(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】フォトニック結晶ファイバのプリフォーム、その製造方法及びフォトニック結晶ファイバ
(51)【国際特許分類】
H01S 3/067 20060101AFI20230816BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20230816BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20230816BHJP
G02B 6/032 20060101ALI20230816BHJP
C03B 37/012 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
H01S3/067
G02B6/02 451
G02B6/036
G02B6/032 Z
G02B6/02 376B
C03B37/012 B
(21)【出願番号】P 2021551928
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 CN2020092518
(87)【国際公開番号】W WO2020238933
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】201910462027.5
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515116272
【氏名又は名称】長飛光繊光纜股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】孟 悦
(72)【発明者】
【氏名】岳 天勇
(72)【発明者】
【氏名】徐 峰
(72)【発明者】
【氏名】何 亮
(72)【発明者】
【氏名】曹 ▲ベイ▼▲ベイ▼
(72)【発明者】
【氏名】汪 松
(72)【発明者】
【氏名】呉 正超
(72)【発明者】
【氏名】童 維軍
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-116193(JP,A)
【文献】特開2011-107687(JP,A)
【文献】特開2009-211066(JP,A)
【文献】特開2006-162869(JP,A)
【文献】特開2007-335435(JP,A)
【文献】特表2007-522497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0079855(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102213792(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/02
H01S 3/04 - 3/0959
H01S 3/10 - 3/102
H01S 3/105- 3/131
H01S 3/136- 3/213
H01S 3/23 - 4/00
C03B 37/00 -37/16
G02B 6/02 - 6/10
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトニック結晶ファイバのプリフォームであって、コアを形成するためのガラスフィラメントと、内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントと、内側被覆層のガラスケーシングと、外側被覆層のガラスケーシングと、を含み、
前記コアを形成するためのガラスフィラメントは、相対屈折率差Δ1が0.08%~0.09%であり、直径が1~4mmであり、
前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントは、外径が前記コアを形成するためのガラスフィラメントと同じであり、被覆層と、相対屈折率差Δ2が-0.14%~-0.82%であるコア層と、を含み、前記被覆層は、材料が前記内側被覆層のガラスケーシングの材料と同じであり、f=d
F/d
1(ここで、d
Fは、前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントの被覆層内径を示し、d
1は、前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントの被覆層外径を示す)で算出される前記フッ素添加ユニットのデューティ比fは、0.085~0.09であり、
前記内側被覆層のガラスケーシングは、厚さが2mm~20mmであり、相対屈折率差Δ3が0.08%~0.1%であり、
前記外側被覆層のガラスケーシングは、厚さが30mm~90mmであり、純シリカガラス管であり、
前記内側被覆層のガラスケーシングと前記外側被覆層のガラスケーシングとは、同心のネスト構造であり、前記コアを形成するためのガラスフィラメントは、前記内側被覆層のガラスケーシングの中心にあり、前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントは、前記コアを形成するためのガラスフィラメントと前記内側被覆層のガラスケーシングとの間に位置する、
ことを特徴とするフォトニック結晶ファイバのプリフォーム。
【請求項2】
前記内側被覆層のガラスケーシングは、内径が22~37.5mmであり、外径が45~50mmであり、その内径は、前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントの外径と層数との間に、D
内1=2n
1*d
1、n
1≧4かつ1mm≦d
1≦4mm(ここで、D
内1は、前記内側被覆層のガラスケーシングの内径を示し、n
1は、前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントの層数を示し、d
1は、前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントの外径を示す)の関係を有し、
前記外側被覆層のガラスケーシングは、内径が50~60mmであり、外径が80~150mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶ファイバのプリフォーム。
【請求項3】
前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントは、アレイ中心に位置するコアガラスフィラメントの周囲にアレイ状に密に配列され、前記コアを形成するためのガラスフィラメントと前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントとの数の比は、0.5~3:12であ
る、
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶ファイバのプリフォーム。
【請求項4】
前記コアを形成するためのガラスフィラメントと前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントとの数の比は、1:12、7:120、7:162、19:84、19:120、又は19:162である、
ことを特徴とする請求項3に記載のフォトニック結晶ファイバのプリフォーム。
【請求項5】
前記外側被覆層のガラスケーシングの内壁は、低屈折率層を有し、前記低屈折率層は、密に配列されている毛細管ガラス管又は低屈折率ガラス材料層であり、前記毛細管ガラス管は、内径が2~4μmであり、外径が2.5~5mmであり、その両端が封口され、前記低屈折率層は、屈折率又は等価屈折率が1.22~1.25である、
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶ファイバのプリフォーム。
【請求項6】
以下のステップを含
む、
(1)前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントと前記コアを形成するためのガラスフィラメントとを、金型を用いて正六角形状に所定本数積み重ねてガラスフィラメント束に束ね、前記コアを形成するためのガラスフィラメントを中心に位置させる、
(2)ステップ(1)で得られた前記ガラスフィラメント束を、内側ケーシングと外側ケーシングとの同心ネスト構造にする
、
ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載のフォトニック結晶ファイバのプリフォームの製造方法。
【請求項7】
前記コアを形成するためのガラスフィラメントは、コア層の相対屈折率差Δ1が0.08%~0.1%となるように、ライナ内に希土類添加コア層を堆積させ、前記ライナを除去して線引きして製造される、
ことを特徴とする請求項6に記載のフォトニック結晶ファイバのプリフォームの製造方法。
【請求項8】
前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントは、予め設定された厚さまでライナ内に内側被覆層材料を堆積させ、次に、フッ素添加ガラス層の相対屈折率差Δ2が-0.14%~-0.82%となるように前記フッ素添加ガラス層を堆積し、前記ライナを除去して線引きして製造される、
ことを特徴とする請求項6に記載のフォトニック結晶ファイバのプリフォームの製造方法。
【請求項9】
前記外側被覆層のガラスケーシングの内壁が、密に配列されている毛細管ガラス管を有し、
前記毛細管ガラス管は、純シリカケーシングを所定の外径の毛細管に等比で引き、前記毛細管の両端を炎で封口して製造される、
又は、
前記外側被覆層のガラスケーシングの内壁が、低屈折率ガラス材料層を有し、
前記外側被覆層は、純シリカライナ内にフッ素添加層を堆積して製造される、
ことを特徴とする請求項
6に記載のフォトニック結晶ファイバのプリフォームの製造方法。
【請求項10】
フォトニック結晶ファイバであって、コアと、内側被覆層と、外側被覆層と、を含み、
前記コアは、相対屈折率差Δ1が0.08%~0.1%であり、直径が40~50μmであり、
前記内側被覆層は、直径が200~400μmであり、相対屈折率差Δ3が0.08%~0.1%であるバックグラウンド層と、前記バックグラウンド層内で前記コアを密に取り囲むようにアレイ状に配列され、相対屈折率差Δ2が-0.14%~-0.82%であるフッ素添加ユニットと、を含み、
前記外側被覆層は、直径が800μm~1000μmである、
ことを特徴とするフォトニック結晶ファイバ。
【請求項11】
前記アレイ状の前記フッ素添加ユニットは、前記内側被覆層のうち、前記コアまでの厚さが前記内側被覆層の厚さの1/5から1/2である領域に分布し、
前記フッ素添加ユニットは、直径が1~1.4μmであり、
前記フッ素添加ユニットの中心間の距離は、11.5~16μmである、
ことを特徴とする請求項
10に記載のフォトニック結晶ファイバ。
【請求項12】
前記コアは、イッテルビウム、アルミニウム、リンを共ドープしたシリカ層であり、
前記外側被覆層は、純シリカ層と低屈折率層とを含み、前記低屈折率層は、前記外側被覆層の最内面に位置し、その屈折率又は等価屈折率が1.22~1.25であり、周方向に配列された空気孔又は低屈折率ガラス材料層で構成される、
ことを特徴とする請求項
10に記載のフォトニック結晶ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学及びレーザ光電子分野に属し、より具体的には、フォトニック結晶ファイバ、そのプリフォーム及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のファイバレーザの急激な発展に伴い、レーザ出力をいかに向上させるかが研究の焦点の一つであり、非線形効果と熱損傷は、光出力のさらなる突破を実現するボトルネックである。この2つの問題を解決する鍵となる道の1つは、光ファイバのコア直径を大きくすることであるが、被覆層の吸収係数と変換効率を犠牲にしないと同時に、ビーム品質を大幅に劣化させることが多く、そこでイッテルビウムを添加したフォトニック結晶ファイバが生まれる。伝統的な意味でのフォトニック結晶ファイバの被覆層は、周期的に配列された空気孔で構成されることが多い。
【0003】
しかしながら、これら周期的に配列された空気孔は、2つの問題をもたらす可能性がある。第1、被覆層の屈折率が低下し、コアと被覆層の屈折率差が大きすぎるという弊害がある。第2、空気孔を形成する毛細管は、線引きの際に、陥没しやすく、歩留まりが低く、かつビームの出力品質が不良となる。同時に空気の熱伝導性能が一般的であり、高出力の使用シーンでは、熱管理の難易度が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の上述した欠陥又は改善の要求に対して、本発明は、フォトニック結晶ファイバ、そのプリフォーム、製造方法及び使用を提供し、その目的として、固体の低屈折率の周期的ユニットによって空気孔を代替して高品質、屈折率差調整可能な、高歩留まりのフォトニック結晶ファイバを形成し、その高出力、単一キャビティの低損失、ハイビーム品質のエネルギー伝送により、従来技術では品質制御が困難であること、コアと被覆層の屈折率差が大きすぎること、高出力での熱管理が難しいという技術的問題を解決すること、にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の1つの態様によれば、フォトニック結晶ファイバのプリフォームを提供し、コアを形成するためのガラスフィラメントと、内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントと、内側被覆層のガラスケーシングと、外側被覆層のガラスケーシングと、を含む。前記コアを形成するためのガラスフィラメントは、相対屈折率差Δ1が0.08%~0.09%であり、直径が1~4mmである。内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントは、外径が前記コアを形成するためのガラスフィラメントと同じであり、被覆層と、相対屈折率差Δ2が-0.14%~-0.82%であるコア層と、を含み、前記被覆層は、材料が前記内側被覆層のケーシングの材料と同じであり、f=dF/d1(ここで、dFは、内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントの被覆層内径を示し、d1は、内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントの被覆層外径を示す)で算出される前記フッ素添加ユニットのデューティ比fは、0.085~0.09である。前記内側被覆層のガラスケーシングは、厚さが2mm~20mmであり、相対屈折率差Δ3が0.08%~0.1%である。前記外側被覆層のガラスケーシングは、厚さが30mm~90mmであり、純シリカガラス管である。前記内側被覆層のガラスケーシングと外側被覆層のガラスケーシングとは、同心のネスト構造であり、前記コアを形成するためのガラスフィラメントは、内側被覆層のガラスケーシングの中心にあり、前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントは、前記コアを形成するためのガラスフィラメントと前記内側被覆層ケーシングとの間に位置する。
【0006】
好ましくは、前記フォトニック結晶ファイバのプリフォームにおいて、前記内側被覆層のガラスケーシングは、内径が22~37.5mmであり、外径が45~50mmであり、その内径は、内側被覆層のフッ素添加ユニットのガラスフィラメントの外径と層数との間に、D内1=2n1*d1、n1≧4かつ1mm≦d1≦4mm(ここで、D内1は、前記内側被覆層のガラスケーシングの内径を示し、n1は、前記内側被覆層のフッ素添加ユニットのガラスフィラメントの層数を示し、d1は、内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントの外径を示す)の関係を有する。好ましくは、前記外側被覆層のガラスケーシングは、内径が50~60mmであり、外径が80~150mmである。
【0007】
好ましくは、前記フォトニック結晶ファイバのプリフォームにおいて、前記フッ素添加ユニットのガラスフィラメントは、アレイ中心に位置するコアガラスフィラメントの周囲にアレイ状に密に配列され、前記コアを形成するためのガラスフィラメントと前記フッ素添加ユニットとを形成するためのガラスフィラメントの数の比は、0.5~3:12であり、好ましくは1:12、7:120、7:162、19:84、19:120、又は19:162である。
【0008】
好ましくは、前記フォトニック結晶ファイバのプリフォームにおいて、前記外側被覆層のガラスケーシングの内壁は、低屈折率層を有し、前記低屈折率層は、密に配列されている毛細管ガラス管又は低屈折率ガラス材料層であり、前記毛細管ガラス管は、内径が2~4μmであり、外径が2.5~5mmであり、その両端が封口され、前記低屈折率層は、屈折率又は等価屈折率が1.22~1.25である。
【0009】
本発明の別の態様によれば、前記フォトニック結晶ファイバのプリフォームの製造方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)フッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントとコアを形成するためのガラスフィラメントとを、金型を用いて正六角形状に所定本数積み重ねてガラスフィラメント束に束ね、前記コアを形成するためのガラスフィラメントを中心に位置させる。
(2)ステップ(1)で得られたガラスフィラメント束を、内側ケーシングと外側ケーシングとの同心ネスト構造にする。
好ましくは、前記コアを形成するためのガラスフィラメントは、コア層の相対屈折率差Δ1が0.08%~0.1%となるように、ライナ内に希土類添加コア層を堆積させ、ライナを除去して線引きして製造される。
前記フッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントは、予め設定された厚さまでライナ内に内側被覆層材料を堆積させ、次に、フッ素添加ガラス層の相対屈折率差Δ2が-0.14%~-0.82%となるようにフッ素添加ガラス層を堆積し、ライナを除去して線引きして製造される。
【0010】
好ましくは、前記フォトニック結晶ファイバのプリフォームの製造方法において、前記外側被覆層のガラスケーシングの内壁が、密に配列されている毛細管ガラス管を有する場合、前記毛細管ガラス管は、純シリカケーシングを所定の外径の毛細管に等比で引き、前記毛細管の両端を炎で封口して製造される。前記外側被覆層のガラスケーシングの内壁が、低屈折率ガラス材料層を有する場合、前記外側被覆層は、純シリカライナ内にフッ素添加層を堆積して製造される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、フォトニック結晶ファイバを提供し、コアと、内側被覆層と、外側被覆層と、を含む。前記コアは、相対屈折率差Δ1が0.08%~0.1%であり、直径が40~50μmである。前記内側被覆層は、直径が200~400μmであり、相対屈折率差Δ3が0.08%~0.1%であるバックグラウンド層と、バックグラウンド層内でコアを密に取り囲むようにアレイ状に配列され、相対屈折率差Δ2が-0.14%~-0.82%であるフッ素添加ユニットと、を含む。前記外側被覆層は、直径が800μm~1000μmである。
【0012】
好ましくは、前記フォトニック結晶ファイバにおいて、前記フッ素添加ユニットは、前記内側被覆層のうち、コアまでの厚さが内側被覆層の厚さの1/5から1/2である領域に分布し、その直径が1~1.4μmであり、前記フッ素添加ユニットの中心間の距離は、11.5~16μmである。
【0013】
好ましくは、前記フォトニック結晶ファイバにおいて、前記コアは、イッテルビウム、アルミニウム、リンを共ドープしたシリカ層である。好ましくは、前記外側被覆層は、純シリカ層と低屈折率層とを含み、前記低屈折率層は、外側被覆層の最内面に位置し、その屈折率又は等価屈折率が1.22~1.25であり、周方向に配列された空気孔又は低屈折率ガラス材料層で構成される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、利得媒質として機能する前記フォトニック結晶ファイバの使用を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、コアの屈折率、内側被覆層のフッ素添加ユニットの屈折率、フッ素添加ユニットの幾何寸法、及び空気被覆層の幾何寸法を調整することにより、励起光に対する光ファイバの吸収が高く、かつ所望の波長帯域の信号光に変換することができるとともに、モードフィールド面積が極めて大きく、かつ優れたビーム品質を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に係る二重被覆層型のイッテルビウム添加フォトニック結晶ファイバのプリフォームの模式図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る二重被覆層型のイッテルビウム添加フォトニック結晶ファイバの断面模式図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るイッテルビウムを添加した二重被覆層型のフォトニック結晶ファイバのシングルモード動作範囲グラフである。
【
図4】本発明の実施例2に係る二重被覆層型のイッテルビウム添加フォトニック結晶ファイバのプリフォームの模式図である。
【
図5】本発明の実施例2に係る二重被覆層型のイッテルビウム添加フォトニック結晶ファイバの断面模式図である。
【
図6】本発明の実施例2に係るイッテルビウムを添加した二重被覆層型のフォトニック結晶ファイバのシングルモード動作範囲グラフである。
【
図7】本発明の実施例1及び実施例2に用いられる全固体の二重被覆層型イッテルビウム添加フォトニック結晶ファイバのテストプラットフォームの模式図である。
【
図8】本発明の実施例1及び実施例2に係る二重被覆層型のイッテルビウム添加フォトニック結晶ファイバの出力スポット図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目的、技術手段及び利点をより明確にするために、以下に実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。本明細書に記載された具体的な実施例は、単に本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するためのものではないことを理解されるべきである。なお、以下に説明する本発明の各実施形態に係る技術的特徴は、相互に矛盾しない限り、相互に組み合わせることができる。
【0018】
本発明は、フォトニック結晶ファイバのプリフォームを提供し、コアを形成するためのガラスフィラメントと、内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントと、内側被覆層のガラスケーシングと、外側被覆層のガラスケーシングと、を含む。ここで、前記コアを形成するためのガラスフィラメントは、相対屈折率差Δ1が0.08%~0.1%であり、直径が1~4mmであり、好ましくは2~2.5mmであり、形成されるコアの直径が3~6.5mmである。
【0019】
内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントは、外径が前記コアを形成するためのガラスフィラメントと同じであり、被覆層と、相対屈折率差Δ2が-0.14%~-0.82%であるコア層と、を含む。前記被覆層は、材料が前記内側被覆層のケーシングの材料と同じであり、バックグラウンド材料であり、被覆層の外径が1~4mmである。好ましくは、f=dF/d1(ここで、dFは、内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントの被覆層内径を示し、d1は、内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントの被覆層外径を示す)で算出される前記フッ素添加ユニットのデューティ比fは、0.085~0.09である。形成される内側被覆層部分の直径は、45~50mmである。
【0020】
前記内側被覆層のガラスケーシングは、厚さが2mm~20mmであり、その内径は、内側被覆層のフッ素添加ユニットのガラスフィラメントの外径と層数との間に、以下の関係を有する。
D内1=2n1*d1、n1≧4かつ1mm≦d1≦4mm
ここで、D内1は、前記内側被覆層のガラスケーシングの内径を示し、n1は、前記内側被覆層のフッ素添加ユニットのガラスフィラメントの層数を示し、d1は、前記内側被覆層のフッ素添加ユニットのガラスフィラメントの外径を示す。
【0021】
前記内側被覆層のガラスケーシングの外径は、光ファイバの内側被覆層直径、光ファイバのコア直径、コアを形成するためのイッテルビウム添加ガラスフィラメントの層数、内側被覆層を形成するための低屈折率のフッ素添加ユニットの外径と以下の関係を有する。
D外1=(D6/D4)(2n2-1)d1、40μm≦D4≦50μm
ここで、D外1は、前記内側被覆層のガラスケーシングの外径を示し、D6は、前記光ファイバの内側被覆層の直径を示し、D4は、前記光ファイバのコア直径を示し、n2は、コアを形成するためのイッテルビウム添加ガラスフィラメントの層数を示す。
【0022】
前記内側被覆層を形成するためのバックグラウンド材料の相対屈折率差Δ3は、0.08%~0.1%であり、好ましくはGe添加のシリカである。
【0023】
前記外側被覆層のガラスケーシングは、厚さが30mm~90mmであり、その外径は、光ファイバの外径、光ファイバのコア直径、コアを形成するためのイッテルビウム添加ガラスフィラメントの層数、内側被覆層を形成するための低屈折率のフッ素添加ユニットの外径と以下の関係を有する。
D外2=(D5/D4)(2n2-1)d1、800μm≦D5≦1000μm
ここで、D5は、前記光ファイバの外径を示す。
【0024】
前記外側被覆層のガラスケーシングの内壁は、低屈折率層を有し、前記低屈折率層は、密に配列されている毛細管ガラス管又は低屈折率ガラス材料層である。その内径は、前記内側被覆層を形成するガラスケーシングの外径と以下の関係を有する。
D外2=D外1+2d2
ここで、d2は、外側被覆層の低屈折率の厚さを示す。
【0025】
前記低屈折率層が、密に配列されている毛細管ガラス管である場合、前記外側被覆層のガラスケーシングは、内径が50~60mmであり、外径が80~150mmであり、前記毛細管は、外径が2.5mm~5mmであり、内径が2mm~4μmであり、その両端が封口されている。
【0026】
前記低屈折率層が低屈折率ガラス材料層である場合、前記外側被覆層のガラスケーシングは、内径が50~60mmであり、外径が80~150mmであり、低屈折率ガラス材料層は、外径が60~100mmであり、等価屈折率が1.22~1.25である。
【0027】
前記内側被覆層のガラスケーシングと外側被覆層のガラスケーシングとは、同心のネスト構造であり、前記コアを形成するためのガラスフィラメントは、内側被覆層のガラスケーシングの中心にあり、前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントは、前記コアを形成するためのガラスフィラメントと前記内側被覆層ケーシングとの間に位置する。前記コアを形成するためのガラスフィラメントと前記フッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントとの数の比は、0.5~3:12であり、好ましくは1:12、7:120、7:162、19:84、19:120、又は19:162である。
【0028】
本発明によるフォトニック結晶プリフォームは、線引きプロセスによって、本発明によるフォトニック結晶ファイバを製造することができる。
【0029】
本発明によるフォトニック結晶ファイバのプリフォームの製造方法は、以下のステップを含む。
【0030】
(1)フッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントとコアを形成するためのガラスフィラメントとを、金型を用いて正六角形状に所定本数積み重ねてガラスフィラメント束に束ね、前記コアを形成するためのガラスフィラメントを中心に位置させる。
【0031】
前記コアを形成するためのガラスフィラメントは、コア層の相対屈折率差Δ1が0.08%~0.1%となるように、ライナ内に希土類添加コア層を堆積させ、ライナを除去して線引きして製造される。MCVDのCDS(希土類キレート化合物気相堆積法)プロセスを用いて純ケイ素のライナ内にイッテルビウム添加コアを堆積させることが好ましい。
【0032】
前記フッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントは、予め設定された厚さまでライナ内に内側被覆層材料、好ましくはゲルマニウム添加ガラスを堆積させ、次に、フッ素添加ガラス層の相対屈折率差Δ2が-0.14%~-0.82%となるようにフッ素添加ガラス層を堆積し、ライナを除去して線引きして製造される。PCVDプロセスを用いて純ケイ素のライナ内にゲルマニウム添加の内側被覆層材料及びフッ素添加ガラス層を堆積することが好ましい。
【0033】
(2)ステップ(1)で得られたガラスフィラメント束を、内側ケーシングと外側ケーシングとの同心ネスト構造にする。
【0034】
前記外側被覆層のガラスケーシングの内壁が、密に配列されている毛細管ガラス管を有する場合、前記毛細管ガラス管は、純シリカケーシングを所定の外径の毛細管に等比で引き、前記毛細管の両端を炎で封口して製造される。前記外側被覆層のガラスケーシングの内壁が、低屈折率ガラス材料層を有する場合、前記外側被覆層は、フッ素添加層をライナ内に堆積させ、堆積が完了した後、純シリカケーシングとの溶解収縮によって製造される。
【0035】
本発明によるフォトニック結晶ファイバは、コアと、内側被覆層と、外側被覆層と、を含む。ここで、前記コアは、相対屈折率差Δ1が0.08%~0.1%であり、直径40μm~50μmである。前記コアは、イッテルビウム、アルミニウム、及び/又はリンが添加されたシリカであることが好ましい。
【0036】
前記コアの相対屈折率差Δ1は、以下のようにして算出される。
【数1】
ここで、n
coreは、コアの屈折率であり、n
siは、純ケイ素の屈折率である。
【0037】
前記内側被覆層は、直径が200μm~400μmであり、バックグラウンド材料と周期的にバックグラウンド材料に配列されたフッ素添加ユニットとを含む。前記内側被覆層のうち、コアまでの厚さが内側被覆層の厚さの1/5から1/2である領域にフッ素添加ユニットが分布している。前記バックグラウンド材料は、屈折率差Δ3が0.08%~0.1%であり、前記フッ素添加ユニットは、相対屈折率差Δ2が-0.14%~-0.82%であるガラス材料である。
【0038】
前記フッ素添加ユニットの相対屈折率差Δ2は、次のようにして算出される。
【数2】
ここで、n
Fは、フッ素添加ユニットの屈折率であり、n
siは、純ケイ素の屈折率である。
【0039】
前記バックグラウンド材料の屈折率差Δ3は、以下のように算出される。
【数3】
ここで、n
GEは、バックグラウンド材料の屈折率であり、n
siは、純ケイ素の屈折率である。
【0040】
前記フッ素添加ユニットは、前記内側被覆層の80μm~115μmの領域に分布し、直径が1.2μm~1.5μmであり、数量が7~19であり、前記フッ素添加ユニットの中心間の距離が12~18μmである。
【0041】
前記外側被覆層は、等価屈折率が1.22~1.25であり、直径が800μm~1000μmである。前記外側被覆層は、1.22~1.25の屈折率及び800~1000μmの直径を有し、周期的に配列された空気孔又は低屈折率ガラス材料である低屈折率層を含む。
【0042】
コアは、直径が40~50μmであり、外径が800μm~1mmである。
【0043】
本発明によるフォトニック結晶ファイバは、コアの超巨大なモードフィールド面積により、光ファイバが高出力レーザに耐えることができ、その被覆導波路構造により、光ファイバが大モードフィールド面積を前提にシングルモード伝送を支持することができ、ビーム品質が高い。その超巨大な内側被覆層開口数により、ファイバがより高出力の励起光を吸収することを可能にし、したがって高出力ファイバレーザの分野に適している。本発明によるフォトニック結晶ファイバは、その内側被覆層の周期的ユニットが全固体であり、従来の空気孔技術に対して、光ファイバの歩留まりが高く、生産コストを低減する。全体として、本発明によるフォトニック結晶ファイバは、高出力、単一キャビティの低損失、ハイビーム品質のエネルギー伝送に適し、利得媒体として適している。
【0044】
以下、実施例を挙げる。
【0045】
(実施例1)
フォトニック結晶ファイバのプリフォームは、
図1に示すように、コアを形成するためのガラス素フィラメント1と、内側被覆層フッ素添加ガラスフィラメント2と、内側ケーシング3と、外側被覆層毛細管4と、外側ケーシング5と、を含む。ここで、コアは、7本のイッテルビウム添加ガラスフィラメントが正六角形に堆積してなり、その相対屈折率差Δ1=0.085%であり、外径が2mmである。内側被覆層は、84本のフッ素添加ガラスフィラメントが正六角形に堆積して4層で構成され、フッ素添加ガラスフィラメントのフッ素添加領域の相対屈折率差Δ2は、-0.55%であり、フッ素添加ガラスフィラメントのバックグラウンド材料は、ゲルマニウム添加シリカであり、その相対屈折率差Δ3が0.08%であり、外径が2mmであり、フッ素添加コア領域のデューティ比fが0.0875である。内側ケーシングは、ゲルマニウム添加シリカであり、その相対屈折率Δ4=Δ3=0.08%であり、内径が22mmであり、外径が45mmである。外側被覆層の毛細管は、未添加のシリカガラスであり、内径が4mmであり、外径が5mmであり、前記毛細管30本を内側ケーシングの周りに密に配列し、空気被覆層を形成する。外側ケーシングは、未添加のシリカガラスであり、内径が55mmであり、外径が100mmである。
【0046】
前記光ファイバのプリフォームは、以下のように製造される。
(1)フッ素添加ガラスフィラメントの製造:PCVDプロセスを利用して純ケイ素ライナ内にゲルマニウム添加被覆層とフッ素添加コアとを堆積し、堆積完了後、中実ガラス棒の外層の純ケイ素を完全に腐食させ、その後、ガラス棒を特定のサイズのガラスフィラメントに延ばす。ここで、ゲルマニウム添加被覆層のGe添加モル濃度が0.8%~1%であり、フッ素添加コアのF添加モル濃度が0.4%~2.5である。
(2)イッテルビウム添加ガラスフィラメントの製造:MCVDに基づくCDS(希土類キレート化合物気相堆積法)プロセスを利用して純ケイ素ライナ内にイッテルビウム添加コアを堆積し、堆積完了後、中実棒の外層の純ケイ素を研磨及び腐食プロセスによって完全に除去する。ここで、イッテルビウム添加コアのYb添加モル濃度は、0.15%~0.2%である。
(3)内側ケーシングの製造:PCVD技術を利用して純ケイ素ライナ内に一定の厚さのゲルマニウム添加被覆層を堆積し、堆積が完了した後に研磨及び腐食プロセスによってケーシングの外層の純ケイ素を完全に除去し、前記ケーシングの一方の先端を円錐状に延ばす。
(4)毛細管の製造:純シリカケーシングを一定外径の毛細管に等比で延ばし、炎で毛細管の両端を封口する。
(5)外側ケーシングの製造:純シリカケーシングを1本用意し、その一方の先端を円錐状に延ばし、洗浄乾燥する。
(5)プリフォームの組立:91本の前記フッ素添加ガラスフィラメントを洗浄乾燥した後、六角形ケーシング型に正六角形に積み重ね、積み重ねた後、中心の7本のフッ素添加ガラスフィラメントを前記のイッテルビウム添加ガラスフィラメントに取り替え、次に、前記ガラスフィラメント束をニッケルワイヤとガーゼとで束ね、固定した後、六角形ケーシング型を取り外し、前記ガラスフィラメント束を前記内側ケーシングに入れ、その後、前記内側ケーシングを前記外側ケーシングに入れる。前記内側ケーシングと外側ケーシングとの間隙は、前記毛細管で満たされている。
【0047】
図1に示すプリフォームを線引き炉に入れて線引きし、外径800μmの全固体フォトニック結晶ファイバを製造する。
【0048】
得られたイッテルビウムフォトニック結晶ファイバは、断面が
図2に示すように、コア21、内側被覆層のフッ素添加ユニット22及びゲルマニウム添加バックグラウンド材料23、並びに、外側被覆層の空気孔24及びシリカ材料25を含む。ここで、コアの直径は、50μmであり、内側被覆層の直径は、360μmであり、外側被覆層の直径は、800μmであり、コアNAは、0.06であり、被覆層フッ素添加領域の直径は、1.4μmであり、隣接する2つのフッ素添加ユニットの中心間距離は、16μmであり、空気孔の径方向幅は、10μmであり、隣接する2つの空気孔の間の壁厚は、0.5μmであり、空気被覆層のNAは、0.85であり、光ファイバの1064nmにおけるモードフィールド直径は、61μmであり、シングルモード動作範囲は、
図3に示すように820μmより大きい。
【0049】
中心波長915nmの半導体レーザを励起源とし、本発明による全固体イッテルビウム添加フォトニック結晶ファイバを利得媒質とし、テストプラットフォームを構築し、
図7に示すように、信号光の変換効率が73%であり、915nmにおける光ファイバの被覆層吸収係数が3.2dB/mであると測定する。
【0050】
1064nmのシングルモードレーザを信号光源とし、本発明による全固体二重被覆層型イッテルビウム添加フォトニック結晶ファイバのビーム品質を測定し、そのビーム品質因子M
2が1.1であり、出力スポットとM
2テストのフィット双曲線とを
図5に示す。
【0051】
(実施例2)
フォトニック結晶ファイバのプリフォームは、
図1に示すように、コア1と、内側被覆層フッ素添加ガラスフィラメント2と、内側ケーシング3と、外側被覆層毛細管4と、外側ケーシング5と、を含む。ここで、コアは、7本のイッテルビウム添加ガラスフィラメントが正六角形に堆積してなり、その相対屈折率差Δ1=0.085%であり、外径が2mmである。内側被覆層は、84本のフッ素添加ガラスフィラメントが正六角形に堆積して4層で構成され、フッ素添加ガラスフィラメントのフッ素添加領域の相対屈折率差Δ2は、-0.55%であり、フッ素添加ガラスフィラメントのバックグラウンド材料は、ゲルマニウム添加シリカであり、その相対屈折率差Δ3が0.08%であり、外径が2mmであり、フッ素添加コア領域のデューティ比fが0.0875である。内側ケーシングは、ゲルマニウム添加シリカであり、その相対屈折率Δ4=Δ3=0.08%であり、内径が22mmであり、外径が45mmである。外側被覆層のバックグラウンド材料は、低屈折率ガラスであり、その内径が45mmであり、その外径が100mmである。
【0052】
前記光ファイバのプリフォームは、以下のように製造される。
(1)フッ素添加ガラスフィラメントの製造:PCVDプロセスを利用して純ケイ素ライナ内にゲルマニウム添加被覆層とフッ素添加コアとを堆積し、堆積完了後、中実ガラス棒の外層の純ケイ素を完全に腐食させ、その後、ガラス棒を特定のサイズのガラスフィラメントに延ばす。ここで、ゲルマニウム添加被覆層のGe添加モル濃度が0.8%~1%であり、フッ素添加コアのF添加モル濃度が0.4%~2.5である。
(2)イッテルビウム添加ガラスフィラメントの製造:MCVDに基づくCDS(希土類キレート化合物気相堆積法)プロセスを利用して純ケイ素ライナ内にイッテルビウム添加コアを堆積し、堆積完了後、中実棒の外層の純ケイ素を研磨及び腐食プロセスによって完全に除去する。ここで、イッテルビウム添加コアのYb添加モル濃度は、0.15%~0.2%である。
(3)内側ケーシングの製造:PCVD技術を利用して純ケイ素ライナ内に一定の厚さのゲルマニウム添加被覆層を堆積し、堆積が完了した後に研磨及び腐食プロセスによってケーシングの外層の純ケイ素を完全に除去し、前記ケーシングの一方の先端を円錐状に延ばす。
(4)外側ケーシングの製造:1本の純シリコンケーシングを準備し、PCVDプロセスを利用して純ケイ素ライナ内に一定の厚さの低屈折率層を堆積し、堆積が完了した後、研磨及び腐食プロセスによってケーシングの外層の純ケイ素を完全に除去し、焼戻し研磨を行い、前記ケーシングの一方の端部を円錐状にする。
(5)プリフォームの組立:169本の前記フッ素添加ガラスフィラメントを洗浄乾燥した後、六角形ケーシング型に正六角形に積み重ね、積み重ねた後、中心の7本のフッ素添加ガラスフィラメントを前記のイッテルビウム添加ガラスフィラメントに取り替え、次に、前記ガラスフィラメント束をニッケルワイヤとガーゼとで束ね、固定した後、六角形ケーシング型を取り外し、前記ガラスフィラメント束を前記内側ケーシングに入れ、その後、前記内側ケーシングを前記外側ケーシングに入れる。
【0053】
図1に示すプリフォームを線引き炉に入れて線引きし、外径1000μmの全固体フォトニック結晶ファイバを製造する。
【0054】
得られたイッテルビウムフォトニック結晶ファイバは、断面が
図4に示すように、コア21、内側被覆層のフッ素添加ユニット22及びゲルマニウム添加バックグラウンド材料23、並びに、外側被覆層の空気孔24及びシリカ材料25を含む。ここで、コアの直径は、60μmであり、内側被覆層の直径は、450μmであり、外側被覆層の直径は、1000μmであり、コアNAは、0.06であり、被覆層フッ素添加領域の直径は、1.75μmであり、隣接する2つのフッ素添加ユニットの中心間距離は、20μmであり、外側被覆層のNAは、0.23であり、光ファイバの1064nmにおけるモードフィールド直径は、54μmであり、シングルモード動作範囲は、
図5に示すように1050μmより大きい。
【0055】
中心波長915nmの半導体レーザを励起源とし、本発明による全固体イッテルビウム添加フォトニック結晶ファイバを利得媒質とし、テストプラットフォームを構築し、
図7に示すように、信号光の変換効率が73%であり、915nmにおける光ファイバの被覆層吸収係数が3dB/mであると測定する。
【0056】
1064nmのシングルモードレーザを信号光源とし、本発明による全固体二重被覆層型イッテルビウム添加フォトニック結晶ファイバのビーム品質を測定し、そのビーム品質因子M
2が1.2であり、出力スポットとM
2テストのフィット双曲線とを
図8に示す。以上の記載は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するためのものではなく、本発明の趣旨や原則内に為したあらゆる修正、均等置換及び改良などがすべて本発明の保護範囲に含まれるべきということは、当業者にとって自明である。
【0057】
(付記)
(付記1)
フォトニック結晶ファイバのプリフォームであって、コアを形成するためのガラスフィラメントと、内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントと、内側被覆層のガラスケーシングと、外側被覆層のガラスケーシングと、を含み、
前記コアを形成するためのガラスフィラメントは、相対屈折率差Δ1が0.08%~0.09%であり、直径が1~4mmであり、
内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントは、外径が前記コアを形成するためのガラスフィラメントと同じであり、被覆層と、相対屈折率差Δ2が-0.14%~-0.82%であるコア層と、を含み、前記被覆層は、材料が前記内側被覆層のケーシングの材料と同じであり、f=dF/d1(ここで、dFは、内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントの被覆層内径を示し、d1は、内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントの被覆層外径を示す)で算出される前記フッ素添加ユニットのデューティ比fは、0.085~0.09であり、
前記内側被覆層のガラスケーシングは、厚さが2mm~20mmであり、相対屈折率差Δ3が0.08%~0.1%であり、
前記外側被覆層のガラスケーシングは、厚さが30mm~90mmであり、純シリカガラス管であり、
前記内側被覆層のガラスケーシングと外側被覆層のガラスケーシングとは、同心のネスト構造であり、前記コアを形成するためのガラスフィラメントは、内側被覆層のガラスケーシングの中心にあり、前記内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントは、前記コアを形成するためのガラスフィラメントと前記内側被覆層ケーシングとの間に位置する、
ことを特徴とするフォトニック結晶ファイバのプリフォーム。
【0058】
(付記2)
前記内側被覆層のガラスケーシングは、内径が22~37.5mmであり、外径が45~50mmであり、その内径は、内側被覆層のフッ素添加ユニットのガラスフィラメントの外径と層数との間に、D内1=2n1*d1、n1≧4かつ1mm≦d1≦4mm(ここで、D内1は、前記内側被覆層のガラスケーシングの内径を示し、n1は、前記内側被覆層のフッ素添加ユニットのガラスフィラメントの層数を示し、d1は、内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントの外径を示す)の関係を有し、
前記外側被覆層のガラスケーシングは、内径が50~60mmであり、外径が80~150mmである、
ことを特徴とする付記1に記載のフォトニック結晶ファイバのプリフォーム。
【0059】
(付記3)
前記フッ素添加ユニットのガラスフィラメントは、アレイ中心に位置するコアガラスフィラメントの周囲にアレイ状に密に配列され、前記コアを形成するためのガラスフィラメントと前記フッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントとの数の比は、0.5~3:12であり、好ましくは1:12、7:120、7:162、19:84、19:120、又は19:162である、
ことを特徴とする付記1に記載のフォトニック結晶ファイバのプリフォーム。
【0060】
(付記4)
前記外側被覆層のガラスケーシングの内壁は、低屈折率層を有し、前記低屈折率層は、密に配列されている毛細管ガラス管又は低屈折率ガラス材料層であり、前記毛細管ガラス管は、内径が2~4μmであり、外径が2.5~5mmであり、その両端が封口され、前記低屈折率層は、屈折率又は等価屈折率が1.22~1.25である、
ことを特徴とする付記1に記載のフォトニック結晶ファイバのプリフォーム。
【0061】
(付記5)
以下のステップを含み、
(1)フッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントとコアを形成するためのガラスフィラメントとを、金型を用いて正六角形状に所定本数積み重ねてガラスフィラメント束に束ね、前記コアを形成するためのガラスフィラメントを中心に位置させる、
(2)ステップ(1)で得られたガラスフィラメント束を、内側ケーシングと外側ケーシングとの同心ネスト構造にする、
好ましくは、前記コアを形成するためのガラスフィラメントは、コア層の相対屈折率差Δ1が0.08%~0.1%となるように、ライナ内に希土類添加コア層を堆積させ、ライナを除去して線引きして製造され、
前記フッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメントは、予め設定された厚さまでライナ内に内側被覆層材料を堆積させ、次に、フッ素添加ガラス層の相対屈折率差Δ2が-0.14%~-0.82%となるようにフッ素添加ガラス層を堆積し、ライナを除去して線引きして製造される、
ことを特徴とする付記1~4のいずれか1つに記載のフォトニック結晶ファイバのプリフォームの製造方法。
【0062】
(付記6)
前記外側被覆層のガラスケーシングの内壁が、密に配列されている毛細管ガラス管を有する場合、
前記毛細管ガラス管は、純ケイ素ケーシングを所定の外径の毛細管に等比で引き、前記毛細管の両端を炎で封口して製造され、
前記外側被覆層のガラスケーシングの内壁が、低屈折率ガラス材料層を有する場合、
前記外側被覆層は、純シリカライナ内にフッ素添加層を堆積して製造される、
ことを特徴とする付記5に記載のフォトニック結晶ファイバのプリフォームの製造方法。
【0063】
(付記7)
フォトニック結晶ファイバであって、コアと、内側被覆層と、外側被覆層と、を含み、
前記コアは、相対屈折率差Δ1が0.08%~0.1%であり、直径が40~50μmであり、
前記内側被覆層は、直径が200~400μmであり、相対屈折率差Δ3が0.08%~0.1%であるバックグラウンド層と、バックグラウンド層内でコアを密に取り囲むようにアレイ状に配列され、相対屈折率差Δ2が-0.14%~-0.82%であるフッ素添加ユニットと、を含み、
前記外側被覆層は、直径が800μm~1000μmである、
ことを特徴とするフォトニック結晶ファイバ。
【0064】
(付記8)
前記アレイ状のフッ素添加ユニットは、前記内側被覆層のうち、コアまでの厚さが内側被覆層の厚さの1/5から1/2である領域に分布し、
前記フッ素添加ユニットは、直径が1~1.4μmであり、
前記フッ素添加ユニットの中心間の距離は、11.5~16μmである、
ことを特徴とする付記7に記載のフォトニック結晶ファイバ。
【0065】
(付記9)
前記コアは、イッテルビウム、アルミニウム、リンを共ドープしたシリカ層であり、
前記外側被覆層は、純シリカ層と低屈折率層とを含み、前記低屈折率層は、外側被覆層の最内面に位置し、その屈折率又は等価屈折率が1.22~1.25であり、周方向に配列された空気孔又は低屈折率ガラス材料層で構成される、
ことを特徴とする付記7に記載のフォトニック結晶ファイバ。
【0066】
(付記10)
利得媒質として機能する、
ことを特徴とする付記7~9のいずれか1つに記載のフォトニック結晶ファイバの使用。
【符号の説明】
【0067】
全ての図において、同一要素又は構造には同一符号を付する。
1:フォトニック結晶ファイバのプリフォームの、コアを形成するためのガラスフィラメント、2:内側被覆層のフッ素添加ユニットを形成するためのガラスフィラメント、3:内側被覆層のガラスケーシング、4:毛細管ガラス管、5:外側被覆層のガラスケーシング、21:光ファイバのコア、22:フッ素添加ユニット、23:バックグラウンド材料、24:外側被覆層の空気孔、25:外側被覆層。