(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】制御装置、内視鏡システム、制御装置の作動方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/005 20060101AFI20230816BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
A61B1/005 512
A61B1/005 513
A61B1/00 552
(21)【出願番号】P 2021563464
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2019048121
(87)【国際公開番号】W WO2021117100
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 毅
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/109988(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/186694(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/183193(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/009905(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/151846(WO,A1)
【文献】特開2011-245180(JP,A)
【文献】特開2011-019551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置具を挿通するためのチャンネルを有し、先端側から被検体に挿入される挿入部と、
前記挿入部に設けられ、前記挿入部の剛性を部分的に変更可能な1つ以上の剛性可変部と、を含む内視鏡を制御する制御装置であって、
前記挿入部の形状の検出結果に基づいて、前記挿入部に屈曲部が形成されていることを
検出する屈曲部検出部と、
前記剛性可変部の剛性を制御する剛性制御部と、
前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出する処置判断部と、
を備え、
前記剛性制御部は、
前記屈曲部検出部が前記挿入部に屈曲部が形成されていることを検出し
、かつ、前記処置判断部が前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出したときに、前記屈曲部内における基端側に位置する前記剛性可変部の剛性を上げる制御を行うことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記挿入部に前記屈曲部が形成されている状態において、当該屈曲部が前記被検体における体腔部の内壁面に押圧されているか否かを検出する押圧検出部をさらに備え、
前記剛性制御部は、前記押圧検出部における検出結果を取得し当該検出結果に基づいて、当該屈曲部が前記被検体における体腔部の内壁面に押圧されていると判断したとき、前記屈曲部内における基端側に位置する前記剛性可変部の剛性を上げる制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記処置具が前記チャンネルに挿通されて配置されたか否かを判定する処置具有無判定部をさらに備え、
前記剛性制御部は、前記処置具有無判定部における検出結果を取得し当該検出結果に基づいて、前記処置具が前記チャンネルに挿通されて配置されたと判断した場合において、前記屈曲部検出部における検出結果を取得し当該検出結果に基づいて前記挿入部に所定の屈曲部が形成されていると判断したときに、前記屈曲部内における基端側に位置する前記剛性可変部の剛性を上げる制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記挿入部が被検体の体腔内に挿入されている際、当該挿入部の安定度を算出する挿入部安定度算出部をさらに備え、
前記剛性制御部は、前記挿入部安定度算出部における算出結果を取得し当該算出結果に基づいて、前記挿入部の前記安定度が所定値未満のときには、前記剛性可変部の剛性を上げる制御を継続し、前記挿入部の前記安定度が所定値以上のときには、前記剛性可変部の剛性を上げる制御を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記挿入部安定度算出部は、
前記挿入部が被検体の体腔内に挿入されている際において、前記挿入部を当該被検体の体腔部における内壁に押し付けながら捻る動作があったか否かを判定する捻り動作検出部と、
当該被検体に係る撮像画像から前記挿入部と当該被検体との相対移動を検出する相対移動検出部と、
を有し、
前記挿入部安定度算出部は、前記捻り動作検出部が前記挿入部を前記被検体の体腔部における内壁に押し付けながら捻る動作があったと判定した場合に、前記相対移動検出部が検出した前記挿入部と前記被検体との相対移動に基づいて前記安定度を算出する
ことを特徴とする請求項
4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記剛性可変部は、前記挿入部の長手方向に沿って複数配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記剛性可変部は、複数の低曲げ剛性部を備えた第1の長手部材と、前記第1の長手部材に沿って隣接して配置され、前記複数の低曲げ剛性部よりも数が少ない曲がり規制部を備えた第2の長手部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記処置判断部は、前記内視鏡に対する術者の操作に基づく信号を受信することで、前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出する
ことを特徴とする請求項
1に記載の制御装置。
【請求項9】
処置具を挿通するためのチャンネルを有し、先端側から被検体に挿入される挿入部と、
前記挿入部に設けられ、前記挿入部の剛性を部分的に変更可能な1つ以上の剛性可変部と、
前記挿入部の形状を
解析する
形状解析部と、
前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出する処置判断部と、
前記
形状解析部における
解析結果に基づいて、前記挿入部に屈曲部が形成されていることを検出する屈曲部検出部と、
前記剛性可変部の剛性を制御する剛性制御部と、
を備え、
前記剛性制御部は、前記
屈曲部検出部が前記挿入部に屈曲部が形成されていることを検出し
、かつ、前記処置判断部が前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出したときに、前記屈曲部内における基端側に位置する前記剛性可変部の剛性を上げる制御を行うことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項10】
処置具を挿通するためのチャンネルを有し先端側から被検体に挿入される挿入部と、
前記挿入部に設けられ前記挿入部の剛性を部分的に変更可能な1つ以上の剛性可変部と、
を含む、内視鏡の挿入部の剛性を制御する制御装置の作動方法であって、
屈曲部検出部が、前記挿入部の形状の検出結果に基づいて、前記挿入部に屈曲部が形成
されていることを検出する工程と、
処置判断部が、前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出する工程と、
前記屈曲部検出部が前記挿入部に屈曲部が形成されていることを検出し
、かつ、前記処置判断部が前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出したときに、剛性制御部が、前記屈曲部内における基端側に位置する前記剛性可変部の剛性を上げる工程と、
を備える内視鏡の挿入部の剛性を制御する制御装置の作動方法。
【請求項11】
前記剛性可変部は、複数の低曲げ剛性部を備えた第1の長手部材と、前記第1の長手部材に沿って隣接して配置され、前記複数の低曲げ剛性部よりも数が少ない曲がり規制部を備えた第2の長手部材とを有し、
前記第1の長手部材と前記第2の長手部材の相対移動によって、前記剛性可変部の剛性を、高剛性の状態と低剛性の状態との間で切り替えることを特徴とする請求項
10に記載の内視鏡の挿入部の剛性を制御する制御装置の作動方法。
【請求項12】
処置具を挿通するためのチャンネルを有し先端側から被検体に挿入される挿入部と、
前記挿入部に設けられ前記挿入部の剛性を部分的に変更可能な1つ以上の剛性可変部と、
を含む、内視鏡の挿入部の剛性を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記挿入部の形状の検出結果に基づいて、前記挿入部に屈曲部が形成されていることを検出する処理と、
前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出する処理と、
前記挿入部に屈曲部が形成されていることが検出され
、かつ、前記処置具を用いた処置が行われていることが検出されたときに、前記屈曲部内における基端側に位置する前記剛性可変部の剛性を上げる処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、内視鏡システム、制御装置の作動方法及びプログラムに関し、剛性可変部を内設した挿入部を有する内視鏡を含む制御装置、内視鏡システム、制御装置の作動方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可撓性を有する細長な挿入部を被検体内の深部へ挿入する技術は広く知られており、例えば医療分野においては、細長な挿入部を有する内視鏡を用いて当該被検体の内部の被写体の観察、または、各種治療処置を行う技術が広く知られている。
【0003】
この種内視鏡の挿入部は、一般的に、先端から順に、先端硬質部、湾曲部、軟性部(可撓管部)が配設されて構成されている。また、当該内視鏡挿入部を被検体である体腔内へ挿入する際、術者は軟性部(可撓管部)を把持して当該挿入部を体腔内に押し込みながら、内視鏡の操作部に配設される操作ノブを操作することにより湾曲部を所望の方向へ湾曲させるようになっている。
【0004】
一方、この種の挿入部を有する内視鏡を用いて各種治療処置を行う例として、内視鏡に設けたチャンネルに所定の処置具を挿通し当該処置具を用いて治療を行う例が知られている。例えば、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの治療処置を行う場合、内視鏡に設けられたチャンネル開口から導出した、いわゆるITナイフ等の処置具を用いて病変の切開を行う例が知られている。
【0005】
この処置においては、ターゲットである病変に対してITナイフを近接させた後、挿入部先端部の湾曲操作、捻り操作または進退操作等の操作を駆使しながら、当該ITナイフにより切開を行う。ここで、ITナイフを病変に沿って切開する作業においては、的確な処置を行うために、内視鏡の操作部(内視鏡の把持部でもある)の操作(湾曲、捻りまたは進退)を先端部に確実に伝える必要がある。
【0006】
一方、被検体の体腔内に細長い挿入部を挿入した場合、挿入部が当該体腔内において湾曲状態になる場合もあるが、このように挿入部が湾曲している状態において上述の如きITナイフ等を用いた治療処置を行うシーンもある。
【0007】
ここで、例えば、挿入部が湾曲した状態、すなわち、挿入部の一部に屈曲部が生じている状態で挿入部の捻り操作を行った場合、当該屈曲部と体内壁の接触点を支点として挿入部先端部が捻り操作に伴って動作する。しかし体腔内においては、粘液などの影響を受けて、支点である屈曲部は滑りやすい状態となっている。このように屈曲部が滑りやすい状態において挿入部を捻る操作を行う場合、挿入部先端部を意図したとおりの操作をすることが困難となる虞があった。
【0008】
また、挿入部の一部に屈曲部が生じている状態の場合、屈曲部を体内壁に押し付けて捻り操作の安定性を図ることも考えられるが、支点である屈曲部の押し付け力が弱いと上述したように滑りやすい状態にあっては、挿入部先端部がふらつきやすくなり安定性に欠ける虞もあった。
【0009】
なお、本願出願人は、WO2016/151846号公報において、内視鏡の挿入部の挿入状態(湾曲状態)に応じて曲げ剛性(硬度)を変化させることができる内視鏡システムを提案するものであるが、当該内視鏡システムは、挿入部の湾曲部の先端側剛性を高くすることで挿入部先端部の挿入性の向上を図るものである。一方で、挿入部チャンネルに処置具を挿通しての処置を行う際、当該処置における手元操作の安定性を向上させるために、湾曲部の基端側の剛性を高くする技術が望まれていた。
【0010】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、内視鏡挿入部に生じる屈曲部の押し付け力を向上させることで、治療処置操作の安定性を図ることができる制御装置、内視鏡システム、制御装置の作動方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の制御装置は、処置具を挿通するためのチャンネルを有し、先端側から被検体に挿入される挿入部と、前記挿入部に設けられ、前記挿入部の剛性を部分的に変更可能な1つ以上の剛性可変部と、を含む内視鏡を制御する制御装置であって、前記挿入部の形状の検出結果に基づいて、前記挿入部に屈曲部が形成されていることを検出する屈曲部検出部と、前記剛性可変部の剛性を制御する剛性制御部と、前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出する処置判断部と、を備え、前記剛性制御部は、前記屈曲部検出部が前記挿入部に屈曲部が形成されていることを検出し、かつ、前記処置判断部が前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出したときに、前記屈曲部内における基端側に位置する前記剛性可変部の剛性を上げる制御を行う。
本発明の一態様の内視鏡システムは、処置具を挿通するためのチャンネルを有し、先端側から被検体に挿入される挿入部と、前記挿入部に設けられ、前記挿入部の剛性を部分的に変更可能な1つ以上の剛性可変部と、前記挿入部の形状を解析する形状解析部と、前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出する処置判断部と、前記形状解析部における解析結果に基づいて、前記挿入部に屈曲部が形成されていることを検出する屈曲部検出部と、前記剛性可変部の剛性を制御する剛性制御部と、を備え、前記剛性制御部は、前記屈曲部検出部が前記挿入部に屈曲部が形成されていることを検出し、かつ、前記処置判断部が前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出したときに、前記屈曲部内における基端側に位置する前記剛性可変部の剛性を上げる制御を行う。
【0012】
また、本発明の一態様の内視鏡の挿入部の剛性を制御する制御装置の作動方法は、処置具を挿通するためのチャンネルを有し先端側から被検体に挿入される挿入部と、前記挿入部に設けられ前記挿入部の剛性を部分的に変更可能な1つ以上の剛性可変部と、を含む、内視鏡の挿入部の剛性を制御する制御装置の作動方法であって、屈曲部検出部が、前記挿入部の形状の検出結果に基づいて、前記挿入部に屈曲部が形成されていることを検出する工程と、処置判断部が、前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出する工程と、屈曲部検出部が、前記挿入部に屈曲部が形成されていることを検出し、かつ、前記処置判断部が前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出したときに、剛性制御部が、前記屈曲部内における基端側に位置する前記剛性可変部の剛性を上げる工程と、を備える。
また、本発明の一態様のプログラムは、処置具を挿通するためのチャンネルを有し先端側から被検体に挿入される挿入部と、前記挿入部に設けられ前記挿入部の剛性を部分的に変更可能な1つ以上の剛性可変部と、を含む、内視鏡の挿入部の剛性を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記挿入部の形状の検出結果に基づいて、前記挿入部に屈曲部が形成されていることを検出する処理と、前記処置具を用いた処置が行われようとしていることを検出する処理と、前記挿入部に屈曲部が形成されていることが検出され、かつ、前記処置具を用いた処置が行われていることが検出されたときに、前記屈曲部内における基端側に位置する前記剛性可変部の剛性を上げる処理と、をコンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る内視鏡システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、内視鏡挿入部を被検体体腔内に挿入した際において、挿入部に屈曲部が生じた際における剛性可変部の制御を示した説明図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、内視鏡挿入部における屈曲部が体内壁を押圧している様子を示した要部拡大図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、内視鏡挿入部における屈曲部の発生状況を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る内視鏡システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第3の実施形態に係る内視鏡システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、第3の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、内視鏡挿入部における屈曲部の発生状況を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本発明の第4の実施形態に係る内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、第4の実施形態に係る内視鏡システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、第4の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、内視鏡挿入部を被検体体腔内に挿入した際において、挿入部に屈曲部が生じた際における剛性可変部の制御を示した説明図である。
【
図13】
図13は、第4の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、内視鏡挿入部における屈曲部が体内壁を押圧している様子を示した要部拡大図である。
【
図14】
図14は、本発明の第5の実施形態に係る内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、第5の実施形態に係る内視鏡システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図16】
図16は、第5の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、処置具挿通センサを示した要部拡大図である。
【
図17】
図17は、第5の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、処置具挿通センサを示した要部拡大斜視図である。
【
図18】
図18は、本発明の第6の実施形態に係る内視鏡システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図19】
図19は、第6の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、画像処理情報を受けた処置判断部の判断を説明する図である。
【
図20】
図20は、本発明の第7の実施形態に係る内視鏡システムにおける挿入部安定度算出部の作用を説明するための図である。
【
図21】
図21は、第7の実施形態に係る内視鏡システムにおける挿入部安定度算出部の作用を説明するための図である。
【
図22】
図22は、第7の実施形態に係る内視鏡システムにおける挿入部安定度算出部の作用を説明するための図である。
【
図23】
図23は、第1~第7の実施形態に係る内視鏡システムにおける剛性可変部として適用可能な他の構成例を示した図である。
【
図24】
図24は、第1~第7の実施形態に係る内視鏡システムにおける剛性可変部として適用可能な他の構成例を示した図である。
【
図25】
図25は、第1~第7の実施形態に係る内視鏡システムにおける剛性可変部として適用可能な他の構成例を示した図である。
【
図26】
図26は、第1~第7の実施形態に係る内視鏡システムにおける剛性可変部として適用可能な他の構成例を示した図である。
【
図27】
図27は、第1~第7の実施形態に係る内視鏡システムにおける剛性可変部として適用可能な他の構成例を示した図である。
【
図28】
図28は、第1~第7の実施形態に係る内視鏡システムにおける剛性可変部として適用可能な他の構成例を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る内視鏡システムの構成を示すブロック図であり、
図2は、第1の実施形態の内視鏡システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【0016】
なお、第1の実施形態の内視鏡システム1は、被検体の腸管に挿入する、いわゆる大腸内視鏡を含む内視鏡システムを想定する。
【0017】
図1に示すように本第1の実施形態に係る内視鏡システム1は、例えば、内視鏡10と、光源装置20と、本体装置30と、挿入形状検出装置40と、入力装置50と、表示装置60と、を有して構成されている。
【0018】
内視鏡10は、被検体内に挿入される挿入部11と、挿入部11の基端側に設けられた操作部12と、操作部12から延設されたユニバーサルコード13と、処置具を挿通するためのチャンネル開口部18と、を有して構成されている。また、内視鏡10は、ユニバーサルコード13の端部に設けられているスコープコネクタ13Aを介し、光源装置20に対して着脱自在に接続されるように構成されている。
【0019】
さらに内視鏡10は、スコープコネクタ13Aから延出した電気ケーブル14の端部に設けられている電気コネクタ14Aを介し、本体装置30に対して着脱自在に接続されるように構成されている。また、挿入部11、操作部12及びユニバーサルコード13の内部には、光源装置20から供給される照明光を伝送するためのライトガイド(不図示)が設けられている。
【0020】
挿入部11は、可撓性及び細長形状を有して構成されている。また、挿入部11は、硬質の先端部11Aと、湾曲自在に形成された湾曲部11Bと、可撓性を有する長尺な可撓管部11Cと、を先端側から順に設けて構成されている。
【0021】
ここで、先端部11A、湾曲部11B及び可撓管部11Cの内部には、本体装置30から供給されるコイル駆動信号に応じた磁界を発生する複数のソースコイルを挿入部11の長手方向に沿って所定の間隔で配置したソースコイル群113(
図2参照)が設けられている。なお、当該ソースコイル群113は、いわゆる内視鏡挿入形状検出装置(UPD)を構成する。
【0022】
先端部11Aには、挿入部11の内部に設けられたライトガイドにより伝送された照明光を被写体へ出射するための照明窓(不図示)が設けられている。また、先端部11Aには、本体装置30から供給される撮像制御信号に応じた動作を行うとともに、照明窓を経て出射される照明光により照明された被写体を撮像して撮像信号を出力するように構成された撮像部111(
図2参照)が設けられている。撮像部111は、例えば、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等のイメージセンサを有して構成されている。
【0023】
湾曲部11Bは、操作部12に設けられたアングルノブ121の操作に応じて湾曲することができるように構成されている。
【0024】
また、詳しくは後述するが、湾曲部11Bの基端部から可撓管部11Cの先端部にかけての所定の範囲に相当する剛性可変範囲の内部には、本体装置30の制御に応じて当該剛性可変範囲の曲げ剛性を変化させることができるように構成された剛性可変部112が、挿入部11の長手方向に沿って設けられている。剛性可変部112の具体的な構成等については、後に詳述する。
【0025】
なお、以降においては、説明の便宜上、「曲げ剛性」を単に「剛性」として適宜略記するものとする。また、本実施形態においては、前述の剛性可変範囲が挿入部11の少なくとも一部の範囲に設けられていればよい。
【0026】
操作部12は、ユーザが把持して操作することが可能な形状を具備して構成されている。また、操作部12には、挿入部11の長手軸に対して交差する上下左右(UDLR)の4方向に湾曲部11Bを湾曲させるための操作を行うことができるように構成されたアングルノブ121が設けられている。また、操作部12には、ユーザの入力操作に応じた指示を行うことが可能な1つ以上のスコープスイッチ122が設けられている。
【0027】
光源装置20は、例えば、1つ以上のLEDまたは1つ以上のランプを光源として有して構成されている。また、光源装置20は、挿入部11が挿入される被検体内を照明するための照明光を発生するとともに、当該照明光を内視鏡10へ供給することができるように構成されている。また、光源装置20は、本体装置30から供給されるシステム制御信号に応じて照明光の光量を変化させることができるように構成されている。
【0028】
本体装置30は、ケーブル15を介し、挿入形状検出装置40に対して着脱自在に接続されるように構成されている。また、本体装置30は、ケーブル16を介し、入力装置50に対して着脱自在に接続されるように構成されている。さらに本体装置30は、ケーブル17を介し、表示装置60に対して着脱自在に接続されるように構成されている。
【0029】
また、本体装置30は、入力装置50並びにスコープスイッチ122およびアングルノブ121からの指示に応じた動作を行うように構成されている。また、本体装置30は、内視鏡10から出力される撮像信号に基づいて内視鏡画像を生成するとともに、当該生成した内視鏡画像を表示装置60に表示させるための動作を行うように構成されている。さらに、本体装置30は、内視鏡10及び光源装置20の動作を制御するための様々な制御信号を生成して出力するように構成されている。
【0030】
本実施形態において本体装置30は、後述する剛性制御部302において、挿入形状検出装置40から出力される挿入形状情報(後述)等に基づき剛性可変部112の駆動状態を制御するように構成されている(
図2参照)。
【0031】
<本実施形態における剛性可変部112の構成>
ここで、本第1の実施形態において採用する前記剛性可変部112の構成について説明する。
【0032】
本第1の実施形態において剛性可変部112は、例えば、図示しないコイルヒータと形状記憶部材とを有するアクチュエータとして構成され、湾曲部11Bの基端部から可撓管部11Cの先端部にかけての所定の範囲(好ましくは、150mm以下)において、挿入部11の長手方向に沿って設けられている。なお、本実施形態において剛性可変部112は、長手方向に直交する断面が同一形状を呈する棒状のアクチュエータとして構成される。
【0033】
前記コイルヒータは、例えば、ニクロム線等のような熱伝導率の高い巻線を円筒状に巻回することにより形成され、これにより当該剛性可変部112は、剛性制御部302の制御に応じて発熱するように構成されている。
【0034】
一方、剛性可変部112における前記形状記憶部材は、例えば、ニッケルチタン等の形状記憶合金を含む細長の部材として形成され、前記コイルヒータの内部空間に挿通された状態で配置されている。当該形状記憶部材は、コイルヒータから発せられる熱に応じて弾性を変化させることができるように構成されている。
【0035】
具体的には、当該形状記憶部材は、例えば、コイルヒータから発せられる熱により、少なくとも常温よりも高い温度TN以上に加熱された場合に、予め記憶された形状に相当する直線形状に復帰するための復元力を有する高弾性状態になるように構成されている。
【0036】
また、形状記憶部材は、例えば、コイルヒータから熱が発せられていない等の要因により、温度TN以上に加熱されていない場合に、予め記憶された形状に相当する直線形状に復帰するための復元力を有しない低弾性状態になるように構成されている。
【0037】
なお、本第1の実施形態においては、剛性可変部112はコイルヒータと形状記憶部材とを有するアクチュエータとして構成されるものとしたが、剛性可変部112の構成はこれに限らず、例えば、
図23~
図28に示す如き、種々の構成を採り得る。なお、当該お剛性可変部112に係る他の構成例については、後に詳述する。
【0038】
図2に戻って、挿入形状検出装置40は、いわゆる内視鏡挿入形状検出装置(UPD)を構成し、挿入部11に設けられたソースコイル群113から発せられる磁界を検出するとともに、当該検出した磁界の強度に基づいてソースコイル群113に含まれる複数のソースコイル各々の位置を取得するように構成されている。
【0039】
また、挿入形状検出装置40は、前述のように取得した複数のソースコイル各々の位置に基づいて挿入部11の挿入形状を算出するとともに、当該算出した挿入形状を示す挿入形状情報を生成して本体装置30へ出力するように構成されている。挿入形状検出装置40については、後に詳述する。
【0040】
入力装置50は、例えば、マウス、キーボードまたはタッチパネル等のような、ユーザにより操作される1つ以上の入力インターフェースを有して構成されている。また、入力装置50は、ユーザの操作に応じた指示を本体装置30へ出力することができるように構成されている。
【0041】
表示装置60は、例えば、液晶モニタ等を有して構成されている。また、表示装置60は、本体装置30から出力される内視鏡画像等を画面上に表示することができるように構成されている。
【0042】
<挿入形状検出装置40の構成>
挿入形状検出装置40は、
図2に示すように、受信アンテナ401と、挿入形状情報取得部402と、を有して構成されている。
【0043】
受信アンテナ401は、例えば、ソースコイル群113に含まれる複数のソースコイル各々から発せられる磁界を3次元的に検出するための複数のコイルを有して構成されている。また、受信アンテナ401は、ソースコイル群113に含まれる複数のソースコイル各々から発せられる磁界を検出するとともに、当該検出した磁界の強度に応じた磁界検出信号を生成して挿入形状情報取得部402へ出力するように構成されている。
【0044】
挿入形状情報取得部402は、受信アンテナ401から出力される磁界検出信号に基づき、ソースコイル群113に含まれる複数のソースコイル各々の位置を取得するように構成されている。
【0045】
また、挿入形状情報取得部402は、前述のように取得した複数のソースコイル各々の位置に基づいて挿入部11の挿入形状を算出するとともに、当該算出した挿入形状を示す挿入形状情報を生成して本体装置30における剛性制御部302および形状解析部304に対して出力するように構成されている。
【0046】
具体的には、挿入形状情報取得部402は、ソースコイル群113に含まれる複数のソースコイル各々の位置として、例えば、挿入部11が挿入される被検体の所定の位置(肛門等)が原点または基準点となるように仮想的に設定された空間座標系における複数の3次元座標値を取得する。
【0047】
また、挿入形状情報取得部402は、挿入部11の挿入形状を算出するための処理として、例えば、前述のように取得した複数の3次元座標値を補間するための補間処理を行う。
【0048】
なお、本実施形態においては、挿入形状検出装置40の各部については、電子回路として構成されるものであってもよく、または、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路における回路ブロックとして構成されていてもよい。また、本実施形態においては、例えば、挿入形状検出装置40が1つ以上のプロセッサ(CPU等)を具備して構成されていてもよい。
【0049】
<本体装置30の内部構成>
次に、本実施形態における本体装置30の内部構成について、
図2を参照して説明する。
【0050】
図2は、第1の実施形態に係る内視鏡システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【0051】
本実施形態において本体装置30は、
図2に示すように、制御部301、剛性制御部302、画像処理部303、形状解析部304、屈曲部検出部305および処置判断部306を有して構成されている。
【0052】
制御部301は、撮像部111の撮像動作を制御するための撮像制御信号を生成して出力するように構成されている。また、制御部301は、ソースコイル群113に含まれる各ソースコイルを駆動させるためのコイル駆動信号を生成して出力するように構成されている。
【0053】
また、制御部301は、入力装置50及びスコープスイッチ122、アングルノブ121からの指示に応じた動作を行わせるためのシステム制御信号を生成するとともに、当該生成したシステム制御信号を光源装置20の他、画像処理部303等の回路部に対して出力するように構成されている。
【0054】
さらに制御部301は、詳しくは後述するが、剛性制御部302、形状解析部304、屈曲部検出部305および処置判断部306の動作を制御するようになっている。
【0055】
画像処理部303は、制御部301から出力されるシステム制御信号に応じ、内視鏡10から出力される撮像信号に対して所定の処理を施すことにより内視鏡画像を生成するとともに、当該生成した内視鏡画像を表示装置60へ出力するように構成されている。
【0056】
<形状解析部304>
形状解析部304は、制御部301の制御下に、挿入形状検出装置40における前記挿入形状情報取得部402からの挿入形状情報を取得し、当該形状情報に基づいて被検体の体腔内に挿入された内視鏡挿入部11の形状を解析する。具体的には、湾曲する挿入部11の曲率半径を算出し、この算出結果を後段の屈曲部検出部305に対して送出する。なお、本実施形態において形状解析部304は挿入部11の曲率半径を算出するようにしたが、これに限らず、曲率そのものを算出するようにしてもよい。
【0057】
<屈曲部検出部305>
屈曲部検出部305は、制御部301の制御下に、形状解析部304において算出された、挿入部11の曲率半径の値に基づいて、挿入部11に屈曲部が生じているか否かを検出する。具体的には、形状解析部304において算出した挿入部11の曲率半径の値が所定の値以下である場合、挿入部11の湾曲部の一部において「屈曲部」が形成されていると判断し、当該判断結果を、後段の剛性制御部302に対して出力する。
【0058】
さらに屈曲部検出部305は、挿入部11に当該「屈曲部」が形成されていると判断すると、剛性可変部112に係る剛性可変制御長さを算出するようになっている(
図5参照)。具体的には、当該「屈曲部」の屈曲状態に応じて、すなわち、当該屈曲部に係る曲率半径の大小、および、当該屈曲部が生じている位置等の状態に応じて、対応する剛性可変部112における剛性を可変制御する長さ(湾曲部の基端部からの長さ)を制御する必要があるため、本実施形態においては、屈曲部検出部305が、挿入部11に当該「屈曲部」が形成されていると判断すると共に、当該剛性可変制御長さを算出するようになっている。たとえば、屈曲部検出部305は、屈曲率の分布と剛性可変制御長さの関係を事前に記憶しておくことで、剛性可変制御長さを算出する。
【0059】
なお、上述したように、挿入部11が湾曲し「屈曲部」が生じると屈曲部検出部305は当該「屈曲部」が形成されたことを剛性制御部302に伝え、これを受けて剛性制御部302は、後述するように剛性可変部112の剛性を高くするように制御することになるが、挿入部11を湾曲操作させただけで剛性可変部112の剛性が高くなるようだと却って不都合が生じる。
【0060】
本願発明は係る事情に鑑み、挿入部11に屈曲部が生じたことのみを剛性制御開始の条件とするのではなく、後述するように、術者が処置具を用いた処置を行っていることも剛性制御開始の条件とすることを特徴とするものである。
【0061】
<処置判断部306>
一方、処置判断部306は、制御部301の制御下に、術者による所定の処置が行われようとしているか否かを判断する。本実施形態においてこの所定の処置は、術者が内視鏡10における挿入部11を被検体の体腔内に挿入し、さらに、当該内視鏡10における前記チャンネル開口部18から処置具挿通チャンネルに向けて所定の処置具125を挿通した状態において当該処置具を用いて被検体に対して実施する処置を指すものとする。
【0062】
すなわち、本実施形態において処置判断部306は、術者が、まず挿入部11を被検体の体腔内に挿入し、さらに、前記チャンネル開口部18から処置具挿通チャンネルに向けて所定の処置具125を挿通した際、被検体の体腔内において当該処置具を用いての処置が行われようとしているか否かの判断を行う。
【0063】
具体的に、本第1の実施形態において処置判断部306は、操作部12におけるスコープスイッチ122からのオン信号を受け、当該処置具を用いての処置が行われようとしていると判断するようになっている。
【0064】
<剛性制御部302>
剛性制御部302は、制御部301の制御下に、挿入形状検出装置40における挿入形状情報取得部402から出力される挿入形状情報に基づき、剛性可変部112の駆動状態を制御するための動作を行うように構成されている。剛性可変部112は、上述したように、剛性制御部302により剛性の可変制御がなされるようになっている。
【0065】
剛性制御部302は、図示しない駆動回路、メモリおよび制御回路を有して構成されている。駆動回路は、当該制御回路の制御に応じて上述した剛性可変部112におけるコイルヒータを制御する。また、メモリには、所定の剛性制御情報が格納されている。例えば、挿入部11における剛性可変範囲を示す情報、および、剛性可変部112の制御用に算出される所定のパラメータに対応する閾値を示す情報を含む剛性制御情報が格納されている。制御回路は、メモリから読み込んだ剛性制御情報と、挿入形状情報取得部402から出力される挿入形状情報と、に基づき駆動回路を制御する。
【0066】
このように本第1の実施形態の剛性可変部112は、まず、本体装置30における剛性制御部302により、例えば、挿入部11における剛性可変範囲の曲げ剛性を当該剛性可変範囲の中央部から両端部に至る方向に沿って順次増加させるための動作を行うようになっている。
【0067】
一方、本第1の実施形態において剛性制御部302は、制御部301の制御下に、屈曲部検出部305および処置判断部306からの信号に基づき、剛性可変部112の剛性を制御するようになっている。
【0068】
具体的に、本第1の実施形態において剛性制御部302は、前記屈曲部検出部305における検出結果を取得し、当該検出結果に基づいて挿入部11の一部に所定の「屈曲部」が形成されていると判断した場合において、処置判断部306における検出結果を取得し、当該検出結果に基づいて所定の処置具125を用いた処置が行われようとしていると判断したときに、当該「屈曲部」内における基端側に位置する前記剛性可変部112の剛性を上げる制御を行うようになっている。
【0069】
なお本実施形態において本体装置30の各部は、個々の電子回路として構成されていてもよく、または、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路における回路ブロックとして構成されていてもよい。また、本実施形態においては、例えば、本体装置30が1つ以上のプロセッサ(CPU等)を具備して構成されていてもよい。
【0070】
<第1の実施形態の作用>
次に、本第1の実施形態において、形状解析部304、屈曲部検出部305および処置判断部306からの信号に基づき、剛性可変部112の剛性を制御する剛性制御部302の作用について、
図3、
図4および
図5を参照して説明する。
【0071】
図3は、第1の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、内視鏡挿入部を被検体体腔内に挿入した際において、挿入部に屈曲部が生じた際における剛性可変部の制御を示した説明図であり、
図4は、第1の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、内視鏡挿入部における屈曲部が体内壁を押圧している様子を示した要部拡大図である。また、
図5は、第1の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、内視鏡挿入部における屈曲部の発生状況を説明するための図である。
【0072】
本実施形態においては、まず挿入形状検出装置40における挿入形状情報取得部402(
図2参照)において、挿入部11に設けられたソースコイル群113から発せられる磁界を検出し、当該検出した磁界の強度に基づいてソースコイル群113に含まれる複数のソースコイル各々の位置に基づいて挿入部11の挿入形状を算出する。
【0073】
挿入形状情報取得部402は、当該算出した挿入形状を示す挿入形状情報を生成して本体装置30へ出力する。本体装置30において形状解析部304は、制御部301の制御下に、挿入形状検出装置40における挿入形状情報取得部402からの情報(挿入部11の挿入形状を算出した挿入形状を示す挿入形状情報)を取得して、挿入部11(例えば、湾曲部11Bから可撓管部11Cにかけて)の形状を解析する。
【0074】
具体的に形状解析部304は、湾曲する挿入部11の曲率半径を算出し、この算出結果を屈曲部検出部305に対して送出する。屈曲部検出部305は、制御部301の制御下に、形状解析部304において算出された、挿入部11の曲率半径の値に基づいて、挿入部11に屈曲部が生じているか否かを検出する。
【0075】
いま、例えば、挿入部11が
図3に示すように、被検体の大腸に挿入され下行結腸から横行結腸にかけて挿入され、この横行結腸の中ほどに、処置具による処置を要する病変が存在しているとする。このとき、挿入部11の湾曲部11Bから可撓管部11Cにかけての付近は、下行結腸と横行結腸との間の脾湾曲部付近において大きく湾曲することになる。
【0076】
挿入部11の湾曲部付近がこのように被検体の体腔内において大きく湾曲している状態において、形状解析部304は、挿入形状情報取得部402から取得した形状情報に基づいて湾曲する挿入部11の曲率半径を算出する。形状解析部304はこの算出結果を屈曲部検出部305に対して送出する。
【0077】
屈曲部検出部305は、制御部301の制御下に、形状解析部304において算出された、挿入部11の曲率半径の値に基づいて、挿入部11に屈曲部が生じているか否かを検出する。
【0078】
ここで、形状解析部304において算出した挿入部11の曲率半径の値が所定の値以下である場合、例えば
図5に示すように、湾曲部11Bにおいて曲率半径の値が小さく挿入部11が大きく湾曲している場合は、屈曲部検出部305は、当該挿入部11の湾曲部の一部において「屈曲部」が形成されていると判断する。
【0079】
具体的に、
図3に示すように、挿入部11の湾曲部11Bから可撓管部11Cにかけての領域が、被検体の脾湾曲部付近において屈曲頂点を有するように大きく湾曲しているような場合、屈曲部検出部305は、当該挿入部11の湾曲部の一部において「屈曲部」が形成されていると判断し、当該判断結果を、後段の剛性制御部302に対して出力する。
【0080】
さらに屈曲部検出部305は、挿入部11に当該「屈曲部」が形成されていると判断すると、剛性可変部112に係る剛性可変制御長さを算出する(
図5参照)。具体的には、当該「屈曲部」の屈曲状態に応じて、すなわち、当該屈曲部に係る曲率半径の大小、および、当該屈曲部が生じている位置等の状態に応じて、対応する剛性可変部112における剛性を可変制御する長さ(湾曲部の基端部からの長さ)を制御する必要があるため、本実施形態においては、屈曲部検出部305が、挿入部11に当該「屈曲部」が形成されていると判断すると共に、当該剛性可変制御長さを算出する。
【0081】
一方、処置判断部306は、制御部301の制御下に、術者が、まず挿入部11を被検体の体腔内に挿入し、さらに、前記チャンネル開口部18から処置具挿通チャンネルに向けて所定の処置具125を挿通した際、被検体の体腔内において当該処置具を用いての処置が行われようとしているか否かの判断を行う。
【0082】
具体的に、挿入部11の挿入後、当該挿入部先端面が横行結腸に存在する病変に対峙し、かつ、挿入部11の湾曲部11Bから可撓管部11Cにかけての付近が、
図3に示すように脾湾曲部付近にて大きく湾曲しているような状態において、術者が当該処置具を用いての処置を行うために操作部12におけるスコープスイッチ122をオンしたとする。
【0083】
処置判断部306は、当該スコープスイッチ122からのオン信号を受けると、術者が内視鏡10の処置具挿通チャンネルに当該処置具を挿通して当該処置具を用いての処置を行おうとしている、と判断する。そして処置判断部306は、この判断結果を後段の剛性制御部302に対して出力する。
【0084】
次に剛性制御部302は、制御部301の制御下に、通常は、例えば挿入部11における剛性可変範囲の曲げ剛性を当該剛性可変範囲の中央部から両端部に至る方向に沿って順次増加させるように剛性可変部112の剛性を制御するための動作を行う。
【0085】
一方、本第1の実施形態において剛性制御部302は、制御部301の制御下に、屈曲部検出部305および処置判断部306からの信号に基づき、剛性可変部112の剛性を制御する。
【0086】
すなわち、剛性制御部302は、屈曲部検出部305から、挿入部11の一部に所定の「屈曲部」が形成されているとの判断結果を受信する共に上述した剛性可変制御長さに係る情報を受信した場合において、処置判断部306から所定の処置具125を用いた処置が行われようとしていると判断結果を受信したときに、当該「屈曲部」内における基端側に位置する前記剛性可変部112の剛性を高くする制御を行う。
【0087】
このとき、
図3に示すように、挿入部11の湾曲部11Bから可撓管部11Cにかけての領域において剛性可変部112の剛性が高くなるよう制御されることにより、当該「屈曲部」内の基端側の剛性が高くなる。
【0088】
ここで、術者が挿入部11の可撓管部11Cの捻る操作を行ったとする。このとき挿入部11は、上述したように「屈曲部」内の基端側の剛性が高くなった状態になっているので、
図4に示すように、可撓管部11Cの捻り操作に伴って「屈曲部」における屈曲頂点付近が体内壁の接触点に押し付けられることになる。
【0089】
その後、屈曲頂点付近が体内壁の接触点に押し付けられた状態でさらに挿入部11の可撓管部11Cに捻り操作が加わると、「屈曲部」による体内壁への押し付け力が最大となると共に、当該「屈曲部」の押し付け部である体内壁の接触点を支点として挿入部先端部が振られることになり、処置具、例えばITナイフによる病変切開を安定的に行うことが可能となる。
【0090】
<第1の実施形態の内視鏡システムの効果>
このように、本第1の実施形態の内視鏡システムによると、挿入部における処置具挿通チャンネルに処置具を挿通しての処置を行う際、粘液などの影響を受けずに挿入部先端部を意図したとおりに安定して操作することを可能とする。
【0091】
なお、本実施形態においては挿入形状検出装置40として磁気センサ方式を採用したが、これに限らず、挿入形状検出装置は、形状センサおよび挿入量センサを採用してもよく、また、超音波方式、光学式、加速度センサを用いた方式などであってよい。すなわち、被検体に対する、または、被検体が置かれた室内などの場所に対する挿入部11の位置もしくは相対位置を検出できるものであればよい。
【0092】
具体的には、例えば、上述した挿入量センサとしては、必要に応じて回転量(ねじれ量)センサを含むものであってもよい。被検体(患者)に挿入した挿入部の回転量(ねじれ量)を検出することで、被検体(患者)との相対位置をより的確に求めることができる。
【0093】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0094】
本第2の実施形態に係る内視鏡システムは、挿入部に形成された「屈曲部」が被検体における体腔部の内壁面に押圧されているか否かを検出し、当該屈曲部が被検体における体腔部の内壁面に押圧されていると判断したとき、屈曲部内における基端側に位置する前記剛性可変部の剛性を上げる制御を行うことを特徴とする。
【0095】
その他の構成は第1の実施形態と同様であるので、ここでは第1の実施形態との差異のみの説明にとどめ、共通する部分の説明については省略する。
【0096】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る内視鏡システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【0097】
第2の実施形態において本体装置30Bは、挿入部11に上述した如き「屈曲部」が形成されている状態において、当該屈曲部が前記被検体における体腔部の内壁面に押圧されているか否かを検出する押圧検出部307を有する。
【0098】
この押圧検出部307は、画像処理部303において画像処理された内視鏡画像に基づいて、挿入部11に形成された「屈曲部」が被検体における体腔部の内壁面に押圧されているか否かを検出する。例えば、押圧検出部307は、内視鏡画像内に管腔部と内壁面部の画面内割合を画像処理により算出し、内壁面の割合が多いときに内壁面に押圧されていると判断する。押圧検出部307は、この検出結果(押圧情報)を後段の剛性制御部302に送出する。
【0099】
第2の実施形態において剛性制御部302は、制御部301の制御下に、屈曲部検出部305および処置判断部306からの信号に基づく剛性可変部112の剛性制御に加え、押圧検出部307から取得した検出結果(押圧情報)に基づいて、剛性可変部112の剛性を制御する。
【0100】
すなわち、第2の実施形態において剛性制御部302は、押圧検出部307からの押圧情報を取得することにより、より正確に挿入部11における「屈曲部」が被検体における体腔部の内壁面に押圧されているか否かを判断することができ、これにより、屈曲部内における基端側に位置する前記剛性可変部112の剛性を上げる制御を、より的確に行うことができる。
【0101】
<第2の実施形態の内視鏡システムの効果>
第2の実施形態に係る内視鏡システムによると、押圧検出部307からの押圧情報を取得することにより、剛性制御部302は、屈曲部内における基端側に位置する剛性可変部112の剛性制御をより的確に行うことができる。
【0102】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0103】
本第3の実施形態に係る内視鏡システムは、操作部12におけるアングルノブ121の回転量に基づいて挿入部11の湾曲部の屈曲量を算出し、当該屈曲量に応じて剛性可変部112の剛性を制御することを特徴とする。
【0104】
その他の構成は第1の実施形態と同様であるので、ここでは第1の実施形態との差異のみの説明にとどめ、共通する部分の説明については省略する。
【0105】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る内視鏡システムの構成を示すブロック図であり、
図8は、第3の実施形態に係る内視鏡システムの電気的な構成を示すブロック図である。また、
図9は、第3の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、内視鏡挿入部における屈曲部の発生状況を説明するための図である。
【0106】
第3の実施形態に係る内視鏡システムは、第1の実施形態に比して、いわゆる内視鏡挿入形状検出装置(UPD)の機能を備えない。したがって、
図7、
図8に示すように、第1の実施形態に対して、挿入形状検出装置40および挿入部11内に配設されたソースコイル群113が省かれている。併せて第3の実施形態においては、本体装置30Cは、挿入形状情報取得部402からの形状情報を取得する形状解析部304についても省かれている。
【0107】
一方、第3の実施形態においては、屈曲部検出部305は、操作部12におけるアングルノブ121からの回転量に係る情報を取得する。ここで、挿入部11における湾曲部11Bは、操作部12に設けられた前記アングルノブ121の操作に応じて湾曲することができるように構成されている。
【0108】
本実施形態において屈曲部検出部305は、取得した当該アングルノブ121の回転量に係る情報に基づいて、挿入部11の湾曲部の屈曲量を算出し、この算出結果から挿入部11に屈曲部が生じているか否かを検出する。
【0109】
具体的には、アングルノブ121の回転量から算出された挿入部11の湾曲部の屈曲量に対応する曲率半径の値が所定値以下の場合、例えば、
図9に示すように、湾曲部が大きく湾曲する場合、挿入部11の湾曲部の一部において「屈曲部」が形成されていると判断し、当該判断結果を、後段の剛性制御部302に対して出力する。
【0110】
その他に作用効果、すなわち、剛性制御部302による剛性可変部112の剛性制御については、第1の実施形態と同様であるので、ここで説明は省略する。
【0111】
<第3の実施形態の内視鏡システムの効果>
このように本第3の実施形態に係る内視鏡システムによると、いわゆる内視鏡挿入形状検出装置(UPD)の機能を備えずとも、アングルノブ121からの回転量情報に基づいて挿入部11の湾曲部に係る「屈曲部」の形成を判断することができ、この判断に基づいて、剛性制御部302による剛性可変部112の剛性制御を可能とする。
【0112】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0113】
第4の実施形態に係る内視鏡システムは、第1の実施形態に比して、挿入部の長手方向に対して複数のセグメントを有して埋設された剛性可変部を備え、挿入部11における可撓管部の任意の位置において、その屈曲状態に応じて屈曲部から基端側の剛性を制御することを特徴とする。
【0114】
その他の構成は第1の実施形態と同様であるので、ここでは第1の実施形態との差異のみの説明にとどめ、共通する部分の説明については省略する。なお、第4の実施形態の内視鏡システム1は、被検体の食道、胃、十二指腸等の上部消化管に経口挿入する、いわゆる上部消化管内視鏡を含む内視鏡システムを想定する。
【0115】
図10は、本発明の第4の実施形態に係る内視鏡システムの構成を示すブロック図であり、
図11は、第4の実施形態に係る内視鏡システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【0116】
図10に示すように、本第4の実施形態において挿入部11には、複数の剛性可変部112A,112B,112C,112Dが挿入部11の長手方向に沿って埋設されている。この第4の実施形態における前記剛性可変部112A,112B,112C,112Dは、第1の実施形態における剛性可変部112と同様に、図示しないコイルヒータと形状記憶部材とを有するアクチュエータとして構成され、湾曲部11Bの基端部から可撓管部11Cの先端部にかけての所定の範囲において、挿入部11の長手方向に沿って設けられている。
【0117】
なお、本実施形態においては、4つのセグメントとして構成された剛性可変部112A,112B,112C,112Dを備えるものとしたが、これに限らず、多数のセグメントとして構成されるものであってもよく、また、その剛性可変部自体の構成も、後述するような(
図23~
図28参照)多様な構成を成す剛性可変部として構成されてもよい。
【0118】
図11に示すように、本第4の実施形態における本体装置30Dは、第1の実施形態における本体装置30と同様の構成をなし、上述した内視鏡10における剛性可変部112A,112B,112C,112Dは、第1の実施形態と同様に、制御部301の制御下に、形状解析部304、屈曲部検出部305、処置判断部306からの信号に基づいて剛性制御部302により剛性制御がなされるようになっている。
【0119】
<第4の実施形態の作用>
次に、本第4の実施形態において、形状解析部304、屈曲部検出部305および処置判断部306からの信号に基づき、剛性可変部112A,112B,112C,112Dの剛性を制御する剛性制御部302の作用について、
図12および
図13を参照して説明する。
【0120】
図12は、第4の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、内視鏡挿入部を被検体体腔内に挿入した際において、挿入部に屈曲部が生じた際における剛性可変部の制御を示した説明図であり、
図13は、第4の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、内視鏡挿入部における屈曲部が体内壁を押圧している様子を示した要部拡大図である。
【0121】
本第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、まず挿入形状検出装置40における挿入形状情報取得部402(
図11参照)は、ソースコイル群113に含まれる複数のソースコイル各々の位置に基づいて挿入部11の挿入形状を算出し、当該算出した挿入形状を示す挿入形状情報を生成して本体装置30Dへ出力する。
【0122】
さらに本体装置30Dにおいて形状解析部304は、制御部301の制御下に、挿入形状検出装置40における挿入形状情報取得部402からの情報を取得して、挿入部11(例えば、湾曲部11Bから可撓管部11Cにかけて)の形状を解析する。
【0123】
形状解析部304、屈曲部検出部305、処置判断部306の作用は、第1の実施形態と同様であり、屈曲部検出部305は、制御部301の制御下に、形状解析部304において算出された、挿入部11の曲率半径の値に基づいて、挿入部11に屈曲部が生じているか否かを検出する。
【0124】
いま、例えば、挿入部11が
図12に示すように、被検体の噴門部から胃に挿入され、胃体部小彎側に処置具による処置を要する病変が存在しているとする。このとき、挿入部11の湾曲部11Bから可撓管部11Cにかけての領域は、胃体部大彎側から幽門前庭部付近において大きく湾曲することになる。
【0125】
挿入部11の湾曲部11Bから可撓管部11Cにかけての領域がこのように被検体の体腔内において大きく湾曲している状態において、形状解析部304は、挿入形状情報取得部402から取得した形状情報に基づいて湾曲する挿入部11の曲率半径を算出する。形状解析部304はこの算出結果を屈曲部検出部305に対して送出する。
【0126】
本第4の実施形態においても屈曲部検出部305は、制御部301の制御下に、形状解析部304において算出された、挿入部11の曲率半径の値に基づいて、挿入部11に屈曲部が生じているか否かを検出する。
【0127】
ここで、形状解析部304において算出した挿入部11の曲率半径の値が所定の値以下である場合、湾曲部11Bにおいて曲率半径の値が小さく挿入部11が大きく湾曲している場合は、屈曲部検出部305は、第1の実施形態と同様に、当該挿入部11の湾曲部の一部において「屈曲部」が形成されていると判断する。
【0128】
具体的に、
図12に示すように、挿入部11の湾曲部11Bから可撓管部11Cにかけての領域が、被検体の胃体部大彎側から幽門前庭部付近において屈曲頂点を有するように大きく湾曲しているような場合、屈曲部検出部305は、当該挿入部11の湾曲部の一部において「屈曲部」が形成されていると判断し、当該判断結果を、後段の剛性制御部302に対して出力する。
【0129】
一方、第4の実施形態においても処置判断部306は、制御部301の制御下に、術者が、まず挿入部11を被検体の体腔内に挿入し、さらに、前記チャンネル開口部18から処置具挿通チャンネルに向けて所定の処置具125を挿通した際、被検体の体腔内において当該処置具を用いての処置が行われようとしているか否かの判断を行う。
【0130】
具体的に、挿入部11の挿入後、当該挿入部先端面が胃体部小彎側に存在する病変に対峙し、かつ、挿入部11の湾曲部11Bから可撓管部11Cにかけての領域が、
図12に示すように胃体部大彎側から幽門前庭部付近において大きく湾曲しているような状態において、術者が当該処置具を用いての処置を行うために操作部12におけるスコープスイッチ122をオンしたとする。
【0131】
処置判断部306は、当該スコープスイッチ122からのオン信号を受けると、術者が内視鏡10の処置具挿通チャンネルに当該処置具を挿通して当該処置具を用いての処置を行おうとしている、と判断する。そして処置判断部306は、この判断結果を後段の剛性制御部302に対して出力する。
【0132】
次に剛性制御部302は、本第4の実施形態においても、屈曲部検出部305および処置判断部306からの信号に基づき、剛性可変部112A,112B,112C,112Dの剛性を制御する。
【0133】
すなわち、剛性制御部302は、屈曲部検出部305から、挿入部11の一部に所定の「屈曲部」が形成されているとの判断結果を受信した場合において、処置判断部306から所定の処置具125を用いた処置が行われようとしていると判断結果を受信したときに、当該「屈曲部」内における基端側に位置する前記剛性可変部112A,112B,112C,112Dそれぞれの剛性を高く、または低くする剛性制御を行う。
【0134】
具体的には、
図12に示すように、挿入部11の湾曲部11Bから可撓管部11Cにかけての領域において、先端側から順に配設された剛性可変部112A,112B,112C,112Dそれぞれの剛性を独立して制御する。
【0135】
すなわち、剛性可変部112A,112B,112C,112Dのうち、挿入部11の湾曲部11Bから可撓管部11Cにかけての領域において「屈曲部」が形成される領域に対応する剛性可変部112Bおよび剛性可変部112Cの剛性を高くする一方で、当該「屈曲部」から外れる領域に対応する剛性可変部112Aおよび剛性可変部112Dの剛性については低くすることで、相対的に、剛性可変部112Bおよび剛性可変部112Cの剛性を高くすることができ、より効果的に当該「屈曲部」を体内壁に押し付けることができる(
図13参照)。
【0136】
第4の実施形態においても、術者が挿入部11の可撓管部11Cの捻る操作を行った際、「屈曲部」による体内壁への押し付け力が最大となると共に、当該「屈曲部」の押し付け部である体内壁の接触点を支点として挿入部先端部が振られることになり、処置具、例えばITナイフによる病変切開を安定的に行うことが可能となる。
【0137】
<第4の実施形態の内視鏡システムの効果>
このように、本第4の実施形態の内視鏡システムによると、第1の実施形態と同様に挿入部における処置具挿通チャンネルに処置具を挿通しての処置を行う際、粘液などの影響を受けずに挿入部先端部を意図したとおりに安定して操作することを可能とすると共に、挿入部のより広範囲の任意の位置において的確に剛性制御をすることができる。
【0138】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0139】
第5の実施形態に係る内視鏡システムは、術者によるスイッチ操作(トリガー)に依らずとも、処置具による処置が行われることを検知することを特徴とする。
【0140】
その他の構成は第1の実施形態と同様であるので、ここでは第1の実施形態との差異のみの説明にとどめ、共通する部分の説明については省略する。
【0141】
図14は、本発明の第5の実施形態に係る内視鏡システムの構成を示すブロック図であり、
図15は、第5の実施形態に係る内視鏡システムの電気的な構成を示すブロック図である。また、
図16は、第5の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、処置具挿通センサを示した要部拡大図であり、
図17は、第5の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、処置具挿通センサを示した要部拡大斜視図である。
【0142】
図14、
図15、
図16に示すように、本第5の実施形態においてチャンネル開口部18の近傍には、処置具125が処置具挿通チャンネルに挿入されたことを検知する処置具挿通センサ123が配設されている。
【0143】
図17に示すように、処置具挿通センサ123は、チャンネル開口部18における処置具挿通チャンネルの外周面側に配設されており、処置具125が当該チャンネル開口部18から処置具挿通チャンネルに向けて挿入された際、当該処置具125の通過を検知するセンサである。
【0144】
本第5の実施形態において本体装置30Eに設けられた処置判断部306は、前記処置具挿通センサ123の出力信号を受信するように構成されている。処置判断部306は、本第5の実施形態においても、制御部301の制御下に、術者による所定の処置が行われようとしているか否かを判断する。
【0145】
すなわち、本第5の実施形態において処置判断部306は、術者が、まず挿入部11を被検体の体腔内に挿入し、さらに、前記チャンネル開口部18から処置具挿通チャンネルに向けて所定の処置具125を挿通した際、前記処置具挿通センサ123からの出力信号に基づいて、被検体の体腔内において当該処置具を用いての処置が行われようとしているか否かの判断を行う。
【0146】
具体的に、本第5の実施形態において処置判断部306は、処置具挿通センサ123からのオン信号を受け、すなわち、チャンネル開口部18から当該処置具125が処置具挿通チャンネルに向けて挿入されたことを受けて、当該処置具を用いての処置が行われようとしていると判断するようになっている。
【0147】
その他に作用効果、すなわち、剛性制御部302による剛性可変部112の剛性制御については、第1の実施形態と同様であるので、ここで説明は省略する。
【0148】
<第5の実施形態の内視鏡システムの効果>
このように本第5の実施形態に係る内視鏡システムによると、術者によるスイッチ操作(トリガー)に依らずとも、処置具による処置が行われることを確実に検知することができる。
【0149】
<第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
【0150】
第6の実施形態に係る内視鏡システムも、第5の実施形態と同様に、術者によるスイッチ操作(トリガー)に依らずとも、処置具による処置が行われることを検知することを特徴とする。
【0151】
その他の構成は第1の実施形態と同様であるので、ここでは第1の実施形態との差異のみの説明にとどめ、共通する部分の説明については省略する。
【0152】
図18は、本発明の第6の実施形態に係る内視鏡システムの電気的な構成を示すブロック図であり、
図19は、第6の実施形態に係る内視鏡システムにおいて、画像処理情報を受けた処置判断部の判断を説明する図である。
【0153】
図18に示すように、本第6の実施形態において本体装置30Fに設けられた処置判断部306は、画像処理部303からの内視鏡画像に係る信号を取得する。そして第6の実施形態において処置判断部306は、取得した内視鏡画像に基づいて(
図19参照)、ターゲットである病変の近傍に処置具125が到達しているか否かを判定することで、術者による所定の処置が行われようとしているか否かを判断する。
【0154】
すなわち、本第6の実施形態において処置判断部306は、術者が、まず挿入部11を被検体の体腔内に挿入し、さらに、前記チャンネル開口部18から処置具挿通チャンネルに向けて所定の処置具125を挿通し、当該処置具125の先端部分が病変部を映す画面上に現れたことを所定の画像処理技術により検知し(
図19参照)、当該画像認識の結果に基づいて、被検体の体腔内において当該処置具を用いての処置が行われようとしているか否かの判断を行う。
【0155】
その他に作用効果、すなわち、剛性制御部302による剛性可変部112の剛性制御については、第1の実施形態と同様であるので、ここで説明は省略する。
【0156】
<第6の実施形態の内視鏡システムの効果>
このように本第6の実施形態に係る内視鏡システムによると、術者によるスイッチ操作(トリガー)に依らずとも、処置具による処置が行われることを確実に検知することができる。
【0157】
<第7の実施形態>
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。
【0158】
第7の実施形態に係る内視鏡システムは、内視鏡画像におけるターゲット像(病変)に対する、処置具挿通チャンネルに挿通した処置具の先端像との位置関係の変位が少なくなるように剛性可変部の剛性を制御することを特徴とする。
【0159】
その他の構成は第1の実施形態と同様であるので、ここでは第1の実施形態との差異のみの説明にとどめ、共通する部分の説明については省略する。
【0160】
図20は、本発明の第7の実施形態に係る内視鏡システムにおける挿入部安定度算出部の作用を説明するための図であり、
図21は、第7の実施形態に係る内視鏡システムにおける挿入部安定度算出部の作用を説明するための図である。また、
図22は、第7の実施形態に係る内視鏡システムにおける挿入部安定度算出部の作用を説明するための図である。
【0161】
図20に示すように本第7の実施形態の内視鏡システムは、本体装置30Gに、挿入部11が被検体の体腔内に挿入されている際、当該挿入部11の安定度を算出する挿入部安定度算出部309を備える。
【0162】
挿入部安定度算出部309は、まず、挿入部11が被検体の体腔内に挿入されている際において、挿入部11を被検体の体腔部における内壁に押し付けながら捻る動作があったか否かを判定する。例えば、挿入部安定度算出部309は、画像処理部303からの内視鏡画像を取得し、当該取得した内視鏡画像に基づいて、すなわち、ターゲット像(病変)と、処置具挿通チャンネルに挿通した処置具の先端像とが映し出されている内視鏡画像の特徴点の動き情報に基づいて、捻り動作の有無を判定する。そして、術者が挿入部11に対して捻り操作を加えたと判定した際における、当該ターゲット像(病変)に対する処置具先端像との相対的位置関係の変位の度合いを算出する。
【0163】
なお、上述した捻り動作の有無の判定は、内視鏡画像の解析に基づいての判定の他、例えば、挿入部11に設けた形状センサからの情報に基づいて判定してもよく、この場合、急激な形状変化にあった場合には、内壁に押し付けながら捻る動作があった判断できる。
【0164】
本第7の実施形態においては、この相対的位置関係の変位の度合いを挿入部11の「安定度」とする。具体的には、この相対的位置関係の変位が大きいとき、すなわち、術者が挿入部11に対して捻り操作を加えた際における、当該ターゲット像(病変)に対する処置具先端像との相対的位置関係の変位が大きいときは、挿入部11の安定度は低いと言えるが、本実施形態においては、当該変位の逆数を安定度の値とする。
【0165】
一方、本第7の実施形態において剛性制御部302は、挿入部安定度算出部309において算出した上記「安定度」の値の算出結果を取得し、当該算出結果に基づいて、挿入部11の「安定度」の値が所定値未満のときには(すなわち、術者が挿入部11に対して捻り操作を加えた際における、当該ターゲット像(病変)に対する処置具先端像との相対的位置関係の変位が大きいときには)、剛性可変部112の剛性を上げる制御を継続し、挿入部11の「安定度」の値が所定値以上のときには(すなわち、術者が挿入部11に対して捻り操作を加えた際における、当該ターゲット像(病変)に対する処置具先端像との相対的位置関係の変位が小さいときには)、剛性可変部112の剛性を上げる制御を停止する。
【0166】
具体的には、
図21に示すように、いま、挿入部11に形成された「屈曲部」による体腔部体内壁への押し付け力が弱いときに挿入部11の捻り操作を行うと、画像処理部303からの内視鏡画像(ターゲット像(病変)と、処置具挿通チャンネルに挿通した処置具の先端像とが映し出されている内視鏡画像)において、処置具先端像に対してターゲット像(病変)が大きく移動し、当該ターゲット像(病変)に対する処置具先端像との相対的位置関係の変位は大きく、すなわち、挿入部11の「安定度」は低いといえる。
【0167】
このように挿入部11の「安定度」が低い場合、本第7の実施形態における剛性制御部302は、剛性可変部112の剛性を上げるよう制御する。
【0168】
この剛性制御部302の制御により剛性可変部112の剛性が上がり、挿入部11に形成された「屈曲部」による体腔部体内壁への押し付け力が大きくなると、
図22に示すように、挿入部11の捻り操作を行っても、ターゲット像(病変)に対する処置具先端像との相対的位置関係の変位は小さくなり、すなわち、挿入部11の「安定度」が高くなる。
【0169】
このように挿入部11の「安定度」が高くなると、剛性制御部302は、剛性可変部112の剛性をこれ以上高くしないように、剛性を高くする制御を停止する。
【0170】
さらに、
図22に示すように本第7の実施形態においては、挿入部安定度算出部309および剛性制御部302は、挿入部11の捻り操作を行いながら内視鏡画像を監視し、当該ターゲット像(病変)に対する処置具先端像との相対的位置関係の変位が小さくまで剛性可変部112の剛性を上げるよう剛性を制御することもできる。
【0171】
<第7の実施形態の内視鏡システムの効果>
このように本第7の実施形態に係る内視鏡システムによると、内視鏡画像におけるターゲット像(病変)に対する、処置具挿通チャンネルに挿通した処置具の先端像との位置関係の変位が少なくなるように剛性可変部の剛性を制御するので、処置具による処置を確実に安定させることができる。また、必要以上に剛性を上げずに済むため、被検体の負担を低減することができる。
【0172】
次に、上述した第1~第7の実施形態の内視鏡システムにおける剛性可変部112として適用可能な他の構成例について説明する。なお、以下に示す例においては、当該剛性可変部112として適用可能な例として6つの構成例を挙げている。また、これら構成例は、それぞれ<剛性制御システムの構成例1~6>として説明する。
【0173】
<剛性制御システムの構成例1>
図23は、剛性可変部112として適用可能な他の構成例である剛性可変装置210と剛性制御回路250を示している。
【0174】
図23に示されるように、剛性可変装置210は、異なる剛性状態を取り得ることにより可撓管部11Cに異なる剛性を提供する機能を有しており、第一の相と第二の相の間で相が移り変わり得る形状記憶部材220と、形状記憶部材220に第一の相と第二の相の間の相の移り変わりを引き起こさせる複数の誘起部材230を備えている。
【0175】
形状記憶部材220は、第一の相にあるときは、外力に従って容易に変形し得る軟質状態を取り、すなわち低い弾性係数を示し、したがって、可撓管部11Cに比較的低い剛性を提供する。また、形状記憶部材220は、第二の相にあるときは、外力に抗してあらかじめ記憶している記憶形状を取る傾向を示す硬質状態を取り、すなわち高い弾性係数を示し、したがって、可撓管部11Cに比較的高い剛性を提供する。
【0176】
各誘起部材230は、熱を発する性能を有している。形状記憶部材220は、誘起部材230の加熱に対して、第一の相から第二の相に相が移り変わる性質を有している。
【0177】
形状記憶部材220は細長く、複数の誘起部材230は、形状記憶部材220の長手軸に沿って間隔を置いて配置されている。
【0178】
形状記憶部材220は、例えば形状記憶合金から構成されていてよい。形状記憶合金は、これに限らないが、例えばNiTiを含む合金であってよい。また、形状記憶部材220は、これに限らず、形状記憶ポリマー、形状記憶ゲル、形状記憶セラミックなど、他の材料から構成されていてもよい。
【0179】
誘起部材230は、例えばヒーターで構成されていてよい。つまり、誘起部材230は、それを通って流れる電流の供給に対して熱を発する性質を有していてよい。誘起部材230は、例えば電熱線、つまり電気抵抗の大きい導電性部材であってよい。また、誘起部材230は、熱を発する性能を有していればよく、ヒーターに限らず、撮像素子、ライトガイド、そのほかの素子や部材等で構成されていてもよい。さらには、誘起部材230は、化学反応によって熱を発する構造体で構成されていてもよい。
【0180】
形状記憶部材220は、導電性材料から構成されていてよい。例えば、形状記憶部材220の周囲には絶縁膜242が設けられている。絶縁膜242は、形状記憶部材220と誘起部材230の間の短絡を防止する働きをする。
【0181】
誘起部材230は、導電性材料から構成されていてよい。例えば、誘起部材230の周囲には絶縁膜244が設けられている。絶縁膜244は、形状記憶部材220と誘起部材230の間の短絡と、誘起部材230の隣接する部分間の短絡を防止する働きをする。
【0182】
剛性制御回路250は、複数の誘起部材230をそれぞれ駆動する複数の駆動回路252を含んでいる。各駆動回路252は、電源254とスイッチ256を含んでいる。各駆動回路252は、対応の誘起部材230の両端に電気的に接続されている。各駆動回路252は、スイッチ256のオンすなわち閉じ動作に応じて、対応の誘起部材230に電流を供給し、また、スイッチ256のオフすなわち開き動作に応じて、対応の誘起部材230に対する電流の供給を停止する。誘起部材230は、電流の供給に応じて熱を発する。
【0183】
形状記憶部材220は、ワイヤ状であってよい。誘起部材230は、形状記憶部材220の近くに配されている。誘起部材230は、コイル状であってよく、形状記憶部材220は、コイル状の誘起部材230の内側を通って延びていてよい。
【0184】
駆動回路252のスイッチ256がオフ状態にあるとき、形状記憶部材220は、弾性係数が低い軟質状態である第一の相にある。第一の相では、形状記憶部材220は、外力に従って容易に変形する状態にある。
【0185】
駆動回路252のスイッチ256がオン状態に切り換えられると、誘起部材230に電流が流れ、誘起部材230が熱を発する。その結果、形状記憶部材220は、弾性係数が高い硬質状態である第二の相に移り変わる。この第二の相では、形状記憶部材220は記憶形状を取る傾向を示す。
【0186】
形状記憶部材220が第一の相にあるとき、剛性可変装置210は、比較的低い剛性を可撓管部11Cに提供し、可撓管部11Cに作用する外力すなわち形状記憶部材220を変形させ得る力に従って容易に変形する。
【0187】
また、形状記憶部材220が第二の相にあるとき、剛性可変装置210は、比較的高い剛性を可撓管部11Cに提供し、可撓管部11Cに作用する外力すなわち形状記憶部材220を変形させ得る力に抗して記憶形状に戻る傾向を示す。
【0188】
例えば、各誘起部材230の近くに位置している形状記憶部材220の部分の相が剛性制御回路250によって第一の相と第二の相の間で切り換えられることによって、可撓管部11Cの剛性が切り換えられる。複数の誘起部材230に対する電流の供給は剛性制御回路250によって独立に切り換えられることにより、形状記憶部材220の複数の部分の相が独立して切り換えられ、したがって、可撓管部11Cの複数の部分の剛性が独立して切り換えられる。これにより、剛性可変装置210は、所望の複雑な剛性分布を可撓管部11Cに提供することが可能である。
【0189】
<剛性制御システムの構成例2>
図24は、剛性可変部112として適用可能な他の構成例である剛性可変装置310を示し、高剛性状態から低剛性状態への剛性可変装置310の剛性の切り替えの様子を示している。
図24において、高剛性状態にある剛性可変装置310が上側に描かれ、低剛性状態にある剛性可変装置310が下側に描かれている。
【0190】
剛性可変装置310は、装着対象である可撓管部11Cに異なる剛性を提供するための装置である。剛性可変装置310は、第1の長手部材320と、第2の長手部材330を備えている。第2の長手部材330は、第1の長手部材320に沿って隣接して配置されている。例えば、第1の長手部材320は外管で構成され、第2の長手部材330は、外管の内部に配置された芯部材で構成されている。例えば、外管は、軸に垂直な断面形状が環形状であり、芯部材は、軸に垂直な断面の外周が円形状である。この場合、どの方向の曲がりに対しても安定した曲げ剛性を提供する。
【0191】
第1の長手部材320は、複数の高曲げ剛性部322と複数の低曲げ剛性部324を備えている。例えば、第1の長手部材320は、6つの高曲げ剛性部322と5つの低曲げ剛性部324を備えている。高曲げ剛性部322と低曲げ剛性部324は、第1の長手部材320の軸に沿って連続して交互に並んで配置されている。高曲げ剛性部322は、低曲げ剛性部324の曲げ剛性よりも高い曲げ剛性を有している。このため、第1の長手部材320は、低曲げ剛性部324の部分では比較的曲がりやすく、高曲げ剛性部322の部分では比較的曲がりにくい。
【0192】
第2の長手部材330は、複数の非曲がり規制部332と複数の曲がり規制部334を備えている。例えば、第2の長手部材330は、6つの非曲がり規制部332と5つの曲がり規制部334を備えている。非曲がり規制部332と曲がり規制部334は、第2の長手部材330の軸に沿って連続して交互に並んで配置されている。曲がり規制部334は、非曲がり規制部332の曲げ剛性よりも高い曲げ剛性を有している。このため、第2の長手部材330は、非曲がり規制部332の部分では比較的曲がりやすく、曲がり規制部334の部分では比較的曲がりにくい。例えば、非曲がり規制部332は、比較的径の細い細径部で構成され、曲がり規制部334は、比較的径の太い太径部で構成される。曲がり規制部334は、例えば、端部から反対側の端部までの太さが一定である。
【0193】
この剛性可変装置310では、第1の長手部材320に対する第2の長手部材330の相対位置が変更されることによって、低曲げ剛性部324における本剛性可変装置の曲げ剛性が、相対的に高い状態である高剛性状態と、相対的に低い状態である低剛性状態との間で切り替え可能である。
【0194】
高剛性状態から低剛性状態への切り替えは、第1の長手部材320の軸に沿った第1の長手部材320に対する第2の長手部材330の相対移動によっておこなわれる。
【0195】
高剛性状態では、第1の長手部材320の低曲げ剛性部324を含む範囲に第2の長手部材330の曲がり規制部334が配置されている。曲がり規制部334は、第1の長手部材320の低曲げ剛性部324の曲がりを規制する。このように、第2の長手部材330が、第1の長手部材320の曲がりを規制することによって、剛性可変装置310が高剛性状態すなわち硬い状態となる。
【0196】
また、低剛性状態では、第1の長手部材320の低曲げ剛性部324を含む範囲に第2の長手部材330の非曲がり規制部332が配置されている。非曲がり規制部332は、曲がり規制部334と比較して、第1の長手部材320の低曲げ剛性部324の曲がりを規制する程度が低い。このため、剛性可変装置310は、低曲げ剛性部324の部分で曲がりやすい低剛性状態すなわち柔らかい状態となる。
【0197】
また別の見方によれば、第1の長手部材320は、高剛性状態において、曲がり規制部334によって曲がりが規制される被規制部342を有している。被規制部342は、第1の長手部材320の第1の高曲げ剛性部322の一部344と、第1の高曲げ剛性部322に隣接する低曲げ剛性部324と、低曲げ剛性部324を第1の高曲げ剛性部322とで挟む第2の高曲げ剛性部322の一部346とを含んでいる。言い換えれば、被規制部342は、低曲げ剛性部324と、低曲げ剛性部324の一方の側たとえば
図24の左側に位置する高曲げ剛性部322の一部344と、低曲げ剛性部324の他方の側たとえば
図24の右側に位置する高曲げ剛性部322の一部346とを含んでいる。被規制部342の長さすなわち第1の長手部材320の軸に沿った被規制部342の寸法は、曲がり規制部334の長さすなわち第2の長手部材330の軸に沿った寸法に等しい。
【0198】
被規制部342に対応する位置に曲がり規制部334があるとき、曲がり規制部334は低曲げ剛性部324の曲がりを規制する。これに対して、被規制部342に対応する位置に非曲がり規制部332があるとき、非曲がり規制部332は、被規制部342に対応する位置に曲がり規制部334があるときよりも少なく低曲げ剛性部324の曲がりを規制する。したがって、被規制部342に対応する位置に曲がり規制部334があるときには、被規制部342に対応する位置に非曲がり規制部332があるときよりも、被規制部342の領域における剛性可変装置310の曲げ剛性が高まる。
【0199】
第1の長手部材320と第2の長手部材330の曲がり規制部334の間には隙間がある。この場合、高剛性状態において、被規制部342の曲がりの大きさが、特定の曲がりの大きさである規制発生点以上となったときに、曲がり規制部334が被規制部342の曲がりの拡大を規制し、被規制部342の部分の剛性可変装置310の曲げ剛性を高める。その結果、剛性可変装置310の曲げ剛性は、曲がり始めは低いままだが、曲がりが一定以上大きくなり、隙間が埋まったときに急激に剛性が高まる。
【0200】
このように、第1の長手部材320と第2の長手部材330の相対移動によって、剛性可変装置310の剛性を、高剛性すなわち硬い状態と低剛性すなわち柔らかい状態の間で切り替えることができる。
【0201】
低剛性状態では、第1の長手部材320は、低曲げ剛性部324において曲がりやすい。これに対して、高剛性状態では、第1の長手部材320は、低曲げ剛性部324においても曲がりにくい。したがって、剛性可変装置310における低剛性状態と高剛性状態の切り替えは、関節をロックまたはロック解除する動きと言える。
【0202】
<剛性制御システムの構成例3>
図25は、剛性可変部112として適用可能な他の構成例である剛性制御システム410を示している。
図25に示すように、剛性制御システム410は、可撓管部11Cに装着される剛性可変装置420と、剛性可変装置420を制御する制御装置480とを有している。形状記憶部材442において、高剛性状態(硬質状態)である部位(被加熱部442a)が黒塗りで示されている。
【0203】
剛性可変装置420は、可撓管部11Cに異なる剛性を提供し、可撓管部11Cの剛性を変更する。剛性可変装置420は、第1の長手部材430と、第1の長手部材430に沿って配置される第2の長手部材440と、誘起体450とを有している。例えば、第1の長手部材430は外筒であり、第2の長手部材440は第1の長手部材430の内部に配置された芯部材である。例えば、外筒の長手軸に垂直な外筒の断面形状は環形状であり、芯部材の長手軸に垂直な芯部材の断面の外周は円形状である。この場合、剛性可変装置420は、どの方向の曲がりに対しても安定した曲げ剛性を提供する。
【0204】
第1の長手部材430は、相対的に曲げ剛性が高い少なくとも1つの高曲げ剛性部432と、相対的に曲げ剛性が低い少なくとも1つの低曲げ剛性部434とを有している。つまり高曲げ剛性部432の曲げ剛性は高く、低曲げ剛性部434の曲げ剛性は高曲げ剛性部432の曲げ剛性よりも低くなっている。第1の長手部材430は、高曲げ剛性部432と低曲げ剛性部434とを支持する筒状の1つの外側支持部材436をさらに有している。外側支持部材436の曲げ剛性は、高曲げ剛性部432の曲げ剛性よりも低くなっている。このため、第1の長手部材430は、低曲げ剛性部434では比較的曲がりやすく、高曲げ剛性部432では比較的曲がりにくい。
【0205】
高曲げ剛性部432と低曲げ剛性部434と外側支持部材436とは、互いに対して別体である。高曲げ剛性部432は、例えば、金属製のパイプといった筒部材で構成されている。低曲げ剛性部434は、例えば、疎巻きコイルといったコイル部材で構成されている。外側支持部材436は、例えば、密着巻きコイルといったコイル部材で構成されている。高曲げ剛性部432は高い曲げ剛性を有する筒状の硬質部であり、低曲げ剛性部434と外側支持部材436とは低い曲げ剛性を有する筒状の軟質部である。
【0206】
外側支持部材436は、高曲げ剛性部432と低曲げ剛性部434との内側に配置されている。外側支持部材436の外周面は、高曲げ剛性部432の内周面に接着によって固定されている。高曲げ剛性部432同士は、第1の長手部材430の長手軸方向において互いに間隔を置いて配置されている。低曲げ剛性部434は、第1の長手部材430の長手軸方向における高曲げ剛性部432同士の間の各スペースに配置されている。したがって、複数の高曲げ剛性部432と複数の低曲げ剛性部434とは、第1の長手部材430の長手軸方向において交互に配置されている。低曲げ剛性部434の端部は、端部に隣り合う高曲げ剛性部432の端部に固定されている。低曲げ剛性部434は、高曲げ剛性部432同士の間のスペースにおいて、外側支持部材436を巻回している。
【0207】
外側支持部材436は、剛性可変装置420の全長に渡って延びている。外側支持部材436は、螺旋状に配置されている。例えば、外側支持部材436は、高曲げ剛性部432と低曲げ剛性部434とに対する芯材として機能する。
【0208】
第2の長手部材440は、剛性可変装置420の全長に渡って延びている。第2の長手部材440は、外側支持部材436の内部に配置されている。第2の長手部材440の外周面は外側支持部材436の内周面とは接触しておらず、スペースが外側支持部材436と第2の長手部材440との間に形成されている。
【0209】
第2の長手部材440は、第1の相と第2の相との間で相が熱によって移り変わり得る形状記憶部材442を少なくとも有している。形状記憶部材442の相が第1の相にあるときは、形状記憶部材442は、外力に従って容易に変形し得る低剛性状態を取り、低い弾性係数を示す。したがって、形状記憶部材442の相が第1の相にあるときは、形状記憶部材442は可撓管部11Cに比較的低い剛性を提供する。第1の相において、剛性可変装置420と可撓管部11Cとは、例えば、外力によって容易に撓むことが可能となる。
【0210】
また、形状記憶部材442の相が第2の相にあるときは、形状記憶部材442は、低剛性状態よりも高い剛性を有する高剛性状態を取り、高い弾性係数を示す。したがって、形状記憶部材442の相が第2の相にあるときは、形状記憶部材442は、外力に抗してあらかじめ記憶している記憶形状を取る傾向を示す高剛性状態を取り、可撓管部11Cに比較的高い剛性を提供する。記憶形状は、例えば直線状であってよい。第2の相において、剛性可変装置420と可撓管部11Cとは、例えば、略直線状態を維持可能となる、または外力によって第1の相に比べて緩やかに撓むことが可能となる。
【0211】
形状記憶部材442の曲げ剛性は、形状記憶部材442の相が第1の相のとき、高曲げ剛性部432の曲げ剛性よりも低く、低曲げ剛性部434の曲げ剛性と同一か低い。形状記憶部材442の曲げ剛性は、形状記憶部材442の相が第2の相のとき、高曲げ剛性部432の曲げ剛性と同一または低く、低曲げ剛性部434の曲げ剛性よりも高い。
【0212】
低曲げ剛性部434は、導電性材料で構成されている。低曲げ剛性部434は、例えば、電熱線、つまり電気抵抗の大きい導電性部材で構成されてよい。例えば、低曲げ剛性部434の周囲には図示しない絶縁膜が設けられている。絶縁膜は、低曲げ剛性部434と外側支持部材436との間の短絡と、高曲げ剛性部432と低曲げ剛性部434との短絡とを防止する。
【0213】
例えば、外側支持部材436の周囲には、図示しない絶縁膜が設けられている。絶縁膜は、低曲げ剛性部434と外側支持部材436との間の短絡と、高曲げ剛性部432と外側支持部材436との間の短絡と、外側支持部材436と形状記憶部材442との間の短絡とを防止する。
【0214】
誘起体450は、制御装置480から電流の供給を受けて熱を発する性能を有している。誘起体450は、この熱を、誘起体450の周辺に配置された形状記憶部材442の一部位に伝える。そして、誘起体450は、この一部位において、第1の相と第2の相との間で形状記憶部材442の相の移り変わりを引き起こさせる。誘起体450は、第2の長手部材440の長手軸方向における第2の長手部材440の一部位の剛性を変更させる。
【0215】
制御装置480は、各低曲げ剛性部434をそれぞれ独立に駆動する駆動部482を有している。駆動部482は、1つの電源と1つのスイッチとを有している。駆動部482は、配線部484を介して低曲げ剛性部434に電気的に接続されている。駆動部482は、それぞれ、スイッチのオン動作に応じて、配線部484を介して低曲げ剛性部434に電流を供給し、また、スイッチのオフ動作に応じて、低曲げ剛性部434に対する電流の供給を停止する。
【0216】
低曲げ剛性部434は、制御装置480から電流の供給を受けて熱を発する性能を有している。低曲げ剛性部434の発熱量は、電流の供給量に依存する。低曲げ剛性部434は、熱によって形状記憶部材442に第1の相と第2の相の間の相の移り変わりを引き起こさせる誘起体450として機能する。詳細には、低曲げ剛性部434は、外側支持部材436を介して形状記憶部材442を加熱する加熱部であるコイルヒータとして機能する。形状記憶部材442は、誘起体450として機能する低曲げ剛性部434から発生した熱によって、第1の相から第2の相に形状記憶部材442の相が移り変わる性質を有している。
【0217】
剛性制御システム410は、初期状態では、駆動部482は低曲げ剛性部434に電流を供給しておらず、低曲げ剛性部434は熱を発生しておらず、形状記憶部材442と可撓管部11Cとは全長に渡って低剛性状態である。
【0218】
駆動部482は、スイッチのオン動作に応じて、配線部484を介して低曲げ剛性部434に電流を供給する。低曲げ剛性部434は、電流の供給に応じて熱を発生する。熱は、低曲げ剛性部434から形状記憶部材442に間接的に伝達される。熱の伝達によって、形状記憶部材442の被加熱部442aの温度は上がる。被加熱部442aの相は加熱によって第1の相から第2の相に切り替わり、被加熱部442aは低剛性状態から高剛性状態に切り替わる。これによって、可撓管部11Cは、部分的に低剛性状態から高剛性状態に切り替わる。高剛性状態である可撓管部11Cの部位は、可撓管部11Cに作用する外力すなわち形状記憶部材442を変形させ得る力に対抗して、略直線状態を維持する。
【0219】
駆動部482は、スイッチのオフ動作に応じて、低曲げ剛性部434に対する電流の供給を停止する。すると、被加熱部442aの温度は自然冷却によって下がり、被加熱部442aの相は第2の相から第1の相に切り替わり、被加熱部442aの剛性は下がる。そして、被加熱部442aが位置する可撓管部11Cの部位の剛性も下がる。したがって、可撓管部11Cは、外力によって容易に撓むことが可能となる。
【0220】
このように例えば低曲げ剛性部434によって形状記憶部材442の一部位の相が第1の相と第2の相の間で切り換えられることによって、可撓管部11Cの一部位の剛性が切り換えられる。
【0221】
<剛性制御システムの構成例4>
図26は、剛性可変部112として適用可能な他の構成例である剛性可変装置510の基本構成を示している。
図26の上段には、曲げ剛性が低い状態にある剛性可変装置510が示され、
図26の下段には、曲げ剛性が高い状態にある剛性可変装置510が示されている。
【0222】
剛性可変装置510は、可撓性を有するコイルパイプ514たとえば密着コイルと、コイルパイプ514の内部に延びている芯線512と、コイルパイプ514の両側に配置され、芯線512に固定された一対の固定部材520,522を備えている。
【0223】
コイルパイプ514と固定部材520の間にはワッシャ516が配置されている。コイルパイプ514と固定部材522の間にはワッシャ518が配置されている。ワッシャ516,518は、芯線512に沿ったコイルパイプ514の移動を規制する働きする。ワッシャ516,518は、コイルパイプ514が芯線512から抜け落ちることを防止し、また、固定部材520,522がコイルパイプ514に食い込むことを防止する。
【0224】
剛性可変装置510はまた、コイルパイプ514と固定部材520,522の間の隙間を調整する調整機構を有している。調整機構は、一対の固定部材520,522を互いに遠ざける方向に一対の固定部材520,522の少なくとも一方を引っ張る引っ張り機構で構成されている。この引っ張り機構は、ナット532と、ナット532に螺合しているリードスクリュー534と、リードスクリュー534に固定された筒体536と、筒体536に固定された蓋538と、リードスクリュー534を回転させるモーター540を有している。
【0225】
芯線512は、ナット532とリードスクリュー534を貫通して延びている。固定部材522は、筒体536の内部に収容されている。モーター540は、それ自体が回転しないように、さらに、軸方向に移動可能に支持されている。モーター540によってナット532に対してリードスクリュー534を回転させることによって、リードスクリュー534は芯線512の軸に沿って移動可能となっている。
【0226】
図26の上段に示された状態では、リードスクリュー534と固定部材522の間に隙間がある。この状態では、芯線512はコイルパイプ514に沿って移動可能となっている。この状態は、コイルパイプ514が曲げられたときに芯線512に引っ張り応力がかからないため、曲げ剛性が低い状態である。曲げ剛性が低い状態にある剛性可変装置510は、これが装着された可撓管部11Cに低い剛性を提供する。
【0227】
これに対して、
図26の下段に示された状態では、リードスクリュー534と固定部材522の間に隙間がない。この状態では、芯線512はコイルパイプ514に対して移動不能となっている。また、リードスクリュー534が固定部材522を押圧しており、芯線512には引っ張り応力がかかっている。この状態は、コイルパイプ514が曲げられたときに芯線512に引っ張り応力がさらにかかるため、曲げ剛性が高い状態である。曲げ剛性が高い状態にある剛性可変装置510は、これが装着された可撓管部11Cに高い剛性を提供する。
【0228】
<剛性制御システムの構成例5>
図27は、剛性可変部112として適用可能な他の構成例である剛性可変装置610と剛性制御回路660を模式的に示している。
図27に示すように、剛性可変装置610は、コイルパイプ612と、コイルパイプ612内に封入された導電性高分子人工筋肉614と、コイルパイプ612の両端に設けられた一対の電極616とを備えている。剛性可変装置610は、コイルパイプ612の中心軸Axが可撓管部11Cの中心軸に一致又は平行となるように、可撓管部11Cに内蔵される。
【0229】
剛性可変装置610の電極616は、剛性制御回路660と電気的に接続されている。剛性制御回路660は、電極616を介して導電性高分子人工筋肉614に電圧を印加する。導電性高分子人工筋肉614は、電圧が印加されることにより、コイルパイプ612の中心軸Axを中心に径を拡張しようとするが、コイルパイプ612によって導電性高分子人工筋肉614の径の拡張は規制されている。このため、剛性可変装置610は、印加される電圧値が高くなるほど、曲げ剛性が高まる。すなわち、剛性可変装置610の剛性を変化させることによって、剛性可変装置610が内蔵された可撓管部11Cの曲げ剛性も変化する。
【0230】
<剛性制御システムの構成例6>
図28は、剛性可変部112として適用可能な他の構成例である剛性可変装置710を示し、高剛性状態から低剛性状態への剛性可変装置710の剛性の切り替えの様子を示している。
図28において、高剛性状態にある剛性可変装置710が上側に描かれ、低剛性状態にある剛性可変装置710が下側に描かれている。なお、
図28において、
図24と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0231】
図28に示すように、剛性可変装置710の第2の長手部材330は、複数の非曲がり規制部332と1つの曲がり規制部334を備えている。具体的には、第2の長手部材330は、2つの非曲がり規制部332と1つの曲がり規制部334を備えている。非曲がり規制部332と曲がり規制部334は、第2の長手部材330の軸に沿って、1つの曲がり規制部334の両端に2つの非曲がり規制部332が並んで配置されている。その他の構成は、
図24の剛性可変装置310と同様である。
【0232】
第1の長手部材320と第2の長手部材330の相対移動によって、剛性可変装置710の剛性を、高剛性すなわち硬い状態と低剛性すなわち柔らかい状態の間で切り替えることができる。
【0233】
図24の剛性可変装置310は、関節を構成する低曲げ剛性部324の数に対して、芯のロック部を構成する第2の長手部材330の曲がり規制部334の数が同一となっている。
【0234】
これに対し、本構成例6の剛性可変装置710は、関節を構成する低曲げ剛性部324の数に対して、芯のロック部を構成する第2の長手部材330の曲がり規制部334の数が少なくなっている。
【0235】
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を支援する剛性制御では、剛性可変装置710の剛性を高める位置、すなわち、直線化する位置が、挿入部11に形成された「屈曲部」の頂点より先端部11A側に出ないことが望ましい。なぜなら、屈曲部の頂点より先端部11A側が直線化されると、挿入部11の先端部11Aの位置がずれてしまい、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の実施が困難になってしまうからである。
【0236】
剛性制御システムの構成例1で説明した形状記憶部材220を用いる形状記憶合金の方式では、形状記憶部材220を加熱することにより挿入部11の剛性を変更していた。しかしながら、形状記憶合金の方式では、形状記憶部材220の熱が冷める際、すなわち、挿入部11が軟化する際に時間がかかるため、挿入部11における剛性の分布の微調整に時間がかかる。
【0237】
これに対して、本構成例6の剛性可変装置710は、関節をロックまたはロック解除する関節ロックの方式である。さらに、剛性可変装置710は、関節を構成する低曲げ剛性部324の数に対して、芯のロック部を構成する第2の長手部材330の曲がり規制部334の数が少なくなっているため、挿入部11における剛性を高める位置を速やかに微調整することが可能となる。
【0238】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。