(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】電力変換装置、搬送システム、電力変換方法、プログラム及び診断装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230816BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20230816BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M1/00 C
(21)【出願番号】P 2021563826
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2020043260
(87)【国際公開番号】W WO2021117459
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2019225771
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】高島 勇汰
(72)【発明者】
【氏名】橋本 竜平
(72)【発明者】
【氏名】藤川 正敏
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-126910(JP,A)
【文献】特開2002-034289(JP,A)
【文献】特開2004-266994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側電力を二次側電力に変換してモータに供給する電力変換回路と、
前記電力変換回路により二次側電気量を制御指令に追従させる制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
所定長さのサンプリング期間内における前記モータの駆動力の変動レベルを算出し、
前記モータと前記モータにより駆動される可動部とを含む機器が無負荷状態であるときの前記変動レベルに基づいて閾値を設定し、
前記閾値の設定後、前記機器が無負荷状態であるときに前記変動レベルを算出し、当該変動レベルと前記閾値とに基づいて、前
記機器の異常
を検知する、電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記機器が無負荷状態であるときに、前記変動レベルの算出を繰り返すことで得られた複数の変動レベルのうち前記閾値を超えた変動レベルの数に基づいて前記機器の異常を検知する、請求項
1記載の電力変換装置。
【請求項3】
一次側電力を二次側電力に変換してモータに供給する電力変換回路と、
前記電力変換回路により二次側電気量を制御指令に追従させる制御回路と、を備え、
前記制御回路は、
所定長さのサンプリング期間内における前記モータの駆動力の変動レベルを算出し、
前記モータと前記モータにより駆動される可動部とを含む機器における負荷の大きさを示す負荷レベルと、前記変動レベルとをそれぞれが含む複数セットのレベル組を取得し、当該複数セットのレベル組に基づいて、前記負荷レベルと閾値との関係を示す閾値プロファイルを設定し、
前記閾値プロファイルの設定後、前記負荷レベルと前記変動レベルとを含む1セットのレベル組を取得し、当該1セットのレベル組と、前記閾値プロファイルとに基づいて前記機器の異常を検知する
、電力変換装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記1セットのレベル組の取得を繰り返すことで得られた複数のレベル組のうち前記閾値プロファイルを超えたレベル組の数に基づいて前記機器の異常を検知する、請求項
3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御回路は、V/f方式により、周波数指令に対応する電圧指令ベクトルを前記制御指令として算出し、前記電力変換回路と前記モータとの間に流れた電流と、前記周波数指令とに基づいて前記変動レベルを算出する、請求項1~
4のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項記載の電力変換装置と、
前記機器と、を備え、
前記機器は、
前記可動部として、物体を支持して搬送する搬送部を有し、
前記モータとして、前記搬送部を駆動するモータを有する、搬送システム。
【請求項7】
一次側電力を二次側電力に変換してモータに供給する電力変換回路により、二次側電気量を制御指令に追従させることと、
所定長さのサンプリング期間内における前記モータの駆動力の変動レベルを算出することと、
前記モータと前記モータにより駆動される可動部とを含む機器
が無負荷状態であるときの前記変動レベルに基づいて閾値を設定することと、
前記閾値の設定後、前記機器が無負荷状態であるときに前記変動レベルを算出し、当該変動レベルと前記閾値とに基づいて、前記機器の異常
を検知することと、
を含む電力変換方法。
【請求項8】
一次側電力を二次側電力に変換してモータに供給する電力変換回路により、二次側電気量を制御指令に追従させることと、
所定長さのサンプリング期間内における前記モータの駆動力の変動レベルを算出することと、
前記モータと前記モータにより駆動される可動部とを含む機器における負荷の大きさを示す負荷レベルと、前記変動レベルとをそれぞれが含む複数セットのレベル組を取得し、当該複数セットのレベル組に基づいて、前記負荷レベルと閾値との関係を示す閾値プロファイルを設定することと、
前記閾値プロファイルの設定後、前記負荷レベルと前記変動レベルとを含む1セットのレベル組を取得し、当該1セットのレベル組と、前記閾値プロファイルとに基づいて前記機器の異常を検知することと、
を含む電力変換方法。
【請求項9】
一次側電力を二次側電力に変換してモータに供給する電力変換回路により、二次側電気量を制御指令に追従させることと、
所定長さのサンプリング期間内における前記モータの駆動力の変動幅を示す変動レベルを算出することと、
前記モータと前記モータにより駆動される可動部とを含む機器
が無負荷状態であるときの前記変動レベルに基づいて閾値を設定することと、
前記閾値の設定後、前記機器が無負荷状態であるときに前記変動レベルを算出し、当該変動レベルと前記閾値とに基づいて、前記機器の異常
を検知することと、を電力変換装置に実行させるためのプログラム。
【請求項10】
一次側電力を二次側電力に変換してモータに供給する電力変換回路により、二次側電気量を制御指令に追従させることと、
所定長さのサンプリング期間内における前記モータの駆動力の変動レベルを算出することと、
前記モータと前記モータにより駆動される可動部とを含む機器における負荷の大きさを示す負荷レベルと、前記変動レベルとをそれぞれが含む複数セットのレベル組を取得し、当該複数セットのレベル組に基づいて、前記負荷レベルと閾値との関係を示す閾値プロファイルを設定することと、
前記閾値プロファイルの設定後、前記負荷レベルと前記変動レベルとを含む1セットのレベル組を取得し、当該1セットのレベル組と、前記閾値プロファイルとに基づいて前記機器の異常を検知することと、を電力変換装置に実行させるためのプログラム。
【請求項11】
電力変換回路がモータに供給する電力に基づいて、所定長さのサンプリング期間における前記モータの駆動力の変動幅を示す変動レベルを算出し、
前記モータと
前記モータにより駆動される可動部とを含む機器
が無負荷状態であるときの前記変動レベルに基づいて閾値を設定し、
前記閾値の設定後、前記機器が無負荷状態であるときに前記変動レベルを算出し、当該変動レベルと前記閾値とに基づいて、前記機器の異常
を検知する、診断装置。
【請求項12】
電力変換回路がモータに供給する電力に基づいて、所定長さのサンプリング期間における前記モータの駆動力の変動幅を示す変動レベルを算出し、
前記モータと前記モータにより駆動される可動部とを含む機器における負荷の大きさを示す負荷レベルと、前記変動レベルとをそれぞれが含む複数セットのレベル組を取得し、当該複数セットのレベル組に基づいて、前記負荷レベルと閾値との関係を示す閾値プロファイルを設定し、
前記閾値プロファイルの設定後、前記負荷レベルと前記変動レベルとを含む1セットのレベル組を取得し、当該1セットのレベル組と、前記閾値プロファイルとに基づいて前記機器の異常を検知する、診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置、搬送システム、電力変換方法、プログラム及び診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インバータを適用した搬送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、機器の異常を検知する構成の簡素化に有効な電力変換装置、搬送システム、電力変換方法、プログラム及び診断装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る電力変換装置は、一次側電力を二次側電力に変換してモータに供給する電力変換回路と、電力変換回路により二次側電気量を制御指令に追従させる制御回路と、を備え、制御回路は、所定長さのサンプリング期間内におけるモータの駆動力の変動幅を示す変動レベルを算出し、モータとモータにより駆動される可動部とを含む機器の異常を変動レベルに基づいて検知する。
【0006】
本開示の他の側面に係る搬送システムは、上記の電力変換装置と、機器と、を備え、機器は、可動部として、物体を支持して搬送する搬送部を有し、モータとして、搬送部を駆動するモータを有する。
【0007】
本開示の更に他の側面に係る電力変換方法は、一次側電力を二次側電力に変換してモータに供給する電力変換回路により、二次側電気量を制御指令に追従させることと、所定長さのサンプリング期間内におけるモータの駆動力の変動幅を示す変動レベルを算出することと、モータとモータにより駆動される可動部とを含む機器の異常を変動レベルに基づいて検知することと、を含む。
【0008】
本開示の更に他の側面に係るプログラムは、一次側電力を二次側電力に変換してモータに供給する電力変換回路により、二次側電気量を制御指令に追従させることと、所定長さのサンプリング期間内におけるモータの駆動力の変動幅を示す変動レベルを算出することと、モータとモータにより駆動される可動部とを含む機器の異常を変動レベルに基づいて検知することと、を電力変換装置に実行させるためのプログラムである。
【0009】
本開示の更に他の側面に係る診断装置は、電力変換回路がモータに供給する電力に基づいて、所定長さのサンプリング期間におけるモータの駆動力の変動幅を示す変動レベルを算出し、モータと可動部とを含む機器の異常を変動レベルに基づいて検知する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、機器の異常を検知する構成の簡素化に有効な電力変換装置、搬送システム、電力変換方法、プログラム及び診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】搬送システムの構成を例示する模式図である。
【
図2】電力変換装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】電力変換装置のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図4】電力変換回路の制御手順を例示するフローチャートである。
【
図5】閾値設定手順を例示するフローチャートである。
【
図6】異常検知手順を例示するフローチャートである。
【
図7】閾値設定手順の変形例を示すフローチャートである。
【
図8】異常検知手順の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
〔搬送システム〕
図1に示す搬送システム1は、物体を搬送するシステムであり、搬送装置2と、電力変換装置3と、上位コントローラ4(
図2参照)とを有する。搬送装置2の具体例としては、ベルトコンベヤ、ローラコンベヤ等が挙げられる。
【0014】
図1に例示する搬送装置2は、ローラコンベヤであり、搬送部5と、モータ6とを有する。搬送部5(可動部)は、複数の搬送ローラ7と、ベルト8と、複数のプーリ9と、負荷センサ20とを有する。複数の搬送ローラ7は、物体の搬送方向に並び、それぞれ搬送方向に垂直に配置されている。複数の搬送ローラ7は物体を支持した状態でそれぞれ同じ方向に回転し、これにより搬送方向に沿って物体を搬送する。ベルト8は、複数のプーリ9に掛け渡され、複数の搬送ローラ7に接している。
【0015】
モータ6は、搬送部5を駆動する。例えばモータ6は、回転電動機であり、少なくとも一つのプーリ9を回転させる。モータ6がプーリ9を回転させるトルクはベルト8を介して複数の搬送ローラ7に伝えられる。これにより、複数の搬送ローラ7が同一方向に回転する。モータ6は、誘導電動機であってもよいし、同期電動機であってもよい。
【0016】
負荷センサ20は、搬送装置2の負荷(例えば搬送対象の物体の重さ)を検出する。負荷センサ20は、搬送対象の物体の有無を検出する在荷センサであってもよい。
【0017】
図2に示すように、電力変換装置3は、電源90の電力(一次側電力)を駆動電力(二次側電力)に変換してモータ6に供給する。電源90の電力は、交流電力であってもよく、直流電力であってもよい。駆動電力は交流電力である。一例として、電源90の電力及び駆動電力は、いずれも三相交流電力である。例えば電力変換装置3は、電力変換回路10と、制御回路100とを有する。
【0018】
電力変換回路10は、一次側電力を二次側電力に変換してモータ6に供給する。例えば電力変換回路10は、コンバータ回路11と、平滑コンデンサ12と、インバータ回路13と、電流センサ14とを有する。コンバータ回路11は、例えばダイオードブリッジ回路又はPWMコンバータ回路であり、上記電源電力を直流電力に変換する。平滑コンデンサ12は、上記直流電力を平滑化する。インバータ回路13は、上記直流電力と上記駆動電力との間の電力変換を行う。
【0019】
例えばインバータ回路13は、複数のスイッチング素子15を有し、複数のスイッチング素子15のオン・オフを切り替えることによって上記電力変換を行う。スイッチング素子15は、例えばパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であり、ゲート駆動信号に応じてオン・オフを切り替える。
【0020】
電流センサ14は、インバータ回路13とモータ6との間に流れる電流を検出する。例えば電流センサ14は、三相交流の全相(U相、V相及びW相)の電流を検出するように構成されていてもよいし、三相交流のいずれか2相の電流を検出するように構成されていてもよい。零相電流が生じない限り、U相、V相、及びW相の電流の合計はゼロなので、2相の電流を検出する場合にも全相の電流の情報が得られる。
【0021】
以上に示した電力変換回路10の構成はあくまで一例である。電力変換回路10の構成は、モータ6の駆動電力を生成し得る限りにおいていかようにも変更可能である。電力変換回路10は、直流化を経ることなく電源電力と駆動電力との双方向の電力変換を行うマトリクスコンバータ回路であってもよい。電源電力が直流電力である場合に、電力変換回路10はコンバータ回路11を有していなくてもよい。
【0022】
制御回路100は、二次側電気量を制御指令に追従させるように電力変換回路10を制御する。二次側電気量は、二次側の電気的な状態に関する物理量である。二次側電気量の具体例としては、電力、電圧、電流等が挙げられる。制御回路100は、所定長さのサンプリング期間内におけるモータ6の駆動力の変動幅を示す変動レベルを算出し、モータ6と搬送部5(モータ6により駆動される可動部)とを含む搬送装置2(機器)の異常を変動レベルに基づいて検知する。
【0023】
搬送装置2の異常は、モータ6の異常であってもよいし、搬送部5の異常であってもよい。モータ6の異常の具体例としては、軸受け部の破損等が挙げられる。搬送部5の異常の具体例としては、搬送ローラ7の軸受け部の破損、プーリ9の軸受け部の破損、ベルト8の破損、隣り合う搬送ローラ7間への異物の進入、搬送ローラ7とベルト8との間への異物の進入、ベルト8とプーリ9との間への異物の進入等が挙げられる。
【0024】
制御回路100は、搬送装置2が無負荷状態であるとき(例えば、搬送対象の物体がないとき)の変動レベルに基づいて閾値を設定し、閾値の設定後、搬送装置2が無負荷状態であるときに変動レベルを算出し、当該変動レベルと閾値とに基づいて搬送装置2の異常を検知してもよい。
【0025】
制御回路100は、搬送装置2が無負荷状態であるときに、変動レベルの算出を繰り返すことで得られた複数の変動レベルのうち閾値を超えた変動レベルの数に基づいて搬送装置2の異常を検知してもよい。
【0026】
制御回路100は、搬送装置2における負荷(例えば搬送対象の物体の重さ)の大きさを示す負荷レベルと、変動レベルとをそれぞれが含む複数セットの評価結果(以下、「レベル組」という。)を取得し、当該複数セットの評価結果に基づいて、負荷レベルと閾値との関係を示す閾値プロファイルを設定し、閾値プロファイルの設定後、負荷レベルと変動レベルとを含む1セットのレベル組を取得し、当該1セットのレベル組と、閾値プロファイルとに基づいて搬送装置2の異常を検知してもよい。
【0027】
制御回路100は、1セットのレベル組の取得を繰り返すことで得られた複数のレベル組のうち閾値プロファイルを超えたレベル組の数に基づいて搬送装置2の異常を検知してもよい。
【0028】
制御回路100は、V/f方式により、周波数指令に対応する電圧指令を制御指令として算出し、電力変換回路10とモータ6との間に流れた電流と、周波数指令とに基づいて変動レベルを算出してもよい。
【0029】
例えば
図2に示すように、制御回路100は、機能上の構成(以下、「機能ブロック」という)。として、指令算出部111と、PWM制御部112と、電流取得部113と、電流情報記憶部114と、負荷情報取得部115と、変動算出部116と、閾値設定部117と、閾値記憶部118と、異常検知部119と、異常報知部121とを有する。
【0030】
指令算出部111は、制御指令を算出する。例えば指令算出部111は、V/f方式により、周波数指令に対応する電圧指令を制御指令として算出する。電圧指令は、電圧指令の大きさ(以下、「電圧指令値」という。)と、電圧指令の位相角(以下、「電圧位相角」という。)とを含む。例えば指令算出部111は、予め定められた指令プロファイルに従って、周波数指令に対応する電圧指令値を算出し、周波数指令に基づいて電圧位相角を算出する。指令算出部111は、電圧指令値を直交座標軸の一方の軸の成分とし、他方の軸の成分をゼロとした電圧指令ベクトルと電圧位相角とを制御指令として算出してもよい。こうして算出した電圧指令ベクトルに抵抗電圧降下補償や非干渉化補償を更に施して電圧指令ベクトルとしてもよい。
【0031】
なお、指令算出部111は、周波数指令を上位コントローラ4から取得してもよいし、予め設定された周波数指令を内部に保持していてもよい。指令算出部111は、周波数指令を入力デバイス102(後述)から取得してもよい。上位コントローラ4の具体例としては、プログラマブルロジックコントローラ等が挙げられる。指令算出部111は、電圧指令の算出を所定の制御周期で繰り返し実行する。
【0032】
PWM制御部112は、指令算出部111により算出された制御指令に二次側電気量を追従させるように電力変換回路10を制御する。例えばPWM制御部112は、駆動電力における電圧を電圧指令に追従させる。例えばPWM制御部112は、電圧指令に一致した電圧をモータ6に出力するように、インバータ回路13の複数のスイッチング素子15のオン・オフを切り替える。
【0033】
電流取得部113は、電流センサ14から電流情報を取得する。例えば電流取得部113は、電流センサ14から取得した電流情報に対し、3相2相変換と、座標変換とを施して、回転座標系における電流ベクトルを算出する。一例として、電流取得部113は、上述の電圧指令ベクトルあるいは、モータ6の誘起電圧ベクトルに平行な座標軸(δ軸)方向の電流成分であるδ軸電流と、δ軸に垂直な座標軸(γ軸)方向の電流成分であるγ軸電流とを算出する。なお、誘起電圧ベクトルは、上述の抵抗電圧降下補償および非干渉化補償を施して電圧指令ベクトルを定めた場合、これらの補償が施される前の電圧指令ベクトルに等しい。
【0034】
この座標変換には、固定座標系に対する回転座標系の位相が必要となる。例えば電流取得部113は、回転座標系の位相として、指令算出部111が算出した上記電圧位相角を用いる。例えば電流取得部113は、電流センサ14から取得した電流情報と、上記電圧位相角とに基づいて、δ軸電流及びγ軸電流を算出する。電流取得部113は、電流情報の取得と、δ軸電流及びγ軸電流の算出とを、上記制御周期で繰り返し実行する。
【0035】
負荷情報取得部115は、負荷に関する情報(以下、「負荷情報」という。)を負荷センサ20から取得する。例えば負荷情報取得部115は、搬送装置2が無負荷状態であるか否かを示す情報を負荷センサ20から取得する。負荷情報取得部115は、上記負荷レベルを負荷センサ20から取得してもよい。負荷情報取得部115は、負荷情報を上位コントローラ4から取得してもよい。電流情報記憶部114は、電流取得部113が算出したδ軸電流及びγ軸電流と、負荷情報取得部115が取得した負荷情報とを対応付けて時系列で蓄積する。
【0036】
変動算出部116は、所定長さのサンプリング期間内におけるモータ6の駆動力の変動幅を示す変動レベルを算出する。サンプリング期間の長さは、上記制御周期の長さよりも長い。例えばサンプリング期間の長さは、上記制御周期の長さの5~300000倍である。
【0037】
一例として、変動算出部116は、サンプリング期間内におけるδ軸電流の変動幅を示す変動レベルを算出する。上述したように、δ軸電流は、電流センサ14から取得した電流情報と、上記周波数指令に基づいて算出された電圧位相角とに基づいて算出される。このため、δ軸電流の変動幅を示す変動レベルを算出することは、電力変換回路10とモータ6との間に流れた電流と、周波数指令とに基づいて変動レベルを算出することの一例である。
【0038】
上記変動レベルは、サンプリング期間内におけるδ軸電流の最大値と最小値との差であってもよいし、サンプリング期間内におけるδ軸電流の標準偏差であってもよい。変動算出部116は、サンプリング期間と同等又はサンプリング期間よりも長い周期にて、変動レベルの算出を繰り返してもよい。
【0039】
閾値設定部117は、搬送装置2が無負荷状態であるときの変動レベルに基づいて閾値を設定する。例えば閾値設定部117は、搬送装置2が無負荷状態であるときの変動レベルに所定のマージンを加算して閾値を算出する。閾値設定部117は、搬送装置2が無負荷状態であるときに算出された複数の変動レベルの平均値に所定のマージンを加算して閾値を算出してもよい。閾値設定部117は、搬送装置2が無負荷状態であるときに算出された複数の変動レベルの平均値と、当該複数の変動レベルの標準偏差とに基づいて閾値を算出してもよい。一例として、閾値設定部117は、上記標準偏差に所定の倍率を乗算した値を上記平均値に加算して閾値を算出してもよい。閾値設定部117は、搬送装置2が無負荷状態であるときに算出された複数の変動レベルのMD(マハラノビス距離)値の最大値を閾値としてもよい。MD値は、複数の変動レベルのそれぞれから複数の変動レベルの平均値を減算した値の行列と、複数の変動レベルの共分散行列と、複数の変動レベルのそれぞれから複数の変動レベルの平均値を減算した値の逆行列とを乗算した値である。閾値記憶部118は、閾値設定部117が設定した閾値を保持する。
【0040】
異常検知部119は、搬送装置2の異常を変動レベルに基づいて検知する。例えば異常検知部119は、閾値設定部117による閾値の設定後、搬送装置2が無負荷状態であるときに変動算出部116が算出した変動レベルを取得し、当該変動レベルと閾値とに基づいて搬送装置2の異常を検知する。例えば異常検知部119は、当該変動レベルが閾値を超えている場合に、搬送装置2の異常を検知する。
【0041】
異常検知部119は、搬送装置2が無負荷状態であるときに、変動算出部116が変動レベルの算出を繰り返すことで得られた複数の変動レベルのうち、閾値を超えた変動レベルの数に基づいて搬送装置2の異常を検知してもよい。例えば異常検知部119は、閾値を超えた変動レベルの数が、所定の回数閾値を超えた場合に搬送装置2の異常を検知してもよい。
【0042】
異常報知部121は、異常検知部119により異常が検知されたことを視覚情報又は聴覚情報等として出力する。例えば異常報知部121は、異常検知部119により異常が検知されたことを表示デバイス101(後述)に表示させる。
【0043】
図3は、電力変換装置3のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図3に示すように、電力変換装置3は、制御回路100と、表示デバイス101と、入力デバイス102とを有する。制御回路100は、一つ又は複数のプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、スイッチング制御回路194と、入出力ポート195とを含む。ストレージ193は、例えば不揮発性の半導体メモリ等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。ストレージ193は、一次側電力を二次側電力に変換してモータ6に供給する電力変換回路10により二次側電気量を制御指令に追従させることと、所定長さのサンプリング期間内におけるモータの駆動力の変動幅を示す変動レベルを算出することと、モータとモータにより駆動される搬送部5とを含む搬送装置2の異常を変動レベルに基づいて検知することと、を電力変換装置に実行させるためのプログラムを記憶している。
【0044】
メモリ192は、ストレージ193の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ191による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ191は、メモリ192と協働して上記プログラムを実行することで、制御回路100の各機能ブロックを構成する。スイッチング制御回路194は、プロセッサ191からの指令に従って、インバータ回路13内の複数のスイッチング素子15のオン、オフを切り替えることにより、上記駆動電力をモータ6へ出力する。入出力ポート195は、プロセッサ191からの指令に従って、インバータ回路13、電流センサ14、表示デバイス101及び入力デバイス102との間で電気信号の入出力を行う。
【0045】
表示デバイス101は、例えば液晶モニタ等を含み、ユーザに対する情報表示に用いられる。入力デバイス102は、例えばキーパッド等であり、ユーザによる入力情報を取得する。表示デバイス101及び入力デバイス102は、所謂タッチパネルのように一体化されていてもよい。表示デバイス101及び入力デバイス102は、電力変換装置3に組み込まれていてもよいし、電力変換装置3に接続される外部機器に設けられていてもよい。
【0046】
〔電圧変換手順〕
続いて、電力変換方法の一例として、制御回路100が実行する制御手順を例示する。この手順は、一次側電力を二次側電力に変換してモータ6に供給する電力変換回路10により二次側電気量を制御指令に追従させることと、所定長さのサンプリング期間内におけるモータ6の駆動力の変動幅を示す変動レベルを算出することと、モータ6とモータ6により駆動される搬送部5とを含む搬送装置2の異常を変動レベルに基づいて検知することと、を含む。例えばこの手順は、電力変換回路10の制御手順と、閾値設定手順と、異常検知手順とを含む。
【0047】
制御回路100は、電力変換回路10の制御手順と閾値設定手順とを並行して実行し、その後、電力変換回路10の制御手順と異常検知手順とを並行して実行する。例えば制御回路100は、電力変換回路10の起動後、閾値が設定されていない場合に閾値設定手順を実行する。制御回路100は、閾値の設定を指示するユーザ入力(例えば入力デバイス102への入力)に従って閾値設定手順を実行してもよい。制御回路100は、閾値の設定後に、異常検知手順を常時実行してもよいし、異常確認を指示するユーザ入力(例えば入力デバイス102への入力)に従って異常検知手順を実行してもよい。以下、電力変換回路10の制御手順と、閾値設定手順と、異常検知手順とを詳細に例示する。
【0048】
(電力変換回路の制御手順)
図4に示すように、制御回路100は、ステップS01,S02,S03,S04,S05,S06,S07を順に実行する。ステップS01では、指令算出部111が制御指令を算出する。例えば指令算出部111は、周波数指令に基づいて上記電圧指令を算出する。例えば指令算出部111は、周波数指令に基づいて、上記電圧指令値と上記電圧位相角とを算出する。ステップS02では、指令算出部111が、制御指令をPWM制御部112に出力する。これに応じ、PWM制御部112が、制御指令に二次側電気量を追従させるように電力変換回路10を制御する。
【0049】
ステップS03では、電流取得部113が、電流センサ14から電流情報を取得し、当該電流情報と、電圧位相角とに基づいて、δ軸電流及びγ軸電流を算出する。ステップS04では、電流取得部113が、δ軸電流及びγ軸電流を電流情報記憶部114に書き込む。
【0050】
ステップS05では、負荷情報取得部115が上記負荷情報を取得する。ステップS06では、負荷情報取得部115が、ステップS04において電流取得部113が書き込んだδ軸電流及びγ軸電流に対応付けて、負荷情報を電流情報記憶部114に書き込む。ステップS07では、指令算出部111が上記制御周期の経過を待機する。制御回路100は、以上の手順を繰り返す。
【0051】
(閾値設定手順)
図5に示すように、制御回路100は、まずステップS11,S12を実行する。ステップS11では、変動算出部116が上記サンプリング期間の経過を待機する。ステップS12では、変動算出部116が、サンプリング期間において、搬送装置2が無負荷状態であったか否かを、電流情報記憶部114に蓄積された負荷情報に基づいて確認する。ステップS12において搬送装置2が無負荷状態ではなかったと判定した場合、制御回路100は処理をステップS11に戻す。
【0052】
ステップS12において搬送装置2が無負荷状態であったと判定した場合、制御回路100はステップS13,S14,S15を実行する。ステップS13では、変動算出部116が、上記変動レベルを算出する。例えば変動算出部116は、サンプリング期間内におけるδ軸電流の変動幅を示す変動レベルを算出する。ステップS14では、閾値設定部117がサンプリング回数をカウントアップする。ステップS15では、サンプリング回数が、予め設定された回数(以下、「閾値設定回数」という。)に達したか否かを、閾値設定部117が確認する。
【0053】
ステップS15においてサンプリング回数が閾値設定回数に達していないと判定した場合、制御回路100は処理をステップS11に戻す。以後、サンプリング回数が閾値設定回数に達するまで、搬送装置2が無負荷状態であるときの変動レベルの算出が繰り返される。
【0054】
ステップS15においてサンプリング回数が閾値設定回数に達したと判定した場合、制御回路100はステップS16,S17を実行する。ステップS16では、閾値設定部117が、変動レベルの算出を繰り返すことで得られた複数の変動レベルに基づいて、閾値を設定する。例えば閾値設定部117は、複数の変動レベルの平均値と、標準偏差とに基づいて閾値を算出する。例えば閾値設定部117は、標準偏差に所定の倍率を乗算した値を平均値に加算して閾値を算出する。ステップS17では、閾値設定部117が、閾値を閾値記憶部118に書き込む。以上で閾値設定手順が完了する。
【0055】
(異常検知手順)
図6に示すように、制御回路100は、まずステップS21,S22を実行する。ステップS21では、変動算出部116が、上記サンプリング期間の経過を待機する。ステップS22では、変動算出部116が、サンプリング期間において、搬送装置2が無負荷状態であったか否かを、電流情報記憶部114に蓄積された負荷情報に基づいて確認する。ステップS22において搬送装置2が無負荷状態ではなかったと判定した場合、制御回路100は処理をステップS21に戻す。
【0056】
ステップS22において搬送装置2が無負荷状態であったと判定した場合、制御回路100はステップS23,S24,S25を実行する。ステップS23では、変動算出部116が上記変動レベルを算出する。例えば変動算出部116は、サンプリング期間内におけるδ軸電流の変動幅を示す変動レベルを算出する。ステップS24では、異常検知部119がサンプリング回数をカウントアップする。ステップS25では、ステップS23で変動算出部116により算出された変動レベルが、閾値記憶部118の閾値を超えているかを、異常検知部119が確認する。
【0057】
ステップS25において変動レベルが閾値を超えていると判定した場合、制御回路100はステップS26を実行する。ステップS26では、異常検知部119がエラー回数をカウントアップする。
【0058】
次に、制御回路100は、ステップS27を実行する。ステップS25において変動レベルが閾値を超えていないと判定した場合、制御回路100は、ステップS26を実行することなくステップS27を実行する。ステップS27では、サンプリング回数が、予め設定された回数(以下、「異常判定回数」という。)に達したか否かを異常検知部119が確認する。
【0059】
ステップS27においてサンプリング回数が異常判定回数に達していないと判定した場合、制御回路100は処理をステップS21に戻す。以後、サンプリング回数が異常判定回数に達するまで、変動レベルが閾値を超えているかの確認が繰り返される。
【0060】
ステップS27においてサンプリング回数が異常判定回数に達したと判定した場合、制御回路100はステップS28を実行する。ステップS28では、エラー回数が、予め設定された回数(上記回数閾値)を超えているかを異常検知部119が確認する。
【0061】
ステップS28においてエラー回数が回数閾値を超えていると判定した場合、制御回路100はステップS29,S31を実行する。ステップS29では、異常検知部119が異常を検知する。ステップS31では、異常検知部119により異常が検知されたことを異常報知部121が表示デバイス101に表示させる。
【0062】
次に、制御回路100は、ステップS32を実行する。ステップS28においてエラー回数が回数閾値を超えていないと判定した場合、制御回路100は、ステップS29,S31を実行することなくステップS32を実行する。ステップS32では、異常検知部119が、サンプリング回数及びエラー回数をゼロにリセットする。制御回路100は、以上の手順を繰り返す。なお、以上の手順では、異常判定回数ごとにエラー回数を確認する例を示したが、異常検知部119は、単にエラー回数の総数が回数閾値を超えているか否かに基づいて異常を検知してもよい。この場合、ステップS27,S32は不要である。
【0063】
〔変形例〕
以上においては、無負荷状態において設定された閾値と、無負荷状態において算出された変動レベルとに基づいて異常を検知する構成を例示したが、閾値の設定および異常の検知を無負荷ではない状態で行うことも可能である。例えば制御回路100は、負荷レベルと変動レベルとをセットで取得し、負荷レベルに対応する閾値と変動レベルとに基づいて搬送装置2の異常を検知してもよい。
【0064】
閾値設定部117は、負荷レベルと、変動レベルとをそれぞれが含む複数セットのレベル組を取得し、当該複数セットのレベル組に基づいて、負荷レベルと閾値との関係を示す閾値プロファイルを設定する。例えば閾値設定部117は、互いに異なる複数の負荷レベルごとに、変動レベルに基づいて閾値を設定することで、負荷レベルと閾値とをそれぞれが含む複数の閾値データセットを閾値プロファイルとして設定する。閾値設定部117は、複数の閾値データセットに基づいて、負荷レベルと閾値との関係を表す関数を閾値プロファイルとして設定してもよい。閾値記憶部118は、閾値設定部117が設定した閾値プロファイルを保持する。
【0065】
閾値設定部117は、負荷レベルと閾値プロファイルとに基づいて、当該負荷レベルに対応する閾値を設定する。閾値プロファイルが複数の閾値データセットである場合、閾値設定部117は、複数の閾値データセットの補間によって、上記負荷レベルに対応する閾値を算出してもよい。閾値プロファイルが関数である場合、閾値設定部117は、負荷評価値を関数に入力することで当該負荷評価値に対応する閾値を算出してもよい。
【0066】
異常検知部119は、閾値設定部117による閾値プロファイルの設定後、負荷レベルと変動レベルとを含む1セットのレベル組を取得し、当該1セットのレベル組(以下、このレベル組を「チェック対象」という。)と、閾値プロファイルとに基づいて搬送装置2の異常を検知する。例えば異常検知部119は、チェック対象の負荷レベルに対応する閾値を閾値設定部117に設定させる。以下、この閾値を、一時閾値という。閾値設定部117は、閾値プロファイルに基づいて、チェック対象の負荷レベルに対応する一時閾値を設定する。異常検知部119は、チェック対象の変動レベルが一時閾値を超えている場合に、搬送装置2の異常を検知する。例えば制御回路100は、一時閾値の設定後に、異常検知手順を常時実行してもよいし、異常確認を指示するユーザ入力(例えば入力デバイス102への入力)に従って異常検知手順を実行してもよい。
【0067】
異常検知部119は、所定の繰り返し条件に従って1セットのレベル組の取得を繰り返すことで、複数セットのチェック対象を取得し、当該複数セットのチェック対象のうち閾値プロファイルを超えたチェック対象の数に基づいて搬送装置2の異常を検知してもよい。本変形例における閾値設定手順及び異常検知手順を以下に例示する。
【0068】
(閾値設定手順)
図7に示すように、制御回路100は、まずステップS41,S42,S43,S44を実行する。ステップS41では、変動算出部116が、上記サンプリング期間の経過を待機する。ステップS42では、変動算出部116が、上記変動レベルを算出する。ステップS43では、閾値設定部117が、サンプリング回数をカウントアップする。ステップS44では、サンプリング回数が上記閾値設定回数に達したか否かを閾値設定部117が確認する。
【0069】
ステップS44においてサンプリング回数が閾値設定回数に達していないと判定した場合、制御回路100は処理をステップS41に戻す。以後、サンプリング回数が閾値設定回数に達するまで、変動レベルの算出が繰り返される。
【0070】
ステップS44においてサンプリング回数が閾値設定回数に達したと判定した場合、制御回路100はステップS45,S46,S47を実行する。ステップS45では、ステップS16と同様に、閾値設定部117が、複数の変動レベルに基づいて閾値を設定する。ステップS46では、上記サンプリング期間における負荷レベルと、ステップS45で算出された閾値とを対応付けた閾値データセットを、閾値設定部117が閾値記憶部118に書き込む。ステップS47では、閾値記憶部118に蓄積された閾値データセットの数が、閾値プロファイルとしての必要数に達したかを、閾値設定部117が確認する。
【0071】
ステップS47において閾値データセットの数が必要数に達していないと判定した場合、制御回路100はステップS48を実行する。ステップS48では、負荷レベルが変化するのを閾値設定部117が待機する。例えば閾値設定部117は、現在の負荷レベルが、ステップS46で書き込まれた閾値データセットの負荷レベルと異なる値となるのを待機する。その後、制御回路100は処理をステップS41に戻す。以後、閾値データセットの数が必要数に達するまでは、負荷レベルを変えながら、閾値の算出及び閾値データセットの書き込みが繰り返される。
【0072】
ステップS47において閾値データセットの数が必要数に達したと判定した場合、複数の閾値データセットが閾値プロファイルとして設定される。閾値設定部117は、複数の閾値データセットに基づいて、負荷レベルと閾値との関係を表す関数を閾値プロファイルとして設定してもよい。以上で閾値設定手順が完了する。
【0073】
(異常検知手順)
図8に示すように、制御回路100は、まずステップS51,S52,S53,S54,S55を実行する。ステップS51では、変動算出部116が、上記サンプリング期間の経過を待機する。ステップS52では、変動算出部116が、上記変動レベルを算出する。ステップS53では、異常検知部119が、負荷レベルに対応する閾値(上記一時閾値)を閾値設定部117に設定させる。閾値設定部117は、閾値記憶部118の閾値プロファイルに基づいて、負荷レベルに対応する一時閾値を設定する。
【0074】
ステップS54では、異常検知部119が、サンプリング回数をカウントアップする。ステップS55では、ステップS52で変動算出部116により算出された変動レベルが、ステップS53で閾値設定部117により設定された一時閾値を超えているかを異常検知部119が確認する。
【0075】
ステップS55において変動レベルが一時閾値を超えていると判定した場合、制御回路100は、ステップS56を実行する。ステップS56では、異常検知部119が、エラー回数をカウントアップする。
【0076】
次に、制御回路100は、ステップ57を実行する。ステップS55において変動レベルが一時閾値を超えていないと判定した場合、制御回路100は、ステップS56を実行することなくステップS57を実行する。ステップS57では、サンプリング回数が、上記異常判定回数に達したか否かを異常検知部119が確認する。
【0077】
ステップS57においてサンプリング回数が異常判定回数に達していないと判定した場合、制御回路100は処理をステップS51に戻す。以後、サンプリング回数が異常判定回数に達するまで、変動レベルが一時閾値を超えているかの確認が繰り返される。
【0078】
ステップS57においてサンプリング回数が異常判定回数に達したと判定した場合、制御回路100は、ステップS58を実行する。ステップS58では、エラー回数が、上記回数閾値を超えているかを異常検知部119が確認する。
【0079】
ステップS58においてエラー回数が回数閾値を超えていると判定した場合、制御回路100は、ステップS59,S61を実行する。ステップS59では、異常検知部119が異常を検知する。ステップS61では、異常報知部121が、異常検知部119により異常が検知されたことを表示デバイス101に表示させる。
【0080】
次に、制御回路100は、ステップS62を実行する。ステップS58においてエラー回数が回数閾値を超えていないと判定した場合、制御回路100は、ステップS59,S61を実行することなくステップS62を実行する。ステップS62では、異常検知部119が、サンプリング回数及びエラー回数をゼロにリセットする。制御回路100は、以上の手順を繰り返す。なお、以上の手順では、異常判定回数ごとにエラー回数を確認する例を示したが、異常検知部119は、単にエラー回数の総数が回数閾値を超えているか否かに基づいて異常を検知してもよい。この場合、ステップS57,S62は不要である。
【0081】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、電力変換装置3は、一次側電力を二次側電力に変換してモータ6に供給する電力変換回路10と、電力変換回路10により二次側電気量を制御指令に追従させる制御回路100と、を備え、制御回路100は、所定長さのサンプリング期間内におけるモータ6の駆動力の変動幅を示す変動レベルを算出し、モータ6とモータ6により駆動される搬送部5とを含む搬送装置2の異常を変動レベルに基づいて検知する。
【0082】
この電力変換装置3によれば、電力変換装置3により取得可能な駆動力の情報に基づいて、搬送装置2の異常を高い信頼性で検知することができる。従って、搬送装置2の異常を検知する構成の簡素化に有効である。
【0083】
制御回路100は、搬送装置2が無負荷状態であるときの変動レベルに基づいて閾値を設定し、閾値の設定後、搬送装置2が無負荷状態であるときに変動レベルを算出し、当該変動レベルと閾値とに基づいて搬送装置2の異常を検知してもよい。この場合、閾値を設定するための変動幅の測定基準と、異常検知における変動幅の測定基準とが揃えられるので、搬送装置2の異常をより高い信頼性で検知することができる。
【0084】
制御回路100は、搬送装置2が無負荷状態であるときに、変動レベルの算出を繰り返すことで得られた複数の変動レベルのうち閾値を超えた変動の数に基づいて搬送装置2の異常を検知してもよい。この場合、搬送装置2の異常をより高い信頼性で検知することができる。
【0085】
制御回路100は、搬送装置2における負荷の大きさを示す負荷レベルと、変動レベルとをそれぞれが含む複数セットのレベル組を取得し、当該複数セットのレベル組に基づいて、負荷レベルと閾値との関係を示す閾値プロファイルを設定し、閾値プロファイルの設定後、負荷レベルと変動レベルとを含む1セットのレベル組を取得し、当該1セットのレベル組と、閾値プロファイルとに基づいて搬送装置2の異常を検知してもよい。この場合、搬送負荷の重さに応じて閾値が変更されるので、搬送装置2の異常をより高い信頼性で検知することができる。
【0086】
制御回路100は、1セットの評価結果の取得を繰り返すことで得られた複数の評価結果のうち閾値プロファイルを超えたレベル組の数に基づいて搬送装置2の異常を検知してもよい。この場合、搬送装置2の異常をより高い信頼性で検知することができる。
【0087】
制御回路100は、V/f方式により、周波数指令に対応する電圧指令を制御指令として算出し、電力変換回路10とモータ6との間に流れた電流と、周波数指令とに基づいて変動レベルを算出してもよい。この場合、V/f制御による搬送装置2の駆動中においても、搬送装置2の異常を高い信頼性で検知することができる。
【0088】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。上述した実施形態においては、電力変換回路10がモータ6に供給する電力に基づいて、所定長さのサンプリング期間におけるモータ6の駆動力の変動幅を示す変動レベルを算出し、搬送装置2の異常を変動レベルに基づいて検知する、診断装置が電力変換装置3の制御回路100に組み込まれているが、必ずしもこれに限られない。
図9に示すように、診断装置200が電力変換装置3とは別体として構成されていてもよい。診断装置200が上位コントローラ4に組み込まれていてもよい。
【0089】
異常検知対象の機器は、搬送装置2に限られない。診断装置は、モータと、モータにより駆動される可動部とを有する限り、あらゆる機器の異常検知に利用可能である。モータは、回転電動機に限られない。例えば、モータはリニアモータであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…搬送システム、2…搬送装置(機器)、3…電力変換装置、5…搬送部(可動部)、6…モータ、10…電力変換回路、100…制御回路、200…診断装置。