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特許7332797グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20230816BHJP
   G01N 33/497 20060101ALI20230816BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230816BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G01N27/12 M
G01N33/497 A
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
G01N27/12 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022519545
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2020115899
(87)【国際公開番号】W WO2021057590
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】201910930862.7
(32)【優先日】2019-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522121137
【氏名又は名称】杭州匯健科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】HANGZHOU WELL-HEALTHCARE TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Floor 9,Building 3 No.475 Changhe Road,Binjiang District,Hangzhou,Zhejiang 310000(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】▲ウ▼ 建敏
(72)【発明者】
【氏名】陳 巧芬
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105954323(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106872063(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106680328(CN,A)
【文献】特開2018-169240(JP,A)
【文献】特開2019-152511(JP,A)
【文献】特開2011-169634(JP,A)
【文献】特表2002-526769(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0040397(US,A1)
【文献】Y. XIA et al.,3D Architectured Graphene/Metal Oxide Hybrids for Gas Sensors: A Review,Sensors,2018年,Vol.18, No.5,p.1456 (1-21),https://doi.org/10.3390/s18051456
【文献】T. HOJATI et al.,Highly sensitive CO sensor based on ZnO/MWCNT nano sheet network grown via hydrothermal method,Materials Chemistry and Physics,2018年,Vol.207,p.50-57,https://doi.org/10.1016/j.matchemphys.2017.12.043
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/12
G01N 33/497
G01N 33/50
G01N 33/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法であって、
1)金属塩溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液のpH値を調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、金属イオンによって誘起された酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得する工程を、前記金属塩溶液と前記酸化グラフェン溶液の比率を変え、または前記金属塩溶液の種類を変えて複数実施して前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じであるステップと、
2)ステップ1)で製造した複数の前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を前記マルチサイト櫛型電極アレイの指に加えて自然乾燥し、前記マルチサイト櫛型電極アレイを還元性の蒸気中に入れて60~120℃で3~30min還元し、前記グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイを得るステップと、を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記金属塩溶液は、高原子価金属イオンの塩化物塩溶液である、ことを特徴とする請求項1に記載のグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法。
【請求項3】
前記金属塩溶液は塩化コバルト溶液であり、
ステップ1)の具体的な方法は、塩化コバルト溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化コバルトの比率は1mg/mL:25mM~1mg/mL:75mMであり、混合溶液のpH値を7.0~9.0に調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得する工程を、前記塩化コバルト溶液と前記酸化グラフェン溶液の比率を変えて複数実施して前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じである、ことを特徴とする請求項2に記載のグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法。
【請求項4】
前記金属塩溶液は塩化第二鉄溶液であり、
ステップ1)の具体的な方法は、塩化第二鉄溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化第二鉄の比率は1mg/mL:5mM~1mg/mL:50mMであり、混合溶液のpH値を3.0~3.5に調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得する工程を、前記塩化第二鉄溶液と前記酸化グラフェン溶液の比率を変えて複数実施して前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じである、ことを特徴とする請求項2に記載のグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法。
【請求項5】
前記金属塩溶液は塩化銅溶液であり、
ステップ1)の具体的な方法は、塩化銅溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化銅の比率は1mg/mL:25mM~1mg/mL:75mMであり、混合溶液のpH値を7.0~8.0に調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得する工程を、前記塩化銅溶液と前記酸化グラフェン溶液の比率を変えて複数実施して前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じである、ことを特徴とする請求項2に記載のグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法。
【請求項6】
前記金属塩溶液は塩化セリウム溶液であり、
ステップ1)の具体的な方法は、塩化セリウム溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化セリウムの比率は1mg/mL:10mM~1mg/mL:50mMであり、混合溶液のpH値を8.0~9.0に調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得する工程を、前記塩化セリウム溶液と前記酸化グラフェン溶液の比率を変えて複数実施して前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じである、ことを特徴とする請求項2に記載のグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法。
【請求項7】
塩酸溶液および/または水酸化ナトリウム溶液で混合溶液のpH値を調整し、
前記還元性の蒸気は、ヒドラジン水和物蒸気である、ことを特徴とする請求項1に記載のグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法。
【請求項8】
グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの使用方法であって、
請求項1~7のいずれか1項に記載のグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法で製造したグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイを、ガスフローセルに配置し、前記グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイをONにし、マルチチャネル抵抗分析器を使用して前記グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの各サイトの抵抗値を検出するステップと、
前記マルチチャネル抵抗分析器で検出された各サイトの抵抗値がプラトーになるまでに、前記ガスフローセルにキャリアガスを流すステップと、
同じ流速で試料ガスを流すステップと、
前記グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイを流れる各サイトの抵抗値を検出し、抵抗値と時間の関係データを取得し、前記グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの各サイトの前記試料ガスに対する相対応答値を取得し、異なるサイトの相対応答値に基づいて統計分析を実行して前記試料ガスを識別するステップと、を含むことを特徴とするグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの使用方法。
【請求項9】
前記試料ガスが単成分ガスであり、
前記単成分ガスは有機揮発性ガスおよび無機揮発性ガスの1種である、ことを特徴とする請求項8に記載のグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの使用方法。
【請求項10】
前記試料ガスは、環境中の混合ガス、人体からの呼気ガス、微生物または細胞の代謝による揮発性ガスを含む混合ガスである、ことを特徴とする請求項8に記載のグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの使用方法。
【請求項11】
検出装置としてのグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの使用であって、
前記グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイは、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法で製造したものであり、
前記検出装置の識別結果は、肺腫瘍の病気スクリーニング、肺腫瘍の病気予後の推定、及び個人健康モニタリングのために提供される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体からの呼気ガスは血液のヘッドスペース空気と見なされ、個人の全般的な生理状態を反映することができる。呼気ガスの検出は、完全に非侵襲的であり、且つ試料の由来が限定されない診断方式であり、伝統的な生化学検査(血液検査、尿検査、生検、画像診断など)の潜在的な補充手段であり、病気の初歩的スクリーニングや個人の健康管理などの分野で応用できる。1999年には早くもPhillipsらが人体からの呼気ガス中に3000種類以上の揮発性有機化合物が含まれていることを報告しており、この数は現在も増加傾向にある。アセトンとイソプレンは、多くの研究で最も多く見られる内因性有機化合物の2つである。そのうち、アセトンはグルコース代謝や脂質分解に関連し、イソプレンの濃度はコレステロール生物合成に関連している。更に、呼気ガス中の無機化合物には、生体代謝に関連する潜在的なバイオマーカーがいくつか存在している。例えば、アンモニアや硫化水素の濃度は体内の窒素/硫黄含有化合物の代謝に関連している。しかし、多くの疾患の患者の呼気ガスには特定のバイオマーカーは存在しないが、その呼気の、特定の気体分子の種類、濃度、相対的な存在量を含む全体成分は、分子レベルでは、健常者とは大きく違っている。この観点から、パターン識別の方式を使用して呼気ガスを分析し、病気を区別することができる。現在、癌の致死率が最も高い肺癌の場合に、2012年に、HossamHaick課題チームは、肺癌患者の呼気ガス中の有機揮発物の組成およびその生化学経路について総説し、健常者と患者の呼気ガス中の、炭化水素類(アルカン/分岐アルカン/分岐オレフィン)、一級/二級アルコール、アルデヒド類/分岐アルデヒド、ケトン類を含む4種類の内因性有機揮発物に違いがあることを指し示した。
【0003】
呼気ガス中の内因性有機・無機揮発性化合物の濃度はppm(10-6)、ppb(10-9)あるいはそれ以下のレベルであり、その分析は現在大きく2つに分類される。一つは、例えばガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)、プロトン移動反応質量分析(PTR-MS)、選択的イオンフロー質量分析(SIFT-MS)など、大型装置を用いた検出・分析である。もう一つは、マイクロガスクロマトグラフィー、比色センシング、電子鼻システムなど、小型化された機器に基づく検出・分析である。電子鼻システムを用いた呼吸器系および全身性疾患の診断のための、ポータブルで費用対効果の高い非侵襲的診断プラットフォームの開発は、最も有望な体外診断技術の一つである。電子鼻システムの核となるのはセンサチップである。多くの電気式ガスセンサの中でも、抵抗式ガスセンサは最も実用化が期待されているセンサである。しかし、これまで報告されてきた高感度抵抗式ガスセンサは、基本的に半導体金属酸化物に基づく高温センサである。これは、ポータブルな家電製品に適用するには支障がある。ナノ材料は顕著な表面効果を有し、その光電子性質は表面吸着物質に対して高感度であるため、低濃度ガスの検出に最適な材料である。グラフェン材料は、ナノ材料の特徴に加え、高い電子輸送能力、調整可能なエネルギーバンド、大きな比表面積、高い柔軟性などの特点を持ち、ガスセンシングにおいて大きな利点がある。ガスに対する高い感度に加え、複雑なガスを識別するためには、センサチップのガスに対する良好な選択性が要求される。単一の検出素子では、この必要を満たすことができない場合が多い。1つの有効な策略は、多種の高感度のガス感応材料を採用し、センサアレイを構築してインタラクティブ式の応答を実現し、パターン識別の方式によって複雑なガスを区別し、識別することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法および使用方法を提供し、この方法は、以下の技術的解決策を採用する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法を提供し、この製造方法は、
1)金属塩溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液のpH値を調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、金属イオンによって誘起された酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得し、前記金属塩溶液と前記酸化グラフェン溶液の比率を変え、または金属塩溶液の種類を変え、上記工程を繰り返して前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じであるステップと、
2)ステップ1)で製造した酸化グラフェン自己組織化懸濁液をマルチサイト櫛型電極アレイの指に加えて自然乾燥し、マルチサイト櫛型電極アレイを還元性の蒸気中に入れて60~120℃で3~30min還元し、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイを得るステップと、を含む。
【0006】
更に、金属塩溶液は、高原子価金属イオンの塩化物塩溶液である。
【0007】
更に、前記金属塩溶液は塩化コバルトであり、
ステップ1)の具体的な方法は、塩化コバルト溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化コバルトの比率は1mg/mL:25mM~1mg/mL:75mMであり、混合溶液のpH値を7.0~9.0に調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得し、塩化コバルト溶液と酸化グラフェン溶液の比率を変え、上記工程を繰り返して酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じである。
用語mMは、ミリモル/リットルを指す。
【0008】
更に、前記金属塩溶液は塩化第二鉄溶液であり、
ステップ1)の具体的な方法は、塩化第二鉄溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化第二鉄の比率は1mg/mL:5mM~1mg/mL:50mMであり、混合溶液のpH値を3.0~3.5に調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得し、塩化第二鉄溶液と酸化グラフェン溶液の比率を変え、上記工程を繰り返して酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じである。
【0009】
更に、前記金属塩溶液は塩化銅溶液であり、
ステップ1)の具体的な方法は、塩化銅溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化銅の比率は1mg/mL:25mM~1mg/mL:75mMであり、混合溶液のpH値を7.0~8.0に調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得し、塩化銅溶液と酸化グラフェン溶液の比率を変え、上記工程を繰り返して酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じである。
【0010】
更に、前記金属塩溶液は塩化セリウム溶液であり、
ステップ1)の具体的な方法は、塩化セリウム溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化セリウムの比率は1mg/mL:10mM~1mg/mL:50mMであり、混合溶液のpH値を8.0~9.0に調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得し、塩化セリウム溶液と酸化グラフェン溶液の比率を変え、上記工程を繰り返して酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じである。
【0011】
更に、塩酸溶液および/または水酸化ナトリウム溶液で混合溶液のpH値を調整し、
前記還元性の蒸気は、ヒドラジン水和物蒸気である。
【0012】
本発明は、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの使用方法を提供し、この使用方法は、
前記のグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法で製造したグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイを、ガスフローセルに配置し、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイをONにし、マルチチャネル抵抗分析器によりグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの各サイトを流れる抵抗値を検出するステップと、
マルチチャネル抵抗分析器で検出された抵抗値がプラトーになるまでに、ガスフローセルにキャリアガスを流すステップと、
同じ流速で試料ガスを流すステップと、
マルチチャネル抵抗分析器によりグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの各サイトを流れる抵抗値を検出し、抵抗値と時間の関係データを取得し、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの各サイトの試料ガスに対する応答値を取得し、異なるサイトの応答値に基づいて統計分析を実行して試料ガスを識別するステップと、を含む。
【0013】
更に、前記試料ガスが単成分ガスであり、
単成分ガスは有機揮発性ガスおよび無機揮発性ガスの1種である。
【0014】
更に、試料ガスは、環境中の混合ガス、人体からの呼気ガス、微生物または細胞の代謝による揮発性ガスを含む混合ガスである。
本発明は、検出装置としてのグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの使用提供し、ここで、
前記グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイは、上記製造方法で製造したものであり、
前記検出装置は、肺腫瘍の病気スクリーニング、肺腫瘍の病気予後、及び個人健康モニタリングに用いられる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明は、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法を提供し、当該方法は複数の金属イオンによって誘起された酸化グラフェン自己組織化材料をガスセンサアレイに集積し、抵抗式ガスセンサアレイを製造し、従来技術と比較して以下の積極的な効果を有する。
【0016】
1.本発明は、高原子価金属イオンを採用して酸化グラフェンの自己組織化を誘導し、金属イオンと酸化グラフェンとの間に架橋ネットワークを形成させ、材料担持を、溶媒が揮発し完成することよりも優先させる方策により、グラフェン材料の基板への均一な積載を実現し、通常のドロップ法によるグラフェンフィルムの作製時に発生するコーヒーリング効果を克服するとともに、微量揮発性化合物の室温での検出を実現する。
【0017】
2.本発明は、高原子価金属イオンを採用して酸化グラフェンの自己組織化を誘導し、この過程では、酸化グラフェンの表面改質を実現するとともに、基板上に担持されたグラフェンを高比表面積化し、ガスの吸着・拡散を助長し、室温での微量有機・無機揮発性化合物の検出を実現するものである。
【0018】
3.本発明は、複数の高原子価金属イオンによって誘起された酸化グラフェン自己組織化複合材料をガスセンサアレイに集積し、インタラクティブ式の応答により、異なる成分ガスを識別する能力を高め、操作が容易で、コストが低く、ガスセンシティブ性能が優れており、従って、ガスの識別・区別に利用でき、更に、呼気ガス検出用のPOCT(瞬間検出)装置で疾患のスクリーニングや個人の健康管理に利用でき、4P医療モード(予防性、予測性、個別化、参加性)を推進し、更に、食品安全や環境安全のモニタリングのための食品中の揮発性代謝ガスや複雑な環境ガスのモニタリングを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明のグラフェン材料ガスセンサアレイの模式図である。
図2図2は本発明の実施例1から実施例4のグラフェン材料の走査型電子顕微鏡図である。
図3図3は本発明のグラフェン材料ガスセンサアレイの異なる濃度のアセトン標準ガスに対する動力学的応答図である。
図4図4は本発明のグラフェン材料ガスセンサアレイの有機・無機揮発性ガスに対する応答値-濃度関係図である。
図5図5は本発明のグラフェン材料ガスセンサアレイの、アセトン、イソプレン、アンモニア、硫化水素の4つのガスの応答結果に対する主成分分析結果を示す模式図である。
図6図6は本発明のグラフェン抵抗式ガスセンサアレイの、健常者、肺腫瘍患者、および肺腫瘍術後患者の呼気ガスに対する応答値の箱ひげ図(Box-whisker Plot)である。
図7図7は本発明のグラフェン抵抗式ガスセンサアレイの、健常者、肺腫瘍患者、および肺腫瘍術後患者の呼気ガスに対する応答値の判別分析結果を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図面および具体的な実施例を結合して詳細に説明する。
【0021】
本発明は、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法を開示し、この製造方法は、具体的には、下記のステップを含む。
【0022】
1)金属塩溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液のpH値を調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得し、金属塩溶液と酸化グラフェン溶液の比率を変え、または金属塩溶液の種類を変え、上記工程を繰り返して酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じである。複数の酸化グラフェン自己組織化懸濁液は、異なる金属塩溶液を加えて、または金属塩溶液と酸化グラフェン溶液の比率を変えることによって得られたものであるため、最後に得た複数の酸化グラフェン自己組織化懸濁液が互いに違っている。
【0023】
2)ステップ1)で製造した複数の酸化グラフェン自己組織化懸濁液をマルチサイト櫛型電極アレイの指に加えて自然乾燥し、マルチサイト櫛型電極アレイを還元性の蒸気中に入れて60~120℃で3~30min還元し、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイを得る。ステップ1)で調製した複数の酸化グラフェン自己組織化懸濁液が違っているため、作製したグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの各サイトのグラフェン材料の組成は互いに異なっている。
【0024】
具体的には、ステップ1)では、金属塩溶液は、高原子価金属イオンの塩化物塩溶液であり、塩化第二鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅、塩化スズ、塩化セリウム等を含むが、これらに限定されるものではなく、且つ混合溶液のpHは、塩酸溶液および/または水酸化ナトリウム溶液で必要を満たすように調整される。
【0025】
金属塩溶液が塩化コバルト溶液である場合に、ステップ1)は、具体的には、塩化コバルト溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化コバルトの比率は1mg/mL:25mM~1mg/mL:75mMであり、混合溶液のpH値を7.0~9.0に調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得し、塩化コバルト溶液と酸化グラフェン溶液の比率を変え、上記工程を繰り返して酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じである。
【0026】
金属塩溶液が塩化第二鉄溶液である場合に、ステップ1)は、具体的には、塩化第二鉄溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化第二鉄の比率は1mg/mL:5mM~1mg/mL:50mMであり、混合溶液のpH値を3.0~3.5に調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得し、塩化第二鉄溶液と酸化グラフェン溶液の比率を変え、上記工程を繰り返して酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じである。
【0027】
金属塩溶液が塩化銅溶液である場合に、ステップ1)は、具体的には、塩化銅溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化銅の比率は1mg/mL:25mM~1mg/mL:75mMであり、混合溶液のpH値を7.0~8.0に調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得し、塩化銅溶液と酸化グラフェン溶液の比率を変え、上記工程を繰り返して酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じである。
【0028】
金属塩溶液が塩化セリウム溶液である場合に、ステップ1)は、具体的には、塩化セリウム溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化セリウムの比率は1mg/mL:10mM~1mg/mL:50mMであり、混合溶液のpH値を8.0~9.0に調整して超音波分散を行い、混合溶液をシェーカーで4~12hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、前記酸化グラフェン自己組織化懸濁液を獲得し、塩化セリウム溶液と酸化グラフェン溶液の比率を変え、上記工程を繰り返して酸化グラフェン自己組織化懸濁液を複数調製し、酸化グラフェン自己組織化懸濁液の数は、マルチサイト櫛型電極アレイのサイト数と同じである。
【0029】
ステップ2)では、還元性の蒸気は、ヒドラジン水和物蒸気であるが、当該還元性の蒸気は同様の効果を有する他の物質であってもよいことが理解される。且つマルチサイト櫛型電極アレイのサイト数は、実際の必要に応じて自由に選択することができる。図1に示すように、基板1と、外周回路2と、グラフェン材料サイト3とを含む8サイトグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの模式図を示し、基板1は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム、PI(ポリイミド)フィルム、PC(ポリカーボネート)フィルム等のフレキシブル基板、シリコン、ガラス、セラミック、PCB板等の硬質基板であってもよい。
【0030】
以下は、本発明の具体的な実施例である。
【0031】
実施例1:
本実施例は、塩化コバルト溶液を使用して3サイトグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法を提供し、この製造方法は、下記のステップを含む。
【0032】
1)塩化コバルト溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化コバルトの比率はそれぞれ1mg/mL:15mM、1mg/mL:30mM、1mg/mL:45mMであり、3つの混合溶液のpH値を7.0に調整して超音波分散を行い、3つの混合溶液をシェーカーで8hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、3つのコバルトイオンによって誘起された酸化グラフェン自己組織化懸濁液を得た。
【0033】
2)ステップ1)で製造した3つの酸化グラフェン自己組織化懸濁液5μLを、それぞれ3サイト櫛型電極アレイの指に加えて自然乾燥し、指の間隔は100μmであり、マルチサイト櫛型電極アレイをヒドラジン水和物蒸気中に入れて80℃で10min還元し、3サイトグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイを得た。ここで、酸化グラフェンと塩化コバルトの比率は1mg/mL:30mMである場合に、製造されたグラフェン材料の走査型電子顕微鏡図は図2aに示す。
【0034】
実施例2:
本実施例は、塩化第二鉄溶液を使用して5サイトグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法を提供し、この製造方法は、下記のステップを含む。
【0035】
1)塩化第二鉄溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化第二鉄の比率はそれぞれ1mg/mL:5mM、1mg/mL:10mM、1mg/mL:20mM、1mg/mL:30mM、1mg/mL:40mMであり、5つの混合溶液のpH値を3.0に調整して超音波分散を行い、5つの混合溶液をシェーカーで6hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、5つの鉄イオンによって誘起された酸化グラフェン自己組織化懸濁液を得た。
【0036】
2)ステップ1)で製造した5つの酸化グラフェン自己組織化懸濁液2.5μLを、それぞれ5サイト櫛型電極アレイの指に加えて自然乾燥し、指の間隔は100μmであり、マルチサイト櫛型電極アレイをヒドラジン水和物蒸気中に入れて80℃で5min還元し、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイを得た。ここで、酸化グラフェンと塩化第二鉄の比率は1mg/mL:20mMである場合に、製造されたグラフェン材料の走査型電子顕微鏡図は図2bに示す。
【0037】
実施例3:
本実施例は、塩化銅溶液を使用して5サイトグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法を提供し、この製造方法は、下記のステップを含む。
【0038】
1)塩化銅溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化銅の比率はそれぞれ1mg/mL:15mM、1mg/mL:20mM、1mg/mL:30mM、1mg/mL:40mM、1mg/mL:60mMであり、5つの混合溶液のpH値を7.5に調整して超音波分散を行い、5つの混合溶液をシェーカーで7hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、5つの銅イオンによって誘起された酸化グラフェン自己組織化懸濁液を得た。
【0039】
2)ステップ1)で製造した5つの酸化グラフェン自己組織化懸濁液5μLを、それぞれ5サイト櫛型電極アレイの指に加えて自然乾燥し、指の間隔は100μmであり、マルチサイト櫛型電極アレイをヒドラジン水和物蒸気中に入れて80℃で10min還元し、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイを得た。ここで、酸化グラフェンと塩化銅の比率は1mg/mL:30mMである場合に、製造されたグラフェン材料の走査型電子顕微鏡図は図2cに示す。
【0040】
実施例4:
本実施例は、塩化セリウム溶液を使用して2サイトグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法を提供し、この製造方法は、下記のステップを含む。
【0041】
1)10μLの塩化セリウム溶液を酸化グラフェン溶液に加えて、混合溶液中の酸化グラフェンと塩化セリウムの比率はそれぞれ1mg/mL:10mM、1mg/mL:20mMであり、2つの混合溶液のpH値を8.0に調整して超音波分散を行い、2つの混合溶液をシェーカーで5hインキュベートし、脱イオン水で中性になるまで洗浄し、更に脱イオン水で分散して、2つのセリウムイオンによって誘起された酸化グラフェン自己組織化懸濁液を得た。
【0042】
2)ステップ1)で製造した2つの酸化グラフェン自己組織化懸濁液を、それぞれ2サイト櫛型電極アレイの指に加えて自然乾燥し、指の間隔は100μmであり、マルチサイト櫛型電極アレイをヒドラジン水和物蒸気中に入れて80℃で15min還元し、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイを得た。ここで、酸化グラフェンと塩化セリウムの比率は1mg/mL:20mMである場合に、製造されたグラフェン材料の走査型電子顕微鏡図は図2dに示す。
【0043】
上記実施例では、本発明のグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法でグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイを製造する詳細なステップを詳述したが、本発明は更に、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの使用方法を提供し、この使用方法は、下記のステップを含む。
【0044】
1)グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの製造方法で製造したグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイを、ガスフローセルに配置し、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイをONにし、マルチチャネル抵抗分析器によりグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの各サイトを流れる抵抗値を検出する。ここで、キャリアガスは、試料ガスのバックグランドガスである。試料ガスには、単成分ガスまたは混合ガスが含まれるが、これに限定されるものではなく、単成分ガスは、アセトン、イソプレン、エタノール、アンモニアガス、硫化水素、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素および二酸化窒素などの有機、無機揮発性ガスであるが、これらに限定されるものではない。混合ガスは、人体からの呼気ガス、他の種類の代謝ガス、周囲の複雑なガスなどであってもよい。応答値は、R%=[(I-I)/I×100]で定義することであき、その中、Iは定電圧で試料ガス雰囲気をセンサに流して測定した電流値であり、Iはキャリアガス雰囲気をセンサに流して測定した電流値である。
【0045】
2)マルチチャネル抵抗分析器で検出された抵抗値がプラトーになるまでに、ガスフローセルにキャリアガスを流す。
【0046】
3)同じ流速で試料ガスを流す。
【0047】
4)マルチチャネル抵抗分析器によりグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの各サイトを流れる抵抗値を検出し、電流値と時間の関係データを取得し、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの各サイトの試料ガスに対する応答値を取得し、異なるサイトの応答値に基づいて統計分析を実行して試料ガスを識別する。ここで、統計分析には、主成分分析、判別分析、人工ニューラルネットワークなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
具体的には、試料ガスが単成分ガスの場合に、異なる比率で得られた8サイトグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイをガスフローセルに配置し、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイをONにし、マルチチャネル抵抗分析器で検出された抵抗値がプラトーになるまでに、ガスフローセルにキャリアガスを流し、同じ流量で濃度の異なるアセトン、イソプレン、アンモニア、硫化水素を流し、0.1Vの電圧で、マルチチャネル抵抗分析器により各サイトを流れる抵抗値を検出し、電流値と時間の関係データを取得することによって、アレイの各サイトの異なる試料ガスに対する応答値を得た。本実施例において、8サイトグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイの各サイトの材料は、それぞれ酸化グラフェンと塩化コバルトの比率1mg/mL:30mMで得られたグラフェン材料、酸化グラフェンと塩化第二鉄の比率1mg/mL:10mMで得られたグラフェン材料、酸化グラフェンと塩化第二鉄の比率1mg/mL:20mMで得られたグラフェン材料、酸化グラフェンと塩化第二鉄の比率1mg/mL:30mMで得られたグラフェン材料、酸化グラフェンと塩化銅の比率1mg/mL:20mMで得られたグラフェン材料、酸化グラフェンと塩化銅の比率1mg/mL:30mMで得られたグラフェン材料、酸化グラフェンと塩化銅の比率1mg/mL:40mMで得られたグラフェン材料、および酸化グラフェンと塩化セリウムの比率が1mg/mL:20mMで得られたグラフェン材料であった。
【0049】
アセトン標準ガスに対する検出した動力学曲線は、図3に示し、異なる8サイトグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイにより、1、2、5、7.5、10ppmのアセトン標準ガスに対する3つの循環的測定から分かるように、製造した異なる組成の8サイトガスセンサアレイは、高感度であるだけでなく、応答再現性にも優れていた。
【0050】
図4は、グラフェン材料ガスセンサアレイの有機・無機揮発性ガスに対する応答値-濃度関係図を示し、aはグラフェン材料ガスセンサアレイの1~10ppmアセトン(Acetone)標準ガスに対する応答値-濃度関係図であり、bはグラフェン材料ガスセンサアレイの2~15ppmのイソプレン(Isoprene)標準ガスに対する応答値-濃度関係図であり、cはグラフェン材料ガスセンサアレイの1~10ppmのアンモニア(NH)標準ガスに対する応答値-濃度関係図であり、dはグラフェン材料ガスセンサアレイの0.05~1ppmの硫化水素(HS)標準ガスに対する応答値-濃度関係図である。1~10ppmのアセトン標準ガス、2~15ppmのイソプレン、1~10ppmのアンモニア標準ガス、0.05~1ppmの硫化水素標準ガスの測定結果により、8つのサイトは4つのガスに対してすべて応答が発生したが、応答の大きさはそれぞれ違っている。このインタラクティブ式の応答パターンを利用して、異なるガスを識別し区別することができる。応答値を正規化して主成分分析を行ったところ、図5に見られるように、4つのガスは、2次元PCA図において、4つの象限にそれぞれ分布してよく区別された。
【0051】
試料ガスが人体からの呼気ガスである場合に、まず換気環境下に肺腫瘍患者/健常者から空腹時の呼気ガスを2Lのパーフルオロエチレンプロピレン共重合体(FEP)サンプリングバッグに採取し、それと同時にキャリアガスとして局所環境ガスを採取した。ガスを採取する時に、まずガスを10~50cmの氷水浴に浸かった内径2~10mmのテフロン管路に通過させた。上記8サイトグラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイをガスフローセルに配置し、グラフェン材料抵抗式ガスセンサアレイをONにし、マルチチャネル抵抗分析器で検出された抵抗値がプラトーになるまでに、ガスフローセルにキャリアガスを流し、そして同じ流量で予備処理された人体からの呼気ガスを流し、0.1Vの電圧で、マルチチャネル抵抗分析器により各サイトを流れる抵抗値を検出し、電流値と時間の関係データを得することによって、アレイの各サイトの異なる試料ガスに対する応答画像を得た。48の健康な呼気サンプル(図面ではctrlとして表記する。)、48の肺腫瘍患者の呼気サンプル(図面ではlung tumorとして表記する。)、10の肺腫瘍術後患者の呼気サンプル(図面ではlung tumor after surgeryとして表記する)を含む、同じ年齢層の個人からの106の呼気サンプルが測定され、異なるサイトの応答値を抽出した。図6には、本発明のグラフェン抵抗式ガスセンサアレイの健常者、肺腫瘍患者、肺腫瘍術後患者の呼気ガスに対する応答値の箱ひげ図が示され、応答値の判別分析により、健常対照群と肺腫瘍患者群が2つの領域に分布していることがわかった。図7には、本発明のグラフェン抵抗式ガスセンサアレイの健常者、肺腫瘍患者、肺腫瘍術後患者の呼気ガスに対する応答値の判別分析結果の模式図が示され、それに示す結果から、当該アレイチップは肺腫瘍疾患のスクリーニングに使用できることが示された。
【0052】
以上、本発明の基本原理、主要な特徴および利点を示し、説明した。上記の実施例は、本発明を何ら限定するものではなく、等価置換または等価変換によって得られるいかなる技術的解決策も本発明の保護範囲に属することは、当業者には理解されるべきことである。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7