(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】1、1-ジフルオロエタンと塩化ビニルを同時に生産する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/20 20060101AFI20230816BHJP
C07C 17/25 20060101ALI20230816BHJP
C07C 21/06 20060101ALI20230816BHJP
C07C 19/08 20060101ALI20230816BHJP
C07C 17/383 20060101ALI20230816BHJP
C07C 17/389 20060101ALI20230816BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
C07C17/20
C07C17/25
C07C21/06
C07C19/08
C07C17/383
C07C17/389
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021572670
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 CN2021102310
(87)【国際公開番号】W WO2022105230
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】202011319668.4
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516137993
【氏名又は名称】浙江衢化▲弗▼化学有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG QUHUA FLUOR-CHEMISTRY CO LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】余 慧梅
(72)【発明者】
【氏名】洪 江永
(72)【発明者】
【氏名】楊 波
(72)【発明者】
【氏名】趙 陽
(72)【発明者】
【氏名】張 彦
(72)【発明者】
【氏名】李 林輝
(72)【発明者】
【氏名】任 亜文
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-278024(JP,A)
【文献】特表2001-505874(JP,A)
【文献】特開2004-209431(JP,A)
【文献】特開2005-206584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1-ジフルオロエタン及び塩化ビニルを同時に生産する方法であって、
(a)ジクロロエタンとフッ化水素を気化器で気化した後、反応器に入れて、触媒の作用下で触媒反応させ、反応生成物を得るステップと、
(b)反応生成物を第1精留塔に入れて分離させ、第1精留塔の塔頂生成物及び第1精留塔の塔釜生成物を得るステップと、
(c)第1精留塔の塔頂生成物を第2精留塔に入れて分離させ、第2精留塔の塔頂で塩化水素を得、塔底で第2精留塔の塔釜生成物を得るステップと、
(d)第2精留塔の塔釜生成物を浄化塔に入れて浄化させ、浄化塔の塔頂生成物を得るステップと、
(e)浄化塔の塔頂生成物及び飽和有機溶媒を同時に第3精留塔に入れて分離させ、塔頂で1,1-ジフルオロエタン製品を得、塔底で第3精留塔の塔釜生成物を得るステップと、
(f)第3精留塔の塔釜生成物を第4精留塔に入れて分離させ、塩化ビニル製品及び第4精留塔の塔底液を得るステップとを含むこと
、
前記触媒は、Crを有効成分とし、補助成分として、Zn、Mn、Fe、Ni、In、Co、及びGaを、1種または2種以上含むものであること、
前記飽和有機溶媒は、四塩化炭素、ジクロロメタン、及び1,2-ジクロロエタンを、1種または2種以上含むものであること、
ステップ(d)における前記浄化塔には、固体脱酸剤と補助剤が充填されており、前記固体脱酸剤と補助剤との質量比は3~5:1であること、
を特徴とする
1,1-ジフルオロエタンと塩化ビニルを同時に生産する方法。
【請求項2】
ステップ(a)における前記触媒反応の温度は150~300℃であり、空間速度は500~3000h
-1であり、圧力は0.1~1.5MPaであり、フッ化水素とジクロロエタンとのモル比は3~10:1であることを特徴とする請求項1に記載の1,1-ジフルオロエタンと塩化ビニルを同時に生産する方法。
【請求項3】
前記固体脱酸剤は、第IA族、第IIA族、第VIIB族、第VIII族、第IIB族元素の水酸化物から選ばれ、前記補助剤は、リン酸カルシウム、亜硫酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、亜硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項
1に記載の1,1-ジフルオロエタンと塩化ビニルを同時に生産する方法。
【請求項4】
ステップ(e)における前記浄化塔の塔頂生成物と飽和有機溶媒との質量比は1:0.1~10であることを特徴とする請求項1に記載の1,1-ジフルオロエタンと塩化ビニルを同時に生産する方法。
【請求項5】
前記ジクロロエタンは、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタンのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の1,1-ジフルオロエタンと塩化ビニルを同時に生産する方法。
【請求項6】
ステップ(b)における前記第1精留塔の塔釜生成物を気化器に戻させることを特徴とする請求項1に記載の1,1-ジフルオロエタンと塩化ビニルを同時に生産する方法。
【請求項7】
ステップ(f)における前記第4精留塔の塔底液を第3精留塔に戻させることを特徴とする請求項1に記載の1,1-ジフルオロエタンと塩化ビニルを同時に生産する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロカーボンの製造方法に関し、特に1、1-ジフルオロエタンと塩化ビニルを同時に生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,1-ジフルオロエタン(R152a)は、オゾン層破壊係数(ODP)がゼロであり、地球温暖化係数(GWP)がわずか140であり、低沸点、冷凍係数が大きいという特徴があり、環境にやさしい冷媒である。R152aは、混合冷媒R401、R405、及びR411の重要な成分であり、単一の冷媒としても使用できる。同時に、R152aはフッ化ビニリデン樹脂の製造用原料であるR142bの製造用原料としても使用できる。R152aは、市場で入手しやすく、価格が低く、中国で大量生産されている。
【0003】
現在、R152aの従来の合成方法は主に以下のいくつかがある。
【0004】
(1)アセチレンを原料とする液相フッ素化法
該方法は、アセチレンを原料とし、三フッ化ホウ素、フルオロスルホン酸、五フッ化アンチモンなどの触媒の作用で、フッ化水素酸と反応させることにより製造され、その反応式は次のとおりである。
HC≡CH+2HF→CH3CHF2
【0005】
そのプロセスフローは、浄化及び乾燥されたアセチレンを、触媒(フルオロスルホン酸など)及びフッ化水素酸が充填された反応器に投入し、特定の圧力(0.03MPa~3MPa)及び温度(20~40℃)で反応させ、R152aを生成し、水で洗浄し、アルカリ洗浄して、脱酸した後、気相の材料を液相の材料に圧縮し、その後、分別蒸留して精製することである。
【0006】
例えば、中国特許CN1994985Aは、アセチレンを原料とする液相法によるR152aの製造方法及び該製造方法に使用される反応器を開示している。
【0007】
また、中国特許CN101412654Aは、アセチレンと無水フッ化水素酸を原料として使用し、クロムベースのフッ素化触媒の作用下でフッ素化反応を行ってR152aを製造する、R152aの製造方法を提供する。
【0008】
該調製方法の欠点は、触媒の利用率が低いため、反応サイクルが短く、単位消費量が多く、残留液体の排出量が多いと同時に、該反応温度の制御が難しく、アセチレンとフッ化水素酸の反応が発熱反応であり、反応速度が変化すると、放出される熱量も変化し、前の反応段階では、放出される熱量が多く、加熱の代わりに、冷却が必要であるが、後の反応段階では加熱が必要であるため、温度制御がより困難になる。反応温度が低すぎると反応速度が遅くなり、装置の生産能力が低下する。温度が高すぎると触媒が急速に無効になり、高沸点副生成物が増加し、原料の消費量が増加するが、どちらも生産に利かない。
【0009】
(2)塩化ビニル(VCM)を原料とした液相フッ素化法
中国特許CN1141906A及び特許CN1212678Aはそれぞれ、塩化ビニル及び無水フッ化水素酸を原料とした液相フッ素化法によってR152aを製造する製造方法を紹介している。この方法では大量のタールを生成するため、製品の収率に影響を与え、廃棄処理が困難である。
【0010】
(3)1,2-ジクロロエタンを原料とした液相フッ素化法
米国特許US5672788は、2段階の液相反応により、R152aを製造する方法を開示した。第1段階は、HCl又はHFのうちの少なくとも1つを塩化ビニルに添加して、1、1-ジクロロエタン又はR151aを得ることを含み、第2段階は、1、1-ジクロロエタン又はR151aをR152aに変換することを含む。該方法は、高沸点物質の形成を減らし、タールの形成速度を下げたが、完全になくすことはできない。
【0011】
中国特許公開第CN1860089A号は、ルイス酸触媒及びFeCl3助触媒の条件下で、フッ化水素酸を使用して1,2-ジクロロエタンを液相フッ素化することにより、1,1-ジフルオロエタンを製造する方法を開示し、触媒の存在下で、液相でのVCMのフッ素化によって1,1-ジフルオロエタンを製造する。該方法は液相フッ素化法を採用しており、収率が低く、触媒寿命が短く、副生成物不純物の含有量が高いため、工業化された大量生産には適しない。
【0012】
しかしながら、R152aの製造のための、特に該化合物の工業生産のための出発物質として、オレフィン及びアルキン(例えば、塩化ビニル)がタールを形成しやすいことが当技術分野で知られている。同時に、塩化ビニル法によるR152aの製造中に、R152aの粗生成物には一般に1%~5%の未変換塩化ビニルが含まれるため、未変換塩化ビニルがR152aと共沸し、通常の精留方法では、それらを完全に分離することはできない。そのため、塩化ビニル法でR152aを製造する過程で、R152a製品の精製技術も大きな注目を集めている。
【0013】
以上、R152aを製造するための従来の方法には以下の問題がある。
(1)大量のタールを生成する。
(2)塩化ビニルとR152aの共沸により、分離が難しくなり、純粋なR152a製品を得ることが難しい。
(3)触媒の寿命が短く、高沸点副生成物が多く、不純物の含有量が高い。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、従来の技術の欠点に対し、単純なプロセス、高い原料転化率、優れた触媒活性及び優れた製品品質で、1、1-ジフルオロエタン及び塩化ビニルを同時に生産するための方法を提供することである。
【0015】
上記の技術的問題を解決するために、本発明は、以下の技術的解決手段を通じて実現される。1、1-ジフルオロエタンと塩化ビニルを同時に生産する方法であって、
(a)ジクロロエタンとフッ化水素を気化器で気化した後、反応器に入れて、触媒の作用下で触媒反応させ、反応生成物を得るステップと、
(b)反応生成物を第1精留塔に入れて分離させ、第1精留塔の塔頂生成物と第1精留塔の塔釜生成物を得るステップと、
(c)第1精留塔の塔頂生成物を第2精留塔に入れて分離させ、第2精留塔の塔頂で塩化水素を得、塔底で第2精留塔の塔釜生成物を得るステップと、
(d)第2精留塔の塔釜生成物を浄化塔に入れて浄化させ、浄化塔の塔頂生成物を得るステップと、
(e)浄化塔の塔頂生成物と飽和有機溶媒を同時に第3精留塔に入れて分離させ、塔頂で1,1-ジフルオロエタン製品を得、塔底で第3精留塔の塔釜生成物を得るステップと、
(f)第3精留塔の塔釜生成物を第4精留塔に入れて分離させ、塩化ビニル製品と第4精留塔の塔底液を得るステップとを含む。
【0016】
本発明の好ましい実施形態として、ステップ(a)における前記触媒反応の温度は150~300℃であり、空間速度は500~3000h-1であり、圧力は0.1~1.5MPaであり、フッ化水素とジクロロエタンとのモル比は3~10:1である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態として、ステップ(a)における前記触媒は、クロムを活性成分とし、第IIIA族、第IIB族、第VIII族、及び第VIIB族の金属元素のうちの1種又は2種を補助成分とし、前記クロムと補助成分とのモル比は1:0.01~0.2である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態として、ステップ(d)における前記浄化塔には、固体脱酸剤と補助剤が充填されており、前記固体脱酸剤と補助剤との質量比は3~5:1である。
【0019】
本発明の好ましい実施形態として、前記固体脱酸剤は、第IA族、第IIA族、第VIIB族、第VIII族、第IIB族の元素の水酸化物から選ばれ、前記補助剤は、リン酸カルシウム、亜硫酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、亜硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態として、ステップ(e)における前記飽和有機溶媒は、n-ペンタン、イソペンタン、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジクロロエタンのうちの少なくとも1種である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態として、ステップ(e)における前記浄化塔の塔頂生成物と飽和有機溶媒との質量比は1:0.1~10である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態として、前記ジクロロエタンは、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタンのうちの少なくとも1種である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態として、ステップ(b)における前記第1精留塔の塔釜生成物を気化器に戻させる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態として、ステップ(f)における前記第4精留塔の塔底液を第3精留塔に戻させる。
【0025】
本発明の1、1-ジフルオロエタンと塩化ビニルを同時に生産する方法は、ジクロロエタンとフッ化水素を原料として、1段階の気相反応により反応生成物を得、反応生成物を分離精製して1,1-ジフルオロエタンと塩化ビニル製品を得る。プロセスが簡単で、原料転化率が高く、副生成物の不純物が少なく、エネルギー消費量が少なく、触媒の活性が高く、寿命が長いという利点がある。
【0026】
ジクロロエタンとHFが反応して1,1-ジフルオロエタンを生成する反応は発熱反応である反応が起こるとともに反応原料の体積が小さくなり、温度、材料比率、圧力、及び反応器の空間速度に対するすべての制御が原料の転化率及び目標生成物R152aの選択性に直接影響する。
【0027】
反応温度は、原料の転化率と目標生成物R152aの選択性に影響を与える。ジクロロエタンがHFと反応してR152aを生成する反応は発熱反応である。しかし、反応が起こるためには、それを活性化状態に到達させるために一定量のエネルギーが提供されなければならない。温度が低すぎると、反応材料が完全に活性化状態に達することができず、原料の転化率とR152aの選択性に影響を及ぼす。ただし、温度が高いほど、触媒の初期活性が高くなり、炭素の堆積速度が速くなり、触媒の老化が加速し、これにより、配管がブロックされるだけでなく、触媒が失活して触媒の寿命が短くなる。試験状況から見ると、原料の転化率は反応温度が上昇するにつれて増加し、R152aの選択性は、反応温度が上昇するにつれて最初に増加して次に徐々に減少する。したがって、本発明の反応温度の制御範囲は、150~300℃であり、好ましくは180~280℃である。
【0028】
反応器の空間速度は、原料の転化率と目標生成物R152aの選択性にも影響する。反応器の空間速度が大きいほど、材料と触媒との接触時間が短くなり、反応器の空間速度が増加するにつれて、原料の転化率及びR152aの選択性が低下する。しかしながら、反応器の空間速度が小さければ小さいほど、単位体積あたりの反応器の生産能力は小さくなり、これは工業生産に利かない。したがって、本発明における適切な反応器の空間速度範囲は、500~3000h-1であり、好ましくは1000~2000h-1である。
【0029】
材料比率は、原料の転化率と目標生成物R152aの選択性にも影響する。試験結果によると、HFとジクロロエタンとのモル比が高いほど、原料の転化率とR152aの選択性が高くなり、反応中の大量のHFが、触媒表面での炭素形成を抑制し、触媒の寿命を延ばす。ただし、HFとジクロロエタンとのモル比が大きいほど、同じ反応器空間速度での反応器の生産能力は低くなる。したがって、本発明におけるフッ化水素とジクロロエタンとのモル比は、1~10:1であり、好ましくは3~10:1である。
【0030】
また、反応圧力も反応効果に影響を与える要因の1つである。圧力が低すぎると、反応器の単位体積あたりの生産能力が低くなり、コストが高い。圧力が高すぎで、装置の材料への要求が厳しい。したがって、本発明は、様々な要因を包括的に考慮し、圧力の制御範囲を0.1~1.5MPaにし、好ましくは0.5~1.0MPaにする。
【0031】
本発明において、浄化塔の塔頂生成物及び飽和有機溶媒を、第3精留塔に同時に入れて分離させ、これは、塩化ビニルとR152aの共沸により、分離が難しい問題を効果的に解決する。R152aとVCMの分離効果を確実にするために、本発明における第3精留塔の塔釜生成物と飽和有機溶媒との質量比は、1:0.1~10であり、好ましくは1:0.4~2.5である。
【0032】
従来の脱酸プロセスでは、水洗浄とアルカリ洗浄法を使用して、HFやHClなどの少量の酸性物質をさらに除去し、大量の廃水を生成し、また、水を除去するために乾燥プロセスを実行する必要がある。本発明で採用した浄化プロセスでは、浄化塔に固体脱酸剤と補助剤を充填し、従来の水洗浄、アルカリ洗浄プロセスに代わるプロセスであり、乾燥プロセスを必要とせず、廃水を削減し、エネルギー消費量を削減した。
【0033】
従来の技術と比較して、本発明の利点は次のとおりである。
1、プロセスが簡単で、効率的である。本発明は1段階の気相反応法を採用し、装置一式により、R152aとVCMの2種の製品を同時に生産することができる。反応条件を変えることにより、製品の比率を制御することができ、集中的な生産を実現し、操作しやすく、反応条件が穏やかで、製造プロセスを大幅に簡素化し、原料のシングルパス転化率は90%以上に達する。
2、触媒の活性が高く、寿命が長い。本発明は、触媒の炭素形成速度を遅らせ、触媒の寿命を効果的に延長し、触媒の寿命が3年以上である。
3、製品の品質がよく、本発明は、浄化塔の塔頂生成物と飽和有機溶媒を第3精留塔に同時に入れて分離することにより、塩化ビニルとR152aの共沸による分離し難いという問題を効果的に解決し、R152a製品の純度が99.9%以上で、GB/T19602工業用1,1-ジフルオロエタンの要件に達した。
4、環境に優しく、本発明は、従来の水洗浄及びアルカリ洗浄プロセスの代わりに、浄化塔を使用して微量のフッ化水素酸及び塩化水素を除去し、乾燥プロセスを必要とせず、廃水を大幅に削減し、エネルギー消費量を削減し、そして飽和有機溶剤がリサイクル利用可能であり、廃ガス、廃水、及び廃棄物の排出をさらに削減した。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のプロセスを
図1に示す。原料のジクロロエタン及びHFは、配管8及び9を介して混合され、次いで、気化器1に入って予熱、気化され、予熱及び気化された混合ガスは、配管10を通して、触媒が充填された反応器2に入って反応し、反応後に得られた反応生成物が、配管11を通して第1精留塔3に入り、第1精留塔3の塔底で得られた未反応の原料及び他の重質成分を含む塔底液が、配管13を通して気化器1に戻し、塔頂で得られた第1精留塔の塔頂生成物が配管12を通して第2精留塔4に入り、HClが分離され、第2精留塔4の塔頂から分離されたHClが配管14を通して他の装置に搬送され、第2精留塔4の塔釜生成物が配管15を通して浄化塔5に入り、微量のフッ化水素及び塩化水素などの酸性物質が除去され、浄化された塔頂生成物が配管16を介して第3精留塔6に入り、同時に配管20を介して第3精留塔6に飽和有機溶媒が供給され、精留後、塔頂で得られたR152a製品が配管18を通して抽出され、第3精留塔6の塔釜生成物が配管19を通して第4精留塔7に入り、第4精留塔7の塔頂で塩化ビニル製品が得られ、塔底で得られた飽和有機溶媒を含む塔底液が、配管17を介して第3精留塔6に戻してリサイクル利用される。
【0036】
以下、具体的な実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0037】
【実施例1】
【0038】
1,2-ジクロロエタン(D12と略す)とHFの混合ガスを気化させた後、1#触媒が充填された反応器に入れ、触媒の作用下で反応させる。浄化塔には固体脱酸剤Ca(OH)2及び補助剤のリン酸カルシウムが充填されており、Ca(OH)2とリン酸カルシウムとの質量比は5:1であり、飽和有機溶媒はジクロロメタン(CH2Cl2)であり、浄化塔の塔頂生成物とジクロロメタンとの質量比が1:0.25であり、反応パラメータと反応器出口での有機物の組成(質量百分率、wt%)を表2に示し、第3精留塔の分離結果を表3に示す。
【実施例2】
【0039】
1,1-ジクロロエタン(D11と略す)とHFの混合ガスを気化させた後、2#触媒が充填された反応器に入れて、触媒の作用下で反応する。浄化塔には固体脱酸剤NaOH及び補助剤炭酸カルシウムが充填されており、NaOHと炭酸カルシウムとの質量比が4:1であり、飽和有機溶媒が四塩化炭素(CCl4)であり、浄化塔の塔頂生成物と四塩化炭素との質量比が1:0.4であり、反応パラメータ及び反応器出口の有機物の組成(質量百分率、wt%)を表2に示し、第3精留塔の分離結果を表3に示す。
【実施例3】
【0040】
1,1-ジクロロエタン(D11と略す)とHFの混合气を気化させた後、3#触媒が充填された反応器に入れて、触媒の作用下で反応させる。浄化塔には固体脱酸剤Zn(OH)2及び補助剤炭酸カルシウムが充填されており、Zn(OH)2と炭酸カルシウムとの質量比が3:1であり、飽和有機溶媒は、質量比が1:1であるジクロロメタン(CH2Cl2)と四塩化炭素(CCl4)との混合物であり、浄化塔の塔頂生成物と、(CH2Cl2)及び四塩化炭素(CCl4)の混合物との総質量比が1:1であり、反応パラメータと反応器出口の有機物の組成(質量百分率、wt%)を表2に示し、第3精留塔の分離結果を表3に示す。
【実施例4】
【0041】
HF、D11及びD12の混合ガスを気化させた後、4#触媒が充填された反応器に入れて、触媒の作用下で反応させる。飽和有機溶媒はD12であり、浄化塔の塔頂生成物とD12との質量比が1:2.3であり、浄化塔には固体脱酸剤Mg(OH)2及び補助剤の重炭酸カルシウムが充填されており、Mg(OH)2と重炭酸カルシウムとの質量比が4:1であり、反応パラメータ及び反応器出口の有機物の組成(質量百分率、wt%)を表2に示し、第3精留塔の分離結果を表3に示す。
【実施例5】
【0042】
1,2-ジクロロエタン(D12と略す)とHFの混合ガスを気化させた後、5#触媒が充填された反応器に入れて、触媒の作用下で反応させる。浄化塔には固体脱酸剤Ca(OH)
2及び補助剤の亜硫酸水素カルシウムが充填されており、Ca(OH)
2と亜硫酸水素カルシウムとの質量比が5:1であり、飽和有機溶媒がD12であり、浄化塔の塔頂生成物とD12との質量比が1:9であり、反応パラメータ及び反応器出口の有機物の組成(質量百分率、wt%)を表2に示し、第3精留塔の分離結果を表3に示す。
【表2】
【表3】
【符号の説明】
【0043】
1 気化器
2 反応器
3 第1精留塔
4 第2精留塔
5 浄化塔
6 第3精留塔
7 第4精留塔
8~21 配管