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特許7332804駐車場管理システムおよび駐車場管理システムのための評価ユニット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】駐車場管理システムおよび駐車場管理システムのための評価ユニット
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/06 20060101AFI20230816BHJP
   E04H 6/10 20060101ALI20230816BHJP
   E04H 6/42 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G08B17/06 Z
E04H6/10 A
E04H6/42 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022524190
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2020079165
(87)【国際公開番号】W WO2021078639
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】102019128864.9
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508056394
【氏名又は名称】フォグテック ブランドシューツ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】FOGTEC Brandschutz GmbH
【住所又は居所原語表記】Schanzenstr. 19A 51063 Koln Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ディルク カー. シュプラーケル
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103926(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018201517(DE,A1)
【文献】特開平08-249563(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0152445(US,A1)
【文献】特開平06-257106(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0276908(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C2/00-99/00
E04H6/00-6/44
G08B17/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 駐車区画(2a)の床に取り付け可能な温度センサー(4a)と、
- 前記温度センサー(4a)に接続された評価ユニット(6)と
を備え、
- 前記評価ユニット(6)は、前記温度センサー(4a)によって、前記温度センサー(4a)の領域における少なくとも1つの温度プロファイル(18)を評価し、前記温度プロファイル(18)に応じて火災警報信号または火災事前警報(19)を出力する、駐車場管理システムであって、
- 前記評価ユニット(6)は、検出された温度プロファイル(18)を格納済み温度プロファイル(18)と比較し、前記比較に応じて、前記駐車区画(2a)に駐車された車両の駆動方式を判定する
ことを特徴とする、駐車場管理システム。
【請求項2】
前記温度センサー(4a)は、ファイバー線、具体的には、光ファイバー線であること、具体的には、前記ファイバー線は光ファイバー火災警報ケーブルであること、または、前記温度センサー(4a)は電気センサーであることを特徴とする、請求項1に記載の駐車場管理システム。
【請求項3】
前記温度センサー(4a)は前記駐車区画(2a)の前記床に組み込み可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の駐車場管理システム。
【請求項4】
前記評価ユニット(6)は、時間的に第1の温度プロファイル(18)を評価し、前記評価に基づいて駆動方式を判定し、次いで、前記火災警報信号または前記火災事前警報(19)を出力するために、前記判定された駆動方式に応じて時間的に第2の温度プロファイル(18)を評価することを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の駐車場管理システム。
【請求項5】
前記評価ユニット(6)は、前記評価に応じて前記駐車区画(2a)の占有を信号で伝えることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の駐車場管理システム。
【請求項6】
複数の温度センサー(4a、4b、4c、4d)が前記評価ユニットに対応付けられ、前記評価ユニットは、前記複数の温度センサー(4a、4b、4c、4dを用いて検出される各温度センサー(4a、4b、4c、4d)の領域における温度プロファイルを評価することを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の駐車場管理システム。
【請求項7】
前記評価ユニットは、前記評価に応じて光学式進路マーキング(16)を制御すること、具体的には、前記評価ユニット(6)は、前記評価に応じて、前記火災警報信号または前記火災事前警報(19)が出力された前記駐車区画(2a)に導くように光学式進路マーキング(16)を制御することを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の駐車場管理システム。
【請求項8】
前記評価ユニットは、前記評価に応じて、前記火災警報信号または前記火災事前警報(19)が出力された前記駐車区画(2a)を光学式進路マーキング(16)によって閉鎖することを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の駐車場管理システム。
【請求項9】
- 駐車区画(2a)の床に配置された温度センサー(4a)と結合するように構成された、少なくとも1つの入力
を備え、
- 前記評価ユニット(6)は、前記駐車区画(2a)における少なくとも1つの温度プロファイル(18)を評価するために前記温度センサー(4a)を使用し、前記温度プロファイルに応じて火災警報信号または火災事前警報(19)を出力する、駐車場管理システムのための評価ユニットであって、
- 前記評価ユニット(6)は、検出された温度プロファイル(18)を格納済み温度プロファイル(18)と比較し、前記比較に応じて、前記駐車区画(2a)に駐車された車両の駆動方式を判定する
ことを特徴とする、駐車場管理システムのための評価ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、駐車場管理システムおよび駐車場管理システムのための評価ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
駐車場管理システムのための消火システムが、よく知られており、法律によって義務付けられていることが多い。具体的には、屋内駐車場または地下駐車場は、その構造的な密度および互いの車両の近接性ならびにそれに関連して火災荷重が大きいことにより、甚大な火災リスクにさらされている。これまで、駐車領域での火災は常に、車両駆動装置の化石燃料の燃焼を伴うことを予期することができた。そのことは、燃えている材料が何であるかを消防隊が常に知っており、それに合わせて消火活動を開始できていた限りは、「好都合」であった。
【0003】
エネルギーの移行によって起こる様々な駆動方式の多様化によって、屋内駐車場または地下駐車区画における火災の場合に、火災の原因および火災荷重が消火活動の前にもはや明らかではない。いわゆる新たなエネルギーキャリア(NEC:new energy carrier)とは、燃焼機関の代わりの駆動システムを有する車両である。それには、ガス車から、ハイブリッド電気自動車およびプラグインハイブリッド電気自動車や、純電気自動車、さらに(場合によっては水素を用いる)燃料電池によって動力供給される車両まである。特に、ハイブリッド駆動装置(ハイブリッド電気自動車(HEV:hybrid electric vehicle))、プラグインハイブリッド駆動装置(プラグイン電気自動車(PEV:plug in electric vehicle))、および純バッテリー駆動装置(バッテリー式電気自動車(BEV:battery electric vehicle))を有するバッテリーベースの車両は常に、エネルギー貯蔵のためのバッテリーを含む。自動車に利用するためのこれまでに知られているバッテリーはリチウムイオン電池である。リチウムイオン電池は甚大な火災リスクをもたらし、火災の際に消火が難しく、適切な手段が必要になる。このような新たな車両は、消火活動に関して、これまで知られていなかった課題をもたらす。例えば、ガス駆動式または水素駆動式の車両の場合、火災荷重によって生成される熱は、屋内駐車場の天井の下に集まるかまたは他の方向に逃げる恐れがある。したがって、このような火災も制御が難しい。近づこうとすると、爆発の危険がある場合がある。いずれの場合も、消防隊にとって全く異なる消防戦略、および、必要な場合は固定式消火システム(FFFS:fixed fire‐fighting system)が、「従来」の駆動装置の場合よりも必要とされる場合がある。
危険な過熱を避けるための電気駆動車両の温度のモニタリングが、少なくとも特開2016-103926(A)号から安全対策として知られている。そこでは、過熱を避けるように充電電力を選択するために、地上に配置された充電ステーションの温度センサーが使用される。しかし、過熱によって引き起こされる火災の問題が考慮されていない。
とりわけ赤外線カメラによる、駐車領域の監視が欧州特許出願公開第2 500 888(A1)号によって提案された。それらのカメラは、充電中の電気車両の過熱の検出を可能にする。しかし、火災状況に対する改善された関与または準備のための指示は与えられていない。
独国特許出願公開第10 2018 201 517(A1)号は、車両内の内部温度モニタリングを提案した。
【0004】
したがって、本主題は、駐車場管理システムにおける消火活動を最適化するという目的に基づいた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
その目的は、請求項1に記載の駐車場管理システムおよび請求項に記載の評価ユニットによって解決される。
【0006】
本主題によれば、車両の温度挙動が駆動方式に応じて異なることが認識された。到着して車両を駐車するとき、すなわち、走行後の冷却プロセス中にも、および火災が起きるとき、すなわち、火災までの初期の温度上昇プロセス中にも、温度挙動は駆動方式に強く依存する。
【0007】
最も広い意味では、駆動方式は、パワートレインと、駆動エネルギーを貯蔵するために用いられる貯蔵技術との両方を指すことがある。パワートレインは燃焼機関または電気モーターに基づくことができる。貯蔵技術は、液体燃料タンク、ガスタンク、またはバッテリーを含むことができる。バッテリーは、Li-ionバッテリー、鉛蓄電池、リチウムポリマーバッテリーなど、様々な技術を含むことができる。話を簡単にするために、以下では駆動方式にだけ言及する。
【0008】
さらに、いわゆるホットスポットの位置、すなわち、車両が特に激しく温度上昇する領域も、車両のアンダーボディの領域において、駆動方式によって大きく異なる。本主題は、このような状況を、駐車区画の床に取り付けできる温度センサーを設けることによって利用する。好ましくは、各点においてだけではなく、具体的には線に沿ってかつ/または領域全体で、温度プロファイルを検出できる温度センサーによって、車両のアンダーボディの温度を駐車期間にわたって検出できる。
【0009】
温度センサーは評価ユニットに接続されている。接続は有線または無線とすることができる。
【0010】
火元に到着する前または到着時に、起こり得る災害および消火戦略を消防隊に知らせるために火災荷重を判定するには、評価ユニットが、温度センサーの助けによって、温度センサーの領域における少なくとも1つの温度プロファイルを評価し、その温度プロファイルに応じて信号を出力することが提案される。信号は、具体的には、火災警報信号または火災事前警報である。
【0011】
温度プロファイルは、時間的なものと空間的なものとの両方とすることができる。時間的温度プロファイルは、時間に対する温度を表すことができる。空間的温度プロファイルは、例えば、温度センサーの少なくとも1つの延在軸(1次元)に沿って、具体的には、2つの軸(2次元)に沿って、温度を表すことができる。
【0012】
冒頭で説明したように、異なる駆動方式の温度プロファイルは大きく異なる。
【0013】
例えば、燃焼機関の場合、燃焼機関が車両のフロント領域に位置するため、駐車プロセスの最初は、温度上昇が車両のフロント領域で予期されることになる。温度は、通常、エンジン停止後にエンジンのラジエーターが動作しているか否かに応じて、線形または累減的に低下する。冷却後は、温度は低いままである。温度プロファイルのホットスポットは、通常、車両のエンジンブロックまたはタンクの領域にある。
【0014】
燃料電池を有するバッテリー駆動式車両の場合、電気モーターは燃焼機関ほど温度上昇しないため、駐車プロセスの最初は、車両のフロントの領域で低温が予期できる。温度は概して線形に低下する。冷却後は、温度は低いままである。しかし、火災の際に、特に、火災の発生前に、概してバッテリーが温度上昇することになる。この加熱プロセスは、数分にわたって起こり、具体的には、化石燃料の火災の場合よりもかなり長い。しかし、いわゆる「トリッピングポイント」に達すると、温度が急上昇して、火災またはバッテリーの爆発に至る。典型的にはバッテリーが車両の中央にあるので、温度プロファイルのホットスポットは、通常、車両の中央にある。
【0015】
水素駆動式車両の場合、電気モーターは燃焼機関ほど温度上昇しないため、駐車プロセスの最初は、車両のフロントの領域で低温が予期できる。温度は概して線形に低下する。冷却後は、温度は低いままである。火災の際は、水素がすぐに反応して爆発するため、温度上昇が、概して、燃焼機関を有する車両の場合よりもずっと速くなる。温度プロファイルのホットスポットは、通常、車両のタンクの領域にある。
【0016】
言及した駆動方式は純粋に例示である。燃焼機関を有する水素車両と同様に、例えば、ガス駆動式の車両も存在し、それらも典型的な温度プロファイルを有する。
【0017】
火災荷重の推定につながる情報を信号に追加するために、温度プロファイルに関するその情報および他の情報を評価ユニットに格納できる。信号は、例えば、それぞれの駐車区画の車両の駆動方式についての情報を含むことができる。
【0018】
温度センサーを駐車区画に排他的に対応付けることができる。その場合、評価ユニットは、温度プロファイルだけでなく、温度プロファイルの位置、具体的には、駐車区画も判定することができる。それゆえ、駐車区画そのものについての情報、すなわち、駐車区画についての空間的な情報または駐車区画の名称を、信号に追加することができる。
【0019】
一実施形態によれば、温度センサーが光ファイバー線であることが提案される。このような光ファイバー線を用いて、具体的には、駐車区画の底部で構造的にコンパクトに、温度感知を行うことができる。ファイバー線は、長手方向の広がりを有することができ、温度プロファイルは、ファイバー線に沿って局部的に解像して判定することができる。
【0020】
ファイバー線は、具体的には、光ファイバー線、具体的には、光ファイバー火災警報ケーブルである。このような光ファイバー火災警報ケーブルは既に知られており、長距離にわたる温度感知を実行可能にするために、例えばトンネルの天井領域で、使用されている。
【0021】
ただし、温度センサーは電気センサー、例えば、抵抗線に基づくセンサーとすることもできる。このようなセンサーは各セクションに分割でき、各セクションは空間的解像のために個別に評価できる。電気抵抗器に、例えば、NTC抵抗器に基づいた、温度センサーも考えられる。
【0022】
温度センサーがその上を通る車両によって損傷を受けることを防止するために、温度センサーが駐車区画の床に組み込まれることが提案される。駐車区画の建設中に、温度センサーは、最上層が敷設される前に、例えば埋め込むことができる。後から設置するためには、例えば、最上層にスリットが切り開かれ、温度センサーが挿入され、次いで、スリットが例えばアスファルトでシールされることが可能である。
【0023】
冒頭で既に説明したように、どの温度プロファイルがどの車種、具体的には、どの駆動方式にとっての特徴であるかを評価ユニットに格納することができる。それゆえ、評価ユニットには、1つの車種および/または1つの駆動方式ごとにそれぞれ、異なる特徴の温度プロファイルを格納できる。典型的な温度プロファイルのクラスターを駆動方式それぞれについて評価ユニットに格納できる。
【0024】
取り込まれた温度プロファイルは、格納済み温度プロファイルと比較される。具体的には、これは、取り込まれた温度プロファイルの、格納済み温度プロファイルとの相互相関によって行うことができ、それらプロファイルは両方とも時間的および空間的に解像されている。このような方法には、例えば、SSD法がある。取り込まれた温度プロファイルが格納済み温度プロファイルのうちのどれに最も似ているかを判定できる。また、例えば、クラスターに属する全ての温度プロファイルに対する、取り込まれた温度プロファイルの全ての差の合計を形成でき、全てのクラスターに関してその合計の絶対値または合計の正規化値が互いに比較される。最も小さい差の量を用いて、取得した温度プロファイルに関して最も可能性の高いクラスターを判定できる。その比較に応じて、評価ユニットは、駐車区画に駐車された車両の駆動方式を判定することができる。いずれの場合も、非常に高い温度を、それゆえ、火災を、常に検出することができる。車種についての知識が利用できないか、または温度プロファイルから識別できない場合でも。それゆえ、システムは、温度プロファイルの詳細を評価しなくても、ある位置に火災を対応付けることもできる。
【0025】
さらに、位置センサーが利用可能であり、システムが特定の位置の特定の車種を分かっている場合は、異常な温度プロファイルをそのようにより迅速に識別できる。それゆえ、システムは、電気自動車などの場合のE曲線を待つことになる。
【0026】
火災の検出を最適化するために、火災が現れる前でも駆動方式を知ることが役立つ。したがって、時間的に最初に、第1の温度プロファイルが評価されることが提案される。それに応じて、例えば、車両が駐車区画に進入し、駐車プロセスが始まると、駐車車両の駆動方式を判定できる。その判定された駆動方式は、車両がその駐車区画を離れるまで、その駐車区画に関して格納されている。次いで、その記憶は、例えば、その駐車区画に次に駐車された車両の駆動方式の値を用いて、消去でき、書き換えることができる。
【0027】
駐車プロセス中に、第2の温度プロファイルが、連続してまたは間隔をあけて記録および評価される。その評価中に、記録された温度プロファイルは温度プロファイルと比較される。火災が存在するか否かをより迅速かつ確実に判定できるようにするために、既知の駆動方式について知られている温度プロファイルとだけ比較が行われる。火災が存在する場合は、温度プロファイルは駆動方式に関して典型的である。駆動方式が分かっており、その駆動方式に関する拡大中の火災の温度プロファイルと、第2の温度プロファイルが比較される場合は、火災が実際に起きているかまたは火災が差し迫っているかを高い確率で割り出すことができる。
【0028】
車両が駐車区画に入り、駐車プロセスが始まる場合、駐車車両の駆動方式の特徴である温度プロファイルが検出される。このような検出は、対応する車両が駐車区画に駐車されたことも判定する。したがって、評価に応じて、駐車区画の占有が信号で送られる。車両が移動して駐車区画を再び離れる場合、そのことを、適用可能であれば温度プロファイルによって検出することもでき、対応する占有情報が出力される。
【0029】
一実施形態によれば、信号の出力が、判定された駆動方式に依存することが提案される。例えばバッテリー駆動式の車両で、例えば、駐車プロセスが始まってから特定の最短期間の後に温度上昇または温度変化が検出される場合は、信号が火災事前警報であることが考えられる。そのことは、バッテリーが温度上昇していることを示し、火災が差し迫っている可能性があるという信号を送ることができる。このような事前警報によって、火災を防止するためにすぐに対策をとることができる。
【0030】
一実施形態によれば、評価ユニットには複数の温度センサーが対応付けられることと、評価ユニットがそれら温度プロファイルを評価することが提案される。具体的には、各駐車区画に少なくとも1つの温度センサーを排他的に対応付けることができ、どの駐車区画がどの温度センサーに対応付けられるのかを評価ユニットに格納することができる。それゆえ、火災を検出できるだけでなく、その火災を駐車区画に空間的に対応付けることもできる。
【0031】
一実施形態によれば、評価ユニットが評価に応じて光学式進路マーキングを作動させることが提案される。屋内駐車場または地下駐車区画では、光学式進路マーキングは交通の制御のために設けることができる。これらは通常、空いた駐車区画に車両を案内するために用いられる。しかし、火災警報または事前警報が起きる場合、例えば、バッテリーが温度上昇している場合は、火災の危険要因または火災の位置に、可能な限り迅速に消防隊員を案内するのに役立つことがある。火災の位置、具体的には、燃焼している乗用車の駐車区画が評価によって分かっているため、評価ユニットは、消防隊が火元に直接案内されるように進路マーキングを制御することができる。
【0032】
一実施形態によれば、火災が検出されたらすぐに、または、例えば、バッテリーが高温になった場合に事前警報が発せられたらすぐに、対応する駐車区画がさらなる車両に対して閉鎖され、例えば、閉鎖は光学式進路マーキングによって示されることが提案される。また、駐車デッキまたはその駐車区画の周りの空間的な領域を閉鎖でき、これ以上車両がその領域に向かうことがないように進路マーキングを制御できる。
【0033】
別の態様は請求項に記載の評価ユニットである。
【0034】
信号、例えば、事前警報または火災警報信号の際には、評価ユニットによって安全対策を開始することができる。例えば、信号の際に、対応する駐車デッキを閉鎖するなど、信号が作動された駐車区画の領域を閉鎖することが可能である。その領域で換気システムまたは消火システムが始動されることも可能である。場合によってはその領域にある充電ステーションなどの電気設備が自動的に停止されることも可能である。その領域からの避難を容易にするために、避難進路マーキングを始動させることができる。本主題による解決策によって、駆動装置のタイプと火災または火災危険の位置との両方が分かっているため、上記で言及したような対応策および他の対応策を即座に自動的に開始することができる。
【0035】
以下で、例示的な実施形態を示す図面によって、本主題をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】対象の駐車場管理システムを示す。
図2】駐車区画の床の温度センサーを示す。
図3】駐車場の進路マーキングを示す。
図4A】温度-時間プロファイルを示す。
図4B】温度-時間プロファイルを示す。
図4C】温度-時間プロファイルを示す。
図5A】温度-位置プロファイルを示す。
図5B】温度-位置プロファイルを示す。
図5C】温度-位置プロファイルを示す。
図6A】火災中の温度-時間プロファイルを示す。
図6B】火災中の温度-時間プロファイルを示す。
図6C】火災中の温度-時間プロファイルを示す。
図7】温度プロファイルの評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、複数の駐車区画2a、2b、2c、および2dを有する駐車場管理システムの駐車場2を示す。それぞれの駐車区画2a~2dの底部に、長手方向に延びる温度センサー4a~4dを配置することができる。温度センサー4a~4dは、例えば、ファイバー線、具体的には、火災警報光ファイバー線でよい。適切な制御手段(図示せず)を用いて、時間的温度プロファイルと空間的に解像された温度プロファイルの両方を、温度センサー4a~4dに沿って記録することができる。取り込まれた温度プロファイルは、駐車区画2a~2dの1つに対応付けられ、評価回路6に供給される。評価回路6では、駐車区画2の占有についての情報を火災警報制御センター10に信号8で送るために、本明細書で以下に記載する、取り込まれた温度プロファイルの、格納済み温度プロファイルとの比較が行われる。
【0038】
信号8は、例えば、第1の信号12とすることができ、そこでは、駐車区画2a~2dについての情報12aが駐車区画2a~2dに駐車されている車両の駆動方式についての情報12bにリンクされている。ただし、信号12は警報信号とすることもでき、そこでは、駐車区画についての情報12aと、駐車区画2a~2dの1つにおける検出された火災または異常な温度経過についての情報12cとが一緒に、例えば、駆動方式とも一緒に含まれる。信号8は、評価ユニット6から火災警報制御センター10に伝送される。
【0039】
繊維導体として形成される温度センサー4aが、例えば、図2に示すように、カバー層14aに埋め込まれていてよい。これは、温度センサー4aがその上を通る車両によって損傷を受けることを防止する。
【0040】
駐車場2の駐車区画2a~2dは、図3に示すように、互いに並んでかつ/または互いの上下にある、異なる駐車デッキ2’、2”、2’’’および2””に配置されてよい。進路マーキング16は、異なる駐車デッキ2’~2””に向いていてよい。進路マーキング16は情報標識16aを含んでもよい。進路マーキング16ならびに標識16aは、例えば、火災の際に被害を受ける駐車区画2a~2dに消防隊を向かわせるために、または標識16aによってさらなる車両に対して駐車デッキ2’~2””へのアクセスを防止するために、評価ユニット6および/または火災警報制御センター10によって制御することができる。
【0041】
既に説明したように、駐車車両の時間的温度プロファイルは、車両の駆動方式の特徴である。
【0042】
図4Aは、一例として、燃焼機関を有する車両の、時間に対する温度プロファイルを示す。時間t0で、車両が駐車され、燃焼機関が高温なので温度が急上昇する。エンジンファンが最初は依然として稼働しており、続いて、純粋な対流によって冷却が行われるため、温度低下は累減的である。
【0043】
図4Bは、一例として、バッテリー式電気自動車に関する温度プロファイルを示す。車両は、時間t0で駐車され、例えばバッテリーの領域で、大電流によってわずかに加熱されている。温度プロファイルから理解できるように、冷却は、概して、線形であり、燃焼機関の場合よりも遅い。
【0044】
図4Cは、一例として、燃料電池車に関する温度プロファイルを示す。ここで、車両が駐車される時間t0の初期温度は、図4Bに示すバッテリー式電気自動車とほぼ同じであるが、バッテリーの熱容量がなく、それゆえ、貯蔵される熱エネルギーが小さいため、冷却がより速い。
【0045】
これら3つの例示的温度プロファイルに基づくと、評価ユニット6が駐車動作の最初に車両の駆動方式を判定できることを理解できる。
【0046】
図5Aは、燃焼機関の温度センサー4a~4dの長手延在方向にわたる例示的な温度プロファイルを示す。例えば、燃焼機関のあるフロント領域は高温であるが、アンダーボディは比較的低温であり、リア領域は温度が外気温とほぼ同じであることを理解できる。
【0047】
そのことは、バッテリー式電気自動車の場合には異なり、その空間的温度プロファイルが図5Bの例に示されている。そこでは、バッテリーが位置するアンダーボディは、概して、車両のフロントおよびリアよりも高温になる。
【0048】
図5Cは、燃料電池車の例示的な空間的温度プロファイルを示す。そこでは、バッテリーがないので、車両のフロントは高温を有することが予期されるが、アンダーボディおよびリアは高温を有しない。
【0049】
図5A図5Cによる空間的温度プロファイルに基づいて、駆動方式を判定することもできる。
【0050】
図6A図6Cは、火災の際の異なる駆動方式の例示的な温度プロファイルを示す。
【0051】
図6Aは、燃焼機関の火災の場合に温度が線形に急上昇することを示す。
【0052】
バッテリー式電気自動車の火災を示す図6Bでは、温度の急激な上昇の前に、例えばバッテリーモジュール内の短絡によって温度がまずわずかに上昇することを理解できる。時間t1でバッテリーの内部温度が非常に高くなって、「トリッピングポイント」に達し、バッテリーが燃え始める恐れがあり、そうなると、次に温度の急な上昇が予期できる。
【0053】
図6Cは、燃料電池車の火災に関する例示的な温度プロファイルを示す。火災が起きる時間t1まで、温度上昇は測定できない。火災が起きるとすぐに、極めて急な温度上昇が予期されることになり、これは場合によっては、図6Aに示す燃焼機関の場合よりも急である。
【0054】
図示の温度プロファイルは、純粋に例示であり、時間的温度分布と空間的温度分布は両方とも、一方で駆動方式について、他方で火災の危険性または存在について見通しを提示できることを単に示そうとするものである。
【0055】
評価ユニット6には様々なクラスター16a~16cが設けられている。各クラスター16a~16cには、特定の駆動方式に関する異なる温度プロファイル18が格納されている。例えば、第1の温度プロファイル18は、駐車プロセスの最初の時間的温度プロファイルを表すことができる。さらなる温度プロファイル18は、駐車プロセスの最初の空間的温度プロファイルを表すことができる。さらなる温度プロファイル18は、火災の途中の時間的温度プロファイルを表すことができ、最後に、さらなる温度プロファイル18は、火災の途中の空間的温度プロファイルを表すことができる。それら温度プロファイルのそれぞれについて、1組の特徴的な温度プロファイル18が格納されていてよく、そうすることで、1つまたは複数の温度プロファイル18が事例ごとに各駆動方式について格納される。
【0056】
時間的温度プロファイル20aは、ここで評価ユニット6によって取り込まれると、様々なクラスター16a~16cの時間的温度プロファイル18と比較される。ここで、例えば、相互相関を行うことができ、測定された温度プロファイル20aと比較して差が最も小さい温度プロファイル18を判定することができる。そこから、例えば、駆動方式を割り出すことができる。
【0057】
その後の第2の温度プロファイル20bは、例えば、後から測定されると、例えば、火災を示すクラスター16a~16cの温度プロファイル18と比較することができる。駆動方式が事前に分かっている場合、その駆動方式に対応付けられたクラスター16a~16cの温度プロファイル18とだけ比較を行うことができる。測定された温度プロファイル20bの、格納済み温度プロファイル18からの差が、閾値を下回る場合は、例えば、警告信号、火災信号など、例えば、情報12a~12cを有する信号12を出力できる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7