(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】血液ポンプ及び血液ポンプを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
A61M 60/538 20210101AFI20230816BHJP
A61M 60/178 20210101ALI20230816BHJP
A61M 60/232 20210101ALI20230816BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20230816BHJP
A61M 60/419 20210101ALI20230816BHJP
A61M 60/422 20210101ALI20230816BHJP
A61M 60/804 20210101ALI20230816BHJP
A61M 60/82 20210101ALI20230816BHJP
A61M 60/824 20210101ALI20230816BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20230816BHJP
F04D 29/048 20060101ALI20230816BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20230816BHJP
F16C 32/04 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
A61M60/538
A61M60/178
A61M60/232
A61M60/237
A61M60/419
A61M60/422
A61M60/804
A61M60/82
A61M60/824
F04D15/00 J
F04D29/048
F16C17/04 A
F16C32/04 Z
(21)【出願番号】P 2021062813
(22)【出願日】2021-04-01
(62)【分割の表示】P 2017542484の分割
【原出願日】2016-02-12
【審査請求日】2021-04-01
(32)【優先日】2015-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517278691
【氏名又は名称】ティシー1 エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TC1 LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヤナイ マサミチ
(72)【発明者】
【氏名】ユー、シュンジョウ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、タオ
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0241904(US,A1)
【文献】特開2002-303288(JP,A)
【文献】特開平11-241695(JP,A)
【文献】特表2003-501155(JP,A)
【文献】特開2010-136863(JP,A)
【文献】特開2010-261394(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0163019(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00-60/90
F04D 15/00,29/048
F16C 17/04,32/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液ポンプであって、
ハウジング内に配置されるインペラと、
ステータと、
前記ステータに電気的に接続されるコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記インペラの回転の開始前に、前記ステータに供給されるステータコイル磁束電流を調整することで、
前記インペラの面が前記ハウジングの第1の内壁と当接する休止位置から、前記インペラが前記ハウジングの内壁から離れた
第1の均衡のとれた位置へと、前記インペラを軸方向に移動させ、
前記インペラを
前記第1の均衡のとれた位置へと移動させてから、前記ハウジング内で前記インペラを回転させるために、前記ステータにトルク電流を供給
し、
前記第1の均衡のとれた位置から第2の均衡のとれた位置へと、前記インペラを軸方向に移動させるとともに、前記インペラの位置を前記第1の均衡のとれた位置と前記第2の均衡のとれた位置との間で交互に変更する
、ように構成され、
前記インペラが前記各均衡のとれた位置において費やす時間の量は、それぞれの均衡のとれた位置における前記インペラと前記ハウジングの前記内壁との間のギャップのサイズに反比例する、血液ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の血液ポンプにおいて、
前記第1の内壁は、前記ハウジングの入口側を含む、血液ポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載の血液ポンプにおいて、
前記ハウジングの前記第1の内壁及び第2の内壁は、前記インペラに面する動圧溝をそれぞれ形成している、血液ポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載の血液ポンプにおいて、
前記インペラは、1又は複数の動圧溝を形成している、血液ポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載の血液ポンプにおいて、
前記ステータコイル磁束電流は、前記インペラの軸方向の位置を制御する磁力を生成する、血液ポンプ。
【請求項6】
請求項1に記載の血液ポンプは、更に、
前記インペラの軸方向の位置を監視する1又は複数のセンサを備え、
前記コントローラは、更に、前記1又は複数のセンサによる測定に基づき、前記ステータコイル磁束電流を調整するように構成されている、血液ポンプ。
【請求項7】
血液ポンプを動作させる方法であって、
前記血液ポンプのコントローラが、前記血液ポンプのインペラの回転の開始前に、前記血液ポンプのステータに供給されるステータコイル磁束電流を調整することで、
前記インペラの面が前記血液ポンプのハウジングの第1の内壁と当接する休止位置から、前
記インペラが前
記ハウジングの内壁から離れた
第1の均衡のとれた位置へと、前記
インペラを軸方向に移動させることと、
前記コントローラが、前記インペラを
前記第1の均衡のとれた位置へと移動させてから、前記ハウジング内で前記インペラを回転させるために、前記ステータにトルク電流を供給すること
と、
前記コントローラが、前記第1の均衡のとれた位置から第2の均衡のとれた位置へと、前記インペラを軸方向に移動させるとともに、前記インペラの位置を前記第1の均衡のとれた位置と前記第2の均衡のとれた位置との間で交互に変更することと、を含み、
前記インペラが前記各均衡のとれた位置において費やす時間の量は、それぞれの均衡のとれた位置における前記インペラと前記ハウジングの前記内壁との間のギャップのサイズに反比例する、方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の血液ポンプを動作させる方法において、
トルク電流及びステータコイル磁束電流は、独立して制御される、方法。
【請求項9】
請求項
7に記載の血液ポンプを動作させる方法において、
前記ステータコイル磁束電流を調整することは、
前記コントローラが前記ステータに供給される相電圧の転流角を変更することを含む、方法。
【請求項10】
請求項
7に記載の血液ポンプを動作させる方法において、
前記ハウジングの前記第1の内壁及び第2の内壁は、前記インペラに面する動圧溝をそれぞれ形成している、方法。
【請求項11】
請求項
7に記載の血液ポンプを動作させる方法において、
前記インペラは、1又は複数の動圧溝を形成している、方法。
【請求項12】
請求項
7に記載の血液ポンプを動作させる方法において、
前記ステータコイル磁束電流は、前記インペラの軸方向の位置を制御する磁力を生成する、方法。
【請求項13】
請求項
7に記載の血液ポンプを動作させる方法は、更に、
前記コントローラが、1又は複数のセンサを用いて、前記インペラの軸方向の位置を監視することと、
前記コントローラが、前記1又は複数のセンサによる測定に基づき、前記ステータコイル磁束電流を調整することと
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、圧送装置に関し、より詳細には、浮上式インペラを有する血液ポンプ及び血液ポンプを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的循環補助(MCS)装置が、心不全を患う患者を治療するために一般的に使用されている。1つの例示的なタイプのMCS装置には、遠心流血液ポンプがある。多くのタイプの循環補助装置が、循環器疾患を患う患者の短期又は長期の補助に利用可能である。例えば、左心補助装置(LVAD)として知られている心臓ポンプシステムは、体外装着ポンプ制御ユニット及びバッテリと関連付けられる埋め込み式ポンプを伴う長期の患者の補助を提供することができる。LVADは、血液を圧送するときに心臓の左側を補助することによって、身体中の循環を改善する。LVADシステムの例には、Terumo Heart Inc.(ミシガン州、アナーバー)によって製造されるDuraHeart(登録商標)LVASシステム、並びに、Thoratec Corporation(カリフォルニア州、プレザントン)によって製造されるHeartMate II(商標)及びHeartMate III(商標)システムがある。これらのシステムは、通常、血液を左心室から大動脈に圧送するために磁気浮上式インペラを有する遠心力ポンプを使用している。インペラは、電気モータのロータとして形成され、ブラシレスDCモータ(BLDC)等の多相ステータからの回転磁場によって回転する。インペラは、患者の体循環にポンプにより十分な血流を提供するように回転する。
【0003】
初期のLVADシステムは、ボールアンドカップ軸受等の機械軸受を使用していた。最近のLVADは、流体力及び/又は磁力を使用してインペラを浮上させる非接触式軸受を使用している。1つの例では、インペラは、流体力及び受動的な磁力の組み合わせによって浮上される。
【0004】
血液ポンプを、より広範な患者集団を治療するためにより小型化し、より信頼性のあるものにし、改善された結果を伴うようにする傾向がある。この傾向に追従するために、非接触式インペラ懸垂技術が、幾つかのポンプ設計において開発されてきた。この技術の原理は、電磁石、流体力学及び永久磁石からの力の1つ又は組み合わせを使用してポンプインペラを浮上させることである。その一方で、ポンプは、血液細胞の損傷及び血栓の形成を最小限に抑えるために血液適合性であるべきである。そのために、浮上式インペラとポンプハウジングとの間の軸受ギャップが重要な因子になる。小さいギャップは、軸受における血栓形成の高い可能性、又は過剰な剪断応力に起因する上昇した溶結につながる可能性がある。同様に、大きいギャップは、動圧軸受の性能及びポンプの効率を損なう可能性がある。
【0005】
能動的な磁気軸受を使用する1つのポンプの設計は、電磁石コイルにより生成される磁場を使用してインペラを浮上させることによって、所望の軸受ギャップを達成する。しかし、そのような設計では、インペラ位置を制御するために位置センサ及び電磁石コイルを含む別個の軸受制御システムが必要とされている。
【0006】
別のポンプ設計は、流体力学的スラスト軸受のみを使用して又は受動的な磁気軸受と組み合わせてインペラを浮上させる。しかし、そのような設計は、通常、インペラの浮上を維持するとともにインペラとポンプハウジングとの間の接触を防止するため、十分な動圧軸受の剛性を提供するように小さい軸受ギャップを必要とする。そのような小さいギャップは、不十分な洗い流しや血栓形成への脆弱性をもたらす可能性があり、したがって、血液適合性を損なう。
【0007】
インペラを懸垂させるために動圧軸受を使用するポンプは、通常、全ての動作状態にわたって概ね一定のギャップを維持するように設計されている。そのような設計の欠点は、ポンプの流量が増大するとインペラが傾き始めることである。狭いギャップにわたる低圧条件下でのインペラ位置のシフトは、血流の停止を生じ、このことが、軸受表面における血栓形成につながる。この問題を解決するための1つの解決策は、安定したギャップを維持するように受動的な磁気軸受を加えることである。しかし、磁気軸受の解決策は、ポンプのサイズ及びシステムの複雑さを高める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既知の設計のこれら及び他の問題に対処するポンプが必要とされている。比較的小さいフォームファクタ及び改善された結果を伴うポンプが必要とされている。血栓のリスクを低下させるように、単純な軸受システムを使用するとともに血流のギャップを高めるポンプが必要とされている。ポンプの機械的な設計の複雑さを増大させるか又はポンプの効率を低下させることなく、十分な洗い流しを達成するように軸受ギャップを高める解決策が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
要するに、本発明の種々の態様は、ポンプハウジングと、ハウジング内のポンプチャンバにおいて回転するインペラと、トルクをインペラに印加する駆動コイルを備えるステータと、ポンプチャンバ内でインペラを懸垂させる軸受機構と、位置制御機構とを含む血液ポンプシステムに関する。
【0010】
本発明の種々の態様は、ポンプハウジングと、ハウジング内のポンプチャンバにおいて回転するインペラと、トルクをインペラに印加する駆動コイルを備えるステータと、ポンプチャンバの第1の端に対してインペラを固定する第1の軸受であって、第1の血液ギャップがインペラと第1の軸受表面との間に画定される第1の軸受と、ポンプチャンバの第2の端に対してインペラを固定する第2の軸受であって、第2の血液ギャップがインペラと第2の軸受表面との間に画定される第2の軸受と、位置制御機構とを含む血液ポンプシステムに関する。
【0011】
種々の実施形態では、位置制御機構は、ポンプの二次的な流れギャップを交互にするように構成されている。種々の実施形態では、位置制御機構は、インペラをポンプチャンバ内で軸方向に移動させ、インペラとハウジングの対向する壁との間の血液ギャップ距離を調整するように構成されている。種々の実施形態では、位置制御機構は、インペラをポンプチャンバ内で軸方向に移動させ、第1の血液ギャップを増大させることによって、洗い流し量を増大させるように構成されている。
【0012】
種々の実施形態では、洗い流し量は、それぞれの時間期間の間の平均洗い流し量である。種々の実施形態では、洗い流し量は、それぞれの時間期間の間のピーク洗い流し量である。例えば、それぞれの時間期間は、インペラが目的位置に移動されて洗い流し量を増大させる間の期間であってもよい。
【0013】
種々の実施形態では、位置制御機構は、インペラを周期的及び断続的に移動させるように構成されている。位置制御機構は、インペラを、毎分少なくとも数秒間移動させるように構成することができる。位置制御機構は、トリガ事象に基づいてインペラを移動させるように構成することができる。位置制御機構は、インペラが速度閾値を横断することに基づいてインペラを移動させるように構成することができる。速度閾値は低い速度閾値であるものとすることができる。トリガ事象は、低い速度閾値及び時間閾値に基づくものとすることができる。
【0014】
種々の実施形態では、ポンプは、少なくとも狭い第1のギャップを有する第1の均衡のとれた位置及び狭い第2のギャップを有する第2の均衡のとれた位置を有して構成される。インペラは、第1の均衡のとれた位置及び第2の均衡のとれた位置において実質的に等しい量の時間を費やすように制御される。種々の実施形態では、各均衡のとれた位置においてインペラが費やす時間の量は、ギャップのサイズに反比例する。種々の実施形態では、ギャップのうちの一方は、停止しやすいものとして特定され、インペラは、特定されたギャップから離れた位置においてより長い時間を費やす。
【0015】
種々の実施形態では、インペラの移動は、自然な心拍と非同期する。種々の実施形態では、インペラの移動は、自然な心拍と同期する。
種々の実施形態では、通常の動作条件下での総血液ギャップは50マイクロメートルである。種々の実施形態では、通常の動作条件下での総血液ギャップは100マイクロメートルである。種々の実施形態では、通常の動作条件下での総血液ギャップは200マイクロメートルである。種々の実施形態では、通常の動作条件下での総血液ギャップは1000マイクロメートルである。種々の実施形態では、通常の動作条件下での総血液ギャップは2000マイクロメートルである。種々の実施形態では、インペラは、それぞれの血液ギャップを約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%又は約90%だけ低減するような位置に移動する。
【0016】
本発明の種々の態様は、先行する段落のいずれかにおいて記載されるようなポンプを動作させる方法に関する。
本発明の種々の態様は、ハウジング及びハウジング内のポンプチャンバ内で回転するインペラを含む血液ポンプを動作させる方法であって、インペラをポンプチャンバ内で回転させることであって、インペラがポンプチャンバの第1の端にある第1の軸受、及び、ポンプチャンバの第2の端にある第2の軸受によってポンプチャンバ内で懸垂されることと、インペラをポンプチャンバ内で軸方向に移動させることによって、第1の軸受によって画定される第1の血液ギャップを増大させるとともに第2の軸受によって画定される第2の血液ギャップを低減させることとを含む方法に関する。
【0017】
本発明の種々の態様は、明細書において記載され及び/又は図面のいずれかにおいて示されるような少なくとも1つのシステム、方法又はコンピュータプログラム製品に関する。
【0018】
1つの態様では、血液ポンプシステムが提供される。ポンプシステムは、ポンプハウジング及びハウジング内でポンプチャンバにおいて回転するインペラを含むことができる。インペラは、第1の側及び第1の側とは反対の第2の側を有することができる。ポンプシステムは、トルクをインペラに印加する駆動コイルを有するステータ、及び、ポンプチャンバ内でインペラを懸垂させる少なくとも1つの軸受機構も含むことができる。ポンプシステムは、インペラをポンプチャンバ内で軸方向に移動させ、第1のギャップのサイズ及び第2のギャップのサイズを調整することによって、第1のギャップ及び第2のギャップのそれぞれにおける洗い流し量を制御する位置制御機構を更に含むことができる。第1のギャップは、第1の側とハウジングとの間の距離によって画定されることができ、第2のギャップは、第2の側とポンプハウジングとの間の距離によって画定される。
【0019】
別の態様では、血液ポンプシステムは、ポンプハウジングと、ハウジング内のポンプチャンバにおいて回転するインペラと、トルクをインペラに印加する駆動コイルを有するステータとを含むことができる。また、ポンプシステムは、ポンプチャンバの第1の端に対してインペラを固定する第1の軸受を含むことができる。第1の血液ギャップは、インペラと第1の軸受表面との間に画定される。また、ポンプシステムは、ポンプチャンバの第2の端に対してインペラを固定する第2の軸受を含むことができる。第2の血液ギャップは、インペラと第2の軸受表面との間に画定される。ポンプシステムは、インペラをポンプチャンバ内で軸方向に移動させ、第1の血液ギャップを増大させることによって、第1の血液ギャップにおける洗い流し量を増大させる位置制御機構を含むことができる。
【0020】
別の態様では、ハウジング及びハウジング内のポンプチャンバ内で回転するインペラを含む血液ポンプを動作させる方法が提供される。方法は、インペラをポンプチャンバ内で回転させることを含むことができる。インペラは、ポンプチャンバの第1の端にある第1の軸受及びポンプチャンバの第2の端にある第2の軸受によってポンプチャンバ内で懸垂される。方法は、インペラをポンプチャンバ内で軸方向に移動させることによって、第1の軸受によって画定される第1の血液ギャップを増大させるとともに第2の軸受によって画定される第2の血液ギャップを低減させることを含むこともできる。
【0021】
本発明の構造及び方法は、本明細書に組み込まれるとともに本明細書の一部を形成する添付の図面、及び、本発明の原理を説明するように一緒に働く発明の以下の詳細な説明から明らかであるか又はより詳細に記載される他の特徴及び利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明を使用する回転機械の一例としての埋め込み式ポンプの図。
【
図3】本発明の態様による圧送チャンバ内でほぼセンタリングされた第1の均衡のとれた位置で浮上したインペラを示す
図1の例示的なポンプの断面図。
【
図4a】メイン軸受構成要素によってポンプチャンバ内で偏心して浮上したインペラを示す
図1の例示的なポンプの概略図。
【
図4b】ポンプチャンバの底部での別の偏心位置に移動したインペラを示す
図1のポンプの概略図。
【
図4c】ポンプチャンバの上部での別の偏心位置に移動したインペラを示す
図1のポンプの概略図。
【
図5】本発明によるインペラ位置を制御する方法を示すフロー図。
【
図6】本発明によるポンプ制御システムのブロック図。
【
図7】本発明によるインペラ位置を制御する方法を示す折れ線グラフ。
【
図8】本発明によるインペラ位置を制御する方法を示すフロー図。
【
図9】本発明によるインペラを移動させる方法を示すフロー図。
【
図10】本発明によるポンプを始動させる方法を示すフロー図。
【
図11】補助的な電磁軸受を示す本発明の態様による遠心力流れポンプの断面図。
【
図12】本発明の態様による軸流ポンプの断面図であり軸流ポンプが機械軸受を含む断面図。
【
図13】
図12のインペラの斜視図であり矢印が本発明による並進移動方向を示す断面図。
【
図15】本発明の態様による軸流ポンプの断面図であり軸流ポンプが動圧軸受及び磁気軸受を含む断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、添付の図面にその例が示されている、本発明の好ましい実施形態を詳細に参照する。本発明は好ましい実施形態とともに記載されるが、好ましい実施形態は、本発明をそれらの実施形態に限定する意図はないことが理解される。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の主旨及び範囲内に含まれる代替形態、変更形態及び均等物を包含することが意図される。
【0024】
添付の特許請求の範囲における説明及び正確な定義における便宜上、用語「上」又は「上側」、「下」又は「下側」、「内部」及び「外部」は、図示するような特徴の位置に関して本発明の特徴を記載するのに用いられる。
【0025】
多くの点において、種々の図面の変更は、先行する変更の図に類似し、添え字「a」、「b」、「c」及び「d」が続く同じ参照符号は、対応する部分を指す。
本明細書において用いられる場合、「ギャップ」は概して、当業者によって理解されるように、インペラの周りの二次的な流れギャップを指す。一次的な流れは、インペラブレード領域を通る。二次的な流れギャップは、概ねインペラの周りの他の流体のエリアである。幾つかの点で、二次的な流れギャップは、インペラとハウジング壁との間であり、動圧軸受を画定する。
【0026】
「機械可読媒体」という用語は、限定はされないが、持ち運び可能又は固定された記憶装置、光学記憶装置、無線チャネル、並びに、命令及び/又はデータを記憶、収容又は担持することが可能な種々の他の媒体を含む。コードセグメント又は機械実行可能命令は、プロシージャ、機能、サブプログラム、プログラム、ルーチン、サブルーチン、モジュール、ソフトウェアパッケージ、クラス、又は、命令、データ構造若しくはプログラムステートメントの任意の組み合わせを表すことができる。コードセグメントは、情報、データ、引数、パラメータ又はメモリ内容を渡し及び/又は受信することによって、別のコードセグメント又はハードウェア回路に結合することができる。情報、引数、パラメータ、データ等は、メモリ共有、メッセージパッシング、トークンパッシング、ネットワーク送信等を含む任意の好適な手段を介して渡すか、転送するか又は送信することができる。
【0027】
さらに、本発明の実施形態は、少なくとも部分的に、手動で又は自動的に実施することができる。手動又は自動的な実施は、機械、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、又は、それらの任意の組み合わせの使用によって実行するか又は少なくとも補助することができる。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア又はマイクロコードにおいて実施されるとき、必要なタスクを行うためのプログラムコード又はコードセグメントは、機械可読媒体に記憶される。1つ又は複数のプロセッサは、必要なタスクを行うことができる。
【0028】
本発明の態様は血液ポンプを参照して記載されるが、本発明を他のタイプのポンプに適用できることが理解される。本発明の機構及び方法は、血液ポンプ、並びに、特に、血液を圧送するときの血栓及び溶結の付随するリスク等の、性能に対処するためのインペラ動作位置を調整する能力に関して記載される。本明細書における記載から、本発明を他のポンプ、回転機械及び誘導モータに広範に適用できることが理解される。
【0029】
図面を参照すると、本発明の態様は、軸受ギャップを改良するか又は制御する能力を可能にする。軸受ギャップを増大させ、洗い流し量を調整するか、軸受表面を潤滑させるか、又は、物質(微粒子、血栓等)を軸受ギャップから除去することが望まれ得る。本発明の別の使用は、ポンプ効率を高めることであってもよい。当該技術分野において既知であるように、モータ効率は、インペラ磁石がモータ駆動コイルに近づくと高まる。本発明の別の使用は、バルク力又は外力(例えば、患者の身体がぶつかること又は動き)に起因するインペラの位置異常を修正することであってもよい。これら及び他の利点は、本発明に従って、複雑な制御システムの必要なく達成することができる。
【0030】
本発明の種々の態様は、それぞれのギャップのサイズを増大させる位置にインペラを移動させることによって、それぞれのポンプ軸受ギャップにおける洗い流しを改善することに関する。インペラは、或る事象によって周期的に(例えば、時間によって)移動するか又はトリガされる。インペラが上に移動すると、ポンプの底部におけるより大きいギャップがより高い流量につながり、これがさらに、より高い洗い流し量につながる。インペラの上方への移動はまた、或る種の圧送作用においてインペラの上の血液を「絞る」ことができ、これも洗い流し量を増大させる。上方の流体は、インペラが移動すると絞られるが、インペラが新たな位置になると、圧送効果は失われ、一方で、より高い洗い流し量は下のより大きいギャップにおいて依然として残る。換言すると、洗い流し量に対する圧送効果は、特定の時点において生じ、一方で、より大きいギャップ効果は、本来は一時的である。基本的な概念は、ギャップのサイズが洗い流し量に関連付けられることを利用する。洗い流し量は、流体の完全な交換のための平均時間に関する。したがって、洗い流し量で割ったギャップのサイズが数秒に等しい場合、これは、インペラが数秒間だけ移動するべきであることを必ずしも意味しない。多くの場合、インペラは、約100%、120%、150%、200%、又は、より高い信頼を有するために洗い流し量で割ったギャップのサイズによって計算される完全な交換の平均時間の他のパーセンテージの間で移動する。洗い流し流量は、ギャップ幅の3乗に概ね比例する。したがって、理論上、総洗い流し流量は、ギャップが2倍幅広になると、8倍多くなる。W.K. Chan et al.、Analytical Investigation of Leakage Flow I Disk Clearance of Magnetic Suspended Centrifugal Impeller、 Artificial Organ (2000)を参照のこと。完全に洗い流すことができない結果として、停止のエリア又は流体が交換されないエリアにおいて血栓症が形成される可能性があるため、洗い流し量は必須である。これは2つのリスクを生じる:1)血栓が取り除かれて身体内に流れる可能性があり、したがって、塞栓症(又は血栓が向かう場所に応じては脳卒中)を引き起こし、2)血栓は弱まることなく続く可能性があり、活性化された部位により多くの血小板を形成させ、これはさらに、トロンビンが付着する部位を提供する。
【0031】
したがって、ギャップを交互にすることは、小さい全体的なギャップ(良好なポンプ効率、適切なHD軸受動作等)を維持しながらも、動圧軸受の洗い流しを改善することが分かっている。換言すると、ギャップを交互にすることは、全体的なギャップを増大させることなく洗い流しを改善する。
【0032】
上記の技法は、動圧軸受及び/又は電磁軸受を有するポンプにおいて実施することができる。動圧軸受の設計の場合、インペラの移動に関連する電力損失があることが予期される。電磁石及び動圧溝を使用する1つの実施形態では、電力損失は、少なくとも2つの安定した(偏心)位置を有するように軸受剛性曲線を設計するとともに、これらの少なくとも2つの位置間のインペラの移動を容易にすることによって最小限に抑えることができる。1つの例では、電磁石は、インペラを1つの側から別の側に移動させるためだけに付加的な力を必要とし、そのような力は、インペラを一方の側に保つために必要とされない。
【0033】
1つの実施形態では、インペラ位置を変更し、インペラと血液チャンバとの間の効果的なギャップを高めるために電磁力制御方法が使用される。この技法は、トルクをインペラに印加するのに使用されるものと同じポンプモータステータコイルを使用し、インペラ位置を調整する。付加的な制御サブシステム及び構成要素は必要ではない。
【0034】
ここで、同様の構成要素が種々の図面にわたって同様の参照符号によって示される図面を参照すると、心不全患者に埋め込まれた例示的なポンプを示す
図1に注意が向けられる。
【0035】
典型的な心補助システムは、圧送ユニット、駆動電子機器、マイクロプロセッサ制御ユニット、並びに、充電式バッテリ及び/又はAC電源調整回路等のエネルギー源を含む。システムは、遠心力ポンプが患者の胸部に配置される外科的処置中に埋め込まれる。流入導管が左心室に穿刺され、血液をポンプに供給する。流出導管の一端はポンプ出口に機械的に嵌められ、他端は、吻合術によって患者の大動脈に外科的に取り付けられる。ポンプへの経皮的なケーブル接続部が、切開部を通して患者を出て、外部の制御ユニットに接続する。
【0036】
埋め込み式ポンプの種々の態様は、米国特許第4,528,485号;同第4,857,781号;同第5,229,693号;同第5,588,812号;同第5,708,346号;同第5,917,297号;同第6,100,618号;同第6,222,290号;同第6,249,067号;同第6,268,675号;同第6,355,998号;同第6,351,048号;同第6,365,996号;同第6,522,093号;同第7,972,122号;及び、同第8,686,674号;並びに、米国特許出願公開第2014/0205467号及び同第2012/0095281号(これらの特許及び公報の全内容は、全ての目的でこの参照により本明細書に援用される)において示されるとともに記載されている態様と同様である。
【0037】
例示的なシステムは、インペラを支持する非接触式軸受を有する埋め込み式ポンプを使用する。非接触式軸受(すなわち浮上)は、多くの潜在的な利点を提供する。非接触式軸受は、回転摩擦を低下させるため、理論上、モータの効率を改善し、微粒子を流体内に導入するリスクを低下させる。1つの例で、インペラは、磁気材料を有する上側プレート及び下側プレートを使用する(上側及び下側という用語は、ポンプを任意の向きで動作させることができるため、任意である)。ポンプハウジングの上側からの定常磁場は、上側プレートを引き付け、ポンプハウジングの下側からの回転磁場は下側プレートを引き付ける。これらの力は、インペラが圧送チャンバ内の浮上位置において回転するように協働する。特徴部(図示せず)を、圧送チャンバの壁に形成し、動圧軸受を生成することもでき、この場合、循環する流体からの力もインペラをセンタリングさせる傾向にある。そのような動圧軸受を提供するように適合される動圧溝が、参照により全ての目的で本明細書に援用される、「Centrifugal Blood Pump Apparatus」と題する、2008年12月30日に発行された米国特許第7,470,246号に示されている。
【0038】
例示的なインペラは、各側のチャンバ壁から所定の間隔を有する圧送チャンバ内の最適な位置を有する。適切な間隔を維持することは、剪断応力及びポンプの流れ停止を制限する。高い剪断応力は、血液の溶結(すなわち細胞への損傷)を引き起こす可能性がある。流れ停止は血栓症(すなわち血液凝固)を引き起こす可能性がある。
【0039】
図1を引き続き参照すると、患者が断片正面図で示されている。患者の腹腔又は心膜11に外科的に埋め込まれるのは、心室補助装置の圧送ユニット12である。流入導管(ユニット12の隠れた側にある)が、心臓の心尖に穿刺し、血液を患者の左心室から圧送ユニット12内に運ぶ。流出導管13が、血液を圧送ユニット12から患者の上行大動脈に運ぶ。経皮的な電力ケーブル14が、圧送ユニット12から切開部を介して患者の体外に、患者10によって装着されるコンパクトな制御ユニット15まで延びる。制御ユニット15は、主バッテリパック16及び/又は外部のAC電源、並びに、内部のバックアップバッテリによって給電される。制御ユニット15は、圧送ユニット12内のモータを駆動する整流子回路を含む。
【0040】
種々の実施形態では、整流子回路及び/又は種々の電子機器は、システムの埋め込まれる側にあるものとすることができる。例えば、種々の電子機器は、ポンプに内蔵して又は別個の気密なハウジング内に位置決めされる。電子機器を埋め込むことの潜在的な利点は、特に、身体外の制御ユニット15との通信が失われても、ポンプを制御可能であることである。
【0041】
図2及び
図3は、本発明の種々の態様による例示的な遠心力圧送装置を示している。例示的な圧送装置は、インペラの位置を変更するか又は選択するためのインペラ位置コントローラを含む。以下で更に詳細に記載するように、インペラは、一方のポンプギャップを低減させる移動によって概して他方のポンプギャップを増大させ、その逆もまた同様であるように、一定のポンプチャンバとともに位置決めされる。
【0042】
図2は、
図1のシステムにおいて使用される例示的な遠心力ポンプユニット20を示している。ポンプユニット20は、インペラ21、並びに、上側半体22a及び下側半体22bを有するポンプハウジングを含む。インペラ21は、ハブ24にわたって圧送チャンバ23内に配置される。インペラ21は、複数の羽根26にわたって挟まれる第1のプレート又はディスク25及び第2のプレート又はディスク27を含む。第2のディスク27は、ハウジング22aに当接して配置される浮上磁石構造34によって生成される浮上磁場と相互作用する複数の埋め込まれる磁石セグメント44を含む。小さいサイズを達成するために、磁石構造34は、360°の外周にわたって対称的で静的な浮上磁場を提供する1つ又は複数の永久磁石セグメントを含むことができる。第1のディスク25も、ハウジング22bに当接して配置されるステータアセンブリ35からの磁場と磁気的に結合する埋め込まれる磁石セグメント45を収容する。ハウジング22aは、患者の心室から血液を受け取るとともに血液を羽根26に分配するための入口28を含む。インペラ21は好ましくは円形であり、外周縁30を有する。インペラ21を圧送方向31に回転可能に駆動することによって、インペラ21の内側縁において受け取られる血液は、外周30まで運ばれ、増大した圧力で圧送チャンバ23内の螺旋状領域32に入る。加圧された血液は、ハウジング特徴部33a及び33bによって形成される出口33から流れ出る。流れ分割ガイド壁36を螺旋状領域32内に設け、全体的な流れ及びインペラ21に対して作用する力を安定させることができる。
【0043】
図3は、均衡のとれた位置に位置付けられているインペラ21を示している。例示的な実施形態では、均衡のとれた位置は、ポンプチャンバの中心に又はポンプチャンバの中心付近にある。均衡のとれた位置では、インペラに対して作用する力は概して、インペラを安定させるように均衡がとられる。均衡のとれた位置、場合によっては、インペラが動作中に自然に安定するか又は均衡を見出す位置を指す。
【0044】
しかし、上記の記載から理解されるように、均衡のとれた位置は、必ずしも特定の静的な位置ではない。インペラに対する流体力は、インペラの回転速度が変化すると変化する。さらに、インペラに対する磁気吸引力は、インペラが磁石構造34及びステータアセンブリ35に離接するように移動すると変化する。したがって、インペラは概して、回転速度が変化すると新たな均衡のとれた位置を見出す。しかし、以下で記載するように、本発明の態様は、インペラを移動させること、又は、各所与の回転速度について均衡のとれた位置を変化させることに関する。例えば、記載されるインペラ位置制御機構は、回転速度及び他の全てを変化させることなく、インペラを軸方向(上又は下)に移動させることを容易にする。これは、ロータ速度とは関係なくインペラの移動を可能にするという効果を有する。この技法の利点は、ロータ速度を、インペラ位置を変化させることへの懸念なく、(例えば、患者の生理学的な必要性に基づいて医師によって)通常の成り行きで求めることができる。逆に、インペラ位置は、圧送スループットに影響を与えずに変化させることができる。
【0045】
図3は、ディスク27がハウジング22Aからギャップ42だけ離間され、インペラディスク25がハウジング22Bからギャップ43だけ離間される中心位置に又は中心位置付近に位置付けられているインペラ21を示している。例示的な実施形態では、中心位置は、均衡のとれた又は偏心地点として選択され、実質的に均一な流入ギャップ42及びギャップ43を確実にする。ポンプ動作中、均衡のとれた位置は、(a)インペラディスク27内に埋め込まれる磁気材料44と浮上磁石構造34内の永久磁石40及び41間の磁気吸引力、(b)ステータアセンブリ35とインペラディスク25内の埋め込まれる磁石材料45との間の磁気吸引力、並びに、(c)ハウジング22内に動圧溝(図示せず)を形成することによって増大させることができる循環する流体によって加えられる動圧軸受力の相互作用によって維持される。構造34内の永久磁石を使用することによって、コンパクトな形状が実現され、能動的な浮上磁石制御を実施することの複雑さに関連する潜在的な失敗が回避される。しかし、センタリング位置においてインペラ21の均衡を適切にとるため、また、インペラ21に対して作用する他の力が一定ではないため、能動的な位置決め制御が依然として必要とされる。特に、インペラ21に対して作用する流体力は、インペラ21の回転速度に従って変化する。さらに、ステータアセンブリ35によってインペラ21に印加される引力は、磁場の大きさ、及び、磁場がインペラの磁場位置につながる角度に依存する。1つの実施形態では、引力は、以下でより詳細に記載するように、直流(I
d)によって生成される。
【0046】
1つの実施形態では、インペラ位置は、ベクトルモータ制御を使用して制御される。ここで、ベクトルモータ制御を使用してインペラ位置を変更する幾つかの構造及び技法を、
図3~
図7を参照して記載する。
【0047】
図4aは、
図3に示されているものと同様の例示的な遠心力ポンプ50の主な構造を示している。永久磁石、モータステータ巻線及び動圧軸受の種々の組み合わせを含む、他のポンプ形態を使用できることが理解される。例示的な実施形態では、ロータは、インペラとして形成され、モータによって駆動される。インペラは、以下の方程式として表現することができる組み合わせた力F
aΣによっても浮上される:
F
aΣ=F
hdb+F
pm+F
em
式中、
F
aΣは、インペラを浮上させるために組み合わせた力であり、
F
hdbは、入口側軸受、モータ側軸受又は双方からの流体力の組み合わせであり、
F
pmは、永久磁石引力の組み合わせであり、
F
emは、モータから生成される磁気的引力である。
【0048】
インペラが安定すると、FaΣはゼロに等しいはずである。通常、Femは、電子システムによって制御され、インペラ位置を調整することができるが、これは、他の全てが受動モードとして固定した構造であるためである。したがって、本発明の基本的な設計の概念は、モータベクトル制御(FOC)を適用し、1つのセットのモータコイル及び駆動システムのみを使用して回転させながらもインペラ位置を調整することができるように、力Femを制御することである。そのように、ポンプ構造に付加的なコストがかからない。
【0049】
図4a、
図4b及び
図4cは、本発明の種々の態様によるポンプを示している。
図4aは、ポンプチャンバ内にインペラ52を有する例示的なポンプ50を示している。ポンプ50は、
図3におけるポンプ10と同様に構成される。
図4b及び
図4cは、インペラが本発明に従ってそれぞれ下及び上に移動している以外は、
図4aにおける同じポンプ50を示している。
図4bでは、インペラ52は、ギャップ2がより小さく、ギャップ1が整合的により幅広であるように、降下位置にある。この位置では、ギャップ1にわたる洗い流し量は、
図4aと比較して指数関数的により高い。
図4cでは、インペラ52は、ギャップ2がより幅広であり、ギャップ1が整合的により幅狭であるように、上昇位置にある。この位置では、ギャップ2における洗い流し量は、
図4aと比較して指数関数的により高い。
【0050】
種々の点において、洗い流し量は、それぞれの時間期間の間の平均洗い流し量を指す。種々の点において、洗い流し量はピーク洗い流し量を指す。それぞれの時間期間は、任意の指定された時間期間であるものとすることができ、例えば、インペラが目的位置に移動して洗い流し量を増大させる間の期間である。
【0051】
図5は、ポンプを制御する例示的な簡略化された方法を示している。ステップS1では、ポンプは、インペラが第1の均衡のとれた位置にある状態で動作される。ステップS2では、トリガが確認される。それに応じて、インペラはステップS3において第2の位置に移動する。その後、インペラは最終的に第1の位置に移動して戻る。
【0052】
トリガは時間ベース又は事象ベースであるものとすることができる。種々の実施形態では、位置制御機構は、インペラを周期的及び断続的に移動させるように構成されている。換言すると、トリガは、所定の量の時間の経過、並びに/又は、既定の周波数及びサイクルに基づくものであってもよい。1つの例では、位置制御機構は、インペラを毎分少なくとも数秒間移動させるように構成されている。種々の実施形態では、位置制御機構は、インペラが速度閾値を横断することに基づいてインペラを移動させるように構成されている。速度閾値は、低い速度閾値であってもよい。トリガは、低い速度閾値及び時間閾値に基づき得る。例えば、インペラは、低い速度において既定の量の時間よりも長くを費やした後で移動することができる。これは、低い速度がタッチダウン事象、停止及び他の問題につながる可能性があるため、有益である。したがって、インペラは、いずれの微粒子又は血栓もギャップから取り除かれることを確実にするように移動することができる。
【0053】
種々の実施形態では、ポンプは、少なくとも、狭い第1のギャップを伴う第1の均衡のとれた位置、及び狭い第2のギャップを伴う第2の均衡のとれた位置を有して構成される。
図4aに比して、
図4bは、狭いギャップ2を画定するインペラを示し、
図4cは、狭いギャップ1を画定するインペラを示している。ポンプチャンバの寸法は一定であり、全体的なギャップが同様に一定であるため、ギャップ1は、ギャップ2が低減する同じ距離だけ増大する。
図4cでは、インペラは、ギャップ1が低減され、ギャップ2が同等の量だけ増大するように、第3の均衡のとれた位置まで上方に移動している。
【0054】
インペラは、第1の均衡のとれた位置及び第2の均衡のとれた位置において実質的に等しい量の時間を費やすように制御することができる。これは、
図4aにおいて示されているように、インペラが通常はセンタリング位置にあるようにポンプが別様に設計されるときに有用である。種々の実施形態では、インペラが各均衡のとれた位置において費やす時間の量は、ギャップのサイズに反比例する。これは、ポンプが一様でないギャップを有するように別様に設計されるときに有用である。種々の実施形態では、ギャップのうちの一方は、停止しやすいものとして特定され、インペラは、特定されたギャップから離れた位置においてより長い時間を費やす。
【0055】
種々の実施形態では、インペラの移動は自然な心拍と非同期する。種々の実施形態では、インペラの移動は、自然な心拍と同期する。
種々の実施形態では、通常の動作条件下での総血液ギャップは50マイクロメートルである。種々の実施形態では、通常の動作条件下での総血液ギャップは100マイクロメートルである。種々の実施形態では、通常の動作条件下での総血液ギャップは200マイクロメートルである。種々の実施形態では、通常の動作条件下での総血液ギャップは1000マイクロメートルである。種々の実施形態では、通常の動作条件下での総血液ギャップは2000マイクロメートルである。種々の実施形態では、インペラは、それぞれの血液ギャップを約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%又は約90%だけ低減するような位置に移動する。
【0056】
図4a、
図4b及び
図4cが例示に過ぎないことが理解される。実際に、インペラは自由に懸垂され、或る位置に完璧には固定されない。例示的なポンプは、受動的な力の組み合わせの均衡をとることによってインペラを懸垂させるため、インペラは、実際に、実施中に適度な量の移動を呈する。実際に、インペラは、少なくともrpm対流体力の関係のために、回転速度に応じて上下に移動する。しかし、既定の回転速度の場合、インペラは、本明細書では説明を簡略化するために「位置」と称される規定されたスペースのエンベロープで通常は抑制される。
【0057】
機械軸受又は接触軸受は、回転速度及び他の要因に関係なく、僅かな移動を呈するか全く移動しない。それにもかかわらず、接触軸受は、幾らかの動作移動が測定される精密計器を必要とする場合であっても、そのような移動を実証する。多くのタイプの血液ポンプは、例えば、外部の供給源によって洗浄されるとともに潤滑される軸受を使用する。血液に浸される軸受を有するポンプの例は、参照により全ての目的で本明細書に援用される米国特許出願公開第2012/0095281号及び米国特許第5,588,812号に記載されている。1つの例では、ポンプは、ボールアンドカップ等の、血液に浸される接触軸受を含む。1つの例では、軸受は、生理食塩水又は注入液によって洗浄及び/又は潤滑される。生理食塩水の使用は、ポンプが身体外の供給源への流体接続を有するため、経皮ポンプに一般的なシナリオである。接触軸受を有する経皮ポンプの例は、全ての目的で参照により本明細書に援用される米国特許第7,393,181号及び同第8,535,211号において開示されている。当業者には理解されるように、流体に接触面間を少なくとも周期的に洗浄させるように設計されている接触軸受は、幾らかの移動を有する。この移動は非接触軸受に対して小さいが(例えば、およそ5倍、10倍、20倍、100倍以上だけより小さい)、幾らかの程度の移動を受ける。
【0058】
従来の考えでは、血液ポンプ(例えば、左心補助装置)が、装置の寿命にわたって安定したインペラ位置及び一貫性のある血液ギャップを維持するように設計されるべきである。血液ポンプでは、特に、インペラの動きは、多くの場合、溶結及び他の不所望のリスクに関連付けられる。ポンプギャップを低減することによって、血栓及び他の有害事象につながる停止の領域を生じると考えられている。
【0059】
一方で、ポンプギャップを制御及び設計された方法で調整することは、性能及び結果を実際に改善することができると見出されている。本発明の種々の態様は、インペラ位置を能動的かつ意図的に変更するように構成されているポンプに関する。1つの実施形態では、インペラの均衡のとれた位置は、動作中に変化する。
【0060】
上述した技法には、インペラを移動させるとともにポンプギャップを交互にするための幾つかの潜在的な利点がある。これらの潜在的な利点のうちの1つは、ピーク洗い流し流速を増大させる能力である。別の潜在的な利点は、総ギャップサイズを増大させることなく、狭いギャップにおいて取り込まれる血栓が集まることを防止又は低減する能力である。さらに、ポンプの効率及び性能は損なわれない。既存の解決策(例えば、安定したギャップの動圧軸受設計)は、狭いギャップのエリアにおいて血流パターンを変化させるために自然な心臓に依拠する(収縮期/拡張期等)。本発明の技法は、自然な心臓の機能、インペラ速度等とは独立して流れパターンを能動的に変化させるため、有利である。また、多くの心不全患者は、軸受ギャップを実際に洗い流すのに十分でない拍動性を有する弱まった自然な心臓を有している。本発明の技法によって、外部の圧力変化及び内部の幾何学的な変化(ロータ位置の変化)の組み合わせが、ポンプ血栓症を引き起こす血流の停止を最小限に抑える。
【0061】
図6及び
図7は、ベクトル制御としても既知である、磁界方向制御(FOC)アルゴリズムを使用して永久磁石ロータ(例えば、インペラ)52の所望の回転を提供するために、ステータに印加される電圧を制御する例示的な方法を示している。FOCにおいて、ステータ磁場が概して、最大限のトルク効率のために90°のインペラ位置を先導するべきであることが知られている。インペラに対する引力の大きさは、ステータにおける相電流の大きさに比例する。相電流は、ポンプのトルク要求に従ってFOCアルゴリズムによって調整される。
【0062】
(1)相電流の大きさ及び(2)インペラの速度の任意の特定の組み合わせにおいて、相電圧を生成するためのId電流を変更することは、ステータによって生成される引力を変化させることができ、それによって、インペラの均衡に影響を与える。さらに、インペラは、流体力及び磁力の均衡がとられる新たな均衡のとれた位置において定着するまで移動する。このように、インペラは、単にモータ制御信号への調整によって移動する。
【0063】
図4b、
図4c、
図5、
図6及び
図7は、本発明の態様による例示的なシステムを示している。
図6は、提案されるインペラ位置制御を用いたポンプ制御システムの概略図である。モータベクトル制御の原理に基づいて、通常は直交電流(I
q電流)と呼ばれるトルク電流、及び、直流(I
d電流)と呼ばれるステータコイル磁束電流は、独立して分離及び制御することができる。直交電流I
q電流は、インペラ回転速度を制御するのに使用される。直流I
d電流は、インペラに対する結果として生じる引力を生成する電磁石コイルの磁束を制御する。
【0064】
本発明によると、I
d電流は、インペラ(ロータ)とモータステータコイルとの間の磁束を高めるか又は弱めることによってインペラ位置を制御し、引力F
emを調整するのに使用される。これはさらに、インペラ位置を変化させる(
図7において示されている)。種々の実施形態では、引力は、FOCを使用して位相角を調整することによって生じる。
【0065】
1つの実施形態では、インペラ位置制御技法は、インペラ位置センサを用いることなく開ループ制御として実施される。1つの実施形態では、インペラ位置制御技法は、インペラ位置センサを用いた閉ループ制御として実施される。
【0066】
適切な位置決めを確実にするために、インペラ位置の能動的な監視及び制御が、例示的な実施形態では、定常磁場を調整することによって使用されてきた。しかし、位置センサ及び調整可能な磁気源は、かなりの量のスペースを占め、システムの複雑さを増す。したがって、センサの使用は、設計の要件に応じて変わり得る。好適なセンサとしては、限定はされないが、ホール効果センサ、可変リラクタンスセンサ及び加速度計が挙げられる。
【0067】
開ループ制御を使用する1つの実施形態では、インペラは、
図7において示されているようにI
d電流を調節することによって、位置を1つの側から別の側に(例えば、入口側からモータ側に)周期的に交互にすることによって制御される。このように、
図4b及び
図4cにおいて示されているような側部ギャップ(ギャップ1及びギャップ2)を増減させることができる。
【0068】
図6及び
図7を引き続き参照すると、位置制御技法は、システムのハードウェア及び/又はソフトウェアに実施することができる。例として、コントローラは、多相電圧信号をステータアセンブリ53に供給するためにFOCを使用することができる。例示的なステータアセンブリは、3相ステータである。個々の相a、b及びc並びに電流I
a、I
b及びI
cは、パルス幅変調(PWM)回路によって駆動される転流回路として機能するHブリッジインバータによって駆動することができる。インバータに関連する任意選択的な電流感知回路が、I
a及びI
bと示される電流信号を提供する少なくとも2相の瞬間的な相電流を測定する。電流計算ブロックが、2つの測定された電流を受け取り、第3の相に対応する電流I
cを計算する。測定された電流は、ベクトル制御(FOC)ブロック54、並びに、インペラの位置及び速度を推定する電流観察ブロック(図示せず)への入力である。インペラ位置及び速度は、速度制御ブロック55及び位置制御ブロック56からFOCブロックへの入力である。ポンプを動作させる目的速度又は回転毎分(rpm)は、従来の生理学的なモニタによってFOCブロック54に提供される。目的rpmは、医療ケア提供者によって設定されるか、又は、心拍、生理的要求、吸引検出等のような種々の患者のパラメータに基づいてアルゴリズムに従って求めることができる。FOCブロック54及び駆動電子機器57は、要求された電圧出力値Va、Vb及びVcを生成する。Va、Vb及びVc要求は、速度及び位置を検出するときに使用するために観察ブロックに結合することもできる。
【0069】
例示的なシステムは、FOCブロック及び電子機器が磁界方向制御アルゴリズムを変え、それによって、Id電流を、必要とされる引力を生成するために独立して変えることができるように構成されているため、従来の構造とは異なる。例示的なシステムは、潜在的に、他の利点と引き換えにそのような効率を犠牲にする。例示的なシステムの利点は特に、インペラ位置を独立して制御する能力である。
【0070】
図8は、FOCアルゴリズムを使用してインペラを移動させる方法を示している。1つの実施形態では、本発明は、磁界方向制御アルゴリズムによってインペラ位置制御の一部を強調する、
図8において示されているような方法に従って進む。したがって、ステップ65において、相電流を測定する。測定された相電流に基づいて、ステップ66において求めるロータ角度に基づいて、ステップ66においてその時点の速度及びロータ角度を推定する。ステップ67において、相電流を、2軸座標系に変換し、回転基準フレームにおいて直交電流(I
q電流と呼ばれる)及び直流(I
d電流と呼ばれる)値を生成する。直交電流は、トルクを制御してインペラを回転させるのに使用され、直流は、ロータとステータとの間の引力を制御してインペラ位置を制御するのに使用される。ステップ68において、ステップ67から変換された直交電流と、インペラ回転に必要な電流との直交電流誤差によって、次の直交電圧を求める。ステップ69において、ステップ67から変換された直交電流と、インペラ位置を制御するために引力の交替に必要とされる電流との間の直流誤差によって、次の直流電圧を求める。ステップ70において、直交電圧及び直流電圧を、PWM回路への出力である多相電圧要求を提供するために、静止基準フレームに変換し戻す。
【0071】
図9は、本発明による回転機械を動作させる別の方法を示すフロー図である。この方法は、ステップS10において、回転磁場を印加することによって、ポンプを動作させてインペラを回転させることを含む。動作中に、インペラは、力の均衡によって均衡のとれた位置(P
1)において浮上及び位置決めされる。上述したように、例示的な実施形態では、インペラは、ステップS11及びS12において、流体力F
1並びに他の軸受力F
2(例えば、ステータ引力、受動的な磁力及び/又は重力のようなバルク力)の組み合わせによって浮上される。次に、ステップS14において、力のうちの少なくとも一方F
2が、インペラを均衡から外して配置するように変更される。ステップS15において、インペラは、新たな位置P
2に移動し、そこで、力の均衡が再びとられる。
【0072】
図10を参照すると、1つの実施形態では、インペラ位置制御技法を使用して、ポンプの始動を容易にする。ステップS20において、例示的なポンプは、インペラが回転していないときにインペラが入口側(ハウジングの上部)に当接するように構成されている。流体力のみ又は磁力と組み合わせた通常のポンプでは、インペラは、回転すると壁から離れるように浮上される。インペラとハウジングとの間のギャップに取り込まれる血液は、動圧を生成するが、インペラは、動圧を生成するほど十分な速度で回転しなければならない。最低限の速度が満たされるまで、インペラはハウジング壁に対して擦れる。対照的に、例示的なポンプでは、インペラは、回転の開始前又は回転の開始直後に壁から引き離され、それによって、摩擦の有害な影響を排除する。インペラは、ステップS21において、上述したように、力Fを印加することによって壁から引き離される。例えば、引力を加えるために転流角を変更することができる。
図7bを参照すると、例として、ポンプは、インペラが入口側で静止するように構成することができる。引力をモータ側に印加することによって、インペラは上壁から下に移動する。ステップS22において、インペラが壁から離れた後で、規則的な始動シーケンスを開始する。
【0073】
図11は、電磁石を使用する別の実施形態による回転機械を示している。
図11におけるポンプ100は、
図3におけるポンプ10と種々の点で同様である。しかし、例示的な実施形態では、ポンプ100は、能動的な電磁石(EM)システム101を含む。電磁石によって生成されるEM力は、インペラを主に又は補助的に移動させるのに使用される。例示的な電磁石101は、鉄心及び巻線を含む。EM力は、巻線に印加される電流を変化させることによって従来の方法で変更される。EM力の印加は、インペラを位置P
E2まで移動させる。EM力が、システムに存在する流体力及び受動的な磁力を圧倒できることが理解される。したがって、EM構造は、比較的均衡のとれた力を印加するように寸法決め及び構成されなければならない。既存のステータアセンブリに勝る電磁石を使用することの利点は、インペラにわたって比較的より大きい位置制御が存在することである。対照的に、上述したように、相電流は、通常、インペラに対する軸方向引力を調整するための主要変数として使用することができない。この実施形態の不都合点は、全体的に別個のEMシステムを提供する必要性である。これは、大型の産業用の回転機械では問題とならない可能性があるが、多くのタイプのモータは制限フォームファクタを有する。例えば、埋め込まれるポンプは、より広範な患者集団に対処するために比較的小さくなければならない。
【0074】
図12及び
図13は、本発明による別の埋め込み式ポンプを示している。ポンプ200は、軸流ポンプであることを除いて、上述したポンプ10及び100と種々の点で同様である。血液は、概ね直線的な軸方向に、入口201を通って入って出口202を通って流れ出る。ポンプ200は、血液を、ポンプハウジングを通して移動させるとともに流体において運動エネルギーを加えるブレードを有するインペラ210を含む。
【0075】
インペラ210は、ボールアンドカップ軸受212及び214によってハウジング内に固定される。ボールアンドカップ軸受は、厳密に公差指定され、インペラを特定の位置に概ね固定する。しかし、例示的な軸受は、インペラの周りの血流によって潤滑及び洗浄される。したがって、ボールアンドカップの表面間に幾らかの流体が存在する。
【0076】
トルクは、ステータアセンブリ205によってインペラに印加される。ステータアセンブリ205は巻線を含み、上述したステータアセンブリと同様にFOCアルゴリズムを使用して駆動される。実際に、インペラ位置は、
図5及び/又は
図9に示す方法に従って進んで調整される。上述したFOC技法を使用して、インペラはポンプハウジング内で回転される。所望の時点において、インペラに対する軸方向の引力を調整するようにI
d電流が調節される。引力がそれぞれの軸受ギャップから血液を絞り出すほど十分である限り、インペラは入口201又は出口202に向かって軸方向に移動する。ポンプ200の軸受ギャップは、
図4におけるポンプ50のギャップ1及びギャップ2に比して比較的小さい。しかし、比較的小さいインペラの移動でさえも、軸受ギャップの制御を可能にするために有益である。
【0077】
洗い流し量を増大させるためにポンプギャップを調整する方法は、機械軸受を有するポンプ設計において特に有益である。軸受における比較的小さいギャップは、非常に僅かな流体の流れしかなく、したがって血栓のリスクがより高いことを意味する。より高い摩擦も、より高い血栓のリスクの一因となる可能性がある。したがって、ボールとカップとの間のギャップを増大させる能力は、小規模であっても、結果の大きな改善につながることができる。
【0078】
図14は、ポンプ200と同様の別のポンプ300を示している。ポンプ300は、2つの機械軸受212と214との間で固定されるインペラを含む。ポンプ300は、出口が入口から或る角度で延びるため、ポンプ200とは僅かに異なる。ポンプ300は、比較的より小さいステータアセンブリを含むポンプ200に比して比較的コンパクトな設計で構成されるが、同じ包括的な原理を、モータを制御するとともにインペラ位置を調整するために適用することができる。
【0079】
図15は、ポンプ400が非接触式軸受を有する軸流ポンプであることを除いて、ポンプ200及び300と同様の別のポンプ400の断面図である。ポンプ400は、入口401及び出口402を有するポンプハウジングを含む。インペラ411が、ハウジング内の血流に流れを加えるためにポンプチャンバ内に位置決めされる。インペラは、ステータアセンブリ405との相互作用によって駆動される磁気材料から全体的に形成される。
【0080】
インペラ411は、流体力及び受動的な磁力の組み合わせによってポンプチャンバにおいて安定される。磁気材料であるインペラ411は、ステータアセンブリ405内の磁気材料と相互作用し、軸方向のセンタリング力を提供する。面取り面を有するポンプリング452が、インペラの前端に位置決めされ、軸方向(左から右に)及び径方向(頁において上下に)流体力学的安定化力を生成する。永久磁石リング450が、N極がインペラのN極に面する向きでインペラの後縁に設けられる。この構成は、軸方向付勢力を生成し、インペラをポンプリング452に対して押す。磁石リング450は、径方向センタリング力も提供する。最後に、インペラは、深い動圧溝を含み、径方向の安定のために、ポンプチャンバの内側壁に対する動圧力を生成する。
【0081】
動作時に、インペラは、軸方向及び径方向に安定したままである。インペラの回転速度が変化すると又は他の力(例えば、自然な脈拍)の結果として、幾らかの軸方向移動が存在し得るが、概して、インペラはステータアセンブリの下でセンタリングされたままである。
【0082】
上述したFOC制御技法を使用して、インペラ411に対するステータアセンブリ405の引力を変更することができる。1つの実施形態では、ポンプ400は、ステータアセンブリ405の下でセンタリングされているときにインペラが偏心しているように構成されている。この例では、引力を増大させることは、軸方向移動に抵抗するための軸方向の剛性の増大になる。1つの実施形態では、引力は、インペラ411を軸方向に実際に移動させるように変更される。例えば、インペラは、ポンプリング452の近くに移動され、血液を、インペラ411とリング452の表面との間のギャップから絞り出すことができる。インペラは、リング452から離れるように移動し、間の血液ギャップを増大させることもできる。このように、インペラ位置制御技法は、ポンプ400の受動的な軸受構造では可能でなかったであろう能動的な位置制御の要素を加える。
【0083】
本発明の特定の実施形態の上記の記載は、説明及び記載の目的で提示されている。上記の記載は、網羅的であるか、又は、本発明を開示される正確な形態に限定する意図はなく、上記教示に照らして明らかに多くの変更形態及び変形形態が可能である。実施形態は、本発明の原理及びその実際の用途を最も良く説明するために選択及び記載されており、それによって、当業者が、本発明及び種々の変更形態を含む種々の実施形態を、意図される特定の用途に適したものとして最良に使用することを可能にする。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって規定されることが意図される。