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特許7332684硬質フォームを製造するための高速硬化エポキシ系および該フォームの複合材におけるまたは断熱材としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】硬質フォームを製造するための高速硬化エポキシ系および該フォームの複合材におけるまたは断熱材としての使用
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20230816BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230816BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CFC
C08L63/00 C
C08G59/40
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021509810
(86)(22)【出願日】2018-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2018101583
(87)【国際公開番号】W WO2020037502
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】メラニー ザイツ
(72)【発明者】
【氏名】リーイン ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フォーゲル
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/000125(WO,A1)
【文献】特表2004-511616(JP,A)
【文献】米国特許第04995545(US,A)
【文献】特表2019-525975(JP,A)
【文献】特表2015-511658(JP,A)
【文献】特表2014-509685(JP,A)
【文献】特表2004-526044(JP,A)
【文献】特開昭51-037161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60;67/20
C08G 59/00-59/72
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質エポキシフォームの製造方法であって、以下の工程:
a.エポキシ樹脂を発泡剤と混合するか、または、イオン液体硬化剤および任意で他の硬化剤を含む組成物Aを発泡剤と混合する工程、
b.前記エポキシ樹脂を組成物Aと混合して、前記エポキシ樹脂、前記発泡剤、前記イオン液体硬化剤および任意で前記他の硬化剤を含む組成物Bを形成する工程、および
c.組成物Bを発泡する工程であって、追加の加熱が必要とされない工程
を含み、前記イオン液体硬化剤が、ポリアミンと有機酸との反応により形成される室温イオン液体であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記発泡剤が、カプセル化された発泡剤であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記有機酸は、6未満のpKを有し、前記ポリアミンは、以下の式
【化1】
[式中、x、yおよびzは、2および/または3の整数であり、mおよびnは、1~3の整数であり、かつR、RおよびRは、互いに独立して、水素、1~12個のC原子を含む直鎖状または分枝鎖状アルキル基、ベンジル誘導体、1~12個のC原子および1~6個のO原子を含むヒドロキシルアルキル基またはエーテル基から選択される]を有し、2つの残基R、Rのそれぞれ、それぞれのRは、互いに異なってもよいことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記有機酸が、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸、2-エチルヘキサン酸、テトラフルオロホウ酸、チオシアン酸およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ポリアミンと前記有機酸との比が、0.1~1.8の間であることを特徴とする、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記ポリアミンが、N,N’-ビス-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’-トリス-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンまたはこれらの任意の組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
方法工程a.およびb.が、同時に実施されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
方法工程b.が、方法工程a.の後に実施されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記発泡剤、前記イオン液体硬化剤および任意で前記他の硬化剤を、1つの混合物として前記エポキシ樹脂に混合することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項10】
方法工程cを型内で実施することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
エポキシ樹脂および/または組成物Aが、添加剤、安定剤、染料、着色剤、繊維、顔料および/または充填剤を含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記添加剤または安定剤が、難燃剤、UV安定剤、UV吸収剤、フォーム改質剤、接着促進剤、チキソトロピー添加剤、レオロジー調整剤、乳化剤またはこれらのうちの少なくとも2種の混合物であることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
組成物Aが、前記他の硬化剤としてアミン硬化剤を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項14】
前記他の硬化剤が、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミン化合物、メルカプタンおよびそれらの組み合わせを含むリストから選択されることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
組成物Aが、硬化触媒をさらに含むことを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
エポキシ樹脂、カプセル化された発泡剤および組成物Aを含み、その際、前記組成物Aが、イオン液体硬化剤および任意で他の硬化剤を含むことを特徴とする、硬質エポキシフォームを製造するためのキット。
【請求項17】
前記キットが、a)前記エポキシ樹脂と前記カプセル化された発泡剤との混合物、およびb)前記組成物Aを含むことを特徴とする、請求項16記載のキット。
【請求項18】
前記キットが、a)前記エポキシ樹脂、およびb)前記カプセル化された発泡剤と前記組成物Aとの混合物を含むことを特徴とする、請求項16記載のキット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、硬質エポキシフォームを製造するための新規な方法に関する。さらに、本発明は、材料、特にこの方法を実施するために使用される新規の二成分エポキシ系に関する。
【0002】
この新規の方法は、エポキシ樹脂を、発泡剤、特にカプセル化された発泡剤と混合し、その後、イオン液体と混合することを特徴とする。驚くべきことに、発泡を含む反応は、室温でわずか2~3分後のような短時間の後に始まる。
【0003】
要約すると、本発明は、二成分の現場発泡構造の材料および硬質エポキシフォームの製造方法を含む。
【0004】
技術水準
文脈から何か異なることが明らかでない限り、「複合材系」、「複合材料」および「複合材」という用語は、以下では同義語として使用される。
【0005】
エポキシ系は、その優れた接着性、耐薬品性および耐熱性、非常に優れた機械的特性、および優れた電気絶縁特性でよく知られている。
【0006】
硬化エポキシ樹脂系は、接着剤、複合材およびコーティングから建設およびフローリング製品に至るまで、広範な用途が見出されている。
【0007】
それにより、接着剤は、概して二成分エポキシ系に基づいている。
【0008】
エポキシ複合材は、しばしば、炭素繊維およびガラス繊維の補強材で製造されている。コーティング用途の例は、金属表面の保護コーティングである。
【0009】
ほとんどの用途では、エポキシ樹脂系は、二成分で構成されており、該成分は、互いに化学的に反応することができ、硬質デュロプラスチック材料である硬化エポキシを混合した後に形成される。この系の第1の成分は、エポキシド基を含むエポキシ樹脂であり、第2の成分は、硬化剤であり、しばしばハードナーと呼ばれる。硬化剤には、アミン、カルボン酸またはメルカプタンなどの、これらのエポキシド基に反応性のある化合物が含まれる。詳細については、H. LeeおよびK. Neville “Handbook of Epoxy Resins” McGraw Hill, New York, 1967年, 第5-1~5-24を参照されたい。硬化または架橋方法は、エポキシ樹脂のエポキシド基と硬化剤の反応性基との化学反応である。硬化は、硬化剤をエポキシ樹脂に化学的に添加することにより、比較的低分子量のエポキシ樹脂を比較的高分子量またはさらに架橋された材料に変換する。さらに、硬化剤は、硬化したエポキシ材料の特性に寄与し得る。
【0010】
周囲温度下での高速硬化および/または低温硬化エポキシ系は、これらの上述のような多くの用途または水性組成物のような他の用途において非常に有用である。マンニッヒ塩基のような修飾アミン、第三級アミンまたはその塩、(アルキル)フェノールまたはルイス酸は、周囲温度下で硬化される場合、これらの用途で一般的に使用されている。高速周囲硬化エポキシ系の別の例には、促進されたポリメルカプタンが含まれている。
【0011】
エポキシ硬化系が使用され得る別の技術分野は、技術的に重要性が増しているエポキシフォームである。これらのフォームは、固体の浮力材料、スポーツ(スキー、テニスラグまたは軽量バイクなど)、自動車および建設などの用途で特に使用されている。これらの硬質フォームは、例えば、耐熱性に優れたPMIフォームよりも低い価格で、機械的安定性に対する要求が高い用途において特に有用であり得る。
【0012】
欧州特許第0291455号明細書には、120~180℃の温度で熱にさらされた後の高度の独立気泡構造(closed cellular structure)を有する硬化フォームについて記載されている。混合物は、エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の混合物、フェノールノボラック(硬化剤)、硬化促進剤、100℃を超える温度で窒素を分離する化学発泡剤、およびフォーム改質剤を含有する。
【0013】
中国特許出願公開第2017/11268551号明細書には、固体浮力材料としての用途のためのエポキシフォーム製品について記載されている。これは、液体エポキシ樹脂、反応性希釈剤、ポリアミン硬化剤、無水物硬化剤またはポリアミド硬化剤、第三級アミンまたはイミダゾールのような触媒、中空ガラスミクロスフェア、ポリマーミクロスフェア、およびカップリング剤のような他の成分を含む。系は、硬化され、型内で80~120℃の温度で発泡された。最終固体浮力材料は、0.26~0.32g/cmの密度を有する。
【0014】
米国特許出願公開第2006/0188726号明細書には、少なくとも1種の液体エポキシ樹脂、1種の固体エポキシ樹脂、1種の発泡剤、1種の硬化剤、および1種のマイカ含有充填剤からなる混合物から高度の膨張を示す、エポキシ樹脂に基づく膨張性熱硬化性組成物の設計が記載されている。組成物は、60℃~110℃の間、好ましくは70℃~90℃の温度に加熱され、次いで型に注入される必要がある。硬化した硬質フォームの密度は、0.47~0.64g/cmである。
【0015】
これらの開示のすべてには、外部熱の下で発泡されるエポキシ系が記載されていた。これにより、いくつかの欠点が生じる。特に、より大きな体積を加熱する場合、樹脂内の温度分布は、勾配を示す。この結果、多少不均一なフォームが生じる。また、発泡を確実に速くするために、非常に高い温度を使用することが必要となる可能性がある。これはさらに温度勾配を強化し、特に最高温度を示した領域において、フォーム構造の表面または内部領域に損傷を与える可能性もある。さらに、追加の加熱は、コストと時間がかかる。それ自体が断熱材である最終フォームピースを冷却するには、追加の時間が必要である。
【0016】
米国特許出願公開第2002/0187305号明細書には、自動車の空洞などの中空構造の現場発泡構造の補強用の発泡製品を製造するための方法、材料および製品について記載されている。この二成分系は、1つの成分がエポキシ樹脂、溶媒コアで満たされた熱可塑性シェルを有する発泡剤、およびチキソトロピー性充填剤で構成されている。第2の成分は、アミンおよびチキソトロピー性充填剤および任意で溶媒コアで満たされた熱可塑性シェルを含む粒子の混合物である。発熱反応は、組み合わせた場合に、エポキシ成分とアミン成分との間に生じる。一実施形態では、発熱反応によって生成された熱は、粒子の熱可塑性シェルを軟化し、粒子コア内の溶媒は、膨張して、発泡剤として機能し得る。したがって、組成物は、外部熱を加えることなく、少なくとも部分的に同時に硬化および発泡する。結果として生じる最終製品の密度および発泡時間は、開示されていない。それにもかかわらず、この方法は、プロセスの観点から、特にスループット効率が非常に不利である発泡に長い時間がかかる。
【0017】
米国特許出願公開第2005/0119372号明細書には、米国特許出願公開第2002/0187305号明細書の開示と同様の方法、材料、および製品が記載されている。ここでは、ピペラジンとアミドアミンとの混合物が、アミン成分として使用されている。
【0018】
完全に異なる技術分野では、国際公開第2018/000125号には、室温でエポキシ樹脂を硬化させるためのイオン液体の使用が開示されている。この新しい技術は、接着剤、コーティング、シーラント、複合材などの製造に使用されている。エポキシフォームの製造への影響については議論されておらず、いかなる種類の提案もされていない。この系は非常に反応性が高いので、イオン液体を含む組成物を発泡させると、より高い熱によって影響を受ける可能性のある硬質エポキシフォームが生じると考えられる。プロセスは、より高い温度のために、少し速くなると予想され得るが、フォームが不均一であるか、または不安定である可能性があることも予想され得る。
【0019】
課題
したがって、説明された先行技術の背景に対して、本発明によって対処される課題は、それによって、特にフォーム表面において、均質でかつ構造的損傷のないエポキシフォームを製造することが可能である新規な方法を提供することであった。
【0020】
本発明によって対処される特定の課題は、この方法を非常に迅速に、過度の冷却時間なしに実施することができる方法を提供することであった。
【0021】
より詳細には、本発明によって対処される課題は、発泡が外部熱を加えることなく開始および処理される、エポキシフォームを製造するための発泡手順を提供することであった。
【0022】
さらに、課題として示される個々の実施形態とは無関係に、新規の方法によって、例えば10分未満までの発泡の速いサイクル時間を達成することが可能である。
【0023】
さらに、このことは、課題として示される個々の実施形態とは無関係に、技術水準から知られているエポキシフォームと比較して、より低密度の関連するエポキシフォームを製造する新規な方法によっても可能である。
【0024】
さらに、本発明によって対処される追加の課題は、この方法で使用することができ、機械的に非常に安定した硬質エポキシフォームで発泡した後に生じるエポキシ樹脂ベースの系を提供することであった。
【0025】
本発明によって解決されるべき追加の課題は、配合部品が液体であるので、所定の場所に形成される硬質エポキシ材料を生成する方法を可能にすることであった。
【0026】
この時点で明確に議論されていないさらなる課題は、先行技術、詳細な説明、特許請求の範囲、または実施例から以下に明らかになり得る。
【0027】
解決策
この課題は、硬質エポキシフォームを製造するための新規な方法を提供することにより解決された。この新規な方法は、以下の工程:
a.エポキシ樹脂を、発泡剤と任意に混合する工程、
a2.イオン液体および任意で第2の硬化剤を含む組成物Aを、発泡剤と任意に混合する工程、
b.任意で発泡剤を含むエポキシ樹脂を、組成物Aと混合して組成物Bを形成する工程、および
c.エポキシ樹脂、発泡剤、イオン液体および任意選択の少なくとも1種の他の硬化剤を含む組成物Bを発泡する工程であって、追加の加熱が必要とされない工程
を含む。
【0028】
それにより、発泡剤がカプセル化された発泡剤であることが特に好ましい。
【0029】
a2ではなく方法工程aを実施することが特に好ましい。
【0030】
この新規な方法を実施するためのいくつかの実施形態がある。1つの好ましい変形では、方法工程a.およびb.は、同時に実施される。
【0031】
代替の実施形態では、方法工程b.は、方法工程a.の後に実施される。ここでは、発泡剤、イオン液体および任意選択の追加の硬化剤が1つの混合物としてエポキシ樹脂に混合される場合が特に好ましい。
【0032】
方法工程cに関して、この方法工程を型内で実施することは、特に非常に有用な実施形態である。
【0033】
イオン液体を含む組成物を発泡させる方法工程が、非常に迅速であり、10秒未満で、時には5秒よりも短い時間でさえも完了したことは、特に驚くべきことであった。これと比較して、米国特許出願公開第2002/0187305号明細書に記載されているように、イオン液体を含まない対応する組成物の発泡には、少なくとも25秒かかる。イオン液体を含有するエポキシ樹脂の発熱硬化がより速いはずであることを考慮すると、この追加のエネルギーの効果は、おそらく15~20秒までの発泡の限られた加速を説明するにすぎないだろう。したがって、適切なより短い発泡時間は、イオン液体が発泡剤または発泡方法自体に及ぼす追加の効果によってのみ説明することができる。
【0034】
また、非常に驚くべきことに、イオン液体は、本発明に対応する方法において、エポキシ樹脂硬化剤として、特に速硬化剤または冷硬化剤として非常に優れた性能を示すだけではないことが見出された。
【0035】
イオン液体が、ポリアルキレンポリアミン(以下、単にポリアミンと呼ぶ)と有機酸との反応により形成される、室温イオン液体(RTIL)である場合には、本発明による方法を実施することにより特に良好な結果を得ることができる。
【0036】
「室温イオン液体」(RTIL)塩には、本発明に対応する方法において利用されるように、イオンが不十分に配位された塩が含まれる。これにより、これらの化合物は、約15℃を超える温度、特に室温で安定した液体状態になる。
【0037】
本発明の非常に好ましい実施形態では、有機酸は、6未満のpKを有し、ポリアミンは、以下の式
【化1】
を有する。この式では、x、yおよびzは、好ましくは2および/または3の整数であり、mおよびnは、1~3の整数である。さらに好ましくは、R、RおよびRは、互いに独立して、水素、1~12個のC原子を含む直鎖状または分枝鎖状アルキル基、ベンジル誘導体、1~12個のC原子および1~6個のO原子を含むヒドロキシルアルキル基またはエーテル基から選択される。さらに、2つの残基R、R、Rは、それぞれ、互いに異なってもよく、このことは、例えば、2つのアミン原子の間の配列が、
【化2】
のような構造を有する可能性があることを意味することに留意されたい。
【0038】
特に好ましいポリアミンは、N,N’-ビス-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’-トリス-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンまたはこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0039】
特に好ましい実施形態では、ポリアミン化合物は、異なるポリアルキレンポリアミン化合物の混合物である。適切な異種ポリアルキレンポリアミン化合物の例には、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン(Am4)およびN,N,N’-トリス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン(Am5)またはAm4およびトリエチレンテトラミン(TETA)またはAm4およびテトラエチレンペンタミン(TEPA)の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
4個以上の窒素原子を含むポリアミンが概して複雑な混合物として利用可能であることは当業者によく知られている。これらの複合混合物では。それにより、これらの化合物の大部分が同じ数の窒素原子を含むことも典型的である。これらの混合物の副生物は、主に同族体と呼ばれる。一例として、トリエチレンテトラミン(TETA)の複合混合物は、直鎖状TETAだけでなく、トリス-アミノエチルアミン、N,N’-ビス-アミノエチルピペラジンおよび2-アミノエチルアミノエチルピペラジンも含有する。
【0041】
ポリアミンは、1回だけでなく2回またはさらに3回も部分的にプロトン化されて、マルチイオンとして混合物中に存在する可能性があることも当業者にはよく知られている。
【0042】
6未満のPKを含む対応する有機酸は、好ましくは、p-トルエンスルホン酸(p-TSA)、トリフルオロメタンスルホン酸(CFSOH)、フルオロスルホン酸(FSOH)、サリチル酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、2-エチルヘキサン酸(EHA)、テトラフルオロホウ酸(HBF)、チオシアン酸(HSCN)およびそれらの組み合わせから選択される。
【0043】
本開示の特定の実施形態では、反応生成物を形成する反応混合物中の有機酸に対するポリアミンのモル比は、0より大きく1.8まで、特に0.1から1.8まで、好ましくは0.3~1.3の間である。
【0044】
イオン液体塩は、特に、15℃を超える温度で安定な液体である液体塩、15℃を超えて約150℃までの温度で安定である液体塩;および場合により15℃を超えて約200℃までの温度で安定である液体塩を含む。本発明に関して、「液体」という用語は、塩が25℃の温度で約1000cps~約300,000cpsの粘度を有する状態を表す。それにより、「安定」という用語は、少なくとも15℃の温度で1ヶ月を超えて貯蔵安定である(液体状態を維持する)液体塩を表す。また、本発明の塩が、200mg KOH/g~1600mg KOH/gの間、特に好ましくは400mg KOH/g~900mg KOH/gの間のアミン価を含むことも好ましい。
【0045】
本発明の任意選択の実施形態では、特に一次組成物Aの形の最終組成物は、少なくとも1種の追加の硬化剤、特に、追加のアミンをさらに含有することができ、これらの追加のアミンは、上述のポリアミンとは異なり、イオン液体を形成するために添加される。また、これらの追加のアミンは、1個よりも多い窒素原子を有することもあるが、いかなる種類のイオン液体も形成しないだろう。
【0046】
さらに、これらのアミンは、第一級、第二級、または第三級アミンであってもよい。これらの化合物のすべての種類の第四級アミン塩または誘導体を添加することも可能であるだろう。このような追加のアミンの1つの具体的に好ましい例は、多官能性アミンであろう。本発明の意味における多官能性アミンは、3つ以上の活性アミン水素結合を含む化合物を表す。
【0047】
これらの追加のアミンの例には、上述のポリアルキレンポリアミンとは異なるポリアルキレンポリアミン、脂環式アミン、芳香族アミン、ポリ(アルキレンオキシド)ジアミンまたはトリアミン、マンニッヒ塩基誘導体、ポリアミド誘導体およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。具体例としての他の適切な追加のアミンには、第二級アミンとしてジエタノールアミン、モルホリンおよびPC-23、第三級アミンとしてトリス-ジメチルアミノメチルフェノール(Evonik IndustriesからAncamine K54として市販されている)、DBUおよびTEDAが含まれるが、これらに限定されない。さらに、硬化性エポキシベースの組成物、特に組成物Aは、これらのアミンまたはアミン誘導体の組み合わせを含み得る。追加のアミンは、特に共硬化剤としての機能を提供する。さらに、それらは強化剤、希釈剤および/または促進剤として機能する。さらに適切な追加のアミンには、アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン(IPDA)、4,4’-メチレンビス-(シクロヘキシルアミン)PACM、水素化メタキシリレンジアミン(しばしば1,3-BACと呼ぶ)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(DMDC)、ポリエーテルアミンおよびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。この追加のアミンは、例えば、組成物A中に0~60重量%の間の範囲、特に10~40重量%の間の範囲で存在し得る。
【0048】
適切な追加のアミンのさらなる任意選択の例のさらに一層詳細なリストは、国際公開第2018/000125号に見出され得る。
【0049】
上述の追加のアミンのあまり好ましくない代替物として、メルカプタン、2種以上のメルカプタンの混合物、またはメルカプタンと上述の追加のアミンとの混合物を、エポキシ樹脂、特に組成物Aに添加することも可能であろう。
【0050】
イオン液体と追加の硬化剤、特に脂肪族アミンのような追加のアミンとの混合物を使用することにより、2K系のポットライフを調整することが特に可能である。
【0051】
エポキシ樹脂および/または組成物Aが、添加剤、安定剤、染料、着色剤、繊維、顔料および/または充填剤を含有することがさらに好ましい。これらの添加剤または安定剤の特に好ましい例は、難燃剤、UV安定剤、UV吸収剤、フォーム改質剤、接着促進剤、チキソトロピー添加剤、レオロジー調整剤、乳化剤またはこれらのうちの少なくとも2種の混合物である。当業者は、どの添加剤および/または安定剤、特に硬質フォームの製造またはエポキシ樹脂の技術分野で知られている添加剤および/または安定剤が選択され得るか、そして本発明に従って使用される組成物に対して最も適しているかを知っているか、または容易に見分けることができる。
【0052】
さらに、組成物Aが、特に好ましくは6未満のpKを有する有機酸である、硬化触媒をさらに含むことが好ましい。この酸は、イオン液体を形成するために添加される上述の有機酸であり得るが、それと同一であってはならない。残留酸は、特に、余剰の有機酸がイオン液体の形成に使用された場合、追加の硬化触媒として特に好ましい。
【0053】
エポキシ樹脂は、脂肪族、脂環式、芳香族ベースのエポキシ樹脂またはそれらの混合物であり得る。特に好ましいエポキシ樹脂は、1分子あたり平均して2つ以上のエポキシド基を含む。エポキシド基は、グリシジルエーテル基またはグリシジルエステル基として存在し得る。エポキシ樹脂は、液体または固体の状態で使用され得る。
【0054】
エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、またはビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテル(A/Fという表示は、本明細書ではアセトンとホルムアルデヒドとの混合物を指し、その製造において反応物として使用される)から入手可能であるが、これらに限定されない。市販の例は、Araldite GY 250、Araldite GY 282(双方ともHuntsmanにより供給)またはD.E.R.331、D.E.R.330(双方ともDow Chemicalsにより供給)またはEpikote 828(Hexionにより供給)の商品名で供給されている。他の例は、フェノールノボラックまたはクレゾールノボラックのジグリシジルエーテルである。かかるエポキシ樹脂は、HuntsmanからEPNまたはECNおよびTactix R556の商品名で、またはDow ChemicalsからD.E.N.製品シリーズとして市販されている。さらなる例は、脂肪族または脂環式ベースのエポキシ樹脂である。かかるエポキシ樹脂は、Evonik IndustriesからEpodil 741、Epodil 748、Epodil 777の商品名で市販されている。
【0055】
発泡剤に関して、当業者は、潜在的な有用な代替物の幅広い選択肢を有する。いかなる形でも本発明を限定するものではないが、特に好適な発泡剤について示される例には、tert-ブタノール、n-ヘプタン、MTBE、メチルエチルケトン、1~6個の炭素原子を有するアルコール、水、メチラールおよび/または尿素が含まれる。
【0056】
本発明に関して、カプセル化された発泡剤を使用することが特に好ましい。これらのカプセル化された発泡剤は、コアシェル構造を有する熱膨張性ミクロスフェアである。それにより、シェルは、好ましくは、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル変性ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、スチレン/MMAコポリマーまたは同等の熱可塑性プラスチックなどのアクリル型樹脂からなる熱可塑性シェルである。カプセル化された発泡剤のコアは、低分子量の炭化水素などの溶媒からなる。有用な炭化水素は、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n-ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-ヘキサン、ヘプタン、および石油エーテルである。さらなる例は、クロロフルオロカーボン、テトラアルキルシラン、例えば、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、およびトリメチルn-プロピルシランである。コア内の液体の他の例は、上記の発泡剤である。これらの例の中で特に好ましいのは、イソブタン、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、石油エーテル、およびそれらの混合物である。
【0057】
以下に説明するように、組成物Bまたはキット全体に関して、以下のより詳細な組成が好ましい:
- エポキシ樹脂の量は、好ましくは20~80重量%の間、特に好ましくは30~70重量%の間、さらにより好ましくは40~60重量%の間である。
- イオン液体の量は、好ましくは5~60重量%の間、特に好ましくは10~50重量%の間、さらにより好ましくは15~45重量%の間である。
- 発泡剤の量は、好ましくは0.1~40重量%の間、特に好ましくは1~30重量%の間、さらにより好ましくは5~15重量%の間である。
- 任意選択のさらなるアミンの量は、好ましくは30重量%まで、特に好ましくは1~20重量%の間、さらにより好ましくは5~15重量%の間である。
- 任意選択の添加剤および安定剤の総量は、好ましくは20重量%まで、特に好ましくは0.1~15重量%の間、さらにより好ましくは1~10重量%の間である。
【0058】
それにより、組成物Bがこれらの成分に限定されないことに留意されたい。また、共結合剤のような他の物質も存在し得る。そうとは言え、これは好ましくないので、上記以外の成分をより多量に添加することはあまり好ましくない。
【0059】
イオン液体とエポキシ樹脂との反応により発生する熱によって、カプセル化された発泡剤のシェルが軟化し、それにより溶剤コアが膨張し得る。
【0060】
カプセル化された発泡剤は、例えば、Expancel 461DU20、461DU40、093 DU120、920DU40より市販され、すべてAkzo Nobel productsによって供給されているが、これらに限定されない。他の市販例は、Matsumoto productsによって供給されている、F-35D、F-36D、F-190DおよびF-78Dである。
【0061】
カプセル化された発泡剤は、特定のコアシェル材料として、またはこれらのミクロスフェアのいくつかの混合物として提供され得る。
【0062】
組成物B中のカプセル化された発泡剤の量は、総重量の40重量%までとすることができ、好ましくは0.1重量%~40重量%の間である。総重量の5~30%を使用することが特に好ましく、総重量の10~20%を使用することが絶対的に好ましい。
【0063】
方法工程c)に関して、発泡、すなわち、以下の驚くべき態様も関連している:技術水準と比較して、この組成物は、いかなるアクリル化学物質も添加することなく、迅速に硬化し、発泡し得る。これは室温でかつ外部熱を供給することなく十分に作用する。完全な硬化時間は、組成物に依存し、原材料の混合から発泡/硬化プロセスの終了まで2~7分の間かかる。したがって、これにより発泡および硬化反応の効率が改善され、エネルギーが節約され得る。
【0064】
2Kプロセスで原材料を混合した後、全体の温度が150~200℃の間に達するまで、エポキシと超高速硬化剤との反応により短時間で熱が放出される。したがって、この系は、室温で、通常のポリアミン、脂環式アミン、脂肪族アミン、ポリアミドおよびアミドアミンを用いて膨張性エポキシ系より高い膨張比および低い密度を達成する(以下の比較例も参照のこと)。これらのアミンの大部分は、同じ反応挙動を示さず、示すにしても、それらは高温でしか挙動を示さない。
【0065】
公知の系と比較して、最終的な硬化および発泡製品には臭気がない。ビスフェノールAエポキシ樹脂などのエポキシ樹脂とイオン液体などの超高速硬化剤との混合物は、触媒なしで非常に速く硬化し得る。記載されている系の触媒のほとんどは、第三級アミンまたは非常に強い臭気を有するフェノールベースの第三級アミンである。
【0066】
反応が発熱であるため、反応が室温で起こるという事実により、追加の外部熱は必要とされない。その結果、色の変化は認められない。これは、材料が反応中に分解しないことを意味し、これは、文献に記載されている多くの公知のエポキシフォームの反応に対する明らかな利点である。
【0067】
本発明の方法は、特に、非常に短いサイクル時間で実施することができ、したがって、大量生産において非常に良好な結果で使用され得るという大きな利点も有する。
【0068】
型内での発泡によって型内でフォームを製造することが非常に好ましい。発泡工程中に型を使用することにより、同時に製品がその最終形状を得ることが有利である。
【0069】
さらに、冷却マントルを備えた型を使用して、最終発泡加工ピースを短時間で冷却することが可能であり、これにより、サイクル時間もさらに短縮される。
【0070】
前述の方法と同様に、硬質エポキシフォームを製造するためのキットも本発明の一部である。このキットは、本発明によれば、エポキシ樹脂、カプセル化された発泡剤、および成分Aを含み、その際、成分Aは、イオン液体および任意選択の追加の硬化剤を含む。それにより、これらの単一の成分は、上記の説明に対応する。
【0071】
このキットの場合、これがa)混合物およびb)成分Aからなり、その際、混合物が、エポキシ樹脂およびカプセル化された発泡剤を含むことが特に好ましい。
【0072】
本発明の代替の、また好ましい実施形態では、キットは、a)エポキシ樹脂、およびb)カプセル化された発泡剤と成分Aとの混合物を含む。
【0073】
最後になるが、フォームがイオン液体を含有することを特徴とする、新規な硬質エポキシフォームも、本発明の一部である。
【0074】
20~550kg/m、好ましくは25~220kg/m、より好ましくは50~110kg/mの密度範囲内の対応する硬質エポキシフォームが特に好ましい。
【0075】
本発明は、特に本発明によるフォームの使用に関して、自動車産業、造船業または航空宇宙産業のための複合部品の製造に、断熱または音響絶縁材料に、建設に、そしてスキーまたはテニス用ラグスのようなスポーツ用品の製造に利用され得る。示されたこれらの例は、本発明を何ら限定するものではない。
【0076】
実施例
本発明の文脈において、特に特許請求の範囲、詳細な説明、および以下の例に関して、ガラス転移温度を、示差走査熱量測定(DSC)を介して測定した。本発明の文脈において、Perkin Elmer装置を使用して、ガラス転移温度T(DSC-8000、Perkin Elmer)を測定した。
【0077】
詳細なDSC手順の説明:
試料を計量し(±1.0mgの精度)、装置を試験前に5分間窒素でパージした。試料を-40℃の温度で2分間保持し、その後、20℃/分の加熱速度で-40℃から200℃に加熱した。次の段階では、試料を200℃/分の冷却速度で再び200℃から-40℃に冷却し、-40℃でさらに2分間保持する。次に、これを20℃/分の加熱速度で-40℃から200℃に再び加熱した。最終Tを、この第2の加熱サイクルから測定した。その後、T測定の結果を第2のDSCスキャンで確認した。これらの試験条件は、試験規格GB/T 19466.2-2004“plastics DSC determination of glass transition temperature”に準拠している。
【0078】
実施例1
以下の実施例は、本発明を説明するのに役立つ。Ancamine 2914UFは、Evonik製の超高速イオン液体硬化剤である。また、脂肪族および脂環式アミンを、研究に使用する(第1表を参照のこと)。
【0079】
方法の説明1:
第1の工程は、エポキシ樹脂と発泡剤(カプセル化された発泡剤)とを室温でスピードミキサー(800rpm)を用いて1分間混合し、部品Aを形成することである。第2の方法工程は、部品B、アミン硬化成分を添加し、これを室温でスピードミキサー(800rpm)を用いて30秒間混合することである。発泡および硬化反応は、室温で混合した後に始まる。
【0080】
実施例1.1:
25gのエポキシ樹脂および2.5gの発泡剤(ミクロスフェアF35D)からなる部品Aを、記載された手順に従って、12.5gのアミン硬化成分からなる部品Bとスピードミキサーを用いて室温で混合する。発泡および硬化反応は、220秒後に始まり、321秒後に終了する。発熱反応の温度は、190℃である。2K系は、0.095g/cmの密度のフォームを生成する。
【0081】
比較例1.2~1.6については、方法は、実施例1.1(方法の説明1)について記載したものと同じである。この反応に関する組成および観察について相違点を第1表に示す。
【表1】
【0082】
第1表のデータは、イオン液体Ancamine 2914UFに基づく実施例1.1が、先行技術に開示された他のアミン(比較例1.2~1.6)よりもはるかに速く発泡/硬化を開始することを示す。硬質フォームの密度は、他のアミンよりもはるかに低い0.095g/mである。
【0083】
実施例2
実施例2.7~2.9については、フォームを、実施例1.1について記載された方法に従って生成した。
【表2】
【0084】
第2表に示された結果は、さまざまな供給者からの熱膨張性ミクロスフェアを、イオン液体配合物用の発泡剤として使用できることを示す。最終発泡製品の発泡時間および密度は、熱膨張性ミクロスフェア発泡剤のグレードによって影響を受けた。実施例2.7~2.9については、方法は、実施例1.1(方法の説明1)と同じである。
【0085】
実施例3
実施例3.10~3.12について、第1の工程は、26.47gのエポキシ樹脂と0.26gの発泡剤(カプセル化された発泡剤、ミクロスフェアF35D)とを室温でスピードミキサーを用いて混合することである。第2の方法工程では、13.27gのアミン硬化成分のイオン液体を、実施例1について記載された方法に従って組成物に添加する。発泡および硬化反応は、室温で混合した後に始まる。正確な組成および結果を第3表に示す。
【表3】
【0086】
第3表では、発泡剤濃度が最終発泡製品の密度に及ぼす影響を見ることができる。予想通り、密度は、濃度の増加に伴って減少する。一方、発泡剤濃度は、発泡時間またはフォーム温度に対しては観察可能な影響はなかった。
【0087】
実施例4
方法の説明2:
実施例4.13について、第1の工程は、25gのエポキシ樹脂と2.5gのカプセル化された発泡剤とを室温でスピードミキサー(800rpm;1分間混合)を用いて混合することである。混合物および硬化剤を、それぞれ10℃、25℃または40℃の温度で少なくとも1時間貯蔵した。第2の方法工程は、12.5gのイオン液体を、アミン硬化成分として組成物に添加することである。その後、組成物を、スピードミキサー(800rpm)を用いて室温で30秒間混合した。第4表で見られるように、発泡および硬化反応は、さまざまな温度で混合した後に始まる。
【表4】
【0088】
第4表のこれらの結果は、配合物を、非常に広い範囲の周囲温度での発泡に使用できることを示す。したがって、この系は、さまざまな条件または気候下で使用し易い。これは、わずか10℃の低温でも発泡させることができる。温度が低いと、発泡および硬化時間が長くなるだけである。
【0089】
実施例5
方法の説明3:
実施例5.15~5.19について、第1の工程は、25gのエポキシ樹脂と2.5gのカプセル化された発泡剤とを室温で1分間、スピードミキサー(800rpm)を用いて混合することである。得られた部品Aの混合物を、いくつかの試料に分けた。さまざまな試料を、23℃で1日、7日、14日、21日および30日間貯蔵した。さまざまな期間にわたって貯蔵した後、イオン液体を、部品Bとして試料に添加した(第2の方法工程)。その後、組成物を、スピードミキサー(800rpm)を用いて室温で30秒間混合した。発泡および硬化反応は、室温で混合した後に始まる。結果を第5表に示す。
【表5】
【0090】
23℃で1~30日間貯蔵した後、発泡密度、発泡時間および発泡中の温度の変化は、認められなかった。一部の試料では、貯蔵中に相分離が観察され得る。この相分離は、発泡に大きな影響を与えなかった。
【0091】
実施例6
方法の説明4:
12.5gのイオン液体硬化剤を、室温でスピードミキサー(800rpmで1分間)を用いて、2.5gのカプセル化発泡剤と混合して、部品Bを形成した。混合物のさまざまな試料を、23℃で1日、7日、14日、21日または30日間貯蔵した。エポキシ樹脂を貯蔵した後、部品Aを単一の試料に添加した。混合自体は、スピードミキサー(800rpmで30秒間)を用いて室温で実施した。発泡および硬化反応は、室温で混合した後に始まる。結果を第6表に示す。
【表6】
【0092】
23℃で1~30日間の貯蔵時間で貯蔵した後、発泡密度、発泡時間および発泡中の温度の変化は、認められなかった。一部の試料では、貯蔵中に相分離が観察されたが、有意な影響はなかった。
【0093】
実施例7.1
方法の説明5:
実施例1.1の試料を、対照試料として暗いフラスコに貯蔵する。実施例1.1の別の試料を、数日間太陽光にさらした。
【表7】
【0094】
結果は、時間とともに分解することなく、色が安定していることを示す。
【0095】
比較例7.2
実施例1.1と同様に、手順1に従って、一般的な硬化剤TETAを用いて硬質フォームを製造した。発泡および硬化反応の後、実施例7.2の試料を、対照試料として暗いフラスコに貯蔵した。実施例7.2の別の試料を、数日間太陽光にさらした。結果は、フォームが時間とともに黄変することを示す(第7.2表を参照のこと)。
【表8】
【0096】
実施例8.1
方法の説明6:
本発明に従って製造した硬質フォーム製品は、室温に冷却した後の発泡後に臭気を示さない。フォームの試料における潜在的臭気を、実施例1.1、実施例3.10および実施例3.12に従って、発泡および冷却の直後、ならびにこれらの試料を密閉ガラス瓶に2日以上貯蔵した後に5人の異なる人によって調査した。貯蔵直後と同様に、いずれの試験者も試料に臭気を認めなかった。
【0097】
比較例8.2.
実施例1.1と同様に、手順1に従って、一般的な硬化剤TETAを用いて硬質フォームを製造した。また、ここでは、方法6に従って臭気を試験した。これらの試料を、発泡および冷却した直後ならびに貯蔵した後に、顕著な臭気が認められた。したがって、貯蔵後の臭気は、ほとんど低減されなかった。
【表9】
【0098】
実施例9.1
実施例3.11~3.12と同様に、手順1に従って、イオン液体硬化剤を用いて硬質フォームを製造した。正確な組成および結果を、第9.1表に示す。第9.1表の実施例の圧縮強度を、試験方法ISO844に従って試験した。
【表10】
【0099】
組成物中のミクロスフェア(カプセル化された発泡剤)の量が、硬質フォームの圧縮強度を決定する。より多くのミクロスフェアを使用すると、密度だけでなく、硬質フォームの圧縮強度も低くなる。したがって、組成物は、適切な最終用途の必要性に応じて調整されなければならない。