(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】工具の形状異常検出装置、工具の形状異常検出方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20230816BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20230816BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G01B11/24 K
B23Q17/09 Z
B23Q17/24 Z
(21)【出願番号】P 2021043911
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】室伏 勇
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-169961(JP,A)
【文献】特開平02-231509(JP,A)
【文献】特開2012-032344(JP,A)
【文献】特開2016-118475(JP,A)
【文献】特開2017-146174(JP,A)
【文献】特開2016-042066(JP,A)
【文献】国際公開第2020/174853(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
B23Q 17/09
B23Q 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の主軸に設置された工具に付着している異物を検出する工具の形状異常検出装置であって、
前記工具の理想形状を計算する理想形状計算部と、
前記工具の実際の形状を撮影するカメラと、
前記理想形状計算部で計算された工具の理想形状と、前記カメラで撮影された工具の実際の形状との形状の差を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差取得部と、
前記形状差取得部でもとめた複数の形状の差の移動平均値を、前記工具の複数箇所でもとめる移動平均値取得部と、
前記移動平均値取得部でもとめた複数の移動平均値の変化量を、前記工具の複数箇所でもとめる移動平均値変化量取得部と、
前記移動平均値変化量取得部でもとめた変化量に応じて、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する異物付着判断部と、
を有
し、前記工具が第1の回転速度で回転しているきに前記カメラで前記工具の実際の形状を撮影し、また、前記工具が前記第1の回転速度よりもおそい第2の回転速度で回転しているきに前記カメラで前記工具の実際の形状を撮影し、前記第1の回転速度における前記工具の実際の形状と、前記第2の回転速度における前記工具の実際の形状とを比較することで、前記工具に付着している異物が、固体であるのか液体であるのかを判別するように構成されている工具の形状異常検出装置。
【請求項2】
前記移動平均値変化量取得部では、
前記移動平均値取得部でもとめた複数の移動平均値の中から、お互いが隣り合っている前記工具の2つの箇所の間における変化量をもとめるか、
もしくは、前記移動平均値取得部でもとめた複数の移動平均値の中から、お互いが隣り合ってはおらずお互いが所定の間隔をあけてならんでいる前記工具の2つの箇所の間における変化量をもとめる請求項1に記載の工具の形状異常検出装置。
【請求項3】
前記異物付着判断部は、移動平均値変化量取得部でもとめた変化量を強調するために、前記移動平均値変化量取得部でもとめた変化量に所定の演算を施して、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する請求項1または請求項2に記載の工具の形状異常検出装置。
【請求項4】
前記異物付着判断部での演算は、前記移動平均値変化量取得部でもとめた変化量を累乗する演算である請求項3に記載の工具の形状異常検出装置。
【請求項5】
工作機械の主軸に設置された工具に付着している異物を検出する工具の形状異常検出装置であって、
前記工具の理想形状を計算する理想形状計算部
と、
前記工具の実際の形状を撮影するカメラと、
前記理想形状計算部で計算された工具の理想形状と、前記カメラで撮影された工具の実際の形状との形状の差を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差取得部と、
前記形状差取得部でもとめた複数の形状の差
の変化量を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差変化量取得部と、
前記形状差変化量取得部でもとめた変化量に応じて、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する異物付着判断部と、
を有
し、前記工具が第1の回転速度で回転しているきに前記カメラで前記工具の実際の形状を撮影し、また、前記工具が前記第1の回転速度よりもおそい第2の回転速度で回転しているきに前記カメラで前記工具の実際の形状を撮影し、前記第1の回転速度における前記工具の実際の形状と、前記第2の回転速度における前記工具の実際の形状とを比較することで、前記工具に付着している異物が、固体であるのか液体であるのかを判別するように構成されている工具の形状異常検出装置。
【請求項6】
工作機械の主軸に設置された工具に付着している異物を検出する工具の形状異常検出方法であって、
前記工具の理想形状を計算する理想形状計算段階と、
前記工具の実際の形状をカメラを用いて撮影する撮影段階と、
前記工具の理想形状を計算する理想形状計算段階で計算した工具の理想形状と、前記撮影段階で撮影された工具の実際の形状との形状の差を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差取得段階と、
前記形状差取得段階でもとめた複数の形状の差の移動平均値を、前記工具の複数箇所でもとめる移動平均値取得段階と、
前記移動平均値取得段階でもとめた複数の移動平均値の変化量を、前記工具の複数箇所でもとめる移動平均値変化量取得段階と、
前記移動平均値変化量取得段階でもとめた変化量に応じて、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する異物付着判断段階と、
を有
し、前記工具が第1の回転速度で回転しているきにカメラで前記工具の実際の形状を撮影し、また、前記工具が前記第1の回転速度よりもおそい第2の回転速度で回転しているきにカメラで前記工具の実際の形状を撮影し、前記第1の回転速度における前記工具の実際の形状と、前記第2の回転速度における前記工具の実際の形状とを比較することで、前記工具に付着している異物が、固体であるのか液体であるのかを判別するする工具の形状異常検出方法。
【請求項7】
工作機械の主軸に設置された工具に付着している異物を検出する工具の形状異常検出方法であって、
前記工具の理想形状を計算する理想形状計算段階と、
前記工具の実際の形状をカメラを用いて撮影する撮影段階と、
前記工具の理想形状を計算する理想形状計算段階で計算した工具の理想形状と、前記撮影段階で撮影された工具の実際の形状との形状の差を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差取得段階と、
前記形状差取得段階でもとめた複数の形状の差
の変化量を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差変化量取得段階と、
前記形状差変化量取得段階でもとめた変化量に応じて、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する異物付着判断段階と、
を有
し、前記工具が第1の回転速度で回転しているきにカメラで前記工具の実際の形状を撮影し、また、前記工具が前記第1の回転速度よりもおそい第2の回転速度で回転しているきにカメラで前記工具の実際の形状を撮影し、前記第1の回転速度における前記工具の実際の形状と、前記第2の回転速度における前記工具の実際の形状とを比較することで、前記工具に付着している異物が、固体であるのか液体であるのかを判別するする工具の形状異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具の形状異常検出装置、工具の形状異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワークの超精密加工において装置(工作機械)の運動性能が向上したことにより、工具の形状精度が加工精度に占めるウェイトが大きくなっている。なお、工具の形状の測定は、たとえば、特許文献1で示す工具形状測定装置を用いてなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワークを加工する際に、工具に切粉、チリ、ほこり等が付着して工具からとれなくなることがある。工具形状測定装置を用いて工具の形状を測定をするときに、切粉あるいはチリ等が付着している工具の形状を測定しないようにし、切粉あるいはチリ等付着している工具の形状に基づいたワークの加工を防止することが重要である。すなわち、工具に付着している切粉あるいはチリ等を検出することが重要である。
【0005】
そこで、本発明は、工具に付着している切粉あるいはチリ等を検出する等の工具の形状の異常を検出することができる工具の形状異常検出装置および工具の形状異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、工作機械の主軸に設置された工具に付着している異物を検出する工具の形状異常検出装置であって、前記工具の理想形状を計算する理想形状計算部と、前記工具の実際の形状を撮影するカメラと、前記理想形状計算部で計算された工具の理想形状と、前記カメラで撮影された工具の実際の形状との形状の差を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差取得部と、前記形状差取得部でもとめた複数の形状の差の移動平均値を、前記工具の複数箇所でもとめる移動平均値取得部と、前記移動平均値取得部でもとめた複数の移動平均値の変化量を、前記工具の複数箇所でもとめる移動平均値変化量取得部と、前記移動平均値変化量取得部でもとめた変化量に応じて、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する異物付着判断部とを有し、前記工具が第1の回転速度で回転しているきに前記カメラで前記工具の実際の形状を撮影し、また、前記工具が前記第1の回転速度よりもおそい第2の回転速度で回転しているきに前記カメラで前記工具の実際の形状を撮影し、前記第1の回転速度における前記工具の実際の形状と、前記第2の回転速度における前記工具の実際の形状とを比較することで、前記工具に付着している異物が、固体であるのか液体であるのかを判別するように構成されている工具の形状異常検出装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記移動平均値変化量取得部では、前記移動平均値取得部でもとめた複数の移動平均値の中から、お互いが隣り合っている前記工具の2つの箇所の間における変化量をもとめるか、もしくは、前記移動平均値取得部でもとめた複数の移動平均値の中から、お互いが隣り合ってはおらずお互いが所定の間隔をあけてならんでいる前記工具の2つの箇所の間における変化量をもとめる請求項1に記載の工具の形状異常検出装置である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記異物付着判断部は、移動平均値変化量取得部でもとめた変化量を強調するために、前記移動平均値変化量取得部でもとめた変化量に所定の演算を施して、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する請求項1または請求項2に記載の工具の形状異常検出装置である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記異物付着判断部での演算は、前記移動平均値変化量取得部でもとめた変化量を累乗する演算である請求項3に記載の工具の形状異常検出装置である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、工作機械の主軸に設置された工具に付着している異物を検出する工具の形状異常検出装置であって、前記工具の理想形状を計算する理想形状計算部と、前記工具の実際の形状を撮影するカメラと、前記理想形状計算部で計算された工具の理想形状と、前記カメラで撮影された工具の実際の形状との形状の差を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差取得部と、前記形状差取得部でもとめた複数の形状の差の変化量を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差変化量取得部と、前記形状差変化量取得部でもとめた変化量に応じて、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する異物付着判断部とを有し、前記工具が第1の回転速度で回転しているきに前記カメラで前記工具の実際の形状を撮影し、また、前記工具が前記第1の回転速度よりもおそい第2の回転速度で回転しているきに前記カメラで前記工具の実際の形状を撮影し、前記第1の回転速度における前記工具の実際の形状と、前記第2の回転速度における前記工具の実際の形状とを比較することで、前記工具に付着している異物が、固体であるのか液体であるのかを判別するように構成されている工具の形状異常検出装置である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、工作機械の主軸に設置された工具に付着している異物を検出する工具の形状異常検出方法であって、前記工具の理想形状を計算する理想形状計算段階と、前記工具の実際の形状をカメラを用いて撮影する撮影段階と、前記工具の理想形状を計算する理想形状計算段階で計算した工具の理想形状と、前記撮影段階で撮影された工具の実際の形状との形状の差を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差取得段階と、前記形状差取得段階でもとめた複数の形状の差の移動平均値を、前記工具の複数箇所でもとめる移動平均値取得段階と、前記移動平均値取得段階でもとめた複数の移動平均値の変化量を、前記工具の複数箇所でもとめる移動平均値変化量取得段階と、前記移動平均値変化量取得段階でもとめた変化量に応じて、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する異物付着判断段階とを有し、前記工具が第1の回転速度で回転しているきにカメラで前記工具の実際の形状を撮影し、また、前記工具が前記第1の回転速度よりもおそい第2の回転速度で回転しているきにカメラで前記工具の実際の形状を撮影し、前記第1の回転速度における前記工具の実際の形状と、前記第2の回転速度における前記工具の実際の形状とを比較することで、前記工具に付着している異物が、固体であるのか液体であるのかを判別するする工具の形状異常検出方法である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、工作機械の主軸に設置された工具に付着している異物を検出する工具の形状異常検出方法であって、前記工具の理想形状を計算する理想形状計算段階と、前記工具の実際の形状をカメラを用いて撮影する撮影段階と、前記工具の理想形状を計算する理想形状計算段階で計算した工具の理想形状と、前記撮影段階で撮影された工具の実際の形状との形状の差を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差取得段階と、前記形状差取得段階でもとめた複数の形状の差の変化量を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差変化量取得段階と、前記形状差変化量取得段階でもとめた変化量に応じて、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する異物付着判断段階とを有し、前記工具が第1の回転速度で回転しているきにカメラで前記工具の実際の形状を撮影し、また、前記工具が前記第1の回転速度よりもおそい第2の回転速度で回転しているきにカメラで前記工具の実際の形状を撮影し、前記第1の回転速度における前記工具の実際の形状と、前記第2の回転速度における前記工具の実際の形状とを比較することで、前記工具に付着している異物が、固体であるのか液体であるのかを判別するする工具の形状異常検出方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、工具に付着している切粉あるいはチリ等を検出する等の工具の形状の異常を検出することができる工具の形状異常検出装置および工具の形状異常検出方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置と、この工具の切粉あるいはチリ等の検出装置が設置されている工作機械の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置の概略構成を示す図である。
【
図3】工具の先端部(切れ刃部)の理想形状と、切粉あるいはチリ等が付着している工具の先端部(切れ刃部)の実際の形状とを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置の形状差取得部と移動平均値取得部と移動平均値変化量取得部とでもとめた、工具の複数箇所におけるそれぞれの値を示す図である。
【
図5】(a)は、本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置の工具形状計算部が計算した工具の理想形状と、本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置のカメラが撮影した工具の実際の形状とを示す図である。(b)は、本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置の移動平均値取得部でもとめた形状の差の移動平均値を示す図である。
【
図6】(a)は、本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置の移動平均値変化量取得部でもとめた移動平均値の変化量を3乗した値を示す図である。(b)は、本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置の移動平均値変化量取得部でもとめた別の移動平均値の変化量を3乗した値を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置の工具形状計算が計算した工具の理想形状と、本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置のカメラが撮影した工具の実際の形状とを示す図である。
【
図8】(a)は、本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置の移動平均値取得部でもとめた形状の差の移動平均値を示す図である。(b)は、本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置の移動平均値変化量取得部でもとめた移動平均値の変化量を示す図である。(c)は、本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置の移動平均値変化量取得部でもとめた別の移動平均値の変化量を示す図である。(d)は、本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置の移動平均値変化量取得部でもとめたさらなる別の移動平均値の変化量を示す図である。
【
図23】本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置の工具形状計算部が計算した工具の理想形状と、本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置のカメラが撮影した工具の実際の形状とを示す図である。ただし、(a)は工具が第1の回転速度で回転しているときのものを示しており、(b)は工具が第2の回転速度で回転しているときのものを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る工具の切粉あるいはチリ等の検出装置(工具形状測定装置工具;工具形状異常検出装置)1は、たとえば、
図1で示すように工作機械2に設置されて使用されるものである。
【0016】
工作機械2は、ベッド18の上面にテーブル16、門型のコラム10を有し、コラム10のクロスレール8にはサドル6を介して主軸ヘッド4が支持されている。主軸ヘッド4には主軸11が支持されている。
【0017】
ここで、説明の便宜のために水平な所定の一方向をX方向(X軸方向)とし、X方向に対して直交する水平な所定の他の一方向をY方向(Y軸方向)とし、X方向とY方向とに対して直交する上下方向をZ方向(Z軸方向)とする。
【0018】
テーブル16はベッド18に対してX軸方向に移動可能である。サドル6はクロスレール8に沿ってY軸方向に移動可能である。主軸ヘッド4はサドル6に対してZ軸方向に移動可能である。
【0019】
これらの3軸を移動させることにより、テーブル16に載置されたワーク14に対して工具(たとえばボールエンドミル)12を3次元で移動させ、ワーク14を加工することが可能である。テーブル16の端には工具の切粉あるいはチリ等の検出装置(工具の形状異常検出装置)1が設置されている。制御装置20は工作機械2と工具の切粉あるいはチリ等の検出装置1に接続され、工作機械2と工具の切粉あるいはチリ等の検出装置1を制御することができる。なお、制御装置20は、図示しないCPUとメモリとを備えて構成されている。なお、切粉あるいはチリ等を、以下、「異物」という場合がある。
【0020】
図2は工具の切粉あるいはチリ等の検出装置1で工具12の形状を測定している図を示している。先に示した3軸により
図2で示す位置まで工具12を移動させ、工具12の形状(切粉あるいはチリ等がついているかも知れない工具12の実際の形状)を測定する。工具の切粉あるいはチリ等の検出装置1は、カメラ22、照明装置24を含み、
図2で示すように工具12は、カメラ22と照明装置24の間に位置した状態で工具12の形状が測定される。照明装置24からの光を工具12の後ろから当てて画像を撮影するため、工具12の形状が影として撮影される。工具12にの切粉あるいはチリ等が付着している場合には、付着している切粉あるいはチリ等も含む形状も影として撮影される。
【0021】
カメラ22は高速シャッターを備えていて、工具12が数千回転/分で回転中でも静止画のような撮影が可能である。またカメラ22にはズームレンズが取り付けられていて、制御装置20で拡大率の制御が行うことができるようになっていてもよい。主軸11には図示しない回転角度センサが備わっていて、回転数や回転角度の位置決め等の制御を制御装置20で行うことができる。
【0022】
工具12が1万回転/分以上の回転数で回転する場合には、高速シャッターだけでの対応では難しい。この場合は照明装置24をストロボ機能付きとする。数μsecの短い発光時間のストロボを用いれば、回転中の工具12でも形状測定が可能である。なお、工具12の最大回転数は、12万回転/分程度に設定できる。
【0023】
工具12は、たとえば、金型のコアやキャビティの表面を切削加工で形成するときに使用されるものである。上記切削加工は、金型のコアやキャビティの表面を、たとえば最終仕上げ加工するためにされるものであり、上記切削加工によって、金型のコアやキャビティの表面が鏡面のようになる。ボールエンドミル12の外径はたとえば1mm程度であり、切削加工をするときのボールエンドミル12の回転数は6万回転/分程度である。
【0024】
ところで、工具12の撮影によって、ボールエンドミル12の最大外形の静止画像が得られるようになっている。この最大外形の箇所がボールエンドミル12の切れ刃になっており、切れ刃の形状がワーク14の加工面の形状に影響を与えるからである。また、工具12の撮影の詳細については、国際公開2020/090844号公報で示されている。
【0025】
工具の切粉あるいはチリ等の検出装置1として、国際公開2020/090844号公報に示されている工具形状測定装置が採用されている。工具の切粉あるいはチリ等の検出装置1は、工作機械(たとえば超精密加工機)2の主軸11に設置された工具(たとえば回転しているボールエンドミル等の切削工具)12に付着している切粉あるいはチリ等を検出するものである。なお、切粉あるいはチリ等の異物として、ワーク14の切り屑等の固体の異物や切削油等の液体の異物がある。
【0026】
工具の切粉あるいはチリ等の検出装置1は、
図2で示すように、制御部25とカメラ22とを備えて構成されている。制御部25は、たとえば、制御装置20の一部で構成されているが、制御部25が、制御装置20とは別個に設けられていてもよい。
【0027】
制御部25には、工具形状計算部27と形状差取得部29と移動平均値取得部31と移動平均値変化量取得部33と異物付着判断部35とが設けられている。
【0028】
工具形状計算部27は、工具12の工具種や径等の情報が記憶されており、工具12の理想形状を計算することができる。工具12の理想形状は、ボールエンドミル12の最大外形の形状である。
【0029】
カメラ22は、たとえば回転している工具12の実際の形状(工具12の実際形状)を撮影するようになっている。工具12の実際形状は、工具12とこの工具12に付着している異物の形状である。すなわち、工具12の実際形状は、たとえば、異物の付着や切れ刃の一部に摩耗や欠損等が発生していることで、理想形状とは異なっているかもしれない工具12の切れ刃部の全体にわたる工具の外形形状である。工具12の実際形状も、ボールエンドミル12と異物との最大外形の形状である。
【0030】
形状差取得部29では、工具形状計算部27で計算された工具12の理想形状と、カメラ22で撮影された工具12の実際形状との形状の差を、たとえば、工具12の切れ刃部の全体にわたり工具12の複数箇所でもとめるようになっている。
【0031】
たとえば、形状差取得部29では、工具12の切れ刃上で僅かな間隔をあけてならんでいる複数の点毎に形状の差をもとめている。たとえば、形状差取得部29では、工具12の複数箇所のそれぞれにおける理想形状の工具12からの異物の突出量をもとめるようになっている。なお、形状差取得部29では、工具12の複数箇所のそれぞれにおける理想形状の工具12の一部に発生した摩耗や欠損等の凹み量をもとめることができる。
【0032】
移動平均値取得部31では、形状差取得部29でもとめた複数の形状の差の移動平均値を、工具12の複数箇所でもとめるようになっている。移動平均値取得部31による処理は、たとえば、ノイズの除去のためになされる。移動平均値取得部31でも、工具12の切れ刃上で僅かな間隔をあけてならんでいる複数の点毎に移動平均値をもとめている。なお、移動平均値取得部31では、単純移動平均をもとめているが、加重移動平均、指数移動平均等の他の移動平均をもとめてもよい。
【0033】
移動平均値変化量取得部33では、移動平均値取得部31でもとめた複数の移動平均値の変化量を、工具12の複数箇所でもとめるようになっている。移動平均値変化量取得部33でも、工具12の切れ刃上で僅かな間隔をあけてならんでいる複数の点毎に移動平均値の変化量をもとめている。
【0034】
異物付着判断部35では、移動平均値変化量取得部33でもとめた変化量に応じて、工具12に異物が付着しているか否かを判断するようになっている。たとえば、異物付着判断部35でもとめた変化量が所定の閾値を越えた場合に、異物付着判断部35は工具12に異物が付着していると判断するようになっている。一方、異物付着判断部35でもとめた変化量が所定の閾値以下である場合に、異物付着判断部35は工具12に異物が付着しおらず工具12が正常な状態であると判断するようになっている。
【0035】
なお、異物付着判断部35では、工具12の切れ刃の摩耗や欠損等が発生していることをも判断することができる。この場合、「異物付着判断部」のことを、「工具形状判断部」と呼んでもよい。
【0036】
工具の形状異常検出装置1において、移動平均値取得部31を削除してもよい。この場合、移動平均値変化量取得部33は、形状差取得部29でもとめた複数の形状の差の変化量を、工具12の複数箇所でもとめるようになるので、「移動平均値変化量取得部」は「形状差変化量取得部」と呼ばれることになる。
【0037】
工具形状計算部27で計算した工具12の理想形状は、ワーク14を加工するためのCAMでの計算をする際に設定している工具12の条件から得られるものである。このようにすることで、工具12の異常検出(異物の付着等)1回目から行うことができる。工具12の異常とは、測定阻害物の付着や工具12の欠けによる欠損などを示す。
【0038】
なお、工具形状計算部27で計算した工具12の理想形状が、カメラ22で予め撮影されたことでもとめられメモリに記憶されたものであってもよい。工具形状計算部27が計算した工具12の理想形状が、工具の形状異常検出装置1によって予めもとめられたものであってもよい。この場合、まっさらな工具12を主軸11に設置して、工具12の理想形状をもとめ、工具12を主軸11に設置した状態を維持しつつ、ワーク14を加工し、工具12を主軸11に設置した状態を維持しつつ、工具12の実際の形状をもとめることになる。
【0039】
なお、工具形状計算部27で計算した工具12の理想形状が、図示しない入力部を用いて別途入力され記憶されたものであってもよい。
【0040】
ここで、形状差取得部29、移動平均値取得部31、移動平均値変化量取得部33について、
図3、
図4を参照しつつさらに詳しく説明する。
【0041】
図3には、ボールエンドミル12等が示されている。ボールエンドミル12は、回転中心軸C1を回転するようになっている。半円弧の曲線L1は、理想形状のボールエンドミル12の切れ刃部の最大外形形状を示している。曲線状の破線L2は、ボールエンドミル12の実際形状を示している。点O1は、理想形状のボールエンドミル12の切れ刃の中心を示している。半直線L3は、中心点O1を始点として、円弧L1に向かって延びている。
【0042】
ここで、中心軸C1と半直線L3との交差角度をθとし、半直線L3と半円弧L1との交点をP1とし、半直線L3と破線L2との交点をP2とし、交点P1と交点P2との間の距離をrとする。交差角度θは、0°~90°までたとえば、1°きざみで変化するものとする。また、
図3で示す半円弧の曲線L1は、中心軸C1に対して対称形状になっている。また、曲線状の破線L2は、中心軸C1の右側にしか書いていないが、これも、中心軸C1に対して対称形状になっている。
【0043】
図4では、交差角度(角度)θに応じた形状差(工具12の理想形状と工具12の実際の形状との形状の差)rと、移動平均(形状の差の移動平均値)Rと、微小区間の変化率(移動平均値の変化量)ΔRとが示されている。形状差rは、形状差取得部29でもとめられたものであり、移動平均Rは、移動平均値取得部31でもとめられたものであり、微小区間の変化率ΔRは、移動平均値変化量取得部33でもとめられたものである。
【0044】
図4では、角度θが0°のときには、形状差rがr
0になっており、移動平均Rもr
0になっている。角度θが1°のときには、形状差rがr
1になっており、移動平均Rはになっており、微小区間の変化率ΔRは、R
1-R
0になっている。R
1は、R
1=(r
0+r
1+r
2)/3であり、R
0は、R
0=r
0である。
【0045】
角度θが2°のときには、形状差rがr2になっており、移動平均Rは(r0+r1+r2+r4+r5)/5になっており、微小区間の変化率ΔRは、R2-R1になっている。R2は、R2=(r0+r1+r2+r4+r5)/5である。角度θが3°以上の場合も同様である。
【0046】
なお、
図4では、移動平均Rを5つの点でもとめているが、他の数(たとえば5以上)の点でもとめてもよい。なお、本件明細書では、微小区間の変化率ΔRをもとめることを微分でもとめると表現してもよいことにする。
【0047】
さらに説明すると、移動平均値変化量取得部33では、移動平均値取得部31でもとめた複数の移動平均値の中から、お互いが隣り合っている工具12の2つの箇所間における変化量を工具12の微小な部位毎にもとめている。
【0048】
すなわち、移動平均値変化量取得部33では、移動平均値取得部31でもとめた複数の点(工具12の切れ刃上の複数の点)の移動平均値の中から、お互いが隣り合っている2つの点間の変化量をもとめている。
図4を参照して説明すると、微小区間の変化率ΔRを、たとえば、角度θが1°のときはR
1-R
0としており、角度θが2°のときはR
2-R
1としている。
【0049】
移動平均値変化量取得部33で、変化量を強調する(拡大する;際立たせる)ために、移動平均値取得部31でもとめた複数の移動平均値の中から、お互いが隣り合ってはおらずお互いが所定の間隔をあけてならんでいる工具12の2つの箇所間における変化量を、工具12の微小な部位毎にもとめてもよい。
【0050】
すなわち、移動平均値変化量取得部33では、移動平均値取得部31でもとめた複数の点(工具12の切れ刃上の複数の点)の移動平均値の中から、たとえば、1つの点もしくは2つの点を間にしてならんでいる(1つおきもしくは2つおきでならんでいる)2つの点間の変化量をもとめてもよい。
図4を参照して説明すると、微小区間の変化率ΔRを、たとえば、角度θが2°のときはR
2-R
0とし、角度θが3°のときはR
3-R
1としてもよい。この場合、微小区間の変化率ΔRを飛ばし微分でもとめると表現してもよいことにする。また、上述した「1つおき」もしくは「2つおき」を、「3つおき」以上の数にしてもよい。
【0051】
なお、上記説明では、角度θを1°刻みにしているが、0.1°等でさらに細かく刻んでもよい。
【0052】
また、異物付着判断部35では、移動平均値変化量取得部33でもとめた変化量を強調する(拡大する;際立たせる)ために、移動平均値変化量取得部33でもとめた変化量に所定の演算を施して、工具12に異物が付着しているか否かを判断するようになっている。
【0053】
たとえば、異物付着判断部35での演算は、移動平均値変化量取得部33でもとめた変化量を累乗(n乗;「n」は「2」以上の自然数のうちの所定の1つの自然数)する演算となっている。たとえば、
図4の微小区間の変化率ΔRを2乗((R
1-R
o)
2)している。
【0054】
次に、工具の形状異常検出装置1の動作について説明する。
【0055】
初期状態として、工具12の理想形状が工具形状計算部27に予め計算されており、工具12が
図2で示すように、カメラ22で撮影できるところに位置しており、工具12が所定の回転数で回転しているものとする。
【0056】
上記初期状態において、カメラ22を用いて工具12の実際の形状を撮影する。続いて、形状差取得部29で、工具形状計算部27で計算した工具12の理想形状と、カメラ22を用いて撮影された工具12の実際の形状との形状の差を、工具12の複数箇所でもとめる(
図4で示す角度θ(θ
0、θ
1、θ
2、θ
3・・・)毎にもとめる。この結果が、
図4で示す形状差r(r
0、r
1、r
2、r
3・・・)になる。
【0057】
続いて、移動平均値取得部31で、形状差取得部29でもとめた複数の形状の差の移動平均値を、工具12の複数箇所でもとめる。この結果が、
図4で示す移動平均R(R
0、R
1、R
2、R
3・・・)になる。
【0058】
続いて、移動平均値変化量取得部33で、移動平均値取得部31でもとめた複数の形状の差の移動平均値の変化量を、工具12の複数箇所でもとめる。この結果が、
図4で示す変化率(変化量)ΔR(R
1-R
0、R
2-R
1、R
3-R
2)になる。
【0059】
続いて、異物付着判断部35で、移動平均値変化量取得部33ででもとめた変化量に応じて、工具12に異物が付着しているか否かを判断する。すなわち、移動平均値変化量取得部33でもとめた変化量が所定の閾値を超えている場合には、工具12に異物が付着していると判断し、移動平均値変化量取得部33でもとめた変化量が所定の閾値を超えていない場合には、工具12に異物が付着していないと判断する。
【0060】
ここで、
図5~
図22を参照しつつ実際に行った異物の検出について説明する。
【0061】
1つ目の異物の検出を
図5、
図6に示す。
図5(a)は、
図3に相当する図である。
図5(b)の横軸は、
図3における角度θ(単位は「°」)になっており、
図5(b)の縦軸は、工具12の形状差の移動平均値(単位は「μm」)になっており、
図5(b)の線
図L5bは、角度θと工具12の形状差の移動平均値との関係を示している。
図6以降の図の縦軸および横軸の単位も同様である。
【0062】
図6(a)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図6(a)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(微分値)になっており、
図6(a)の線
図L6aは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(微分値)との関係を示している。
【0063】
図6(b)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図6(b)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(飛び微分値)になっており、
図6(b)の線
図L6bは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(微分値)との関係を示している。
図6(a)、
図6(b)で示すように、角度θが80°から85°のあたりに、異物が付着していることになる。
【0064】
2つ目の異物の検出を
図7、
図8に示す。
図7は、
図3に相当する図である。
図8(a)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図8(a)の縦軸は、工具12の形状差の移動平均値になっており、
図8(a)の線
図L8aは、角度θと工具12の形状差の移動平均値との関係を示している。
【0065】
図8(b)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図8(b)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(微分値)になっており、
図8(b)の線
図L8bは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(微分値)との関係を示している。
【0066】
図8(c)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図8(c)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)になっており、
図8(c)の線
図L8cは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0067】
図8(d)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図8(d)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)になっており、
図8(d)の線
図L8dは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0068】
図8における直線L8は、閾値を示している。
図7、
図8で示す状態では、工具12への異物の付着は無いことになる。
【0069】
3つ目の異物の検出を
図9、
図10に示す。
図9は、
図3に相当する図である。
図10(a)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図10(a)の縦軸は、工具12の形状差の移動平均値になっており、
図10(a)の線
図L10aは、角度θと工具12の形状差の移動平均値との関係を示している。
【0070】
図10(b)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図10(b)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(微分値)になっており、
図10(b)の線
図L10bは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(微分値)との関係を示している。
【0071】
図10(c)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図10(c)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)になっており、
図10(c)の線
図L10cは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0072】
図10(d)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図10(d)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)になっており、
図10(d)の線
図L10dは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0073】
図10における直線L10は、閾値を示している。
図9、
図10で示す状態では、工具12への異物の付着は無いことになる。
【0074】
4つ目の異物の検出を
図11、
図12に示す。
図11は、
図3に相当する図である。
図12(a)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図12(a)の縦軸は、工具12の形状差の移動平均値になっており、
図12(a)の線
図L12aは、角度θと工具12の形状差の移動平均値との関係を示している。
【0075】
図12(b)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図12(b)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(微分値)になっており、
図12(b)の線
図L12bは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(微分値)との関係を示している。
【0076】
図12(c)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図12(c)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)になっており、
図12(c)の線
図L12cは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0077】
図12(d)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図12(d)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)になっており、
図12(d)の線
図L12dは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0078】
図12における直線L12は、閾値を示している。
図11、
図12で示す状態では、
図12(d)を参照するに、角度θが0°~5°の箇所に異物が付着しているおそれがある。
【0079】
5つ目の異物の検出を
図13、
図14に示す。
図13は、
図3に相当する図である。
図14(a)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図14(a)の縦軸は、工具12の形状差の移動平均値になっており、
図14(a)の線
図L14aは、角度θと工具12の形状差の移動平均値との関係を示している。
【0080】
図14(b)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図14(b)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(微分値)になっており、
図14(b)の線
図L14bは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(微分値)との関係を示している。
【0081】
図14(c)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図14(c)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)になっており、
図14(c)の線
図L14cは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0082】
図14(d)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図14(d)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)になっており、
図14(d)の線
図L14dは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0083】
図14における直線L14は、閾値を示している。
図13、
図14で示す状態では、
図14(d)を参照するに、角度θが35°あたりの箇所に異物が付着しているおそれがある。
【0084】
6つ目の異物の検出を
図15、
図16に示す。
図15は、
図3に相当する図である。
図16(a)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図16(a)の縦軸は、工具12の形状差の移動平均値になっており、
図16(a)の線
図L16aは、角度θと工具12の形状差の移動平均値との関係を示している。
【0085】
図16(b)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図16(b)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(微分値)になっており、
図16(b)の線
図L16bは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(微分値)との関係を示している。
【0086】
図16(c)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図16(c)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)になっており、
図16(c)の線
図L16cは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0087】
図16(d)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図16(d)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)になっており、
図16(d)の線
図L16dは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0088】
図16における直線L16は、閾値を示している。
図15、
図16で示す状態では、
図16(c)、
図16(d)を参照するに、角度θが35°あたりの箇所に異物が付着しているおそれがある。
【0089】
7つ目の異物の検出を
図17、
図18に示す。
図17は、
図3に相当する図である。
図18(a)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図18(a)の縦軸は、工具12の形状差の移動平均値になっており、
図18(a)の線
図L18aは、角度θと工具12の形状差の移動平均値との関係を示している。
【0090】
図18(b)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図18(b)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(微分値)になっており、
図18(b)の線
図L18bは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(微分値)との関係を示している。
【0091】
図18(c)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図18(c)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)になっており、
図18(c)の線
図L18cは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0092】
図18(d)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図18(d)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)になっており、
図18(d)の線
図L18dは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0093】
図18における直線L18は、閾値を示している。
図17、
図18で示す状態では、
図18(d)を参照するに、角度θが20°あたりの箇所に異物が付着しているおそれが若干ある。
【0094】
8つ目の異物の検出を
図19、
図20に示す。
図19は、
図3に相当する図である。
図20(a)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図20(a)の縦軸は、工具12の形状差の移動平均値になっており、
図20(a)の線
図L20aは、角度θと工具12の形状差の移動平均値との関係を示している。
【0095】
図20(b)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図20(b)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(微分値)になっており、
図20(b)の線
図L20bは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(微分値)との関係を示している。
【0096】
図20(c)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図20(c)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)になっており、
図20(c)の線
図L20cは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0097】
図20(d)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図20(d)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)になっており、
図20(d)の線
図L20dは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0098】
図20における直線L20は、閾値を示している。
図19、
図20で示す状態では、
図20(b)、
図20(c)、
図20(d)を参照するに、角度θが80°あたりの箇所に異物が付着しているおそれがある。
【0099】
9つ目の異物の検出を
図21、
図22に示す。
図21は、
図3に相当する図である。
図22(a)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図22(a)の縦軸は、工具12の形状差の移動平均値になっており、
図22(a)の線
図L22aは、角度θと工具12の形状差の移動平均値との関係を示している。
【0100】
図22(b)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図22(b)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(微分値)になっており、
図22(b)の線
図L22bは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(微分値)との関係を示している。
【0101】
図22(c)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図22(c)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)になっており、
図22(c)の線
図L22cは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(1つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0102】
図22(d)の横軸は、
図3における角度θになっており、
図22(d)の縦軸は、工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)になっており、
図22(d)の線
図L22dは、角度θと工具12の移動平均値の変化量(2つ飛ばしの微分値)との関係を示している。
【0103】
図22における直線L22は、閾値を示している。
図21、
図22で示す状態では、
図20(b)、
図20(c)、
図20(d)を参照するに、角度θが10°、22°、30°あたりの箇所に異物が付着しているおそれがある。
【0104】
工具の形状異常検出装置1では、形状差取得部29によって、工具12の理想形状と工具12の実際の形状との形状の差を工具12の複数箇所でもとめ、移動平均値取得部31によって、複数の形状の差の移動平均値を工具12の複数箇所でもとめている。
【0105】
また、工具の形状異常検出装置1では、移動平均値変化量取得部33によって、複数の移動平均値の変化量を工具12の複数箇所でもとめ、異物付着判断部35によって、移動平均値変化量取得部33でもとめた変化量に応じて工具12に異物が付着しているか否かを判断している。
【0106】
これにより、形状差取得部29でもとめた形状の差にノイズが乗っていても、このノイズを排除して、工具12に付着している異物を的確に検出することができる。また、工具12の形状の誤検出し、この誤検出の結果を用いて、ワーク14を加工してしまうことが防止される。そして、ワーク14の加工によって不良品が製造されてしまうことが防止される。
【0107】
また、工具の形状異常検出装置1では、工具形状計算部27で計算した工具12の理想形状として、カメラ22で予め撮影されたことでもとめられたものを採用している。これにより、装置の簡素化をすることができるとともに、形状差取得部29によって求める工具12の形状の差を正確なものとすることができる。
【0108】
また、工具の形状異常検出置1の移動平均値変化量取得部33では、移動平均値取得部31でもとめた複数の移動平均値の中から、お互いがとても隣り合っている(微小な間隔をあけて隣り合っている)工具の2つの箇所間における変化量をもとめている。これにより、移動平均値取得部31でもとめた複数の移動平均値が連続していない関数の形態になっていても、あたかも、微分をした場合と同様に、移動平均値の変化量をもとめることができる。
【0109】
また、工具の形状異常検出装置1において、移動平均値変化量取得部33で、移動平均値取得部31でもとめた複数の移動平均値の中から、お互いが所定の間隔をあけてならんでいる工具12の2つの箇所間における変化量をもとめるようにしても、同様に、移動平均値の変化量をもとめることができる。この場合、さらに、移動平均値の変化量を強調した態様でもとめることができ、工具12に付着している異物を一層的確に検出することができる。
【0110】
また、工具の形状異常検出装置1では、異物付着判断部35が、移動平均値変化量取得部33でもとめた変化量を強調するために、移動平均値変化量取得部33でもとめた変化量に所定の演算を施している。そして、工具12に異物が付着しているか否かを判断している。これにより、移動平均値の変化量を一層強調した態様でもとめることができる。
【0111】
また、工具の形状異常検出装置1では、異物付着判断部35で、移動平均値変化量取得部33でもとめた変化量を累乗している。これにより、簡単な演算で移動平均値の変化量を一層強調した態様でもとめることができる。
【0112】
なお、工具の形状異常検出装置1を用いて、異物が切り屑等の固体であるのか、もしくは、異物が切削油等の液体であるのかを判別してもよい。
【0113】
すなわち、工具12が第1の回転速度で回転しているきにカメラ22で工具12の実際の形状を撮影し、また、工具12が第1の回転速度よりもおそい第2の回転速度で回転しているきにカメラ22で工具の実際の形状を撮影してもよい。そして、第1の回転速度における工具12の実際の形状と、第2の回転速度における工具12の実際の形状とを比較することで、工具12に切削油が付着しているのか切削油以外の固体の異物が付着しているのかを判断するようにしてもよい。
【0114】
図23を用いて説明する。
図23(a)で示す破線L2は、工具12が第1の回転速度で回転しているときの工具12の実際の形状である。なお、
図23(a)で示す円弧状の実線L1は工具12の理想形状である。
【0115】
図23(b)で示す破線L2は、工具12が第2の回転速度で回転しているときの工具12の実際の形状である。なお、
図23(b)で示す円弧状の実線L1は工具12の理想形状である。
図23(a)、
図23(b)を比較すると、破線L2の形状が異なっている。これは、工具12の回転によって液体である切削油にかかる遠心力によるものである。
【0116】
このように、回転速度に応じた工具12の実際の形状を比較することで、異物がワーク14の加工精度には影響を与えない切削油なのか否かを容易に判断することができる。
【0117】
なお、工具の形状異常検出装置を、工具の理想形状を計算する工具形状計算部と、前記工具の実際の形状を撮影するカメラと、前記工具形状計算部で計算した工具の理想形状と、前記カメラで撮影された工具の実際の形状との形状の差を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差取得部と、前記形状差取得部でもとめた複数の形状の差を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差変化量取得部と、前記形状差変化量取得部でもとめた変化量に応じて、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する異物付着判断部とを有する工具の形状異常検出装置として把握してもよい。
【0118】
また、上記記載内容を工具の形状異常検出方法の発明として把握してもよい。
【0119】
すなわち、工作機械の主軸に設置された工具に付着している異物を検出する工具の形状異常検出方法であって、前記工具の理想形状を計算する理想形状計算段階と、前記工具の実際の形状をカメラを用いて撮影する撮影段階と、前記工具の理想形状を計算する理想形状計算段階で計算した工具の理想形状と、前記撮影段階で撮影された工具の実際の形状との形状の差を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差取得段階と、前記形状差取得段階でもとめた複数の形状の差の移動平均値を、前記工具の複数箇所でもとめる移動平均値取得段階と、前記移動平均値取得段階でもとめた複数の移動平均値の変化量を、前記工具の複数箇所でもとめる移動平均値変化量取得段階と、前記移動平均値変化量取得段階でもとめた変化量に応じて、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する異物付着判断段階とを有する工具の形状異常検出方法として把握してもよい。
【0120】
また、前記移動平均値変化量取得段階で、前記移動平均値取得段階でもとめた複数の移動平均値の中から、お互いが隣り合っている前記工具の2つの箇所間における変化量を(工具の微小な部位毎に)もとめるか、もしくは、(変化量を強調する(拡大する;際立たせる)ために、)前記移動平均値取得段階でもとめた複数の移動平均値の中から、お互いが所定の間隔をあけてならんでいる前記工具の2つの箇所間における変化量を(工具の微小な部位毎に)もとめてもよい。
【0121】
また、前記異物付着判断段階が、前記移動平均値変化量取得段階でもとめた変化量に所定の演算を施して、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する段階であってもよい。
【0122】
また、前記異物付着判断段階での演算が、前記移動平均値変化量取得段階でもとめた変化量を累乗する演算であってもよい。
【0123】
上記記載内容を工具の形状異常検出方法の発明として把握してもよい。
【0124】
すなわち、工作機械の主軸に設置された工具に付着している異物を検出する工具の形状異常検出方法であって、前記工具の理想形状を計算する理想形状計算段階と、前記工具の実際の形状をカメラを用いて撮影する撮影段階と、前記工具の理想形状を計算する理想形状計算段階で計算した工具の理想形状と、前記撮影段階で撮影された工具の実際の形状との形状の差を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差取得段階と、前記形状差取得段階でもとめた複数の形状の差を、前記工具の複数箇所でもとめる形状差変化量取得段階と、前記形状差変化量取得段階でもとめた変化量に応じて、前記工具に異物が付着しているか否かを判断する異物付着判断段階とを有する工具の形状異常検出方法として把握してもよい。
【0125】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 工具の形状異常検出装置
2 工作機械
11 主軸
12 工具(ボールエンドミル)
22 カメラ
27 理想形状計算部
29 形状差取得部
31 移動平均値取得部
33 移動平均値変化量取得部
35 異物付着判断部