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特許7332723心電図(ECG)信号のQRS複合波を検出するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】心電図(ECG)信号のQRS複合波を検出するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/347 20210101AFI20230816BHJP
【FI】
A61B5/347
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021570227
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 US2020034173
(87)【国際公開番号】W WO2020251740
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】62/859,974
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519422371
【氏名又は名称】ムラタ バイオス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】リッチ、カルロス エイ.
(72)【発明者】
【氏名】コフトゥン、ウラジミール ブイ.
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-028687(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0200034(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0015452(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0289297(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のデータ処理装置によって実行されたときに、前記1つ又は複数のデータ処理装置に動作を実行させる命令を含むコンピュータプログラムで符号化された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記動作は、
患者の心臓の電気活動に対応する信号を受信することと、
前記信号を複数の成分信号であって、前記複数の成分信号の各々が異なる周波数制限帯域を表すとともに、複数の異なる周波数制限帯域を表す前記成分信号における各々のサイクルがA、B、C、Dとしてラベル付けされる4つの1/4位相(QP)に分割される複数の成分信号に分離することと、
前記複数の成分信号の各々についてQP転移を検出することと、
前記複数の成分信号の各々についての前記検出されたQP転移の各々において、QPの始点から終点までの時間範囲における時間インデックス及び成分振幅を含むデータオブジェクトを生成することと、
前記複数の成分信号のうちの第1の成分信号と関連付けられた連続するデータオブジェクトのラベルがA、B、C、Dと繰り返されるセットについて、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの各データオブジェクトの前記成分振幅に基づいて第1ピーク振幅を検出することと、
前記複数の成分信号のうちの前記第1の成分信号とは異なる周波数制限帯域を表す第2の成分信号と関連付けられた連続するデータオブジェクトのラベルがA、B、C、Dと繰り返されるセットについて、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの各データオブジェクトの前記成分振幅に基づいて第2ピーク振幅を検出することと、
前記第1ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、前記第1ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスが第1の時間基準を満たしていると決定することと、
前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスが第1の時間基準を満たしていると決定することと、
前記第1の時間基準を満たしていると決定された前記第1ピーク振幅及び前記第2ピーク振幅、並びに前記第1の時間基準を満たしていると決定された前記第1ピーク振幅及び前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、統合ピーク振幅及び統合ピーク時間を計算することと、
前記統合ピーク振幅が振幅基準を満たしているとともに、前記統合ピーク時間が第2の時間基準を満たしていると決定することと、
前記統合ピーク振幅が前記振幅基準を満たしているとともに、前記統合ピーク時間が前記第2の時間基準を満たしていると決定することに応答して、検出された心拍の表示を提供することと、を含
前記連続するデータオブジェクトの前記セットの各データオブジェクトの前記成分振幅に基づいて前記第1ピーク振幅を検出することは、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの中心データオブジェクトにおける前記第1ピーク振幅に向かって単調に増加する振幅値と、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの中心データオブジェクトにおける前記第1ピーク振幅から離れて単調に減少する振幅値とを検出することを含み、
前記連続するデータオブジェクトの前記セットの各データオブジェクトの前記成分振幅に基づいて前記第2ピーク振幅を検出することは、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの中心データオブジェクトにおける前記第2ピーク振幅に向かって単調に増加する振幅値と、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの中心データオブジェクトにおける前記第2ピーク振幅から離れて単調に減少する振幅値とを検出することを含む、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項2】
前記信号を前記成分信号に分離することは、3つのバンドパスフィルタのバンクを使用して前記信号をフィルタリングすることを含む、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項3】
前記成分信号の各々について前記QP転移を検出することは、前記成分信号の正方向ゼロ交差、負方向ゼロ交差、正ピーク及び負ピークを検出することを含む、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項4】
前記第1ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、前記第1ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスが前記第1の時間基準を満たしていると決定することは、前記時間インデックスが時間窓内で発生していると決定することを含み、
前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスが前記第1の時間基準を満たしていると決定することは、前記時間インデックスが時間窓内で発生していると決定することを含む、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項5】
前記統合ピーク振幅を計算することは、前記統合ピーク時間における前記成分信号の前記成分振幅の全二乗平均平方根振幅を計算することを含む、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項6】
前記統合ピーク時間を計算することは、前記時間インデックスの平均を計算することを含む、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項7】
前記統合ピーク振幅が前記振幅基準を満たしていると決定することは、
統合ピーク振幅のストリームから移動振幅統計値を計算することと、
前記統合ピーク振幅が、閾値係数を乗じた前記移動振幅統計値より大きいと決定することと、を含む、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項8】
前記統合ピーク振幅が前記振幅基準を満たしていると決定することは、前記統合ピーク振幅が固定振幅閾値より大きいと決定することを含む、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項9】
前記統合ピーク時間が前記第2の時間基準を満たしていると決定することは、前記統合ピーク振幅と以前の統合ピーク振幅との相対振幅を決定することを含む、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
前記統合ピーク時間が前記第2の時間基準を満たしていると決定することは、前記統合ピーク振幅と以前の統合ピーク振幅との間の時間間隔を決定することを含む、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項11】
患者の心臓の電気活動に対応する信号を受信することと、
前記信号を複数の成分信号であって、前記複数の成分信号の各々が異なる周波数制限帯域を表すとともに、複数の異なる周波数制限帯域を表す前記成分信号における各々のサイクルがA、B、C、Dとしてラベル付けされる4つの1/4位相(QP)に分割される複数の成分信号に分離することと、
前記複数の成分信号の各々についてQP転移を検出することと、
前記複数の成分信号の各々についての前記検出されたQP転移の各々において、QPの始点から終点までの時間範囲における時間インデックス及び成分振幅を含むデータオブジェクトを生成することと、
前記複数の成分信号のうちの第1の成分信号と関連付けられた連続するデータオブジェクトのラベルがA、B、C、Dと繰り返されるセットについて、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの各データオブジェクトの前記成分振幅に基づいて第1ピーク振幅を検出することと、
前記複数の成分信号のうちの前記第1の成分信号とは異なる周波数制限帯域を表す第2の成分信号と関連付けられた連続するデータオブジェクトのラベルがA、B、C、Dと繰り返されるセットについて、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの各データオブジェクトの前記成分振幅に基づいて第2ピーク振幅を検出することと、
前記第1ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、前記第1ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスが第1の時間基準を満たしていると決定することと、
前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスが第1の時間基準を満たしていると決定することと、
前記第1の時間基準を満たしていると決定された前記第1ピーク振幅及び前記第2ピーク振幅、並びに前記第1の時間基準を満たしていると決定された前記第1ピーク振幅及び前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、統合ピーク振幅及び統合ピーク時間を計算することと、
前記統合ピーク振幅が振幅基準を満たしているとともに、前記統合ピーク時間が第2の時間基準を満たしていると決定することと、
前記統合ピーク振幅が前記振幅基準を満たしているとともに、前記統合ピーク時間が前記第2の時間基準を満たしていると決定することに応答して、検出された心拍の表示を提供することと、を含み、
前記連続するデータオブジェクトの前記セットの各データオブジェクトの前記成分振幅に基づいて前記第1ピーク振幅を検出することは、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの中心データオブジェクトにおける前記第1ピーク振幅に向かって単調に増加する振幅値と、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの中心データオブジェクトにおける前記第1ピーク振幅から離れて単調に減少する振幅値とを検出することを含み、
前記連続するデータオブジェクトの前記セットの各データオブジェクトの前記成分振幅に基づいて前記第2ピーク振幅を検出することは、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの中心データオブジェクトにおける前記第2ピーク振幅に向かって単調に増加する振幅値と、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの中心データオブジェクトにおける前記第2ピーク振幅から離れて単調に減少する振幅値とを検出することを含む、コンピュータプログラムをコンピュータによって実行する方法。
【請求項12】
前記信号を前記成分信号に分離することは、3つのバンドパスフィルタのバンクを使用して前記信号をフィルタリングすることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記成分信号の各々について前記QP転移を検出することは、前記成分信号の正方向ゼロ交差、負方向ゼロ交差、正ピーク及び負ピークを検出することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、前記第1ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスが前記第1の時間基準を満たしていると決定することは、前記時間インデックスが時間窓内で発生していると決定することを含み、
前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスが前記第1の時間基準を満たしていると決定することは、前記時間インデックスが時間窓内で発生していると決定することを含み、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記統合ピーク振幅を計算することは、前記統合ピーク時間における前記成分信号の前記成分振幅の全二乗平均平方根振幅を計算することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記統合ピーク時間を計算することは、前記時間インデックスの平均を計算することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記統合ピーク振幅が前記振幅基準を満たしていると決定することは、
統合ピーク振幅のストリームから移動振幅統計値を計算することと、
前記統合ピーク振幅が、閾値係数を乗じた前記移動振幅統計値より大きいと決定することと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記統合ピーク振幅が前記振幅基準を満たしていると決定することは、前記統合ピーク振幅が固定振幅閾値より大きいと決定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記統合ピーク時間が前記第2の時間基準を満たしていると決定することは、前記統合ピーク振幅と以前の統合ピーク振幅との相対振幅を決定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記統合ピーク時間が前記第2の時間基準を満たしていると決定することは、前記統合ピーク振幅と以前の統合ピーク振幅との間の時間間隔を決定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
患者の心臓の電気活動を検出するように構成されたセンサと、
表示装置と、
前記センサ及び前記表示装置と連結された1つ又は複数のデータ処理装置と、
前記1つ又は複数のデータ処理装置によって実行されたときに、前記1つ又は複数のデータ処理装置に動作を実行させる命令を含むコンピュータプログラムで符号化された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体と、を含み、前記動作は、
患者の心臓の電気活動に対応する信号を受信することと、
前記信号を複数の成分信号であって、前記複数の成分信号の各々が異なる周波数制限帯域を表すとともに、複数の異なる周波数制限帯域を表す前記成分信号における各々のサイクルがA、B、C、Dとしてラベル付けされる4つの1/4位相(QP)に分割される複数の成分信号に分離することと、
前記複数の成分信号の各々についてQP転移を検出することと、
前記複数の成分信号の各々についての前記検出されたQP転移の各々において、QPの始点から終点までの時間範囲における時間インデックス及び成分振幅を含むデータオブジェクトを生成することと、
前記複数の成分信号のうちの第1の成分信号と関連付けられた連続するデータオブジェクトのラベルがA、B、C、Dと繰り返されるセットについて、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの各データオブジェクトの前記成分振幅に基づいて第1ピーク振幅を検出することと、
前記複数の成分信号のうちの前記第1の成分信号とは異なる周波数制限帯域を表す第2の成分信号と関連付けられた連続するデータオブジェクトのラベルがA、B、C、Dと繰り返されるセットについて、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの各データオブジェクトの前記成分振幅に基づいて第2ピーク振幅を検出することと、
前記第1ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、前記第1ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスが第1の時間基準を満たしていると決定することと、
前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスが第1の時間基準を満たしていると決定することと、
前記第1の時間基準を満たしていると決定された前記第1ピーク振幅及び前記第2ピーク振幅、並びに前記第1の時間基準を満たしていると決定された前記第1ピーク振幅及び前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、統合ピーク振幅及び統合ピーク時間を計算することと、
前記統合ピーク振幅が振幅基準を満たしているとともに、前記統合ピーク時間が第2の時間基準を満たしていると決定することと、
前記統合ピーク振幅が前記振幅基準を満たしているとともに、前記統合ピーク時間が前記第2の時間基準を満たしていると決定することに応答して、検出された心拍の表示を提供することと、を含
前記連続するデータオブジェクトの前記セットの各データオブジェクトの前記成分振幅に基づいて前記第1ピーク振幅を検出することは、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの中心データオブジェクトにおける前記第1ピーク振幅に向かって単調に増加する振幅値と、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの中心データオブジェクトにおける前記第1ピーク振幅から離れて単調に減少する振幅値とを検出することを含み、
前記連続するデータオブジェクトの前記セットの各データオブジェクトの前記成分振幅に基づいて前記第2ピーク振幅を検出することは、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの中心データオブジェクトにおける前記第2ピーク振幅に向かって単調に増加する振幅値と、前記連続するデータオブジェクトの前記セットの中心データオブジェクトにおける前記第2ピーク振幅から離れて単調に減少する振幅値とを検出することを含む、システム。
【請求項22】
前記信号を前記成分信号に分離することは、3つのバンドパスフィルタのバンクを使用して前記信号をフィルタリングすることを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記成分信号の各々について前記QP転移を検出することは、前記成分信号の正方向ゼロ交差、負方向ゼロ交差、正ピーク及び負ピークを検出することを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、前記第1ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスが前記第1の時間基準を満たしていると決定することは、前記時間インデックスが時間窓内で発生していると決定することを含み、
前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスに基づいて、前記第2ピーク振幅に対応する前記データオブジェクトの前記時間インデックスが前記第1の時間基準を満たしていると決定することは、前記時間インデックスが時間窓内で発生していると決定することを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
前記統合ピーク振幅を計算することは、前記統合ピーク時間における前記成分信号の前記成分振幅の全二乗平均平方根振幅を計算することを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項26】
前記統合ピーク時間を計算することは、前記時間インデックスの平均を計算することを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項27】
前記統合ピーク振幅が前記振幅基準を満たしていると決定することは、
統合ピーク振幅のストリームから移動振幅統計値を計算することと、
前記統合ピーク振幅が、閾値係数を乗じた前記移動振幅統計値より大きいと決定することと、を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項28】
前記統合ピーク振幅が前記振幅基準を満たしていると決定することは、前記統合ピーク振幅が固定振幅閾値より大きいと決定することを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項29】
前記統合ピーク時間が前記第2の時間基準を満たしていると決定することは、前記統合ピーク振幅と以前の統合ピーク振幅との相対振幅を決定することを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項30】
前記統合ピーク時間が前記第2の時間基準を満たしていると決定することは、前記統合ピーク振幅と以前の統合ピーク振幅との間の時間間隔を決定することを含む、請求項21に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、心電図信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
心電図(ECG:Electrocardiography又はEKG)は、患者の皮膚に付着させた電極を使用して、一定の時間にわたって患者の心臓の電気活動を記録するプロセスである。電極は、各心拍中に心臓によって生成された電荷に対応する皮膚上の電気の変化を測定する。心臓の電気活動は、ECG信号によって表され、P波、QRS複合波及びT波の3つの主成分を含む。P波は、心房脱分極を表し、QRS複合波は、心室脱分極を表し、T波は、心室再分極を表す。
【0003】
これらの3つの成分の各々は、かなり独特なパターンを有し、心臓及びその周囲(血液組成を含む)の構造の変化により、これらの成分のパターンが変化する。したがって、ECG信号は、心臓の構造及び機能についての大量の情報を伝達することができる。とりわけ、ECGは、心拍のレート及びリズム、心腔のサイズ及び位置、心筋細胞又は伝導系へのあらゆる損傷の存在、心臓治療薬の効果並びに植え込み型ペースメーカの機能を測定するために使用することができる。
【0004】
ECG信号は、アーチファクトを含み得、アーチファクトは、筋肉の動き又は電気デバイスからの干渉などの二次内因又は外因によって生じる歪み信号である。あるアーチファクトは、リズムの乱れの正しい識別及び診断において重要な課題をもたらす。例えば、寒さによる震え又は感情の高まりによる震えなどのいくつかの律動的運動は、心不整脈という錯覚をもたらす可能性がある。したがって、真のECG信号からECGアーチファクトを正確に分離することにより、患者の転帰に大きい影響を与えることができる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、ECG信号処理に関連するシステム及び技法を説明する。説明されるシステム及び技法は、ECG信号内のQRS複合波を検出するために使用することができる。本開示は、2006年2月23日に出願された「Apparatus for Signal Decomposition,Analysis and Reconstruction」と題する米国特許第7,702,502号明細書、2006年2月23日に出願された「System and Method for Signal Decomposition,Analysis and Reconstruction」と題する米国特許第7,706,992号明細書、2008年11月26日に出願された「Physiological Signal Processing to Determine a Cardiac Condition」と題する米国特許第8,086,304号明細書及び2014年3月17日に出願された「Method and Apparatus for Signal Decomposition,Analysis,Reconstruction and Tracking」と題する米国特許第9,530,425号明細書の全内容を参照により組み込み、これらの特許文献は、ECG信号の処理に適用可能であり、且つ比較的低い演算コストで洗練された信号解析を提供することができる信号分解及び解析技法の開示を含む。以前に特許取得された信号分解及び解析技法を利用することにより、現在説明されているシステム及び技法は、QRS複合波の検出における高い性能及びECG信号のアーチファクトに対する高いロバスト性を可能にすることができる(例えば、MIT-BIH不整脈データベース(MIT-BIH Arrhythmia Database)における感度/陽性予測度>99.6%)。
【0006】
米国特許第7,706,992号明細書は、心臓信号の重要な特徴と関連付けられることが知られている周波数範囲に位置合わせされた、帯域制限された解析ウェーブレットのセットを通したECG信号の準周期的分解(例えば、高周波数から低周波数への進展、すなわち遅延電位、QRS複合波、T波、心拍数周波数、T波交互現象及び概日リズム)のためのシステム及び技法について説明している。ウェーブレットは、演算効率が非常に良く、算術演算をほとんど使用せずに、依然として帯域分離及び線形位相応答を維持することができる。時間の関数として表現されるウェーブレット出力は、それらの極値及びゼロ交差がECG信号の有意な形態学的特徴と常に関連付けられる時点(「有意点」とも呼ばれる)と一致するという特性を呈する成分信号を形成する。時間マークは、それらのポイントにおいて関連付けられたウェーブレットの状態を説明する様々なラベル及び属性と共にこれらの時点で生成される。組み合わせて捉えると、この情報は、有意点をオブジェクトに符号化するための手段を提供し、したがって1つのウェーブレット成分あたり1つのオブジェクトストリームが生成される。オブジェクトを組み合わせて、時間整列されたベクトルにすることにより、根本的な信号の形態学的特徴と一意に関連付けられた状態シーケンスが形成される。状態空間において状態シーケンスを観測することにより、パターン解析及び認識方法を適用することができ、それによりECGの精密なセグメンテーション(様々な形態学的特徴の検出及び測定)を得ることができる。
【0007】
一般に、革新的な一態様では、システムは、表示装置と、センサ及び表示装置と連結された1つ又は複数のデータ処理装置と、1つ又は複数のデータ処理装置によって実行されたときに、1つ又は複数のデータ処理装置に動作を実行させる命令を含むコンピュータプログラムで符号化された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体とを含む。動作は、患者の心臓の電気活動に対応する信号を受信することと、信号を成分信号であって、各々が周波数制限帯域を表す成分信号に分離することと、成分信号の各々について部分位相転移を検出することと、成分信号の各々についての検出された部分位相転移の各々において、時間値及び振幅値を含むデータオブジェクトを生成することと、成分信号の第1の成分信号と関連付けられた連続データオブジェクトのセットについて、連続データオブジェクトのセットの各データオブジェクトの振幅値に基づいてピーク振幅を検出することと、成分信号の第2の成分信号と関連付けられた連続データオブジェクトのセットについて、連続データオブジェクトのセットの各データオブジェクトの振幅値に基づいてピーク振幅を検出することと、ピーク振幅に対応するデータオブジェクトの時間値に基づいて、ピーク振幅が第1の時間基準を満たしていると決定することと、ピーク振幅及びピーク振幅に対応するデータオブジェクトの時間値に基づいて、統合ピーク振幅及び統合ピーク時間を計算することと、統合ピーク振幅が振幅基準と第2の時間基準との両方を満たしていると決定することと、統合ピーク振幅が振幅基準と第2の時間基準との両方を満たしていると決定することに応答して、検出された心拍の表示を提供することとを含む。
【0008】
別の態様では、装置は、1つ又は複数のデータ処理装置によって実行されたときに、1つ又は複数のデータ処理装置に動作を実行させる命令を含むコンピュータプログラムで符号化された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含む。動作は、患者の心臓の電気活動に対応する信号を受信することと、信号を成分信号であって、各々が周波数制限帯域を表す成分信号に分離することと、成分信号の各々について部分位相転移を検出することと、成分信号の各々についての検出された部分位相転移の各々において、時間値及び振幅値を含むデータオブジェクトを生成することと、成分信号の第1の成分信号と関連付けられた連続データオブジェクトのセットについて、連続データオブジェクトのセットの各データオブジェクトの振幅値に基づいてピーク振幅を検出することと、成分信号の第2の成分信号と関連付けられた連続データオブジェクトのセットについて、連続データオブジェクトのセットの各データオブジェクトの振幅値に基づいてピーク振幅を検出することと、ピーク振幅に対応するデータオブジェクトの時間値に基づいて、ピーク振幅が第1の時間基準を満たしていると決定することと、ピーク振幅及びピーク振幅に対応するデータオブジェクトの時間値に基づいて、統合ピーク振幅及び統合ピーク時間を計算することと、統合ピーク振幅が振幅基準と第2の時間基準との両方を満たしていると決定することと、統合ピーク振幅が振幅基準と第2の時間基準との両方を満たしていると決定することに応答して、検出された心拍の表示を提供することとを含む。
【0009】
別の態様では、コンピュータ実装方法は、患者の心臓の電気活動に対応する信号を受信することと、信号を成分信号であって、各々が周波数制限帯域を表す成分信号に分離することと、成分信号の各々について部分位相転移を検出することと、成分信号の各々についての検出された部分位相転移の各々において、時間値及び振幅値を含むデータオブジェクトを生成することと、成分信号の第1の成分信号と関連付けられた連続データオブジェクトのセットについて、連続データオブジェクトのセットの各データオブジェクトの振幅値に基づいてピーク振幅を検出することと、成分信号の第2の成分信号と関連付けられた連続データオブジェクトのセットについて、連続データオブジェクトのセットの各データオブジェクトの振幅値に基づいてピーク振幅を検出することと、ピーク振幅に対応するデータオブジェクトの時間値に基づいて、ピーク振幅が第1の時間基準を満たしていると決定することと、ピーク振幅及びピーク振幅に対応するデータオブジェクトの時間値に基づいて、統合ピーク振幅及び統合ピーク時間を計算することと、統合ピーク振幅が振幅基準と第2の時間基準との両方を満たしていると決定することと、統合ピーク振幅が振幅基準と第2の時間基準との両方を満たしていると決定することに応答して、検出された心拍の表示を提供することとを含む。
【0010】
そのようなシステム及び方法の様々な他の機能及び利点は、下記の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】QRS複合波を検出するECG信号処理システムの例を示すブロック図である。
図2】解析ウェーブレットバンクの実数部に対する周波数応答を示すプロットである。
図3】4つの1/4位相に分割された1つの成分信号からのサイクルを示す波形図である。
図4A】ECGの単離された単一の心拍に応答した時間整列されたウェーブレット出力の例を示す時間トレースである。
図4B】ECGの単離された単一の心拍に応答した時間整列されたウェーブレット出力の例を示す時間トレースである。
図5】表示デバイスと接続される患者着用センサを含むECG信号処理システムの例を示す図である。
図6】ECG信号処理システムを実装するために使用することができるコンピューティングシステムの例を示すブロック図である。
図7】ECG信号処理システムを実装するために使用することができるホストシステムを描写するコンピューティングシステムの例を示すブロック図である。
図8】ECG信号処理システムによって実行される動作の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
様々な図面の同様の参照番号及び名称は、同様の要素を示す。
図1は、ECG信号内のQRS複合波を検出するECG信号処理システム100の例を示すブロック図である。システム100は、例えば、ECG信号処理を容易にするハードウェア及び/又はソフトウェアなどの電子コンポーネントを含む。いくつかの実装形態では、システム100の一部分は、ECG波形、心拍数、呼吸数、酸素飽和、血圧、温度及び脈拍数などの生理学的バイタルサインデータを継続的に収集することができる患者監視デバイスに含まれる。患者監視デバイスの例は、2015年10月22日に出願された「Patient Care and Health Information Management Systems and Methods」と題する米国特許出願公開第2015/0302539号明細書及び2016年2月9日に出願された「Patient Worn Sensor Assembly」と題する米国特許出願公開第2016/0228060号明細書において説明されているものなどの胸部センサ、2018年1月25日に出願された「Sensor Connection Assembly for Integration with Garment」と題する米国特許出願公開第2018/0213859号明細書において説明されているセンサアセンブリなどの周辺デバイスと接続する他のセンサアセンブリを含み、それらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実装形態では、システム100の一部分は、胸部センサ、指尖プローブ、耳朶プローブ又は非観血血圧(NIBP:non-invasive blood pressure)カフなどの1つ又は複数の周辺デバイスから受信された信号を使用して生理学的バイタルサインデータを分析及び表示する監視ステーションに含まれる。監視ステーションの例は、ベッドサイドモニタ及び中央サーバステーションを含み、これらも米国特許出願公開第2015/0302539号明細書において説明されている。
【0013】
システム100は、解析ウェーブレットバンク102、1/4位相(QP:quarter-phase)オブジェクト変換ユニット104、QPピーク検出ユニット106、時間適格性判断ユニット108、振幅適格性判断ユニット110及びリフラクトリルールセット112を含む。システム100に提供されるECG信号は、フィルタリングされたECG信号であり得る。ECG信号は、0.5Hzを下回る基線変動及び低周波数アーチファクト並びに55Hzを上回る高周波数雑音及びアーチファクトを抑制するための従来の技法を使用してフィルタリングすることができる。フィルタリングされたECG信号は、最初に、QRS複合波の主要な形態学的成分と関連付けられた時間-周波数スケールセットに信号を分解する(分離する)ために、解析ウェーブレットバンク102で処理される。これにより、成分信号が生じ、成分信号は、QPオブジェクト変換ユニット104に提供され、QPオブジェクト変換ユニット104は、成分信号の極値及びゼロ交差を検出するために、(米国特許第7,706,992号明細書において説明されているような)QP変換を適用する。これらのポイントは、有意な形態学的特徴を有するECG信号に沿ったポイントと関連付けられる。加えて、QPオブジェクト変換ユニット104は、ECG信号内に埋め込まれた主要な情報、この事例ではQRS複合波と関連付けられた情報を抽出し、この情報をQPオブジェクトに埋め込む。このプロセスにより、QPオブジェクトのストリームが生じ、QPオブジェクトのストリームは、QPピーク検出ユニット106に提供され、QPピーク検出ユニット106は、QRS複合波ピークと関連付けられたパターンの検出のためのルールを適用し、それに続いて、時間適格性判断ユニット108、振幅適格性判断ユニット110及びリフラクトリルールセット112は、QRS複合波検出としてのそれらのピークの適格性判断のためのルールを適用する。システム100によって提供されるQRS複合波検出は、心拍を識別して心拍数統計を計算するために使用することができる。
【0014】
解析ウェーブレットバンク102は、例えば、3つの解析成分帯域を使用する平行形式コフトゥン-リッチウェーブレット変換(Parallel-Form Kovtun-Ricci Wavelet Transform)として実装することができる(米国特許第7,706,992号明細書参照)。米国特許第7,706,992号明細書において説明されているように、ウェーブレットは、スケーリングされた微分カーネル及びスケーリングされた積分カーネルのカスケードから構成される。スケーリングされた微分カーネルは、z領域伝達関数
【0015】
【数1】
を有し、z領域伝達関数は、帯域pに対するスケールパラメータk及び秩序パラメータNdpを有する。広帯域における観測という意味において、スケーリングされた微分カーネルは、コムフィルタ(comb filter)、すなわち周波数にわたって繰り返されるローブを有するフィルタとしての役割を果たす。その第1のローブを単離するためのその応答の帯域制限により、純粋なバンドパス応答が得られる。米国特許第7,706,992号明細書において説明されているスケーリングされた積分カーネルは、伝達関数
【0016】
【数2】
を通して移動平均ローパスを実行することにより、ローパス演算を効率的に遂行することができ、伝達関数は、帯域pに対するスケールパラメータw及び秩序パラメータNipを有する。
【0017】
米国特許第7,706,992号明細書において説明されているように、変換ウェーブレットのスケールパラメータkは、基本バンドパスローブのピークを制御し、スケールパラメータwは、ローパスの第1のヌルの周波数を決定する。w≒2k/3の公称値を選択することにより、その第1のヌルは、Hdp(z)の第2のバンドパスローブのピークとほぼ同じ場所、すなわちコムの第1の繰り返しに置かれ、したがって基本バンドパス応答が効果的に単離される。積分秩序パラメータNipは、ローパス演算に対するストップバンド減衰量を制御する。Nip=4の値は、低演算負荷で非常に効果的な性能を提供することができる。微分秩序パラメータNdpは、バンドパス関数の帯域幅を制御する。フィルタバンクの場合、微分秩序パラメータNdpは、帯域応答間のオーバーラップの量を制御する。QRSバンクの場合、Ndpの値は、帯域応答の総和がQRSパワーバンドにわたってほぼ横ばい状態であるように選択され、その結果、QRS複合波の総パワーは、周波数に関して比較的不偏であるように表される。
【0018】
したがって、ウェーブレットバンク設計のための4つの基本的なパラメータk、Ndp、w、Nipは、ウェーブレット帯域のバンドパス及びストップバンド挙動を説明する。いくつかの実装形態では、例えば24Hz、16Hz、8Hzの公称(近似)中心周波数を有するように、3つの解析ウェーブレット帯域が選択される。これらの帯域は、広範な形態学にわたって組み合わせてQRS特徴のスケールと関連付けられる。例えば、ECGに対する200Hzのサンプルレート及び離散時間ウェーブレット演算子を使用することにより、解析ウェーブレットバンク102のバンドパスウェーブレットは、以下の設計パラメータを使用して実装することができる。
【0019】
【表1】
偶数Ndpに対して偶数kを有し、偶数Nipを有することにより、ウェーブレットの真性遅延が整数サンプルになることに留意されたい(米国特許第7,706,992号明細書参照)。これを受けて、米国特許第7,706,992号明細書において説明されているように、簡単な整数値配列の遅延を使用して、バンク内のウェーブレットを時間整列させることができる。したがって、示されるスケールは、遅延ベースの基準も満たすターゲットに最も近い値として選択される。
【0020】
上記のパラメータを実施することによって得られた周波数応答は、図2のプロット200に示されている。図2は、解析ウェーブレットバンクの実数部に対する周波数応答を示す。プロット200では、破線は、帯域応答の総和を表す。帯域は、本質的に線形位相であり、米国特許第7,706,992号明細書において説明されているように、フィルタバンクを形成するためにそれらの真性遅延に従って時間整列される。また、バンクは、解析形態であり得、その結果、各帯域は、2つの関連出力を有し、一方は、成分の実数部であり、他方は、成分の虚数部である。代わりに、成分出力は、単一の複素数値信号と見なすことができる。
【0021】
図1を参照すると、QPオブジェクト変換ユニット104は、解析ウェーブレットバンク102から受信された成分信号の各々におけるQP転移を検出する。図3は、1つの成分信号からのサイクルが、A、B、C、Dとしてラベル付けされる4つの1/4位相に分割された例を示す波形300である。この成分信号は、成分信号の正方向及び負方向ゼロ交差並びに正及び負ピークなど、ある独特な特徴に従って分割され、いくつかの実装形態では、定義される。これらの独特な特徴は、以下において表形式で示されている。
【0022】
【表2】
再び図1を参照すると、QPオブジェクト変換ユニット104は、米国特許第7,706,992号明細書において説明されているように、各QP転移において、QP属性(例えば、データフィールド)を収集したものであるQPオブジェクト(例えば、データ構造)を形成する。QRS複合波検出の目的のため、QPオブジェクトは、QP検出時点における時間インデックス及び成分振幅を含む。3つの成分帯域からのQPオブジェクトストリームは、成分にわたる同期パターン解析のために時間コンテキストに格納することができる。
【0023】
QPピーク検出ユニット106は、QRS複合波ピークと関連付けられたピークパターンの検出のためのルールを適用する。QPピークパターン検出の場合、すべてのQPオブジェクトストリームにおいて振幅ピークパターンが検出される。いくつかの実装形態では、以下の通り、QPのシーケンスに沿って2つのピークパターンが定義される。
・ピークパターンA
○7つの連続QPのサポートにわたる
○中心QPは、最大ピーク振幅を有する
○論理的根拠:このパターンは、鋭い中心ピーク形状に対応する
・ピークパターンB
○4つの連続QPで順次分離された3つのQPのシーケンスにわたる(9つの連続QPの全サポートに対する)
○QPのシーケンスに対するQP振幅は、両側から中心に向かって単調に増加する
○論理的根拠:このパターンは、概して幅広いピーク形状に対応する
これらの特定のパターンは、広範の観測心拍形態学にわたってピークパターンをマッチさせることによって経験的に決定された。ピークパターンは、各パターンの中心QPで位置合わせされる。すべてのピークパターンが同時に満たされる中心QPは、そのQPストリームに対する検出QPピークとしてマーク付けされ、その帯域及び時間コンテキスト(QPピーク時間及び振幅を含む)と共に収集され、時間適格性判断ユニット108に提供される。
【0024】
QP振幅ピークは、一般に、実際のQRS複合波に対するそれらの関連帯域にわたって時間整合され、アーチファクト及び再分極中に起こるものなどの他の特徴に対して整合されない。この時間一致に基づいて、時間適格性判断ユニット108は、他のQP帯域の最も近いピーク時間に対して時間的な近さを見出すために、検出QPピークのペアワイズピーク時間を比較する。次いで、適格時間窓内において双方で起こる少なくとも2つの帯域からのQPピークは、時間適格性が得られ、収集される。適格時間窓は、初期の観測及びこのパラメータの最適化に基づいて例えば40ミリ秒で設定することができる。
【0025】
帯域ごとに時間適格性が得られたピークは、演算された単一のピーク時間及び振幅を有する時間適格性が得られた「中心」ピークに統合される。統合ピーク時間は、帯域ごとに適格性が得られたピーク時間の平均として演算される。統合ピーク振幅は、統合ピーク時間に評価されたウェーブレット出力の全二乗平均平方根(RMS:root mean square)振幅として演算される。したがって、時間適格性が得られたピークのストリームは、一連の統合ピークから形成され、振幅適格性判断ユニット110に提供される。
【0026】
次いで、振幅適格性判断ユニット110は、以下の2つの基準に基づいて、時間適格性が得られたピークの振幅適格性を判断する。
・相対振幅基準
○移動振幅統計値は、時間適格性が得られたピーク振幅のストリームから形成され、例えばその前の4秒間(振幅異常値の拒否に反した突然の振幅降下への応答時間のバランスを取るように設計された時間長を選択する)に起こったすべてのピーク振幅の上位四分位値の平均として演算される
○現在のピーク振幅は、統計値に閾値係数、例えば0.35(低振幅QRS複合波の適正な検出に反したQRS複合波と関連付けられていないピークの拒否のバランスを取るように選択された値)を乗じたものより大きい
○論理的根拠:実際のQRS複合波と関連付けられていない可能性が最も高い、コンテキストにおける異常値である小さいピークの拒否
・絶対振幅基準
○現在のピーク振幅は、固定振幅閾値、例えば3.6マイクロボルト(典型的には基線雑音と関連付けられる低振幅範囲のピークを拒否するように選択された値)より大きい
○論理的根拠:コンテキストにかかわらず、極めて小さいピークの拒否
両方の基準を満たすピークは、振幅適格性が得られ、リフラクトリルールセット112に提供される。
【0027】
次いで、振幅適格性が得られたピークは、リフラクトリルールセット112を通して適格性が判断される。リフラクトリの目的は、先行するすべての基準を依然として満たす比較的大きいP波又はT波の検知を拒否することである。リフラクトリルールは、時間近接性(ピーク間の時間間隔、ピーク間間隔)及び現在のピークと以前のピークとの相対振幅に基づく。ルールセットの例は、以下の通りである。
定義
diPeak ピーク間間隔
aPeakCurr 現在のピーク振幅
aPeakPrev 以前のピーク振幅
fKeepPrev 「以前のものを維持する」条件フラグ
fKeepCurr 「現在のものを維持する」条件フラグ
kThreshRefr リフラクトリ閾値係数
ルール
・aPeakCurr≧aPeakPrevの場合
→左方向基準を評価する
○diPeak<左リフラクトリ間隔の場合
■左方向振幅/時間基準を評価する
■満たした場合、fKeepPrev条件をアサートし、満たさない場合、デアサートする
○それ以外の場合、fKeepPrevをアサートする
→「以前のものを維持する」アクションを実行する
○fKeepPrevの場合
■新しい心拍検出をアサートする
■検出された心拍として以前のピークを出力する
■以前のピークとして現在のピークを保存する
○それ以外の場合
■新しい心拍検出をデアサートする
■以前のピークとして現在のピークを保存する
・それ以外の場合(aPeakPrev>aPeakCurr)
→右方向基準を評価する
○diPeak<右リフラクトリ間隔の場合
■右方向振幅/時間基準を評価する
■満たした場合、fKeepCurr条件をアサートし、満たさない場合、デアサートする
○それ以外の場合、fKeepCurrをアサートする
→「現在のものを維持する」アクションを実行する
○fKeepCurrの場合
■新しい心拍検出をアサートする
■検出された心拍として以前のピークを出力する
■以前のピークとして現在のピークを保存する
○それ以外の場合
■新しい心拍検出をデアサートする
■他に何もしない(現在のピークを処分する)
左方向振幅/時間基準
(左リフラクトリ傾き)=1/((左リフラクトリ間隔)-(左ハードリフラクトリ間隔))
kThreshRefr=1-(diPeak-(左ハードリフラクトリ間隔))(左リフラクトリ傾き)
aPeakPrev≧aPeakCurrkThreshRefrの場合、満たされる
右方向振幅/時間基準
(右リフラクトリ傾き)=1/((右リフラクトリ間隔)-(右ハードリフラクトリ間隔))
kThreshRefr=1-(diPeak-(右ハードリフラクトリ間隔))(右リフラクトリ傾き)
aPeakCurr≧aPeakPrevkThreshRefrの場合、満たされる
左方向及び右方向基準のパラメータは、以下の通り、最適化を通して経験的に決定することができる。
【0028】
【表3】
ECG処理システム100は、集中治療、手術、回復並びに緊急事態及び病棟設定を含めて、患者の心拍数がモニタされるか又は統計的に解析されるいかなる設定でも有用であり得る。システム100は、継続的な及び即時の心拍検出及び心拍数値を提供することができ、それらは、救急医療において極めて重要なものであり、また呼吸及び心臓障害、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)を有する患者にとって又は心拍リズムの乱れの診断にとって非常に有用でもある。
【0029】
図4A及び図4Bは、ECGの単離された単一の心拍に応答した時間整列されたウェーブレット出力の例を示す時間トレースである(図4Aのトレース400A及び図4Bのトレース400Bは、MIT-BIH不整脈データベース(MIT-BIH Arrhythmia Database)(https://physionet.org/physiobank/database/mitdb/)のファイル100から得られた)。すべての時間トレースは、心拍検出時点の250ミリ秒前から250ミリ秒後までの時間帯を示す。図4Aのトレース400Aは、正常洞調律(NSR:Normal Sinus Rhythm)心拍である記録の心拍100を示し、図4Bのトレース400Bは、心室性期外収縮(PVC:Premature Ventricular Contraction)心拍である記録の心拍1907を示す。トレース402A及びトレース402Bは、24Hzにおける例示的な上層ウェーブレット帯域の出力を示し、トレース404A及びトレース404Bは、16Hzにおける例示的な中層ウェーブレット帯域の出力を示し、トレース406A及びトレース406Bは、8Hzにおける例示的な下層ウェーブレット帯域の出力を示す。ウェーブレット出力プロットにおいて、実線トレースは、解析ウェーブレット出力の実数部であり、細い点線トレースは、解析ウェーブレット出力の瞬時振幅(複素数の絶対値)である。ウェーブレット出力における転移(A、B、C、D)に対応するQPポイントは、実数部波形において、対応するシンボル(円形、十字形、正方形、ダイヤモンド形)でそれぞれマーク付けされている。対応するポイントは、振幅出力においても、対応するQP時刻においてより大きいドットでマーク付けされている。
【0030】
図5は、米国特許出願公開第2015/0302539号明細書において説明されているような、ベッドサイドモニタ、中央サーバステーション又はモバイルデバイスのディスプレイなどの表示デバイス504と接続される患者着用センサ502を含むシステム500を示す。表示デバイス504は、患者の情報を表示する。表示デバイス504は、ユーザインタフェース506を表示することができ、ユーザインタフェース506は、患者着用センサ502から受信された情報及び/又は患者着用センサ502と関連付けられた患者と関連付けられた情報を含む。患者着用センサ502は、例えば、米国特許出願公開第2015/0302539号明細書において説明されているような胸部センサであり得る。患者着用センサ502は、患者の皮膚に取り付けて、血圧、体温、呼吸数、生体インピーダンス、血中酸素濃度、心拍リズム(ECGを介する)及び心拍数などの様々な患者のバイタルサインを記録するための接点を含み得る。
【0031】
患者着用センサ502は、例えば、ブルートゥース(登録商標)、Wi-Fi又はセルラー通信プロトコルなどの無線通信プロトコルを使用して、無線接続508を通して表示デバイス504と無線通信することができる。患者着用センサ502は、無線接続508を通して患者のバイタルサイン情報を表示デバイス504に送信することができる。いくつかの実装形態では、患者着用センサ502は、表示デバイス504に情報を送信する前に、上記で説明されるECG信号処理など、収集されたバイタルサイン情報における処理を実行することができ、いくつかの実装形態では、患者着用センサ502は、処理された情報の代わりに又はそれに加えて、生のバイタルサイン情報を表示デバイス504に送信することができる。
【0032】
表示デバイス504は、タッチスクリーン入力の受信が可能な、タブレットなどのタッチスクリーンデバイスであり得る。いくつかの実装形態では、表示デバイス504は、キーボード、マウス、入力ボタン又は音声コマンドの認識が可能である1つ若しくは複数のデバイスから入力を受信することができる。いくつかの実装形態では、表示デバイス504は、表示デバイス504と無線通信する、携帯電話などのデバイスを使用して制御することができる。いくつかの実装形態では、表示デバイス504は、「ヘッドレス」デバイスであり、「ヘッドレス」デバイスは、直接的なユーザ入力及び/又は出力機能性を含まないが、むしろ単に患者着用センサ502から受信された生のバイタルサイン情報の処理、警報状態の検出、表示デバイス504と接続される他のデバイスへの警告の送信及び1つ又は複数の中央サーバへの患者情報の送信を行うための処理デバイスとしての役割を果たす。そのような事例では、表示デバイス504は、ディスプレイを含まない。
【0033】
ユーザインタフェース506は、患者着用センサ502と関連付けられた患者の情報を表示する。例えば、患者着用センサ502の電極は、患者の皮膚と接触してバイタルサイン情報を収集し、バイタルサイン情報は、無線接続508を通して表示デバイス504に転送され、表示デバイス504によって処理され、ユーザインタフェース506の一部として表示される。ユーザインタフェース506は、様々なバイタルサイン波及び数値レベルを示す。
【0034】
例えば、ユーザインタフェース506は、患者のECG波形510及び患者の心拍数の数値512を示す。示される例では、患者の心拍数値512は、1分間に80回である。拍/分(BPM:beat per minute)を単位とする1分間の心拍数は、HR=60/RRとして演算することができ、ここで、RRは、R-R間隔(秒)である。R-R間隔は、現在の心拍に対して、現在の心拍検出時刻と先行する心拍検出時刻との間の時間差として見出すことができる。加えて、統合ピーク時間は、時間軸における適切なポイントでECGディスプレイ上にマーク付けすることができる。
【0035】
ユーザインタフェース506は、1分間に50~120回に位置する患者の許容心拍数範囲514を示す。1分間に80回という患者の現在の心拍数512は、示される許容範囲514内に位置するため、現時点では患者の心拍数に対する警報状態がない。この現状は、ベルに「X」シンボルを重ね合わせたアイコン516によって示されている。アイコン516は、患者の現在の心拍数が許容範囲内にあることを示す。患者の心拍数が許容レベル内にない状況では、アイコン516は、警報状態を示すように変更することができる。例えば、警報状態を示すために、アイコン516から「X」を消し、アイコン516を点灯又は点滅させることができる。加えて、表示デバイス504は、近くの介護者に患者の警報状態を警告するために警報音を発することができる。いくつかの実装形態では、ユーザインタフェース506の他の部分を点滅させるか又は別の方法で警報状態を示すことができる。例えば、患者の心拍数が許容範囲514外である際、表示されている心拍数値512を点滅させることができる。いくつかの実装形態では、特定の警報状態の深刻度を示すために、様々な速度でアイコン516(又はユーザインタフェース506の他の部分)を点滅させることができる。例えば、アイコン516は、患者の心拍数が許容範囲から離れるほど速く点滅させることができる。
【0036】
図6は、上記で説明される動作、データ構造及び/又はコンピュータ可読媒体602に含まれるプログラムを実施するものであり、中央処理装置(CPU:central processing unit)604によって実行されるコンピュータプログラムを実行するコンピューティングシステム600の例を示すブロック図である。CPU604は、x86シリーズのCPU又は当技術分野で知られている他のCPUであり得る。プログラムを実行するための入力は、いくつかの実装形態では、キーボード606から得ることができる。いくつかの実装形態では、プログラムを実行するための入力は、マウス、ライトペン、タッチスクリーン、タッチパッド又は当技術分野で知られている他の任意の入力デバイスなどの周辺デバイスから得ることができる。いくつかの実装形態では、説明される動作は、オキシメトリデータを実行して処理するために別のプログラムによって呼び出すことができる。処理された時点において、上記で説明される動作、データ構造及び/又はプログラムを使用して処理されたデータは、ディスプレイ608に出力するか、又はインターネット610若しくは他の無線通信チャネルを介して別のユーザ端末612に送信することができる。いくつかの実装形態では、出力は、データベース614又はオフサイトに位置する別のデータベースに入れることができる。
【0037】
図7は、ホスト700を描写するコンピューティングシステムの例を示すブロック図であり、いくつかの実装形態では、ホスト700は、ユニット又はモジュールのセットを含み得、例えば患者着用センサと通信するための通信モジュール(COMM)702及び関連通信リンク704、アプリケーション命令セットを含むコンピュータ可読媒体(CRM:computer readable medium)708を含むマイクロプロセッサユニット(MPU:microprocessor unit)706、患者データを格納するための関連ストレージモジュール710、オペレータ(例えば、医師、技師又は患者)がMPU706と対話できるようにするための人間-コンピュータインタフェース(HCI:human-computer interface)712であって、視覚ディスプレイ、聴覚ディスプレイ、キーボード、マウス、タッチスクリーン、ハプティックデバイス又は他の対話手段を含み得るHCI712などが挙げられる。また、ホスト700は、例えばプリンタ、スキャナ及び/又はデータ取得若しくは撮像機器など、一般的にコンピュータ周辺機器との接続及び通信を行うための入力/出力(I/O:input/output)モジュール714並びにイーサネット(登録商標)及び/又は無線ネットワーク若しくはWi-Fiなどのコンピュータネットワーク上の他のホストと通信するためのネットワーク通信モジュール(NET)716も含み得る。
【0038】
図8は、QRS複合波を検出するECG信号処理システムによって実行される動作800の例を示すフローチャートである。動作800は、図1のシステムなど、1つ又は複数のコンピュータのシステムによって実行することができる。動作800は、上記で論じてきた詳細を含み得る。
【0039】
802では、患者の心臓の電気活動に対応する信号、例えばECG信号が受信される。
804では、信号が成分信号に分離され、成分信号の各々は、周波数制限帯域を表す。信号を成分信号に分離することは、3つのバンドパスフィルタのバンクを使用して信号をフィルタリングすることを含み得る。
【0040】
806では、成分信号の各々について部分位相転移が検出される。成分信号の各々について部分位相転移を検出することは、成分信号の正方向ゼロ交差、負方向ゼロ交差、正ピーク及び負ピークを検出することを含み得る。
【0041】
808では、成分信号の各々についての検出された部分位相転移の各々において、時間値及び振幅値を含むデータオブジェクトが生成される。
810では、成分信号の第1の成分信号と関連付けられた連続データオブジェクトのセットについて、連続データオブジェクトのセットの各データオブジェクトの振幅値に基づいてピーク振幅が検出され、成分信号の第2の成分信号と関連付けられた連続データオブジェクトのセットについて、連続データオブジェクトのセットの各データオブジェクトの振幅値に基づいてピーク振幅が検出される。いくつかの実装形態では、ピーク振幅を検出することは、連続データオブジェクトのセットの中心データオブジェクトにおけるピーク振幅を検出することを含む。いくつかの実装形態では、ピーク振幅を検出することは、連続データオブジェクトのセットの中心データオブジェクトにおけるピーク振幅に向かって単調に増加する振幅値と、連続データオブジェクトのセットの中心データオブジェクトにおけるピーク振幅から離れて単調に減少する振幅値とを検出することを含む。
【0042】
812では、ピーク振幅に対応するデータオブジェクトの時間値に基づいて、ピーク振幅が第1の時間基準を満たしているという決定が行われる。ピーク振幅が第1の時間基準を満たしていると決定することは、時間値が時間窓内で発生していると決定することを含み得る。
【0043】
814では、ピーク振幅及びピーク振幅に対応するデータオブジェクトの時間値に基づいて、統合ピーク振幅及び統合ピーク時間が計算される。いくつかの実装形態では、統合ピーク振幅を計算することは、統合ピーク時間における成分信号の振幅値の全二乗平均平方根振幅を計算することを含む。いくつかの実装形態では、統合ピーク時間を計算することは、時間値の平均を計算することを含む。
【0044】
816では、統合ピーク振幅が振幅基準と第2の時間基準との両方を満たしているという決定が行われる。いくつかの実装形態では、統合ピーク振幅が振幅基準を満たしていると決定することは、統合ピーク振幅のストリームから移動振幅統計値を計算することと、統合ピーク振幅が、移動振幅統計値に閾値係数を乗じたものより大きいと決定することとを含む。いくつかの実装形態では、統合ピーク振幅が振幅基準を満たしていると決定することは、統合ピーク振幅が固定振幅閾値より大きいと決定することを含む。いくつかの実装形態では、統合ピーク振幅が振幅基準を満たしていると決定することは、統合ピーク振幅と以前の統合ピーク振幅との相対振幅を決定することを含む。いくつかの実装形態では、統合ピーク振幅が第2の時間基準を満たしていると決定することは、統合ピーク振幅と以前の統合ピーク振幅との間の時間間隔を決定することを含む。
【0045】
818では、統合ピーク振幅が振幅基準と第2の時間基準との両方を満たしていると決定することに応答して、検出された心拍の表示が提供される。
本開示で説明される特徴は、デジタル電子回路若しくはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はそれらの組み合わせにおいて実装することができる。装置は、プログラマブルプロセッサによる実行のために情報キャリア、例えば機械可読記憶装置において有形に具体化されるコンピュータプログラム製品において実装することができ、方法ステップは、入力データに基づいて動作して出力を生成することにより、説明される実装形態の機能を実行するために命令のプログラムを実行するプログラマブルプロセッサによって実行することができる。説明される特徴は、有利には、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス及び少なくとも1つの出力デバイスからのデータ及び命令の受信並びにデータ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス及び少なくとも1つの出力デバイスへのデータ及び命令の送信を行うために連結された少なくとも1つのプログラマブルプロセッサを含むプログラマブルシステム上で実行可能な1つ又は複数のコンピュータプログラムにおいて実装することができる。コンピュータプログラムは、ある活動を実行するか又はある結果をもたらすためにコンピュータにおいて直接又は間接的に使用することができる命令のセットである。コンピュータプログラムは、コンパイラ型又はインタープリタ型言語を含む、いかなる形態のプログラミング言語でも記述することができ、コンピュータプログラムは、スタンドアロンプログラムとして、又はコンピューティングに関連した使用に適したモジュール、コンポーネント、サブルーチン若しくは他のユニットとしてのものを含むいかなる形態でも展開することができる。
【0046】
命令のプログラムの実行に適したプロセッサは、例として、汎用マイクロプロセッサと専用マイクロプロセッサとの両方及び任意の種類のコンピュータの唯一のプロセッサ又は複数のプロセッサの1つを含む。一般に、プロセッサは、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ又はその両方から命令及びデータを受信する。コンピュータの必須要素は、命令を実行するためのプロセッサ並びに命令及びデータを格納するための1つ又は複数のメモリである。一般に、コンピュータは、データファイルを格納するための1つ又は複数の大容量記憶装置を含むか、同大容量記憶装置と通信するために動作可能に連結され得る。そのようなデバイスは、内部ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク並びに光ディスクを含む。コンピュータプログラム命令及びデータの有形具体化に適した記憶装置は、不揮発性メモリのすべての形態を含み、例としてEPROM、EEPROM及びフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス並びに内部ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク並びにCD-ROM及びDVD-ROMディスクを含む。プロセッサ及びメモリは、ASIC(特定用途向け集積回路)によって補充するか、又はASICに組み込むことができる。ユーザとの対話を提供するため、特徴は、ユーザに情報を表示するためのCRT(ブラウン管)又はLCD(液晶ディスプレイ)モニタなどの表示デバイス並びにユーザがコンピュータに入力を提供することができるキーボード及びポインティングデバイス(マウス又はトラックボールなど)を有するコンピュータ上で実装することができる。
【0047】
特徴は、データサーバなどのバックエンドコンポーネントを含むか、又はアプリケーションサーバ若しくはインターネットサーバなどのミドルウェアコンポーネントを含むか、又はグラフィカルユーザインタフェース若しくはインターネットブラウザを有するクライアントコンピュータなどのフロントエンドコンポーネントを含むか、或いはそれらの任意の組み合わせを含むコンピュータシステムにおいて実装することができる。システムのコンポーネントは、通信ネットワークなどのデジタルデータ通信のいかなる形態又は媒体によっても接続することができる。通信ネットワークの例は、例えば、LAN、WAN並びにインターネットを形成するコンピュータ及びネットワークを含む。コンピュータシステムは、クライアント及びサーバを含み得る。クライアント及びサーバは、一般に、互いに対してリモート設置され、典型的には、説明されるものなどのネットワークを通して対話する。クライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で起動しており、且つ互いにクライアント-サーバ関係を有するコンピュータプログラムによってもたらされる。
【0048】
本明細書は、多くの特定の実装形態の詳細を含むが、これらは、いかなる発明の範囲又は特許請求され得るものの範囲を限定するものとして解釈すべきではなく、むしろ特定の発明の特定の実施形態に特有の特徴の説明として解釈すべきである。本明細書において別々の実施形態に関連して説明されるある特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実施形態に関連して説明される様々な特徴は、複数の実施形態において別々に又は任意の適切な下位の組み合わせで実装することもできる。その上、上記では、特徴は、ある組み合わせで機能するものとして説明され得、まして最初にそのように特許請求されているが、特許請求される組み合わせからの1つ又は複数の特徴は、いくつかの例では、その組み合わせから削除することができ、特許請求される組み合わせは、下位の組み合わせ又は下位の組み合わせの変形形態を対象とし得る。
【0049】
同様に、図面において、動作は、特定の順番で描写されているが、これは、望ましい結果を達成するために、示される特定の順番で又は順次にそのような動作を実行する必要があるか、又は示されるすべての動作を実行する必要があると理解すべきではない。ある状況では、マルチタスク及び並列処理が有利であり得る。その上、上記で説明される実施形態における様々なシステムコンポーネントの分離は、すべての実施形態においてそのような分離を行う必要があると理解すべきではなく、説明されるプログラムコンポーネント及びシステムは、一般に、単一のソフトウェア若しくはハードウェア製品にまとめて統合され得るか、又は複数のソフトウェア若しくはハードウェア製品にパッケージ化され得ることが理解されるべきである。
【0050】
このように主題の特定の実施形態について説明してきた。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。いくつかの事例では、特許請求の範囲で列挙されるアクションは、異なる順番で実行することができ、それでも依然として望ましい結果を達成することができる。加えて、添付の図で描写されるプロセスは、望ましい結果を達成するために、必ずしも示される特定の順番で又は順次に行う必要があるとは限らない。ある実装形態では、マルチタスク及び並列処理が有利であり得る。
図1
図2
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図4A
図4B
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図8