(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】O-C-N-N型四座配位白金(II)錯体、調製方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07F 15/00 20060101AFI20230816BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230816BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20230816BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230816BHJP
【FI】
C07F15/00 F CSP
C09K11/06 660
C07D401/14
H05B33/14 B
(21)【出願番号】P 2022531588
(86)(22)【出願日】2020-09-19
(86)【国際出願番号】 CN2020116339
(87)【国際公開番号】W WO2021128982
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】201911343671.7
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515177907
【氏名又は名称】広東阿格蕾雅光電材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】康 健
(72)【発明者】
【氏名】戴 雷
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗菲
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109970714(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106939024(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108276450(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105418591(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109980111(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0359125(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F,C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される構造を有するO-C-N-N四座配位白金(II)錯体であって、
式(I)中、R
1~R
17は、独立して、水素、重水素、硫黄、ハロゲン、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、スチリル基、アミノカルボニル基、カルバモイル基、ベンジルカルボニル基、アリールオキシ基、シラニル基、ジアリールアミノ基、1~30個のC原子を含む飽和アルキル基、1~20個のC原子を含む不飽和アルキル基、5~30個のC原子を含む置換若しくは非置換のアリール基、及び5~30個のC原子を含む置換若しくは非置換のヘテロアリール基のうちから選択され、
前記置換は、重水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、又はC1-C8アルキル基による置換であり、前記ヘテロアリール基のヘテロ原子は、N原子、S原子、又はO原子である、ことを特徴とする錯体。
【請求項2】
R
1~R
17は、独立して、水素、ハロゲン、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、シラニル基、ジアリールアミノ基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、5~20個のC原子を含み、ハロゲン又は1つ若しくは複数のC1-C4アルキル基により置換された、又は非置換のアリール基、及び5~20個のC原子を含み、ハロゲン又は1つ若しくは複数のC1-C4アルキル基により置換された、又は非置換のヘテロアリール基のうちから選択され、
前記ハロゲンは、F、Cl又はBrである、ことを特徴とする請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
以下の式(II)で表される構造を有し、
式(II)中、R
1
’~R
5
’は、独立して、水素、ハロゲン、シラニル基、ジアリールアミノ基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、5~20個のC原子を含み、ハロゲン又は1つ若しくは複数のC1-C4アルキル基により置換された、又は非置換のアリール基、及び5~20個のC原子を含み、ハロゲン又は1つ若しくは複数のC1-C4アルキル基により置換された、又は非置換のヘテロアリール基のうちから選択され、
前記ハロゲンは、F、Cl又はBrである、ことを特徴とする請求項2に記載の錯体。
【請求項4】
R
1
’~R
5
’の5個の基のうち、0~3個の基は、独立して、ジアリールアミノ基、5~10個のC原子を含み、ハロゲン又は1~3個のC1-C4アルキル基により置換された、又は非置換のアリール基、及び5~10個のC原子を含み、ハロゲン又は1~3個のC1-C4アルキル基により置換された、又は非置換のヘテロアリール基のうちから選択され、その他の基は、独立して、水素、ハロゲン、又は1~8個のC原子を含む飽和アルキル基であり、前記ハロゲンは、F又はClである、ことを特徴とする請求項3に記載の錯体。
【請求項5】
R
1
’~R
5
’の5個の基のうち、0~3個の基は、独立して、ジフェニルアミノ基、及びC1-C4アルキル基により置換された、又は非置換のフェニル基、ピリジン基、若しくはカルバゾール基のうちから選択され、その他の基は、独立して、水素、F及び1~4個のC原子を含む飽和アルキル基のうちから選択される、ことを特徴とする請求項4に記載の錯体。
【請求項6】
以下のうちのいずれかの構造を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の錯体。
【請求項7】
以下の式(III)で示される構造を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の錯体のリガンドであって、
式(III)中、R
1~R
17は、独立して、水素、重水素、硫黄、ハロゲン、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、スチリル基、アミノカルボニル基、カルバモイル基、ベンジルカルボニル基、アリールオキシ基、シラニル基、ジアリールアミノ基、1~30個のC原子を含む飽和アルキル基、1~20個のC原子を含む不飽和アルキル基、5~30個のC原子を含む置換若しくは非置換のアリール基、及び5~30個のC原子を含む置換若しくは非置換のヘテロアリール基のうちから選択され、
前記置換は、重水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、又はC1-C8アルキル基による置換であり、前記ヘテロアリール基のヘテロ原子は、N原子、S原子、又はO原子である、ことを特徴とするリガンド。
【請求項8】
以下の式(IV)で示される構造を有し、
式(IV)中、R
1
’~R
5
’は、独立して、水素、ハロゲン、シラニル基、ジアリールアミノ基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、5~20個のC原子を含み、ハロゲン又は1つ若しくは複数のC1-C4アルキル基により置換された、又は非置換のアリール基、及び5~20個のC原子を含み、ハロゲン又は1つ若しくは複数のC1-C4アルキル基により置換された、又は非置換のヘテロアリール基のうちから選択され、
前記ハロゲンは、F、Cl又はBrである、ことを特徴とする請求項7に記載のリガンド。
【請求項9】
請求項3に記載の錯体の合成方法であって、
カルバゾール類誘導体S1とS2を鈴木反応させて基質S3を取得するステップと、S3とS4をブッフバルト反応させてS5を取得するステップと、S5をピリジン塩酸塩の作用下で脱メチル化してリガンドS6を取得するステップと、S6をK
2PtCl
4と反応させて目的生成物Pを取得するステップを含み、以下の反応式で示される、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
OLED発光デバイスにおける請求項1~6のいずれかの錯体の使用。
【請求項11】
前記錯体は、熱堆積、スピンコーティング又はインクジェット印刷により形成された層の形態でOLED発光デバイスに適用される、ことを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記錯体は、発光層において光子放出の役割を果たす燐光ドーピング材料である、ことを特徴とする請求項10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新型O-C-N-N四座配位白金(II)錯体金属有機材料に関し、特に、OLED発光デバイスの発光層において赤色光光子放出作用を機能するための燐光ドーピング材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode、OLED)表示技術は、最新の表示技術であり、発展の見通しが広い。CRT、LCDに続いて、OLED表示技術が登場し、自発光特性を有し、バックライトを必要とせず、高い可視度と輝度、広い視角、及び速い応答を有する。材料は軽量であり、厚みが薄く、フレキシブルディスプレイの優れた性能を有する。同時に、LCDと比較して、電圧相比、電圧需要が低く、アセンブリ需要が少なく、コストが低い。OLEDの性能は優れており、将来のスマートフォン、テレビ、ウェアラブル機器及びVR分野に広く適用され、発展の見通しが広い。
【0003】
有機エレクトロルミネセンス現象は、早くも1963年にPopeの研究グループによって発見された。当時、彼らは、2種類の有機材料を利用して、Ag/アントラセン単結晶/Agデバイス及びNaCl/アントラセン単結晶ドープナフタセン/NaClデバイスでそれぞれアントラセンの発光及びナフタセンの発光を発見した。しかしながら、アントラセン単結晶シートの厚さがマイクロメートルレベル(10~20μm)であり、且つ単層発光デバイスを作るには最大400Vの直流電圧を使用する必要がある。400V電圧を印加すると弱い青色の光が観測され、デバイス寿命も非常に低く、実用性に欠けていたため、学界で広く関心を集めることはできなかった。
【0004】
1987年まで、米国のKODAK社のC.W.Tangらは、蒸着技術を使用して、ITOを陽極にし、ジアミン(75nm)を正孔輸送層としてITOガラス上に蒸着し、さらに、Alq3層(60nm)を電子輸送層及び発光層として蒸着し、最後に、低仕事関数のマグネシウム及びアルミニウムを陰極として蒸着して、最初のサンドイッチ構造を有するOLEDデバイスを作った。約5Vの電圧下で、高輝度の緑色光が観測された。輝度は1000cd/m2に達し、電流効率は3cd/Aに達し、外部量子効率は1%に達した。この画期的な研究は里程標の意義を持ち、有機光電研究の新時代を切り開くとともに、有機エレクトロルミネセンス研究に方向を示した。
【0005】
OLED材料分野では、燐光類OLED発光層ドーピング材料の発展は比較的に速く、成熟しており、それは主にいくつかの重金属有機錯体、例えばイリジウム、白金、ユウロピウム、オスミウムなどに基づく。重金属錯体において、重金属原子の存在により、強いスピン軌道相互作用(spin-orbital coupling、SOC)が生じる可能性があるので、元々スピンが妨げられていた三重項励起子が、最低の三重項状態(T1)から基底状態(S0)に放射的に遷移して、燐光が生成される。この方法は、三重項励起子と一重項励起子を同時に捕捉し、発光できない三重項励起子を効率的に利用し、内部量子効率25%のボトルネックを解消するため、理論的にはその量子効率は100%に達することができる。これにより、有機電気リン光デバイスの性能がより優れたものになるため、リン光材料がOLEDでより広範囲に開発および研究されている。ホスト材料に分散することにより、リン光金属錯体は非常に高い外部量子効率(EQE)を示す。最近報告されたドープリン光OLEDでは、外部量子効率は30%を超えている。
【0006】
OLED技術は、その開発以来30年以上の発展を経て、特に燐光OLED効率の飛躍的進歩は、その商業的応用に大きな将来性を示している。近年、白金(II)ベースの燐光OLED材料の開発が進み、良い研究成果が得られている。白金(II)錯体の平面構造の特性により、分子間の積層やエキシマなどが形成されやすく、OLEDデバイスの性能に影響を与える。一般に、分子にtert-ブチルなどの立体障害の大きなグループを追加することで、分子の立体構造を強化し、分子間の相互作用を弱める。
【0007】
OLED表示技術の発展は、極めて困難で、重大な意義のある研究である。良好な特性があるとともに、使用寿命が短く、色純度が低く、劣化しやすいなどの欠点もあるため、OLED技術の大規模な適用が制限されている。従って、優れた性能を備えた新規なOLED材料、特に発光層ドーピング材料の設計は、OLED分野の研究の重点と難点である。
【発明の概要】
【0008】
本発明では、赤色を放出するカルバゾール骨格に基づくO-C-N-N配位構造を有する新型のPt(II)錯体を設計し、また、有機発光ダイオード上のその用途を研究した。カルバゾールは、電子豊富な窒素含有複素環式化合物であり、大きなπ共役剛直平面構造を有する。このユニークな構造により、その誘導体は多くの優れた光電的特性を示す。
【0009】
本発明が関わる新型O-C-N-N四座配位白金(II)錯体金属有機材料は、以下の式(I)で示される構造を有する。
【0010】
R1-R17は、独立して、水素、重水素、硫黄、ハロゲン、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、スチリル基、アミノカルボニル基、カルバモイル基、ベンジルカルボニル基、アリールオキシ基、シラニル基、ジアリールアミノ基、1~30個のC原子を含む飽和アルキル基、1~20個のC原子を含む不飽和アルキル基、5~30個のC原子を含む置換又は非置換のアリール基、5~30個のC原子を含む置換又は非置換のヘテロアリール基から選択され、又は隣接するR1-R17は共有結合によって互いに接続されて環を形成し、前記置換は、重水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C1-C8アルキル基による置換である。前記ヘテロアリール基のヘテロ原子は、N、S、O原子である。
【0011】
好ましくは、R1-R17は、独立して、水素、ハロゲン、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、シラニル基、ジアリールアミノ基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、5~20個のC原子を含むハロゲン又は1つ若しくは複数のC1-C4アルキル基にて置換又は非置換のアリール基、5~20個のC原子を含むハロゲン又は1つ若しくは複数のC1-C4アルキル基にて置換又は非置換のヘテロアリール基から選択され、あるいは、隣接するR1-R16は共有結合によって互いに接続されて環を形成し、前記ハロゲンは、F、Cl、Brである。
【0012】
好ましいリガンドの構造式は、以下の式(II)で示される。
【0013】
R1
’-R5
’は、独立して、水素、ハロゲン、シラニル基、ジアリールアミノ基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、5~20個のC原子を含むハロゲン又は1つ若しくは複数のC1-C4アルキル基にて置換又は非置換のアリール基、5~20個のC原子を含むハロゲン又は1つ若しくは複数のC1-C4アルキル基にて置換又は非置換のヘテロアリール基から選択され、あるいは、隣接するR1
’-R5
’は共有結合によって互いに接続されて環を形成し、前記ハロゲンは、F、Cl、Brである。
【0014】
好ましくは、R1
’-R5
’の5個の基のうち、0~3個の基は、独立して、ジアリールアミノ基、5~10個のC原子を含むハロゲン又は1~3個のC1-C4アルキル基にて置換又は非置換のアリール基、5~10個のC原子を含むハロゲン又は1~3個のC1-C4アルキル基にて置換又は非置換のヘテロアリール基として表され、その他の基は、独立して、水素、ハロゲン、又は1~8個のC原子を含む飽和アルキル基として表され、前記ハロゲンは、F、Clである。
【0015】
好ましくは、R1
’-R5
’の5個の基のうち、0~3個の基は、独立して、ジフェニルアミノ基、C1-C4アルキル基にて置換又は非置換のフェニル基、ピリジン基、カルバゾール基として表され、その他の基は、独立して、水素、フッ素、1~4個のC原子を含む飽和アルキル基として表される。
【0016】
上記の化合物の前駆体、即ちリガンドの構造式は、式(III)で示される。
【0017】
R1-R17は、独立して、水素、重水素、硫黄、ハロゲン、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、スチリル基、アミノカルボニル基、カルバモイル基、ベンジルカルボニル基、アリールオキシ基、シラニル基、ジアリールアミノ基、1~30個のC原子を含む飽和アルキル基、1~20個のC原子を含む不飽和アルキル基、5~30個のC原子を含む置換又は非置換のアリール基、5~30個のC原子を含む置換又は非置換のヘテロアリール基から選択され、又は隣接するR1-R16は共有結合によって互いに接続されて環を形成し、前記置換は、重水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、C1-C8アルキル基による置換である。前記ヘテロアリール基のヘテロ原子は、N、S、O原子である。
【0018】
好ましいリガンドの構造式は、以下の式(IV)で示される。
【0019】
R1
’-R5
’は、独立して、水素、ハロゲン、シラニル基、ジアリールアミノ基、1~10個のC原子を含む飽和アルキル基、5~20個のC原子を含むハロゲン又は1つ若しくは複数のC1-C4アルキル基にて置換又は非置換のアリール基、5~20個のC原子を含むハロゲン又は1つ若しくは複数のC1-C4アルキル基にて置換又は非置換のヘテロアリール基から選択され、あるいは、隣接するR1
’-R5
’は共有結合によって互いに接続されて環を形成し、前記ハロゲンは、F、Cl、Brである。
【0020】
本出願の目的のために、特に明記しない限り、用語ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、及び複素環芳香族系又は或複素環芳香族基は、以下の意味を有し得る。
【0021】
上記のハロゲン又はハロゲン化は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素、好ましくはF、Cl、Br、特に好ましくはF又はCl、最も好ましくはFを含む。
【0022】
上記の共有結合によって接続されて形成する環、アリール基、ヘテロアリール基は、5~30個の炭素原子、好ましくは5~20個の炭素原子、より好ましくは5~10個の炭素原子を有し、1つの芳香環又は複数の縮合芳香環からなるアリール基を含む。適切なアリール基は、例えば、フェニル、ナフチル、アセナフテニル(acenaphthenyl)、ジヒドロアセナフテニル(acenaphthenyl)、アントリル、フルオレニル、フェナレニル(phenalenyl)である。アリール基は、非置換(即ち、置換可能なすべての炭素原子に水素原子がある)であってもよいし、あるいは、アリール基の1つ、複数又はすべての置換可能な位置で置換されてもよい。適切な置換基は、例えば、ハロゲンであり、好ましくはF、Br又はClである。アルキル基は、好ましくは、1~20個、1~10個、又は1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、特に好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル又はtert-ブチルである。アリール基は、好ましくは、再置換可能な又は非置換のC5、C6アリール基又はフルオレニルである。ヘテロアリール基は、好ましくは、少なくとも1つの窒素原子を含むヘテロアリール基であり、特に好ましくは、ピリジン基である。アリール基は、特に好ましくは、F、メチル及びtert-ブチルから選択される置換基を有するか、又は少なくとも1つの上記の置換基によって任意に置換される、C5、C6アリール基であるアリール基を有する。C5、C6アリール基は、特に好ましくは、0、1又は2個の上記の置換基を有する。C5、C6アリール基は、特に好ましくは、非置換のフェニル基又は置換のフェニル基、例えば、ビフェニル、2つのtert-ブチルによって、好ましくはメタ位で置換されるフェニル基である。
【0023】
1~20個のC原子を含む不飽和アルキル基は、好ましくは、アルケニル基、更好ましくは、1つの二重結合を有するアルケニル基、特に好ましくは、二重結合及び1~8個の炭素原子を有するアルケニル基である。
【0024】
上記のアルキル基は、1~30個の炭素原子、好ましくは、1~10個の炭素原子、好ましくは、1~4個の炭素原子を有するアルキル基を含む。アルキル基は、分枝状又は直鎖状であってもよく、環状であってもよく、1つ又は複数のヘテロ原子、好ましくは、N、O又はSによって中断されてもよい。また、アルキル基は、1つ又は複数のハロゲン、又は上記のアリール基に関する置換基によって置換されてもよい。同様に、アルキル基については、1つ又は複数のアリール基を有することが可能である。すべての上記のアリール基は、この目的に適している。アルキル基は、特に好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソアミル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0025】
上記のアシル基は、本明細書で使用されるアルキル基のように、一重結合でCO基に接続される。
【0026】
上記のアルコキシ基は、本明細書で使用されるアルキル基のように、一重結合で酸素に直接接続される。
【0027】
上記のヘテロアリール基は、芳香族、C3-C8環基に関連し、1つの酸素若しくは硫黄原子又は1~4個の窒素原子、又は1つの酸素若しくは硫黄原子と最大で2つの窒素原子との組み合わせ、それらの置換及びベンゾとピリジノの縮合の誘導体を含むと理解されている。例えば、環形成炭素原子の1つを介する接続によって、前記ヘテロアリール基は、アリール基について言及された1つ又は複数の置換基によって置換され得る。
【0028】
幾つかの実施形態では、ヘテロアリール基は、0、1又は2個の置換基を含む上記の独立した5員又は6員の芳香族複素環系であり得る。ヘテロアリール基の典型的な例は、非置換のフラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、ピリジン、インドール、オキサゾール、ベンゾキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、インダゾール、テトラゾール、キノリン、イソキノリン、ダイアジン、ピリミジン、プリン、ピラジン、フラン、1,2,3-ジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、プテリジン、ベンゾキサゾール、ジアゾール、ベンゾピラゾール、キノリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾール及びキノキサリン、ならびにそれらの一置換又は二置換の誘導体を含むが、それらに限定されない。幾つかの実施形態では、置換基は、ハロゲン化、ヒドロキシ基、シアノ基、O-C1~6アルキル基、C1~6アルキル基、ヒドロキシC1~6アルキル基、及びアミノ-C1~6アルキル基である。
【0029】
以下に示される具体的な例は、以下の構造を含むが、それらに限定されない。
【0030】
OLED発光デバイスにおける上記の錯体の用途
【0031】
上記の構造を有する白金(II)錯体を使用して、熱堆積及び溶液処理されたOLEDデバイスを製造することができる。
【0032】
1つ又は複数の上記の錯体を含む有機発光デバイスが含まれる。
【0033】
錯体は、熱堆積によってデバイス内に層の形で適用される。
【0034】
錯体は、スピンコーティングによってデバイス内に層の形で適用される。
【0035】
錯体は、インクジェット印刷によってデバイス内に層の形で適用される。
【0036】
上記の有機発光デバイスに電流が印加されると、該デバイスは、橙赤色を放射する。
【0037】
本発明の有機金属錯体は、高い蛍光量子効率、良好な熱安定性、及び低い消光定数を有し、高い発光効率及び低いロールオフを有する赤色OLEDデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の有機エレクトロルミネセンスデバイスの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、実施例を参照しながら本発明を更に詳細に説明する。
【0040】
上記の錯体の調製方法は、次のステップを含む。
以下のように、カルバゾール類誘導体S1とS2を鈴木反応させて基質S3を取得し、S3とS4をブッフバルト反応させてS5を取得し、S5をピリジン塩酸塩の作用下で脱メチル化してリガンドS6を取得し、S6をK
2PtCl
4と反応させて目的生成物Pを取得する。
【0041】
以下、実施例を参照しながら本発明を更に詳細に説明する。
【0042】
本発明における化合物の合成に関与する最初の基質及び溶媒は、安耐吉(Energy chemical)、百霊威(J&k chemical)、及び阿拉丁(Aladdin)などの、当業者がよく知っている供給業者から入手することができる。
〈実施例1〉
【0043】
【0044】
化合物3の合成:9.84g(40.0mmol)化合物1、6.69g化合物2(1.1eq.、44.0mmol)、炭酸カリウム11.04g(2.0eq.、80mmol)及びPd(PPh3)4924mg(0.02eq.、0.8mmol)を、三つ口フラスコに入れ、真空にして窒素を入れて数回置換した後、ジオキサン120mL、水40mLを注入し、105℃に加熱した。窒素保護下で12時間反応させた後、室温まで冷却し、再び適量の水と酢酸エチルを加えて抽出し、有機相を収集し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、回転蒸発で溶媒を除去し、n-ヘキサン/酢酸エチル系カラムクロマトグラフィー(移動相n-ヘキサン/酢酸エチル=10:1)を使用して、白色固体10.0gを取得し、収率が92%であり、純度が99.5%であった。マススペクトル(ESI+)([M-H]-)C19H14NO理論値:272.11;実測値:272.13。
【0045】
化合物5の合成:5.47g(20mmol)化合物3、5.17g(1.1eq.、22mmol)化合物4、酢酸パラジウム225mg(0.02eq.、1mmol)、トリ-tert-ブチルホスフィン0.20g(0.04eq.、2mmol)、カリウムtert-ブトキシド4.5g(2.0eq.、0.04mol)をフラスコに入れ、100mLトルエンを添加し、窒素保護下で8時間加熱還流し反応させた。反応停止後、室温まで冷却し、回転蒸発で溶媒を除去し、適量の水と酢酸エチルを加えて抽出し、有機相を収集し乾燥させ、回転蒸発で溶媒を除去した後、フラッシュシリカゲルクロマトグラフィーカラム(移動相n-ヘキサン/酢酸エチル=10:1)で分離して、7.3gの目的生成物である化合物5を取得し、収率が85%であり、純度が99.9%であった。マススペクトル(ESI+)([M-H]-)C29H21N3O理論値:426.16;実測値:426.13。
【0046】
化合物6の合成:4.27g(10mmol)化合物5、ピリジン塩酸塩50g、窒素保護下で200℃まで加熱し、8時間反応させた。反応停止後、適量の水と酢酸エチルを加えて抽出し、有機相を収集し乾燥させ、回転蒸発で溶媒を除去した後、フラッシュシリカゲルクロマトグラフィーカラム(移動相n-ヘキサン/酢酸エチル=15:1)で分離し、メタノールで再結晶して、目的生成物である化合物63.3gを取得し、収率が80%であり、純度が99.9%であった。マススペクトル(ESI-)([M-H]-)C28H18N3O理論値:412.15;実測値:412.10。
【0047】
化合物TM-1の合成:2.06g(5.0mmol)化合物6、400mgテトラブチルアンモニウムブロミド(0.25eq.、1.25mmol)及びテトラクロロ白金(II)酸カリウム2.49mg(1.2eq.、6mmol)を、150mL酢酸に溶解し、真空にして窒素を入れて数回置換した後、130℃まで撹拌加熱し、12時間反応させた。反応終了後、冷却し、回転蒸発により溶媒を除去し、適量の水と酢酸エチルを加えて抽出し、有機相を収集し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、回転蒸発により溶媒を除去し、n-ヘキサン/酢酸エチル系カラムクロマトグラフィーを使用して、得られた粗生成物を真空昇華させて、赤色固体1.67gを取得し、総収率が55%であり、純度が99.9%であった。マススペクトル(ESI
+)([M+H]
+)C
28H
18N
3OPt理論値:607.10;実測値:607.15。
〈実施例2〉
【0048】
TM-3の調製方法は、TM-1の合成経路と同じであるが、唯一の違いは、化合物1の代わりに化合物7を使用したことである。化合物7の分子式は以下に示される。
〈実施例3〉
【0049】
TM-5の調製方法はTM-1の合成経路と同じであるが、唯一の違いは、化合物1の代わりに化合物7を使用し、化合物4の代わりに化合物8を使用したことである。化合物8の分子式は以下に示される。
【0050】
以下は、本発明の化合物の適用例である。
ITO/TAPC(60nm)/TCTA:Pt(II)(40nm)/TmPyPb(30nm)/LiF(1nm)/Al(80nm)
デバイスの製造方法
アセトン、エタノール及び蒸留水を順次使用して透明な陽極酸化インジウムスズ(ITO、20)(10Ω/sq)ガラス基板10を超音波洗浄し、次に、酸素プラズマで5分間処理した。
【0051】
次に、ITO基板を真空気相蒸着機器の基板固定器上に装着した。蒸着機器では、システムの圧力を10-6torr.に制御した。
【0052】
その後、ITO基板上に厚さ60nmの正孔輸送層(30)材料TAPCを蒸着した。
【0053】
次に、質量分率10%の白金(II)錯体がドープされた、厚さ40nmの発光層材料(40)TCTAを蒸着した。
【0054】
次に、厚さ30nmの電子輸送層(50)材料TmPyPbを蒸着した。
【0055】
次に、厚さ1nmのLiFを電子注入層(60)として蒸着した。
【0056】
最後に、厚さ80nmのAlを陰極(70)として蒸着し、デバイスパッケージを完成させた。それは、以下に示される。
【0057】
デバイスの構造と製造方法はまったく同じであるが、違いは、有機金属錯体P0、P1、P2、P3、P4を発光層のドーパントとして順に使用したことと、ドーパント濃度である。ここで、STDのO-N-N-Oは、赤色光材料と類似する。
【0058】
デバイスSTD、デバイス1、デバイス2、デバイス3を順に製造した。デバイスの構造と製造方法はまったく同じであるが、違いは、白金(II)錯体STD、TM-1、TM-3、TM-5を発光層のドーパントとして使用したことである。ここで、参照材料STDは、ONCN配位構造を有する典型的な赤色材料である。
【0059】
デバイスの比較結果は表1に示される。デバイスSTDの性能を基準とする。-は、データが同等であることを表す。--は、相対的な基準性能が5%以上低下したことを表す。+は、相対的な基準性能が5%向上したことを表す、++は、相対的な基準性能が10%向上したことを表す。
表1
【0060】
TM-1に基づいたデバイス1は、STDに基づいた参照デバイスと比較して、最大外部量子効率とターンオン電圧が基本的に一致し、100nitでの外部量子効率と電流効率が約5%向上した。分子構造から見ると、TM-1とSTDはいずれも一致する平面構造を有するが、TM-1はより大きな共役構造を有するので、STDと比較してデバイス性能がある程度向上した。TM-3に基づいたデバイス2は、参照デバイスと比較して、ターンオン電圧が基本的に一致しているが、最大外部量子効率及び100nitでの外部量子効率と電流効率がすべて約5%向上した。分子構造から見ると、TM-3分子構造に2つのtert-ブチルを導入すると、分子間の的凝集と積層をある程度低下させ、デバイス性能の向上に有利である。TM-5に基づいたデバイス3は、参照デバイスと比較して、ターンオン電圧が基本的に一致しているが、最大外部量子効率及び100nitでの外部量子効率と電流効率がすべて約10%向上した。分子構造から見ると、TM-3分子構造に4つのtert-ブチルを導入すると、分子の立体性を非常に大きく向上させ、分子間相互作用を大幅に低下させるとともに、分子骨格の剛性構造と大共役特性を維持するので、デバイス効率が最大に向上し、性能が最良である。
【0061】
要約すると、本発明により調製された有機エレクトロルミネセンスデバイスの性能は、基準デバイスと比較して、より良好な性能向上を有し、外部量子効率又は電流効率が明らかに向上する。関連する新型O-C-N-N四座配位白金(II)錯体金属有機材料は、大きな応用価値がある。本発明に関与する四座配位白金(II)錯体は、カルバゾール骨格に基づき、大きなπ共役剛直平面構造を有し、分子内回転と振動などの非放射性エネルギー散逸を大幅に低減でき、白金(II)錯体の発光効率と性能の向上に有利である。本発明により調製されたO-C-N-N四座配位白金(II)錯体金属有機材料は、有機発光ダイオードに比較的大きな応用価値があり、高発光効率の赤色OLEDデバイスを製造するために燐光ドーピング材料として使用される。