込み中の支持ブロックアセンブリ80の枢動軸である。 引き込みが発生する場合、以下でさらに詳細に説明するように、支持ブロックアセンブリ80と支持アームアセンブリ52との間のロック機構66が解放される。
【0056】
ここで
図12に示されるように、引き込みアームアセンブリ68は、移動アクチュエータ74及び引き込みアーム76を備えている。引き込みアームアセンブリ68はまた、上記のような1つまたは複数のダウンストップバンパ78を備えている。 移動アクチュエータ74は、空気圧アクチュエータ、機械的アクチュエータ、またはシステム40を上昇及び下降させるために使用され得る任意の他のタイプの運動アクチュエータであり得る。引き込みアームアセンブリ68は、ロールオーバ偏向中には移動しないが、ダウンストップバンパ78を介して当接部材166にいくらかの減衰を提供する。引き込みアームアセンブリ68は、ケーブル12をトラフ50内に動かすように機能する支持ブロックアセンブリ80の引き込み中にのみ作動する。
【0057】
引き込みコマンドが発行されると(例えば、管制塔16からのものであり得る)、引き込みアーム76は、支持アームアセンブリ52のロック機構66を解放する。
図12、
図13に示されるように、移動アクチュエータ74の作動は、引き込みアーム76を(
図11及び
図12の)その解放/解除位置から
図13及び
図14のその係合位置へ移動させる。引き込みアーム76は、ロックピン162をロックブロック60の曲面164から押し出すために、ロックピン162に圧力を加える。ロックピン162の解放は、ケーブル支持ブロックアセンブリ80を支持アームアセンブリ52から切り離す。ケーブル支持ブロックアセンブリ80の第2の軸56を中心とした独立した回転は、ケーブル支持ブロックアセンブリ80の引き込みを可能にする。ロック機構66が解放された後、引き込みアーム76は、ねじりばね72からの上向きの圧力に逆らって働き、
図14に示すように、ケーブル支持ブロックアセンブリ80を、支持ブロック軸70 /第2の軸56を中心に引き込み/枢動させ、引き込み位置内に移動させるように働く。したがって、ロック機構66は、特定の動作に必要なもののみを使用しながら、システム40が複数の回転軸を有することを可能にする。ロック構成の場合、ケーブル支持ブロックアセンブリ80および支持アームアセンブリ52は、支持アームアセンブリがロールオーバのエネルギーを吸収するように互いにロックされる。ロック機構66がロック解除構成にあるとき、ケーブル支持ブロックアセンブリ80は、支持アームアセンブリに対して枢動して、移動アクチュエータ74及び引き込みアセンブリの引き込みアーム78が支持ブロックアセンブリ80(及びその内部に含まれるケーブル)を支持ボックス22内に引き込み、滑走路の表面をきれいにすることが可能である。
【0058】
例えば、ロック機構66がロック構成に係合している(および、引き込みアーム76が解放されている)とき、支持アームアセンブリ52は、ロールオーバ偏向のために主軸60 /第1の軸54上で回転することができる。 ロックされた構成は、移動アクチュエータ74又は引き込みアームアセンブリ68の引き込みアーム76に力を伝達せず、それらが高速ロールオーバ力によって与えられる衝撃荷重を受けることを防ぐ。ロック機構66が引き込みアーム76によって解放されると、ケーブル支持ブロックアセンブリ80は、引き込みアーム76の継続的な動きによって、支持ブロック軸70 /第2の軸56に関して回転することができ、 ケーブル支持ブロックアセンブリ80を下降した位置に移動させる。
【0059】
これらの複数の回転点により、システム40は、航空機のロールオーバエネルギーを吸収し、2つの固有の移動経路を使用してシステムを引き込むことができる。これは、航空機のロールオーバ中にケーブル12が滑走路トラフ50内に退かないことを確実にするために必要である。これはまた、ロールオーバイベントが移動アクチュエータ74及び引き込みアーム76を損傷しないことを確実にするために必要である。したがって、移動アクチュエータ74及び引き込みアーム76は、偏向ロールオーバイベントの間、(引き込みアームアセンブリ68と共に)静止したままである。
【0060】
図15は、モジュール式ケーブル支持ブロックシステム80のモジュールオプションを示し、以下に説明するコンポーネントを分解図に示している。 ただし、必要に応じて、これらのコンポーネントを単一のコンポーネントとして形成できることを理解されたい。 モジュールバージョンは、支持ブロックハウジング82または他のシステムコンポーネントの交換を必要とせずに、支持ブロック85自体の迅速かつ容易な交換を可能にする。 ケーブル支持ブロックは、航空機車輪のロールオーバによって最も大きな損傷を受ける可能性があるシステムコンポーネントであるため、これは有用である。残りのコンポーネントを取り外さずにケーブル支持ブロック85を交換するために、
図15のモジュールシステムが提供され得る。例えば、モジュール支持ブロック85は、ハウジングの対応するトラック86と協働するモジュール支持ブロック85の底部に沿って配置される挿入溝84を介して、ハウジング82に対して固定され得る。これらのコンポーネントを逆にして、協働を逆にすることが可能である。ハウジング82に対してモジュール支持ブロック80を固定するために、構成要素85、82を互いにあり継ぎ/スライドさせることが可能である。一般的な概念は、モジュール支持ブロック85をハウジング82に取り外し可能に固定することができるということである。システム全体を支持ボックスから取り外すことなく、必要に応じて取り外して交換することができる。
【0061】
図15はまた、モジュール支持ブロック85をハウジング82に固定する、ロックプレート88として示されるロック機構を示す。ロックプレート88は、ケーブル支持ブロックハウジング82に対して固定される。モジュール支持ブロック85の取り外しのため、ロックプレート88を取り外すことができ、支持ブロックはハウジング82から外にスライドすることができる。
【0062】
記載された発明において、ロック機構66は、支持アームアセンブリ52上のスロット内に拘束されたロッドであって、ロックブロック160の曲面164に当該ロッドを押し込むばねを介して当該ロッドの位置をロック位置に維持するロッドとして示され、説明される。ただし、ロック機能は、ピン、キー、作動コンポーネント、スライドなどを含む設計を使用して実現でき、記載されている特定のロックメカニズムに限定されるべきではない。一般的な概念は、ケーブル支持ブロックアセンブリ85に加えられた航空機車輪のロールオーバ力が引き込みアセンブリ68に含まれる移動アクチュエータコンポーネントまで及ぶのを防ぐために、支持ブロックアセンブリ80を支持アームアセンブリ52に対して固定位置に維持することである。
【0063】
管制塔またはサイトがシステムを上昇させてバッテリ位置に戻すことを望むとき、移動アクチュエータ74は伸長し、引き込みアーム76をロック機構66から解放する。支持ブロック軸70に配置された支持ブロックねじりばね72は、ケーブル支持ブロックアセンブリ85をバッテリ位置に戻す力を提供する。これはまた、システムが航空機のロールオーバイベントのための位置にあるように、ばねで留められたロック機構66を再び係合する。ロック機構の解放および支持ブロックの引き込みの両方は、引き込みアームアセンブリ68の引き込みアクチュエータ74及び引き込みアーム76の運動を使用して達成される。
【0064】
図17A~
図17Cおよび
図18は、引き込み/ロールオーバ機構90の別の実施態様を示す。上記のシステムと同様に、これらの図のシステムも、支持ブロック44に2つの回転軸を提供する。第1の回転軸96は、ラッチロック92用である。ラッチロック92は、ラッチプレート104と接触するまでこの軸96を中心に枢動し、ラッチプレート104はそれ以上の回転を停止する。その時点で、支持ブロック44は、第2の軸180を中心に回転する。この回転により、
図17A~
図17Cに示されるように、支持ブロック44がトラフ内に引き込まれる。ここで
図18を参照すると、第3の回転軸98は、空気圧シリンダまたは他の適切なタイプのアクチュエータであり得る移動アクチュエータ74に影響を与えることなく、支持ブロック44がロールオーバを経験することを可能にする。
【0065】
図17Aは、ペンダントケーブル12をバッテリ位置に保持した、上昇され且つロックされた位置にある引き込み/ロールオーバ機構90を示している。この実施例では、支持ブロック44はラッチロック92を有する。
図17Aと
図17Bとの間の遷移によって示されるように、ラッチロック92は、直立ロック位置(
図17A)と移動済ロック解除位置(
図17B)との間で移動可能である。 ロック位置とロック解除位置との間の動きは、ケーブル94(コード、ワイヤ、リンク、またはラッチロック92を移動アクチュエータ74に結合することができる他のタイプの引き込み式機構であってもよい)を介して管理される。ケーブル94の一つの端部はラッチロック92に固定され、ケーブル94の第2の端部は移動アクチュエータ74に固定される。移動アクチュエータ74が作動すると、ケーブル94が引っぱられ、その結果、ラッチロック92を引っぱり、その移動を引き起こす。次に、ロックラッチ92を解放すると、移動アクチュエータを介してケーブル94をさらに引き込むことができ、移動アクチュエータは、ケーブル支持ブロック44を下方にケーブルトラフ50内に引っぱる/回転させる。この引き込まれた位置は、
図17Cに示されている。この回転は、
図17Cに示されるように、第2の軸108回りで起こる。支持アーム102は、引き込みプロセス全体を通して同じ位置に留まる。
【0066】
図18は、ロールオーバイベント中の機構90を示している。この実施例では、ケーブル支持ブロック44の運動は、第3の軸98に関して発生する。第3の軸98は、これを取り巻いてねじりばね101が配置されている主軸100によって規定される。機構90がロールオーバイベント用に設定されるとき、ラッチロック92は、ケーブル支持ブロック44に対してロックされたままであり、その結果、第2の回転軸108はロックされ、利用できなくなる。回転に利用できる唯一の軸は、第3の軸98(主軸100を中心とした回転)である。 したがって、ロールオーバイベント中に、ケーブル支持ブロック44に対する圧力により、
図18に示すように、主軸100が枢動し、支持アーム102が下向きに回転する。ケーブル94はいくらか可撓性であるため、この下方への荷重を移動アクチュエータ74に伝達しない。これは、引き込み機構コンポーネントをロールオーバ機構コンポーネントから分離し、その結果、引き込み機構コンポーネントは、ロールオーバ中に伝達される力または荷重を受けない。要するに、引き込み運動とロールオーバ運動は異なる別々の経路にある。
【0067】
図19A、
図19Bおよび
図20は、引き込み/ロールオーバ機構110のまた別の実施態様を示す。この機構はまた、ケーブル支持ブロック44の引き込みのために移動アクチュエータ74及びケーブル94を使用する。ケーブル94の一つの端部は移動アクチュエータ74に固定され、およびケーブルの一つの端部がロック機構112のフックアームに固定されている。この実施態様では、移動アクチュエータ74の作動により、ケーブル94に引っ張り力が加えられ、支持アーム114をローラアーム116に固定するロック機構112が解放される。
図19Bに示されるように、ロック機構112の解放は、ローラアーム116を支持アームから切り離す。ケーブル94の引き続いての引き込みにより、ローラアームのローラ118は、ランプ(傾斜路)120に到達するまで、カバープレート20の下面に対して転がる。ランプ120は、カバープレートの下面に下降ランプとして形成される。ローラ118がランプ120に到達し、下降したランプ面122を転がり落ちると、移動アクチュエータ74からの引き続いての引き込み運動がローラアーム116を引っぱって、ローラアーム116をトラフ50内に後退または下降させる。図示したように、滑車作用が記載の移動を助けることができる。ローラアーム116は、第1の軸124において支持アーム114に関して枢動する。
【0068】
図20は、ロールオーバイベント中の機構110を示している。この実施例では、支持アーム114は、ロック機構112を介してローラアーム116にロックされたままである(これは、ケーブル94が移動アクチュエータ74によって引っぱられないので、ロック機構112のピン113からの解放を引き起こさないためである。)ロールオーバイベント中、支持アームは第2の軸126を中心に枢動する。この枢動は、移動アクチュエータ74に力を移さない。代わりに、このバージョンでは、支持アーム114のみが第2の軸126に関して回転する。第1の軸124はロックされたままであり、その周りを回転することはできない
【0069】
さらなる別の実施態様は、
図21、
図22A、
図22B、および
図23によって示される。これらの図面は、ローリングまたはスライディングトロリ132を使用する引き込み/ロールオーバ機構130を示す。
図21および22Aは、バッテリ位置の機構を示す。 引き込み位置を
図22Bに示す。
図23はロールオーバ位置である。この実施態様では、トロリ132は、トロリ132が支持フレーム22に対して回転することを可能にする1つまたは複数のホイール134を備えていてもよい。この実施態様は、一つの端部がケーブル支持ブロック44に固定され、他方の端部がトロリ132に固定されたケーブル94を提供する。引き込みイベントの間、トロリ132の移動は、移動アクチュエータ74によって引き起こされる。トロリ132が引き込まれると、ケーブル94への圧力が、ケーブル支持ブロック44を、支持ブロック係合ローラ136に対して第1の軸138の周りで回転/引っぱる。これにより、ケーブル支持ブロック44が、
図22Bによって示されるように、引き込まれた位置に移動する。
【0070】
図23は、ロールオーバイベント中の機構130を示している。この例では、トロリ132は、移動アクチュエータ74を介して移動せず、静止したままである。これによって、トロリ132は主にロックとして機能し、ケーブル支持ブロックが第1の軸138に関して且つ支持ブロック係合ローラ136に対して回転するのを防ぐことができる。代わりに、ケーブル支持ブロック44への圧力は、第2の軸142で移動アクチュエータ74に枢動可能に固定されているアーム140の下向きの偏向運動を引き起こす。トロリ132の位置のために、ケーブル支持ブロックは、第1の軸138に関して回転することができない。代わりに、アーム140の下向きの移動は、ケーブル支持ブロック44の下向きの移動を可能にする。
【0071】
特定の実施態様が本開示で示され、説明されてきたが、開示された概念は、他の機械的システムを使用して実施され得ることを理解されたい。一般的な目標は、停止ケーブル引き込み機構が、ロールオーバイベント用に1つの回転軸を提供し、引き込みイベント用に第2の別個の回転軸を提供することである。これにより、移動アクチュエータがロールオーバからの力を吸収することを防ぐ。 代わりに、移動アクチュエータとその関連コンポーネントは、ロールオーバイベント中に力から機械的に分離される。移動アクチュエータは、引き込みイベント中にのみケーブル支持ブロックに動作可能に結合される。
【0072】
本開示の特定の実施態様の主題は、法定要件を満たすために具体的に説明されているが、この説明は、必ずしも特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。 請求された主題は、他の方法で具体化することができ、異なる要素またはステップを含むことができ、他の既存または将来の技術と組み合わせて使用することができる。この説明は、個々のステップの順序または要素の配置が明示的に記述されている場合を除き、さまざまなステップまたは要素間またはそれらの間の特定の順序または配置を意味するものとして解釈されるべきではない。
【0073】
図面に示されている、または上に記載されているコンポーネントの異なる配置、ならびに示されていないまたは説明されていないコンポーネントおよびステップが可能であることを理解されたい。同様に、いくつかの特徴およびサブコンビネーションは有用であり、他の特徴およびサブコンビネーションを参照せずに使用することができる。 本発明の実施態様は、限定的な目的ではなく例示的な目的で説明されており、代替の実施態様は、この特許の読者に明らかになるであろう。したがって、本発明は、上記の実施態様または図面に描写された実施態様に限定されず、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な実施態様および修正を行うことができる。